JP2014084492A - 成形加工用アルミニウム合金板 - Google Patents

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Abstract

【課題】より正確で簡便な組織的指標のもとで、室温での時効硬化による曲げ性の低下などの新たな問題が生じることなしに、SSマークの発生が少なく、プレス成形性に優れた成形加工用Al−Mg系合金板を提供する。
【解決手段】Cuを含む特定組成からなるAl−Mg系アルミニウム合金板の組織として、X線小角散乱法で測定された微細粒子(クラスタ)の粒度分布における平均粒子直径や体積分率を特定範囲に制御して、セレーションが発生しにくい板組織とし、プレス成形時のSSマークの発生を抑制する。
【選択図】なし

Description

本発明は成形性に優れたAl−Mg系アルミニウム合金板に関するものである。本発明で言うアルミニウム合金板とは、熱間圧延板や冷間圧延板であって、溶体化処理および焼入れ処理などの調質が施されたアルミニウム合金板を言う。また、以下、アルミニウムをAlとも言う。
近年、地球環境などへの配慮から、自動車等の車両の軽量化の社会的要求はますます高まってきている。かかる要求に答えるべく、自動車パネル、特にフード、ドア、ルーフなどの大型ボディパネル(アウタパネル、インナパネル)の材料として、鋼板等の鉄鋼材料にかえてアルミニウム合金材料の適用が検討されている。
Al−Mg系のJIS5052合金やJIS5182合金等の5000系アルミニウム合金板(以下、Al−Mg系合金板とも言う)は、延性および強度に優れることから、従来から、これら大型ボディパネル用の成形加工用(プレス成形用)素材として使用されている。
しかし、特許文献1などに開示される通り、これらAl−Mg系合金板について引張試験を行なえば、応力−歪曲線上の降伏点付近で降伏伸びが生じる場合があり、また降伏点を越えた比較的高い歪量(例えば引張伸び2%以上)で応力−歪曲線に鋸歯状もしくは階段状のセレーション(振動)が生じる場合がある。これらの応力−歪曲線上の現象は、実際のプレス成形において、いわゆるストレッチャーストレイン(以下SSマークとも記す)の発生を招き、成形品である大型ボディパネル、特に外観が重要なアウタパネルにとって、商品価値を損なう大きな問題となる。
このSSマークは、公知のように、歪量の比較的低い部位で発生する火炎状の如き不規則な帯状模様のいわゆるランダムマークと、歪量の比較的高い部位で引張方向に対し、約50°をなすように発生する平行な帯状模様のパラレルバンドとに分けられる。前者のランダムマークは降伏点伸びに起因し、また後者のパラレルバンドは段落0004で記載した応力−歪曲線上のセレーション(振動)に起因することが知られている。
従来から、これらSSマークを解消する方法が種々提案されている。例えば、主な手法として、Al−Mg系合金板の結晶粒をある程度粗大に調整する方法が知られている。ただ、このような結晶粒の調整方法は、SSマークのうちでも、段落0004で記載したパラレルバンドの発生防止には有効ではない。また、結晶粒が粗大になり過ぎれば、プレス成形において表面に肌荒れが発生するなど、却って別の問題が生じる。
また、別のSSマークの解消方法として、Al−Mg系合金板の調質材に、大型ボディパネルへのプレス成形前に、予めスキンパス加工あるいはレベリング加工等の加工(予加工)を加えて、若干の歪み(予歪み)を与えておくことも知られている。ただ、このような予加工法でも、加工度が高くなりすぎた場合には、段落0004で記載した応力−歪曲線上のセレーション(振動)が生じやすくなり、実際のプレス成形時において、幅の広い明瞭なパラレルバンドの発生につながりやすい。
これに対して、前記した特許文献1では、ランダムマークの発生とともに、広幅のパラレルバンドの発生も抑制した、Al−Mg系合金板の製法が提案されている。この方法は、Al−Mg系合金の圧延板に溶体化・焼入れ処理を施し、その後予加工としての冷間加工を行ない、最終焼鈍を施し、平均結晶粒径が55μm以下で粗大結晶粒が存在しないような板を得るものである。
また、特許文献2は、SSマークの発生抑制には直接言及してはいないが、合金板の熱的変化を示差熱分析(DSC)により測定して得られた、室温からの加熱曲線の吸熱ピークの位置や、その高さを、その板のプレス成形性向上の指標とすることを提案している。
しかし、最近の大型ボディパネル、特に外観が重要なアウタパネルでは、表面性状の要求レベルが更に厳しくなってきており、これら特許文献1、2でも、このような要求に対して、SSマーク発生の抑制策が不十分である。
これに対して、特許文献3などで例示する通り、Al−Mg系アルミニウム合金板に対して、特にZnを0.1〜4.0%含有させて、AlとMgとによって形成されるクラスタ(超微細金属間化合物)の量を、Zn等も含むクラスタとして増大させ、セレーション発生の臨界歪み量(限界歪み量)をより高くして、限界ひずみ量増大効果をより一層高める技術が提案されている。これによって、ランダムマークの発生とともに、パラレルバンドの発生を同時に抑制でき、SSマークを抑制した、自動車パネルへのプレス成形などの成形性に優れたAl−Mg系アルミニウム合金板ができるとされている。
