JP2016044281A - 繊維強化複合材料および筐体 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的特性に優れた繊維強化複合材料の提供。
【解決手段】繊維フィラーFと、繊維状の熱可塑性樹脂Rとを含む材料組成物により構成され、抄造法により得られる繊維強化複合材料8’であって、繊維フィラーFがアラミド繊維であり、繊維状熱可塑性樹脂Rがポリアミド樹脂を繊維化したものであり、繊維フィラーFの含有量が、材料組成物8’全体の25〜90質量%であり、材料組成物8’は、イオン交換能を有する粉末状物質を更に含み、外観が良好で機械的特性に優れた繊維強化複合材料8’であり、特に、軽くて高強度な3次元成形体が得られる繊維強化複合材料8’。
【選択図】図1

Description

本発明は、繊維強化複合材料および筐体に関する。
プラスチック繊維、炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維と樹脂マトリックスからなる繊維強化複合材料は、強度、剛性に優れているため、電気・電子用途、土木・建築用途、自動車用途、航空機用途等に広く用いられている。なかでも強化繊維が均一に分散した基材を用いた複合材料は、力学特性が等方的になり、さらには高強度を発現する材料であれば適用可能な用途は非常に多くなる。
強化繊維を均一かつ等方的に分散し、繊維強化複合材料を作製する方法として、抄造法が検討されている。例えば特許文献1には、フェノール樹脂粉末と強化繊維としてガラス繊維とアラミド繊維を水中に分散し抄造したウェブ状の成形材料を、成形金型にて加熱加圧成形(圧縮成形)して繊維強化のフェノール樹脂成形品を作製している。また、特許文献2には、ガラス繊維とビニロン繊維をフェノール樹脂の微粒子と共に水中に分散させ、これらを抄造し乾燥してシート状の成形材料を得た後に、金型内で加熱加圧成形して板状成形品を作製することが記載されており、抄造する強化繊維及び分散混抄する樹脂を選定することで、機械的特性を中心とした成形品特性の改良検討が行われている。
抄造法により作製した複合シートについて、特許文献3には、天然パルプと熱接着性を有し適度な繊維伸度を有する熱可塑性繊維を含むプレス成形用紙が記載されており、特許文献4には、熱可塑性繊維を主成分とする紙層とセルロースパルプを主成分とする紙層の積層構造による熱成形用の板紙が記載されているが、抄造した複合シートの成形性は良いものの、成形体の機械強度については高強度と言えるものではない。
また、抄造法において、粉末樹脂を用いた場合、抄造網から樹脂が流出することにより、歩留まりが低下し、粉末樹脂と強化繊維との均一分散性の悪さ等の問題が生じることがある。
特開平10−95024号公報 特開平10−166361号公報 特開平10−8393号公報 特開2000−265400公報
本発明の目的は、機械的特性に優れた繊維強化複合材料を提供することにある。
このような目的は、下記[1]〜[6]の本発明により達成される。
[1]繊維フィラーと、繊維状の熱可塑性樹脂とを含む材料組成物により構成され、抄造法により得られる繊維強化複合材料
[2]前記繊維フィラーがアラミド繊維である[1]記載の繊維強化複合材料
[3]前記繊維フィラーの含有量が、前記材料組成物全体の25質量%以上90質量%以下である[1]または[2]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
[4]前記繊維状の熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を繊維化したものである[1]ないしは[3]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
[5]前記材料組成物は、イオン交換能を有する粉末状物質をさらに含む[1]ないし[4]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
[6][1]ないし[5]の繊維強化複合材料を用いた、電子機器を収容する筐体。
本発明によれば、外観が良好で機械的特性に優れた繊維強化複合材料が得られる。特に、軽くて高強度な3次元成形体が得られるので、携帯性を有する電子機器の筐体の様な構造体に好適に利用することができる。
本実施形態に係る樹脂シートの製造方法を示す断面模式図である。 樹脂シートを用いた成形体の形成方法を示す断面模式図である。
まず、本発明の繊維強化複合材料について詳細に説明する。
