JP2001329328A - 塗装焼付け硬化性および加工性に優れるアルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

塗装焼付け硬化性および加工性に優れるアルミニウム合金板およびその製造方法

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JP2001329328A
JP2001329328A JP2000235553A JP2000235553A JP2001329328A JP 2001329328 A JP2001329328 A JP 2001329328A JP 2000235553 A JP2000235553 A JP 2000235553A JP 2000235553 A JP2000235553 A JP 2000235553A JP 2001329328 A JP2001329328 A JP 2001329328A
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雄一 佐藤
Makoto Saga
誠 佐賀
Yoichiro Mori
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塗装焼付け硬化性および加工性に優れるアル
ミニウム合金板およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 昇温速度20℃/minの示差走査熱量
測定において、150〜250℃の範囲がすべて発熱部
で、150〜250℃の合計の発熱量が0.1cal/
g以上であることを特徴とする塗装焼付け硬化性および
加工性に優れるアルミニウム合金板およびその製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗装焼付け時に析
出硬化して降伏強度が著しく上昇する、すなわち、極め
て優れた塗装焼付け硬化性を有するとともに、プレス成
形性および曲げ性などの加工性に優れる、自動車ボディ
シート等、特にアウターパネルに好適なアルミニウム合
金板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車の燃費を向上させるために
車体の軽量化が検討されており、ボディシート材料の鋼
板からアルミニウム合金板への置換が進められつつあ
る。この用途には、優れたプレス成形性および曲げ性な
どの加工性を有する高強度アルミニウム合金が必要であ
り、非熱処理型のAl−Mg系合金と、熱処理型のAl
−Mg−Si系合金が開発されている。このうち、Al
−Mg系合金は高強度であり、かつ成形性に優れている
ため、自動車ボデイパネルに多用されているが、製造コ
ストが高く、また、プレス成形の際にストレッチャー−
ストレイン模様が現れて表面品位を損なうという問題点
がある。
【0003】一方、Al−Mg−Si系合金は、Al−
Mg系合金よりも成形性に劣るという問題点があるが、
製造性に優れ、また、ストレッチャー−ストレイン模様
が出現し難く、さらに、塗装焼付け工程時にGPゾーン
が析出して降伏強度が上昇するという優れた特性を有し
ているため、特にアウターパネルなどの耐デント性が要
求される部材には好適である。このような優れた特性を
有するAl−Mg−Si系合金として、特開平6−24
0424号公報および特開平10−219382号公報
に、成形性および塗装焼付け硬化性に優れたアルミニウ
ム合金板およびその製造方法が開示されているが、塗装
焼付け処理後の降伏強度は約240MPaが上限であっ
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】自動車の軽量化をさら
に進めるためには、アルミニウム合金を高強度化して板
厚を減少させることが有効であるため、BH性の向上は
重要な課題である。また、自動車ボディーパネルに適用
する際にはプレス成形性および曲げ性などの加工性が要
求される。本発明は、塗装焼付によって極めて高い降伏
強度が得られ、プレス成形および曲げなどの加工性にも
優れる自動車用アルミニウム合金板およびその製造方法
を提供することを目的としたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の塗装焼
付け硬化性(以下BH性)、プレス成形性および曲げ性
について詳細な検討を行った。その結果、溶体化処理後
の過飽和固溶体を室温で放置すると、Mg−Siクラス
ター(以下クラスター)が生成してプレス成形性は向上
するがBH性が低下することを見出した。このことか
ら、BH性を向上させるには、クラスターの生成を抑制
することが有効であることがわかった。
【0006】なお、クラスターおよびGPゾーンの析出
および溶解は、通常の熱分析法の一つである示差走査熱
量計(DSC)により解析した。本発明者が用いた方法
は熱流束DSCであり、これは、昇温中に標準試料と測
定試料の温度差から生じる熱流束を測定し、その温度変
化によって析出挙動を解析する方法である。この示差走
査熱量計によって測定された熱流束の温度変化曲線を以
下ではDSC曲線と称する。DSC曲線が基準線に対し
て発熱であれば析出が生じており、吸熱であれば溶解が
生じたことがわかる。また、析出物の種類によって析出
する温度、および溶解する温度が異なるため、DSC曲
線によりクラスターおよびGPゾーンの析出・溶解挙動
を明らかにすることが可能である。
【0007】本発明者は、塗装焼付け温度付近で発熱反
応を示す合金は、塗装焼付け時のGPゾーンの析出が顕
著であるため、極めて優れたBH性を発現すると考え、
クラスターおよびGPゾーンの析出挙動に及ぼす熱処理
