JP6115098B2 - 複合樹脂組成物及び熱放散性に優れた成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、複合樹脂組成物及び熱放散性に優れた成形体に関する。
近年、エレクトロニクス分野や、自動車産業分野において、製品の省エネルギー化や小型化のために、材料の熱放散性や軽量化に関する研究が盛んに行われている。
熱放散性に優れている代表的な材料として、金属材料が挙げられる。金属材料は、展性、延性を有しており、電気伝導性、熱伝導性、耐熱性、剛性などの強度に優れているため、構造材料などの建材用途や、電気・電子部品などの電子工業用途など幅広く用いられている。しかし、その反面、溶融や切削などによる成形加工法を用いるため、金属を溶融させるエネルギーが大きいことによる環境への負荷や、切削性が比較的悪いことによるコスト高、比重が大きいことによる重量の増加、酸化による錆の発生、振動吸収性が低いこと、塑性変形による形状維持ができないことなどの短所もある。
一方、樹脂材料は、比重が小さいため、軽量化を試みる際には非常に有効な材料である。樹脂の代表的な特性としては、比重が小さいほか、絶縁性、弾力性、振動吸収性、耐腐食性や耐薬品性に優れており、加工性も良いため、工業的に大量生産されている。しかし、金属と比較すると強度や耐熱性が弱く、熱伝導性が著しく低く、静電気を帯びやすいため、安価で加工性の良い樹脂を、単純に金属材料の代わりに使用することは難しい。
そこで樹脂材料に、熱伝導性フィラーを高充填することにより、軽量でありながら放熱特性を有する材料の開発が試みられている。
金属繊維の不織布の空隙に熱伝導性フィラーを配合した樹脂を充填することにより、金属、樹脂それぞれの特徴を活かしつつ、短所を抑えるような検討や(例えば、特許文献1参照)、エポキシ樹脂に熱伝導性フィラーを大量に添加して、材料の熱伝導率を向上させるような試みも行われている(例えば、特許文献2参照)。
特開2000−091786号公報 特開2004−10668号公報
しかしながら、特許文献1記載の方法では、あらかじめ金属繊維で不織布を作製し、その空隙に熱伝導性フィラーを配合した熱可塑性樹脂を充填することにより、柔軟性と屈曲性に優れた金属シートを提案しているが、金属不織布を柱として材料を作製しているため金属の比率が多くなり、製品の重量増の要因となる。また、金属不織布の形状を作製させる必要があるため、金属繊維と樹脂の比率の調整が難しいという点に課題を残していた。
また、特許文献2記載の方法では、熱伝導性フィラーの配合量が、エポキシ樹脂中において、80重量%以上添加することにより、熱伝導率を1.2W/mK以上発現させている。しかし、比較的高価であり、比重が2以上と大きい熱伝導性フィラーの充填率が高いためにフィラーの添加量によっては、製品の重量やコストの増加、強度、成形加工性の悪化の原因になるなどの点に課題を残していた。
このような状況において、金属よりも優れた成形加工性を持ちながら、熱放散性を有し、任意にそのような特性が調整できるような材料の創出が期待されている。
本発明の目的は、金属材料よりも成形加工性、軽量性に優れ、かつ樹脂材料よりも平面方向の熱伝導性、機械的強度に優れる複合樹脂組成物を提供することにある。
上述の目的は、以下の第(1)項〜第(21)項によって達成される。
(1) 構成材料として、(A)炭素繊維及び(B)樹脂を含む複合樹脂組成物であって、 前記複合樹脂組成物を成形して得られる成形物における、レーザーフラッシュ法により測定した平面方向の熱伝導率が5W/mK以上であり、厚み方向の熱伝導率が平面方向の熱伝導率に対して半分以下であり、JIS K 6911に準拠して測定した曲げ強度が100MPa以上、曲げ弾性率が10GPa以上であり、JIS K 6911に準拠して測定した比重が1.0以上2.5以下であり、JIS K 7197に準拠して測定した平面方向の線膨脹係数が0.1ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを特徴とする複合樹脂組成物。
(2) 前記(A)炭素繊維の熱伝導率が20W/mK以上であることを特徴とする第(1)項記載の複合樹脂組成物。
(3) 前記(A)炭素繊維の平均繊維長さが50μm以上10mm以下であることを特徴とする第(1)項又は第(2)項に記載の複合樹脂組成物。
(4) 前記(A)炭素繊維の含有量は、複合樹脂組成物全体の10質量%以上90質量%以下であることを特徴とする第(1)項ないし第(3)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(5) 前記(A)炭素繊維がPAN系もしくはピッチ系炭素繊維であり、それらを単独もしくは併用したことを特徴とする第(1)項ないし第(4)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(6) 前記複合樹脂組成物を成形して得られる成形物における、レーザーフラッシュ法により測定した平面方向の熱伝導率が20W/mK以上であり、厚み方向の熱伝導率が平面方向の熱伝導率に対して1/4以下であることを特徴とする第(1)項ないし第(5)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(7) 前記複合樹脂組成物を成形して得られる成形物における、JIS K 6911に準拠して測定した比重が1.0以上1.9以下であることを特徴とする第(1)項ないし第(6)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(8) 前記複合樹脂組成物を成形して得られる成形物における、JIS K 6911に準拠して測定した曲げ強度が150MPa以上、曲げ弾性率が12GPa以上であることを特徴とする第(1)項ないし第(7)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(9) 構成材料として、(C)前記(A)炭素繊維以外の繊維をさらに含むことを特徴とする第(1)項ないし第(8)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(10) 前記(A)炭素繊維以外の前記(C)成分の繊維が、金属繊維、木材繊維、木綿、麻、羊毛などの天然繊維、レーヨン繊維などの再生繊維、セルロース繊維などの半合成繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリビニルアルコール繊維
