JP2017145517A - 抄造体の製造方法、成形体の製造方法および抄造体 - Google Patents

抄造体の製造方法、成形体の製造方法および抄造体 Download PDF

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Abstract

【課題】面内方向において異種の繊維フィラーの自由配置が可能であり、強度に優れた抄造体を実現できる抄造体の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の抄造体の製造方法は、第1バインダー樹脂、第1繊維フィラーおよび第1溶媒を含む第1スラリーをフィルターに通過させることにより、フィルターの表面上に第1抄造層を形成する第1抄造工程と、第2バインダー樹脂、第1繊維フィラーとは異なる第2繊維フィラーおよび第2溶媒を含む第2スラリーを、第1抄造層に接触させるとともにフィルターに通過させることにより、フィルターの表面上に第2抄造層を形成する第2抄造工程と、を含むものである。【選択図】図3

Description

本発明は、抄造体の製造方法、成形体の製造方法および抄造体に関する。
これまでの抄造体を利用した成形品の製造プロセスとしては、例えば、特許文献1に記載の手法が挙げられる。同文献には、主材と木材パルプと無機繊維と凝集用バインダーとを含むスラリーを抄造し、シートを形成した後、該シートを積層して加圧加熱し、加熱乾燥させることにより不燃性ボードが形成される、と記載されている。つまり、主材や無機繊維等の原料固形分がよく分散されたスラリーを網で漉くことにより、ランダムに原料固形分が分布したシート状の抄造体を形成することができる。
シート状の抄造体の強度を向上させることを目的として、抄造シートを複数積層した積層体をプレス加工することが行われている。この種の技術としては、例えば、特許文献2に記載の手法が挙げられる。同文献には、セメントと木質繊維を混合したスラリーを脱水、抄造して抄造シートを形成し、抄造シートを複数積層した積層マットをプレスすることにより、木質セメント板を形成できる、と記載されている。
このような「抄造体」とは、繊維材料を漉く手法を使用して得られた物の状態を示す技術用語として一般的に使用されているものである。このような状態は、例えば、特許文献3および4に記載されている。同文献によれば、当該抄造体は、繊維や樹脂等の原料を分散媒に分散させた原料スラリーから、液体分が脱水され、フィルター上に残った湿潤状態の固形分を指す、と記載されている。ここでいう湿潤状態とは、乾燥および加熱処理を施す前の硬化状態、すなわち、ポストキュア前の硬化状態を意味する。
また、同文献によれば、当該抄造体は、成形型内で加熱して乾燥成形することにより得られる成形体に利用される。すなわち、抄造体は成形材料として用いられると記載されている。
特開2016−336159号号公報 特開2012−153572号公報 特許第4675276号 特許第5426399号
これまでの抄造体の製造プロセスにおいては、原料固形分が平面方向にランダムに分布した抄造体シートが開発されてきた(特許文献1等)。このような抄造体シートを改質(強度等の特性の付与)する方法としては、複数の抄造シートを積層しプレス加工することが行われていた(特許文献2等)。異種の抄造シートを使用することにより、積層体の所定の改質を図ることができる。
しかしながら、積層方向における改質方法は検討されているが、面内方向における改質方法は、未だ十分に検討されていない。
本発明者は、こうした事情に着眼し、面内方向における改質方法を検討するに至った。例えば、異種の抄造体シートを形成した後、それぞれを平面置きにした状態で横並びに配置し、抄造体シートの側面同士を接着する方法が考えられる。しかしながら、抄造体シートの膜厚が薄い場合、界面破断が生じて、抄造体シートが破断してしまうことがあり、抄造体シートの強度不足が判明した。
本発明者は、このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、次のような異種の繊維フィラーの自由配置が可能であり、強度に優れた抄造体を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、まず、少なくとも繊維フィラーが異なる第1スラリーと第2スラリーを準備する。第1スラリーを用いてフィルター上に第1抄造層を形成した後、その第1抄造層に第2スラリーを接触させるとともに、当該フィルターに通過させる。これにより、当該フィルターの表面の面内方向において、異種の繊維フィラーを有する第1抄造層と第2抄造層とを自由に配置させることが可能であり、かつ、第1抄造層と第2抄造層との間で異種の繊維フィラーが交絡するため、第1抄造層と第2抄造層との接合強度に優れた抄造体を形成することが見出された。
本発明によれば、第1バインダー樹脂、第1繊維フィラーおよび第1溶媒を含む第1スラリーをフィルターに通過させることにより、前記フィルターの表面上に第1抄造層を形成する第1抄造工程と、
第2バインダー樹脂、前記第1繊維フィラーとは異なる第2繊維フィラーおよび第2溶媒を含む第2スラリーを、前記第1抄造層に接触させるとともに前記フィルターに通過させることにより、前記フィルターの表面上に第2抄造層を形成する第2抄造工程と、を含む、抄造体の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記の抄造体の製造方法により得られた抄造体に対して、加圧成形を行うことにより成形体を得る工程を含む、成形体の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、
バインダー樹脂と繊維フィラーとを含む抄造層が、複数結合した抄造体であって、
一の前記抄造層は、他の前記抄造層と間に、互いに異なる前記繊維フィラーが交絡した交絡領域を有する、抄造体が提供される。
本発明によれば、面内方向において異種の繊維フィラーの自由配置が可能であり、強度に優れた抄造体を実現できる抄造体の製造方法、成形体の製造方法、およびその製造方法により得られた抄造体が提供される。
本実施形態に係る抄造体の構造を示す断面模式図である。 本実施形態に係る抄造体の構造を示す上面模式図である。 本実施形態に係る抄造体の製造方法の一例を示す断面模式図である。 本実施形態に係る抄造体の製造方法の変形例の一例を示す断面模式図である。 本実施形態に係る抄造体の製造方法の変形例の一例を示す断面模式図である。 本実施形態に係る抄造体の製造方法の変形例の一例を示す断面模式図である。 本実施形態に係る抄造体の製造方法の変形例の一例を示す断面模式図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
なお、本実施の形態では図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
本実施形態の抄造体のコーティング方法について説明する。
本実施形態の抄造体の製造方法は、第1バインダー樹脂、第1繊維フィラーおよび第1溶媒を含む第1スラリー120をフィルター110に通過させることにより、フィルター110の表面上に第1抄造層20を形成する第1抄造工程と、第2バインダー樹脂、第1繊維フィラーとは異なる第2繊維フィラーおよび第2溶媒を含む第2スラリー130を、第1抄造層20に接触させるとともに、フィルター110に通過させることにより、フィルター110の表面上に第2抄造層30を形成する第2抄造工程と、を含むものである。
本発明者が検討したところ、第1抄造層20を形成した後、引き続き、第2スラリー130を第1抄造層20に接触させることにより、接触部分において、異種の第1繊維フィラーと第2繊維フィラーとが交絡し、第1抄造層20と第2抄造層30との間に交絡領域Lが形成されることになる。その結果、第1抄造層20と第2抄造層30の接合強度を優れた抄造体10を形成することが見出された。
また、本実施形態の抄造体の製造方法によれば、フィルター110の表面の面内方向において、異種の繊維フィラーを有する第1抄造層20と第2抄造層30とを自由に配置させることが可能になる。つまり、抄造体10の面内方向において、複数種の繊維フィラーを自在に配置可能になる。
また、繊維フィラー等の抄造体10の構成材料を適切に選択することにより、電波遮断性、放熱性、高強度などの抄造体10の特性(機能性)を制御することができる。本実施形態の抄造体の製造方法を利用することで、異種材料で構成された抄造層を自在に配置することができる。その結果、繊維フィラーを自在に配置することができるので、抄造体10の平面方向、さらには積層方向における上記特性の制御性を向上させることができる。
