JP6354138B2 - 繊維強化複合材料およびこれを用いた筐体 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維強化複合材料および筐体に関する。
プラスチック繊維、炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維と樹脂マトリックスからなる繊維強化複合材料は、強度、剛性に優れているため、電気・電子用途、土木・建築用途、自動車用途、航空機用途等に広く用いられている。なかでも強化繊維が均一に分散した基材を用いた複合材料は、力学特性が等方的になり、さらには高強度を発現する材料であれば適用可能な用途は非常に多くなる。
強化繊維を均一かつ等方的に分散し、繊維強化複合材料を作製する方法として、抄造法が検討されている。例えば特許文献1には、フェノール樹脂粉末と強化繊維としてガラス繊維とアラミド繊維を水中に分散し抄造したウェブ状の成形材料を、成形金型にて加熱加圧成形(圧縮成形)して繊維強化のフェノール樹脂成形品を作製している。また、特許文献2には、ガラス繊維とビニロン繊維をフェノール樹脂の微粒子と共に水中に分散させ、これらを抄造し乾燥してシート状の成形材料を得た後に、金型内で加熱加圧成形して板状成形品を作製することが記載されており、抄造する強化繊維及び分散混抄する樹脂を選定することで、機械的特性を中心とした成形品特性の改良検討が行われている。
抄造法により作製した複合シートについて、特許文献3には、天然パルプと熱接着性を有し適度な繊維伸度を有する熱可塑性繊維を含むプレス成形用紙が記載されており、特許文献4には、熱可塑性繊維を主成分とする紙層とセルロースパルプを主成分とする紙層の積層構造による熱成形用の板紙が記載されているが、抄造した複合シートの成形性は良いものの、成形体の機械強度については高強度と言えるものではなく、適用可能な用途が電気・電子部品の包装容器、その他の工業用部品の包装容器、各種食品の包装容器や、トレイ、使い捨て食器(弁当箱、折り箱など)、車輌内装材、包装用緩衝材などに限定されるものであった。
特開平10−95024号公報 特開平10−166361号公報 特開平10−8393号公報 特開2000−265400公報
本発明の目的は、外観の良好な機械的特性に優れた繊維強化複合材料を提供することにある。
このような目的は、下記[1]〜[9]の本発明により達成される。
[1]繊維フィラーと樹脂とを含む材料組成物により構成され、抄造法により得られる繊維強化複合材料であって、マイクロドロップレット試験による、繊維フィラーと樹脂との界面接着強度が15MPa以上である繊維強化複合材料
[2]前記繊維フィラーの平均繊維長さが500μm以上10mm以下である[1]に記載の繊維強化複合材料。
[3]前記繊維フィラーの含有量が、前記材料組成物全体の1質量%以上90質量%以下である[1]または[2]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
[4]前記繊維フィラーがアラミド繊維である[1]ないし[3]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
[5]前記繊維フィラーが、シランカップリング剤により処理されている[1]ないし[4]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
[6]前記材料組成物は、イオン交換能を有する粉末状物質をさらに含む[1]ないし[5]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
[7]前記材料組成物は、無機粉末及び金属粉末から成る群より選択される少なくとも一種のフィラー粉末をさらに含む[1]ないし[6]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
[8]前記樹脂が熱硬化性樹脂である[1]ないし[7]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
[9][1]ないし[8]の繊維強化複合材料を用いた、電子機器を収容する筐体。
本発明によれば、外観が良好で機械的特性に優れた繊維強化複合材料が得られる。特に、軽くて高強度な3次元成形体が得られるので、携帯性を有する電子機器の筐体の様な構造体に好適に利用することができる。