、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、エチレンビニルアルコール繊維などの合成繊維、ならびに、ガラス繊維、セラミック繊維などの無機繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維を含むことを特徴とする第(9)項に記載の複合樹脂組成物。
(11) 前記(B)樹脂の平均粒径が500μm以下であることを特徴とする第(1)項ないし第(10)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(12) 前記構成材料を溶媒に分散させた後、高分子凝集剤を添加し、構成材料をフロック状に凝集させ、その凝集物を溶媒と分離させた後、その溶媒を除去してなることを特徴とする第(1)項ないし第(11)項のいずれか一項に記載複合樹脂組成物。
(13) 前記構成材料として、さらに(D)イオン交換能を有する粉末状物質を含むことを特徴とする第(1)項ないし第(12)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(14) 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質が、粘土鉱物、鱗片状シリカ微粒子、ハイドロタルサイト類、フッ素テニオライト及び膨潤性合成雲母から選ばれる少なくとも1種の層間化合物であることを特徴とする第(13)項に記載の複合樹脂組成物。
(15) 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質が、スメクタイト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム及び燐酸チタニウムから選ばれる少なくとも1種の粘土鉱物を含むことを特徴とする第(13)に記載の複合樹脂組成物。
(16) 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト及びスチーブンサイトから選ばれる少なくとも1種のスメクタイトを含むことを特徴とする第(13)項に記載の複合樹脂組成物。
(17) 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質がモンモリロナイトを含むことを特徴とする第(13)項に記載の複合樹脂組成物。
(18) 前記(D)イオン交換能を有する粉末状物質の含有量は、複合樹脂組成物全体の0.1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする第(13)項ないし第(17)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(19) さらに、(E)無機粉末及び金属粉末から選ばれる少なくとも一種のフィラー粉末を含むことを特徴とする第(13)項ないし第(18)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(20) 前記溶媒の沸点が50℃以上200℃以下であることを特徴とする第(12)項ないし第(19)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
(21) 第(1)項ないし第(20)項のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物を用いてなることを特徴とする熱伝導性に優れた成形体。
本発明に従うと、金属材料よりも成形加工性、軽量性に優れ、かつ樹脂材料よりも平面方向の熱放散性、機械的強度に優れる複合樹脂組成物を得ることができる。また、本発明
に従うと、厚み方向に対して平面方向への熱放散性に優れる複合樹脂組成物を得ることができる。
本発明の複合樹脂組成物は、構成材料として、(A)炭素繊維及び(B)樹脂を含む複合樹脂組成物であって、樹脂組成物を成形して得られる成形物(成形体)における、レーザーフラッシュ法により測定した平面方向の熱伝導率が5W/mK以上であり、厚み方向の熱伝導率が平面方向の熱伝導率に対して半分以下であり、JIS K 6911に準拠して測定した曲げ強度が100MPa以上、曲げ弾性率が10GPa以上であり、JIS
K 6911に準拠して測定した比重が1.0以上2.5以下であり、JIS K 7197に準拠して測定した平面方向の線膨脹係数が0.1ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを特徴とする。このような構成とすることにより、金属材料よりも成形加工性、軽量性に優れ、かつ樹脂材料よりも平面方向の熱放散性、機械的強度に優れる複合樹脂組成物を得ることができる。以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の複合樹脂組成物は、これを成形して得られる成形物(成形体)における、レーザーフラッシュ法により測定した平面方向の熱伝導率が5W/mK以上であるものが好ましく、20W/mK以上であるものがより好ましく、40W/mK以上であるものが特に好ましい。上記下限値以上とすることにより、優れた熱放散性を有する成形体を得ることができる。また、本発明の複合樹脂組成物は、これを成形して得られる成形物(成形体)における、厚み方向の熱伝導率が平面方向の熱伝導率に対して半分以下であるものが好ましく、1/4以下であるものがより好ましい。これにより、選択的に平面方向への放熱を行うことができるため、筐体などに有用に用いることができる。本発明で、レーザーフラッシュ法により熱伝導率を測定する試験片としては、その形状などを特に限定されるものではないが、例えば、1.5mm厚の成形体を用いることができる。