したがって、本実施形態によれば、平面方向における繊維フィラーの配置位置を設計通りに制御できるとともに、強度に優れた抄造体10の構造を実現することができる。
以下、本実施形態の抄造体の製造方法について、図3を用いて詳述する。
図3は、抄造体の製造方法の一例を示す断面図である。
(第1抄造工程)
本実施形態の第1抄造工程は、第1スラリー120をフィルター110に通過させることにより、フィルター110の表面上に第1抄造層20を形成する工程を含むことができる。
具体的には、図3(a)に示すように、まず、抄造装置100の内部に吸引容器104を配置する。吸引容器104の支持ステージ上にはフィルター110が設置されている。フィルター110の吸引領域140は、露出しており、一方、その非吸引領域142は第1マスク150で覆われている。続いて、抄造装置100の容器102に第1スラリー120を導入する。続いて、第1スラリー120をフィルター110の裏面側から吸引する。ここで、フィルター110のうち、抄造層が形成される側(表面側)と反対側を裏面側とする。これにより、第1スラリー120をフィルター110に通過させることにより、フィルター110の表面のうち吸引領域140に第1抄造層20を形成することができる。
以下、詳述する。
まず、図3(a)に示す抄造装置100について説明する。抄造装置100は、容器102、吸引容器104、フィルター110および不図示の吸引装置を備えることができる。
容器102は、吸引容器104を内部に収容することができる。また、容器102は、液体であるスラリーを、吸引容器104に設置されたフィルター110の位置以上に貯めることができる収容構造を有している。例えば、容器102の上部からスラリーが供給される。
吸引容器104は、フィルター110を載置できる支持ステージと、フィルター110を通過したスラリーを貯める収容部と、スラリーを外部に排出する吸引口106と、を備えることができる。吸引口106には不図示の吸引装置が接続している。吸引装置により、所望の吸引力に制御できる。この吸引力により、吸引口106から容器102の外部にスラリーが排出される。図3に示す吸引口106は、例えば、筒形状を有していて、一端が吸引容器104の下部において上記収容部と接続しており、多端が容器102の外部まで延設している。
フィルター110は、図3(a)や後述の図3(b)に示すように、上記支持ステージに保持されており、その表面に、スラリー中の固形分(凝集体122,132)を堆積させることが可能である。すなわち、フィルター110は、スラリー(第1スラリー120、第2スラリー130)が通過できる孔が複数形成されている。つまり、フィルター110は、表面から裏面にスラリーの溶媒(第1溶媒および第2溶媒)が通過できるメッシュ構造や多孔質構造を有している。一方で、スラリーの固形分(凝集体122,132)を通過させずに、その表面に凝集体122,132を堆積させることができる。メッシュ粗さや孔径は、例えば凝集体122,132の粒径に応じて調整できる。ただし、フィルター110は、ある程度粒径が大きい凝集体122,132をフィルタリングできればよく、微細な凝集体122,132やプロセス上不可避に通過してしまう凝集体122,132の通過を許容できる。
本実施形態において、フィルター110の表面の一部が、第1マスク150で覆われていても良い。第1マスク150で覆われた領域は、フィルター110に吸引力が働かない非吸引領域142になる。非吸引領域142においては、フィルター110上に第1スラリー120が堆積せず、第1抄造層20が形成されない領域となる。言い換えると、フィルター110の表面のうち、第1マスク150で覆う領域を調整することで、第1抄造層20が形成されない非吸引領域142を自在に設計することが可能になる。フィルター110は、例えば、平板形状とすることができる。
このように第1マスク150をフィルター110上に形成することで、非吸引領域142と吸引領域140の領域を区分けすることが可能であるが、この態様は一例であり、他の態様を利用してもよい。フィルター110の吸引領域140に第1抄造層20を形成する方法としては、例えば、第1マスク150は、フィルター110の裏面側に配置されていてもよい。また、フィルター110の吸引領域140のみ吸引力が働くように、フィルター110の裏面の吸引領域140に吸引口を形成してもよい。また、図3に示すように、フィルター110の表面を覆うように第1スラリー120を導入してもよいが、筒部材などを利用して、表面の一部である吸引領域140のみに第1スラリー120を導入する方法を使用してもよい。
本実施形態によれば、マスクを利用することにより、マスクを利用しないで吸引領域を区分けした場合と比較して、第1抄造層20の解像度を高めることができる。つまり、マスクを利用することにより、フィルター110の表面において、第1抄造層20の側壁が面内方向にブロードすることを抑制できる。また、吸引領域140の形状を、設計通りに形成することができる。
以上より、第1抄造工程においては、第1スラリー120中の第1溶媒は、露出しているフィルター110を通過できるが、第1スラリー120中の固形分である凝集体122は、フィルター110を通過できずに、その表面に堆積し、第1抄造層20が形成されることになる。これにより、フィルター110の表面上の一部(吸引領域140)に第1抄造層20を形成することができる(図3(a))。
(第2抄造工程)
本実施形態の第2抄造工程は、第2スラリー130を、第1抄造層20に接触させるとともにフィルター110に通過させることにより、フィルター110の表面上に第2抄造層30を形成する工程を含むことができる。
本実施形態においては、上述の第1抄造工程は、フィルター110の表面の一部の領域(非吸引領域142)上に第1マスク150を配置する工程と、第1スラリー120をフィルター110の表面に導入し、第1スラリー120をフィルター110の裏面側から吸引する工程と、をこの順番で含み、第2抄造工程は、第1マスク150をフィルター110の表面から除く工程と、第2スラリー130をフィルター110の表面に導入して、第2スラリー130をフィルター110の裏面側から吸引する工程と、をこの順番で含むことができる。
具体的には、図3(b)に示すように、フィルター110の表面の非吸引領域142に設置されていた第1マスク150を取り除く。これにより、フィルター110の表面を露出させることができる。その結果、フィルター110の表面のうち、第1抄造層20の周囲にも吸引力を発生させることが可能になる。言い換えると、フィルター110の表面全体を、第2スラリー130を堆積できる吸引領域140とすることができる。また、第1マスク150の側壁部分で覆われていた第1抄造層20の側面23も露出することができる。
以下、詳述する。
まず、容器102の内部に第2スラリー130を導入する。導入された第2スラリー130、フィルター110の表面上に形成された第1抄造層20のうち、少なくともその側面23に接触することになる。本実施形態では、第2スラリー130の導入工程において、第2スラリー130が第1抄造層20の表面21および側面23に接触した状態となる。
続いて、第2スラリー130が第1抄造層20の側面23に接触した状態で、第2スラリー130をフィルター110の裏面側から吸引する。すると、第2スラリー130中の第2溶媒は、フィルター110を通過できるが、第2スラリー130中の固形分である凝集体132は、フィルター110を通過できずに、その表面に堆積し、第2抄造層30が形成されることになる。
本実施形態の抄造体10においては、第2抄造層30は、第1抄造層20の側面23の周囲を覆うとともに、その表面21の全体を覆うように形成される。また、抄造体10中の第2抄造層30は、第1抄造層20との間に交絡領域Lを形成することになる。本実施形態に係る交絡領域Lは、異種の繊維フィラーが互いに絡み合うため、第1抄造層20と第2抄造層30の接合強度を向上させることができる。
その後、フィルター110の表面上に形成された抄造層(第1抄造層20および第2抄造層30)に対して、乾燥工程を実施する。例えば、得られた第1抄造層20および第2抄造層30を取り出して、乾燥炉内に入れて乾燥させることができる。これにより、抄造層(第1抄造層20および第2抄造層30)中の溶媒をさらに除去することができる。このような乾燥工程により、シート形状を有する抄造体10を得ることができる。