また、特許文献4では、同じくZnを含有させたAl−Mg系アルミニウム合金板の組織とSSマークなどのプレス成形性との関係を表す指標として、X線小角散乱法で測定された微細粒子の粒度分布の平均粒子直径と、前記粒度分布のピークサイズの平均数密度とを規定している。
ただ、Al−Mg系アルミニウム合金板において、Znを多く含有した場合、室温での時効硬化が生じやすくなる、という新たな問題が生じる。これは、特許文献3がSSマーク発生抑制の切り札として生成させようとしている、Znによって形成されるクラスタ(超微細金属間化合物)が、室温で生じやすいことに起因するからである。
通常、Al−Mg系アルミニウム合金板は、アルミ板メーカーで製造されてすぐに、自動車メーカーで大型ボディパネルなどに成形されるわけではなく、通常は数週間以上の間隔があくのが普通である。このため、例えば、板の製造から1カ月経過後に、大型ボディパネルなどに成形される場合には、時効硬化が著しく進んでしまい、曲げ性やプレス成形性が却って阻害される、という新たな(別な)問題が生じる。
周知の通り、熱処理型のAl−Zn−Mg系(7000系)アルミニウム合金板に比して、通常、Al−Mg系アルミニウム合金板は室温での時効硬化が生じにくい。しかし、このようなAl−Mg系アルミニウム合金板でも、特許文献3のように、Zn含有量を多くした場合には、7000系アルミニウム合金板と同じように、室温での時効硬化を示すようになる。
これに対して、特許文献5、6では、SSマークの発生抑制効果がある元素として、室温での時効硬化が生じやすいZnに代わり、Al−Mg系アルミニウム合金板にCuを添加させることが提案されている。ただ、同じようにCuを含有してもSSマークの発生抑制効果がない場合があり、Al−Mg系アルミニウム合金板におけるCuの存在状態(組織状態)の違いがSSマークの発生状態に大きく影響する。
このため、特許文献5では、板を示差熱分析(DSC)により測定して得られた、室温からの加熱曲線(DSC加熱曲線)の180〜280℃の間の吸熱ピークにより、板の組織を間接的に規定している。
また、特許文献6では、板の組織を、3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡により測定された原子の集合体として、隣り合う他のCu原子と特定の関係にあるCu原子の集合体の平均密度で、より直接的に規定している。
特開平7−224364号公報 特開2006−249480号公報 特開2010−77506号公報 特開2011−38136号公報 特開2012−52220号公報 特開2012−107316号公報
ただ、SSマークの発生抑制効果のために、Al−Mg系アルミニウム合金板にCuを添加する場合でも、SSマーク特性と相関する前記微細なCu原子の集合体(Cuクラスタ)の存在状態を、より正確に、あるいは、より簡便に測定できる課題は、特許文献5、6の存在によっても依然残っている。
したがって、本発明の目的は、より正確で簡便な組織的指標のもとで、室温での時効硬化などの問題が生じることなしに、SSマーク発生を抑制でき、自動車パネルへのプレス成形性を向上させた、成形加工用Al−Mg系アルミニウム合金板を提供することである。
この目的を達成するために、本発明の成形加工用アルミニウム合金板の要旨は、質量%で、Mg:2.0〜6.0%、Cu:0.3%を超え、2.0%以下を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系アルミニウム合金板であって、この板の組織とプレス成形性との関係を表す指標として、X線小角散乱法で測定された微細粒子の粒度分布の平均粒子直径が0.5nm以上、6.0nm以下であるとともに、その体積分率が0.03%以上であることとする。
本発明者らの知見によれば、Cuを添加したAl−Mg系アルミニウム合金板について、X線小角散乱法で測定される、板組織中のナノメートルオーダ以下の微細粒子(Cuクラスタ)の粒度分布(平均粒子直径と体積分率)が、この微細粒子の存在状態を表し、かつ、SSマーク特性と相関する。言い換えると、Cuを含むAl−Mg系アルミニウム合金板では、前記X線小角散乱法で測定された前記微細粒子の粒度分布が、この板の組織と、この板のSSマーク特性にて代表されるプレス成形性との関係を表す指標となりうることを知見した。
このX線小角散乱法自体は、ナノメートルオーダの構造(組織)情報を調べる代表的な手法として古くから知られている。物質にX線を照射すると、入射X線が物質内部の電子密度分布の情報を反映して、入射X線の周囲に散乱X線が発生する。例えば、物質中に粒子や密度の不均一な領域が存在すると、入射X線の周囲に散乱が発生する。