本発明で、平面方向とは、(A)炭素繊維が成形体のxy軸方向に分布していることを示し、厚み方向とは成形体のz軸方向で、(A)炭素繊維の成形体における分布に対して垂直方向であることを示す。複合樹脂組成物を用いて、熱伝導性評価用の試験片を得る方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、プレス成形、コンプレッション成形、カレンダーロール成形、SMC法、射出成形、マッチドダイ法、金属や樹脂、織布、不織布などとの積層成形などの成形方法により成形した成形物(成形体)をそのまま用いてもよいし、得られた成形物(成形体)から試験片を切り出して用いてもよい。この際、構成材料の(B)樹脂として、熱硬化性樹脂で成形物(成形体)を作製した場合においては、成形温度に対して±20℃程度の範囲内で、1〜6時間程度のアニール処理をすることが好ましい。
本発明の複合樹脂組成物は、これを成形して得られる成形物(成形体)における、JIS K 6911に準拠して測定した曲げ強度が100MPa以上であるものが好ましく、120MPa以上であるものがより好ましく、150MPa以上であるものが特に好ましい。上記下限値以上とすることにより、強度に優れた成形体を得ることができる。また、本発明の複合樹脂組成物は、これを成形して得られる成形物(成形体)における、JIS K 6911に準拠して測定した曲げ弾性率が10GPa以上であるものが好ましく、11GPa以上であるものがより好ましく、12GPa以上であるものが特に好ましい。上記下限値以上とすることにより、剛性に優れた成形体を得ることができる。
本発明の複合樹脂組成物は、これを成形して得られる成形物(成形体)における、JIS K 6911に準拠して測定した比重が1.0以上2.5以下であるものが好ましく、1.0以上2以下であるものがより好ましく、1.0以上1.9以下であるものがさらに好ましく、1.0以上1.8以下であるものが特に好ましい。上記上限値以下とするこ
とにより、熱伝導性に加えて、軽量性にも優れた成形体を得ることができる。
本発明の複合樹脂組成物は、これを成形して得られる成形物(成形体)における、JIS K 7197に準拠して測定した平面方向の線膨脹係数が0.1ppm/℃以上50ppm/℃以下であるものが好ましく、1ppm/℃以上45ppm/℃以下であるものがより好ましく、3ppm/℃以上40ppm/℃以下であるものが特に好ましい。上記上限値以下とすることにより、低応力性に優れた成形体を得ることができる。
本発明の複合樹脂組成物を成形して得られる成形物(成形体)における、熱伝導率、曲げ強度、曲げ弾性率、比重及び線膨脹係数が上述した範囲となるようにするためには、複合樹脂組成物の構成材料である(A)炭素繊維の種類や形状など、(B)樹脂の種類や形状など、ならびに、(A)炭素繊維と(B)樹脂との配合比率を変更することなどにより、調整することができる。また、特に、平面方向の熱伝導率及び平面方向の熱伝導率に対する厚み方向の熱伝導率の比率が上述した範囲となるためには、上記に加えて、後述する本発明の複合樹脂組成物の製造方法及び本発明の成形物(成形体)の製造方法などにより、調整することができる。
これらの中でも、複合樹脂組成物を成形して得られる成形物(成形体)における、平面方向の熱伝導率を向上させる観点では、(A)炭素繊維の熱伝導率が20W/mK以上であるものを用いることが好ましい。尚、本発明で、(A)炭素繊維の熱伝導率の測定方法は、例えば、炭素繊維束に樹脂を含浸させて熱プレスを行い、繊維長方向の試験片を切り出して、レーザーフラッシュ法で測定を行い、測定値に100/繊維体積分率を掛けて算出する方法がある。
(A)炭素繊維の平均繊維長さは、特に限定されるものではなく、要求される特性に応じて適宜選択することが望ましいが、例えば、50μm以上10mm以下であることが好ましい。成形加工性の観点からは、50μm以上3mm以下であることがより好ましく、平面方向の熱伝導性が向上するという観点からからは、3mm以上8mm以下であることが特に好ましい。平均繊維長さが上記下限値未満の場合は、繊維長が短すぎるため、熱伝導繊維がネットワークを形成しづらくなるため、平面方向の熱伝導性が発現しにくい場合がある。また、平均繊維長さが上記上限値を超えると、平面方向の熱伝導性には有効であるが、成形加工性が低下する原因になるので好ましくない。尚、平均繊維長の異なる複数の炭素繊維を用いる場合には、その一部として、平均繊維長が上記下限値未満のものを用いることは可能である。この場合、長繊維のものを用いることによる炭素繊維の性質発現を損なうことなく、成形加工性を向上させることができる。
(A)炭素繊維の含有量は、特に限定されるものではなく、求められる要求に応じて適宜設定することが好ましいが、樹脂の加工性が要求された場合は、複合樹脂組成物全体の含有量の10質量%以上30質量%未満にすることが好ましく、熱放散効果と成形加工性をバランスよく発現していることが要求された場合は、複合樹脂組成物全体の含有量の30質量%以上60質量%未満にすることが好ましく、高い熱放散効果が要求された場合には、複合樹脂組成物全体の含有量の60質量%以上90質量%未満にすることが望ましい。複合樹脂組成物全体の含有量の10質量%未満の場合には、軽量性や加工性が向上するが、成形体の平面方向の熱伝導性が5W/mK以上になるのは難しい。また、複合樹脂組成物全体の含有量の90質量%より多い場合には、平面方向の熱伝導性は向上するが、軽量性や加工性が悪化するので好ましくはない。
(A)炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、が挙げられる。これらのなかでも、強度の観点からはPAN系炭素繊維が好ましく、熱放散効果の観点からはピッチ系の炭素繊維が好ましい。
