以下、本発明の光配線部品の製造方法について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光配線部品>
まず、本発明の光配線部品の製造方法により製造される光配線部品の形態の一例について説明する。
図1は、本発明の光配線部品の製造方法により製造される光配線部品の形態の一例を一部透過して示す斜視図、図2は、図1に示すA−A線断面図である。なお、以下の説明では、図1、2中の上側を「上」、下側を「下」という。
図1に示す光配線部品1は、光信号を伝送可能な長尺状でかつ層状をなす光導波路(光配線)2と、光導波路2の側面および上下面を覆うように設けられた支持部3と、を備えている。このうち、光導波路2は、導光路を備えた部材、例えば光ファイバーで代替することもできる。一方、支持部3は、光導波路2に接するよう設けられ、基材繊維を含むものである。
このような支持部3を設けたことにより、光導波路2を確実に補強することができる。その結果、光配線部品1の耐屈曲性や圧縮強さといった機械的特性をより高めることができ、光配線部品1を小さく湾曲させたり、大きな荷重を加えたりした場合でも、光導波路2の折れ曲がりや断線を防止することができる。その結果、光導波路2における伝送効率の低下を防ぐことができる。
また、支持部3が基材繊維を含んでいるため、光配線部品1における引張強さや靭性といった機械的特性についても高めることができる。これは、支持部3中に含まれる基材繊維が支持部3に加わる応力を分散させ、支持部3の内側に配された光導波路2の局所に大きな応力が集中するのを防止しているためと考えられる。このため、例えば光配線部品1を捻る動作や湾曲動作が繰り返されたりした場合でも、支持部3が光導波路2を保護し、光導波路2が挫屈や断裂に至るのを防ぐことができる。
以下、各部の構成について詳述する。
(光配線)
光導波路2は、上述したように光ファイバーといった導光路を備えた部材で代替することができるが、伝送効率や取り扱いの容易性といった観点から光導波路が好ましく用いられる。さらに、光導波路2は、層状のものを容易に製造することができるので、例えば支持部3を抄造法で製造する場合、光導波路2の側面や上下面を支持部3で効率よく覆うことができるという点で有用である。
図1に示す光導波路2は、クラッド層21、コア層23およびクラッド層22が下方からこの順で積層されてなるものである。このうち、コア層23には、長尺状をなす複数本(図1では2本)のコア部241、242と、長尺状をなす複数本(図1では3本)の側面クラッド部251、252、253と、が形成されており、これらが光導波路2の幅方向において交互に配置されている。これにより、コア部241、242はクラッド部(側面クラッド部251、252、253および各クラッド層21、22)で囲まれることとなり、コア部241、242に光を閉じ込めて伝送することができる。
コア部241、242と側面クラッド部251、252、253とは、互いに屈折率が異なり、コア部241、242の屈折率は、クラッド部の屈折率より大きくなるよう設定されている。
また、コア部241、242の幅および高さ(コア層23の厚さ)は、特に限定されないが、それぞれ1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜70μm程度であるのがさらに好ましい。
一方、図1に示すように複数のコア部241、242が並列するよう形成されているとき、コア部241、242と並列する側面クラッド部251、252、253の幅は、5〜250μm程度であるのが好ましく、10〜200μm程度であるのがより好ましく、10〜120μm程度であるのがさらに好ましい。
上述したようなコア層23の構成材料(主材料)は、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料等を用いることができる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料であってもよい。このような樹脂材料で構成されることにより、光導波路2は十分な可撓性を有するものとなる。このため、湾曲させた状態で敷設したり、機器内に組み込んだりすることが可能な光配線部品1が得られる。
一方、クラッド層21、22は、コア層23の下部および上部に位置する。
クラッド層21、22の平均厚さは、コア層23の平均厚さの0.05〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.1〜1.25倍程度であるのがより好ましい。具体的には、クラッド層21、22の平均厚さは、それぞれ1〜200μm程度であるのが好ましく、3〜100μm程度であるのがより好ましく、5〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路2が必要以上に厚膜化するのを防止しつつ、クラッド部としての機能が確保される。
また、クラッド層21、22の構成材料としては、例えば、前述したコア層23の構成材料と同様の材料を用いることができる。
光導波路2の幅は、特に限定されないが、1〜200mm程度であるのが好ましく、2〜100mm程度であるのがより好ましい。
また、光導波路2の長さは、用途に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されないが、一例として20〜1000mm程度であるのが好ましく、50〜500mm程度であるのより好ましい。
また、光導波路2中に形成されるコア部241、242の数は、特に限定されないが、1〜100本程度であるのが好ましい。なお、コア部241、242の数が多い場合は、必要に応じて、光導波路2を多層化してもよい。具体的には、図1、2に示す光導波路2の上に、さらにコア層とクラッド層とを交互に重ねることにより多層化することができる。
