JP2016130279A - 樹脂シート、成形体、および樹脂シートの製造方法 - Google Patents

樹脂シート、成形体、および樹脂シートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電気電子用途、自動車用途等様々な用途に適用可能な樹脂シートを成形して得られる成形体の熱伝導性を向上させる樹脂シートの提供。
【解決手段】樹脂シート10は、バインダー樹脂Aと、アスペクト比が100以上である繊維状フィラーBと、繊維状フィラーBよりもアスペクト比が小さいフィラーCと、を含み、繊維状フィラーBが平面方向に配列されている。フィラーCがアスペクト比が50以下のミルドファイバー又は粉粒体である樹脂シート10。繊維状フィラー(B)は、チョップドファイバーである樹脂シート10。前記樹脂シートを、圧力300kg/cm、温度180℃の条件で10分間熱処理して得られる成形体の平面方向における熱伝導率が60W/mK以上であり、平面方向における熱伝導率λと厚さ方向における熱伝導率λとの比λ/λが、3.0×10−2〜8.0×10−2である樹脂シート10。
【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂シート、成形体、および樹脂シートの製造方法に関する。
電気電子分野や、自動車産業分野等の様々な分野において、各種の物品を構成するための材料として繊維材料が用いられる場合がある。このような技術としては、たとえば特許文献1、2に記載されるものが挙げられる。
特許文献1は、炭素繊維をバインダー樹脂で接合した炭素繊維不織布に、無機充填剤を含む熱硬化性樹脂組成物を含浸したプリプレグからなる熱伝導性樹脂シートに関する技術である。特許文献2は、マトリクス成分、ピッチ系黒鉛化短繊維、黒鉛粒子を含む熱伝導性組成物に関する技術である。
特開2010−53224号公報 特開2012−188488号公報
各種の物品を形成するために、たとえばバインダー樹脂と、繊維状フィラーと、を含む樹脂シートを成形して得られる成形体が用いられる場合がある。近年、このような物品の信頼性を向上させるため、上記樹脂シートにより形成される成形体の熱伝導性を向上させることが求められている。
本発明によれば、
バインダー樹脂(A)と、
アスペクト比が100以上である繊維状フィラー(B)と、
前記繊維状フィラー(B)よりもアスペクト比が小さいフィラー(C)と、
を含み、
前記繊維状フィラー(B)が平面方向に配列されている樹脂シートが提供される。
また、本発明によれば、
バインダー樹脂(A)と、
アスペクト比が100以上である繊維状フィラー(B)と、
前記繊維状フィラー(B)よりもアスペクト比が小さいフィラー(C)と、
を含み、
前記繊維状フィラー(B)が平面方向に配列されている成形体が提供される。
また、本発明によれば、
バインダー樹脂(A)と、アスペクト比が100以上である繊維状フィラー(B)と、前記繊維状フィラー(B)よりもアスペクト比が小さいフィラー(C)と、を含む材料組成物を抄造する工程を含む樹脂シートの製造方法が提供される。
本発明によれば、樹脂シートを成形して得られる成形体の熱伝導性を向上させることが可能となる。
本実施形態に係る樹脂シートの一例を示す斜視模式図である。 本実施形態に係る樹脂シートの製造方法の一例を示す断面模式図である。 樹脂シートを用いた成形体の形成方法の一例を示す断面模式図である。
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
図1は、本実施形態に係る樹脂シート10の一例を示す斜視模式図である。図1においては、樹脂シート10のうちの点線で示される領域の拡大模式図が示されている。本実施形態に係る樹脂シート10は、バインダー樹脂(A)と、アスペクト比が100以上である繊維状フィラー(B)と、繊維状フィラー(B)よりもアスペクト比が小さいフィラー(C)と、を含む。また、繊維状フィラー(B)は、平面方向に配列されている。
上述のとおり、バインダー樹脂と、繊維状フィラーと、を含む樹脂シートについては、これを成形して得られる成形体の熱伝導性を向上させることが求められている。本発明者は、アスペクト比が100以上である繊維状フィラー(B)と、繊維状フィラー(B)よりもアスペクト比が小さいフィラー(C)と、を樹脂シート中に含ませ、かつ繊維状フィラー(B)を平面方向に配向させることにより、成形体の熱伝導性を向上させることができることを新たに知見に、本実施形態に係る樹脂シート10に至った。このように、本実施形態によれば、樹脂シートを成形して得られる成形体の熱伝導性を向上させることが可能となる。このため、当該成形体を備える物品の信頼性向上に寄与することもできる。
以下、本実施形態に係る樹脂シート10、および成形体について詳細に説明する。
(樹脂シート)
まず、樹脂シート10について説明する。
樹脂シート10は、たとえば各種の物品を構成する成形体を形成するために用いられる。これにより、熱的特性、機械的特性、および電磁波遮蔽性能等のバランスに優れた成形体を実現することが可能となる。樹脂シート10の用途は、とくに限定されず、たとえば電気電子用途や自動車用途等に例示される様々な用途に適用することができる。本実施形態においては、たとえばフレキシブル配線基板、インターポーザ基板、部品内蔵基板および光導波路基板等の電子部品を構成する基板や、電子機器の筐体、放熱部材等を、樹脂シート10を用いて形成される成形体の用途として挙げることができる。