(A)炭素繊維としては、例えば、東レ(株)のトレカ、東邦テナックス(株)のテナックスなどのPAN系炭素繊維。三菱樹脂(株)のダイアリード、日本グラファイトファイバー(株)製のGRANOCなどのピッチ系炭素繊維などが市販品として入手可能であるが、これらに限定されるものではない。これらの炭素繊維は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
(A)炭素繊維は、そのまま使用してもよいが、必要特性に応じてシランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤などで表面処理したり、樹脂との密着性や取り扱い性を向上させるために収束剤処理をしたものを使用してもよい。
本発明の複合樹脂組成物の構成材料である(B)樹脂とは、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であってもよく、バインダーとして作用し得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂や、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、必要特性に応じて、適宜選択して使用することが可能であり、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、機械強度や耐薬品性が良好であるという観点では、熱硬化性樹脂が好ましく、成形性が良好であることや、樹脂の透明性などのデザイン性が必要であるという観点では、熱可塑性樹脂が好ましい。
(B)樹脂を用いるための好ましい形態としては、平均粒径500μm以下の固体状態や、エマルジョン状にしたものが望ましい。更に好ましくは、平均粒径1nm〜300μm程度の粒径である。これにより、高分子凝集剤を添加した時、後述する(D)イオン交換能を有する粉末状物質の存在下では、(B)樹脂と(A)炭素繊維が凝集状態を形成しやすくなり、収率が向上する。平均粒径が上記上限値より大きいと、高分子凝集剤を添加しても凝集状態を形成しにくくなり、収率が低下する原因となる。尚、(B)樹脂の平均粒径は、例えば、(株)島津製作所製のSALD−7000などのレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、質量基準の50%粒子径を平均粒径として求めることができる。
要求される必要特性に応じて、(A)炭素繊維以外の(C)繊維をさらに含むことができる。(A)炭素繊維以外の(C)繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属繊維、針葉樹や広葉樹からなる木材繊維や木綿、麻、羊毛などの天然繊維、レーヨン繊維などの再生繊維、セルロース繊維などの半合成繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、エチレンビニルアルコール繊維などの合成繊維、ならびに、ガラス繊維、セラミック繊維などの無機繊維などが挙げられる。これらの繊維は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、曲げ強度の向上という観点では、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維などが好ましく、曲げ弾性率の向上という観点では、ガラス繊維、セラミック繊維などの無機繊維が好ましく、熱放散性の向上という観点では、金属繊維が好ましい。
(A)炭素繊維以外の(C)繊維として、例えば、東レ・デュポン(株)製のアラミド繊維であるケブラー(登録商標)や、帝人テクノプロダクツ社(株)のアラミド繊維であるテクノーラ(登録商標)、(株)クラレ製のポリビニルアルコール繊維であるビニロン
、東洋紡績(株)製のポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維であるザイロン(登録商標)、日東紡製のガラス繊維、電気化学工業(株)製のアルミナ繊維であるデンカアルセンなどが市販品として入手可能であるが、これらに限定されるものではない。また、金属繊維としては、単独の金属元素で構成される金属繊維であっても、複数の金属で構成される合金繊維であってもよいが、金属繊維を構成する金属元素としては、例えば、アルミニウム、銀、銅、及び鉄などが挙げられる。
(A)炭素繊維以外の(C)繊維の形状としては、特に制限無く使用可能であり、必要特性に応じた形状のものを用いることができるが、曲げ強度や、耐衝撃性などの強度特性を向上させる場合には、チョップドストランドで使用することが望ましい。また、歩留まりの向上効果を得るためには、繊維をビーターや、ホモジナイザーなどの機械的なせん断力により叩解したものや、フィブリル化したものが、繊維表面積が増大し、物理的に構成材料の捕捉能力を向上させる効果と、化学的に高分子凝集剤が作用しやすくなる効果とが得られるため、使用することが望ましい。
本発明の複合樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されるものではないが、構成材料を溶媒に分散させた後、高分子凝集剤を添加し、構成材料をフロック状に凝集させ、その凝集物を溶媒と分離させた後、その溶媒を除去する方法が好ましい。これにより、本発明の複合樹脂組成物を成形して得られる成形物(成形体)における、レーザーフラッシュ法により測定した平面方向の熱伝導率、及び平面方向の熱伝導率に対する厚み方向の熱伝導率の比率を上述した範囲とすることが容易となる。構成材料などを溶媒に分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ディスパーザーやホモジナイザーなどで撹拌する方法などが挙げられる。また、凝集物を溶媒と分離、除去する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属やプラスチックなどの網や織布、不織布を用いて溶媒のみを通過させて分離した後、更に凝集物を、プレス機、乾燥器などを用いて、脱溶媒、乾燥させて除去する方法などが挙げられる。このような複合樹脂組成物の製造方法においては、構成材料として、さらに(D)イオン交換能を有する粉末状物質を含むことがより好ましい。このような複合樹脂組成物の製造方法において(D)イオン交換能を有する粉末物質を用いることにより、(A)炭素繊維の繊維長を長く維持したまま高い収率で、(A)炭素繊維と(B)樹脂との凝集体を効率よく作製することができるため、(A)炭素繊維と(B)樹脂との配合比率を広範囲に調整することが可能となる。このため、求められる要求に応じて、(A)炭素繊維の熱伝導性、剛性などの特性と、(B)樹脂の加工性や軽量性などの特性とのバランスに優れた幅広い複合樹脂組成物を、より効率的に得ることができる。特に、本発明の複合樹脂組成物を成形して得られる成形物(成形体)における、レーザーフラッシュ法により測定した平面方向の熱伝導率、及び平面方向の熱伝導率に対する厚み方向の熱伝導率の比率を上述した範囲とすることがより容易となる。