以上により、図2(a)(b)に示すような抄造体10が得られる。すなわち、抄造体10においては、第1抄造層20の側壁の全周囲および表面の全体に亘って第2抄造層30に覆われた構造とすることができる。つまり、本実施形態の抄造体10としては、複数の抄造層が、互いに積層した状態で結合していてもよい。
本実施形態の抄造体10中の第1抄造層20と第2抄造層30の接合強度は、例えば、引張強度により測定することができる。このような接合強度としては、例えば、乾燥させた第1抄造層20の引張強度と、乾燥させた第2抄造層30の接合強度との間の数値範囲内とすることができる。
本実施形態においては、繊維長や繊維径等の繊維フィラーの種類や抄造工程の製造条件を適切に制御することにより、交絡領域Lの長さや接合強度を設計通りに形成することができる。
本実施形態の第2抄造工程においては、第1抄造層20の上面と下面との間に位置する側壁面(側面23)に対して、第2スラリー130の水流を当てる工程を含むことができる。例えば、第2スラリー130を容器102に導入することや、第2スラリー130を吸引することにより、上記水流を生じさせることができる。詳細なメカニズムは定かでないが、第2スラリー130の流れが第1抄造層20の側面23に接触すると、図1に示す通り、接触部分において、第2スラリー130の繊維フィラーB30と第1抄造層20中の繊維フィラーB20とが絡まり合い、交絡領域Lが形成されると考えられる。
また、本実施形態の第2抄造工程は、次のような攪拌・振動工程を行いながら実施しても良い。攪拌・振動工程は、任意に行うことができるが、例えば、連続または断続的に実施してもよいし、、第2抄造工程と同時または交互に実施してもよい。攪拌・振動工程としては、例えば、第1抄造層20と第2スラリー130(または第2抄造層30)の接触面部分を攪拌したり、その接触面部分に振動を与える処理等が挙げられる。攪拌工程については、第2スラリー130の抄造後、第1抄造層20と第2抄造層30の界面部分を少し水に浸漬させながらバブリングしてもよい。また、振動工程については、支持ステージなどの一部を振動させてもよいが、抄造装置100全体を振動させてもよい。
本実施形態において、第1抄造工程と第2抄造工程の間に、乾燥処理および加熱処理を行わないことが好ましい。これにより、脱溶媒されているが湿潤している状態の第1抄造層20に対して、第2スラリー130を接触させることができる。このため、本実施形態の交絡領域Lが形成されやすい状態を維持できる。また、連続して抄造工程を実施できるので、製造プロセスの生産性を高めることができる。
なお、第1抄造層20を乾燥させた後に、第2抄造工程を実施する場合には、第2抄造工程を実施する前に、第1抄造層20を、溶媒に浸漬させる等の湿潤工程を行うことができる。
また、第1抄造工程において、第1マスク150の配置位置を変更することで、例えば図2(c)(d)に示す抄造体10の構造とすることができる。つまり、抄造体10において、第1抄造層20の側面23の一部が第2抄造層30に覆われた構造とすることができる。
また、第2抄造工程においては、第1マスク150を除いた後、不図示の第2マスクを第1抄造層20の表面上に配置する工程を実施してもよい。
具体的には、本実施形態の第2抄造工程は、第1マスク150をフィルター110の表面から除く工程と、第2マスクを第1抄造層20の表面の少なくとも一部の領域上に配置する工程と、第2スラリー130をフィルター110の表面に導入して、第2スラリー130をフィルター110の裏面側から吸引する工程と、上記第2マスクを第1抄造層20の表面から除く工程と、をこの順番で含むことができる。
第2マスクは、第1抄造層20の一部を覆うことができるが、その全体を覆うこともできる。抄造体10の構造の設計に基づいて、第2マスクの適切な配置位置を決定することができる。
以上により、抄造体10において、第1抄造層20の表面が第2抄造層30で覆われていない様な構造とすることができる。例えば、図1に示すような抄造体10の構造とすることができる。
図1に示す抄造体10は、第1抄造層20と第2抄造層30との互いの側面同士が結合した構造を有している。本実施形態の抄造体10としては、複数の抄造層が、平置きした状態で横並びになるように結合していてもよい。
本実施形態において、第1マスク150や第2マスクの形状は、上面視において、例えば、矩形形状、円形形状、曲線形状など、様々な形状とすることが可能である。
ここで、本実施形態に用いるスラリーについて説明する。
本実施形態の製造方法に用いられるスラリーは、バインダー樹脂と繊維フィラー等の固形分と、分散媒である液状の溶媒を含むものである。当該固形分が、抄造層や抄造層を乾燥させた抄造体を構成することになるが、その詳細については後述する。
上記スラリーのうち第1スラリー120は、第1バインダー樹脂(バインダー樹脂A20)、第1繊維フィラー(繊維フィラーB20)および第1溶媒を含むものである。
一方、第2スラリー130は、第2バインダー樹脂(バインダー樹脂A30)、第1繊維フィラーとは異なる第2繊維フィラー(繊維フィラーB30)および第2溶媒を含むものである。第2スラリー130は、第1スラリー120とは、少なくとも、繊維フィラーの点が異なる異種のスラリーである。繊維フィラーが異なるとは、種類、形状、繊維長が異なることを意味する。さらに、第2スラリー130は、第1スラリー120とは、バインダー樹脂の点で異種のスラリーであってもよい。
本実施形態において、容器102の内部にスラリー(第1スラリー120、第2スラリー130)を導入する場合、固形分と溶媒とを混合したスラリーを導入してもよく、先に溶媒を導入し後で固形分を添加してもよい。
いずれもの場合も、凝集剤を除いた状態で、容器102中のスラリーを攪拌し、固形分を分散させる工程を行うことが好ましい。固形分を構成する各材料成分を溶媒に分散させる方法としては、とくに限定されないが、たとえばディスパーザーを用いて撹拌する方法が挙げられる。
溶媒としては、とくに限定されないが、上記固形分を分散させる過程において揮発しにくいことと、抄造層(第1抄造層20、第2抄造層30)中への残存を抑制するために脱溶媒をしやすいこと、脱溶媒によってエネルギーが増大してしまうことを抑制すること、等の観点から、沸点が50℃以上200℃以下であるものが好ましい。このような溶媒としては、たとえば水や、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコールなどのアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類や、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類や、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、ジオキサン、フルフラールなどのエーテル類などを挙げることができる。これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、供給量が豊富であり、安価、環境負荷が低い、安全性も高く扱いやすいという理由から水を用いることがとくに好ましい。
スラリー導入後、スラリー中に、凝集剤を添加することができる。これにより、溶媒中の固形分をフロック状に凝集させて凝集体122,132を得ることがより容易となる。
本実施形態においては、抄造層(第1抄造層20、第2抄造層30)が適切な厚みとなるまで、吸引工程とともに、スラリーの導入工程を行っても良い。また、吸引工程においては、最初から最後にかけて、連続的または段階的に吸引力を増加させてもよい。また、吸引工程中、凝集体122,132の分散性を高めるために、攪拌工程を同時に行っても良い。
また、本実施形態の抄造体の製造方法により得られた抄造体10を、所定の形状に加工することにより素形体を得る加工工程を行うことができる。
また、本実施形態においては、上記素形体に対して、加熱加圧等の加圧成形をすることにより成形体を得ることができる。加圧成形としては、例えば、加熱加圧プレス処理等の成型方法を実施してもよい。これにより、乾燥工程、加工工程、および成形工程を一括して実施することも可能である。