この原理により、アルミニウム合金組織中にナノメートルオーダ以下の微細微小な粒子が存在すると、入射X線の周囲に散乱が発生する。X線小角散乱法では、この散乱X線を解析することで、このナノメートルオーダ以下の微細粒子の形状、大きさ、分布の情報を、正確かつ簡便に得ることができる。これによって、本発明は、Cuを含むAl−Mg系アルミニウム合金板の組織を、前記微細粒子の粒度分布の点から、再現性良く制御して、セレーションが発生しにくく、SSマーク発生を抑制することができる。
以下に、本発明の実施の形態につき、要件ごとに具体的に説明する。
(組織)
本発明では、Cuを含む組成のAl−Mg系アルミニウム合金板組織中の、X線小角散乱法で測定できる、組成によらない微細粒子全体(総量)の粒度分布(平均粒子直径と体積分率)を規定する。以下、この微細粒子を原子クラスタとも言う。本発明者らは、X線小角散乱法とは別のアトムプローブ法によって、本発明で規定する微細粒子が概ねCu原子の集まり(Cu原子の集合体=Cuクラスタ)であることを予め把握している。このため、小角散乱法でその粒度分布や体積分率が測定、導出される微細粒子は、概ねCu原子の集合体(Cuクラスタ)であると言ってもいい。
ただ、本発明者らは、組成によらず、Cuクラスタ以外の微細粒子を含む可能性もある、X線小角散乱法で測定できる微細粒子全体(総量)の粒度分布(平均粒子直径と体積分率)が、Cuを含むAl−Mg系アルミニウム合金板のSSマーク特性と良く相関することを知見している。したがって、本願請求項では、このX線小角散乱法で測定される微細粒子を、敢えてCuクラスタとは限定しなかった。ちなみに、前記アトムプローブ法とは、3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡(3DAP:3D Atom Probe Field Ion Microscope )を用いた、原子の集合体(クラスタ)の原子の種類や原子数および原子間距離などを分析できる公知の手段である。
SSマークの発生抑制効果がある元素として、室温での時効硬化が生じやすいZnに代わり、Cuを選択すれば、Znのように室温での時効硬化が生じることなしに、SSマークの発生抑制効果がある。ただ、同じようにCuを含有しても、SSマークの発生抑制効果がない場合があり、例え同じCu含有量のAl−Mg系アルミニウム合金板(以下、Al−Mg−Cu系合金板とも言う)であっても、SSマークの発生抑制効果には大きな差がある。このことから、単にCuを含むだけではなく、SSマークの発生状態に大きく影響している、Al−Mg系アルミニウム合金板の組織状態を明確にする必要がある。
本発明者らは、この組織状態につき、Cuを含むAl−Mg系アルミニウム合金板においては、微細粒子の存在状態(存在量や存在の有無、分散状態など)に、SSマークの発生抑制効果が大きく影響を受けているものと推考した。しかし、このような微細粒子は、微細すぎて、通常の組織観察で直接、その存在が確認できるわけではない。この微細粒子は、前記特許文献2、3のAl−Mg系金属間化合物などと同じく、ナノレベル以下の微小な大きさである。したがって、通常の組織観察方法であるSEMやTEMの分析方法では、この微細粒子を特定することはできない。これを踏まえ、本発明では、この微細粒子の存在状態を、X線小角散乱法で測定された微細粒子(Cuクラスタ)の粒度分布(平均粒子直径と体積分率)として規定する。
(X線を用いた小角散乱法)
X線を用いた小角散乱法自体は、ナノメートルオーダの構造情報を調べる代表的な手法として古くから知られている。物質にX線を照射すると、入射X線が物質内部の電子密度分布の情報を反映して、入射X線の周囲に散乱X線が発生する。例えば、物質中に粒子や電子密度の不均一な領域が存在すると、結晶や非晶質等にかかわらず、X線は干渉して密度揺らぎ起因の散乱が発生する。これがアルミニウム合金などの金属であれば、アルミニウム合金組織中にナノメートルオーダの微小な析出物などの粒子が存在すると、この粒子に由来する散乱が観測される。この散乱X線が発生する領域は、Cuターゲットを用いた波長1.54ÅのX線の場合、測定角度2θは0.1〜10度程度以下である。前記X線小角散乱法では、この散乱X線を解析することで、ナノメートルオーダの微細な粒子の形状、大きさ、分布の情報等を得ることができる。小角散乱法は、例えば、特開2011−38136号などで、5000系のAl−Mg系アルミニウム合金板のプレス成形時のストレッチャーストレインマークの発生に関連する、微細粒子の粒度分布の平均粒子直径や、この粒度分布のピークサイズの数密度を測定するために用いられている。
(微細粒子の粒度分布の求め方)
本発明で規定するアルミニウム合金組織の微細粒子の粒度分布の平均粒子直径や、その体積分率を測定するためには、先ず、アルミニウム合金板の、X線小角散乱法で測定された、X線の散乱強度プロファイルを求める。このX線の散乱強度プロファイルは、例えば、縦軸がX線の散乱強度(散乱X線の散乱強度)、横軸が測定角度2θと波長λに依存する波数ベクトルq(nm−1)として求められる。このX線の散乱強度プロファイルから、前記微細粒子の粒度分布の平均粒子直径や、その体積分率を求めることができる。