(D)イオン交換能を有する粉末状物質としては、粘土鉱物、鱗片状シリカ微粒子、ハイドロタルサイト類、フッ素テニオライト及び膨潤性合成雲母から選ばれる少なくとも1種の層間化合物であることが好ましい。
粘土鉱物としては、イオン交換能を有雲母などが挙げられる。これらの層間化合物は、天然物でも合成されたものであってもするものであれば特に限定されるものではないが、例えば、スメクタイト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム及び燐酸チタニウムなどが挙げられる。ハイドロタルサイト類としては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト状物質などが挙げられる。フッ素テニオライトとしては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、リチウム型フッ素テニオライト、ナトリウム型フッ素テニオライトなどが挙げられる。膨潤性合成雲母としては、イオン
交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム型四珪素フッ素雲母、リチウム型四珪素フッ素よく、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうちでは、粘土鉱物がより好ましく、スメクタイトが天然物から合成物まで存在し、選択の幅が広いという点においてさらに好ましい。
スメクタイトとしては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト及びスチーブンサイトなどが挙げられる。モンモリロナイトは、アルミニウムの含水ケイ酸塩であるが、モンモリロナイトを主成分とし、他に石英や雲母、長石、ゼオライトなどの鉱物を含んでいるベントナイトであってもよい。着色や不純物を気にする用途に用いる場合などには、不純物が少ない合成スメクタイトが好ましい。
(D)イオン交換能を有する粉末状物質として、例えば、クニミネ工業(株)製のクニピア(ベントナイト)、スメクトンSA(合成サポナイト)、AGCエスアイテック(株)製のサンラブリー(鱗片状シリカ微粒子)、コープケミカル(株)製のソマシフ(膨潤性合成雲母)、ルーセンタイト(合成スメクタイト)、堺化学工業(株)製のハイドロタルサイトSTABIACE HT−1(ハイドロタルサイト)などが市販品として入手可能であるが、これらに限定されるものではない。
(D)イオン交換能を有する粉末状物質の含有量は、複合樹脂組成物全体の0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは、2質量%以上20質量%以下である。上記範囲内であれば、(A)炭素繊維と(B)樹脂のように性質の異なる構成材料の定着性を向上させる効果を得ることができる。尚、構成材料中の(A)炭素繊維と(B)樹脂との比率や、高分子凝集剤の種類や量などに合せて、(D)イオン交換能を有する粉末状物質の含有量を調整することが好ましい。
本発明で構成材料を分散させるために用いられる溶媒は、特に限定されないが、工程中に揮発しにくいことと、製品に残らないために脱溶媒をしやすいということ、沸点が高すぎると脱溶媒するために、エネルギーが大きく掛かることなどの観点から、沸点が50℃以上200℃以下であるものが好ましく、このようなものとしては、例えば、水や、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコールなどのアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類や、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類や、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、ジオキサン、フルフラールなどのエーテル類などを挙げることができる。これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、供給量が豊富であり、安価、環境負荷が低い、安全性も高く扱いやすいという理由から水が特に好ましい。
本発明の複合樹脂組成物の構成材料をフロック状に凝集させるために用いられる高分子凝集剤としては、特にイオン性などにより限定されるものではなく、カチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤などを用いることができる。このようなものとして、例えば、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、ホフマンポリアクリルアミド、マンニックポリアクリルアミド、両性共重合ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、両性澱粉、ポリエチレンオキサイドなどを挙げることができる。これらの高分子凝集剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、高分子凝集剤として、ポリマー構造や分子量、水酸基やイオン性基などの官能基量などは、必要特性に応じて特に制限無く使用可能である。
