JP7249321B2 - アルミニウム合金部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばAl-Zn-Mg-Cu系のアルミニウム合金部材の製造方法に関し、特に、自動車に使用される、補強材(例えばレインフォースメント等)、衝撃吸収材(例えばクラッシュボックス等)、ボディシート、船舶、航空機等の部材、部品、あるいは建築材料、構造材料、そのほか各種機械器具、家電製品やその部品等の素材として、成形加工を施して使用されるアルミニウム合金板や、バンパーやピラー等の自動車部品の素材として、曲げや拡縮等の成形加工を施して使用される、押出管や押出形材のようなアルミニウム合金押出材の成形加工方法に関する。
最近の地球温暖化抑制やエネルギーコスト低減等の要求を背景として、自動車の軽量化による燃費向上の要望が高まっている。この要望を受けて、自動車の構造部材、ボディパネルも、従来の冷延鋼板からアルミニウム合金板が使用される傾向が増大しつつある。アルミニウム合金板は、従来の冷延鋼板とほぼ同等の強度を有しながら、比重が約1/3であり、自動車の軽量化に寄与することができる。また、自動車用途以外に、電子・電気機器等のパネル、シャーシの様な成形加工部品についても、最近ではアルミニウム合金板を用いることが多くなっている。特にAl-Zn-Mg-Cu系合金は、強度が高いことから、広範な用途にわたって適用されることが期待されている。
しかしながら、Al-Zn-Mg-Cu系合金は、溶体化処理後の室温時効による強度上昇が著しく大きいため、冷間加工での成形性が他のアルミニウム合金に比べて劣ることが知られている。その結果、成形品の成形の自由度は大きく制限される。
さらに、Al-Zn-Mg-Cu系合金は、Al-Mg-Si系合金に比べて焼入れ感受性が大きいため、溶体化処理後に行う焼入れ処理での冷却速度が遅いと、時効後の強度が低下する恐れがある。
例えば、特許文献1および非特許文献1には、液体窒素等を用いてアルミニウム合金素材を、例えば-50℃~-196℃の低温域に冷却して成形加工することにより、素材の加工性を向上させ、成形加工性を向上させるプレス加工方法が開示されている。
また、特許文献2~4には、塗油後の板を成形前に一度液体窒素で冷却し、低温のまま油の粘度が高い状態で成形することで、成形性を向上させるプレス成形法が開示されている。
さらに、特許文献5および特許文献6には、溶体化処理した板材を高温のまま成形し、型内で焼入れることで、高い成形性を得つつ、高い強度も得られる成形方法が開示されている。
さらにまた、特許文献7および特許文献8には、焼入れ後、自然時効した板を200℃前後の温度で成形することで、成形性と強度を両立させた成形加工方法が開示されている。
加えて、特許文献9には、化学成分を限定することにより、自然時効を抑制し、成形可能な日数を確保した技術が開示されている。
加えてまた、特許文献10には、溶体化処理、焼入れ、自然時効された材料を、成形前に、復元処理を行い、その後ただちに成形することで、十分な成形性と、時効後の高い強度を得る技術が開示されている。
特許第3287148号公報 特許第2729705号公報 特許第3269859号公報 特許第3354024号公報 特許第5681631号公報 国際公開第2017/062225号 国際公開第2015/112799号 特開2010-159489号公報 米国特許出願公開第2011/0017366号明細書 特許第5671422号公報
発明協会公開技報公技番号89-15623号
上記した先行技術文献は、いずれも成形加工前または成形加工時の素材の状態を工夫することにより、通常では成形し難い高強度合金の成形加工を可能にした技術を開示したものである。
しかしながら、特許文献1~4および非特許文献1に記載されている低温での成形加工方法では、純Al、Al-Mg系合金などのような非熱処理型合金であれば、一定の効果はあるものの、Al-Zn-Mg-Cu系合金のような高強度アルミニウム合金に対しては、成形性の向上効果は十分には得られない。
また、特許文献5および特許文献6に記載の成形加工方法、いわゆるホットスタンプでは、焼入れ速度が部位ごとに異なりやすいため、強度がばらつき、あるいは冷却速度の違いにより寸法精度が低下する恐れがある。加えて、ホットスタンプによる成形加工を行うために高温用の潤滑剤を開発したり、あるいは素材表面の酸化皮膜を除去する工程を追加したりする必要があるなど、技術やコストなどの観点から、かかる成形加工方法を適用しにくいという問題がある。
さらに、特許文献7および特許文献8に記載されているような温間成形では、短時間で加熱して成形しないと、強度が高くなって成形できなくなるため、良好な強度と成形性を両立できる製造条件の範囲が狭いという問題がある。加えて、特許文献7のように、成形加工した後にさらに人工時効(T6処理)を施すと、高温に暴露されることになるため、T6処理を施した際のアルミニウム合金材の到達強度が低くなってしまう。
