JP2002371333A - 成形性、塗装焼付け硬化性および耐食性に優れるアルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

成形性、塗装焼付け硬化性および耐食性に優れるアルミニウム合金板およびその製造方法

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JP2002371333A JP2002042897A JP2002042897A JP2002371333A JP 2002371333 A JP2002371333 A JP 2002371333A JP 2002042897 A JP2002042897 A JP 2002042897A JP 2002042897 A JP2002042897 A JP 2002042897A JP 2002371333 A JP2002371333 A JP 2002371333A
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雄一 佐藤
Yoichiro Mori
陽一郎 森
Makoto Saga
誠 佐賀
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 成形性、塗装焼付け硬化性および耐食性に優
れるアルミニウム合金板およびその製造方法を提供す
る。 【解決手段】 mass%で、Mg:0.2〜1.6%
未満、Si:0.4〜1.8%、Cu:0.1%超1.
5%以下、Mn:0.03%超1.5%以下、Zn:
0.05〜6%を含有し、好ましくはmass%で、C
r:0.02〜0.5%、Fe:0.02〜0.5%、
Zr:0.02〜0.5%、V:0.02〜0.5%、
Ti:0.003〜0.2%、B:0.003〜0.2
%の1種または2種以上を、さらに含有し、残部がAl
および不可避的不純物からなることを特徴とする、成形
性、塗装焼付け硬化性および耐食性に優れるアルミニウ
ム合金板。厚さ0.5〜5μmのアルカリ可溶型潤滑樹
脂皮膜を、表面に有することが好ましい。また、鋳造
後、均質化処理として500〜600℃の温度で、1時
間以上の保持を行うことを特徴とするその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、成形性や耐食性に
極めて優れ、塗装焼付け時に析出硬化して降伏強度が上
昇する、すなわち、優れた塗装焼付け硬化性(以下BH
性)を有する、自動車用材料等に好適な、成形性、塗装
焼付け硬化性および耐食性に優れるアルミニウム合金板
およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車の燃費向上を目的とした車
体の軽量化が検討されており、自動車用材料へのアルミ
ニウム合金板の適用が進められている。この用途には優
れた強度および成形性が要求されるため、Mgの固溶強
化により強度および成形性を向上させた非熱処理型のA
l−Mg系合金と、塗装焼き付け時の析出硬化により高
強度を得る熱処理型のAl−Mg−Si系合金が開発さ
れている。
【0003】このうち、Al−Mg系合金は成形性が優
れているため、自動車用材料に多用されているが、製造
コストが高く、また、成形の際にストレッチャー−スト
レイン模様が現れて表面品位を損なうという問題点があ
る。一方、Al−Mg−Si系合金は、Al−Mg系合
金よりも成形性に劣るという問題点があるが、製造性に
優れるため製造コストが安く、またストレッチャー−ス
トレイン模様が出現し難く、さらに、BH性に優れるた
め、自動車ボディ等に適用し得る合金が開発されてい
る。このようなAl−Mg−Si系合金として、特開平
5−70907公報、特開平5−70908号公報およ
び特開平9−41062号公報に、BH性に優れた成形
加工用アルミニウム合金板およびその製造方法が開示さ
れている。これらは、BH性を向上させるために、Mg
−Si系GPゾーンを優先的に析出させ、Mg−Si系
クラスターの析出を抑制したものである。
【0004】
【発明が解決しようとしている課題】しかしながら、こ
のようなBH性を向上させた合金は、成形性が低下し、
BH性と成形性の両立には限界があった。また、成形性
を向上させるためにCuを添加した合金は塗装下の糸状
腐食(以下糸錆)や応力腐食割れが発生するなど、耐食
性の劣化が問題になっている。本発明は、このような課
題を克服し、自動車用材料等に好適な、成形性、塗装焼
付け硬化性および耐食性に優れるアルミニウム合金板お
よびその製造方法を提供することを目的としたものであ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、Al−Mg−
Si合金に、適量のCu、MnおよびZnを添加するこ
とによって成形性、BH性および耐食性の向上を図った
アルミニウム合金を提供する。また、これらの合金を製
造する方法としては、Mnを十分に固溶させることを目
的とした適正な条件での均質化処理である。さらに合金
の絞り性および型かじり性を向上させるために、表面に
潤滑皮膜を塗布するもので、その要旨とするところは以
下の通りである。
【0006】(1)mass%で、Mg:0.2〜1.