また、本実施形態においては、抄造層(第1抄造層20、第2抄造層30)を形成するプロセスを、乾燥工程を行わずに抄造層が濡れた状態で、複数回、繰り返して行うことも可能である。これにより、異なる抄造層が複数積層した構造や、異なる抄造層が組み合わされた平面配置構造を、設計自在に実現することができる。濡れた状態の複数の抄造層を一括して抄造体10に成形することにより、製造プロセスの生産性を高めることができる。
続いて、本実施形態に係る抄造体の製造方法の変形例について説明する。
本実施形態に係る抄造体の製造方法の変形例の一例としては、次のものが挙げられる。変形例1においては、例えば、第2スラリー130を筒160中に導入する工程をさらに含むことができる。そして、第1抄造工程は、フィルター110の表面上に筒160を接置した状態で、フィルター110および筒160の一部を第1スラリー120に浸漬する浸漬工程と、フィルター110および筒160を第1スラリー120の水位よりも高い位置に引き上げる引き上げ工程と、を含み、第2抄造工程は、フィルター110と筒160とをわずかに離した状態で、第2スラリー130の自重により、筒160中の第2スラリー130をフィルター110に通過させる工程を含むことができる。
ここで、第2スラリー130を筒160中に導入する工程は、上記浸漬工程の後、上記引き上げ工程の前に行われるか、もしくは、上記第1抄造工程の後、上記第2抄造工程の前に行うことができる。
以下、図4を用いて説明する。
図4に示す抄造装置101は、スラリーを貯めることができる容器102と、スラリーを漉くことができるフィルター110で構成することができる。フィルター110は、平板形状でもよいが、図4に示すように、立体形状でもよい。これにより、立体的な抄造体10を得ることが可能になる。
まず、図4(a)に示すように、容器102中に第1スラリー120を導入する。続いて、フィルター110の平面に筒160の一端を接触させた状態で、フィルター110と筒160の一部を第1スラリー120中に浸漬する。つまり、筒160の内部に第1スラリー120(とくに、第1スラリー120の固形分)が入らないように、筒160の他端の高さを保持する。浸漬と同時または浸漬直後に、他端から筒160内に第2スラリー130を導入する。
続いて、図4(b)に示すように、フィルター110と筒160を第1スラリー120から引き揚げる。これにより、フィルター110の表面のうち、筒160の載置領域の周囲に第1抄造層20を形成できる。その後、第2スラリー130の自重により、筒160中の第2スラリー130をフィルター110に通過させる。このとき、フィルター110から筒160を少し離した状態とする。フィルター110と筒160との間にわずかな間隙を作ることで、間隙部分から第2スラリー130が第1抄造層20の側面23に接触し、交絡領域Lを形成できるようになる。少し離した状態における間隙長としては、例えば、第1抄造層20の膜厚程度とすることができる。これにより、フィルター110表面のうち、筒160の載置領域に第2抄造層30を形成することができる。以上により、第1抄造層20の表面21が露出しており、平面上に第1抄造層20と第2抄造層30とが横並びしている構造の抄造体10を得ることができる。
抄造体10の製造方法の他の変形例2について図5を用いて説明する。
図5に示す変形例2は、第2スラリー130を導入するタイミングが、図4に示す変形例1と異なる。つまり、図5(a)に示すように、フィルター110とフィルター110の表面に接触させた筒160を第1スラリー120中に浸漬させる。このとき、筒160には第2スラリー130はまだ導入されていない。
続いて、図5(b)に示すように、第1スラリー120からフィルター110を引き揚げて、フィルター110の表面上に第1抄造層20を形成する。その後、筒160の他端から第2スラリー130を導入して、フィルター110上に第2抄造層30を形成する。この時、変形例1と同様に、フィルター110から筒160をわずかに離すことにより、第1抄造層20の側面23に第2スラリー130を接触させた状態で、第2スラリー130をフィルター110で漉くことが出来る。これにより、第1抄造層20と第2抄造層30の交絡領域Lを形成することが可能になる。以上のようにして、抄造体10が得られる。
また、抄造体10の製造方法の他の変形例3について図6を用いて説明する。
変形例3においては、第1抄造工程は、フィルター110の表面の一部の領域上に第1マスク152を配置した状態で、フィルター110を第1スラリー120中に浸漬する工程と、フィルター110を第1スラリー120の水位よりも高い位置に引き上げる工程と、を含み、第2抄造工程は、第1マスク152をフィルター110の表面から除く工程と、フィルター110を第2スラリー130中に浸漬する工程と、フィルター110を第2スラリー130の水位よりも高い位置に引き上げる工程と、を含むことができる。
以下、図6を用いて説明する。
まず、図6(a)に示すように、容器102中に第1スラリー120を導入する。続いて、フィルター110の表面を覆うように第1マスク152を設置する。第1マスク152の一部には、上面視において開口する開口部が形成されている。第1マスク152は、その形状については特に限定されないが、例えば、図6(a)に示すような、一面が平面で、他面がフィルター110の形状に沿った形状を有していて、筒状の開口部が形成されていてもよい。続いて、第1マスク152を密着させた状態でフィルター110を、第1スラリー120中に浸漬させる。
続いて、図6(b)に示すように、第1スラリー120中から、フィルター110および第1マスク152を引き揚げる。この際、フィルター110から第1マスク152をわずかに離してもよい。これにより、フィルター110の表面のうち、第1マスク152の開口部において、第1抄造層20が形成される。
続いて図6(c)に示すように、他の容器102に第2スラリー130を導入する。そして、フィルター110およびその上に形成された第1抄造層20を第2スラリー130中に浸漬する。そして、図6(d)に示すように、第1抄造層20の表面21および側面23に第2スラリー130を接触させた状態で、フィルター110を第2スラリー130から引き揚げる。これにより、フィルター110上に第2抄造層30を形成できる。第2抄造層30は、第1抄造層20の表面21および側面23と交絡領域Lを形成することができる。以上により、図6(d)に示すような抄造体10を得ることが出来る。
また、抄造体10の製造方法の他の変形例4について図7を用いて説明する。
変形例4は、第2マスク156で第1抄造層20を覆った状態で、第2スラリー130を漉く点で、変形例3と異なる。
すなわち、本変形例4においては、第2抄造工程は、第1マスク154をフィルター110の表面から除く工程と、第2マスク156を第1抄造層20の表面の一部の領域上に配置する工程と、フィルター110を第2スラリー130中に浸漬する工程と、フィルター110を第1スラリー120の水位よりも高い位置に引き上げる工程と、第2マスク156を第1抄造層20の表面から除く工程と、をこの順番で含むことができる。
以下、図7を用いて説明する。
まず、図7(a)に示すように、容器102中に第1スラリー120を導入する。続いて、フィルター110の表面の一部を覆うように第1マスク154を設置する。第1マスク154は、その形状については特に限定されないが、例えば、図7(a)に示すような、棒状体としてもよい。続いて、第1マスク154の一端を密着させた状態でフィルター110を、第1スラリー120中に浸漬させる。
続いて、図7(b)に示すように、第1スラリー120中から、フィルター110および第1マスク154を引き揚げる。この際、フィルター110から第1マスク154をわずかに離してもよい。これにより、フィルター110の表面のうち、第1マスク154の載置領域の周囲に、第1抄造層20が形成される。
続いて図7(c)に示すように、他の容器102に第2スラリー130を導入する。また、第1抄造層20の表面21の一部または全面を第2マスク156で覆う。一方で、第1抄造層20の側面23は露出させておく。このように、フィルター110上の第1抄造層20の表面21を第2マスク156で覆った状体で、第2スラリー130中に浸漬する。そして、図7(d)に示すように、第1抄造層20の側面23に第2スラリー130を接触させた状態で、フィルター110を第2スラリー130から引き揚げる。これにより、フィルター110上に第2抄造層30を形成できる。第2抄造層30は、第1抄造層20の側面23と交絡領域Lを形成することができる。その後、第1抄造層20から第2マスク156を外す。以上により、図7(d)に示すような抄造体10を得ることが出来る。