さらにまた、特許文献9に記載されているように、化学成分を調整して室温時効を抑制し、成形性を確保するような方法では、厳しい成形性が確保しにくい、または人工時効後の強度が不足してしまうという問題がある。
加えて、特許文献10に記載されているように、復元処理の急冷終了後から1時間以内に成形するような方法では、短時間の間で成形しないと、機械的特性が急速に変化することで、最適成形条件がずれてしまうと恐れがある。
本発明の目的は、安定した溶体化処理および焼入れ処理が適用でき、かつ既存の成形装置でも成形でき、かつ成形時に厳しい時間的な制約を有しないアルミニウム合金部材、特に、Al-Zn-Mg-Cu系のアルミニウム合金部材の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]熱処理型アルミニウム合金からなる素材に、440~580℃の溶体化処理を施した後に、前記溶体化処理の温度から少なくとも100℃までの温度範囲を10℃/s以上の冷却速度で冷却する焼入れ処理を施し、次いで、前記素材を-196℃以上40℃以下の保持温度で保持することで自然時効を抑制し、その後、成形加工処理を施す製造方法であって、成形加工処理前の前記素材の試験片に対して20℃で引張試験を行った際の、引張強さが465MPa以下、耐力が295MPa以下であることを特徴とするアルミニウム合金部材の製造方法。
[2]前記焼入れ処理の終了時点から成形加工処理を開始するまでの前記保持温度での保持期間中に、0℃以下で保管することにより、自然時効を抑制することを特徴とする上記[1]に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
[3]前記保持温度での保持期間が、下記式(1)に代入して計算されるCu添加量で補正した20℃での換算時間t20℃にして、50時間以内であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。

20℃=1.4÷exp(0.7/[Cu])×∫D0×exp{-(Q/2)/[R(T+273)]}dt・・(1)
但し、式中、[Cu]はCu添加量、DはAlの振動数因子、QはAlの拡散の活性化エネルギー、Tは素材の温度(℃)、そして、Rは気体定数である。
[4]前記焼入れ処理における前記冷却速度が、10℃/s以上150℃/s未満であるとき、前記20℃での換算時間が8時間以内であることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
[5]前記焼入れ処理における前記冷却速度が、150℃/s以上であるとき、前記20℃での換算時間が30時間以内であることを特徴とする[1]~[3]のいずれか1項に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
[6]前記素材は、質量%で、6~9%のZn、1~3%のMgおよび0.1~2.5%のCuを含有し、さらに0.05~0.2%のZr、0.1~0.4%のMnおよび0.05~0.2%のCrの群から選択される少なくとも1種を含有するとともに、SiおよびFeをともに0.2%以下に抑制し、残部がアルミニウムおよび不可避的不純物からなる[1]~[5]のいずれか1項に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
[7]前記焼入れ処理後の前記素材に、潤滑剤を塗布する表面潤滑処理をさらに施し、
前記成形加工は、前記素材を0℃以下の温度にし、前記表面潤滑処理にて前記素材表面に塗布した前記潤滑剤の粘度を高めた状態で行うことを特徴とする上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
本発明のアルミニウム合金部材の製造方法は、熱処理型アルミニウム合金からなる素材に、440~580℃の溶体化処理を施した後に、前記溶体化処理の温度から少なくとも100℃までの温度範囲を10℃/s以上の冷却速度で冷却する焼入れ処理を施し、次いで、前記素材を-196℃以上40℃以下の保持温度で保持することで自然時効を抑制し、その後、成形加工処理を施す製造方法であって、成形加工処理前の前記素材の試験片に対して20℃で引張試験を行った際の、引張強さが465MPa以下、耐力が295MPa以下であることによって、焼入れ後の成形性の高い状態を長期間にわたって安定して得ることができる。これにより、ホットスタンプのような特殊な成形方法を適用する必要がなく、既存の成形装置を用いて高強度用アルミニウム合金を、割れ等の欠陥が発生することなく良好に成形することができる。
また、本発明では、溶体化処理および焼入れ処理のような熱処理と成形加工処理との間で、これらの処理とは別個独立に長期間にわたって冷却状態で保持(保管)して自然時効を抑制することが可能であるので、例えば、熱処理を行うための装置と、成形加工処理を行うための装置とは別の場所で自然時効を抑制するための装置を設けることが可能となる。