また、図1に示す光導波路2の下面には支持フィルム26が、上面にはカバーフィルム27が、それぞれ設けられている。
支持フィルム26およびカバーフィルム27の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料が挙げられる。
また、支持フィルム26およびカバーフィルム27の平均厚さは、特に限定されないが、5〜500μm程度であるのが好ましく、10〜400μm程度であるのがより好ましい。
なお、光導波路2には、必要に応じてコア部241、242の光路を変換するミラー(光路変換部)が形成されていてもよい。
(支持部)
支持部3は、基材繊維を含む部位であり、光導波路2に接するよう設けられている。
本例に係る支持部3は、複数の基材繊維と、基材繊維同士を結着する樹脂と、その他の添加物と、からなる複合材料で構成されている。
支持部3がこのような複合材料で構成されていることにより、複数の基材繊維によって支持部3の耐屈曲性、圧縮強さ、引張強さ、靭性といった機械的特性の向上を図ることができる。これは、基材繊維がその長さ方向において特に優れた機械的特性を備えているので、このような基材繊維を複数含むことにより、支持部3全体の機械的特性が向上するものと考えられる。また、基材繊維同士が樹脂によって結着していることにより、支持部3に加わる応力が結着部を介して複数の基材繊維に分散し、結果的には光導波路2の局所に大きな応力が集中するのを防止することができる。
図1に示す支持部3は、長尺状で層状をなす光導波路2に対し、光導波路2の全長にわたって側面および上下面を覆うように設けられている。すなわち、支持部3は筒状をなしており、その内部に光導波路2が挿通されている。支持部3と光導波路2とは接しており、これにより光導波路2が補強されている。
したがって、図1に示す支持部3は、光導波路2の長手方向に直交するよう切断されたとき、図2に示すように光導波路2の全部を囲むように構成された部位を含んでいることになる。このような構成の支持部3は、光配線部品1に全方向から加わる荷重に対して、光導波路2をより確実に保護し得るものとなる。例えば光配線部品1を湾曲させたとき、湾曲部の内側と外側とで支持部3に加わる力の向きは異なるものの、図2に示すように支持部3が一体的に形成されていることにより、光導波路2に及ぼす影響を最小限に抑えることができる。
光導波路2の上面および下面に設けられる支持部3の平均厚さは、特に限定されないが、10μm〜30mm程度であるのが好ましく、20μm〜20mm程度であるのがより好ましい。支持部3の平均厚さを前記範囲内に設定することにより、光導波路2を十分に補強するとともに、光配線部品1が著しく大型化したり可撓性が損なわれたりするのを防止することができる。
((基材繊維))
基材繊維としては、特に限定されないが、例えば、木材繊維、木綿、麻、羊毛のような天然繊維、レーヨン繊維のような再生繊維、セルロース繊維のような半合成繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、エチレンビニルアルコール繊維のような合成繊維等の各種有機繊維、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維のような非金属無機繊維、アルミニウム、銀、銅、マグネシウム、鉄、クロム、ニッケル、チタン、亜鉛、錫、モリブデン、タングステン、またはこれらの金属を含む合金のような金属繊維等の各種無機繊維等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても、2種以上を併用するようにしてもよい。
これらの中でも、有機繊維が好ましく用いられ、その中でもポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維等がより好ましく用いられる。これらの繊維は、光配線部品1に優れた可撓性を付与するとともに、光配線部品1の曲げ強さをより高めることができる。一方、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維等も好ましく用いられる。これらの繊維は、光配線部品1の曲げ弾性率をより高めることができるので、例えば曲がり難い光配線部品1を製造するときに有用である。
なお、基材繊維としては、例えば、東レ・デュポン(株)製のアラミド繊維であるケブラー(登録商標)や、帝人テクノプロダクツ社(株)のアラミド繊維であるテクノーラ(登録商標)、(株)クラレ製のポリビニルアルコール繊維であるビニロン、東洋紡績(株)製のポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維であるザイロン(登録商標)、日東紡製のガラス繊維、電気化学工業(株)製のアルミナ繊維であるデンカアルセンといった市販品を用いることもできる。
基材繊維の形状は、特に限定されず、支持部3に必要とされる機械的特性等に応じて適宜選択可能であるが、例えばチョップドストランド、カットファイバー、ミルドファイバー等の形状が挙げられる。また、ビーターやホモジナイザー等の機械的なせん断力により叩解されたもの、フィブリル化したもの等が好ましく用いられる。このような処理を施すことにより、基材繊維の表面積が増加し、基材繊維と光導波路2との接触面積や基材繊維同士、基材繊維と樹脂との接触面積をそれぞれ増加させることができる。これにより、支持部3が光導波路2を補強し、保護する効果がより増強されることとなる。