高分子凝集剤として、例えば、和光純薬工業(株)製や関東化学工業(株)製、住友精化(株)製のポリエチレンオキシドや、ハリマ化成(株)製のカチオン性PAMであるハ
リフィックス、アニオン性PAMであるハーマイドB−15、両性PAMであるハーマイドRB−300、三和澱粉工業(株)製カチオン化澱粉であるSC−5などが市販品として入手可能であるが、これらに限定されるものではない。
高分子凝集剤の添加量として、特に限定はされないが、構成材料の重量に対して100質量ppm以上1質量%以下が好ましい。更に好ましくは、500質量ppm以上0.5質量%である。これにより、収得よく構成材料が凝集させることができる。高分子凝集剤の添加量が上記下限値よりも小さいと収得が低下する可能性があり、上記上限値よりも大きいと凝集が強すぎて脱水などに問題が生じる可能性がある。
本発明の複合樹脂組成物は、構成材料として、さらに(E)無機粉末及び金属粉末から選ばれる少なくとも一種のフィラー粉末を含むことにより、特性を調整することができる。無機粉末としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化マグネシウムなどの酸化物類や、窒化ホウ素、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素などの窒化物類や、硫酸バリウム、硫酸鉄、硫酸銅などの硫化物類や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物類や、カオリナイト、タルク、天然マイカ、合成マイカなどの鉱物類ならびに、炭化ケイ素などの炭化物類などが挙げられ、そのまま使用してもよいが、必要特性に応じてシランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤などで表面処理をしたものを使用してもよい。
また、金属粉末としては、単独の金属元素で構成される金属粉末であっても、複数の金属で構成される合金粉末であってもよいが、金属粉末を構成する金属元素としては、アルミニウム、銀、銅、マグネシウム、鉄、クロム、ニッケル、チタン、亜鉛、錫、モリブデン及びタングステンなどが挙げられる。
本発明の複合樹脂組成物には、上述の(A)炭素繊維、(B)樹脂、(C)(A)炭素繊維以外の繊維、(D)イオン交換能を有する粉末状物質、(E)無機粉末及び金属粉末から選ばれる少なくとも一種のフィラー粉末、ならびに、高分子凝集剤以外に、特性向上を目的とした酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、離型剤、可塑剤、難燃剤、樹脂の硬化触媒や硬化促進剤、顔料、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤などの紙力向上剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、サイズ定着剤、消泡剤、酸性抄紙用ロジン系サイズ剤、中性製紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニルコハク酸無水物系サイズ剤、特殊変性ロジン系サイズ剤などのサイズ剤、硫酸バンド、塩化アルミ、ポリ塩化アルミなどの凝結剤などを、生産条件調整や、要求される物性を発現させることを目的に様々な添加剤を使用することができる。
本発明の複合樹脂組成物は、上述の通り、構成材料などを溶媒に分散させた後、高分子凝集剤を添加し、構成材料などをフロック状に凝集させ、その凝集物を溶媒と分離させた後、その溶媒を除去することにより得ることができるが、この方法に限定されるものではなく、カードマシンなどで炭素繊維とウェブを形成させ樹脂を含浸し複合樹脂組成物を作製する方法や、樹脂中に炭素繊維を配合する方法なども挙げられる。
次に、本発明の成形体の製造方法について説明する。本発明の成形体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、プレス成形、コンプレッション成形、カレンダーロール成形、SMC法、射出成形、マッチドダイ法、金属や樹脂、織布、不織布などとの積層成形などの成形方法が挙げられる。本発明の複合樹脂組成物を成形して得られる成形物(成形体)における、レーザーフラッシュ法により測定した平面方向の熱伝導率、及び平面方向の熱伝導率に対する厚み方向の熱伝導率の比率を上述した範囲とするという観点では、コンプレッション成形がより好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例及び比較例に記載されている「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
実施例に記載している原材料は、あらかじめ含有されている水分量を抜いた質量部で表している。
1.複合樹脂組成物の作製
実施例1
アトマイザー粉砕機で平均粒径100μmに粉砕した固形レゾール樹脂(住友ベークライト(株)製PR−51723)35部と、合成サポナイト(クニミネ工業(株)製商品名スメクトンSA)1部、繊維長3mm、繊維径10μmのピッチ系炭素繊維(日本グラファイトファイバー(株)製XN100)53部、テクノーラ(登録商標)繊維T32PNW(帝人テクノプロダクツ(株)製)8部、パルプ1F303(東レ・デュポン(株)製)3部を10000部の水に添加して、ディスパーザーで30分撹拌した後、あらかじめ水に溶解させたポリエチレンオキシド分子量1,000,000(和光純薬工業(株)製)を構成材料に対して0.2%の重量添加を行い、構成材料をフロック状に凝集させる。その凝集物を40メッシュの金属網で水と分離し、この後その凝集物を、脱水プレスし、さらに50℃の乾燥器に5時間入れて乾燥させ、複合樹脂組成物を95%の収率で得た。尚、収率の測定方法の詳細は後述する。
実施例2