すなわち、測定したX線の散乱強度と、粒子直径とサイズ分布の関数で示される理論式から計算したX線散乱強度が近くなるように非線形最小2乗法によってフィッティングを行うことで、粒子直径と分散値を求めることが出来る。微細粒子の体積分率を求めるためには、同時期に測定した析出量が既知の物質の散乱強度プロファイルを用いて、対象の散乱強度プロファイルを規格化した後、析出物由来の散乱強度より求めることが出来る。
ちなみに、このようなX線の散乱強度プロファイルを解析して、微細粒子の粒度分布を求める解析方法は、例えばSchmidtらによる公知の解析方法を用いる(I.S.Fedorovaand P.Schmidt:J.Appl.Cryst.11、405、1978参照)。また、微細粒子の体積分率の求め方は、日本結晶学会、第41巻、第6号(1999)、奥田浩司「合金の相分離、組織形成過程解明への小角散乱法の応用」[意外に多い小角散乱実験からの情報(4)]に基づいている。
(微細粒子の粒子直径と体積分率)
本発明では、Cuを含むAl−Mg系アルミニウム合金板の組織とプレス成形性との関係を表す指標として、X線小角散乱法で測定された微細粒子の粒度分布において、平均粒子直径が0.5nm以上、6.0nm以下であるとともに、その体積分率が0.03%以上であることとする。
このように、本発明では、Cuを含むAl−Mg系アルミニウム合金板の組織中に、X線小角散乱法で測定されたある範囲のサイズ(平均粒子直径)の微細粒子を、一定量(一定体積分率)以上存在させる。これによって、限界ひずみ量増大効果を高めて、応力−歪曲線上のセレーションを抑制し、これに起因するパラレルバンドを抑制して、ストレッチャーストレインマークの発生を抑制する。
ここで、体積分率とは、検出した微細粒子(検出可能な微細粒子)全部の合計体積の、アルミニウム合金板の体積(アルミニウム合金板全体の体積)に対する割合である。この体積分率の製造可能な限界(上限)は数%程度であり、これ以上数密度を増すのは、Cuを含むAl−Mg系アルミニウム合金板の製造上無理なので、10%を体積分率の好ましい上限値とする。
前記粒度分布のうち、平均粒子直径が0.5nm未満の場合、微細粒子のサイズ(粒度)が小さすぎて、限界ひずみ量増大効果が殆どなく、ストレッチャーストレインマークの発生抑制効果がない。
また、前記粒度分布のうち、平均粒子直径が6.0nmを超えた場合には、微細粒子のサイズ(粒度)が大きすぎて、やはり限界ひずみ量増大効果が殆どなく、ストレッチャーストレインマークの発生抑制効果がない。
更に、微細粒子の体積分率が0.03%未満でも、限界ひずみ量増大に効く微細粒子が不足し、限界ひずみ量増大効果が殆どなく、ストレッチャーストレインマークの発生抑制効果がない。
本発明は、SSマークのうち、降伏伸びの発生によるランダムマークの発生も防止できる。したがって、このランダムマークの発生防止のために、従来の予歪み(予加工)を与える対策も不要となる。言い換えると、従来の予歪み(予加工)を与えずとも、歪量の比較的低い部位で発生するランダムマークと、歪量の比較的高い部位で発生するパラレルバンドとの、両方のストレッチャーストレインマーク(SSマーク)の発生を十分に抑制できる。
本発明は、自動車パネル用素材板として、特に外観が重要なアウタパネルでの表面性状の要求レベルが更に厳しくなった場合でも、降伏伸びに起因するランダムマークの発生とともに、応力−歪曲線上でのセレーションに関連するパラレルバンドの発生を、同時に抑制できる。この結果、自動車パネル用素材板の性能を大きく向上できる。
(化学成分組成)
本発明成形加工用アルミニウム合金板の化学成分組成は、基本的に、Al−Mg系合金であるJIS 5000系に相当するアルミニウム合金とする。
本発明は、特に、自動車パネルへの成形加工用素材板として、プレス成形性、強度、溶接性、耐食性などの諸特性を満足する必要がある。このため本発明合金板は、5000系アルミニウム合金の中でも、質量%で、Mg:2.0〜6.0%、Cu:0.3%を超え、2.0%以下を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系アルミニウム合金板とする。なお、元素含有量は全て質量%である。
ここで、不純物元素としてのZnは、前記した通り、室温での時効硬化が生じて曲げ性やプレス成形性を低下させる原因となるので、極力含まないようにする。また、仮に含んでも、質量%で1.0%未満、好ましくは0.6%以下、より好ましくは0.1%以下、に規制する。
Mg:2.0〜6.0%
Mgは、加工硬化能を高め、自動車パネル用素材板としての必要な強度や耐久性を確保する。また、材料を均一に塑性変形させて破断割れ限界を向上させ、成形性を向上させる。Mgの含有量が2.0%未満では、強度や耐久性が不十分となる。一方、Mgの含有量が6.0%を越えると、板の製造が困難となり、しかもプレス成形時に、却って粒界破壊が発生しやすくなり、プレス成形性が著しく低下する。したがってMgの含有量は2.0〜6.0%、好ましくは2.4〜5.7%の範囲とする。