まず、本発明の繊維強化複合材料について詳細に説明する。本発明の繊維強化複合材料には繊維フィラーを用いる。繊維フィラーは、繊維強化複合材料に求められる特性によりその種類は異なるが、たとえば、金属繊維、木材繊維、木綿、麻、羊毛などの天然繊維、レーヨン繊維などの再生繊維、セルロース繊維などの半合成繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、エチレンビニルアルコール繊維などの合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの無機繊維などが挙げられる。これらの繊維は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。強度の高い繊維強化複合材料を製造する場合には、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維のいずれかを含有することが好ましい。金属繊維としては、単独の金属元素で構成される金属繊維であっても、複数の金属で構成される合金繊維であってもよいが、金属繊維を構成する金属元素は、例えば、アルミニウム、銀、銅、マグネシウム、鉄、クロム、ニッケル、チタン、亜鉛、錫、モリブデン及びタングステンからなる群から選択される1種以上の金属であることが好ましい。金属繊維以外の繊維として、例えば、東レ・デュポン(株)製のアラミド繊維であるケブラー(登録商標)や、帝人テクノプロダクツ社(株)のアラミド繊維であるテクノーラ(登録商標)、(株)クラレ製のポリビニルアルコール繊維であるビニロン、東洋紡績(株)製のポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維であるザイロン(登録商標)、日東紡績(株)製のガラス繊維、電気化学工業(株)製のアルミナ繊維であるデンカアルセンなどが市販品として入手可能であるが、これらに限定されるものではない。
繊維フィラーの形状としては、特に制限無く使用可能であり、必要特性に応じた形状のものを用いることができる。曲げ強度や、耐衝撃性などの強度特性を向上させる場合には、チョップドストランドで使用することが望ましい。また、歩留まりの向上効果を得るためには、繊維をビーターや、ホモジナイザーなどの機械的なせん断力により叩解したものや、フィブリル化したものが好ましい。このような繊維は、繊維表面積が大きく、物理的に樹脂の捕捉能力が高く、また、化学的に高分子凝集剤と作用しやすくなるため好ましい。
また、本実施形態に係る繊維フィラーの含有量は、1質量%以上90質量%以下であることが好ましく、特に求められる要求に応じて使い分けることが好ましい。例えば、樹脂の加工性や軽量性が要求された場合は、繊維強化複合材料全体の含有量の1質量%以上30質量%未満にすることが好ましく、繊維フィラーと樹脂の性質をバランスよく発現することが要求された場合は、繊維強化複合材料全体の含有量の30質量%以上60質量%未満にすることが好ましく、熱伝導性や剛性など繊維フィラーの性質が要求された場合には、繊維強化複合材料全体の含有量の30質量%以上90質量%以下にすることが望ましい。繊維フィラーの含有量を、繊維強化複合材料全体の含有量の1質量%以上とすることで、繊維フィラーの性能を発現させることができる。一方で、繊維フィラーの含有量を、繊維強化複合材料全体の含有量の90質量%以下とすることで、軽量性、加工性の悪化を防止できる。
また、本実施形態に係る繊維フィラーの平均繊維長さは、特に限定されないが、要求される特性に応じて使い分けることが望ましく、例えば、500μm以上10mm以下であることが好ましい。平均繊維長さを500μm以上とすることで、繊維フィラーによる特性を発現させることができる。
一方で、平均繊維長さを500μm以上10mm以下とすることで、成形加工性を確保することができる。なお、成形加工性とは、繊維強化複合材料の表面平滑性および脱型性のことをいう。
なかでも、繊維フィラーによる特性を発揮させるとともに、成形加工性を確保する観点から、繊維フィラーの平均繊維長さは、1mm以上、さらには3mm以上、8mm以下であることが好ましい。
また、繊維フィラーの平均径は、1μm以上100μm以下であることが好ましく、特に5μm以上80μm以下であることが好ましい。1μm以上とすることで、繊維強化複合材料の剛性を確保することができ、100μm以下とすることで、成形加工性を確保することができる。
繊維の長さおよび径は、例えば、得られた繊維強化複合材料を電子顕微鏡で観察することにより、確認することができる。