繊維フィラーは、必要特性に応じて種々の形状を有することができる繊維材料である。本実施形態においては、繊維フィラーの形状として、たとえばチョップドストランド、ミルドファイバー、およびカットファイバー等を採用することができる。これにより、機械強度や耐衝撃性、耐熱性等をより効果的に向上させることができる。なお、本明細書における繊維フィラーは、パルプを含まない概念である。
繊維フィラーは、たとえば金属繊維;木材繊維、木綿、麻、羊毛等の天然繊維;レーヨン繊維などの再生繊維;セルロース繊維などの半合成繊維;ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、エチレンビニルアルコール繊維などの合成繊維;炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの無機繊維から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、機械的特性を向上させる観点からは、合成繊維および無機繊維のうちの一種または二種以上を含むことがより好ましい。耐衝撃性を向上させる観点からは、アラミド繊維を含むことがとくに好ましい。熱的特性を向上させる観点からは、無機繊維のうちの一種または二種以上を含むことがより好ましく、炭素繊維を含むことがとくに好ましい。
金属繊維は、単独の金属元素で構成される金属繊維であっても、複数の金属で構成される合金繊維であってもよい。金属繊維は、たとえばアルミニウム、銀、銅、マグネシウム、鉄、クロム、ニッケル、チタン、亜鉛、錫、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される1種または二種以上の金属元素を含むことが好ましい。なお、本実施形態における金属繊維としては、たとえば日本精線(株)やベカルトジャパン(株)製のステンレス繊維、虹技(株)製の銅繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維、鋼繊維、チタン繊維、りん青銅繊維などが市販品として入手可能であるが、これらに限定されるものではない。これらの金属繊維は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、これらのうち、熱伝導性という観点では銅繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維のいずれか1種以上が好ましく、電磁波シールド性という観点ではステンレス繊維、銅繊維、アルミニウム繊維のいずれか1種以上が好ましい。
繊維フィラーの含有量は、樹脂シート全体に対して25重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、35重量%以上であることがとくに好ましい。これにより、樹脂シートを用いて形成される層について、機械的特性や熱的特性、電磁波遮蔽性のバランスをより効果的に向上させることができる。一方で、繊維フィラーの含有量は、樹脂シート全体に対して90重量%以下であることが好ましく、85重量%以下であることがより好ましく、80重量%以下であることがとくに好ましい。これにより、樹脂シートの加工性や軽量性を向上させることができる。また、繊維フィラーの分散性をより効果的に向上させて、樹脂シートを用いて形成される層の機械的特性や熱的特性、電磁波遮蔽性の向上に寄与することも可能である。
また、本実施形態に係る繊維フィラーの平均繊維長さは、特に限定されないが、要求される特性に応じて使い分けることが望ましく、例えば、500μm以上10mm以下であることが好ましい。平均繊維長さを500μm以上とすることで、繊維フィラーによる特性を発現させることができる。
一方で、平均繊維長さを500μm以上10mm以下とすることで、成形加工性を確保することができる。なお、成形加工性とは、繊維強化複合材料の表面平滑性および脱型性のことをいう。
なかでも、繊維フィラーによる特性を発揮させるとともに、成形加工性を確保する観点から、繊維フィラーの平均繊維長さは、1mm以上、さらには3mm以上、8mm以下であることが好ましい。
繊維フィラーの径は、たとえば1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。これにより、樹脂シートを用いて形成される層の剛性を向上させることができる。一方で、繊維フィラーの径は、たとえば100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。これにより、樹脂シートの成形加工性を確保することができる。なお、繊維フィラーの繊維長および径は、たとえば得られた樹脂シートや、当該樹脂シートから樹脂成分を溶解して取り出した繊維フィラーを、電子顕微鏡を用いて観察することにより確認することができる。