の影響を明らかにすべく、検討を行った。その結果、こ
のようなアルミニウム合金は、溶体化処理直後に、比較
的高温で短時間、具体的には140〜280℃で60分
以下保持する熱処理(以下、復元処理)を施すことによ
り得られることを見出した。ここで、保持時間60分以
下には140〜280℃に昇温するだけで保持しない処
理も含まれる。さらに詳細な検討により、140〜20
0℃の範囲では、十分な効果を得るために2分超〜60
分の保持が必要であり、200〜280℃の範囲では2
分を超えると耐力が大きくなり、加工性が著しく低下す
ることを明らかにした。
【0008】また、溶体化処理後に室温近傍の温度で放
置するとクラスターの生成量が多く、復元処理を施して
もBH性が向上しないという問題が明らかになった。こ
れを回避するには、溶体化処理後にGPゾーンが生成す
る温度で巻取って徐冷するか、あるいは熱処理を施すこ
とが必要である。詳細に検討を行った結果、巻取り温度
と冷却速度を適正な範囲に限定すれば熱処理と同等の効
果が得られ、高いBH性を発現させることに成功した。
これにより、巻取り後の熱処理工程が不要になり、製造
コストを削減することが可能になった。
【0009】さらに復元処理については、200〜28
0℃の温度範囲で2分以下保持した後、室温に放置する
と、クラスターの生成量が多くなり、BH性が低下する
ことがわかった。これについても、溶体化処理後と同様
に、GPゾーンが生成する温度で巻取って徐冷すること
によりBH性の低下を抑制することができた。また、1
40〜200℃未満の温度範囲では2分超〜60分の保
持により高いBH性が得られ、室温で放置してもクラス
ターが生成し難く、BH性を確保できることを見出し
た。このようにして、クラスターの生成を抑制してGP
ゾーンを生成させたアルミニウム合金板は、極めて高い
BH性が得られる。また、溶体化処理温度から巻取りま
での冷却速度を制御して、結晶粒界への平衡相および中
間相の析出を抑制すれば、曲げ性も良好である。従っ
て、特にBH性と曲げ性が要求され、比較的プレス成形
しやすい部品であるアウターパネルには最適である。
【0010】また、アルミニウム合金の成形性、特に深
絞り性および型かじり性を向上させるには、表面に潤滑
皮膜を塗布することが有効であるが、自動車用途等に適
用する場合は、プレス成形後のアルカリ脱脂工程や洗浄
工程において潤滑皮膜が溶解、離脱する脱膜型潤滑皮膜
の塗布が望ましい。そこで本発明者は、脱膜型潤滑皮膜
によるプレス成形性の向上およびアルカリ脱脂工程や洗
浄工程における潤滑皮膜の溶解、離脱性について詳細に
検討を行った。その結果、粒状の潤滑機能付与剤を含む
アルカリ可溶型潤滑樹脂皮膜を一定膜厚範囲内でアルミ
ニウム合金板表面に形成させることにより、上記目的を
達成できることを見い出した。
【0011】本発明は上記の知見に基づいて得られたも
ので、その要旨とするところは以下の通りである。 (1)昇温速度20℃/minの示差走査熱量測定にお
いて、150〜250℃の範囲がすべて発熱部で、15
0〜250℃の合計の発熱量が0.1cal/g以上で
あることを特徴とする塗装焼付け硬化性および加工性に
優れるアルミニウム合金板。 (2)mass%で、Mg:0.3〜1.5%、Si:
0.4〜1.8%を含有し、残部がAlおよび不可避的
不純物からなることを特徴とする前記(1)に記載の塗
装焼付け硬化性および加工性に優れるアルミニウム合金
板。
【0012】(3)mass%で、Cu:0.1〜1.
5%、Mn:0.03〜0.5%、Zn:0.03〜
1.5%、Cr:0.03〜0.5%、Fe:0.03
〜0.5%、Ti:0.03〜0.5%、V:0.03
〜0.5%、Zr:0.03〜0.5%の1種または2
種以上を、さらに含有することを特徴とする前記(2)
に記載の塗装焼付け硬化性および加工性に優れるアルミ
ニウム合金板。 (4)前記(1)、(2)、(3)のいずれかに記載の
アルミニウム合金板の両面又は片面の表面に、粒状潤滑
機能付与剤を2〜15重量%含有したアルカリ可溶型潤
滑樹脂皮膜が0.5〜5μm形成されたことを特徴とす
る塗装焼付け硬化性および加工性に優れるアルミニウム
合金板。
【0013】(5)前記(1)、(2)、(3)のいず
れかに記載のアルミニウム合金板の両面又は片面の表面
に、粒状潤滑機能付与剤を2〜15重量%、シリカ粒子
を1〜30重量%含有したアルカリ可溶型潤滑樹脂皮膜
が0.5〜5μm形成されたことを特徴とする塗装焼付
け硬化性および加工性に優れるアルミニウム合金板。 (6)粒状潤滑機能付与剤が、ポリオレフィン系ワック
ス、フッ素系ワックス、パラフィン系ワックス、ステア
リン酸系ワックスのうちの1種または2種以上からなる
前記(5)または(6)に記載の塗装焼付け硬化性およ
び加工性に優れるアルミニウム合金板。
【0014】(7)前記(1)、(2)、(3)のいず
れかに記載のアルミニウム合金板を製造する方法におい
て、溶体化処理後、40〜100℃に冷却して巻取り、
0.1〜10℃/hの冷却速度で冷却し、さらに200
〜280℃に加熱して2分以下保持した後、冷却して4
0〜100℃で巻取り、0.1〜10℃/hの冷却速度
で冷却することを特徴とする塗装焼付け硬化性および加
工性に優れるアルミニウム合金板の製造方法。
【0015】(8)前記(1)、(2)、(3)のいず
れかに記載のアルミニウム合金板を製造する方法におい
て、溶体化処理後、40〜100℃に冷却して巻取り、
0.1〜10℃/hの冷却速度で冷却し、さらに140
〜200℃未満に加熱して2分超〜60分保持すること
を特徴とする塗装焼付け硬化性および加工性に優れるア
ルミニウム合金板の製造方法。 (9)前記(7)、(8)のいずれかに記載のアルミニ