さらに、本発明では、成形加工処理で問題が生じた場合であっても、熱処理と成形加工処理を時間的に切り分けることが可能であるため、いずれかの処理(工程)の状況で遅延等の問題が生じたとしても、その問題の影響が他の処理には及びにくくなる。
図1は、アルミニウム合金(7050合金)板を焼入れ処理した後(、成形加工前)に、5種類の異なる温度(-80℃、-10℃、5℃、20℃、40℃)でそれぞれ保持したときの保持時間と引張強さとの関係を一例として示した図である。 図2は、アルミニウム合金(7050合金)板を焼入れ処理した後(、成形加工前)に、5種類の異なる温度(-80℃、-24℃、5℃、20℃、40℃)でそれぞれ保持したときの、Cu添加量で補正した20℃での換算時間t20℃と引張強さとの関係を一例として示した図である。 図3は、引張強さが429MPaに到達するまでの20℃での換算時間t20℃を縦軸にとり、Cu添加量の逆数の数値(1/[Cu])を横軸としてプロットしたときの一例を示した図である。 図4は、合金Bを用いて製造したアルミニウム合金板を、エリクセン試験機により球頭ポンチを用いて張出試験を行い、種々の表面潤滑条件を横軸とし、張出高さを縦軸としてプロットしたときの図である。 図5は、合金Bを用い、表面に一般的な潤滑剤(R303P)を塗布して製造したアルミニウム合金板を、エリクセン試験機により球頭ポンチを用いて張出試験を行い、成形加工処理時の素材およびポンチの温度を横軸とし、張出高さを縦軸としてプロットしたときの図である。
次に、本発明に係るアルミニウム合金部材の製造方法の実施形態を以下で具体的に説明する。
本発明のアルミニウム合金部材の製造方法は、熱処理型アルミニウム合金からなる素材に、440~580℃の溶体化処理を施した後に、前記溶体化処理の温度から少なくとも100℃までの温度範囲を10℃/s以上の冷却速度で冷却する焼入れ処理を施し、次いで、前記素材を-196℃以上40℃以下の保持温度で保持することで自然時効を抑制し、その後、成形加工処理を施す製造方法であって、成形加工処理前の前記素材の試験片に対して20℃で引張試験を行った際の、引張強さが465MPa以下、耐力が295MPa以下であることを特徴とする。
(I)素材の合金組成
本発明に係るアルミニウム合金部材の製造方法に用いる素材の合金組成としては、特に限定はしないが、例えば、Al-Cu(-Mg)系、Al-Mg-Si系、Al-Zn-Mg(-Cu)系の熱処理型アルミニウム合金を挙げることができる。特に高強度用途としてAl-Zn-Mg-Cu系合金を素材として用いる場合、具体的な合金組成の好適例を示すと以下のとおりである。すなわち、質量%で、6~9%のZn、1~3%のMgおよび0.1~2.5%のCuを含有し、さらに0.05~0.2%のZr、0.1~0.4%のMnおよび0.05~0.2%のCrの群から選択される少なくとも1種を含有するとともに、SiおよびFeをともに0.2%以下に抑制し、残部がアルミニウムおよび不可避的不純物からなる。以下、合金組成の各成分元素について、その作用と共に成分量を限定した理由について説明する。なお、以下で各成分元素の成分量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
[Zn:6.0~9.0%]
Zn(亜鉛)は、本発明のアルミニウム合金部材に用いられる素材において基本となる必須の含有成分元素の一つであって、MgおよびCuとともに協働して強度向上に寄与する。しかしながら、Zn含有量が6.0%未満では、高強度アルミニウム部材として十分な強度が得られず、また、Zn含有量が9.0%よりも多いと、強度が高くなりすぎるか、あるいは粗大な化合物が形成しやすくなって、十分な成形性が得られない。このため、Zn含有量は6.0~9.0%であることが好ましい。
[Mg:1.0~3.0%]
Mg(マグネシウム)は、本発明のアルミニウム合金部材に用いられる素材において基本となる必須の含有成分元素の一つであって、ZnおよびCuとともに協働して強度向上に寄与する元素である。しかしながら、Mg含有量が1.0%未満では、高強度アルミニウム部材として十分な強度が得られず、また、Mg含有量が3.0%よりも多いと、強度が高くなりすぎるか、あるいは粗大な化合物が形成しやすくなって、十分な成形性が得られない。このため、Mg含有量は1.0~3.0%であることが好ましい。
[Cu:0.1~2.5%]
Cu(銅)は、本発明のアルミニウム合金部材に用いられる素材において基本となる必須の含有成分元素の一つであって、ZnおよびMgとともに協働して強度向上に寄与する元素である。しかしながら、Cu含有量が0.1%未満では、Al-Zn-Mg-Cu系合金として、Cuを含有させたことによる十分な強度向上効果が得られず、また、Cu含有量が2.5%よりも多いと、強度が高くなりすぎるか、あるいは粗大な化合物が形成しやすくなって、十分な成形性が得られない。このため、Cu含有量が0.1~2.5%であることが好ましい。