6%未満、Si:0.4〜1.8%、Cu:0.1%超
1.5%以下、Mn:0.03%超1.5%以下、Z
n:0.05〜6%を含有し、残部がAlおよび不可避
的不純物からなることを特徴とする、成形性、塗装焼付
け硬化性および耐食性に優れるアルミニウム合金板。 (2)mass%で、Cr:0.02〜0.5%、F
e:0.02〜0.5%、Zr:0.02〜0.5%、
V:0.02〜0.5%、Ti:0.003〜0.2
%、B:0.003〜0.2%の1種または2種以上
を、さらに含有することを特徴とする前記(1)に記載
の成形性、塗装焼付け硬化性および耐食性に優れるアル
ミニウム合金板。
【0007】(3)粒状潤滑機能付与剤:2〜15ma
ss%を含有する厚さ0.5〜5μmのアルカリ可溶型
潤滑樹脂皮膜を、表面に有することを特徴とする前記
(1)または(2)に記載の成形性、塗装焼付け硬化性
および耐食性に優れるアルミニウム合金板。 (4)前記アルカリ可溶型潤滑樹脂皮膜が、シリカ粒
子:1〜30mass%を、さらに含有することを特徴
とする前記(3)に記載の成形性、塗装焼付け硬化性お
よび耐食性に優れるアルミニウム合金板。
【0008】(5)前記粒状潤滑機能付与剤が、ポリオ
レフィン系ワックス、フッ素系ワックス、パラフィン系
ワックス、ステアリン酸系ワックスのうちの1種または
2種以上からなる前記(3)または(4)に記載の成形
性、塗装焼付け硬化性および耐食性に優れるアルミニウ
ム合金板。 (6)前記(1)乃至(5)のいずれかに記載のアルミ
ニウム合金板の製造方法において、鋳造後、均質化処理
として500〜600℃の温度で、1時間以上の保持を
行うことを特徴とする、成形性、塗装焼付け硬化性およ
び耐食性に優れるアルミニウム合金板の製造方法。
【0009】(7)冷間圧延後、溶体化処理として、5
00〜580℃の温度範囲で300秒以下保持し、5℃
/s以上の冷却速度で冷却することを特徴とする、前記
(6)に記載の塗装焼付け硬化性およびプレス成形性に
優れるアルミニウム合金板の製造方法。 (8)溶体化処理後、40〜100℃に冷却して巻取
り、0.1〜10℃/hの冷却速度で冷却することを特
徴とする、前記(7)に記載の塗装焼付け硬化性および
プレス成形性に優れるアルミニウム合金板の製造方法。
【0010】(9)溶体化処理後、40〜100℃に冷
却して巻取り、40〜100℃の温度で、0.5〜70
時間保持することを特徴とする、前記(7)に記載の塗
装焼付け硬化性およびプレス成形性に優れるアルミニウ
ム合金板の製造方法。 (10)溶体化処理後、40〜100℃に冷却して巻取
り、0.1〜10℃/hの冷却速度で冷却し、さらに1
30〜280℃に加熱して0〜30分保持することを特
徴とする、前記(7)に記載の塗装焼付け硬化性および
プレス成形性に優れるアルミニウム合金板の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明者は、Al−Mg−Si系合金に適正量の
Cu、MnおよびZnを固溶させることにより、成形
性、BH性の向上と耐食性の改善を図った。さらに、詳
細な検討によって、溶解、鋳造後に適正な均質化処理を
施すことにより特性が向上することを見出した。
【0012】まず、好適な成分組成範囲の限定理由につ
いて説明する。なお、%はmass%を意味する。 Mg:Mgは本発明の基本となる合金元素であり、塗装
焼付け時にMg−Si系GPゾーンおよびMg−Zn系
η′相を生じて高BH性の発現に寄与し、またMg−Z
n系GPゾーンを析出してプレス成形性を向上させるも
のである。この効果は、Mg量が0.2%未満では不十
分であり、一方1.6%以上のMgを添加すると粗大な
Mg2Si析出物を生じ、成形性および曲げ性を劣化さ
せ、さらには溶質量の減少によりBH性が低下する。こ
のことから、Mg量は0.2〜1.6%未満の範囲とし
た。
【0013】Si:Siも本発明の基本となる合金元素
であり、塗装焼付け時にMg−Si系GPゾーンを生じ
て高BH性の発現に寄与するものであるが、Si量が
0.4%未満ではこの効果は十分ではない。一方、Si
量が1.8%を超えると粗大なMg2Si析出物を生
じ、成形性、曲げ性およびBH性を損なう。従ってSi
量は、0.4〜1.8%の範囲とした。
【0014】Cu:Cuも本発明の基本となる、成形性
を向上させる元素であり、Mnと同時に添加することに
よりその効果は極めて大きくなる。しかしながら、0.
1%以下では効果が小さいため、0.1%超とする。一
方、1.5%を超えると粗大なCu系析出物を生じ、成
形性および曲げ性を低下させることから、上限を1.5
%とした。 Mn:Mnも本発明の基本となる合金元素であり、成形
性およびBH性を同時に向上させる。この効果は、Mn
量が0.03%以下では不十分であり、1.5%を超え
て添加すると多量の金属間化合物を生じ、成形性、曲げ
性およびBH性を損なう。従って、Mn量は0.03%
超1.5%以下の範囲とした。
【0015】Zn:Znも本発明の基本となる合金元素
であり、塗装焼付け時にMg−Zn系η′相を生じて高
BH性を発現し、また、Mg−Zn系GPゾーンを析出
してBH性およびプレス成形性を向上させるものであ
る。さらには、Cu添加による耐食性の低下を抑制する
重要な元素である。 この効果はZn量が0.05%未
満では不十分であり、さらに優れた特性を得るには、1
%を超える添加が好ましい。一方、6%以上添加すると
耐力が上昇して成形性および曲げ性を損なう。さらに優
れた特性を得るための好ましい範囲は4.5%以下であ
る。従って、Zn量は0.05〜6%、好ましくは1%
超4.5%以下の範囲とした。
【0016】さらに、必要に応じて、Cr、Fe、Z
r、V、Ti、Bの1種類以上を含有させてもよい。 Cr:Crは強度向上と結晶粒の微細化に効果のある元
素であるが、0.02%未満では効果が十分に得られな
い。一方、0.5%を超えると粗大な析出物を生じて成
形性を低下させる。したがって、0.02〜0.5%の
範囲とした。Fe:Feは強度向上と鋳塊組織の微細化
に有効な元素であり、その含有量が 0.02%未満では十分な効果が得られないため、下限
とする。また、0.5%を超えるとAl−Fe系の粗大
な晶出物を生じて成形性を低下させるため、0.02〜
0.5%とした。
【0017】Zr、V:Zr、Vも強度向上と結晶粒の
微細化に有効な元素であり、その含有量が0.02%未
満では十分な効果が得られず、0.5を超えると粗大な
析出物を生じて成形性を低下させるため、それぞれ0.