樹脂シート10は、後述するように、たとえば抄造法により形成される。抄造法とは、製紙化技術の一つである紙抄きの技術のことを示している。本実施形態においては、たとえばバインダー樹脂(A)と、繊維状フィラー(B)と、フィラー(C)と、を含む材料組成物を抄造して得られる抄造体により樹脂シート10が構成される。これにより、樹脂シート10中にバインダー樹脂(A)、繊維状フィラー(B)およびフィラー(C)を含ませつつ、繊維状フィラー(B)を平面方向に配列させることが可能となる。また、抄造法を採用することによって、繊維状フィラー(B)およびフィラー(C)を樹脂シート中に均一に分散させることや、繊維状フィラー(B)同士の絡み合いを適度に作ることができると推定されている。必ずしも明らかではないが、これらの理由から、樹脂シート10を用いて形成される成形体の熱的特性や機械的特性を向上させることができると考えられる。また、抄造法は加工性に優れることから、樹脂シート10の意匠性を向上させることもできる。また、抄造法は、樹脂シート10を構成する材料の組み合わせに制約が少ない。このため、物品に求められる特性に応じて、バインダー樹脂(A)、繊維状フィラー(B)、およびフィラー(C)とともに他の各種添加剤を適宜使用することができる。
樹脂シート10は、たとえば平板状の形状を有することができる。
上述したように、繊維状フィラー(B)は、樹脂シート10内において平面方向に配列されている。これにより、とくに平面方向における樹脂シート10の熱伝導性を向上させることができる。図1に示される樹脂シート10の断面拡大図では、繊維状フィラー(B)(図1中においてB)が平面方向に配列されており、繊維状フィラー(B)の間にバインダー樹脂(A)(図1中においてA)とフィラー(C)(図1中においてC)が介在している場合が例示されている。この場合、繊維状フィラー(B)同士、または繊維状フィラー(B)とフィラー(C)は、たとえばバインダー樹脂(A)によって互いに結着される。
図1に示される樹脂シート10の平面拡大図では、繊維状フィラー(B)が面内においてランダムに配置されており、互いに絡み合っている場合が例示されている。繊維状フィラー(B)は、平面視において、直線状の形状を有していてもよく、湾曲していてもよく、折れ曲がっていてもよい。また、平面視においても、繊維状フィラー(B)の間には、たとえばバインダー樹脂(A)とフィラー(C)が介在している。
(バインダー樹脂(A))
バインダー樹脂(A)は、バインダーとして作用して繊維フィラー(B)を結着し得るものであればとくに限定されるものではなく、たとえば熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のうちのいずれか一方または双方を含むことができる。樹脂シート10を用いて形成される成形体の機械強度や耐薬品性を向上させる観点からは、熱硬化性樹脂を含むことがとくに好ましい。また、樹脂シート10の成形性を向上させる観点や樹脂の透明性などのデザイン性が必要であるという観点からは、熱可塑性樹脂を含むことがとくに好ましい。
なお、バインダー樹脂(A)としては、たとえば25℃において固形状のものを用いることが抄造法による樹脂シート10の製造を安定的に行う観点からより好ましい。
バインダー樹脂(A)として用いられる熱硬化性樹脂は、たとえばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、およびポリウレタンから選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂のうちの少なくとも一方を含むことが、機械的特性や熱的特性のバランスを向上させる観点からより好ましい。バインダー樹脂(A)として用いられる熱可塑性樹脂は、たとえばアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびフッ素樹脂から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、機械的特性や熱的特性のバランスを向上させる観点からは、ポリプロピレンを含むことがより好ましい。
本実施形態において、樹脂シート10は、たとえば粒状または粉状の形状を有するバインダー樹脂(A)を含むことができる。これにより、樹脂シート10を用いて得られる成形体の熱伝導性をより効果的に向上させることができる。この理由は明らかではないが、樹脂シート10を加熱、加圧して成形する際に、バインダー樹脂(A)が粒状または粉状の形状を有することにより溶融時の含浸性が向上し、繊維状フィラー(B)やフィラー(C)とバインダー樹脂(A)との界面が良好に形成されることによると推定されている。本実施形態においては、たとえば粉粒体であるバインダー樹脂(A)と、繊維状フィラー(B)と、フィラー(C)と、を抄造して樹脂シート10を製造することにより、粒状または粉状の形状を有するバインダー樹脂(A)を含む樹脂シート10を実現することが可能である。
粒状または粉状の形状を有するバインダー樹脂(A)としては、たとえば平均粒径500μm以下であるものを含むことができる。樹脂シート10を用いて得られる成形体の熱伝導性をより効果的に向上させる観点からは、粒状または粉状の形状を有するバインダー樹脂(A)の平均粒径が1nm以上300μm以下であることがより好ましい。このような平均粒径を有するバインダー樹脂(A)は、たとえばアトマイザー粉砕機等を用いて粉砕処理を行うことにより得ることが可能である。なお、バインダー樹脂(A)の平均粒径は、たとえば(株)島津製作所製のSALD−7000などのレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて、質量基準の50%粒子径を平均粒径として求めることができる。
バインダー樹脂(A)の含有量は、樹脂シート10全体に対して5重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることがとくに好ましい。これにより、樹脂シート10の加工性や軽量性をより効果的に向上させることができる。一方で、バインダー樹脂(A)の含有量は、樹脂シート10全体に対して60重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、35重量%以下であることがとくに好ましい。これにより、樹脂シート10を成形して得られる成形体の機械的特性や熱的特性をより効果的に向上させることが可能となる。
(繊維状フィラー(B))