本発明で用いる素材は、上記したZn、MgおよびCuを必須の含有成分とする組成を基本組成とするが、さらに下記に示す0.05~0.2%のZr、0.1~0.4%のMnおよび0.05~0.2%のCrの群から選択される少なくとも1種を含有するとともに、SiおよびFeをともに0.2%以下に抑制することが好ましい。
[0.05~0.2%のZr、0.1~0.4%のMnおよび0.05~0.2%のCrの群から選択される少なくとも1種を含有すること]
Zr(ジルコニウム)、Mn(マンガン)およびCr(クロム)は、ともに微細な金属間化合物を形成させ、結晶粒の粗大化を抑制する作用を有する成分元素であって、本発明では、0.05~0.2%のZr、0.1~0.4%のMnおよび0.05~0.2%のCrの群から選択される少なくとも1種を含有する。しかしながら、Zr、MnおよびCrの含有量は、それぞれの上記適正範囲の下限値未満では、十分な結晶粒粗大化抑制効果が得られず、また、それぞれの上記適正範囲の上限値超えでは、粗大な金属間化合物が形成しやすくなって、成形性が阻害されるおそれがある。このため、Zr、MnおよびCrの群から選択される少なくとも1種を含有する場合には、Zr含有量が0.05~0.2%、Mn含有量が0.1~0.4%、そして、Cr含有量が0.05~0.2%の範囲であることが好ましい。なお、Zrと同様の作用を有する成分元素であって、Zrの代替の成分元素として、0.05~0.2%のSc(スカンジウム)を使用することも可能である。
[SiおよびFeをともに0.2%以下に抑制すること]
Si(ケイ素)およびFe(鉄)は、素材の溶解原料として、純アルミニウム地金以外に、アルミニウム合金スクラップを使用することによって、素材中に、不純物として混入などが想定(許容)される成分元素であって、SiおよびFeの含有量がそれぞれ0.2%よりも多いと、粗大な化合物が形成しやすくなって、成形性が阻害されるおそれがある。このため、本発明では、SiおよびFeは、アルミニウム合金圧延板の特性に悪影響を及ぼさない含有範囲として、ともに0.2%以下に抑制する。
本発明におけるアルミニウム合金部材の製造方法に用いる素材の合金組成は、以上説明した成分元素以外は、基本的にはAl(アルミニウム)および不可避的不純物である。不可避的不純物としては、V、Ti、Bなどが挙げられ、各成分量が0.1%以下でかつ合計成分量が0.2%以下とし、かかる範囲内の不可避的不純物の成分量であれば、本発明の効果が損なわれることは無い。
(II)アルミニウム合金部材の製造方法
<鋳造>
まず、上記成分組成を有するアルミニウム合金を常法に従って溶製し、連続鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の鋳造法を適宜選択して鋳造する。
<均質化処理>
次に、得られた鋳塊(素材)に対し均質化処理を施す。均質化処理を行う場合の加熱・保持条件は、特に限定されないが、通常は、加熱温度が400~580℃の範囲であればよい。
<熱間圧延>
その後、均質化処理を施した素材を冷却して熱間圧延する。熱間圧延は、常法に従って行えばよい。熱間圧延時の温度としては、例えば300~550℃の範囲内の温度に設定し、熱間圧延後の巻き取り温度は250~450℃とすればよい。
<冷間圧延>
熱間圧延後は冷間圧延を行い、製品板厚またはそれに近い板厚まで圧延する。総冷間圧延率は、40~80%程度とするのが通常であるが、特に限定されるものではない。
<切断>
以上のようにして所定の板厚としたアルミニウム合金板を、切断工程で成形加工に適した形状、大きさのシート材に切断する。なお、この切断工程は、溶体化処理後に行っても良い。すなわち、冷延コイルを連続焼鈍炉により、溶体化処理、焼入れを行い、その後、成形加工前に切断工程を施しても良い。
<溶体化処理>
シート材(素材)に溶体化処理を施す。この溶体化処理における処理温度は、素材の温度(溶体化温度)が440℃以上580℃以下となるように設定する。溶体化温度での保持は、特に行わなくてもよいが、溶体化温度で10分以内の保持を行うことが好ましい。
<焼入れ処理>
シート材(素材)に溶体化処理を施した後に焼入れ処理を行う。焼入れ(冷却)処理は、水冷、ミスト冷却および空冷のいずれであっても良いが、焼入れ処理における冷却速度は、成形時の強度に対する良好な曲げ加工性を得るため、溶体化処理の温度(溶体化温度)から少なくとも100℃までの温度範囲を10℃/s以上の冷却速度で冷却することが必要である。焼入れ処理後に、通常の成形加工処理を行う場合には、前記温度範囲での冷却速度は、10℃/s以上150℃/s未満とすることが好ましいが、曲げ加工性をより一層向上させる必要がある場合には、前記温度範囲での冷却速度は、150℃/s以上とすることが、冷却時の結晶粒界への添加元素の析出を抑制し、粒界近傍の強度を低下させない点で特に好ましい。なお、焼入れ処理における冷却速度は、素材に使用するアルミニウム合金の化学成分や、目的とする強度および成形性の組み合わせを考慮することによって適切に選択されるべきである。