アトマイザー粉砕機で平均粒径100μmに粉砕した固形レゾール樹脂(住友ベークライト(株)製PR−51723)31部と、合成サポナイト(クニミネ工業(株)製商品名スメクトンSA)1部、繊維長3mm、繊維径10μmのピッチ系炭素繊維(日本グラファイトファイバー(株)製XN100)41部、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維(東洋紡(株)製ザイロンHM)24部、パルプ1F303(東レ・デュポン(株)製)3部を10000部の水に添加して、ディスパーザーで30分撹拌した後、あらかじめ水に溶解させたポリエチレンオキシド分子量1,000,000(和光純薬工業(株)製)を構成材料に対して0.2%の重量添加を行い、構成材料をフロック状に凝集させる。その凝集物を40メッシュの金属網で水と分離し、この後その凝集物を、脱水プレスし、さらに50℃の乾燥器に5時間入れて乾燥させ、複合樹脂組成物を95%の収率で得た。尚、収率の測定方法の詳細は後述する。
比較例1
高圧ホモジナイザーで平均粒径30μmに粉砕したエポキシ樹脂1002(三菱化学(株)製)24部と、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤2PZ−PW(四国化成工業(株)製)1部、合成サポナイト(クニミネ工業(株)製商品名スメクトンSA)5部、繊維長3mm、繊維径60μmのアルミニウム繊維(虹技(株)製A1070)60部、セルロースパルプ(日本製紙ケミカル(株)製商品名NDPT)10部を10000部の水に添加して、ディスパーザーで30分撹拌した後、あらかじめ水に溶解させた三和澱粉工業(株)製カチオン化澱粉SC−5を構成材料に対して0.4%の重量添加を行い、構成材料をフロック状に凝集させる。その凝集物を40メッシュの金属網で水と分離し、この後その凝集物を、脱水プレスし、さらに100℃の乾燥器に4時間入れて乾燥させ、複合樹脂組成物を94%の収率で得た。尚、収率の測定方法の詳細は後述する。
比較例2
高圧ホモジナイザーで平均粒径30μmに粉砕したエポキシ樹脂1002(三菱化学(株)製)を10部と、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤2PZ−PW(四国化成工業(株)製)1部、合成サポナイト(クニミネ工業(株)製商品名スメクトンSA)3部、繊
維長3mm、繊維径60μmの銅繊維(虹技(株)製)82部、セルロースパルプ(日本製紙ケミカル(株)製商品名NDPT)4部を10000部の水に添加して、ディスパーザーで30分撹拌した後、あらかじめ水に溶解させた三和澱粉工業(株)製カチオン化澱粉SC−5を構成材料に対して0.3%添加を行い、構成材料をフロック状に凝集させる。その凝集物を40メッシュの金属網で水と分離し、この後その凝集物を、脱水プレスし、さらに100℃の乾燥器に4時間入れて乾燥させ、複合樹脂組成物を95%の収率で得た。
2.成形体の作製
実施例3
実施例1で得られた複合樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、複合樹脂組成物に対して、面圧30MPa加圧下でコンプレッション成形を180℃、20分行い、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た。
実施例4
実施例2で得られた複合樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、複合樹脂組成物に対して、面圧30MPa加圧下でコンプレッション成形を180℃、20分行い、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た。
比較例3
比較例1で得られた複合樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、複合樹脂組成物に対して、面圧10MPa加圧下でコンプレッション成形を160℃、60分行い、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た。
比較例4
比較例2で得られた複合樹脂組成物を、離型剤を塗布した金型にセットし、複合樹脂組成物に対して、面圧10MPa加圧下でコンプレッション成形を160℃、60分行い、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た。
実施例3、4及び、比較例3、4で得られた成形体を用いて、下記に示す特性評価を行った。結果を表1に示す。
3.特性の評価方法
3.1 複合樹脂組成物
(1)収率
下記式により算出した。
収率(%)=(得られた複合樹脂組成物の重量/仕込んだ複合樹脂組成物原料の重量合計)×100
得られた複合樹脂組成物については、乾燥後の重量を用い、仕込んだ複合樹脂組成物原料の合計重量に関しては、水分を抜いた量を用いた。
3.2 成形体
(1)比重測定
比重測定は、JIS K 6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法)に準拠して行った。試験片は縦2cm×横2cm×厚み2mmになるように成形体から切り出したものを用いた。
(2)熱伝導率の測定
平面方向測定用として、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た成形条件に対して、成形時間のみを3倍として、縦10mm×横10mm×長さ3cmの成形体を得た。また、厚み方向測定用として、縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た成形条件と同一の成形条件で、縦10cm×横10cm×長さ1.5mmの成形体を得た。得られたそれぞれの成形体から、縦10mm×横10mm×長さ1.5mmになるように切り出して試験片とした。次に、NETZSCH社製のXeフラッシュアナライザーLFA447を用いて、レーザーフラッシュ法により板状試験片の長さ方向の熱伝導率の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。
(3)曲げ試験