02〜0.5%の範囲とした。 Ti、B:Ti、Bも強度向上と鋳塊組織の微細化に有
効な元素であり、その含有量が0.003%未満では十
分な効果が得られず、0.2を超えると粗大な析出物を
生じて成形性を低下させるため、それぞれ0.003〜
0.2%の範囲とした。
【0018】次に、本発明のアルミニウム合金板の好適
な製造方法について詳しく説明する。本発明のアルミニ
ウム合金は、鋳造後、均質化処理、熱間圧延、冷間圧
延、溶体化処理、予備時効処理を施す。冷間圧延工程に
おいて中間焼鈍を施しても良い。均質化処理は、本発明
において鋳塊の析出物を再固溶させる重要な役割を持
つ。この均質化処理の温度が500℃よりも低いと析出
物の再固溶が不十分である。さらに、均質化処理温度が
540℃を超えるとMnの固溶が著しく促進され、極め
て効果的である。また、600℃よりも高いと結晶粒の
粗大化や部分的な融解によって成形性が著しく低下す
る。さらに優れた成形性を得るには、均質化処理温度を
580℃以下に制限することが好ましい。従って、均質
化処理の温度範囲は500〜600℃、好ましくは54
0℃超〜580℃の範囲とする。また、この温度範囲で
の保持時間は1時間よりも短いと効果が不十分であり、
Mnの固溶が著しく促進される好ましい時間は、4時間
超である。従って、保持時間は1時間以上、好ましくは
4時間超とする。
【0019】また、溶体化処理は、冷間圧延後の加工組
織を再結晶させ、熱延工程で金属間化合物として析出し
たMg、Si、Cu、MnおよびZnを固溶させるため
の熱処理であり、優れた成形性およびBH性を得るため
に施すことが好ましい。この溶体化処理温度が500℃
よりも低いとMg、Si、Cu、MnおよびZnの固溶
が不十分で成形性およびBH性が低下し、580℃より
も高いと結晶粒径が粗大化して成形性が低下する。従っ
て、溶体化処理の温度範囲は500〜580℃の範囲と
する。この溶体化処理温度に到達後、直ちに冷却する
か、保持しても良いが、保持時間が300秒を超えると
結晶粒径が粗大化して成形性を損なうため、保持時間は
300秒以下とする。また、溶体化処理後の冷却速度が
5℃/secよりも遅いと析出物を生じてBH性、成形
性、曲げ性および耐食性を損なう。従って、溶体化処理
後の冷却速度を5℃/sec以上とする。この冷却速度
は速いほど良いが、実機製造における冷却速度の上限は
約300℃/sである。
【0020】さらに、溶体化処理後の巻取り温度および
巻取り後の冷却速度を制御することによりBH性を向上
させることが可能である。溶体化処理後、室温近傍で放
置するとクラスターの生成量が多くなり、塗装焼き付け
時にGPゾーンの析出を妨げるため、BH性が低下し、
耐力が上昇して曲げ性を損なう。これを防止するには4
0℃以上の温度で巻取り、冷却中にGPゾーンを生成さ
せることが有効である。また、巻取り温度が100℃を
超えると耐力が上昇して曲げ性が低下する。さらに、巻
取り後の冷却中にGPゾーンを生成させる必要があり、
冷却速度が速すぎて10℃/hを超えると、BH性の低
下を抑制する効果が不十分である。逆に冷却速度が遅す
ぎ、0.1℃/h未満になると、耐力上昇が大きく、曲
げ性を阻害する。従って、巻取り温度を40〜100℃
の範囲とし、巻取り後の冷却速度を0.1〜10℃/h
の範囲とする。
【0021】また、上述の条件で巻取った後、冷却速度
を制御して室温まで冷却する代わりに、速やかにGPゾ
ーンを生成する温度範囲で熱処理を施すことによって、
BH性を向上させることが可能である。この熱処理温度
も、40℃未満ではクラスターが多く生成してBH性を
阻害し、耐力が上昇して曲げ性を損なう。一方、熱処理
温度が100℃を超えると耐力が増加して曲げ性が低下
する。また、時間は0.5時間未満ではGPゾーンの生
成が不十分であるため、BH性が低下し、70時間を超
えると耐力が上昇して曲げ性が低下する。従って、熱処
理温度は40〜100℃の範囲とし、熱処理時間は0.