<自然時効を抑制するための処理>
次に、前記焼入れ処理後でかつ前記成形加工処理前に、素材を-196℃以上40℃以下の保持温度、好ましくは0℃以下で保持(保管)する自然時効を抑制するための処理を施す。この処理は、焼入れ処理の終了時点から成形加工処理を開始するまでの期間中に、素材が自然時効等によって強度等の材料特性が変化するのを抑制することを目的として行うものであって、本発明の製造方法において重要な処理である。前記保持温度での保持時間の下限値は特に制限されるものではないが、4時間未満だと、焼入れ処理と成形加工処理の間のバッファ時間が短くなって、量産時に成形工程でトラブルがあった際に焼入れ処理にも影響し、溶体化処理温度での過剰な保持や焼入れ速度の低下など、材料特性に影響する可能性が出てくるおそれがあることから、4時間以上であることが好ましい。
また、前記保持時間は、下記式(1)に代入して計算されるCu添加量で補正した20℃での換算時間t20℃にして、50時間以内であることが好ましい。

20℃=1.4÷exp(0.7/[Cu])×∫D0×exp{-(Q/2)/[R(T+273)]}dt・・(1)
但し、式中、[Cu]はCu添加量、DはAlの振動数因子、QはAlの拡散の活性化エネルギー、Tは素材の温度(℃)、そして、Rは気体定数である。
上記(1)式は、まず式(2)に示すようにアルミニウム合金中のAl原子の自己拡散における振動数因子Dおよび活性化エネルギーQを用いて、保持温度における拡散係数を20℃における拡散係数で割り、その比に保持時間をかけることで、20℃に換算した際の時間を算出している。これを式変形すると式(3)になる。
20℃=∫(D0×exp{-Q/[R(T+273)]})/(D0×exp{-Q/[R(20+273)]})dt・・(2)
20℃=∫exp{Q/R[(1/(20+273))-(1/(T+273))]}dt・・(3)
さらに実験の結果を整理する際に、通常の拡散係数を算出する場合の活性化エネルギーQに対して、係数を0.1から1.0までの間で0.1おきに変えたところ、その係数を0.5にすることで、異なる保持温度における自然時効挙動を、下記に示す式(4)で20℃での換算時間t20℃として整理できることを確認した。
20℃=∫exp{Q/2R[(1/(20+273))-(1/(T+273))]}dt・・(4)
図1は、アルミニウム合金(7050合金)板を焼入れ処理した後(、成形加工前)に、5種類の異なる温度(-80℃、-10℃、5℃、20℃、40℃)でそれぞれ保持したときの保持時間と引張強さとの関係を一例として示したものである。また、図2は、図1に示す横軸の保持時間を、上記(4)式で算出される20℃での換算時間t20℃に変更して引張強さとの関係を示したものである。図1および図2は、7050合金板の場合を例にとって具体的に示したものであるが、他のアルミニウム合金についても同様な考え方で整理することが可能である。
また、本発明者らは、アルミニウム合金の組成範囲と自然時効速度との関係を検討したところ、自然時効速度がCu量に最も影響を受け、Cu量が少ないほど、時効速度は低下する傾向があることを見出した。この理由は、Cu原子と時効挙動を支配する空孔の結合力が強く、空孔を核とした時効析出が促進されるためである。このCu量の影響を規格化するために、同一強度(ここでは引張強さ429MPa)に到達するまでに必要な時間を各アルミニウム合金で見積もった。その必要時間は、Cu量の逆数を変数とした指数関数でよく近似できることが判明した。
図3は、種々のアルミニウム合金板について、引張強さが429MPaに到達するまでの20℃での換算時間t20℃を縦軸にとり、Cu添加量の逆数の数値(1/[Cu])を横軸としてプロットしたときの例を示したものである。この近似関数のうち、係数の8.6は、基準強度を429MPaとしたときの結果であり、Cu添加量の違いによる時効速度の差を相対評価するためには、指数の係数に0.7を用いればよい。前記係数が0.7より高い値では、Cu量の時効速度促進の効果を過小に見積もってしまい、0.7より低い値では過大に見積もってしまうおそれがあるからである。