ウム合金板の製造方法において、溶体化処理として、4
50〜580℃の温度範囲で5分以下保持し、40〜1
00℃までの冷却速度を5℃/s以上とすることを特徴
とする塗装焼付け硬化性および加工性に優れるアルミニ
ウム合金板の製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。まず、本発明のAl−Mg−Si系アルミニウム
合金は、極めて優れた塗装焼き付け硬化性を発現させる
ために、20℃/minの昇温速度で測定した示差走査
熱量(DSC)測定にて得られるDSC曲線において、
150〜250℃の範囲すべてで発熱を示し、その範囲
での合計の発熱量が0.1cal/g以上であることを
特徴としている。このことにより、一般的な塗装焼付け
条件である170〜180℃程度で20〜60分間の熱
処理によって、GPゾーンが析出して強度が著しく上昇
する。
【0017】発明者らは、理学電機株式会社製示差走査
熱量計DSC−8230DによりこのDSC測定を行っ
た。本機器を用いて、測定した本発明のアルミニウム合
金板の典型的なDSC曲線の一例を図1に示す。BH性
に優れる合金は、図1に示したDSC曲線において15
0〜250℃の温度範囲すべてにおいてベースラインよ
りも上で発熱を示しており、この間の合計の発熱量は
0.1cal/g以上である。なお、この合計の発熱量
のより好ましい範囲は、0.5cal/g以上であり、
最適範囲は1cal/g以上である。
【0018】次に好適な成分組成範囲の限定理由につい
て説明する。 Mg:Mgは本発明の合金系では基本となる合金元素で
あり、塗装焼付け時にMg−Si系のGPゾーンを生じ
て高BH性の発現に寄与するものである。しかし、Mg
量が0.3%未満ではBH性が不十分である。一方、
1.5%を超えて過剰に添加すると粗大なMg2 Si析
出物を生じ、溶質量の低下によりBH性を損なうだけで
なく、成形性および曲げ性を低下させる。このことか
ら、Mg量は0.3〜1.5%の範囲とした。
【0019】Si:Siも本発明の合金系では基本とな
る合金元素であり、塗装焼き付け時にMg−Si系のG
Pゾーンを生じてBH性を向上させるが、Si量が0.
4%未満ではBH性が十分ではない。一方、Si量が
1.8%を超えると粗大なMg 2 Si析出物を生じ、溶
質量の低下によりBH性を損なうだけでなく、成形性お
よび曲げ性を低下させる。従って、Si量は、0.4〜
1.8%の範囲とした。さらに必要に応じて、Cu、M
n、Zn、Cr、Fe、Ti、Zrの1種類以上を含有
させてもよい。
【0020】Cu:Cuは、成形性を向上させるが、
0.1%未満では効果が小さいため、0.1%を下限と
する。一方、1.5%を超えると粗大なAl−Mg−S
i―Cu系析出物を生じ、成形性および曲げ性を低下さ
せることから、上限を1.5%とした。 Mn:Mnは強度の向上および結晶粒径の微細化に寄与
する元素であるが、含有量が0.03%未満では効果が
小さく、0.5%を超えると粗大析出物が生成し、成形
性を低下させる。従って、Mn量は0.03〜0.5%
の範囲とした。
【0021】Zn:Znは強度を向上させる元素である
が、0.03%未満では効果が小さいため0.03%を
下限とし、1.5%を超えると室温で時効硬化して耐力
を増加し、曲げ性を低下させるので1.5%を上限とす
る。 Cr:Crは強度向上と結晶粒の微細化に効果のある元
素であるが、0.03%未満では効果が十分に得られな
い。一方、0.5%を超えると粗大な析出物を生じて成
形性を低下させる。したがって、0.03〜0.5%の
範囲とした。
【0022】Fe:Feは強度向上と鋳塊組織の微細化
に有効な元素であり、その含有量が0.03%未満では
十分な効果が得られないため、下限とする。また、0.
5%を超えればAl−Fe系の粗大な晶出物を生じて成
形性を低下させるため、0.03〜0.5%とした。 Ti、VおよびZr:Ti、VおよびZrも強度向上と
鋳塊組織の微細化に有効な元素であり、その含有量が
0.03%未満では十分な効果が得られず、0.5を超
えると粗大な析出物を生じて成形性を低下させるため、
それぞれ0.03〜0.5%の範囲とした。
【0023】次に、本発明のアルミニウム合金板の好適
な製造方法について詳しく説明する。本発明のAl−M
g−Si系アルミニウム合金は、常法に従って鋳造、熱
間および冷間圧延、溶体化処理を施す。必要に応じて、
冷間圧延中に中間焼鈍を施しても良い。溶体化処理後に
は、GPゾーンの生成を促進してクラスターの生成を抑
制するために、巻取り温度および冷却速度を限定する。
その後、復元処理を施し、必要に応じて、溶体化処理後
と同様に、巻取り温度および冷却速度を限定する。これ
により、極めて優れたBH性が得られる。また、溶体化
処理後の冷却速度を限定することにより優れた曲げ性が
得られる。
【0024】まず、溶体化処理後の巻取り温度は、クラ
スターが生成し難く、かつ、GPゾーンによる耐力増加
で加工性を損わない温度範囲に限定する必要がある。巻
取り温度は、40℃未満ではクラスターが生成しやす
く、BH性を著しく低下させることから、40℃を下限
とした。また、100℃を超えると巻取り後の冷却時や
復元処理時にGPゾーンを過剰に析出して耐力が増加
し、プレス成形および曲げ性を低下させることから上限
を100℃とした。
【0025】次に、巻取り後の冷却速度は、0.1℃/
hよりも遅いとGPゾーンの析出が進んで耐力が増加
し、加工性を低下させるため下限とした。また、10℃
/hよりも速いとGPゾーンの生成が不十分であり、室
温近傍まで冷却された際にクラスターが生成してBH性
を低下させるため、10℃/hを上限とした。さらに、
本発明では溶体化処理後にクラスターを再固溶させ、G