基材繊維の平均繊維長さは、特に限定されず、支持部3に必要とされる機械的特性等に応じて適宜設定可能であるが、例えば300μm〜10mmであるのが好ましく、500μm〜7mmであるのがより好ましく、700μm〜5mmであるのがさらに好ましい。基材繊維の平均繊維長さを前記範囲内に設定することにより、基材繊維が適度に分散し、かつ基材繊維同士が適度に絡み合うことで光導波路2を十分に補強するとともに、機械的特性の増大における等方性をより高めることができる。すなわち、基材繊維の平均繊維長さが前記下限値を下回る場合、繊維長が短すぎるため、基材繊維の繊維径や含有量によっては、基材繊維同士が絡み合い難くなり、しかも繊維特有の補強作用が発現し難くなるおそれがある。一方、基材繊維の平均繊維長さが前記上限値を上回る場合、繊維長が長すぎるため、支持部3の成形形状によっては成形加工性が低下したり、支持部3の機械的特性に異方性が生じるおそれがある。
基材繊維の平均繊維径は、特に限定されず、支持部3に必要とされる機械的特性等に応じて適宜設定可能であるが、例えば0.5〜30μmであるのが好ましく、1〜20μmであるのがより好ましく、3〜15μmであるのがさらに好ましい。基材繊維の繊維径が前記範囲内であれば、支持部3に十分な引張強さと均一な分散性とが付与される。また、支持部3の表面に適度な高さの凹凸が生じ、光導波路2の伝送効率が低下するのを抑えつつ、光導波路2と支持部3との密着性をより高め、補強作用を増大させることができる。なお、基材繊維の繊維径が前記下限値を下回る場合、基材繊維の構成材料によっては補強作用が低下するおそれがある。一方、基材繊維の繊維径が前記上限値を上回る場合、支持部3の成形形状によっては成形加工性が低下したり、基材繊維の分散性が低下して機械的特性が不均一になるおそれがある。
支持部3における基材繊維の含有量は、支持部3に必要とされる機械的特性と支持部3の形状や成形性との兼ね合いに応じて適宜設定されるが、例えば1〜90質量%であるのが好ましく、3〜85質量%であるのがより好ましく、5〜80質量%であるのがさらに好ましく、10〜70質量%であるのが特に好ましい。支持部3における基材繊維の含有量が前記範囲内であれば、支持部3において十分な引張強さと高い成形性とを両立させることができる。すなわち、基材繊維の含有量が前記下限値を下回る場合、基材繊維の長さや径、構成材料によっては補強作用が不十分となるおそれがあり、一方、基材繊維の含有量が前記上限値を上回る場合、支持部3の成形形状によっては成形加工性が低下するおそれがある。
なお、基材繊維および光導波路2には、あらかじめ各種の表面処理を施しておいてもよい。この表面処理としては、例えば、紫外線照射処理、電子線照射処理、プラズマ照射処理、表面層形成処理等が挙げられる。このような表面処理を施しておくことにより、基材繊維と光導波路2との間、基材繊維と樹脂との間、および基材繊維同士の密着性、親和性をより高めることができる。
このうち、表面層の構成材料としては、例えば、シランカップリング剤、チアネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤のような各種カップリング剤、各種界面活性剤、各種油剤等が挙げられる。
また、基材繊維は、支持部3中においてランダムに配向しているのが好ましい。これにより、支持部3は機械的特性における等方性が特に高いものとなる。その結果、支持部3は、光配線部品1にあらゆる方向から加わる荷重から光導波路2を保護し得るものとなる。
なお、基材繊維がランダムに配向しているか否かは、例えば、支持部3に対し、レーザー回折法、X線回折法、電子線回折法といった回折法を用いた構造解析を行うことにより評価することができる。また、繊維配向計等の評価装置(例えば、横河電機製BM9FS1等)により配向状態を定量的に評価することができ、その場合、配向指数が0.2以下であればよい。
((樹脂))
樹脂は、特に限定されず、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であってもよい。支持部3において樹脂は、光導波路2との密着性をより高めるとともに、基材繊維同士を結着させ、支持部3による光導波路2の補強作用をより顕著なものとする。
具体的には、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂のような熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタンのような熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中から、必要特性に応じ、適宜選択して使用すればよく、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、これらのうち、機械的特性や耐薬品性等を重視する場合には、熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、成形性や支持部3の透明性等を重視する場合には、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
((その他の添加物))
支持部3は、その他の添加物を含んでいてもよい。添加物としては、例えば、イオン交換能を有する粉末状物質、熱伝導性繊維、電磁波遮蔽性繊維、無機粉末、金属粉、酸化防止剤や紫外線吸収剤のような安定剤、離型剤、可塑剤、難燃剤、樹脂の硬化触媒や硬化促進剤、顔料、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤のような紙力向上剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、サイズ定着剤、消泡剤、酸性抄紙用ロジン系サイズ剤、中性製紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニルコハク酸無水物系サイズ剤、特殊変性ロジン系サイズ剤のようなサイズ剤、硫酸バンド、塩化アルミ、ポリ塩化アルミのような凝結剤等が挙げられ、生産条件や要求される特性に応じて、1種または2種以上を用いることができる。
このうち、イオン交換能を有する粉末状物質を添加することにより、基材繊維がその繊維長が長い状態に維持したまま、支持部3を製造することができる。このため、基材繊維が前述したような補強作用を確実に発揮することができる。