以下、本実施形態の抄造体10について図1を用いて説明する。図1は、抄造体10の構造を示す断面模式図を示す。図1においては、抄造体10のうちの点線で示される領域の拡大模式図が示されている。
本実施形態の抄造体10は、バインダー樹脂と繊維フィラーとを含む抄造層が、複数結合した抄造体であって、一の抄造層(第1抄造層20)は、他の抄造層(第2抄造層30)との間に、互いに異なる繊維フィラーが交絡した交絡領域Lを有する。
上記交絡領域Lの幅の下限値は、所定の強度があれば、特に限定されないが、例えば、10μm以上としてもよく、100μm以上としてもよく、1mm以上としてもよい。交絡領域Lの上限値は、特に限定されないが、例えば、解像度の観点から、5mm以下としてもよく、4mm以下としてもよく、3mm以下としてもよい。
本実施形態において、繊維フィラーB(繊維フィラーB20や繊維フィラーB30)の繊維長の下限値は、特に限定されないが、例えば、100μm以上としてもよく、500μm以上としてもよく、1mm以上としてもよい。これにより、交絡領域Lを安定的に形成することができる。また、上記繊維長の上限値としては、特に限定されないが、例えば、15mm以下としてもよく、10mm以下としてもよく、5mm以下としてもよい。とすることができる。これにより、長繊維の機能性や取り扱い性が向上する。
本実施形態の抄造体10の製造方法によれば、上述の第2抄造工程により、第1抄造層20と第2抄造層30との間に、互いに異なる第1繊維フィラー(繊維フィラーB20)と第2繊維フィラー(繊維フィラーB30)が交絡した交絡領域Lを形成することができる。
本実施形態の抄造体10は、上述の固形分として、バインダー樹脂A(バインダー樹脂A20やバインダー樹脂A30)および繊維フィラーB(繊維フィラーB20や繊維フィラーB30)を含む。また、繊維フィラーBは、図1に示すように、平面方向に配列されていることが好ましい。言い換えれば、抄造体10は、面方向から見た場合、繊維フィラーBの配向はランダムである一方、厚み方向から見た場合、繊維フィラーBは抄造体10の平面方向に配列されていることが好ましい。そして、交絡領域Lにおいては、異種の繊維フィラーBが交絡している。例えば、繊維フィラーB20と繊維フィラーB30とが互いに直接接触していても、またはバインダー樹脂Aを介して結合していてもよい。
また、抄造体10に含まれるバインダー樹脂Aは、繊維フィラーBどうしを結着する結着材として機能する。抄造体10中のバインダー樹脂Aは、完全硬化していない状態、例えば、Bステージ状態にある。抄造体10を、使用するバインダー樹脂Aの硬化温度で加熱することにより、バインダー樹脂Aを完全硬化して成形体を得ることができる。抄造体10は、成形体を製造するための成形材料として使用される。
本実施形態に係る抄造体10は、以下の点において構造上の特徴1〜3を有するものである。
(特徴1)抄造体10の表面の平面視において、繊維フィラーBがランダムに配向している。
(特徴2)抄造体10の厚み方向における断面視において、繊維フィラーBの配向状態が高度に制御されており、繊維フィラーBが特定方向に配向している。言い換えれば、抄造体10の厚み方向におけて、繊維フィラーBは積層した状態である。
(特徴3)繊維フィラーB同士がバインダー樹脂Aで結着している。
抄造体10は、たとえば平板状の形状を有することができる。
図1に示される抄造体10の断面拡大図では、繊維フィラーBが平面方向に配列されており、繊維フィラーBの間にバインダー樹脂Aが介在している場合が例示されている。この場合、繊維フィラーB同士は、たとえばバインダー樹脂Aによって互いに結着される。
図1に示される抄造体10の平面拡大図では、繊維フィラーBが面内においてランダムに配置されており、互いに絡み合っている場合が例示されている。繊維フィラーBは、平面視において、直線状の形状を有していてもよく、湾曲していてもよく、折れ曲がっていてもよい。また、平面視においても、繊維フィラーBの間には、たとえばバインダー樹脂Aが介在している。
以下、抄造体10の各成分について説明する。
本実施形態の抄造体10は、バインダー樹脂Aおよび繊維フィラーBを含むものである。また、当該抄造体10は、凝集剤やイオン交換能を有する粉末状物質等をさらに含むことができる。
(バインダー樹脂A)
バインダー樹脂Aは、繊維フィラーB同士の間をつなぐ結着剤として機能するものであれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いることができる。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、又はこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられる。これらの樹脂は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
バインダー樹脂Aは、湿式抄造により繊維等と複合化することから、常温で粒子状又は繊維状であり、水に不溶であるものが好ましい。これらのなかでも熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリフェニレンスルフィドから選ばれる少なくとも一種の樹脂が、成形体の耐熱性を高めることができる点で、更に高融点であるため好ましい。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂が、成形体の耐熱性を高めることができる点で特に好ましい。これらのうち、機械強度や耐薬品性が良好であるという観点では、熱硬化性樹脂が好ましく、成形性が良好であることや、樹脂の透明性などのデザイン性が必要であるという観点では、熱可塑性樹脂が好ましい。一方、熱硬化性樹脂としては、たとえば、非加熱状態にある常温(25℃)において固形状の形態にあるものを使用することが、安定的に作製する観点から好ましい。
粒子状又は繊維状である熱硬化性樹脂としては、たとえば平均粒径500μm以下であるものを含むことができる。たとえば平均粒径500μm以下である固体状態のものを使用することにより、凝集工程において、凝集状態をより形成しやすくすることができる。機械特性をより効果的に向上させる観点からは、粒子状又は繊維状である熱硬化性樹脂の平均粒径が1nm以上300μm以下であることがより好ましい。このような平均粒径を有する粒子状又は繊維状である熱硬化性樹脂は、たとえばアトマイザー粉砕機等を用いて粉砕処理を行うことにより得ることが可能である。なお、熱硬化性樹脂の平均粒径は、たとえば(株)島津製作所製のSALD−7000などのレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて、重量基準の50%粒子径を平均粒径として求めることができる。
バインダー樹脂Aの含有量としては、抄造体10全体に対して、好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは20〜70重量%、特に好ましくは30〜60重量%である。これにより、抄造体10を加熱加圧成形した場合に、外観が良好で且つ樹脂偏在の少ない成形体を作製することができる。
また、バインダー樹脂A中の熱硬化性樹脂の含有量の下限値は、好ましくは、抄造体10全体に対して5重量%以上であり、より好ましくは、15重量%以上であり、最も好ましくは、20重量%以上である。これにより、抄造体10の加工性や軽量性をより効果的に向上させることができる。一方で、バインダー樹脂A中の熱硬化性樹脂の含有量の上限値は、好ましくは、抄造体10全体に対して、80重量%以下であり、より好ましくは、60重量%以下であり、最も好ましくは、40重量%以下である。これにより、抄造体10を硬化して得られた成形体の熱的特性をより効果的に向上させることが可能となる。
(繊維フィラーB)
繊維フィラーBは、たとえば金属繊維;炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの無機繊維;木材繊維、木綿、麻、羊毛等の天然繊維;レーヨン繊維などの再生繊維;セルロース繊維などの半合成繊維;ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、エチレンビニルアルコール繊維などの合成繊維から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、成形品の熱伝導性を向上させる観点からは、金属繊維および無機繊維のうちの一種または二種以上を含むことが好ましく、金属繊維および炭素繊維のうちの少なくとも一方を含むことがより好ましい。また、成形品の機械的特性を向上させる観点からは、合成繊維および無機繊維のうちの一種または二種以上を含むことがより好ましい。とくに、成形品の曲げ強さを向上させる観点からは、炭素繊維を含むことがとくに好ましい。また、成形品の耐衝撃性を向上させる観点からは、アラミド繊維を含むことがとくに好ましい。成形品の電磁波遮蔽性能を向上させる観点からは、金属繊維を含むことがより好ましい。