繊維状フィラー(B)は、上述したとおり、アスペクト比が100以上である。これにより、樹脂シート10を成形して得られる成形体の熱伝導性を向上させることが可能となる。繊維状フィラー(B)は、とくに平面方向における熱伝導性の向上に寄与するものと考えられている。熱伝導性を向上させる観点からは、繊維状フィラー(B)のアスペクト比が150以上であることがより好ましく、200以上であることがとくに好ましい。一方で、繊維状フィラー(B)のアスペクト比は、樹脂シート10の製造容易性や、樹脂シート10を成型して得られる成形体の強度を向上させる観点から、1000以下であることが好ましく、700以下であることがより好ましい。なお、繊維状フィラー(B)のアスペクト比は、繊維長/繊維幅により求められる。また、本明細書における繊維状フィラー(B)は、後述するパルプ(D)を含まない概念である。
繊維状フィラー(B)の繊維長は、たとえば100μm以上200mm以下であることが好ましく、500μm以上50mm以下であることがより好ましく、500μm以上10mm以下であることがとくに好ましい。また、繊維状フィラー(B)の繊維幅は、たとえば0.5μm以上1mm以下であることが好ましく、3μm以上100μm以下であることがより好ましい。繊維フィラー(B)の繊維長および繊維幅を上述の範囲とすることにより、繊維フィラー(B)のアスペクト比を所望の範囲内とすることがより容易となる。このため、樹脂シート10を成形して得られる成形体の熱伝導性をより効果的に向上させることができる。また、熱的特性、機械的特性、および電磁波遮蔽性能のバランスの向上を図ることもできる。さらには、樹脂シート10中における繊維状フィラー(B)の均一分散性の向上に寄与することも可能となる。
繊維状フィラー(B)は、必要特性に応じて種々の形状を有することができる。本実施形態においては、繊維状フィラー(B)として、たとえばチョップドファイバーを用いることができる。これにより、優れた熱伝導性をより安定的に実現することが可能となる。
繊維フィラー(B)は、たとえば金属繊維;炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの無機繊維;木材繊維、木綿、麻、羊毛等の天然繊維;レーヨン繊維などの再生繊維;セルロース繊維などの半合成繊維;ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、エチレンビニルアルコール繊維などの合成繊維から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、熱伝導性を向上させる観点からは、金属繊維および無機繊維のうちの一種または二種以上を含むことが好ましく、金属繊維および炭素繊維のうちの少なくとも一方を含むことがより好ましい。また、機械的特性を向上させる観点からは、合成繊維および無機繊維のうちの一種または二種以上を含むことがより好ましい。とくに曲げ強さを向上させる観点からは、炭素繊維を含むことがとくに好ましい。また、耐衝撃性を向上させる観点からは、アラミド繊維を含むことがとくに好ましい。電磁波遮蔽性能を向上させる観点からは、金属繊維を含むことがより好ましい。
金属繊維は、単独の金属元素で構成される金属繊維であっても、複数の金属で構成される合金繊維であってもよい。金属繊維は、たとえばアルミニウム、銀、銅、マグネシウム、鉄、クロム、ニッケル、チタン、亜鉛、錫、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される1種または二種以上の金属元素を含むことが好ましい。なお、本実施形態における金属繊維としては、たとえば日本精線(株)やベカルトジャパン(株)製のステンレス繊維、虹技(株)製の銅繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維、鋼繊維、チタン繊維、りん青銅繊維などが市販品として入手可能であるが、これらに限定されるものではない。これらの金属繊維は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、これらのうち、熱伝導性という観点では銅繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維のいずれか1種以上が好ましく、電磁波シールド性という観点ではステンレス繊維、銅繊維、アルミニウム繊維のいずれか1種以上が好ましい。
繊維状フィラー(B)としては、必要特性に応じてシランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤などで表面処理したものや、樹脂との密着性や取り扱い性を向上させるために収束剤処理をしたものを使用してもよい。
繊維状フィラー(B)の含有量は、樹脂シート10全体に対して15重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、45重量%以上であることがとくに好ましい。これにより、樹脂シート10を成型して得られる成形体について、機械的特性や熱的特性、電磁波遮蔽性のバランスをより効果的に向上させることができる。一方で、繊維状フィラー(B)の含有量は、樹脂シート10全体に対して80重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましく、65重量%以下であることがとくに好ましい。これにより、樹脂シート10の加工性や軽量性を向上させることができる。また、繊維状フィラー(B)の分散性をより効果的に向上させて、樹脂シート10を成型して得られる成形体の機械的特性や熱的特性、電磁波遮蔽性の向上に寄与することも可能である。
(フィラー(C))
フィラー(C)は、上述したとおり、アスペクト比が繊維状フィラー(B)よりも小さい。これにより、樹脂シート10を成形して得られる成形体の熱伝導性を向上させることが可能となる。なお、フィラー(C)が繊維状である場合、フィラー(C)のアスペクト比は繊維長/繊維幅により求めることができる。一方で、フィラー(C)が粉粒体である場合には、最も長い直径である長径と最も短い直径である短径との比、長径/短径により求めることができる。また、本明細書におけるフィラー(C)は、後述するパルプ(D)を含まない概念である。