そこで、exp(0.7/[Cu])で割る補正項を作り、さらに、7050合金のCu添加量(2.1質量%)を基準とするため、exp(0.7/2.1)≒1.4の係数を式(4)に加えた。その結果、式(1)が得られた。これにより、補正項部分の値は、7050合金では、1.4÷(EXP(0.7÷2.1))≒1であるのに対して、7046合金では、Cu添加量が0.15質量%であるため、1.4÷(EXP(0.7÷0.15))≒0.013となる。7050合金では、上記[3]で記載した通り、十分な曲げ加工性を維持できる保持時間として、20℃換算時間で50時間まで許容されるが、7046合金では、実際には、50÷0.013≒4000時間まで許容される。このような合金成分の差を規格化するために、式(1)で示したように、Cu添加量で補正した20℃換算保持時間を指標として設けており、これにより安定した製造を行うことが可能になる。
保持時間を求める際に、上記(1)式で算出する理由は、焼入れ後から成形までの自然時効による強度上昇を見積もる場合、等温保持であれば、単純な式で計算できるが、量産時に大きな材料の温度を制御する場合には、冷却に要する時間や周囲の温度変化による材料の温度変化など、一定ではない保持温度の影響も考慮する必要がある。その際、単位時間あたりの積分により、一つの因子(20℃換算の保持時間)で保持時間を管理することで、割れの可能性を判断できるようにするためである。なお、前記保持時間を、上記(1)式より、20℃での換算時間t20℃として計算して50時間以内とした理由は、20℃での換算時間で50時間を超えると、材料強度が大幅に増加し、加工率が小さい緩い曲げ加工でも割れが生じる可能性が高くなるからである。
例えば、焼入れ処理における冷却速度が10℃/s以上150℃/s未満である場合には、自然時効を抑制するための処理の保持時間は、20℃での換算時間t20℃にして8時間以内とすることが好ましい。また、焼入れ処理における冷却速度が150℃/s以上である場合には、自然時効を抑制するための処理の保持時間の上限は、20℃での換算時間t20℃が最大30時間まで延ばすことができる点で特に好ましい。なお、焼入れ処理を施してから成形加工処理するまでの期間が短い場合には、自然時効を抑制するための処理を省略してもよい。
また、上記保持温度に保持した素材を、1ヶ月以上経ってから成形加工処理を行う場合には、より一層の時効抑制を行うため、-20℃以下の温度に冷却した状態で保管することがより好適である。
さらに、焼入れ処理後、成形加工処理前の保持(保管)期間中にアルミニウム合金素材を輸送する必要がある場合には、0℃以下の温度であれば-20℃以上であっても良い。つまり、特殊な冷却装置を有する冷凍車での運搬は必須ではなく、保冷剤を冷却源とした通常の冷凍車での運搬が可能である。ただし、成形加工が施される素材の強度(例えば引張強度、耐力等)が、自然時効等によって大きく変化しないようにすることが重要であり、化学成分や目的とする強度、成形性を考慮して、運搬時間や運搬中の温度を設定する必要がある。
<成形加工処理>
焼入れ処理を行った後、あるいはさらに自然時効を抑制するための処理を行った後に、素材に成形加工処理を施す。成形加工処理の開始時における素材の成形温度は、40℃以下の温度にすることが好ましい。前記素材の成形温度が40℃を超えると、時効が進行しやすくなりやすく、短時間で時効により強度の上昇が生じやすくなるからである。成形加工処理時の素材温度の下限値は、特に限定はしないが、冷却媒体が液体窒素である場合には、-196℃である。
成形加工処理は、例えば0℃以下の低温のままの状態、あるいは室温(例えば1~40℃)に戻した状態の素材に施す場合が挙げられる。室温に戻した状態で素材を成形加工した場合には、成形機およびその周辺装置で霜による錆などの悪影響の懸念がなくなる点で有利である。
また、0℃以下の低温のままの状態で成形加工した場合には、焼入れ処理後の素材に、潤滑剤を塗布する表面潤滑処理をさらに施しておくことが好ましい。これによって、成形加工は、素材を0℃以下の温度にし、表面潤滑処理にて素材表面に塗布した前記潤滑剤の粘度を高めた状態で行うことでき、その結果、室温状態で行う成形加工に比べて優れた潤滑性が得られ、成形性を向上させることができる。潤滑剤としては、特に限定はしないが、例えばスギムラ化学工業株式会社製のプレトン(防錆油、型番:R303P)などが挙げられる。
<その他の処理>
本発明では、焼入れ処理後、表面の酸化皮膜を除去するために、必要に応じて酸洗処理を行っても良い。また、耐食性の向上や接着剤の密着性を向上させることを目的とした化成処理を行っても良い。
また、成形加工処理の後は、人工時効処理をさらに追加して行うことによって、強度を高めても良く、また、塗装焼付処理をさらに追加して行うことによって、強度を高めても良い。人工時効処理の際にRRA(復元再時効)処理を行い、耐SCC(耐応力腐食割れ)性を高めても良い。
<成形加工処理が施される素材の機械的特性>
成形加工処理が施される前記素材の機械的特性は、20℃で測定したときの、引張強さが465MPa以下であり、かつ耐力が295MPa以下であることが、十分な成型加工性や曲げ加工性を得る上で必要である。