5〜70時間の範囲とする。
【0022】より高いBH性を得るためには、溶体化処
理後に上述の条件で巻取り、冷却あるいは熱処理を行っ
た後、比較的高温かつ短時間の復元処理を行うことが有
効である。すなわち、溶体化処理後にGPゾーンを生成
させてクラスターの生成を抑制し、さらに復元処理によ
ってクラスターを溶解してGPゾーンを生成させること
により、極めて高いBH性が得られる。この際にも、溶
体化処理後の巻取り温度は、40℃未満ではクラスター
が過剰に生成して復元処理によるGPゾーンの生成が不
十分になり、BH性を損なうため下限とする。一方、1
00℃を超えると復元処理によってGPゾーンを過剰に
生成して成形性を損ない、耐力が増加して曲げ性が低下
するため上限とする。また、冷却速度は0.1℃/h未
満では復元処理によってGPゾーンを過剰に生成して成
形性を損ない、耐力が増加して曲げ性が低下するため下
限とし、10℃/hを超えるとGPゾーンの生成が不十
分であり、BH性が低下するため上限とする。なお、溶
体化処理後、冷却して巻取り、速やかに40〜100℃
で0.5〜70時間の熱処理を施しても同等の効果が得
られる。
【0023】その後の復元処理は130℃未満ではクラ
スターが溶解せずGPゾーンの析出が生じるため、耐力
が増加し、成形性および曲げ性を損なう。また、280
℃を超えると耐力が増加し、また、中間相を生じて成形
性および曲げ性が著しく低下する。また、保持時間が3
0分を超えると耐力が増加して成形性および曲げ性を低
下させる。従って、復元処理の温度範囲は130〜28
0℃、保持時間は0〜30分とする。さらに、アルミニ
ウム合金の深絞り性および型かじり性を向上させるに
は、表面に潤滑皮膜を塗布することが有効であるが、自
動車用途等に適用する場合は、成形後のアルカリ脱脂工
程や洗浄工程において潤滑皮膜が溶解、離脱する脱膜型
潤滑皮膜の塗布が望ましい。そこで本発明者は、脱膜型
潤滑皮膜による成形性の向上およびアルカリ脱脂工程や
洗浄工程における潤滑皮膜の溶解、離脱性について詳細
に検討を行った。その結果、粒状の潤滑機能付与剤を含
むアルカリ可溶型潤滑樹脂皮膜を一定膜厚範囲内でアル
ミニウム合金板表面に形成させることにより、自動車用
途等に適用できる性能を得ることに成功した。
【0024】さらに、このようなアルミニウム合金板の
深絞り成形性および型かじり性を高めるために、表面に
塗布するアルカリ可溶型潤滑被覆について以下に説明す
る。これは、膜厚を一定の条件とした粒状潤滑機能付与
剤を含有するアルカリ可溶型潤滑樹脂皮膜である。アル
カリ液に溶解・脱膜するアルカリ溶解型潤滑皮膜には、
ポリエチレングリコール系、ポリプロピレングリコール
系、ポリビニルアルコール系、アクリル系、ポリエステ
ル系などがあるが、アルカリ溶解可能とするために、樹
脂水分散体または水溶性樹脂でなければならない。
【0025】ポリエチレングリコール系では、皮膜形成
性の観点から、平均分子量3000以上のポリエチレン
グリコールおよび変性ポリエチレングリコールが挙げら
れる。変性ポリエチレングリコールとしては、イソシア
ネート変性ポリエチレングリコール、エポキシ変性ポリ
エチレングリコール等が挙げられる。ポリプロピレング
リコール系では、皮膜形成性の観点から、平均分子量3
000以上のポリプロピレングリコールおよび変性ポリ
プロピレングリコールが挙げられる。変性ポリプロピレ
ングリコールとしては、イソシアネート変性ポリプロピ
レングリコール、エポキシ変性ポリプロピレングリコー
ル等が挙げられる。
【0026】ポリビニルアルコール系では、完全ケン化
型ポリビニルアルコール、部分ケン化型ポリビニルアル
コール、変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。変
性ポリビニルアルコールとしては、カルボキシル基変性
ポリビニルアルコール、スルホン酸ポリビニルアルコー
ル、アセトアセチル基ポリビニルアルコール等が挙げら
れる。アクリル系としては、アクリル酸、メタアクリル
酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレ
イン酸、イタコン酸の共重合体が挙げられる。アクリル
酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エ
チル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nブチル、
アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸2ヒドロキシ
エチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸
メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピ
ル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソブチル、
メタクリル酸nヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタ
クリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシ
プロピルなどがある。共重合体としては、スチレン、ア
クリルアミド、酢酸ビニル、アクリルニトリル、などが
挙げられる。
【0027】ポリエステル系については、ポリエステル
を構成する多価アルコールとしては、エチレングリコー
ル、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコー
ル、1,6ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、
ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ト
リエチレングルコールなどが挙げられ、多塩基酸として