イオン交換能を有する粉末状物質としては、例えば、粘土鉱物、鱗片状シリカ微粒子、ハイドロタルサイト類、フッ素テニオライトおよび膨潤性合成雲母から選ばれる少なくとも1種の層間化合物が挙げられる。
このうち、粘土鉱物としては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、スメクタイト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウム等が挙げられる。ハイドロタルサイト類としては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト状物質等が挙げられる。フッ素テニオライトとしては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、リチウム型フッ素テニオライト、ナトリウム型フッ素テニオライト等が挙げられる。膨潤性合成雲母としては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム型四珪素フッ素雲母、リチウム型四珪素フッ素雲母等が挙げられる。これらの層間化合物は、天然物でも合成されたものであってもよく、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうちでは、粘土鉱物がより好ましく、スメクタイトが天然物から合成物まで存在し、選択の幅が広いという点においてさらに好ましい。
スメクタイトとしては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト等が挙げられる。モンモリロナイトは、アルミニウムの含水ケイ酸塩であるが、モンモリロナイトを主成分とし、他に石英や雲母、長石、ゼオライト等の鉱物を含んでいるベントナイトであってもよい。着色や不純物を気にする用途に用いる場合などには、不純物が少ない合成スメクタイトが好ましい。
なお、イオン交換能を有する粉末状物質の市販品として、例えば、クニミネ工業(株)製のクニピア(ベントナイト)、スメクトンSA(合成サポナイト)、AGCエスアイテック(株)製のサンラブリー(鱗片状シリカ微粒子)、コープケミカル(株)製のソマシフ(膨潤性合成雲母)、ルーセンタイト(合成スメクタイト)、堺化学工業(株)製のハイドロタルサイトSTABIACE HT−1(ハイドロタルサイト)等が挙げられる。
イオン交換能を有する粉末状物質の含有量は、支持部3全体の0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上20質量%以下である。上記範囲内であれば、基材繊維と樹脂のように性質の異なる構成材料の定着性を向上させる効果を得ることができる。なお、構成材料中の基材繊維と樹脂との比率や、高分子凝集剤の種類や量等に応じてイオン交換能を有する粉末状物質の含有量を調整することが好ましい。
また、熱伝導性繊維としては、熱放散性を有する繊維であれば、特に限定されるものではないが、例えば、金属繊維、炭素繊維等が挙げられる。これらの中でも、熱放散効果の観点から、金属繊維やピッチ系の炭素繊維が好ましく用いられる。
金属繊維としては、単独の金属元素で構成される金属繊維であっても、複数の金属で構成される合金繊維であってもよいが、金属繊維を構成する金属元素としては、例えば、アルミニウム、銀、銅、鉄等が挙げられる。
なお、熱伝導性繊維の市販品としては、例えば、日本精線(株)やベカルトジャパン(株)製のステンレス繊維、虹技(株)製の銅繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維、鋼繊維、チタン繊維、りん青銅繊維等が挙げられる。これらの金属繊維は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、特に銅繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維が好ましい。
また、電磁波遮蔽性繊維としては、電磁波を遮蔽する作用効果を有する繊維であれば、特に限定されるものではないが、例えば、金属繊維、炭素繊維、金属被覆有機繊維、金属被覆炭素繊維等が挙げられる。これらの中でも、電磁波遮蔽効果とコストが安価であるという観点から、金属繊維が好ましく用いられる。
金属繊維としては、単独の金属元素で構成される金属繊維であっても、複数の金属で構成される合金繊維であってもよいが、金属繊維を構成する金属元素としては、例えば、鉄、銀、ニッケル、アルミニウム、銅等が挙げられる。
また、無機粉末としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化マグネシウムのような酸化物類、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素のような窒化物類、硫酸バリウム、硫酸鉄、硫酸銅のような硫化物類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムのような水酸化物類、カオリナイト、タルク、天然マイカ、合成マイカのような鉱物類、炭化ケイ素のような炭化物類等が挙げられる。また、これらの無機粉末をそのまま使用してもよいが、必要特性に応じて前述した各種表面処理を施したものを使用するようにしてもよい。
これらの添加物の含有量は、合計で支持部3全体の0.1質量%以上30質量%以下であるのが好ましく、2質量%以上20質量%以下であるのがより好ましい。