尚、上述したところは、この発明の実施形態の例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
次に、本発明の製造方法に従って種々のアルミニウム合金部材(実施例)を試作し、機械的特性を評価したので、以下で説明する。
(第1の実施例)
表1に示す組成を有する3種類の合金A(7050)、合金B(7046)および合金Cのアルミニウム合金をDC鋳造により造塊した。得られた鋳塊に、常法に従って均質化処理を行った後、熱間圧延、冷間圧延を行い、合金Aと合金Cの鋳塊から板厚1mm、合金Bの鋳塊から板厚2mmの冷延板を得た。得られた各冷延板(素材)から、圧延方向に対し90°をなす方向に沿って長さ:200mm、評価部の幅:25mmのサイズの試験片に切り出し、470℃の塩浴炉に5分間浸漬して溶体化処理を行った後に、強制空冷もしくは水冷による焼入れ処理を行った。その後、表2に示す温度と時間の組み合わせで、自然時効を抑制するための処理を行ったのち、成形加工処理(曲げ加工)を行い、アルミニウム合金部材を作製した。表2に、溶体化処理条件、焼入れ処理における冷却速度、自然時効を抑制するための処理条件、成形加工処理(曲げ加工)が施される際の、素材の温度、(素材の)引張強さおよび(素材の)耐力を示す。
成形加工処理は、素材に曲げ試験による曲げ加工を行ったものである。曲げ試験は、曲げ角度が90°のVブロック冶具を用い、曲率半径Rが0.5mmである雄型の先端を用いて実施し、曲げ加工性を評価した。曲げ加工性は、曲げ部の外観を目視により、評点1:割れなし、評点2:微小割れ(割れが試験片の25mm幅全長に割れがつながっていないもの)、評点3:微小割れ(試験片の25mm幅全長にわたって割れがつながっているが、割れ部の口開き量が板厚の1/2未満である割れ)、そして評点4:大割れ(割れ部の口開き量が板厚の1/2以上の割れ)の4段階で評価した。本実施例では、雄型の先端がR=0.5mmでの評価結果において、評点が1、2または3の場合を合格レベルにあるとして評価した。
Figure 0007249321000001
Figure 0007249321000002
表2に示す結果から、サンプルNo.1-1~1-21のうち、実施例であるサンプルNo.1-1~1-6、1-10~1-14および1-16~1-20は、いずれも溶体化処理条件、焼入れ処理条件、成形加工処理条件、および焼入れ処理後、成形加工処理前に素材が位置する雰囲気条件のいずれもが、本発明の適正範囲内であるため、引張強さが465MPa以下、耐力が295MPa以下であり、曲げ加工性が1または2または3の評点で合格レベルであった。一方、比較例であるサンプルNo.1-14~1-16、1-20および1-21は、いずれも焼入れ処理後、成形加工処理前に素材が位置する雰囲気条件が、本発明の適正範囲外であるため、自然時効を抑制しきれず、引張強さが465MPa超え、耐力が295MPa超えと高くなるか、または、曲げ加工性が4の評点で不合格レベルであった。
(第2の実施例)
表1に示す組成を有する合金B(7046合金)のアルミニウム合金をDC鋳造により造塊した。得られた鋳塊に、常法に従って均質化処理を行った後、熱間圧延、冷間圧延を行い、板厚2mmの冷延板を得た。得られた各冷延板(素材)から、120mm角のサイズの試験片に切り出し、470℃の塩浴炉に5分間浸漬して溶体化処理を行った後に、強制空冷による焼入れ処理を行った。次いで、試験片を25℃の室温で2時間保持し、表3に示す表面潤滑条件になるよう表面潤滑処理を行った後に、エリクセン試験機により、直径60mmの球頭ポンチで張出試験を行った。表3に、溶体化処理条件、焼入れ処理における冷却速度、自然時効を抑制するための処理条件、成形加工処理前に素材が位置する雰囲気条件、成形加工処理(曲げ加工)が施される際の、素材およびポンチの温度ならびに表面潤滑条件を示す。
成形加工処理は、エリクセン試験機により、素材を直径60mmの球頭ポンチで加圧して張出成形加工を行ったものである。成形性は、張出成形加工によって測定した張出高さの数値から評価した。その評価結果を表3に示す。なお、成形性は、張出高さの数値が大きいほど優れていることを示す。また、表3のデータを用い、表面潤滑条件を横軸として張出高さをプロットしたものを図4として示し、さらに、成形加工処理が施される素材およびポンチの温度を横軸として張出高さをプロットしたものを図5として示す。
Figure 0007249321000003