繊維フィラー(B)としては、必要特性に応じてシランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤などで表面処理したものや、樹脂との密着性や取り扱い性を向上させるために収束剤処理をしたものを使用してもよい。
次に、繊維状の熱可塑性樹脂について説明する。本発明の繊維状の熱可塑性樹脂は、例えばペレット状の熱可塑性樹脂を、繊維化したものである。
前記、熱可塑性樹脂の繊維化について、特に限定されるものではないが、例えばノズル式、回転ロール式、フラッシュ方式等の溶融紡糸法などがあげられる。好ましくは、遠心力の利用による溶融紡糸法、すなわち、高速度で回転しているスリット付き外周壁を備えた加熱回転ディスク内に投入された溶融状ないし固形状の熱可塑性樹脂をその高速回転に伴う強力な遠心力作用でスリットを通過させて繊維化する、所謂綿菓子製造方式の紡糸法である。
前記、熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらの中でもポリアミドが耐衝撃性と繊維化時の易加工性の点から好ましい。
これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
繊維状の熱可塑性樹脂の配合量としては、繊維強化複合材料全体に対して、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜55質量%、特に好ましくは20〜50質量%である。これにより、繊維強化複合材料を加熱加圧成形した場合に、外観が良好で且つ樹脂偏在の少ない成形体を作製することができる。
樹脂シートは、たとえば凝集剤を含むことができる。凝集剤は、後述する抄造法を用いた樹脂シートの製造方法において、繊維フィラーや熱可塑性樹脂をフロック状に凝集させる機能を有する。このため、より安定的な樹脂シートの製造を実現することができる。
凝集剤は、たとえばカチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤、および両性高分子凝集剤から選択される一種または二種以上を含むことができる。このような凝集剤の例示としては、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、ホフマンポリアクリルアミド、マンニックポリアクリルアミド、両性共重合ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、両性澱粉、ポリエチレンオキサイドなどを挙げることができる。また、凝集剤において、そのポリマー構造や分子量、水酸基やイオン性基などの官能基量などは、必要特性に応じて特に制限無く調整することが可能である。
凝集剤の含有量は、樹脂シート全体に対して0.05重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましく、0.2重量%以上であることがとくに好ましい。これにより、抄造法を用いた樹脂シートの製造において、収率の向上を図ることができる。一方で、凝集剤の含有量は、樹脂シート全体に対して3重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがより好ましく、1.5重量%以下であることがとくに好ましい。これにより、抄造法を用いた樹脂シートの製造において、脱水処理等をより容易にかつ安定的に行うことが可能となる。
樹脂シートは、たとえば上述の各成分の他に、イオン交換能を有する粉末状物質を含むことができる。イオン交換能を有する粉末状物質としては、たとえば粘土鉱物、鱗片状シリカ微粒子、ハイドロタルサイト類、フッ素テニオライト及び膨潤性合成雲母から選ばれる一種またな二種以上の層間化合物を用いることが好ましい。粘土鉱物としては、たとえばスメクタイト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム及び燐酸チタニウムなどが挙げられる。ハイドロタルサイト類としては、たとえばハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト状物質などが挙げられる。フッ素テニオライトとしては、たとえばリチウム型フッ素テニオライト、ナトリウム型フッ素テニオライトなどが挙げられる。膨潤性合成雲母としては、たとえばナトリウム型四珪素フッ素雲母、リチウム型四珪素フッ素雲母などが挙げられる。これらの層間化合物は、天然物であってもよく、合成されたものであってもよい。これらのうちでは、粘土鉱物がより好ましく、スメクタイトが天然物から合成物まで存在し、選択の幅が広いという点においてさらに好ましい。スメクタイトとしては、たとえばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト及びスチーブンサイトなどが挙げられ、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。モンモリロナイトは、アルミニウムの含水ケイ酸塩であるが、モンモリロナイトを主成分とし、他に石英や雲母、長石、ゼオライトなどの鉱物を含んでいるベントナイトであってもよい。着色や不純物を気にする用途に用いる場合などには、不純物が少ない合成スメクタイトが好ましい。