フィラー(C)のアスペクト比は、たとえば50以下とすることが好ましい。これにより、樹脂シート10を成形して得られる成形体の熱伝導性をより効果的に向上させることができる。また、熱伝導性を向上させる観点からは、フィラー(C)のアスペクト比が30以下であることがより好ましく、20以下であることがとくに好ましい。熱伝導率をより効果的に向上させる観点からは、フィラー(C)のアスペクト比を8以下とすることもできる。一方で、フィラー(C)のアスペクト比の下限値は、とくに限定されず、たとえば1とすることができる。繊維状フィラー(B)との絡みつきにより、樹脂シート10を成形して得られる成形体の機械強度と熱伝導性のバランスを向上させる観点からは、フィラー(C)のアスペクト比が3以上であることがより好ましい。
フィラー(C)の繊維長または長径は、たとえば1μm以上10mm以下であることが好ましく、10μm以上1mm以下であることがより好ましく、10μm以上500μm以下であることがとくに好ましい。また、フィラー(C)の繊維幅または短径は、たとえば0.5μm以上500μm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。これにより、フィラー(C)のアスペクト比を所望の範囲内とすることがより容易となる。このため、樹脂シート10を成形して得られる成形体の熱伝導性をより効果的に向上させることができる。また、熱的特性、機械的特性、および電磁波遮蔽性能のバランスの向上を図ることもできる。さらには、樹脂シート10中におけるフィラー(C)の均一分散性の向上に寄与することも可能となる。なお、本実施形態においては、フィラー(C)として、たとえば繊維状フィラー(B)よりも繊維長が短いものを用いることができる。
フィラー(C)は、必要特性に応じて種々の形状を有することができる。本実施形態においては、フィラー(C)として、たとえばミルドファイバー等の繊維材料、または粉粒体のうちの少なくとも一方を用いることができる。これにより、樹脂シート10を成形して得られる成形体について、優れた熱伝導性をより安定的に実現することが可能となる。また、樹脂シート10中におけるフィラー(C)の均一分散性の向上に寄与することもできる。熱伝導性の向上を図る観点からは、たとえばフィラー(C)としてミルドファイバーまたは粉粒体のうちの一方または双方を含むことがより好ましく、粉粒体を少なくとも含むことがとくに好ましい。
フィラー(C)が繊維材料を含む場合、フィラー(C)は、たとえばアルミニウム、銀、銅、マグネシウム、鉄、クロム、ニッケル、チタン、亜鉛、錫、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される1種または二種以上の金属元素を含む金属繊維;炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの無機繊維;木材繊維、木綿、麻、羊毛等の天然繊維;レーヨン繊維などの再生繊維;セルロース繊維などの半合成繊維;ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、エチレンビニルアルコール繊維などの合成繊維から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、熱伝導性を向上させる観点からは、金属繊維および無機繊維のうちの一種または二種以上を含むことが好ましく、金属繊維および炭素繊維のうちの少なくとも一方を含むことがより好ましい。機械的特性と熱伝導性のバランスを向上させる観点からは、炭素繊維を少なくとも含むことがとくに好ましい。
フィラー(C)が粉粒体を含む場合、フィラー(C)は、たとえば黒鉛、カーボンブラック、炭、コークス、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等の炭素材料、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスのようなケイ酸塩、酸化チタン、アルミナのような酸化物、ケイ酸マグネシウム、溶融シリカ、結晶シリカのようなケイ素化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトのような炭酸塩、酸化亜鉛、酸化マグネシウムのような酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムのような水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムのような硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムのようなホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素のような窒化物から選択される一種または二種以上の粉粒体を含むことができる。これらの中でも、機械的特性と熱伝導性のバランスを向上させる観点からは、炭素材料を含むことが好ましく、黒鉛またはカーボンブラックのうちの少なくとも一方を含むことがより好ましい。
フィラー(C)としては、必要特性に応じてシランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤などで表面処理したものや、樹脂との密着性や取り扱い性を向上させるために収束剤処理をしたものを使用してもよい。
フィラー(C)の含有量は、樹脂シート10全体に対して3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることがとくに好ましい。これにより、樹脂シート10を成型して得られる成形体について、機械的特性や熱的特性、電磁波遮蔽性のバランスをより効果的に向上させることができる。一方で、フィラー(C)の含有量は、樹脂シート10全体に対して40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、25重量%以下であることがとくに好ましい。これにより、樹脂シート10の加工性や軽量性を向上させることができる。また、フィラー(C)の分散性をより効果的に向上させて、樹脂シート10を成型して得られる成形体の機械的特性や熱的特性、電磁波遮蔽性の向上に寄与することも可能である。