は、無水フタル酸、イソフタル酸テレフタル酸、無水コ
ハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマ
ル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0028】本発明のアルミニウム合金板に被覆される
潤滑樹脂皮膜の厚さは、0.5μm未満であると、プレ
ス加工時の押圧による型かじりや傷の発生を防止でき
ず、かつ摺動が加わるために要求される加工性を得るこ
とができない。この効果は、厚さが5μmまでは顕著で
あるが、これを超えても効果は変わらない。従って、潤
滑樹脂被膜の厚さは0.5〜5μmの範囲とする。ま
た、本発明の潤滑樹脂皮膜は目的に応じて板の両面又は
片面に被覆される。
【0029】粒状潤滑機能付与剤は表面の摩擦係数を低
減することによりさらに潤滑性を付与し,かじり等を防
止してプレス加工性、しごき加工性を向上する作用を有
している。潤滑機能付与剤としては、得られる皮膜に潤
滑性能を付与するものであればよいが、ポレオレフィン
系(ポリエチレン,ポリプロピレン等)、フッ素系(ポ
リテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエ
チレン、ポリフッ化ビニリデン,ポリフッ化ビニル
等)、パラフィン系、ステアリン酸系ワックスのうちの
1種または2種以上からなるものが好ましい。
【0030】潤滑機能付与剤の添加量は、mass%で
2%未満では要求される潤滑効果が得られず、15%を
越えると皮膜強度が低下したり、潤滑付与剤の剥離が発
生するなどの問題があるため、2〜15%が好ましい。
シリカは皮膜強度、合金板との密着性を向上させる場合
に添加する。シリカ粒子は、水分散性コロイダルシリ
カ、粉砕シリカ、気相法シリカなどいずれのシリカ粒子
であっても良い。皮膜の加工性、耐食性発現を考慮する
と、1次粒子径は2〜30nmで、2次凝集粒子径は1
00nm以下が好ましい。シリカの添加量としてはma
ss%で1〜30%が好ましい。1%未満では、下層と
の密着性向上効果が得られない。30%を越えると皮膜
の伸びが減少するため加工性が低下し型かじりが発生し
やすくなる。
【0031】本発明のアルカリ可溶型潤滑樹脂皮膜中に
は上記以外に、意匠性を付与するための顔料や、導電性
を付与する導電性添加剤、等を目的に応じて、皮膜性能
を低下させない範囲内で添加することができる。また、
本発明において、さらなる耐食性や密着性を得るために
下地にリン酸塩処理やクロメート処理を施してもかまわ
ない。この場合のクロメート処理としては、電解型クロ
メート、反応型クロメートおよび塗布型クロメートのい
ずれの処理をあげることができる。クロメート皮膜は還
元したクロム酸にシリカ、燐酸、親水性樹脂の中から少
なくとも1種以上を含有したクロメート液を塗布、乾燥
したものが好ましい。
【0032】リン酸塩の付着量としては、リン酸塩とし
て0.5〜3.5g/m2の範囲が好ましい。クロメー
トの付着量としては、金属クロム換算で5〜150mg
/m2の範囲が好ましく、さらに好ましい範囲は10〜
50mg/m2 である。5mg/m2未満では優れた耐
食性効果が得られず、150mg/m2を超えると成形
時にクロメート皮膜の凝集破壊が起こるなど、加工性を
劣化させる。さらに、目的に応じ下地に酸洗処理、アル
カリ処理、電解還元処理、コバルトめっき処理、ニッケ
ルめっき処理、シランカップリング処理無機シリケート
処理を施してもかまわない。
【0033】潤滑樹脂皮膜の形成方法としては、樹脂成
分および粒状潤滑機能付与剤を含む水溶液また水分散体
をロールコーター塗装法、スプレー法など従来公知の方
法で塗布・焼付乾燥して形成することができる。本発明
の潤滑被覆アルミニウム合金板は潤滑皮膜のさらに上層
に潤滑油または潤滑防錆油を塗布することができる。た
だし、塗布する潤滑油または潤滑防錆油は、本発明の潤
滑皮膜を膨潤または溶解させないものが望ましい。この
ようにして得られたアルミニウム合金板は、成形性、B
H性および耐食性に優れ、自動車用材料等に好適であ
る。
【0034】
【実施例】以下、本発明の実施の形態を、実施例を用い
て説明する。 (実施例1)表1に示す成分のアルミニウム合金を溶
解、鋳造後、560℃で12時間保持する均質化処理を
施した後、熱間圧延および冷間圧延により、厚さ1mm
の冷延板とした。なお、表1の数字は、各成分のmas
s%を示す。
【0035】
【表1】
【0036】これらの冷延板に530℃で10秒保持す
る溶体化処理を施した後、70℃まで20℃/sの冷却
速度で冷却して巻取り、さらに冷却速度1℃/hで室温
近傍まで冷却した。その後、7日間室温に放置して、引
張試験、成形試験および曲げ試験をJISに準拠して実
施した。成形性はエリクセン値で評価し、9.5以上を
良好とした。曲げ性は、0.5tの内側半径で180°
曲げを行い、その外側部分の割れを観察して、肉眼で割
れが見られるものを×とし、肉眼で割れが見られないも
のについてはカラーチェックによる割れの検出を行い、
ルーペを用いて割れが見られるものを△、見られないも
のを○として評価した。BH性は、2%の引張歪を与え
た後に170℃で20分の熱処理を行った後の耐力とし
て評価し、190MPa以上を良好とした。
【0037】耐食性は、2%の引張歪を与えた後170
℃で20分の熱処理を施した合金板を用い、耐糸錆性お
よび耐応力腐食割れ性を評価した。耐糸錆性は、脱脂、
水洗、燐酸亜鉛処理、水洗、塗装を行った試料表面にナ
イフで人工疵を入れた後、JIS Z 2371に準じ
て24時間の塩水噴霧試験を行った後、温度45℃、湿
度85%で1000時間暴露し、最大糸錆長さを測定
し、最大糸錆長さが1mm未満を○、1mm以上2mm
未満を△、2mm以上を×として評価した。
【0038】耐応力腐食割れ性は、JIS H 871
1に準じて、JIS H 8711の1号試験片および
1号試験片用冶具を用いて耐力の75%を負荷し、3.