Pゾーンを析出させる復元処理を施す。この熱処理は、
140℃未満では効果が小さいので下限とし、280℃
を超えると耐力が大きくなるため上限とするが、200
℃を境に適正な保持時間が異なる。
【0026】すなわち、200〜280℃の温度範囲で
はクラスターの溶解とGPゾーンの生成が促進され、2
分以下の保持によって高いBH性が得られるが、これよ
り長い時間保持すると耐力が増加して加工性を低下させ
る。なお、保持時間2分以下には200〜280℃に昇
温するだけで保持しない処理も含まれる。一方、140
〜200℃未満の温度範囲では、保持時間が2分以下で
は効果が小さく、60分を超えると耐力が増加して加工
性を低下させるため、2分超〜60分の範囲とする。
【0027】また、温度範囲200〜280℃で保持時
間を2分以下とする復元処理を施す際には、クラスター
の溶解が促進されるため、室温近傍まで冷却すると再び
クラスターが生成してBH性を低下させる。従って溶体
化処理後と同様に、巻取り温度およびその後の冷却速度
を限定することによって高BHが得られる。この適正条
件は溶体化処理後と同様、温度範囲は40〜100℃、
冷却速度は0.1〜10℃/hである。一方、140℃
〜200℃未満で、保持時間を2分超〜60分とする復
元処理を施した後、室温で放置してもクラスターを生成
し難いため、巻取り条件は限定しない。
【0028】さらに、溶体化処理条件は、450℃以下
の温度では、熱間圧延板に生じている主要な析出物であ
るMg2 Siが十分に固溶しない。従って、溶質量が少
なくなるためGPゾーンの析出が不十分になり、BH性
が得られない。また、粗大な析出物により成形性および
曲げ性が低下する。一方、溶体化温度が580℃を越え
ると結晶粒界近傍で部分的に融解し、成形性および曲げ
性が著しく劣化する。従って、溶体化処理温度は450
〜580℃とした。また、保持時間は5分を超えると結
晶粒径が大きくなり、曲げ性を損なうため、5分以下と
した。さらに、溶体化処理後、巻取りまでの冷却速度を
5℃/s未満にすると、冷却中に結晶粒界に析出物を生
じて曲げ性が低下し、さらにMg、Si過飽和固溶量が
減少するためBH性が低下する。そのため、溶体化処理
温度からの冷却速度は5℃/s以上とした。このように
して得られたアルミニウム合金板は、成形加工性に優
れ、かつ塗装焼付後に高強度が得られるため、自動車の
ボディシート、特にアウターパネル用として好適であ
る。
【0029】このようなアルミニウム合金板のプレス成
形性を高めるために、表面に塗布するアルカリ可溶型潤
滑被覆について以下に説明する。これは、膜厚を一定の
条件とした粒状潤滑機能付与剤を含有するアルカリ可溶
型潤滑樹脂皮膜である。まず、アルカリ液に溶解・脱膜
するアルカリ溶解型潤滑皮膜には、ポリエチレングリコ
ール系、ポリプロピレングリコール系、ポリビニルアル
コール系、アクリル系、ポリエステル系などがあるが、
アルカリ溶解可能とするために、樹脂水分散体または水
溶性樹脂でなければならない。
【0030】ポリエチレングリコール系では、皮膜形成
性の観点から、平均分子量3000以上のポリエチレン
グリコールおよび変性ポリエチレングリコールが挙げら
れる。変性ポリエチレングリコールとしては、イソシア
ネート変性ポリエチレングリコール、エポキシ変性ポリ
エチレングリコール等が挙げられる。ポリプロピレング
リコール系では、皮膜形成性の観点から、平均分子量3
000以上のポリプロピレングリコールおよび変性ポリ
プロピレングリコールが挙げられる。
【0031】変性ポリプロピレングリコールとしては、
イソシアネート変性ポリプロピレングリコール、エポキ
シ変性ポリプロピレングリコール等が挙げられる。ポリ
ビニルアルコール系では、完全ケン化型ポリビニルアル
コール、部分ケン化型ポリビニルアルコール、変性ポリ
ビニルアルコール等が挙げられる。変性ポリビニルアル
コールとしては、カルボキシル基変性ポリビニルアルコ
ール、スルホン酸ポリビニルアルコール、アセトアセチ
ル基ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0032】アクリル系としては、アクリル酸、メタア
クリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステ
ル、マレイン酸、イタコン酸の共重合体が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アク
リル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n
ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸2ヒ
ドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタ
クリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イ
ソプロピル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソ
ブチル、メタクリル酸nヘキシル、メタクリル酸ラウリ
ル、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒ
ドロキシプロピルなどがある。共重合体としては、スチ
レン、アクリルアミド、酢酸ビニル、アクリルニトリ
ル、などが挙げられる。
【0033】ポリエステル系については、ポリエステル
を構成する多価アルコールとしては、エチレングリコー
ル、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコー
ル、1,6ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、
ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ト
リエチレングルコールなどが挙げられ、多塩基酸として
は、無水フタル酸、イソフタル酸テレフタル酸、無水コ
ハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマ
ル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0034】本発明のアルミニウム合金板に被覆される
潤滑樹脂皮膜の厚さは、0.5μm未満であるとプレス
加工時の押圧による、型かじりや傷の発生を防止でき
ず、かつ摺動が加わるために要求される加工性を得るこ
とが出来ない。この効果は、厚さが5μmまでで顕著で
あるが、これを超えても効果は変わらない。従って、潤
滑樹脂被膜の厚さは0.5〜5μmの範囲とする。ま
た、本発明の潤滑樹脂皮膜は目的に応じて板の両面又は
片面に被覆される。
【0035】次に潤滑機能付与剤について説明する。粒
状潤滑機能付与剤は表面の摩擦係数を低減することによ
りさらに潤滑性を付与し、かじり等を防止してプレス加
工性、しごき加工性を向上する作用を有している。潤滑
機能付与剤としては、得られる皮膜に潤滑性能を付与す
るものであればよいが、ポレオレフィン系(ポリエチレ
ン,ポリプロピレン等)、フッ素系(ポリテトラフルオ
ロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフ
ッ化ビニリデン,ポリフッ化ビニル等)、パラフィン
系、ステアリン酸系ワックスのうちの1種または2種以
上からなるものが好ましい。
【0036】潤滑機能付与剤の添加量は、重量%で2%
未満では要求される潤滑効果が得られず、15%を越え
ると皮膜強度が低下したり、潤滑付与剤の剥離が発生す
るなどの問題があるため、2〜15%が好ましい。シリ
カは皮膜強度、合金板との密着性を向上させる場合に添
加する。シリカ粒子は、水分散性コロイダルシリカ、粉
砕シリカ、気相法シリカなどいずれのシリカ粒子であっ
ても良い。皮膜の加工性、耐食性発現を考慮すると、1
次粒子径は2〜30nmで、2次凝集粒子径は100n
m以下が好ましい。シリカの添加量としては重量%で1
〜30%が好ましい。1%未満では、下層との密着性向
上効果が得られない。30%を越えると皮膜の伸びが減
少するため加工性が低下し、型かじりが発生しやすくな
る。
【0037】本発明のアルカリ可溶型潤滑樹脂皮膜中に
は上記以外に、意匠性を付与するための顔料や、導電性
を付与する導電性添加剤、等を目的に応じて、皮膜性能
を低下させない範囲内で添加することができる。また、
本発明において、さらなる耐食性や密着性を得るために
下地にリン酸塩処理やクロメート処理を施してもかまわ
ない。この場合のクロメート処理としては、電解型クロ
メート、反応型クロメートおよび塗布型クロメートのい
ずれの処理をあげることができる。クロメート皮膜は還
元したクロム酸にシリカ、燐酸、親水性樹脂の中から少
なくとも1種以上を含有したクロメート液を塗布、乾燥
したものが好ましい。
【0038】リン酸塩の付着量としては、リン酸塩とし
て0.5〜3.5g/m2 の範囲が好ましい。クロメー
トの付着量としては、金属クロム換算で5〜150mg
/m 2 の範囲が好ましく、さらに好ましい範囲は10〜
50mg/m2 である。5mg/m2 未満では優れた耐
食性効果が得られず、150mg/m2 を超えると成形
時にクロメート皮膜の凝集破壊が起こるなど、加工性を
劣化させる。さらに、目的に応じ下地に酸洗処理、アル
カリ処理、電解還元処理、コバルトめっき処理、ニッケ
ルめっき処理、シランカップリング処理無機シリケート
処理を施してもかまわない。
【0039】潤滑樹脂皮膜の形成方法としては、樹脂成
分および粒状潤滑機能付与剤を含む水溶液また水分散体
をロールコーター塗装法、スプレー法など従来公知の方
法で塗布・焼付乾燥して形成することができる。本発明
の潤滑被覆アルミニウム合金板は潤滑皮膜のさらに上層
に潤滑油または潤滑防錆油を塗布することができる。た
だし、塗布する潤滑油または潤滑防錆油は、本発明の潤
滑皮膜を膨潤または溶解させないものが望ましい。
【0040】
【実施例】以下、本発明を実施例で説明する。 (実施例1)表1に示す成分のアルミニウム合金を通常
の方法で溶解、鋳造、熱間圧延および冷間圧延して、厚
さ1mmの冷延板とした。これらの冷延板に550℃で
10秒保持する溶体化処理を施した後、80℃まで20
℃/sの冷却速度で冷却して巻取り、さらに冷却速度1
℃/hで室温近傍まで冷却した。その後、240℃に加
熱して保持せず冷却する復元処理を行い、50℃まで冷
却して巻取り、さらに冷却速度1℃/hで冷却した。製
造後、7日間室温に放置した後に、理学電機(株)製、
示差走査熱量計DSC−8230Dを用いて昇温速度2
0℃/minでDSC曲線を測定した。引張試験、成形
試験および曲げ試験をJISに準拠して実施した。BH
性は、2%の引張歪を与えた後に170℃で20分の熱
処理を行った後の耐力として評価した。成形性はエリク
セン値で評価し、9.5以上を良好とした。曲げ性は、
0.5tの内側半径で180°曲げを行い、その外側部
分の割れを観察して、割れがないものを○、割れが見ら
れるものを×として評価した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】表2より、本発明のアルミニウム合金板N
o.1〜14は、DSC曲線の150〜250℃の温度
範囲で発熱を示し、その温度範囲における発熱量は0.