Cu:0.3%を超え、2.0%以下
Cuは、前記したCuを主体とする原子の集合体(原子クラスタ)を形成して、Znと違い、板を室温時効硬化させることなく、プレス成形の際のSSマークの発生を抑制する。Cuが0.3%以下と少なすぎる場合は、Cuを主体とするクラスタの生成量が不足して、プレス成形の際のSSマークの発生抑制効果発揮が不十分となる。一方、Cuの含有量が2.0%を越えれば、粗大な晶出物や析出物の生成量が多くなり、破壊の起点になりやすく、却ってプレス成形性を低下させる。Cuの含有量は0.3%を超え、2.0%以下の範囲内とし、好ましくは0.5〜1.5%の範囲内とする。
ここで、Cuの前記した添加効果を発揮させるためには、CuのMgに対する含有量の比:Cu/Mgを0.08〜0.8とすることが好ましい。この比の上限値と下限値とは、互いの前記含有量の好ましい上限値と下限値同士の比から算出される範囲である。
その他の元素
その他の元素は、Fe、Si、Mn、Cr、Zr、Tiなどが例示される。これらの元素は、溶解原料としてアルミニウム合金スクラップ量(アルミニウム地金に対する割合)が増すほど含有量が多くなる不純物元素である。即ち、Al合金板のリサイクルの観点から、溶解原料として、高純度アルミニウム地金だけではなく、5000系合金やその他のAl合金スクラップ材、低純度Al地金などを溶解原料として使用した場合には、これら元素の混入量(含有量)が必然的に多くなる。これら元素を例えば検出限界以下などに敢えて低減することは製造コストを押し上げるので、5000系アルミニウム合金の通常の規格(上限量)と同程度の含有の許容(上限値の規定)が必要となる。
この点で、前記アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Fe:0.5%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以下、Cr:0.1%以下、Zr:0.1%以下、Ti:0.05%以下の内から選ばれる一種また二種以上を含有することを許容する。また、Tiに付随して混入しやすいB(ボロン)をTiの含有量未満の範囲で含有することを許容する。
(製造方法)
本発明の板の製造方法について、以下に具体的に説明する。
本発明では、溶体化処理前までの圧延工程までは、5182、5082、5083、5056などのMgを4.5%程度含む、成形用Al−Mg系合金の通常の製造工程による製造方法で製造可能である。即ち、鋳造(DC鋳造法や連続鋳造法)、均質化熱処理、熱間圧延の通常の各製造工程を経て製造され、板厚が1.5〜5.0mmであるアルミニウム合金熱延板とされる。この段階で製品板としても良く、また冷間圧延前もしくは冷間圧延の中途において1回または2回以上の中間焼鈍を選択的に行ないつつ、更に冷延して、板厚が1.5mm以下の冷延板の製品板としても良い。
溶体化処理:
本発明の組織を有する板とするためには、以上のようにして得られた所要の板厚のこれら熱延板あるいは冷延板に対して、先ず、急速加熱や急速冷却を伴う溶体化・焼入れ処理を行う。このような溶体化・焼入れ処理を行った材料、いわゆるT4処理(調質)材は、比較的緩やかな加熱や冷却を伴うバッチ焼鈍材と比較して、強度と成形性とのバランスに優れる。また、溶体化処理に続く焼入れ処理時には原子空孔が導入される。
ここで、溶体化処理温度の適正値は、具体的な合金組成によって異なるが、450℃以上570℃以下の範囲内とする必要がある。また、この溶体化処理温度での保持は180秒(3分)以内とする必要がある。溶体化処理温度が450℃未満では合金元素の固溶が不十分となって強度・延性等が低下する恐れがある。一方、溶体化処理温度が570℃を越えれば、結晶粒が過度に粗大化して成形性の低下や表面の肌荒れが問題となる。また溶体化処理温度での保持時間が180秒を越えれば、結晶粒の過度の粗大化による同様の問題が生じる。
焼入れ処理
この溶体化処理後の焼入れ処理時は、板を室温まで冷却するが、溶体化処理温度から200℃まで、5℃/秒以上の平均冷却速度で板を冷却する必要がある。溶体化処理温度から200℃までの平均冷却速度が5℃/秒未満では、冷却中に粗大な析出物が生成して、この後に低温焼鈍を加えて最終板としても、SSマークが発生する。前記微細粒子が不足して、体積分率が0.03%以上とならないからである。これら急速加熱や急速冷却を伴う溶体化・焼入れ処理は、連続焼鈍ライン(CAL)での強制空冷やミスト、水冷等の強制冷却等を用いて連続的に行っても良い。また、加熱にソルトバス等を、冷却に水焼入れ、油焼入れ、強制空冷等を用いてバッチ式で行っても良い。ここで、CALを用いた溶体化処理・焼入れを実施した場合、室温〜溶体化処理温度までの一般的な加熱および冷却の速度はともに1〜30℃/秒程度である。
低温焼鈍:
本発明では、この焼入れ処理終了後、24時間以上室温時効処理した(室温放置した)後に、100℃を超え、200℃以下の温度に加熱する低温焼鈍を行う。この低温焼鈍の処理時間は、前記温度範囲に0.5〜48時間程度加熱、保持して行う。
