JP2011184795A - 成形性に優れたアルミニウム合金板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定のMg、Znを含む組成からなるAl−Mg系アルミニウム合金板製造の際に、溶体化・焼入れ処理後、室温まで冷却せずに、連続してごく低温の焼鈍を施し、SEMやTEMを用いた通常の組織観察では知見できないが、3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡では測定可能な、特定の原子の集合体を存在させるようにして、プレス成形時のSSマークの発生を抑制する。
【選択図】なし
Description
本発明者らは、Al−Mg系アルミニウム合金板では、Znを含有するとSSマークの発生抑制効果があることを知見していた。しかし、同時に、同じZnの含有量のAl−Mg系アルミニウム合金板であっても、SSマークの発生抑制効果には大きな差がある現象が起こることも知見していた。このことから、単に、Znを含むだけではなく、Al−Mg系アルミニウム合金板の組織状態、即ち、Znを含む場合に発生する、MgZnクラスタの存在形態が、SSマークの発生状態に大きく影響しているものと考えられる。
前記した新規な微細MgZnクラスタ(本発明が規定する20個以上の原子からなる原子の集合体)は、現時点では、公知の3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡を用いてのみ、測定可能である。
但し、これら3DAPによる原子の検出効率は、現在のところ、イオン化した原子のうちの50%程度が限界であり、残りの原子は検出できない。この3DAPによる原子の検出効率が、将来的に向上するなど、大きく変動すると、本発明が規定する原子の集合体の平均個数密度(個/μm3 )の3DAPによる測定結果が変動してくる可能性がある。したがって、この原子の集合体の平均個数密度の測定に再現性を持たせるためには、3DAPによる原子の検出効率は約50%と略一定にすることが好ましい。
本発明では、本請求項で規定する原子の集合体(クラスター)を、少なくともMg原子かZn原子かのいずれかを含むものとする。その上で、Mg原子かZn原子かのいずれかまたは両方を合計で20個以上含む原子の集合体であって、これら含まれるMg原子かZn原子のいずれの原子を基準としても、その基準となる原子と隣り合う他の原子のうちのいずれかの原子との互いの距離が0.50nm以下である原子の集合体の平均個数密度(個/μm3 )を、1×104 個/μm3 以上の平均密度で含むことと規定する。
本発明では、以上のように規定され、かつ3DAP分析により測定される、原子の集合体を、Znを含むAl−Mg系アルミニウム合金板組織中に、1×104 個/μm3 以上の平均密度で存在させる。
本発明では、SSマークのうち、降伏伸びの発生によるランダムマークの発生も防止できる。したがって、このランダムマークの発生防止のために、従来の予歪み(予加工)を与える対策も不要となる。言い換えると、従来の予歪み(予加工)を与えずとも、歪量の比較的低い部位で発生するランダムマークと、歪量の比較的高い部位で発生するパラレルバンドとの、両方のストレッチャーストレインマーク(SSマーク)の発生を十分に抑制できる。
本発明アルミニウム合金熱延板の化学成分組成は、基本的に、Al−Mg系合金であるJIS 5000系に相当するアルミニウム合金とする。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。
Mgは、加工硬化能を高め、自動車パネル用素材板としての必要な強度や耐久性を確保する。また、材料を均一に塑性変形させて破断割れ限界を向上させ、成形性を向上させる。また、超微細MgZnクラスタを形成して、プレス成形の際のSSマークの発生を抑制するものと推測される。Mgの含有量が0.5%未満では、Mg含有のこれら効果発揮が不十分となる。また、超微細MgZnクラスタも不足して、3DAP分析により測定された原子の集合体の平均個数密度が1.0×10-4/nm3以上にはならなくなる。
Znは、新規な超微細MgZnクラスタを形成して、プレス成形の際のSSマークの発生を抑制するものと推測される。Znが0.1%未満と少なすぎる場合は、プレス成形の際のSSマークの発生抑制効果発揮が不十分となる。また、新規な超微細MgZnクラスタの量も不足する。