(パルプ(D))
樹脂シート10は、たとえばパルプ(D)を含むことができる。パルプ(D)は、フィブリル構造を有する繊維材料であり、たとえば機械的または化学的に繊維材料をフィブリル化することによって得ることができる。後述する抄造法を用いた樹脂シート10の製造方法においては、バインダー樹脂(A)、繊維状フィラー(B)、およびフィラー(C)とともにパルプ(D)を抄造することによって、バインダー樹脂(A)をより効果的に凝集させることができることから、より安定的な樹脂シート10の製造を実現することが可能となる。また、繊維状フィラー(B)やフィラー(C)の分散性を向上させることもできるため、樹脂シート10を成形して得られる成形体の機械的特性や熱的特性の向上に寄与することもできる。
パルプ(D)としては、たとえばリンターパルプ、木材パルプ等のセルロース繊維、ケナフ、ジュート、竹などの天然繊維、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)やその共重合体、芳香族ポリエステル繊維、ポリベンザゾール繊維、メタ型アラミド繊維やその共重合体、アクリル繊維、アクリロニトリル繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維がフィブリル化したものが挙げられる。パルプ(D)は、これらのうちの一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、樹脂シート10を成形して得られる成形体の機械的特性や熱的特性を向上させる観点や、繊維状フィラー(B)およびフィラー(C)の分散性を向上させる観点からは、アラミド繊維により構成されるアラミドパルプ、およびアクリロニトリル繊維により構成されるポリアクリロニトリルパルプのうちのいずれか一方または双方を含むことがとくに好ましい。
パルプ(D)の含有量は、樹脂シート10全体に対して0.5重量%以上であることが好ましく、1.5重量%以上であることがより好ましく、2重量%以上であることがとくに好ましい。これにより、抄造時におけるバインダー樹脂(A)の凝集をより効果的に発生させて、さらに安定的な樹脂シートの製造を実現することができる。また、パルプ(D)の含有量は、樹脂シート10全体に対して15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、8重量%以下であることがとくに好ましい。これにより、機械的特性や熱的特性をより効果的に向上させることが可能となる。
(凝集剤(E))
樹脂シート10は、たとえば凝集剤(E)を含むことができる。凝集剤(E)は、後述する抄造法を用いた樹脂シート10の製造方法において、バインダー樹脂(A)、繊維状フィラー(B)およびフィラー(C)をフロック状に凝集させる機能を有する。このため、より安定的な樹脂シートの製造を実現することができる。
凝集剤(E)は、たとえばカチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤、および両性高分子凝集剤から選択される一種または二種以上を含むことができる。このような凝集剤(E)の例示としては、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、ホフマンポリアクリルアミド、マンニックポリアクリルアミド、両性共重合ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、両性澱粉、ポリエチレンオキサイドなどを挙げることができる。また、凝集剤(E)において、そのポリマー構造や分子量、水酸基やイオン性基などの官能基量などは、必要特性に応じて特に制限無く調整することが可能である。
凝集剤(E)の含有量は、樹脂シート10全体に対して0.05重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましく、0.15重量%以上であることがとくに好ましい。これにより、抄造法を用いた樹脂シート10の製造において、収率の向上を図ることができる。一方で、凝集剤(E)の含有量は、樹脂シート10全体に対して3重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがより好ましく、1.5重量%以下であることがとくに好ましい。これにより、抄造法を用いた樹脂シート10の製造において、脱水処理等をより容易にかつ安定的に行うことが可能となる。
樹脂シート10は、たとえば上述の各成分の他に、イオン交換能を有する粉末状物質を含むことができる。イオン交換能を有する粉末状物質としては、たとえば粘土鉱物、鱗片状シリカ微粒子、ハイドロタルサイト類、フッ素テニオライト及び膨潤性合成雲母から選ばれる一種またな二種以上の層間化合物を用いることが好ましい。粘土鉱物としては、たとえばスメクタイト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム及び燐酸チタニウムなどが挙げられる。ハイドロタルサイト類としては、たとえばハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト状物質などが挙げられる。フッ素テニオライトとしては、たとえばリチウム型フッ素テニオライト、ナトリウム型フッ素テニオライトなどが挙げられる。膨潤性合成雲母としては、たとえばナトリウム型四珪素フッ素雲母、リチウム型四珪素フッ素雲母などが挙げられる。これらの層間化合物は、天然物であってもよく、合成されたものであってもよい。これらのうちでは、粘土鉱物がより好ましく、スメクタイトが天然物から合成物まで存在し、選択の幅が広いという点においてさらに好ましい。スメクタイトとしては、たとえばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト及びスチーブンサイトなどが挙げられ、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。モンモリロナイトは、アルミニウムの含水ケイ酸塩であるが、モンモリロナイトを主成分とし、他に石英や雲母、長石、ゼオライトなどの鉱物を含んでいるベントナイトであってもよい。着色や不純物を気にする用途に用いる場合などには、不純物が少ない合成スメクタイトが好ましい。