5%NaCl液に10分浸漬、50分乾燥を繰り返し1
20日間実施し、5個の試料すべてに割れが発生しなか
ったものを○、1個以上4個以下に割れが発生したもの
を△、5個全てに割れが発生したものを×として評価し
た。
【0039】表2に焼付け硬化の前後の材料特性を示
す。表2より、本発明のアルミニウム合金板No.1〜
15は、塗装焼付け後の耐力、成形性、曲げ性、耐糸錆
性および耐応力腐食割れ性が良好である。一方、本発明
以外の成分を有する比較例の合金No.16はMg量
が、No.18はSi量が、No.22はMn量が本発
明の範囲よりも少なく、成形性およびBH性が低い。
【0040】
【表2】
【0041】また、No.17はMg量が本発明の範囲
よりも多く、粗大なMg2Siが析出しており、No.
19はSi量が、No.23はMn量が多く、それぞ
れ、粗大なMg2SiおよびAl−Fe−Si−Mn系
金属間化合物が析出している。そのため、これらの合金
は、成形性および曲げ性が不十分であり、また、溶質の
固溶量が減少しているためBH性が低下している。
【0042】また、No.20はCu量が本発明の範囲
よりも少なく、成形性、BH性が低く、耐糸錆性が低下
している。 No.21はCu量が本発明の範囲よりも
多いため、結晶粒界にCu系の析出物を生じて成形性、
曲げ性およびBH性が低く、耐食性が低下している。N
o.24はZn量が本発明の範囲よりも少なく、耐食性
が低下しており、No.25はZn量が本発明の範囲よ
りも多いため、耐力が上昇して成形性および曲げ性が低
下し、耐糸錆性が低下している。No.26〜30の合
金はCr、Fe、Zr、V、Ti、Bの添加量が多いた
め、粗大な析出物を生じて成形性および曲げ性が低下し
ている。
【0043】(実施例2)表1の発明合金A1、A6、
A9およびA10を溶解、鋳造後、表3に示す条件で均
質化処理を施した。さらに、熱間圧延および冷間圧延に
より、厚さ1mmの冷延板とした。これらの冷延板に5
40℃で5秒保持する溶体化処理を施した後、70℃ま
で20℃/sの冷却速度で冷却して巻取り、さらに冷却
速度1℃/hで室温近傍まで冷却した。その後、これら
のアルミニウム合金を7日間室温に放置し、実施例1と
同様の試験を行った結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】製造No.31〜46の製造条件は本発明
の範囲内であり、塗装焼付け後の耐力、成形性、曲げ
性、耐糸錆性および耐応力腐食割れ性が良好である。一
方、製造No.47〜50は均質化処理温度が低すぎる
ため、析出物の固溶が不十分であり、成形性、曲げ性お
よびBH性が不十分である。また、No.51〜54は
均質化処理温度が高すぎるため、結晶粒径が粗大化して
成形性および曲げ性が低下している。 No.55〜5
8は均質化処理温度での保持時間が短かすぎるため、析
出物の固溶が不十分であり、成形性、曲げ性およびBH
性が不十分である。
【0046】(実施例3)表1の発明合金A10に55
0℃で1秒保持する溶体化処理を施し、20℃/sで冷
却して65℃で巻取り、冷却速度1℃/hで室温近傍ま
で冷却した。このアルミニウム合金の表面には、基本的
にクロメート未処理としたが、一部水準について、クロ
ム還元率(Cr(VI)/全Cr)=0.4のクロム酸
にコロイダルシリカを加えた塗布型クロメート液をロー
ルコータにてクロム付着量が金属クロム換算で20mg
/m2となるよう塗布し、加熱乾燥させクロメート皮膜
を形成させた。
【0047】次に、ポリエチレングリコール、ポリプロ
ピレングリコール、アクリル樹脂の水溶液または水分散
体に、ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチ
レンワックス、合成パラフィンワックス、ステアリン酸
カルシウムワックス、およびコロイダルシリカを表4に
示す組成で混合し、バーコーター塗装して180℃の加
熱炉を用いて合金板到達温度80℃で焼付乾燥し潤滑樹
脂皮膜を形成させた。
【0048】なお、加工性評価の比較材として、上記の
アルミニウム合金板にジョンソンワックス#122を塗
布したものを用いた。これらのサンプルに対して深絞り
性、型かじり性、加工後の樹脂カス発生状況および脱脂
性の評価を行った。深絞り性は、円筒深絞り試験をポン
チ直径50mm、ポンチ肩半径5mmの条件で実施し、
限界絞り比(LDR)で評価した。
【0049】型かじり性および加工後の樹脂カス発生状
況は、円筒ポンチの油圧成形試験機により、ポンチ直径
40mm、ポンチ肩半径4mm、ダイス直径43mm、
ダイス肩半径4mm、シワ押さえ力1tonで成形試験
を行って評価した。型かじり性は側壁の外観を目視し、
次の指標に依って評価した。 ◎:成形可能で、合金板表面の欠陥無し ○:成形可能で、合金板表面の欠陥無し,摺動面わずか
に変色 △:成形可能で、合金板表面にわずかにかじり疵発生 ×:成形可能で、合金板表面に線状かじり疵多数発生
【0050】また、加工後の樹脂カス発生状況を次の指
標で評価した。 ◎:カス発生無し ○:極わずかに樹脂カス発生 △:少し樹脂カス発生 ×:樹脂カス多数発生 脱脂性は、FC−4358脱脂液(日本パーカライジン
グ製、pH=10.5に調整、温度70℃)を試験片に