なお、支持部3は、図2に示すような単層であってもよいが、複数層であってもよい。その場合、各層に含まれる基材繊維や樹脂の種類、含有量、配合比等を互いに同じにしても、互いに異ならせるようにしてもよい。後者の場合、各層がそれぞれ異なる特性、機能を有するものとなり、光配線部品1の性能をより高度化することができる。例えば、複数層のうち、内側の層については、前述した支持部3と同様、補強作用に優れた構成とする一方、外側の層については熱伝導性に優れた構成とすることにより、光配線部品1の機械的特性を高めつつ、熱伝導性(放熱性)も高めることができる。その結果、例えば光配線部品1を用いて光電気混載部材を作製したとき、外側の層において電気素子からの熱を効率よく放熱することができる。
さらには、支持部3は、単層、複数層にかかわらず、各層内の一部に含まれる基材繊維や樹脂の種類、含有量、配合比等が、他部と異なっていてもよい。これにより、層内においてそれぞれ異なる特性、機能を併存させることができ、光配線部品1の性能をより高度化することができる。例えば、1層のうち、一部については、電磁波透過性を有するものとし、他部については、前述した支持部3と同様、補強作用を有するとともに電磁波遮蔽性を有するものとすることができる。
なお、このような支持部3を形成するには、まず、上記一部について後述するような方法で抄造することにより、成形体を得る。次いで、この成形体を光導波路2とともに、後述するような方法で抄造することにより、上記一部と他部とを備えた支持部3を形成することができる。
<光配線部品の他の形態>
次に、本発明の光配線部品の製造方法により製造される光配線部品の他の形態について説明する。
図3〜5は、本発明の光配線部品の製造方法により製造される光配線部品の他の形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図3〜5中の上側を「上」、下側を「下」という。
以下、前述した形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図3〜5において図2と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図3は、図2と同様、光導波路2の長手方向に直交する方向に沿って光配線部品1を切断したときの切断面を示す図である。図3に示す光配線部品1は、光導波路2のうち、両側面と下面とを連続して囲うように構成された支持部31を備えている。この支持部31は、前述した支持部3と同様の構成を有するものである。
一方、光導波路2のうち、上面を覆うように支持部32が設けられている。支持部32は、前述した支持部3と同様の構成を有するものであってもよく、その他の構成を有するものであってもよい。すなわち、支持部32は、例えば各種絶縁基板、電気配線基板等の基板であってもよい。このうち、絶縁基板の構成材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、各種ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられる。この他、絶縁基板としては、紙、ガラス布、樹脂フィルム等を基材とし、この基材に、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂材料を含浸させたもの、具体的には、ガラス布・エポキシ銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板等のコンポジット銅張積層板に使用される絶縁性基板の他、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板等の耐熱・熱可塑性の有機系リジッド基板や、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板等のセラミックス系リジッド基板等が挙げられる。
このような形態においても、前述した形態と同様の作用・効果が得られる。また、支持部31と支持部32の双方が前述した支持部3と同様の構成を有するものである場合、それぞれに含まれる基材繊維や樹脂の種類、含有量、配合比等を互いに異ならせるようにしてもよい。これにより、支持部31と支持部32がそれぞれ異なる特性、機能を有するものとなり、光配線部品1の性能をより高度化することができる。例えば、支持部31については前述した支持部3と同様、補強作用に優れた構成とする一方、支持部32については熱伝導性に優れた構成とすることにより、光配線部品1の機械的特性を高めつつ、熱伝導性(放熱性)も高めることができる。その結果、例えば光配線部品1を用いて光電気混載部材を作製したとき、支持部32によって電気素子からの熱を効率よく放熱することができる。
なお、支持部32が前述した支持部3と同様の構成を有するものである場合、支持部31はそれ以外の構成であってもよい。具体的には、支持部31の構成材料を、樹脂材料、金属材料、セラミックス材料等から幅広く選択することができる。
図4に示す光配線部品1は、光導波路2のうち、両側面と下面とを連続して囲うように構成された支持部31と、両側面と上面とを連続して囲うように構成された支持部32と、を備えている。これらの支持部31、32は、それぞれ前述した支持部3と同様の構成を有するものであってもよく、いずれか一方が前述したようなその他の構成を有していてもよい。
このような形態においても、前述した形態と同様の作用・効果が得られる。また、支持部31と支持部32の双方が光導波路2の少なくとも三方を囲うよう構成されているため、支持部31、32と光導波路2との密着性が特に向上し、補強作用をより増強することができる。また、支持部31、32に補強作用以外の機能を持たせた場合でも、補強作用が低下し難いという利点がある。
図5に示す光配線部品1は、光導波路2のうち、下面を覆うように構成された支持部31と、両側面を覆うように構成された支持部32と、上面を覆うように構成された支持部33と、を備えている。これらの支持部31、32、33は、それぞれ前述した支持部3と同様の構成を有するものであってもよく、いずれか2つが前述したようなその他の構成を有していてもよい。