上記金属繊維は、単独の金属元素で構成される金属繊維であっても、複数の金属で構成される合金繊維であってもよい。金属繊維は、たとえばアルミニウム、銀、銅、マグネシウム、鉄、クロム、ニッケル、チタン、亜鉛、錫、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される1種または二種以上の金属元素を含むことが好ましい。なお、本実施形態において、上記金属繊維としては、たとえば日本精線(株)やベカルトジャパン(株)製のステンレス繊維、虹技(株)製の銅繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維、鋼繊維、チタン繊維、リン青銅繊維などが市販品として入手可能であるが、これらに限定されるものではない。これらの金属繊維は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、これらのうち、熱伝導性という観点では銅繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維のいずれか1種以上が好ましく、電磁波シールド性という観点ではステンレス繊維、銅繊維、アルミニウム繊維のいずれか1種以上が好ましい。
繊維フィラーBとしては、必要特性に応じてシランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤などで表面処理したものや、樹脂との密着性や取り扱い性を向上させるために収束剤処理をしたものを使用してもよい。
また、繊維フィラーBには、バインダー樹脂Aとの密着性、親和性を高める表面処理をあらかじめ施してもよい。表面処理方法としては、例えば、紫外線照射処理、電子線照射処理、プラズマ照射処理、表面層形成処理等が挙げられる。
このうち、表面層としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤のようなカップリング剤、各種界面活性剤、各種油剤等が挙げられる。
また、繊維フィラーBの含有量は、抄造体10全体に対して、例えば、1重量%以上90重量%以下であることが好ましく、特に求められる要求に応じて使い分けることが好ましい。例えば、樹脂の加工性や軽量性が要求された場合は、抄造体10全体の含有量の1重量%以上30重量%未満にすることが好ましく、繊維フィラーBとバインダー樹脂Aの性質をバランスよく発現することが要求された場合は、抄造体10全体の含有量の30重量%以上60重量%未満にすることが好ましく、熱伝導性や剛性など繊維フィラーBの性質が要求された場合には、抄造体10全体の含有量の30重量%以上90重量%以下にすることが望ましい。繊維フィラーBの含有量を抄造体10全体の含有量の1重量%以上とすることで、繊維フィラーBの性能を発現させることができる。一方で、繊維フィラーBの含有量を、抄造体10全体の含有量の90重量%以下とすることで、軽量性、加工性の悪化を防止できる。
また、本実施形態に係る繊維フィラーBの平均繊維長さは、特に限定されないが、要求される特性に応じて使い分けることが望ましく、例えば、500μm以上10mm以下であることが好ましい。平均繊維長さを500μm以上とすることで、繊維フィラーによる特性を発現させることができる。
一方で、平均繊維長さを500μm以上10mm以下とすることで、成形加工性を確保することができる。なお、成形加工性とは、抄造体10の表面平滑性および脱型性のことをいう。
なかでも、繊維フィラーBによる特性を発揮させるとともに、成形加工性を確保する観点から、繊維フィラーの平均繊維長さは、1mm以上、さらには3mm以上、8mm以下であることが好ましい。
また、繊維フィラーBの平均径は、1μm以上100μm以下であることが好ましく、特に5μm以上80μm以下であることが好ましい。1μm以上とすることで、抄造体10の剛性を確保することができ、100μm以下とすることで、成形加工性を確保することができる。
繊維の長さおよび径は、例えば、得られた抄造体10を電子顕微鏡で観察することにより、確認することができる。
上記繊維フィラーBは、高アスペクト比の繊維フィラーBと低アスペクト比の繊維フィラーBをそれぞれ単独で使用または併用してもよい。繊維フィラーBのアスペクト比は、繊維長/繊維幅により求められる。
高アスペクト比の繊維フィラーBとしては、アスペクト比が、好ましくは、100以上であり、より好ましくは、150以上であり、最も好ましくは、200以上である。これにより、抄造体10を成形して得られた成形体の特性を向上することができる。一方、高アスペクト比の繊維フィラーBのアスペクト比は、抄造体10の製造容易性や、抄造体10を成形して得られた制振材の強度を向上させる観点から、好ましくは、1000以下であり、より好ましくは、700以下である。
また、低アスペクト比の繊維フィラーBのアスペクト比は、好ましくは、50以下であり、より好ましくは、30以下であり、最も好ましくは、20以下である。これにより、抄造体10を成形して得られた成形体の特性を向上することができる。一方で、低アスペクト比の繊維フィラーBのアスペクト比が、たとえば1とすることができる。抄造体10を成型して得られる成形体の機械強度と特性とのバランスを向上させる観点からは、低アスペクト比の繊維フィラーBが3以上であることがより好ましい。
本発明に用いられる繊維フィラーBには、有機繊維をフィブリル化したパルプ繊維をさらに含むことができる。パルプ繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、リンターパルプや木材パルプ等のセルロース繊維、ケナフ、ジュート、竹などの天然繊維、パラ型全芳香族ポリアミド繊維やその共重合体、芳香族ポリエステル繊維、ポリベンザゾール繊維、メタ型アラミド繊維やその共重合体、アクリル繊維、アクリロニトリル繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維をフィブリル化したパルプ状繊維が挙げられる。繊維フィラーBの分散性を向上させる観点からは、アラミド繊維により構成されるアラミドパルプ、およびアクリロニトリル繊維により構成されるポリアクリロニトリルパルプのうちのいずれか一方または双方を含むことが好ましい。
有機繊維のフィブリル化方法については特に限定されないが、有機繊維を水に分散させたスラリーとしてビーターもしくはリファイナーなどで叩解することにより、フィブリル化処理有機繊維を作製することができる。叩解時のスラリー濃度は任意であるが、固形分濃度0.1〜10重量%が好ましい。
また、上記パルプ繊維の配合量としては、抄造体10に対して、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは3〜30重量%、特に好ましくは5〜20重量%である。これにより、樹脂粒子の歩留りが高く、樹脂粒子脱落を抑えた取り扱い性の良い抄造体10を得ることができ、加熱加圧成形した成形体の機械的特性を高めることができる。
本実施形態の抄造体10には、材料歩留まり等の向上を目的として抄造薬剤を添加することができる。抄造薬剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系重合体、ビニル系重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンオキシド等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらより選ばれる1種、又は2種以上が用いられる。また、抄造薬剤として用いられる熱可塑性樹脂は、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、オキサゾリン基、カルボン酸塩基及び酸無水物基から選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましく、2種以上の官能基を有していてもよい。中でも、アミノ基を有する熱可塑性樹脂がより好ましい。