1cal/g以上である。また、塗装焼付後の強度が2
40MPa以上であり、成形性および曲げ性が良好であ
る。一方、本発明以外の成分を有する比較例の合金N
o.15はMg量が、No.18はSi量が本発明の範
囲よりも少い。そのため、溶体化処理後の溶質の固溶量
が少なくなり、GPゾーンの析出が不十分である。ま
た、No.16はMg量が、No.17はSi量が本発
明の範囲よりも多いため、粗大なMg2 Siが析出して
いる。そのため、MgおよびSiの固溶量が減少し、G
Pゾーンの析出が不十分である。
【0044】従って、これらNo.15〜18の合金
は、DSC曲線の150〜250℃の温度範囲での発熱
量が少なく、十分なBH性が得られない。また、合金N
o.16および17は粗大なMg2 Siを生じているた
め、成形性および曲げ性も低下している。また、合金N
o.19はCu量が本発明の範囲よりも多いため、Al
−Mg−Si−Cu系の析出物を生じ、曲げ性および成
形性が低下している。合金No.20はMn量が本発明
の範囲よりも多いため、Al6 Mnを析出して成形性お
よび曲げ性が劣下する。No.23はZn量が本発明の
範囲よりも多いためMg−Zn系のGPゾーンを生じ
て、BH前の耐力が高くなり、成形性および曲げ性が劣
る。その他の合金は、介在物を生じるため、成形性が不
十分である。
【0045】(実施例2)表1の発明合金A7に550
℃で10秒保持する溶体化処理を施した後、20℃/s
の冷却速度で冷却し、表3に示す条件で巻取り、室温近
傍まで冷却した。さらに同表に示した条件で復元処理を
施し、巻取って室温近傍まで冷却した。これらのアルミ
ニウム合金に、実施例1と同様の試験を行った結果を表
4に示す。製造No.27〜32の製造条件は、本発明
の範囲内であるため、DSC曲線の150〜250℃の
温度範囲で発熱を示し、その温度範囲における発熱量は
0.1cal/g以上である。また、塗装焼付後の強度
が240MPa以上であり、成形性および曲げ性が良好
である。
【0046】一方、製造No.33は溶体化処理後の巻
取り温度が高すぎるため、冷却中にGPゾーンを生じて
耐力が大きくなり、成形性および曲げ性が低下してい
る。逆に、製造No.34は溶体化処理後の巻取り温度
が低すぎるため、冷却中にクラスターを生じ、DSC曲
線の150〜250℃の温度範囲で吸熱を示し、BH性
が不十分である。合金No.35は溶体化処理後の巻取
り後の冷却速度が速すぎたため、GPゾーンの形成が不
十分でクラスターを生じ、DSC曲線の150〜250
℃の温度範囲で吸熱を示し、BH性が不十分である。逆
に、製造No.36は溶体化処理後の巻取り後の冷却速
度が遅すぎるため、冷却中にGPゾーンを生じて耐力が
大きくなり、成形性および曲げ性が低下している。
【0047】また、合金No.37は復元処理温度が高
すぎ、No.39は復元処理の時間が長すぎるために、
耐力が大きくなり、成形性および曲げ性が低下してい
る。合金No.38は、復元処理温度が低すぎるため
に、クラスターの固溶およびGPゾーンの析出が不十分
で、DSC曲線の150〜250℃の温度範囲で吸熱を
示し、BH性が不十分である。さらに製造No.40は
巻取り温度が高すぎ、合金No.43は巻取り後の冷却
速度が遅すぎるため、冷却中にGPゾーンを生じて耐力
が大きくなり、成形性および曲げ性が低下している。逆
に、No.41は復元処理後の巻取り温度が低すぎ、合
金No.42は巻取り後の冷却速度が速すぎるため、冷
却中にクラスターを生じ、DSC曲線の150〜250
℃の温度範囲で吸熱を示し、BH性が不十分である。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】(実施例3)表1の発明合金A7に550
℃で10秒保持する溶体化処理を施した後に20℃/s
の冷却速度で冷却し、その後、表5に示す条件で巻取っ
て室温近傍まで冷却した。さらに、同表に示した復元処
理を施し、室温近傍まで冷却した。これらのアルミニウ
ム合金に、実施例1と同様の試験を行った結果を表6に
示す。製造No.44〜48の製造条件は、本発明の範
囲内であるため、DSC曲線の150〜250℃の温度
範囲で発熱を示し、その温度範囲における発熱量は0.