この低温焼鈍温度が低すぎる、あるいは保持時間が短すぎると、焼鈍の効果がなく、焼鈍で前記超微細な粒子が生成しないか、生成量が不足する。このため、前記溶体化処理後の焼入れ処理時の冷却速度制御だけでは、前記微細な粒子が不足して、体積分率を0.03%以上とできない。この結果、SSマークの発生を確実に防止できなくなる可能性が高い。
一方、低温焼鈍処理を200℃より高温で行った場合は、高温すぎる焼鈍処理によって、微細な粒子ではなく、比較的粗大な粒子が生成し、その粒度分布における平均粒子直径が0.5nm以上、6.0nm以下とならない。
また、この低温焼鈍処理は、前記焼入れ処理の後に、直ちにあるいは連続して行うのではなく、事前に、少なくとも24時間以上、好ましくは48時間以上の室温時効処理を行った後で行う。この室温時効時間とは、前記焼入れ処理終了(完了)後、低温焼鈍の加熱開始までの時間(経過あるいは所要時間)である。
焼入れ処理(急冷)に続いて低温焼鈍を行う場合、生産性の観点から、焼入れ処理後できるだけ早期に実施するのが通例であるが、本発明では、焼入れ処理後に、十分に室温時効させる。その結果、前記微細粒子の粒度分布における平均粒子直径が0.5nm以上、6.0nm以下とでき、その体積分率も0.03%以上とすることができる。
冷間加工:
本発明の板として、SSマークのうち、特にランダムマーク解消のために、前記低温焼鈍処理を施した後に、更に、加工率が0.2〜5%程度の予歪みを板に与える冷間加工(予加工)を行なう。このように耐力値の増加分が特定の範囲内となるように加工率を調整した、予加工としての冷間加工を行うことによって、プレス成形時の降伏伸びの発生を確実に抑制して、SSマーク、特にランダムマークの発生を確実に防止することが可能となる。
予歪みの付与量は、耐力値が若干増加するような、従来の一般的なランダムマーク発生防止のために行われている予加工と同等で良い。例えば、冷間でのスキンパス圧延、冷間圧延もしくは冷間でのローラーレベラーによる繰返し曲げ加工などで加工率が0.2〜5%程度の予歪を付与する。
このような予歪(冷間加工)を与えることにより、積極的に材料内に多数の変形帯を導入することができ、降伏伸びの発生を確実に防止し、結晶粒の微細なAl−Mg系合金板でもランダムマークの発生を安定して防止することが可能となる。この冷間加工の加工率が0.2%未満と小さすぎると、前記ランダムマーク発生の抑制効果がない。また、この冷間加工の加工率が5%を超えて大きすぎると、板の耐力値が高くなりすぎて、却って加工硬化による延性、成形性の低下が懸念され、好ましくない。
本発明では、以上のような溶体化処理条件と焼入れ処理条件および室温時効処理した後の低温焼鈍や、その後の冷間加工などを組み合わせた調質によって、前記微細粒子の規定を満足するアルミニウム合金板を製造できる。これによって、Cuを含むAl−Mg系アルミニウム合金板の限界ひずみ量増大効果を高めて、応力−歪曲線上のセレーションを抑制し、これに起因するパラレルバンドを抑制して、ストレッチャーストレインマークの発生を抑制できる。また、SSマークのうち、降伏伸びの発生によるランダムマークの発生も防止できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
次に、本発明の実施例を説明する。表1に示す発明例、比較例の各組成のAl−Mg系合金板を製造し、表2(表1の続き)に示す条件で調質、製造した後、この調質後の板の組織、機械的な特性を各々測定、評価した。これらの結果を表3に示す。
なお、表1における元素含有量の「−」表記は、その元素の含有量が検出限界以下であることを示す。ここで、表1と表2および表3の略号は同じで、互いに略号が同じものは同じ例を示す。
熱延板や冷延板の各製造方法(条件)は、各例とも同じ共通条件で行った。すなわち、ブックモールド鋳造によって鋳造した50mm厚の鋳塊を、480℃で8時間の均質化熱処理を行い、その後400℃にて熱間圧延を開始した。板厚は、2.5mmの熱延板とした。この熱延板を、1.35mmの板厚まで冷間圧延を行った後に、硝石炉にて400℃、10秒の中間焼鈍を行い、さらに冷間圧延して1.0mm厚の冷延板とした。
これら冷延板を、表2に示す種々の条件で、溶体化処理および室温まで焼入れ処理した。そして、その後、表2に示す通り、室温での焼入れ停止時から低温焼鈍の加熱開始時までの室温時効処理時間を種々変え、また、この低温焼鈍処理の温度、時間条件も種々変えて行った。そして、更に、この低温焼鈍処理後に、直ちに予歪みを板に与える冷間加工を、スキンパス圧延を用い、共通して0.5%の加工率にて行なった。
これらスキンパス圧延後の板から試験片(1mm厚み)を切り出し、室温時効の影響がない(無視できる)ように、スキンパス圧延後(最終的に板を作製してから)24時間以内に、この試験片(調質直後の板)のX線小角散乱測定、組織、機械的な特性を各々測定、評価した。
(X線小角散乱測定)