本発明では、その他の元素として、更に、Fe、Si、Mn、Cr、Zr、V、Ti、Cuの内から選ばれる一種また二種以上を含有することを許容する。これらの元素は、溶解原料としてアルミニウム合金スクラップ量(アルミニウム地金に対する割合)が増すほど含有量が多くなる不純物元素である。即ち、Al合金板のリサイクルの観点から、溶解原料として、高純度アルミニウム地金だけではなく、5000系合金やその他のAl合金スクラップ材、低純度Al地金などを溶解原料として使用した場合には、これら元素の混入量(含有量)が必然的に多くなる。そして、これら元素を例えば検出限界以下などに低減すること自体がコストアップとなり、ある程度の含有の許容が必要となる。
本発明の板の製造方法について、以下に具体的に説明する。
本発明の組織を有する板とするためには、以上のようにして得られた所要の板厚のこれら熱延板あるいは冷延板に対して、最終焼鈍として、急速加熱や急速冷却を伴う溶体化・焼入れ処理を行う。このような溶体化・焼入れ処理を行った材料、いわゆるT4処理材は、比較的緩やかな加熱や冷却を伴うバッチ焼鈍材と比較して、強度と成形性とのバランスに優れる。また、溶体化処理に続く焼入れ処理時には原子空孔が導入される。
この溶体化処理後の焼入れ処理時は、板の温度が溶体化温度から、続く低温焼鈍温度まで、10℃/秒以上の冷却速度で冷却する必要がある。冷却速度が10℃/秒未満では、冷却中に粗大な析出物が生成して、この後に低温焼鈍を加えて最終板としても、クラスタの生成量が不足してSSマークが発生する。このような急速加熱や急速冷却を伴う溶体化・焼入れ処理は、連続焼鈍ライン(CAL)等を用いて連続的に行っても良いし、あるいは加熱にソルトバス等を、冷却に水焼入れ、油焼入れ、強制空冷等を用いてバッチ式で行っても良い。ここで、CALを用いた溶体化処理・焼入れを実施した場合、室温〜溶体化処理温度までの一般的な加熱および冷却の速度はともに5〜100℃/秒程度である。
この焼入れ処理(急冷)に続いて、室温まで板の温度を下げることなく、30℃以上50℃以下の範囲で24時間以上保持する低温焼鈍を、連続して行う。このためには、板の温度が30℃以上50℃以下の範囲となってところで、焼入れ処理(急冷)における冷却を停止し、この30℃以上50℃以下の温度範囲で、そのまま、板(コイル)を24時間以上保持する。
3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡と分析解析ソフトとを用いた測定方法(段落0037以降に詳述した測定方法)により、本発明で規定した原子の集合体の平均密度を測定した。
板の機械的特性の調査として、上記各試験片の引張試験を行い、引張強さ(MPa)、伸び(%)を各々測定した。試験条件は、圧延方向に対して直角方向のJISZ2201の5号試験片(25mm×50mmGL×板厚)を採取し、引張試験を行った。引張試験は、JISZ2241(1980)(金属材料引張り試験方法)に基づき、室温20℃で試験を行った。この際、クロスヘッド速度は5mm/分として、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
同時に、板のプレス成形性としてのSSマーク発生評価のために、この引張試験時における、降伏伸び(%)と、応力−歪曲線上の鋸歯状のセレーションが発生する歪み量(臨界歪み量:%)を調べた。
Claims (3)
- 質量%で、Mg:0.5〜7.0%、Zn:0.1〜4.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg系アルミニウム合金板であって、3次元アトムプローブ電界イオン顕微鏡により測定された原子の集合体として、その原子の集合体が、Mg原子かZn原子かのいずれかまたは両方を合計で20個以上含むとともに、これら含まれるMg原子かZn原子のいずれの原子を基準としても、その基準となる原子と隣り合う他の原子のうちのいずれかの原子との互いの距離が0.50nm以下であり、これらの条件を満たす原子の集合体を1×104 個/μm3 以上の平均密度で含むことを特徴とする成形性に優れたアルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金板が、更に、質量%で、Fe:1.0%以下、Si:0.5%以下、Mn:1.0%以下、Cr:0.3%以下、Zr:0.3%以下、V:0.3%以下、Ti:0.1%以下、Cu:1.0%以下、の内から選ばれる一種また二種以上を含有する請求項1に記載の成形性に優れたアルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金板の成形性を示す指標として、前記アルミニウム合金板の応力−歪曲線上のセレーション発生の臨界歪みが8%以上である請求項1または2項に記載の成形性に優れたアルミニウム合金板。
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