8秒間スプレーした後水洗し、乾燥後の皮膜残存率を赤
外分光分析にて測定し、次の指標で評価した。 ◎:皮膜残存無し ○:皮膜残存5%以下 △:皮膜残存5%超10%以下 ×:皮膜残存10%超
【0051】試験結果を表4に示す。前記(3)乃至
(5)のいずれかに記載のアルカリ可溶型潤滑被覆アル
ミニウム合金板であるNo.59〜79はいずれも、深
絞り性および型かじり性に優れ、加工後に樹脂カスが発
生し難く、脱脂性に優れている。一方、No.80は膜
厚が薄いため、型かじり性が不十分である。No.81
は粒状潤滑機能付与剤の含有量が少ないため、型かじり
性が不十分である。また、No.82は粒状潤滑機能付
与剤の含有量が多いため、加工後に樹脂カスが発生して
いる。
【0052】
【表4】
【0053】(実施例4)表1の発明合金A1、A6、
A9およびA10を溶解、鋳造後、545℃で20時間
保持する均質化処理を施した後、熱間圧延および冷間圧
延により、厚さ1mmの冷延板とした。これらの冷延板
に表5に示す条件で溶体化処理を施して冷却し、75℃
で巻取り、さらに冷却速度2℃/hで室温近傍まで冷却
した。その後、これらのアルミニウム合金を7日間室温
に放置し、実施例1と同様の試験を行った結果を表5に
示す。製造No.83〜98は、前記(7)に記載の製
造条件を満たしており、BH性、成形性、曲げ性および
耐食性が良好である。一方、No.99〜102の場合
は溶体化処理温度が低いため、Mg、Si、Cu、Mn
およびZnの固溶が不十分であり、BH性および成形性
が不十分である。また、No.103〜106の場合は
溶体化処理温度が高く、No.107〜110の場合は
溶体化処理温度での保持時間が長いため、結晶粒径が粗
大化して成形性および曲げ性が低下している。また、N
o.111〜114の場合は溶体化処理後の冷却測度が
遅いため、析出物を生じて、BH性、成形性、曲げ性お
よび耐食性が低下している。
【0054】
【表5】
【0055】(実施例5)表1の発明合金A1、A6、
A9およびA10を溶解、鋳造後、550℃で15時間
保持する均質化処理を施した後、熱間圧延および冷間圧
延により、厚さ1mmの冷延板とした。これらの冷延板
に530℃で1秒保持する溶体化処理を施した後、25
℃/sで冷却して表6に示す条件で巻取りって冷却し
た。その後、これらのアルミニウム合金を7日間室温に
放置し、実施例1と同様の試験を行った結果を表6に示
す。
【0056】製造No.115〜130は、前記(8)
に記載の製造条件を満たしており、BH性、成形性、曲
げ性および耐食性が良好である。一方、No.131〜
134の場合は巻取り温度が低いため、BH性が低下
し、耐力が上昇して曲げ性が低下した。また、No.1
35〜138の場合は巻取り温度が高いため、上昇して
曲げ性が低下した。また、No.139〜142の場合
は巻取り後の冷却速度が速すぎるために、BH性が低下
している。また、No.143〜146の場合は巻取り
後の冷却速度が遅すぎるため、耐力が上昇して曲げ性が
低下している。
【0057】
【表6】
【0058】(実施例6)実施例5と同様に厚さ1mm
の冷延板を製造して溶体化処理を施し、表7に示す条件
で巻取り、速やかに熱処理を施した。その後、これらの
アルミニウム合金を7日間室温に放置し、実施例1と同
様の試験を行った結果を表7に示す。製造No.147
〜162は、前記(9)に記載の製造条件を満たしてお
り、BH性、成形性、曲げ性および耐食性が良好であ
る。一方、No.163〜166の場合は熱処理温度が
低いため、BH性が低下し、耐力が上昇して曲げ性が低
下している。また、No.167〜170の場合は熱処
理温度が高いため、耐力が上昇して曲げ性が低下した。
また、No.171〜174の場合は熱処理時間が短い
ために、BH性が低下している。また、No.175〜
178の場合は熱処理時間が長すぎるため、耐力が上昇
し、曲げ性が低下している。
【0059】
【表7】
【0060】(実施例7)実施例5と同様に厚さ1mm
の冷延板を製造して溶体化処理を施し、表8に示す条件
で巻取った後、室温まで冷却して復元処理を施した。そ
の後、これらのアルミニウム合金を7日間室温に放置
し、実施例1と同様の試験を行った結果を表9に示す。
製造No.179〜206は前記(10)に記載の製造
条件を満たしており、BH性、成形性、曲げ性および耐
食性が良好である。一方、No.207〜210の場合
は巻取り温度が低いため、BH性が低下した。また、N
o.211〜214の場合は巻取り温度が高いため、成
形性および曲げ性が低下した。また、No.215〜2
18の場合は巻取り後の冷却速度が速すぎるために、B
H性が低下している。また、No.219〜222の場
合は巻取り後の冷却速度が遅すぎるため、成形性および
曲げ性が低下している。
【0061】さらに、No.223〜226の場合は復
元処理温度が低いため、耐力が上昇して曲げ性が低下し
た。また、No.227〜230の場合は熱処理温度が
高いため析出物を生じて、成形性、曲げ性および耐食性
が低下した。また、No.231〜234の場合は復元
処理時間が長すぎるために、耐力が上昇し成形性および
曲げ性が低下している。
【0062】
【表8】
【0063】
【表9】
【0064】