X線小角散乱測定は、各例とも共通して、(株)リガク製 水平型X線回折装置SmartLabを用い、波長1.54ÅのX線を用いて測定し、各例とも前記X線の散乱強度プロファイルを測定した。試験装置は、試験片表面に対して垂直にX線を入射し、入射X線に対して0.1〜10度の微小角度(小角)で、前記試験片から後方に散乱されるX線を検出器を用いて測定するものである。測定試料は、約80μmに薄片化し、測定を行った。このX線小角散乱測定は、通常のこの種組織の測定部位と同じく、この板の幅方向断面である。そして、前記調質直後の板の幅方向断面の任意の箇所から採取した5個の測定試験片(5箇所の測定箇所)の各測定値を平均化したものを、本発明で規定する、微細粒子の粒度分布における、平均粒子直径、体積分率(平均体積分率)と各々した。
前記X線の散乱強度プロファイルは、前記したSchmidtらによる公知の解析方法が組み込まれている、解析ソフト(株)リガク製粒径・空孔解析ソフトウェア NANO−Solver[Ver.3.5]を用いて、測定した。そして、測定したX線散乱強度と、解析ソフトで計算したX線散乱強度との値が互いに近くなるように、非線形最小2乗法によってフィッティングを行い、微細粒子(Cuクラスタ)の平均粒子直径を求めた。 この平均粒子直径は、粒子が完全な球状であると仮定して、理論式を用いて散乱強度を計算し、実験値とフィッティングして求めた。
前記微細粒子(Cuクラスタ)の体積分率は、既知析出量の標準試料の散乱強度プロファイルを用いて微細粒子(Cuクラスタ)由来の散乱強度を規格化した後、微細粒子由来の散乱を積分して求めた。なお、微細粒子をCu原子の集合体として純銅の電子密度を仮定し、アルミニウム母相との電子密度差を計算した。
(機械的特性)
前記試験片の機械的特性の調査として、引張試験を行い、引張強さ、伸びを各々測定した。試験条件は、圧延方向に対して直角方向のJISZ2201の5号試験片(25mm×50mmGL×板厚)を前記試験片から採取し、引張試験を行った。引張試験は、JISZ2241(1980)(金属材料引張り試験方法)に基づき、室温20℃で試験を行った。この際、クロスヘッド速度は5mm/分として、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
(室温での経時変化後の板の特性)
また、室温で保持した際の経時変化(室温時効硬化の影響)を評価するために、前記試験片を更に室温で1ヶ月保持した後に、同様の条件で引張試験を行い、前記調質処理(製造)直後からの、引張強さの増加量(室温時効硬化量)を求めた。この室温時効硬化量は少ないほど良いが、目安として、1ヶ月間当たりの引張強さの増加量が10MPa以下であることが好ましい。
(SSマーク発生評価)
SSマーク発生評価も、板を製造後に一定期間保管された上でプレス成形が行われることを考慮して、前記試験片を更に室温にて1ヶ月保持した後のSSマーク発生状態を評価した。この評価のために、前記試験片を室温にて1ヶ月保持した後に、前記した引張試験を行い、応力−歪曲線上の鋸歯状のセレーションが発生する歪み量(臨界歪み量:%)を調べた。ちなみに、本実施例では、実際に(直接的に)プレス成形しての、板のSSマーク(SSマーク発生)は確認していないが、このセレーション発生の臨界歪み量は、実際のプレス成形した場合のSSマークの発生状態に非常によく相関している。このように、SSマークの発生状態など、アルミニウム合金板の成形性を示す指標として、前記アルミニウム合金板の応力−歪曲線上のセレーション発生の臨界歪みが8%以上であることが好ましい。この臨界歪み量εc(限界歪み量)の上限は特に限定するものではないが、製造上の限界などからすれば、20%程度と想定される。
(プレス成形性評価)
アウタパネルで問題となる張出成形性の評価として、張出成形試験を行った。この張出成形試験も、板を製造後に一定期間保管された上でプレス成形が行われることを考慮して、前記試験片を更に室温にて1ヶ月保持した後に、直径101.6mmの球頭張出ポンチを用い、長さ180mm、幅110mmの試験片に潤滑剤としてスギムラ化学(株)製防錆洗浄油R−303Pを塗布し、成形速度4mm/S、しわ押さえ荷重200kN、ストローク20mmで張出成形試験を行い、割れの発生状態を目視観察した。そして、プレス成形時の割れが全く発生していないものを○、一部でも割れが発生しているものを×として評価した。
表1の通り、発明例1〜8は、Cuを含有し、Znを含有しないか規制しており、本発明のAl−Mg系アルミニウム合金組成規定を満足する。また、表2の通り、前記した溶体化処理・焼入れ処理、予歪、室温時効、低温焼鈍の特殊な組み合わせである、好ましい製造条件で製造されている。この結果、表3の通り、Cuを含むAl−Mg系アルミニウム合金板の組織を、本発明で規定するように、X線小角散乱法で測定された微細粒子の粒度分布の平均粒子直径が0.5nm以上、6.0nm以下であるとともに、その体積分率が0.03%以上とすることができている。