表3の結果から、実施例であるサンプルNo.2-1~2-9で比較した場合、成形加工処理が施される際の、素材およびポンチの温度がともに室温(25℃)であるサンプルNo.2-6を標準サンプルとするとき、表面に潤滑剤(R303P)を塗布したサンプルNo.2-7は、標準サンプルに比べて成形性が向上している。また、素材温度を、それぞれ-20℃、-75℃および-190℃に下げたサンプルNo.2-5、2-4および2-3は、サンプルNo.2-7よりも成形性が向上している。加えて、ポンチ温度も下げたサンプルNo.2-2は、サンプルNo.2-3よりもさらに成形性が向上している。加えてまた、サンプルNo.2-1は、素材の表面に潤滑剤を塗布せず、素材およびポンチの温度を低くしただけであるが、標準サンプルであるサンプルNo.2-6や、表面に潤滑剤(R303P)を塗布したサンプルNo.2-7よりも成形性が優れていた。さらに、サンプルNo.2-8は、素材の表面にワックスを塗布したものであり、また、サンプルNo.2-9は、素材の表面にワックス付きのビニールで被覆したものであって、いずれも張出高さが高く、成形性に優れているが、ワックスを塗布する場合には、成形後の脱脂が不十分となる恐れがあり、また、ビニールで被覆する場合には、ビニールのフィルムを張る工程と、成形加工後に剥がす工程が必要となるため、あまり実用的ではない。
この点で、素材やポンチの温度のうち、少なくとも素材温度を0℃以下に下げるとともに、一般的な潤滑剤を表面に塗布する処理をしたサンプルNo.2-2は、表面にワックス塗布やビニール被覆をしたサンプルNo.2-8およびNo.2-9と同等レベル以上の成形性が得られており、本発明の製造方法は、成形性の向上に非常に有効なプロセスと言え、素材だけでなく、成形装置側も冷却することにより、成形性が格段に向上することが確認された。
以上説明したように、本発明に係るアルミニウム合金部材の製造方法は、Al-Zn-Mg-Cu系合金を基本とし、焼入れ後に低温で保持することで室温時効を抑制することで、高強度合金を比較的簡便な方法で、強度と成形性を両立させたアルミニウム合金部材の製造方法である。本発明は、自動車用リインフォース等の自動車用途の他、船舶、航空機用途、電子・電気機器等の筐体についても利用可能である。

Claims (6)

  1. Al-Cu(-Mg)系、Al-Mg-Si系またはAl-Zn-Mg(-Cu)系の熱処理型アルミニウム合金からなる素材に、440~580℃の溶体化処理を施した後に、前記溶体化処理の温度から少なくとも100℃までの温度範囲を10℃/s以上の冷却速度で冷却する焼入れ処理を施し、次いで、前記素材を-196℃以上℃以下の保持温度で保持することで自然時効を抑制し、その後、成形加工処理を施す製造方法であって、
    前記保持温度での保持期間が、下記式(1)に代入して計算されるCu添加量で補正した20℃での換算時間t 20℃ にして、50時間以内であり、
    前記成形加工処理を施す前の前記素材の試験片に対して20℃で引張試験を行った際の、引張強さが465MPa以下、耐力が295MPa以下であることを特徴とするアルミニウム合金部材の製造方法。

    20℃ =1.4÷exp(0.7/[Cu])×∫D 0 ×exp{-(Q/2)/[R(T+273)]}dt・・(1)
    但し、式中、[Cu]はCu添加量、D はAlの振動数因子、QはAlの拡散の活性化エネルギー、Tは素材の温度(℃)、そして、Rは気体定数である。
  2. 前記焼入れ処理の終了時点から成形加工処理を開始するまでの前記保持温度での保持期間中に、0℃以下で保管することにより、自然時効を抑制することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
  3. 前記焼入れ処理における前記冷却速度が、10℃/s以上150℃/s未満であるとき、前記20℃での換算時間 20℃ が8時間以内であることを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
  4. 前記焼入れ処理における前記冷却速度が、150℃/s以上であるとき、前記20℃での換算時間 20℃ が30時間以内であることを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
  5. 前記素材は、質量%で、6~9%のZn、1~3%のMgおよび0.1~2.5%のCuを含有し、さらに0.05~0.2%のZr、0.1~0.4%のMnおよび0.05~0.2%のCrの群から選択される少なくとも1種を含有するとともに、SiおよびFeをともに0.2%以下に抑制し、残部がアルミニウムおよび不可避的不純物からなる請求項1~のいずれか1項に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
  6. 前記焼入れ処理後の前記素材に、潤滑剤を塗布する表面潤滑処理をさらに施し、
    前記成形加工処理は、前記素材を0℃以下の温度にし、前記表面潤滑処理にて前記素材表面に塗布した前記潤滑剤の粘度を高めた状態で行うことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のアルミニウム合金部材の製造方法。
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