本発明の繊維強化複合材料には、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いることができる。このような樹脂としては、特に限定されるものではなく、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂が挙げられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、又はこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。樹脂は湿式抄造により繊維等と複合化することから、常温で粒子状又は繊維状であり、水に不溶であるものが好ましい。これらのなかでも熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリフェニレンスルフィドから選ばれる少なくとも一種の樹脂が、成形体の耐熱性を高めることができる点で、更に高融点であるため好ましい。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂が、成形体の耐熱性を高めることができる点で特に好ましい。これらのうち、機械強度や耐薬品性が良好であるという観点では、熱硬化性樹脂が好ましく、成形性が良好であることや、樹脂の透明性などのデザイン性が必要であるという観点では、熱可塑性樹脂が好ましい。
樹脂の配合量としては、繊維強化複合材料全体に対して、好ましくは10〜80質量%、さらに好ましくは20〜70質量%、特に好ましくは30〜60質量%である。これにより、繊維強化複合材料を加熱加圧成形した場合に、外観が良好で且つ樹脂偏在の少ない成形体を作製することができる。
また、本実施形態に係る繊維強化複合材料は、マイクロドロップレット試験による、繊維フィラーと樹脂との界面接着強度が15MPa以上である繊維強化複合材料である。界面接着強度が15MPa以上であると、繊維フィラーと樹脂との親和性・接着性が良好で、機械的強度が高い繊維強化複合材料を得ることができる。界面接着強度は15MPa以上であることがより好ましく、20MPa以上であることが更に好ましい。界面接着強度の値は大きいほど好ましいが、その上限値は40MPa程度である。
マイクロドロップレット法による界面接着強度の測定に際しては、一定長さの繊維フィラーの両端を水平方向に移動可能なホルダに固着した後、該繊維フィラーに溶融状態の上記のマトリックス樹脂を接近させて、該マトリックス樹脂を繊維フィラーに付着させてマイクロドロップレットを形成させる。該マイクロドロップレットを固化もしくは硬化させてから、前記繊維フィラーの該マイクロドロップレットの移動方向前側に該繊維の移動を許容し該マイクロドロップレットの移動を阻止するブレードを配設し、該ブレード及び前記ホルダの一方を固定して他方を移動させ、前記ブレードにより前記マイクロドロップレットを該繊維フィラーから剥離させ、この移動中に作用する荷重を測定する。複数回測定し、これらの値を測定前の該マイクロドロップレットと繊維フィラーとの接触面積で除した値から、ブレードと該マイクロドロップレット端の距離がゼロとなる推定値を界面接着強度とする。
繊維フィラーと樹脂との界面接着強度は、繊維フィラーの種類、繊維フィラーの表面処理方法、表面処理剤、樹脂の種類や分子量、付着量等を調整することにより上記範囲とすることができる。たとえば、繊維フィラーを表面処理剤によってカップリング処理してから用いることや、繊維フィラーを樹脂で付着処理してから用いることで、界面接着強度を発現することができる。
繊維フィラーの表面処理としては、表面処理剤によるカップリング処理があげられる。表面処理剤としては、繊維フィラーに付与したときに界面接着強度が上記範囲内となる表面処理剤であれば特に制限されず、公知のものを使用することができる。具体的にはエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することができる。
繊維フィラーを用いる際に、さらにイオン交換能を有する粉末状物質を含んでもよい。このようなイオン交換能を有する粉末物質を用いることにより、繊維フィラーの繊維長を長く維持したまま高い収率で、繊維フィラーと樹脂との凝集体を効率よく作製することができるため、繊維状フィラーと樹脂との配合比率を広範囲に調整することが可能となる。このため、求められる要求に応じて、繊維フィラーの特性と、樹脂の特性とのバランスに優れた幅広い繊維強化複合材料を、より効率的に得ることができる。
イオン交換能を有する粉末状物質としては、粘土鉱物、鱗片状シリカ微粒子、ハイドロタルサイト類、フッ素テニオライト及び膨潤性合成雲母から選ばれる少なくとも1種の層間化合物を含むことが好ましい。