このような形態においても、前述した形態と同様の作用・効果が得られる。また、支持部32を前述した支持部3と同様の構成を有するものとし、支持部31、33を前述したようなその他の構成を有するものとすることにより、支持部32は光導波路2を補強するとともに支持部31、32間を接着する機能を有するものとなり、一方、支持部31、33の構成材料を適宜選択することにより、光配線部品1にその他の特性、機能をバランスよく付与することができる。すなわち、本形態は、光配線部品1の多機能化を容易かつ確実に図り得るものである。
<光配線部品の製造方法>
次に、本発明の光配線部品の製造方法について説明する。
≪第1実施形態≫
まず、第1実施形態について説明する。
図6〜8は、それぞれ本発明の光配線部品の製造方法の第1実施形態を説明するための図である。なお、以下の説明では、図6〜8中の上側を「上」、下側を「下」という。
光配線部品1の製造方法は、[1]基材繊維と樹脂とその他の添加物とを分散媒に分散してなるスラリー組成物30を容器9内に貯留する工程と、[2]貯留したスラリー組成物30に接するように光導波路2を配置する工程と、[3]スラリー組成物30中の分散媒の少なくとも一部を容器9外へ排出する工程と、[4]容器9内に残存した残存物を乾燥させる工程と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、基材繊維、樹脂、その他の添加物といった原材料を分散媒に分散させる。これにより、スラリー組成物30を調製する。原材料を分散媒に分散させる方法としては、特に限定されないが、例えばディスパーザーやホモジナイザー等で撹拌する方法が挙げられる。
分散媒としては、特に限定されないが、工程中に揮発し難いこと、脱分散媒を行い易いこと、沸点が高すぎると脱分散媒を行うのに多くのエネルギーを消費すること等の観点から、沸点が50℃以上200℃以下であるものが好ましく用いられる。具体的には、例えば、水や、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸メチルのようなエステル類、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、ジオキサン、フルフラールのようなエーテル類等が挙げられる。これらの分散媒は、1種を単独で用いても、2種以上が併用されてもよい。また、これらの中でも、入手が容易で、かつ安価であり、さらに環境負荷が低く、安全性が高く扱い易いという理由から水が特に好ましく用いられる。
また、スラリー組成物30には、必要に応じて高分子凝集剤を添加するようにしてもよい。高分子凝集剤を添加することにより、原材料をフロック状に凝集させることができるので、原材料の配合比、例えば基材繊維と樹脂との配合比を従来よりも広範囲に設定することができるようになる。これにより、光配線部品1に求められる特性、例えば支持部3の機械的特性、支持部3の成形性、光配線部品1の軽量化、支持部3の熱伝導性、支持部3の電磁波シールド性といった各種特性を比較的自由に選択できるようになり、より性能の高い光配線部品1を得ることができる。
高分子凝集剤としては、例えば、カチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤等が挙げられる。具体的には、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、ホフマンポリアクリルアミド、マンニックポリアクリルアミド、両性共重合ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、両性澱粉、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。これらの高分子凝集剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、高分子凝集剤として、ポリマー構造や分子量、水酸基やイオン性基といった官能基量等は、必要特性に応じて特に制限なく使用可能である。
高分子凝集剤として、例えば、和光純薬工業(株)製や関東化学工業(株)製、住友精化(株)製のポリエチレンオキシドや、ハリマ化成(株)製のカチオン性PAMであるハリフィックス、アニオン性PAMであるハーマイドB−15、両性PAMであるハーマイドRB−300、三和澱粉工業(株)製カチオン化澱粉であるSC−5等が市販品として入手可能であるが、これらに限定されるものではない。
高分子凝集剤の添加量として、特に限定はされないが、構成材料の重量に対して100質量ppm以上1質量%以下が好ましい。さらに好ましくは、500質量ppm以上0.5質量%である。これにより、収得よく原材料を凝集させることができる。なお、高分子凝集剤の添加量が上記下限値よりも小さいと収得が低下する可能性があり、上記上限値よりも大きいと凝集が強すぎて脱水等に問題が生じる可能性がある。
また、樹脂としてはいかなる形態のものでもよいが、固体状態にあるものやエマルジョン状になったものが好ましく用いられるが、平均粒径500μm以下の粒子状のものがより好ましく用いられ、平均粒径1nm〜300μm程度の粒子状のものがさらに好ましく用いられる。これにより、分散媒への分散性を十分に確保するとともに、スラリー組成物30に対して脱分散媒を行う際、分散媒とともに樹脂が排出されてしまうのを防止することができる。また、スラリー組成物30に高分子凝集剤を添加した場合、イオン交換能を有する粉末状物質存在下では、樹脂と基材繊維が凝集状態を形成し易くなり、収率が向上する。なお、平均粒径が上記上限値より大きいと、高分子凝集剤を添加しても凝集状態を形成し難くなり、収率が低下するおそれがある。なお、樹脂の平均粒径は、例えば、(株)島津製作所製SALD−7000等のレーザー回折式粒度分布測定装置を用い、質量基準の50%粒子径として求めることができる。