また、樹脂シート10は、たとえば特性向上を目的とした酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、離型剤、可塑剤、難燃剤、樹脂の硬化触媒や硬化促進剤、顔料、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤などの紙力向上剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、サイズ定着剤、消泡剤、酸性抄紙用ロジン系サイズ剤、中性製紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニルコハク酸無水物系サイズ剤、特殊変性ロジン系サイズ剤などのサイズ剤、硫酸バンド、塩化アルミ、ポリ塩化アルミなどの凝結剤などの添加剤から選択される一種または二種以上を、生産条件調整や、要求される物性を発現させることを目的として含むことができる。
本実施形態においては、樹脂シート10を圧力300kg/cm、温度180℃の条件で10分間熱処理して得られる成型体の、平面方向における熱伝導率をλとし、厚さ方向における熱伝導率をλとする。この場合において、熱伝導率λは、たとえば60W/mK以上であることが好ましく、85W/mK以上であることがより好ましく、90W/mK以上であることがとくに好ましい。これにより、樹脂シート10を成形して得られる成形体の平面方向における熱伝導性をより効果的に向上させることができる。一方で、熱伝導率λの上限値は、とくに限定されないが、たとえば600W/mKとすることができる。
また、熱伝導率λと熱伝導率λとの比λ/λは、たとえば3.0×10−2以上8.0×10−2以下であることが好ましく、4.0×10−2以上7.0×10−2以下であることがより好ましい。これにより、樹脂シート10を成形して得られる成形体の、平面方向と厚さ方向における熱伝導性のバランスを向上させることが可能となる。
また、熱伝導率λは、たとえば3.5W/mK以上であることが好ましく、4.0W/mK以上であることがより好ましい。これにより、樹脂シート10を成形して得られる成形体の厚さ方向における熱伝導性をより効果的に向上させることができる。一方で、熱伝導率λの上限値は、とくに限定されないが、たとえば100W/mKとすることができる。熱伝導率λをこのような範囲に制御することによって、λ/λを所望の数値範囲とすることがより容易となる。
本実施形態において、熱伝導率λ、熱伝導率λ、およびλ/λは、たとえば樹脂シート10を構成する各成分の種類や配合割合をそれぞれ適切に選択することによって制御することが可能である。また、樹脂シート10の製造条件を調整することも、熱伝導率λ、熱伝導率λ、およびλ/λの制御に寄与し得る。
次に、樹脂シート10の製造方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る樹脂シート10の製造方法の一例を示す断面模式図である。樹脂シート10は、たとえば湿式抄造法を用いて製造される。本実施形態に係る樹脂シート10の製造方法は、たとえばバインダー樹脂(A)と、繊維状フィラー(B)と、フィラー(C)と、を含む材料組成物を抄造する工程を含む。
以下、樹脂シート10の製造方法の一例を詳細に説明する。
まず、図2(a)に示すように、上述の各成分のうち凝集剤(E)を除く成分を溶媒に添加して撹拌し、分散させる。ここでは、バインダー樹脂(A)、繊維状フィラー(B)、フィラー(C)、および必要に応じた他の添加剤を溶媒中へ添加して撹拌し、分散させることとなる。これにより、樹脂シート10を形成するためのワニス状の材料組成物を得ることができる。各成分を溶媒に分散させる方法としては、とくに限定されないが、たとえばディスパーザーを用いて撹拌する方法が挙げられる。なお、図2において、符号Aはバインダー樹脂(A)を、符号Bは繊維状フィラー(B)を、符号Cはフィラー(C)を、それぞれ示している。
溶媒としては、とくに限定されないが、上記材料組成物の構成材料を分散させる過程において揮発しにくいことと、樹脂シート10中への残存を抑制するために脱溶媒をしやすいこと、脱溶媒によってエネルギーが増大してしまうことを抑制すること、等の観点から、沸点が50℃以上200℃以下であるものが好ましい。このような溶媒としては、たとえば水や、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコールなどのアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類や、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類や、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、ジオキサン、フルフラールなどのエーテル類などを挙げることができる。これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、供給量が豊富であり、安価、環境負荷が低い、安全性も高く扱いやすいという理由から水を用いることがとくに好ましい。