これによって、各発明例は、表3の通り、製造直後からの引張強さの増加量(室温時効性=室温時効硬化量)が小さく、SSマーク特性を含めたプレス成形性に優れている。すなわち、アルミニウム合金板の応力−歪曲線上のセレーション発生の臨界歪みが8%以上であり、高いものは10%以上であり、前記張出成形試験でも割れは発生していない。しかも、これらの優れたSSマーク特性を、JIS5052合金やJIS5182合金等の5000系アルミニウム合金板の有する引張強さや伸びなどの、優れた機械的な特性レベルを落とすことや室温時効硬化すること無しに、達成できている。
但し、許容量ではあるが、Znを0.6%と比較的多く含有する発明例8は、0.03%、0.02%と少ない含有量である発明例3、4や、Znを含有しない他の発明例に比して、許容範囲ではあるが、室温時効硬化量が大きくなっている。
一方、比較例9〜14は、発明例1と同じ合金組成でありながら、表2の通り、板の製造条件が好ましい範囲から各々外れている。
比較例9は溶体化処理温度が低すぎる。
比較例10は焼入れ処理の冷却速度が小さすぎる。
比較例11は焼入れ終了後から低温焼鈍開始までの、室温時効保持時間が短すぎる。
比較例12は低温焼鈍保持時間が短すぎる。
比較例13は低温焼鈍温度が低すぎる。
比較例14は低温焼鈍温度が高すぎる。
この結果、比較例9〜14は、表3の通り、本発明で規定する微細粒子の粒度分布とできていない。このため、強度や伸びなどの機械的な特性は発明例と大差ないものの、アルミニウム合金板の応力−歪曲線上のセレーション発生の臨界歪みが8%未満と低く、SSマーク特性が発明例に比して著しく低い。すなわち、前記セレーションが起きやすい組織となっている。
比較例15〜18は、表2の通り、製造条件は好ましい範囲ではあるが、合金組成が発明範囲を外れている。比較例15はCuを含有せず、比較例16はMg含有量が多すぎる。比較例17はCu含有量が少なすぎる。比較例18はZn含有量が多すぎる。
この結果、Cuの効果が発揮できない、比較例15、17は、好ましい条件で製造されているにもかかわらず、表3の通り、本発明で規定する微細粒子の粒度分布とできていない。このため、室温時効硬化量は少ないものの、強度も低く、アルミニウム合金板の応力−歪曲線上のセレーション発生の臨界歪みが8%未満と低く、SSマーク特性は発明例に比して著しく低い。すなわち、前記セレーションが起きやすい組織となっている。
比較例16は、強度が高すぎ、伸びが低く、プレス成形時に割れが生じて、プレス成形性が発明例に比して低い。
比較例18は、Znが多すぎるために、室温時効硬化量が許容範囲を超えて大きくなる。このため、プレス成形時に割れが生じて、プレス成形性が発明例に比して低い。
以上の実施例から、本発明各要件あるいは好ましい製造条件などの、SSマーク特性やプレス成形性あるいは機械的特性などを兼備するための、臨界的な意義が裏付けられる。
Figure 2014084492
Figure 2014084492
以上説明したように、本発明によれば、室温での時効硬化による曲げ性の低下などの新たな問題が生じることなしに、前記降伏伸びに起因するランダムマークの発生とともに、パラレルバンドの発生を同時に抑制して、SSマーク発生を抑制でき、自動車パネルへのプレス成形性を向上させた、成形加工用Al−Mg系アルミニウム合金板を提供できる。 この結果、板をプレス成形して使用される、前記した自動車などの多くの用途へのAl−Mg系アルミニウム合金板の適用を広げるものである。

Claims (4)

  1. 質量%で、Mg:2.0〜6.0%、Cu:0.3%を超え、2.0%以下を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系アルミニウム合金板であって、この板の組織とプレス成形性との関係を表す指標として、X線小角散乱法で測定された微細粒子の粒度分布の平均粒子直径が0.5nm以上、6.0nm以下であるとともに、その体積分率が0.03%以上であることを特徴とする成形加工用アルミニウム合金板。
  2. 前記アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Fe:0.5%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以下、Cr:0.1%以下、Zr:0.1%以下、Ti:0.05%以下の内から選ばれる一種また二種以上を含有する請求項1に記載の成形加工用アルミニウム合金板。
  3. 前記アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Zn:1.0%以下を含有する請求項1または2に記載の成形加工用アルミニウム合金板。
  4. 前記アルミニウム合金板の成形性を示す指標として、前記アルミニウム合金板の応力−歪曲線上のセレーション発生の臨界歪みが8%以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成形加工用アルミニウム合金板。
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