このようにして調製したスラリー組成物30を、容器9内に貯留する。容器9は、スラリー組成物30を貯留し得るものであれば、特に限定されないが、後述する分散媒の排出プロセスを効率よく行い得るという観点から、各種抄造機用の容器が好ましく用いられる。具体的には、丸網抄造機、円網抄造機、長網抄造機といった湿式抄造機用の容器が挙げられる。
図6は、抄造機の一例を模式的に示す図である。図6に示す抄造機は、スラリー組成物30を貯留する容器9を備えており、その底部は網状体91で構成されている。網状体91には、スラリー組成物30中の分散媒を選択的に通し、基材繊維や樹脂等の分散質を通さない程度の大きさの孔が多数開いており、これによりスラリー組成物30中から分散質が濾し取られることとなる。このような網状体91としては、例えば、金属製あるいは樹脂製の網、パンチングシート、織布、不織布等が挙げられる。
また、網の形状は、用途に応じ、自由に変形されたものでもよい。具体例として、板状で平坦なもの、凹凸形状のもの等が挙げられる。
[2]次に、図6(a)に示すように、容器9内に貯留したスラリー組成物30中に光導波路2を浸漬させる。これにより、光導波路2の側面および上下面がスラリー組成物30で覆われることとなる(第1の工程)。
なお、本実施形態では、まず、容器9内にスラリー組成物30を貯留した後、光導波路2を浸漬する場合について説明したが、この順序は特に限定されず、例えば、容器9内に光導波路2を置いた後、その容器9内にスラリー組成物30を供給するようにしてもよい。
また、一部のスラリー組成物30に代えて、各種基板を配置することにより、一部がこの基板で構成された支持部3を得ることもできる。この方法によれば、図3〜5に示す光配線部品1についても効率よく製造することができる。
[3]次に、容器9内に貯留したスラリー組成物30中の分散媒の少なくとも一部を容器9外へ排出する。これにより、主に分散質で構成された残存物が容器9内に残ることとなる(第2の工程)。なお、このようにしてスラリー組成物30中から分散質を選択的に取り出す方法は、抄造法と呼ばれる。抄造法によれば、基材繊維のように比較的大きく、形状異方性も大きな分散質が含まれたスラリー組成物30であっても、分散質が均一に分散した状態で分散質を選択的に取り出すことができる。このため、基材繊維が均一に分散した機械的特性に優れた支持部3を効率よく製造することができる。また、抄造法によれば、基材繊維を特にランダムに配向させることができるので、支持部3の機械的特性の等方性を特に高めることができる。
図6(b)の場合、容器9の底部に設けられた網状体91を介してスラリー組成物30中の分散媒を選択的に排出する。その結果、容器9内には、主に分散質で構成された残存物3’とそれに覆われた光導波路2とが残ることとなる。この際、網状体91より下方の空間を減圧したり、容器9内を加圧する等して、網状体91を挟んだ領域間に圧力差を形成するようにすれば、分散媒の排出を効率よく行うことができる。
なお、これらの工程は、抄造法で行うのが好ましいが、それ以外の方法、例えばキャスト装置、コーター装置、スクリーン印刷機等の装置でスラリー組成物30を供給後、遠心分離等の固液分離方法で脱分散媒を行うといった方法で代替することも可能である。
[4]次に、残った残存物3’を容器9から取り出す。そして、残存物3’を乾燥させることにより、光配線部品1が得られる(第3の工程)。
残存物3’の乾燥方法は、特に限定されず、自然乾燥であってもよいが、加熱、赤外線照射、減圧、風乾といった強制乾燥を用いるようにしてもよい。なお、この乾燥は、容器9内において行うようにしてもよい。
また、必要に応じて、得られた乾燥体に対し、成形加工を行うようにしてもよい。具体的にはプレス機によって乾燥体に成形型を押圧することにより、乾燥体を所望の形状に成形することができる。その結果、所望の形状をなす光配線部品1を得ることができる。
なお、成形加工の際、残存物3’を加熱し、それによって乾燥処理を兼ねるようにしてもよい。
乾燥処理における加熱温度、および、成形加工における加熱温度は、それぞれ樹脂の物性に応じて適宜調整される。例えば、樹脂の溶融温度以上で加熱することにより、残存物3’中の樹脂が溶融し、その後、固化(硬化)するので、それに伴って基材繊維同士の結着や基材繊維と光導波路2との結着をより確実に図ることができる。なお、樹脂の溶融温度とは、ガラス転移温度または融点のことを指す。一例を挙げると、加熱温度は、140〜350℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。
また、上述したようなプレス機による成形加工の他に、例えば、コンプレッション成形、カレンダーロール成形、SMC法、射出成形、マッチドダイ法、金属や樹脂、織布、不織布、金属箔、金属ペースト等との積層成形といった各種成形方法により、乾燥体に成形加工を施すようにしてもよい。
以上、光配線部品1の製造方法について説明したが、スラリー組成物30を貯留する容器9の形態は、図6に示すものに限定されない。図7に示す容器9’は、底部が網状体91で構成されているのに加え、天井部が網状体92で構成されている以外、図6に示す容器9と同様である。
容器9’に設けられた網状体92は、図7の上下に自在に移動し得るよう構成されている。このため、網状体91上にスラリー組成物30を貯留するとともに光導波路2を配置した後、網状体92を降下させることにより、網状体91と網状体92との間にこれらを挟み込み、さらにスラリー組成物30中から分散媒を強制的に絞り出すことができる。その結果、分散媒の排出をより効率よく行うことができる。
また、網状体92を設けることにより、残存物の上面が網状体92で成形されることとなる。このため、図6に示す容器9で製造されるものに比べて上面の平坦性、平滑性に優れた光配線部品1が得られる点で、容器9’は有用である。