また、樹脂シートは、たとえば特性向上を目的とした無機粉末、金属粉、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、離型剤、可塑剤、難燃剤、樹脂の硬化触媒や硬化促進剤、顔料、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤などの紙力向上剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、サイズ定着剤、消泡剤、酸性抄紙用ロジン系サイズ剤、中性製紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニルコハク酸無水物系サイズ剤、特殊変性ロジン系サイズ剤などのサイズ剤、硫酸バンド、塩化アルミ、ポリ塩化アルミなどの凝結剤などの添加剤から選択される一種または二種以上を、生産条件調整や、要求される物性を発現させることを目的として含むことができる。無機粉末としては、たとえば酸化チタン、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化マグネシウムなどの酸化物類や、窒化ホウ素、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素などの窒化物類や、硫酸バリウム、硫酸鉄、硫酸銅などの硫化物類や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物類や、カオリナイト、タルク、天然マイカ、合成マイカなどの鉱物類ならびに、炭化ケイ素などの炭化物類などが挙げられる。これらの無機粉末は、そのまま使用してもよいが、必要特性に応じてシランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤などで表面処理をしたものを使用してもよい。
本実施形態に係る繊維強化複合材料は、抄造法により得られたものである。ここで、抄造法とは、製紙化技術の1つである紙抄きの技術のことを示している。本実施形態によれば、かかる技術を用いて得られた繊維フィラーと繊維化された熱可塑性樹脂を含む材料組成物を用いている。こうすることにより、高強度な繊維強化複合材料を得ることができる。すなわち、繊維フィラーだけでは取り扱い性に劣るため、パルプなどを用いる必要がある。パルプは、フィブリル構造を有する繊維材料であり、たとえば機械的または化学的に繊維材料をフィブリル化することによって得ることができる。しかし、パルプは、繊維強化複合材料の中で破壊起点となり、繊維強化複合材料の強度低下を引き起こす原因となる。しかし、繊維化された熱可塑性樹脂を用いることで、パルプを用いなくとも、容易に抄造法により繊維強化複合材料を得ることができることを見出した。
次に、樹脂シートの製造方法について説明する。
図1は、本実施形態に係る樹脂シート10の製造方法を示す断面模式図である。樹脂シート10は、たとえば湿式抄造法を用いて製造される。本実施形態に係る樹脂シート10の製造方法は、たとえば繊維フィラーと、繊維状の熱可塑性樹脂と、を含む材料組成物を抄造する工程を含む。
以下、樹脂シート10の製造方法の一例を詳細に説明する。
まず、図1(a)および図1(b)に示すように、上述の各成分のうち凝集剤を除く成分を溶媒に添加して撹拌し、分散させる。ここでは、繊維フィラーと、繊維状の熱可塑性樹脂、および必要に応じた他の添加剤を溶媒中へ添加して撹拌し、分散させることとなる。これにより、樹脂シートを形成するためのワニス状の材料組成物を得ることができる。なお、図1において、符号Rは繊維状の熱可塑性樹脂、を、符号Fは繊維フィラーを、それぞれ示している。
各成分を溶媒に分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、たとえばディスパーザーを用いて撹拌する方法が挙げられる。この際、ディスパーザーを、たとえば5000rpm程度の条件で高速回転させることにより、繊維フィラーが絡み合ってダマになることや繊維フィラーが撹拌翼へ絡みつくこと等を抑制することが可能となる。撹拌時間等の回転速度以外の他の撹拌条件についても、必要に応じて適宜調整することができる。