1cal/g以上である。また、塗装焼付後の強度が2
40MPa以上であり、成形性および曲げ性が良好であ
る。
【0051】一方、製造No.49は溶体化処理後の巻
取り温度が高すぎるため、冷却中にGPゾーンを生じて
耐力が大きくなり、成形性および曲げ性が低下してい
る。逆に、製造No.50は溶体化処理後の巻取り温度
が低すぎるため、冷却中にクラスターを生じ、DSC曲
線の150〜250℃の温度範囲で吸熱を示し、BH性
が不十分である。合金No.51は溶体化処理後の巻取
り後の冷却速度が速すぎるため、GPゾーンの形成が不
十分でクラスターを生じ、DSC曲線の150〜250
℃の温度範囲で吸熱を示し、BH性が不十分である。逆
に、製造No.52は溶体化処理後の巻取り後の冷却速
度が遅すぎるため、冷却中にGPゾーンを生じて耐力が
大きくなり、成形性および曲げ性が低下している。
【0052】また、合金No.53は復元処理温度が高
すぎ、No.56は復元処理の時間が長すぎるために、
耐力が大きくなり、成形性および曲げ性が低下してい
る。一方、合金No.54は復元処理温度が低すぎ、N
o.55は復元処理の時間が長すぎるために、クラスタ
ーの固溶およびGPゾーンの析出が不十分で、DSC曲
線の150〜250℃の温度範囲で吸熱を示し、BH性
が不十分である。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】(実施例4)表1の発明合金A7に表7に
示した条件で溶体化処理を施した後冷却して、80℃で
巻き取った。さらに冷却速度1℃/hで室温近傍まで冷
却した。その後、240℃に加熱して保持せず冷却する
復元処理を行い、50℃まで冷却して巻取り、さらに冷
却速度1℃/hで冷却した。これらのアルミニウム合金
に、実施例1と同様の試験を行った結果を表8に示す。
製造No.57〜61の製造条件は、本発明の範囲内で
あるため、DSC曲線の150〜250℃の温度範囲で
発熱を示し、その温度範囲における発熱量は0.1ca
l/g以上である。また、塗装焼付後の強度が240M
Pa以上であり、成形性および曲げ性が良好である。
【0056】一方、No.62は溶体化処理温度が高す
ぎるために結晶粒界で部分的に溶解し、成形性および曲
げ性が低下している。逆にNo.63は溶体化処理温度
が低すぎ、Mg2 Siの溶解が不十分であるため、Mg
およびSiの固溶量が少ない。そのためGPゾーンの形
成が不十分で、DSC曲線の150〜250℃の温度範
囲での発熱量が少なく、BH性が不十分である。さら
に、Mg2 Siが析出しているため、成形性および曲げ
性も低下している。また、No.64は溶体化処理温度
での保持時間が長すぎるために、結晶粒径が粗大化し曲
げ性が低下している。No.65は、溶体化処理後、巻
取り温度までの冷却速度が遅いため、冷却中に結晶粒界
にMg2 Siを生じて、曲げ性が低下している。また、
MgおよびSiの固溶量が少ないためGPゾーンの形成
が不十分で、DSC曲線の150〜250℃の温度範囲
での発熱量が少なく、BH性が不十分である。
【0057】
【表7】
【0058】
【表8】
【0059】(実施例5)表1の発明合金A7に表7に
示した条件で溶体化処理を施し、冷却して80℃で巻き
取り、冷却速度1℃/hで室温近傍まで冷却した。その
後、180℃に加熱して3分保持し、冷却する復元処理
を行い、室温近傍まで冷却した。これらのアルミニウム
合金に、実施例1と同様の試験を行った結果を表9に示
す。製造No.66〜70の製造条件は、本発明の範囲
内であるため、DSC曲線の150〜250℃の温度範
囲で発熱を示し、その温度範囲における発熱量は0.1
cal/g以上である。また、塗装焼付後の強度が24
0MPa以上であり、成形性および曲げ性が良好であ
る。
【0060】一方、No.71は溶体化処理温度が高す
ぎるために結晶粒界で部分的に溶解し、成形性および曲
げ性が低下する。逆にNo.72は溶体化処理温度が低
すぎ、Mg2 Siの溶解が不十分であるため、Mgおよ
びSiの固溶量が少ない。そのためGPゾーンの形成が
不十分で、DSC曲線の150〜250℃の温度範囲で
の発熱量が少なく、BH性が不十分である。さらに、M
2 Siが析出しているため、成形性および曲げ性も低
下している。また、No.73は溶体化処理温度での保
持時間が長すぎるために、結晶粒径が粗大化し曲げ性が
低下している。No.74は、溶体化処理後、巻取り温
度までの冷却速度が遅いため、冷却中に結晶粒界にMg
2 Siを生じて、曲げ性が低下している。また、Mgお
よびSiの固溶量が少ないためGPゾーンの形成が不十
分で、DSC曲線の150〜250℃の温度範囲での発
熱量が少なく、BH性が不十分である。
【0061】
【表9】
【0062】(実施例6)表1の発明合金A7に550
℃で0.5min保持する溶体化処理を施し、20℃/
sで冷却して80℃で巻き取った。さらに冷却速度1℃
/hで室温近傍まで冷却した。その後、240℃に加熱
して保持せず冷却する復元処理を行い、50℃まで冷却
して巻取り、さらに冷却速度1℃/hで冷却した。この
アルミニウム合金の表面には、基本的にクロメート未処
理としたが、一部水準について、クロム還元率(Cr
(VI)/全Cr)=0.4のクロム酸にコロイダルシ
リカを加えた塗布型クロメート液をロールコータにてク
ロム付着量が金属クロム換算で20mg/m2 となるよ
う塗布し、加熱乾燥させクロメート皮膜を形成させた。
【0063】次に、ポリエチレングリコール、ポリプロ
ピレングリコール、アクリル樹脂の水溶液または水分散
体に、ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチ
レンワックス、合成パラフィンワックス、ステアリン酸
カルシウムワックス、およびコロイダルシリカを表10
に示す組成で混合し、バーコーター塗装して180℃の
加熱炉を用いて合金板到達温度80℃で焼付乾燥し潤滑
樹脂皮膜を形成させた。なお、加工性評価の比較材とし
て、上記のアルミニウム合金板にジョンソンワックス#
122を塗布したものを用いた。これらのサンプルに対
して深絞り性、型かじり性、加工後の樹脂カス発生状況
および脱脂性の評価を行った。深絞り性は、円筒深絞り
試験をポンチ直径50mm、ポンチ肩半径5mmの条件
で実施し、限界絞り比(LDR)で評価した。
【0064】型かじり性および加工後の樹脂カス発生状
況は、円筒ポンチの油圧成形試験機により、ポンチ直径
40mm、ポンチ肩半径4mm、ダイス直径43mm、
ダイス肩半径4mm、シワ押さえ力1tonで成形試験
を行って評価した。型かじり性は側壁の外観を目視し、