粘土鉱物としては、天然物でも合成されたものであっても特に限定されるものではないが、例えば、スメクタイト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム及び燐酸チタニウムなどが挙げられる。ハイドロタルサイト類としては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト状物質などが挙げられる。フッ素テニオライトとしては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、リチウム型フッ素テニオライト、ナトリウム型フッ素テニオライトなどが挙げられる。膨潤性合成雲母としては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム型四珪素フッ素雲母、リチウム型四珪素フッ素などが挙げられ、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらのうちでは、粘土鉱物がより好ましく、スメクタイトが天然物から合成物まで存在し、選択の幅が広いという点においてさらに好ましい。
スメクタイトとしては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト及びスチーブンサイトなどが挙げられる。モンモリロナイトは、アルミニウムの含水ケイ酸塩であるが、モンモリロナイトを主成分とし、他に石英や雲母、長石、ゼオライトなどの鉱物を含んでいるベントナイトであってもよい。着色や不純物を気にする用途に用いる場合などには、不純物が少ない合成スメクタイトが好ましい。
イオン交換能を有する粉末状物質として、例えば、クニミネ工業(株)製のクニピア(ベントナイト)、スメクトンSA(合成サポナイト)、AGCエスアイテック(株)製のサンラブリー(鱗片状シリカ微粒子)、コープケミカル(株)製のソマシフ(膨潤性合成雲母)、ルーセンタイト(合成スメクタイト)、堺化学工業(株)製のハイドロタルサイトSTABIACE HT−1(ハイドロタルサイト)などが市販品として入手可能であるが、これらに限定されるものではない。
イオン交換能を有する粉末状物質の含有量は、繊維強化複合材料全体の0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは、2質量%以上20質量%以下である。上記範囲内であれば、繊維フィラーと樹脂のように性質の異なる構成材料の作業性を向上させる効果を得ることができる。尚、繊維フィラーと樹脂との比率や、高分子凝集剤の種類や量などに合せて、イオン交換能を有する粉末状物質の含有量を調整することが好ましい。
繊維強化複合材料は、高分子凝集剤を含むことが好ましい。高分子凝集剤は、詳しくは後述するが、繊維フィラーおよび樹脂をフロック状に凝集させるためのものである。高分子凝集剤は、特にイオン性などにより限定されるものではなく、カチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤などを用いることができる。このようなものとして、例えば、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、ホフマンポリアクリルアミド、マンニックポリアクリルアミド、両性共重合ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、両性澱粉、ポリエチレンオキサイドなどを挙げることができる。これらの高分子凝集剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、高分子凝集剤として、ポリマー構造や分子量、水酸基やイオン性基などの官能基量などは、必要特性に応じて特に制限無く使用可能である。また、高分子凝集剤としては、例えば、和光純薬工業(株)製や関東化学工業(株)製、住友精化(株)製のポリエチレンオキシドや、ハリマ化成(株)製のカチオン性PAMであるハリフィックス、アニオン性PAMであるハーマイドB−15、両性PAMであるハーマイドRB−300、三和澱粉工業(株)製カチオン化澱粉であるSC−5などが市販品として入手可能であるが、これらに限定されるものではない。
また、高分子凝集剤の添加量としては、特に限定はされないが、繊維強化複合材料の重量に対して100質量ppm以上1質量%以下が好ましい。更に好ましくは、500質量ppm以上0.5質量%である。これにより、収得よく構成材料が凝集させることができる。高分子凝集剤の添加量が上記下限値よりも小さいと収得が低下する可能性があり、上記上限値よりも大きいと凝集が強すぎて脱水などに問題が生じる可能性がある。