さらに、図7に示す容器9’では、光導波路2の上方に位置していて網状体91からは分散媒の排出が難しいスラリー組成物30についても、網状体92から効率よく排出することができる。これにより、排出速度の均一化を図ることができるので、最終的に基材繊維の濃度が均一な支持部3を得ることができる。
また、図8は、網状体91、92の面方向がそれぞれ鉛直方向と略平行になるように容器9’を配置した状態で各工程を行う様子を示す図である。
図8では、網状体91、92が上記のように配置されているため、光導波路2の左右の両側に位置するスラリー組成物30から、網状体91、92を介して分散媒を均等に排出することができる。これにより、スラリー組成物30全体の排出速度をより均一化することができ、最終的に得られる支持部3において基材繊維の濃度をより均一化することができる。その結果、機械的特性が特に優れた光配線部品1が得られる。
≪第2実施形態≫
まず、第2実施形態について説明する。
図9は、本発明の光配線部品の製造方法の第2実施形態を説明するための図である。なお、以下の説明では、図9中の上側を「上」、下側を「下」という。
以下、第2実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図9において第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態では、まず、第1実施形態の工程[1]〜[3]と同様の工程を行うことにより、図9(a)に示す残存物31’を得る。その際、工程[2]において光導波路2をスラリー組成物30上に浮かべるように配置することで、スラリー組成物30は光導波路2の下面と両側面との接することとなり、スラリー組成物30中の光導波路2の位置を正確に規定することができる。
次いで、図9(a)に示すように、容器9内にスラリー組成物30を追加する。これにより、光導波路2をスラリー組成物30で確実に覆うことができる。
次いで、図9(b)に示すように、網状体91、92を介してスラリー組成物30中の分散媒を選択的に排出する。その後、乾燥工程を経て、最終的には図3に示す光配線部品1が得られる。
なお、スラリー組成物30を追加するのに代えて、光導波路2を覆うように任意の構造物を載置するようにしてもよい。
≪第3実施形態≫
まず、第3実施形態について説明する。
図10は、本発明の光配線部品の製造方法の第3実施形態を説明するための図である。なお、以下の説明では、図10中の上側を「上」、下側を「下」という。
以下、第3実施形態について説明するが、第1、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図10において第1、第2実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態では、まず、第1実施形態の工程[1]〜[3]と同様の工程を行うことにより、残存物3’を得る。その後、残存物3’を容器9から取り出す。
次いで、残存物3’を形成した容器9よりも一回り大きい容器9”を用意し、その中にスラリー組成物30を貯留する。このとき用いるスラリー組成物30は、残存物3’を得るのに用いるスラリー組成物30とは分散質が同じものであっても、異なるものであってもよい。
次いで、図10(a)に示すように、容器9”内に貯留したスラリー組成物30中に残存物3’を浸漬させる。これにより、残存物3’の側面および上下面がスラリー組成物30で覆われることとなる。
次いで、図10(b)に示すように、容器9”内に貯留したスラリー組成物30中の分散媒の少なくとも一部を容器9”外へ排出する。これにより、主に分散質で構成された残存物が容器9”内に残ることとなる。すなわち、抄造体を再び抄造に供する。このようにして多層構造の支持部3を形成することができる。
<電子機器>
上述したような光配線部品は、機械的特性に優れたものであるため、例えば繰り返し湾曲させたり、他の部材に強く押し付けたり、あるいは捻ったりしても、優れた耐久性を有するものとなる。このため、信頼性の高い光モジュールや電子機器を得ることができる。また、このような光配線部品は湾曲させた状態でも高品質の光通信を行い得るので、電子機器の省スペース化、小型化を図ることができる。
上述したような光配線部品を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が上述したような光配線部品を備えることにより、通信の信頼性を確保しつつ、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
また、光配線部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
以上、本発明を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前記各実施形態は、任意の工程が追加されたものであってもよい。
また、本発明により製造される光配線部品は、その一部が基材繊維を含む支持部に接していればよいので、例えば光配線の長手方向の一部に支持部が接しており、他部には支持部が接していないものであってもよい。
また、図1では、光導波路の端面が露出するように支持部が構成されているが、支持部は、光導波路の端面も含めて全面を覆うように設けられていてもよい。この場合、必要に応じて、光導波路の端面が露出するように支持部を切断加工して使用することができる。これにより、支持部は、補強作用のみでなく、光導波路の端面を汚れや傷等から保護する保護作用も備えたものとなる。
また、容器に光導波路を配置する際、光導波路の端面にスラリー組成物が付着しないよう、端面にキャップをしたり、端面を容器の内壁面に密着させるようにしてもよい。
さらに、支持部には任意の構成物が内包されるようにまたは一部が含まれるように設けられていてもよい。例えば光コネクターの一部が支持部に埋め込まれるように配置されることにより、接着剤等を用いることなく、光導波路に対して光コネクターを装着することができる。