次の指標に依って評価した。 ◎:成形可能で、合金板表面の欠陥無し ○:成形可能で、合金板表面の欠陥無し、摺動面わずか
に変色 △:成形可能で、合金板表面にわずかにかじり疵発生 ×:成形可能で、合金板表面に線状かじり疵多数発生
【0065】また、加工後の樹脂カス発生状況を次の指
標で評価した。 ◎:カス発生無し ○:極わずかに樹脂カス発生 △:少し樹脂カス発生 ×:樹脂カス多数発生
【0066】脱脂性は、FC−4358脱脂液(日本パ
ーカライジング製、pH=10.5に調整、温度70
℃)を試験片に8秒間スプレーした後水洗し、乾燥後の
皮膜残存率を赤外分光分析にて測定し、次の指標で評価
した。 ◎:皮膜残存無し ○:皮膜残存5%以下 △:皮膜残存5%超10%以下 ×:皮膜残存10%超
【0067】表10に示すように、No.75〜95の
本発明の範囲内にあるアルカリ可溶型潤滑被覆アルミニ
ウム合金板はいずれも、深絞り性および型かじり性に優
れ、加工後に樹脂カスが発生し難く、脱脂性に優れてい
る。一方、比較例No.96は膜厚が薄いため、型かじ
り性が不十分である。No.97は粒状潤滑機能付与剤
の含有量が少ないため、型かじり性が不十分である。一
方、No.98は粒状潤滑機能付与剤の含有量が多いた
め、加工後に樹脂カスが発生している。
【0068】
【表10】
【0069】
【発明の効果】本発明によれば、極めて優れた塗装焼付
け硬化性を有し、プレス成形および曲げなどの加工性に
も優れた、耐デント性が必要とされる自動車ボディ用、
特にアウターパネルなどに好適なアルミニウム合金板お
よびその製造方法を提供できる。従って、自動車重量の
軽量化に大いに寄与できるため、産業上の価値のみなら
ず、温室効果ガス排出量削減への貢献も極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に属すアルミニウム合金板のDSC曲線
の一例を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/00 630 C22F 1/00 630A 630K 630Z 680 680 682 682 691 691B 691C 692 692A 692B 694 694Z (72)発明者 森 陽一郎 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 Fターム(参考) 2G055 AA05 AA07 AA12 BA05 BA14 BA15 CA01 CA29 DA08 DA23 EA04 EA06 FA01 FA05

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 昇温速度20℃/minの示差走査熱量
    測定において、150〜250℃の範囲がすべて発熱部
    で、150〜250℃の合計の発熱量が0.1cal/
    g以上であることを特徴とする塗装焼付け硬化性および
    加工性に優れるアルミニウム合金板。
  2. 【請求項2】 mass%で、Mg:0.3〜1.5
    %、Si:0.4〜1.8%を含有し、残部がAlおよ
    び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に
    記載の塗装焼付け硬化性および加工性に優れるアルミニ
    ウム合金板。
  3. 【請求項3】 mass%で、 Cu:0.1〜1.5%、 Mn:0.03〜0.5%、 Zn:0.03〜1.5%、 Cr:0.03〜0.5%、 Fe:0.03〜0.5%、 Ti:0.03〜0.5%、 V:0.03〜0.5%、 Zr:0.03〜0.5% の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴と
    する請求項2に記載の塗装焼付け硬化性および加工性に
    優れるアルミニウム合金板。
  4. 【請求項4】 請求項1、2、3のいずれかに記載のア
    ルミニウム合金板の両面又は片面の表面に、粒状潤滑機
    能付与剤を2〜15重量%含有したアルカリ可溶型潤滑
    樹脂皮膜が0.5〜5μm形成されたことを特徴とする
    塗装焼付け硬化性および加工性に優れるアルミニウム合
    金板。
  5. 【請求項5】 請求項1、2、3のいずれかに記載のア
    ルミニウム合金板の両面又は片面の表面に、粒状潤滑機
    能付与剤を2〜15重量%、シリカ粒子を1〜30重量
    %含有したアルカリ可溶型潤滑樹脂皮膜が0.5〜5μ
    m形成されたことを特徴とする塗装焼付け硬化性および
    加工性に優れるアルミニウム合金板。
  6. 【請求項6】 粒状潤滑機能付与剤が、ポリオレフィン
    系ワックス、フッ素系ワックス、パラフィン系ワック
    ス、ステアリン酸系ワックスのうちの1種または2種以
    上からなる請求項4または請求項5に記載の塗装焼付け
    硬化性および加工性に優れるアルミニウム合金板。
  7. 【請求項7】 請求項1、2、3のいずれかに記載のア
    ルミニウム合金板を製造する方法において、溶体化処理
    後、40〜100℃に冷却して巻取り、0.1〜10℃
    /hの冷却速度で冷却し、さらに200〜280℃に加
    熱して2分以下保持した後、冷却して40〜100℃で
    巻取り、0.1〜10℃/hの冷却速度で冷却すること
    を特徴とする塗装焼付け硬化性および加工性に優れるア
    ルミニウム合金板の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1、2、3のいずれかに記載のア
    ルミニウム合金板を製造する方法において、溶体化処理
    後、40〜100℃に冷却して巻取り、0.1〜10℃
    /hの冷却速度で冷却し、さらに140〜200℃未満
    に加熱して2分超〜60分保持することを特徴とする塗
    装焼付け硬化性および加工性に優れるアルミニウム合金
    板の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項7、8のいずれかに記載のアルミ
    ニウム合金板の製造方法において、溶体化処理として、
    450〜580℃の温度範囲で5分以下保持し、40〜
    100℃までの冷却速度を5℃/s以上とすることを特
    徴とする塗装焼付け硬化性および加工性に優れるアルミ
    ニウム合金板の製造方法。
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