本発明の繊維強化複合材料は、構成材料として、さらに無機粉末及び金属粉末から選ばれる少なくとも一種のフィラー粉末を含むことにより、特性を調整することができる。無機粉末としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化マグネシウムなどの酸化物類や、窒化ホウ素、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素などの窒化物類や、硫酸バリウム、硫酸鉄、硫酸銅などの硫化物類や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物類や、カオリナイト、タルク、天然マイカ、合成マイカなどの鉱物類ならびに、炭化ケイ素などの炭化物類などが挙げられ、そのまま使用してもよいが、必要特性に応じてシランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤などで表面処理をしたものを使用してもよい。また、金属粉末としては、単独の金属元素で構成される金属粉末であっても、複数の金属で構成される合金粉末であってもよいが、金属粉末を構成する金属元素としては、アルミニウム、銀、銅、マグネシウム、鉄、クロム、ニッケル、チタン、亜鉛、錫、モリブデン及びタングステンなどが挙げられる。
前記繊維強化複合材料には、上述の繊維フィラー、樹脂、イオン交換能を有する粉末状物質、無機粉末及び金属粉末から選ばれる少なくとも一種のフィラー粉末、ならびに、高分子凝集剤以外に、特性向上を目的とした酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、離型剤、可塑剤、難燃剤、樹脂の硬化触媒や硬化促進剤、顔料、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤などの紙力向上剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、サイズ定着剤、消泡剤、酸性抄紙用ロジン系サイズ剤、中性製紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニルコハク酸無水物系サイズ剤、特殊変性ロジン系サイズ剤などのサイズ剤、硫酸バンド、塩化アルミ、ポリ塩化アルミなどの凝結剤などを、生産条件調整や、要求される物性を発現させることを目的に様々な添加剤を使用することができる。
また、本実施形態に係る繊維強化複合材料は、抄造法により得られたものである。ここで、抄造法とは、製紙化技術の1つである紙抄きの技術のことを示している。本実施形態によれば、かかる技術を用いて得られた繊維フィラーと樹脂を含む材料組成物を用いている。こうすることにより、高強度な繊維強化複合材料を得ることができる。この理由は必ずしも明らかではないが、繊維フィラー同士の絡み合いを作ることができるためであると考えられる。
本実施形態に係る繊維強化複合材料は、抄造法によって製造されるが、製造方法としては以下の例が挙げられる。上述した繊維強化複合材料の構成材料のうち、高分子凝集剤を除いた材料を溶媒に添加し、撹拌して、分散させる。前記材料を溶媒に分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ディスパーザーやホモジナイザーなどで撹拌する方法などが挙げられる。
前記溶媒は、特に限定されないが、繊維強化複合材料の構成材料を分散させる過程において、揮発しにくいことと、繊維強化複合材料に残存させないために、脱溶媒をしやすいということ、沸点が高すぎると脱溶媒するために、エネルギーが大きく掛かることなどの観点から、沸点が50℃以上200℃以下であるものが好ましく、このようなものとしては、例えば、水や、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコールなどのアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類や、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類や、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、ジオキサン、フルフラールなどのエーテル類などを挙げることができる。これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、供給量が豊富であり、安価、環境負荷が低い、安全性も高く扱いやすいという理由から水が特に好ましい。
その後、高分子凝集剤を添加する。繊維強化複合材料がイオン交換能を有する粉末状物質を有する場合においては、このイオン交換能を有する粉末状物質により、樹脂と繊維フィラーが凝集状態を形成しやすく、溶媒中の構成材料がフロック状に、よりいっそう凝集しやすくなる。