ワニス状の材料組成物を得る上記工程において、バインダー樹脂(A)としては、たとえば平均粒径500μm以下である固体状態のものを使用することができる。これにより、後述するバインダー樹脂(A)を凝集させる工程において、凝集状態をより形成しやすくすることができる。ワニス状の材料組成物を得る上記工程において、バインダー樹脂(A)の平均粒径は1nm以上300μm以下であることがより好ましい。このような平均粒径を有するバインダー樹脂(A)は、たとえばアトマイザー粉砕機等を用いて粉砕処理を行うことにより得ることが可能である。なお、バインダー樹脂(A)の平均粒径は、たとえば(株)島津製作所製のSALD−7000などのレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて、質量基準の50%粒子径を平均粒径として求めることができる。
本実施形態においては、上記で得られたワニス状の材料組成物中に、凝集剤(E)を添加することができる。これにより、溶媒中のバインダー樹脂(A)と、繊維状フィラー(B)と、フィラー(C)と、をフロック状に凝集させて凝集物を得ることより容易となる。
次に、図2(b)に示すように、底面がメッシュ30で構成された容器に、溶媒と、上記で得られた凝集物Fと、を入れてメッシュ30から溶媒を排出する。これにより、凝集物Fと溶媒を互いに分離することができる。このとき、メッシュ30上には凝集物Fがシート状となって残存することとなる。本実施形態においては、メッシュ30の形状を適宜選択することによって、得られる樹脂シート10の形状を調整することが可能である。
本実施形態においては、上記で得られたシート状の凝集物Fを取り出して、乾燥炉内に入れて乾燥させて、溶媒をさらに除去することができる。たとえばこのようにして、図2(c)に示すような樹脂シート10が製造されることとなる。
(成形体)
次に、樹脂シート10を成形して得られる成形体について説明する。
本実施形態において、成形体は、たとえば樹脂シート10を加熱、加圧することにより成形して得られる。このため、成形体は、バインダー樹脂(A)と、アスペクト比が100以上である繊維状フィラー(B)と、繊維状フィラー(B)よりもアスペクト比が小さいフィラー(C)と、を含む。また、成形体中において、繊維状フィラー(B)は、平面方向に配列される。これにより、成形体の熱伝導性を向上させることができる。なお、成形体中に含まれる繊維状フィラー(B)およびフィラー(C)は、たとえば樹脂シート10中と同様の形状やアスペクト比を有する。
本実施形態に係る成型体の平面方向における熱伝導率λは、たとえば60W/mK以上であることが好ましく、80W/mK以上であることがより好ましく、90W/mK以上であることがとくに好ましい。これにより、さらに熱伝導性に優れた成形体を実現することができる。一方で、熱伝導率λの上限値は、とくに限定されないが、たとえば600W/mKとすることができる。
また、本実施形態に係る成型体の、平面方向における熱伝導率λと、厚さ方向における熱伝導率λとの比λ/λは、たとえば3.0×10−2以上8.0×10−2以下であることが好ましく、4.0×10−2以上7.0×10−2以下であることがより好ましい。これにより、平面方向と厚さ方向における熱伝導性のバランスに優れた成形体を実現することができる。
また、熱伝導率λは、たとえば3.5W/mK以上であることが好ましく、4.0W/mK以上であることがより好ましい。これにより、さらに厚さ方向における熱伝導性に優れた成形体を実現することが可能となる。一方で、熱伝導率λの上限値は、とくに限定されないが、たとえば100W/mKとすることができる。熱伝導率λをこのような範囲に制御することによって、λ/λを所望の数値範囲とすることがより容易となる。
本実施形態において、熱伝導率λ、熱伝導率λ、およびλ/λは、たとえば樹脂シート10を構成する各成分の種類や配合割合をそれぞれ適切に選択することによって制御することが可能である。また、樹脂シート10の製造条件を調整することも、熱伝導率λ、熱伝導率λ、およびλ/λの制御に寄与し得る。
図3は、樹脂シート10を用いた成形体の形成方法を示す断面模式図である。
本実施形態においては、たとえば製造された樹脂シート10を成形することにより、各種物品を構成する成形体を形成することができる。成形方法としては、たとえばプレス成形等が挙げられる。図3に示すように、プレス板71で、樹脂シート10をプレスするとともに、プレス板71の外周側に熱板72を配置して加熱する。これにより、物品を構成する成形体を得ることができる。なお、樹脂シート10中にバインダー樹脂(A)として熱硬化性樹脂が含まれる場合には、たとえば成形体中の熱硬化性樹脂が半硬化状態となるように、以上の成形工程を行うことができる。これにより、成形体を他の部材へラミネートした後に成形体を熱硬化させることができるため、成形体と他の部材をより強力に互いに固着させることが可能となる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
次に、本発明の実施例について説明する。
(樹脂シートの製造)
各実施例および各比較例について、次のようにして樹脂シートを製造した。
まず、アトマイザー粉砕機で平均粒径100μm(質量基準の50%粒子径)に粉砕したバインダー樹脂(A)と、繊維状フィラー(B)と、フィラー(C)と、パルプ(D)と、を表1に示す配合に従い溶媒である水に添加して、ディスパーザーで30分撹拌して混合物を得た。ここでは、バインダー樹脂(A)、繊維状フィラー(B)、フィラー(C)、およびパルプ(D)の合計100重量部を10000重量部の水に添加した。次いで、あらかじめ水に溶解させた凝集剤(E)を、上述した構成材料(バインダー樹脂(A)、繊維状フィラー(B)、フィラー(C)、パルプ(D))の合計に対して0.2重量%添加し、構成材料をフロック状に凝集させた。これにより得られた凝集物を30メッシュの金属網で水と分離し、この後その凝集物を、脱水プレスし、さらに50℃の乾燥器に5時間入れて乾燥させて、複合樹脂組成物により構成される樹脂シートを得た。収率は97%であった。