本実施形態の抄造体10には、さらに添加剤を添加することができる。添加剤としては、充填剤、導電性付与剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、滑剤、離型剤、相溶化剤、分散剤、結晶核剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、発泡剤、抗菌剤、制震剤、防臭剤、摺動性改質剤、帯電防止剤などが例示される。
上記充填剤としては、破砕ガラス、マイカ、タルク、カオリン、セリサイト、ベントナイト、ゾノトライト、セピオライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ワラステナイト、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸亜カルシウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカが例示される。
本実施形態において、繊維フィラーBを用いる場合、抄造体10は、さらにイオン交換能を有する粉末状物質を含んでもよい。このようなイオン交換能を有する粉末物質を用いることにより、繊維フィラーBの繊維長を長く維持したまま高い収率で、繊維フィラーBとバインダー樹脂Aとの凝集体122,132を効率よく作製することができるため、繊維フィラーBとバインダー樹脂Aとの配合比率を広範囲に調整することが可能となる。このため、求められる要求に応じて、繊維フィラーBの特性と、バインダー樹脂Aの特性とのバランスに優れた幅広い抄造体10を、より効率的に得ることができる。
上記イオン交換能を有する粉末状物質としては、粘土鉱物、鱗片状シリカ微粒子、ハイドロタルサイト類、フッ素テニオライト及び膨潤性合成雲母から選ばれる少なくとも1種の層間化合物を含むことが好ましい。
上記粘土鉱物としては、天然物でも合成されたものであっても特に限定されるものではないが、例えば、スメクタイト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム及び燐酸チタニウムなどが挙げられる。ハイドロタルサイト類としては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト状物質などが挙げられる。フッ素テニオライトとしては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、リチウム型フッ素テニオライト、ナトリウム型フッ素テニオライトなどが挙げられる。膨潤性合成雲母としては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム型四珪素フッ素雲母、リチウム型四珪素フッ素などが挙げられ、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらのうちでは、粘土鉱物がより好ましく、スメクタイトが天然物から合成物まで存在し、選択の幅が広いという点においてさらに好ましい。
スメクタイトとしては、イオン交換能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト及びスチーブンサイトなどが挙げられる。モンモリロナイトは、アルミニウムの含水ケイ酸塩であるが、モンモリロナイトを主成分とし、他に石英や雲母、長石、ゼオライトなどの鉱物を含んでいるベントナイトであってもよい。着色や不純物を気にする用途に用いる場合などには、不純物が少ない合成スメクタイトが好ましい。
イオン交換能を有する粉末状物質として、例えば、クニミネ工業(株)製のクニピア(ベントナイト)、スメクトンSA(合成サポナイト)、AGCエスアイテック(株)製のサンラブリー(鱗片状シリカ微粒子)、コープケミカル(株)製のソマシフ(膨潤性合成雲母)、ルーセンタイト(合成スメクタイト)、堺化学工業(株)製のハイドロタルサイトSTABIACE HT−1(ハイドロタルサイト)などが市販品として入手可能であるが、これらに限定されるものではない。
上記イオン交換能を有する粉末状物質の含有量は、抄造体10全体の0.1重量%以上30重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは、2重量%以上20重量%以下である。上記範囲内であれば、繊維フィラーBとバインダー樹脂Aのように性質の異なる構成材料の作業性を向上させる効果を得ることができる。尚、繊維フィラーBとバインダー樹脂Aとの比率や、高分子凝集剤の種類や量などに合せて、イオン交換能を有する粉末状物質の含有量を調整することが好ましい。
(凝集剤E)
本実施形態の抄造体10は、凝集剤E(高分子凝集剤)を含むことができる。凝集剤Eは、抄造体10の製造プロセスにおいて、バインダー樹脂Aと繊維フィラーBとを含む原料成分をフロック状に凝集させる機能を有する。このため、より安定的な樹脂シートの製造を実現することができる。
上記高分子凝集剤は、特にイオン性などにより限定されるものではなく、カチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤などを用いることができる。このようなものとして、例えば、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、ホフマンポリアクリルアミド、マンニックポリアクリルアミド、両性共重合ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、両性澱粉、ポリエチレンオキサイドなどを挙げることができる。これらの高分子凝集剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、高分子凝集剤として、ポリマー構造や分子量、水酸基やイオン性基などの官能基量などは、必要特性に応じて特に制限無く使用可能である。また、高分子凝集剤としては、例えば、和光純薬工業(株)製や関東化学工業(株)製、住友精化(株)製のポリエチレンオキシドや、ハリマ化成(株)製のカチオン性PAMであるハリフィックス、アニオン性PAMであるハーマイドB−15、両性PAMであるハーマイドRB−300、三和澱粉工業(株)製カチオン化澱粉であるSC−5などが市販品として入手可能であるが、これらに限定されるものではない。
また、上記高分子凝集剤の添加量としては、特に限定はされないが、抄造体10全体に対して、例えば、100重量ppm以上1重量%以下が好ましい。更に好ましくは、500重量ppm以上0.5重量%である。これにより、収得よく抄造体10の構成材料を凝集させることができる。高分子凝集剤の添加量を上記下限値以下とすることにより、収得の低下を抑制でき、また、上記上限値以下とすることにより、凝集力を適切にでき、脱水などが生じることを抑制できる。
本実施形態の抄造体10は、構成材料として、さらに無機粉末及び金属粉末から選ばれる少なくとも一種のフィラー粉末を含むことにより、特性を調整することができる。無機粉末としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化マグネシウムなどの酸化物類や、窒化ホウ素、窒化アルミニウム及び窒化ケイ素などの窒化物類や、硫酸バリウム、硫酸鉄、硫酸銅などの硫化物類や、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物類や、カオリナイト、タルク、天然マイカ、合成マイカなどの鉱物類ならびに、炭化ケイ素などの炭化物類などが挙げられ、そのまま使用してもよいが、必要特性に応じてシランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤などで表面処理をしたものを使用してもよい。また、金属粉末としては、単独の金属元素で構成される金属粉末であっても、複数の金属で構成される合金粉末であってもよいが、金属粉末を構成する金属元素としては、アルミニウム、銀、銅、マグネシウム、鉄、クロム、ニッケル、チタン、亜鉛、錫、モリブデン及びタングステンなどが挙げられる。