その後、底面がメッシュで構成された容器に、前記溶媒および凝集した構成材料(凝集物)を入れて、メッシュから溶媒を排出する。これにより、凝集物と、溶媒とが分離されることとなる(抄造工程)。次に、容器からシート状の凝集物を取り出して、この凝集物を乾燥炉に入れて、乾燥させて溶媒をさらに除去する。その後凝集物を成形する。これにより、繊維強化複合材料が得られる。成形方法としては、例えば、プレス成形、コンプレッション成形、カレンダーロール成形、SMC法、射出成形、マッチドダイ法、樹脂、織布、不織布などとの積層成形などの成形方法が挙げられる。
本発明の繊維強化複合材料は、電気・電子用途、土木・建築用途、自動車用途、航空機用途等に広く用いうことができる。具体的には、たとえば、電子機器等の筐体、住宅および家具用の建材、車両および航空機等における各種部材に用いることができる。本発明の繊維強化複合材料は、用途に応じて適当な特性を付与し、かつ、自由な形状に成形することが容易である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例及び比較例に記載されている「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
・ 実施例1
(1−1)シランカップリング処理
2000mLのポリプロピレン製容器に、水1188質量部、アニリドシラン(信越シリコーン製、KBM-903)12質量部を入れ、繊維長3mm、繊維径12μmのアラミド繊維(帝人製 品番T32PNW)59.85質量部を添加し、スリーワンモーターで60分間撹拌した。繊維を濾過し、60℃の乾燥器で30分乾燥させることにより、アラミド繊維のシランカップリング処理を行った。
(1−2)繊維強化複合材料の作成
平均30μmのフェノール樹脂(住友ベークライト社製 品番R-25)53質量部と、上記1−1で得られたアラミド繊維48質量部と、繊維長1.21mm、繊維径12μmのアラミドパルプ(東レデュポン製 品番Para-Aramid Pulp)19質量部を水40,000質量部に添加し、ディスパーザーで20分間撹拌した。次に、あらかじめ水に溶解させた凝集剤(ポリエチレンオキシド 分子量1,000,000)を構成材料に対して0.08%添加して、フロック状に凝集させた。これを40メッシュの金属網でろ過し、凝集物を30kg/cmの圧力で脱水プレスしたのち、50℃で3時間乾燥させ、10cm×10cm×5mmのシート状組成物を得た。このシート状組成物を300kg/cmの圧力および200℃の温度で10分間硬化させ、10cm×10cm×1mmの繊維強化複合材料を得た。
(2)実施例2
(2−1)シランカップリング処理
2000mLのポリプロピレン製容器に、水1188質量部、アニリドシラン(信越シリコーン製、KBM-903)12質量部を入れ、繊維径10μm、長さ3mmのPBO繊維フィラー(東洋紡社製 品番ザイロン)59.85質量部を添加し、スリーワンモーターで60分間撹拌した。繊維を濾過し、60℃の乾燥器で30分乾燥させることにより、PBO繊維のシランカップリング処理を行った。
(2−2)繊維強化複合材料の作成
平均30μmのフェノール樹脂(住友ベークライト社製 品番R-25)53質量部と、上記2−1で得られたPBO繊維48質量部と、繊維長1.21mm、繊維径12μmのアラミドパルプ(東レデュポン製 品番Para-Aramid Pulp)19質量部を水40,000質量部に添加し、ディスパーザーで20分間撹拌した。次に、あらかじめ水に溶解させた凝集剤(ポリエチレンオキシド 分子量1,000,000)を構成材料に対して0.08%添加して、フロック状に凝集させた。これを40メッシュの金属網でろ過し、凝集物を30kg/cmの圧力で脱水プレスしたのち、50℃で3時間乾燥させ、10cm×10cm×5mmのシート状組成物を得た。このシート状組成物を300kg/cmの圧力および200℃の温度で10分間硬化させ、10cm×10cm×1mmの繊維強化複合材料を得た。
(3)実施例3
(3−1)樹脂のプレリアクト処理
2000mLのポリプロピレン製容器に、アセトン1188質量部、フェノール樹脂(住友ベークライト社製 品番R-25)12質量部を入れ撹拌し、溶解させた。この溶液に、繊維長3mm、繊維径12μmのアラミド繊維(帝人製 品番T32PNW)59.85質量部を添加し、スリーワンモーターで60分間撹拌した。繊維を濾過し、90℃の乾燥器で30分乾燥させた。
(3−2)繊維強化複合材料の作成