各実施例および各比較例について、繊維状フィラー(B)が樹脂シート中において平面方向に配列されていることを確認した。表1に示す各成分の詳細は、下記のとおりである。なお、表1中における各成分の配合割合の単位は、重量%である。
(A)バインダー樹脂
フェノール樹脂:レゾール樹脂(PR−51723、住友ベークライト(株)製)
エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER1002、三菱化学(株)製)
(B)繊維状フィラー
チョップド炭素繊維:XN−100、日本グラファイトファイバー(株)製、繊維長3mm、繊維幅10μm、アスペクト比300
(C)フィラー
ミルド炭素繊維:HC−600、日本グラファイトファイバー(株)製、平均長さ100μm、繊維幅10μm、アスペクト比10
黒鉛粉末:UF−G30、昭和電工(株)製、粒子サイズ10μm、アスペクト比1
(D)パルプ
アラミドパルプ:ケブラーパルプ1F303(東レ・デュポン(株)製)
(E)凝集剤
ポリエチレンオキシド:住友精化(株)製
(成形体)
各実施例および各比較例について、次のようにして成形体を製造した。まず、上記にて得られた樹脂シートを、10cm×10cmにカットしたものを圧力300kg/cm、温度180℃の条件で10分間熱処理することにより、10cm×10cm×1mmtの成形体を得た。
(熱伝導率)
各実施例および各比較例について、上記で得られた成形体の熱伝導率を測定した。測定は、成形体に対してレーザーフラッシュ法によって熱伝導層の平面方向の熱伝導率λ、および厚さ方向の熱伝導率λを測定することにより行った。また、測定結果から、λ/λを算出した。結果を表1および2に示す。表1および2中における熱伝導率λ、熱伝導率λの単位は、W/mKである。
Figure 2016130279
Figure 2016130279
表1および2に示すように、各実施例に係る成形体は、各比較例に係る成形体と比較して熱伝導性に優れていることが分かる。また、各実施例においては、平面方向の熱伝導率と厚み方向の熱伝導率のバランスについても、各比較例と比較して良好な結果が得られることが示されている。
10 樹脂シート
30 メッシュ
71 プレス板
72 熱板
A バインダー樹脂
B 繊維状フィラー
C フィラー
F 凝集物

Claims (16)

  1. バインダー樹脂(A)と、
    アスペクト比が100以上である繊維状フィラー(B)と、
    前記繊維状フィラー(B)よりもアスペクト比が小さいフィラー(C)と、
    を含み、
    前記繊維状フィラー(B)が平面方向に配列されている樹脂シート。
  2. 請求項1に記載の樹脂シートにおいて、
    前記フィラー(C)のアスペクト比が50以下である樹脂シート。
  3. 請求項1または2に記載の樹脂シートにおいて、
    前記フィラー(C)は、ミルドファイバー、または粉粒体である樹脂シート。
  4. 請求項1〜3いずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
    粒状または粉状の形状を有する前記バインダー樹脂(A)を含む樹脂シート。
  5. 請求項1〜4いずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
    前記樹脂シートを、圧力300kg/cm、温度180℃の条件で10分間熱処理して得られる成形体の平面方向における熱伝導率が60W/mK以上である樹脂シート。
  6. 請求項1〜6いずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
    前記樹脂シートを、圧力300kg/cm、温度180℃の条件で10分間熱処理して得られる成形体の、平面方向における熱伝導率λと厚さ方向における熱伝導率λとの比λ/λが、3.0×10−2以上8.0×10−2以下である樹脂シート。
  7. 請求項1〜6いずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
    前記繊維状フィラー(B)は、チョップドファイバーである樹脂シート。
  8. 請求項1〜7いずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
    前記繊維状フィラー(B)は、金属繊維または炭素繊維のうちの少なくとも一方を含む樹脂シート。
  9. バインダー樹脂(A)と、
    アスペクト比が100以上である繊維状フィラー(B)と、
    前記繊維状フィラー(B)よりもアスペクト比が小さいフィラー(C)と、
    を含み、
    前記繊維状フィラー(B)が平面方向に配列されている成形体。
  10. 請求項9に記載の成形体において、
    前記フィラー(C)のアスペクト比が50以下である成形体。
  11. 請求項9または10に記載の成形体において、
    前記フィラー(C)は、ミルドファイバー、または粉粒体である成形体。
  12. 請求項9〜11いずれか一項に記載の成形体において、
    平面方向における熱伝導率が60W/mK以上である成形体。
  13. 請求項9〜12いずれか一項に記載の成形体において、
    平面方向における熱伝導率λと厚さ方向における熱伝導率λとの比λ/λが、3.0×10−2以上8.0×10−2以下である成形体。
  14. 請求項9〜13いずれか一項に記載の成形体において、
    前記繊維状フィラー(B)は、チョップドファイバーである成形体。
  15. 請求項9〜14いずれか一項に記載の成形体において、
    前記繊維状フィラー(B)は、金属繊維または炭素繊維のうちの少なくとも一方を含む成形体。
  16. バインダー樹脂(A)と、アスペクト比が100以上である繊維状フィラー(B)と、前記繊維状フィラー(B)よりもアスペクト比が小さいフィラー(C)と、を含む材料組成物を抄造する工程を含む樹脂シートの製造方法。
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