【発明の効果】本発明によれば、成形、曲げ性および塗
装焼付け硬化性に優れた自動車用材料などに好適なアル
ミニウム合金板およびその製造方法を提供できる。本発
明の適用により自動車重量の著しい軽量化が可能であ
り、温室効果ガス排出量削減への貢献も大きく、産業上
の価値の極めて高い発明であるといえる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/04 C22F 1/04 H C23C 26/00 C23C 26/00 A // C22F 1/00 602 C22F 1/00 602 613 613 623 623 630 630K 681 681 682 682 685 685Z 686 686A 686B 691 691B 691C 692 692A 692B 693 693A 693B (72)発明者 佐賀 誠 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 Fターム(参考) 4D075 BB92Z CA09 CA33 DA06 DB07 DC11 EA06 EA10 EA37 EB13 EB16 EB19 EB20 EB22 EB33 EB35 EB37 EB38 EC03 EC07 EC54 4K044 AA06 AB02 BA06 BA14 BA15 BA17 BA19 BA21 BB01 BB03 BB11 BC01 BC02 BC04 BC05 CA04 CA53 CA62

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 mass%で、 Mg:0.2〜1.6%未満、 Si:0.4〜1.8%、 Cu:0.1%超1.5%以下、 Mn:0.03%超1.5%以下、 Zn:0.05〜6%を含有し、残部がAlおよび不可
    避的不純物からなることを特徴とする、成形性、塗装焼
    付け硬化性および耐食性に優れるアルミニウム合金板。
  2. 【請求項2】 mass%で、 Cr:0.02〜0.5%、 Fe:0.02〜0.5%、 Zr:0.02〜0.5%、 V :0.02〜0.5%、 Ti:0.003〜0.2%、 B :0.003〜0.2%の1種または2種以上を、
    さらに含有することを特徴とする請求項1に記載の成形
    性、塗装焼付け硬化性および耐食性に優れるアルミニウ
    ム合金板。
  3. 【請求項3】 粒状潤滑機能付与剤:2〜15mass
    %を含有する厚さ0.5〜5μmのアルカリ可溶型潤滑
    樹脂皮膜を、表面に有することを特徴とする請求項1ま
    たは2に記載の成形性、塗装焼付け硬化性および耐食性
    に優れるアルミニウム合金板。
  4. 【請求項4】 前記アルカリ可溶型潤滑樹脂皮膜が、シ
    リカ粒子:1〜30mass%を、さらに含有すること
    を特徴とする請求項3に記載の成形性、塗装焼付け硬化
    性および耐食性に優れるアルミニウム合金板。
  5. 【請求項5】 前記粒状潤滑機能付与剤が、ポリオレフ
    ィン系ワックス、フッ素系ワックス、パラフィン系ワッ
    クス、ステアリン酸系ワックスのうちの1種または2種
    以上からなる請求項3または4に記載の成形性、塗装焼
    付け硬化性および耐食性に優れるアルミニウム合金板。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の
    アルミニウム合金板の製造方法において、鋳造後、均質
    化処理として500〜600℃の温度で、1時間以上の
    保持を行うことを特徴とする、成形性、塗装焼付け硬化
    性および耐食性に優れるアルミニウム合金板の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 冷間圧延後、溶体化処理として、500
    〜580℃の温度範囲で300秒以下保持し、5℃/s
    以上の冷却速度で冷却することを特徴とする、請求項6
    に記載の塗装焼付け硬化性およびプレス成形性に優れる
    アルミニウム合金板の製造方法。
  8. 【請求項8】 溶体化処理後、40〜100℃に冷却し
    て巻取り、0.1〜10℃/hの冷却速度で冷却するこ
    とを特徴とする、請求項7に記載の塗装焼付け硬化性お
    よびプレス成形性に優れるアルミニウム合金板の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 溶体化処理後、40〜100℃に冷却し
    て巻取り、40〜100℃の温度で、0.5〜70時間
    保持することを特徴とする、請求項7に記載の塗装焼付
    け硬化性およびプレス成形性に優れるアルミニウム合金
    板の製造方法。
  10. 【請求項10】 溶体化処理後、40〜100℃に冷却
    して巻取り、0.1〜10℃/hの冷却速度で冷却し、
    さらに130〜280℃に加熱して0〜30分保持する
    ことを特徴とする、請求項7に記載の塗装焼付け硬化性
    およびプレス成形性に優れるアルミニウム合金板の製造
    方法。
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