溶媒としては、特に限定されないが、上記材料組成物の構成材料を分散させる過程において揮発しにくいことと、樹脂シート中への残存を抑制するために脱溶媒をしやすいこと、脱溶媒によってエネルギーが増大してしまうことを抑制すること、等の観点から、沸点が50℃以上200℃以下であるものが好ましい。このような溶媒としては、たとえば水や、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコールなどのアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類や、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類や、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、ジオキサン、フルフラールなどのエーテル類などを挙げることができる。これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、供給量が豊富であり、安価、環境負荷が低い、安全性も高く扱いやすいという理由から水を用いることがとくに好ましい。
次に、図1(c)に示すように、底面がメッシュMで構成された容器に、溶媒と、上記で得られた凝集物と、を入れてメッシュMから溶媒を排出する。これにより、凝集物と溶媒を互いに分離することができる。このとき、メッシュM上には、図1(d)に示すようなシート状の凝集物8'が残存することとなる。本実施形態においては、メッシュMの形状を適宜選択することによって、得られる樹脂シートの形状を調整することが可能である。
次に、図1(e)に示すように、上記で得られたシート状の凝集物8'を取り出して、乾燥炉70内に入れて乾燥させ、溶媒をさらに除去する。本実施形態においては、たとえばこのようにして、図1(f)に示すような樹脂シート10が製造されることとなる。
図4は、樹脂シート10を用いた成形体の形成方法を示す断面模式図である。
本実施形態においては、たとえば製造された樹脂シート10を成形することにより、各種物品を構成する成形体を形成することができる。成形方法としては、たとえばプレス成形等が挙げられる。図4に示すように、プレス板71で、樹脂シート10をプレスするとともに、プレス板71の外周側に熱板72を配置して加熱する。これにより、物品を構成する成形体を得ることができる。なお、樹脂シート10中にバインダー樹脂(A)として熱硬化性樹脂が含まれる場合には、以上の工程により得られた成形体において、熱硬化性樹脂が半硬化状態であることが好ましい。これにより、成形体を他の部材へラミネートした後に成形体を熱硬化させることができるため、成形体と他の部材をより強力に互いに固着させることができる。
次に、物品について説明する。
物品は、本実施形態に係る樹脂シートにより形成された層を含む。このため、信頼性に優れた物品を実現することができる。上記層は、たとえば樹脂シートを成形して得られる成形体により構成される。本実施形態における物品としては、とくに限定されないが、たとえばフレキシブル配線基板、インターポーザ基板、部品内蔵基板および光導波路基板等の電子部品を構成する基板や、電子機器の筐体等を挙げることができる。
(1)実施例1
[繊維状樹脂の製造]
回転駆動軸に連結された回転ディスク(直径125mm、回転数8000rpm )の周辺には、樹脂溶融用リボンヒーターが取り付けてあり、更にその外周は20メッシュの金網で覆われている市販の綿菓子機を用いて、ポリアミド樹脂(東京インキ製 F-915P)を繊維状に賦形した。次いで、得られた繊維状の樹脂を多数のピンを取り付けた回転式解繊機にかけて、繊維径10μm、平均繊維長3mmに繊維化したポリアミド樹脂Aを得た。
[成形体の製造]
上記繊維化ポリアミド樹脂A 40質量部と、繊維径12μm、長さ3mmのアラミド繊維フィラー(帝人社製 品番T32PNW)55質量部、ハイドロタルサイト(堺化学工業社製 品番STABIACE HT−1)4.5質量部を水10,000質量部に添加し、ディスパーザーで20分間撹拌した。ついで、水1000質量部にポリエチレンオキサイド(住友精化製)0.5を溶かしたものを、さらに加え、フロック状に凝集させた。
これを40メッシュの金属網でろ過し、凝集物を3Paの圧力で脱水プレスしたのち、50℃で5時間乾燥させ、シート状化合物を得た。
このシート状化合物を、30MPaの圧力150℃で10分間金型内で加熱溶融後、15分空冷し、長さ10cm×幅4.5cm×深さ1cm 厚さ1mmの筺型の成形体を得た。
(2)実施例2