平均30μmのフェノール樹脂(住友ベークライト社製 品番R-25)53質量部と、上記3−1で得られたアラミド繊維48質量部と、繊維長1.21mm、繊維径12μmのアラミドパルプ(東レデュポン製 品番Para-Aramid Pulp)19質量部を水40,000質量部に添加し、ディスパーザーで20分間撹拌した。次に、あらかじめ水に溶解させた凝集剤(ポリエチレンオキシド 分子量1,000,000)を構成材料に対して0.08%添加して、フロック状に凝集させた。これを40メッシュの金属網でろ過し、凝集物を30kg/cmの圧力で脱水プレスしたのち、50℃で3時間乾燥させ、10cm×10cm×5mmのシート状組成物を得た。このシート状組成物を300kg/cmの圧力および200℃の温度で10分間硬化させ、10cm×10cm×1mmの繊維強化複合材料を得た。
(4)比較例1
平均30μmのフェノール樹脂(住友ベークライト社製 品番R-25)53質量部と、繊維径6μm、長さ3mmのピッチ系炭素繊維フィラー(三菱樹脂製 品番K223Y1)48質量部と、繊維長1.21mm、繊維径12μmのアラミドパルプ(東レデュポン製 品番Para-Aramid Pulp)19質量部を水40,000質量部に添加し、ディスパーザーで20分間撹拌した。次に、あらかじめ水に溶解させた凝集剤(ポリエチレンオキシド 分子量1,000,000)を構成材料に対して0.08%添加して、フロック状に凝集させた。これを40メッシュの金属網でろ過し、凝集物を30kg/cmの圧力で脱水プレスしたのち、50℃で3時間乾燥させ、10cm×10cm×5mmのシート状組成物を得た。このシート状組成物を300kg/cmの圧力および200℃の温度で10分間硬化させ、10cm×10cm×1mmの繊維強化複合材料を得た。
結果を表1に示す。
Figure 0006354138
(5)ドロップレット測定
試験体作成および繊維引き抜き試験には,東栄産業(株)製複合材料界面特性評価装置MODEL
HM410 を使用した. 繊維の引き抜き速度は0.12mm/min,荷重測定には最大荷重20mN のロードセルを使用した.正確な界面せん断応力を得るために,様々な大きさのドロップレットに対して試験を行った.試験により得られた最大引き抜き荷重F から界面せん断強度τ=F/(π×d×L)として(ここでd:繊維径、L:ドロップ長さ)τを求めた.
(6)曲げ強度、曲げ弾性率
曲げ強度、曲げ弾性率はJIS K 6911に準拠して行った。試験片は実施例および比較例から得られた積層体から2.5cm×5cmになるように切り出したものを用いた。測定は3点曲げ試験法により行った。
表1からわかるように、マイクロドロップレット試験による、繊維フィラーと樹脂との界面接着強度が15MPa以上である、実施例1〜3は曲げ弾性率、曲げ強さともに高い値を示した。対して、マイクロドロップレット試験による、繊維フィラーと樹脂との界面接着強度が15MPa未満である比較例1は、曲げ弾性率、曲げ強さともに十分な強度が得られなかった。
本発明の繊維強化複合材料は、十分な曲げ弾性率、曲げ強さを有するので、電気・電子用途、土木・建築用途、自動車用途、航空機用途等に広く用いうことができる。具体的には、たとえば、電子機器等の筐体、住宅および家具用の建材、車両および航空機等における各種部材に用いることができる。

Claims (7)

  1. 繊維フィラーと樹脂とを含む材料組成物により構成され、抄造法により得られる繊維強化複合材料であって、マイクロドロップレット試験による、繊維フィラーと樹脂との界面接着強度が20MPa以上であり、
    前記材料組成物は、イオン交換能を有する粉末状物質をさらに含む繊維強化複合材料。
  2. 繊維フィラーと樹脂とを含む材料組成物により構成され、抄造法により得られる繊維強化複合材料であって、マイクロドロップレット試験による、繊維フィラーと樹脂との界面接着強度が20MPa以上であり、
    前記材料組成物は、無機粉末及び金属粉末から成る群より選択される少なくとも一種のフィラー粉末をさらに含む繊維強化複合材料。
  3. 前記繊維フィラーの平均繊維長さが500μm以上10mm以下である請求項1または2に記載の繊維強化複合材料。
  4. 前記繊維フィラーの含有量が、前記材料組成物全体の1質量%以上90質量%以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
  5. 前記繊維フィラーがアラミド繊維である請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
  6. 前記繊維フィラーが、シランカップリング剤により処理されている請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
  7. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の繊維強化複合材料を用いた、電子機器を収容する筐体。
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