曲げ試験は、JIS K 6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法)に準拠して行った。試験片は、縦50mm×横25mm×厚み2mmになるように成形体から切り出したものを用いた。曲げ試験の支点間距離は32mmで行った。
(4)線膨脹係数の測定
縦10cm×横10cm×厚み2mmの成形体を得た成形条件に対して、成形時間のみを3倍として、縦5mm×横30mm×長さ10mmの成形体を作製し、それを縦5mm×横5mm×長さ10mmの試験片に切断し、熱機械的分析装置(セイコーインスツルメンツ社製、TMA−6000)を用いて、長さ方向の線膨脹係数を測定した。昇温速度は、5℃/分とし、線膨脹係数(α1)を80〜120℃の温度範囲で求めた。
実施例1、2は本発明により得られた複合樹脂組成物であり、実施例3、4は本発明により得られた成形体である。
実施例1、2は、いずれも、高い収率で複合樹脂組成物が得られた。また、実施例3、4は、いずれも、平面方向の熱伝導率が5W/mK以上、厚み方向の熱伝導率が平面方向の熱伝導率に対して半分以下、曲げ強度が100MPa以上、曲げ弾性率が10GPa以上であり、比重が1.0以上2.5以下、かつ平面方向の線膨脹係数が0.1ppm/℃以上50ppm/℃以下と、特性バランスに優れた成形体が得られることが分かった。
実施例3、4と比較例3、4の成形体を比較した場合、炭素繊維とアルミ繊維、銅繊維との差を示した検討であり、炭素繊維を使用することで高い熱伝導率を維持したまま、軽量性を向上させることができた。さらに、アラミド繊維もしくはポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維を併用することで曲げ強度を150MPa以上に高めることもでき、軽量性と強度、熱放散性に優れる成形体を得られている。また実施例3、4より炭素繊維の配合量を変化させることで、成形体の熱伝導率を容易に調整できた。
本発明により、加工性や軽量性などの特性と、熱伝導率や強度、剛性などの特性とのバランスに優れた成形体を得ることができることが分かる。
本発明により、樹脂の加工性や軽量性、熱伝導性、強度、剛性などの特性バランスに優れ、かつ平面方向への熱伝導性が厚み方向に対して倍以上の値となる成形体を得ることができる。
従って、本発明の複合樹脂組成物より得られた成形体は、パソコンや携帯電話、携帯情
報端末、プラズマディスプレイテレビ、液晶テレビ、OA機器、ゲーム機器、娯楽用品、エアコン、オーディオ、光学機器、照明器具などの電子製品や、車載用のエレクトロニクス製品の内部機構部品、筐体等の構成部品への適用や、建築用構造材料、航空分野、宇宙分野、自動車分野などの部品等に使用が可能になり、軽量化による燃費の向上や省エネルギー化、電子機器などのヒートスポットの解消などに寄与することができ、環境負荷を低減することが可能となる。

Claims (10)

  1. 構成材料として、(A)炭素繊維及び(B)樹脂を含む複合樹脂組成物であって、
    前記複合樹脂組成物を成形して得られる成形物における、レーザーフラッシュ法により測定した平面方向の熱伝導率が5W/mK以上であり、厚み方向の熱伝導率が平面方向の熱伝導率に対して半分以下であり、JIS K 6911に準拠して測定した曲げ強度が100MPa以上、曲げ弾性率が10GPa以上であり、JIS K 6911に準拠して測定した比重が1.0以上2.5以下であり、JIS K 7197に準拠して測定した平面方向の線膨脹係数が0.1ppm/℃以上50ppm/℃以下であることを特徴とする複合樹脂組成物。
  2. 前記(A)炭素繊維の熱伝導率が20W/mK以上であることを特徴とする請求項1記載の複合樹脂組成物。
  3. 前記(A)炭素繊維の平均繊維長さが50μm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合樹脂組成物。
  4. 前記(A)炭素繊維の含有量は、複合樹脂組成物全体の10質量%以上90質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
  5. 前記(A)炭素繊維がPAN系もしくはピッチ系炭素繊維であり、それらを単独もしくは併用したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
  6. 前記複合樹脂組成物を成形して得られる成形物における、レーザーフラッシュ法により測定した平面方向の熱伝導率が20W/mK以上であり、厚み方向の熱伝導率が平面方向の熱伝導率に対して1/4以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
  7. 前記複合樹脂組成物を成形して得られる成形物における、JIS K 6911に準拠して測定した比重が1.0以上1.9以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
  8. 前記複合樹脂組成物を成形して得られる成形物における、JIS K 6911に準拠して測定した曲げ強度が150MPa以上、曲げ弾性率が12GPa以上であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
  9. 構成材料として、(C)前記(A)炭素繊維以外の繊維をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
  10. 前記(A)炭素繊維以外の前記(C)成分の繊維が、金属繊維、木材繊維、木綿、麻、羊毛などの天然繊維、レーヨン繊維などの再生繊維、セルロース繊維などの半合成繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、エチレンビニルアルコール繊維などの合成繊維、ならびに、ガラス繊維、セラミック繊維などの無機繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維を含むことを特徴とする請求項9に記載の複合樹脂組成物。

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