本実施形態の抄造体10には、上述の構成材料の他に、特性向上を目的とした酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、離型剤、可塑剤、難燃剤、樹脂の硬化触媒や硬化促進剤、顔料、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤などの紙力向上剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、サイズ定着剤、消泡剤、酸性抄紙用ロジン系サイズ剤、中性製紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニルコハク酸無水物系サイズ剤、特殊変性ロジン系サイズ剤などのサイズ剤、硫酸バンド、塩化アルミ、ポリ塩化アルミなどの凝結剤などを、生産条件調整や、要求される物性を発現させることを目的に様々な添加剤を使用することができる。
また、本実施形態の抄造体10は、上述の構成材料を適切に選択することで、様々な特性を発揮することが可能になる。例えば、成形品の耐衝撃性を向上させる観点からは、アラミド繊維を含むことがとくに好ましい。成形品の電磁波遮蔽性能を向上させる観点からは、金属繊維を含むことがより好ましい。磁性による電磁波吸収効果を向上させる観点から、磁性金属からなる粒子を含むことが好ましい。また、熱伝導性を向上させる観点から、例えば、アスペクト比が100以上の高アスペクト比の繊維フィラーBを含むことが好ましい。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
10 抄造体
20 第1抄造層
21 表面
23 側面
30 第2抄造層
100 抄造装置
101 抄造装置
102 容器
104 吸引容器
106 吸引口
110 フィルター
120 第1スラリー
122 凝集体
130 第2スラリー
132 凝集体
140 吸引領域
142 非吸引領域
150 第1マスク
152 第1マスク
154 第1マスク
156 第2マスク
160 筒
L 交絡領域
A、A20、A30 バインダー樹脂
B、B20、B30 繊維フィラー

Claims (18)

  1. 第1バインダー樹脂、第1繊維フィラーおよび第1溶媒を含む第1スラリーをフィルターに通過させることにより、前記フィルターの表面上に第1抄造層を形成する第1抄造工程と、
    第2バインダー樹脂、前記第1繊維フィラーとは異なる第2繊維フィラーおよび第2溶媒を含む第2スラリーを、前記第1抄造層に接触させるとともに前記フィルターに通過させることにより、前記フィルターの表面上に第2抄造層を形成する第2抄造工程と、を含む、抄造体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の抄造体の製造方法であって、
    前記第2抄造工程は、前記第1抄造層の上面と下面との間に位置する側壁面に対して、前記第2スラリーの水流を当てる工程を含む、抄造体の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の抄造体の製造方法であって、
    前記第2抄造工程は、前記第1抄造層と前記第2抄造層との間に、互いに異なる前記第1繊維フィラーと前記第2繊維フィラーとが交絡した交絡領域を形成する工程を含む、抄造体の製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の抄造体の製造方法であって、
    前記第1抄造工程と前記第2抄造工程の間に、
    乾燥処理および加熱処理を行わない、抄造体の製造方法。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の抄造体の製造方法であって、
    前記第1抄造工程は、
    前記フィルターの表面の一部の領域上に第1マスクを配置する工程と、
    前記第1スラリーを前記フィルターの表面に導入し、前記第1スラリーを前記フィルターの裏面側から吸引する工程と、をこの順番で含み、
    前記第2抄造工程は、
    前記第1マスクを前記フィルターの表面から除く工程と、
    前記第2スラリーを前記フィルターの表面に導入して、前記第2スラリーを前記フィルターの裏面側から吸引する工程と、をこの順番で含む、抄造体の製造方法。
  6. 請求項5に記載の抄造体の製造方法であって、
    前記第2抄造工程は、
    前記第1マスクを前記フィルターの表面から除く工程と、
    第2マスクを第1抄造層の表面の少なくとも一部の領域上に配置する工程と、
    前記第2スラリーを前記フィルターの表面に導入して、前記第2スラリーを前記フィルターの裏面側から吸引する工程と、
    前記第2マスクを前記第1抄造層の表面から除く工程と、をこの順番で含む、抄造体の製造方法。
  7. 請求項1から4のいずれか1項に記載の抄造体の製造方法であって、
    前記第1抄造工程は、
    前記フィルターの表面上に筒を接置した状態で、前記フィルターおよび前記筒の一部を前記第1スラリーに浸漬する浸漬工程と、
    前記フィルターおよび前記筒を前記第1スラリーの水位よりも高い位置に引き上げる引き上げ工程と、を含み、
    さらに前記第2スラリーを前記筒中に導入する工程を含み、
    前記第2抄造工程は、
    前記フィルターと前記筒とをわずかに離した状態で、前記第2スラリーの自重により、前記筒中の前記第2スラリーを前記フィルターに通過させる工程を含む、抄造体の製造方法。
  8. 請求項7に記載の抄造体の製造方法であって、
    前記第2スラリーを前記筒中に導入する工程は、
    前記浸漬工程の後、前記引き上げ工程の前に行われるか、もしくは、
    前記第1抄造工程の後、前記第2抄造工程の前に行われる、抄造体の製造方法。
  9. 請求項1から4のいずれか1項に記載の抄造体の製造方法であって、
    前記第1抄造工程は、
    前記フィルターの表面の一部の領域上に第1マスクを配置した状態で、前記フィルターを前記第1スラリー中に浸漬する工程と、
    前記フィルターを前記第1スラリーの水位よりも高い位置に引き上げる工程と、を含み、
    前記第2抄造工程は、
    前記第1マスクを前記フィルターの表面から除く工程と、
    前記フィルターを前記第2スラリー中に浸漬する工程と、
    前記フィルターを前記第2スラリーの水位よりも高い位置に引き上げる工程と、を含む、抄造体の製造方法。
  10. 請求項9に記載の抄造体の製造方法であって、
    前記第2抄造工程は、
    前記第1マスクを前記フィルターの表面から除く工程と、
    第2マスクを第1抄造層の表面の一部の領域上に配置する工程と、
    前記フィルターを前記第2スラリー中に浸漬する工程と、
    前記フィルターを前記第2スラリーの水位よりも高い位置に引き上げる工程と、
    前記第2マスクを前記第1抄造層の表面から除く工程と、をこの順番で含む、抄造体の製造方法。
  11. 請求項1から10のいずれか1項に記載の抄造体の製造方法であって、
    前記第1および/または第2バインダー樹脂は、熱硬化性樹脂を含む、抄造体の製造方法。
  12. 請求項1から11のいずれか1項に記載の抄造体の製造方法であって、
    前記第1および/または第2繊維フィラーの繊維長は、10μm以上15mm以下である、抄造体の製造方法。
  13. 請求項1から12のいずれか1項に記載の抄造体の製造方法であって、
    前記第1および/または第2繊維フィラーが、金属繊維、無機繊維、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維からなる群から選択される一種以上を含む、抄造体の製造方法。
  14. 請求項1から13のいずれか1項に記載の抄造体の製造方法により得られた抄造体に対して、加圧成形を行うことにより成形体を得る工程を含む、成形体の製造方法。
  15. バインダー樹脂と繊維フィラーとを含む抄造層が、複数結合した抄造体であって、
    一の前記抄造層は、他の前記抄造層と間に、互いに異なる前記繊維フィラーが交絡した交絡領域を有する、抄造体。
  16. 請求項15に記載の抄造体であって、
    前記交絡領域の幅が、10μm以上5mm以下である、抄造体。
  17. 請求項15または16に記載の抄造体であって、
    複数の前記抄造層が、平置きした状態で横並びになるように結合している、抄造体。
  18. 請求項15から17のいずれか1項に記載の抄造体であって、
    複数の前記抄造層が、互いに積層した状態で結合している、抄造体。
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