繊維化ポリアミド樹脂A 50質量部と、繊維径12μm、長さ3mmのアラミド繊維フィラー(帝人社製 品番T32PNW)45質量部とした以外は、実施例1と同様にして、成形体を得た。
(3)実施例3
繊維化ポリアミド樹脂Aの代わりに、繊維径10μ、平均繊維長5mmの繊維化ポリアミド樹脂Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、成形体を得た。
(4)実施例4
ポリエチレン樹脂(東京インキ製 1070)を前記装置を用いて、繊維径10μm、平均繊維長3mmに繊維化し、この繊維化ポリエチレン樹脂Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、成形体を得た。
(5)実施例5
繊維径12μm、長さ3mmのアラミド繊維フィラー(帝人社製 品番T32PNW)の代わりに、繊維径10μm、長さ3mmのPBO繊維フィラー(東洋紡社製 品番ザイロン)を用いた以外は、実施例1と同様にして、成形体を得た。
(5)比較例1
上記繊維化ポリアミド樹脂Aを用いず、不定形状のポリアミド樹脂(東京インキ製 F-915 平均粒子径100μm) 40部とした以外は実施例1と同様にして、成形体を得た。
(7)比較例2
上記繊維化ポリアミド樹脂Aを用いず、不定形状のポリアミド樹脂(東京インキ製 F-915 平均粒子径100μm) 40部、繊維径12μm、長さ3mmのアラミド繊維フィラー(帝人社製 品番T32PNW)50質量部、アラミド繊維パルプ(デュポン社製 品番パラアラミドアルプ)5質量部、ハイドロタルサイト(堺化学工業社製 品番STABIACE HT−1)4.5質量部を水10,000質量部に添加し、ディスパーザーで20分間撹拌した。ついで、水1000質量部にポリエチレンオキサイド(住友精化製)0.5を溶かしたものを、さらに加え、フロック状に凝集させた。
これを40メッシュの金属網でろ過し、凝集物を3Paの圧力で脱水プレスしたのち、50℃で5時間乾燥させ、シート状化合物を得た。
このシート状化合物を、30MPaの圧力150℃で10分間金型内で加熱溶融後、15分空冷し、長さ10cm×幅4.5cm×深さ1cm 厚さ1mmの筺型の成形体を得た。
実施例1〜5、比較例1、2で得られた成形体を用いて、下記に示す特性評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2016044281

(1)曲げ強度、曲げ弾性率
曲げ強度、曲げ弾性率はJIS K 6911に準拠して行った。試験片は実施例および比較例から得られた積層体から2.5cm×5cmになるように切り出したものを用いた。測定は3点曲げ試験法により行った。
(2)線膨脹係数
線膨脹係数はTMA法により行った。試験片は実施例および比較例から得られた積層体から1cm×4cmになるように切り出したものを用い、昇温速度は10℃/分で行った。
実施例1〜5は、いずれも、曲げ強さ、曲げ弾性率、線膨張係数に優れる積層体であった。それに対し、比較例1では、繊維化した熱可塑性樹脂を用いず、不定形状の熱可塑性樹脂を用いたため、抄造法で、成形体を得ることができなかった。比較例2では、曲げ強さが十分な値とならなかった。
10 樹脂シート
100 物品
70 乾燥炉
71 プレス板
72 熱板
8' 凝集物
F 繊維フィラー
R 線維化熱可塑性樹脂
M メッシュ

Claims (6)

  1. 繊維フィラーと、繊維状の熱可塑性樹脂とを含む材料組成物により構成され、抄造法により得られる繊維強化複合材料。
  2. 前記繊維フィラーがアラミド繊維である請求項1記載の繊維強化複合材料。
  3. 前記繊維フィラーの含有量が、前記材料組成物全体の25質量%以上90質量%以下である請求項1または2に記載の繊維強化複合材料。
  4. 前記繊維状の熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂を繊維化したものである請求項1ないしは3のいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
  5. 前記材料組成物は、イオン交換能を有する粉末状物質をさらに含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
  6. 請求項1ないし5の繊維強化複合材料を用いた、電子機器を収容する筐体。
JP2014171455A 2014-08-26 2014-08-26 繊維強化複合材料および筐体 Pending JP2016044281A (ja)

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