JP3802695B2 - プレス成形性およびヘム加工性に優れたアルミニウム合金板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス成形性およびヘム加工性に優れたAl合金板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車、船舶あるいは車両などの輸送機の外板や構造材あるいは部品用、また家電製品の構造材あるいは部品用、更には屋根材などの建築、構造物の部材用として、成形性に優れたAA乃至JIS5000 系や成形性や焼付硬化性に優れたAA乃至JIS 6000系 (以下、単に5000系乃至6000系と言う) のAl合金が使用されている。この中でも、特に、自動車のドアやフェンダーあるいはボンネットなどのパネル材或いはホイール等についても、前記材料特性やリサイクル性の点から、6000系のAl合金の使用が検討されている。
【0003】
この6000系Al合金は、基本的にSi:0.2〜1.8%(mass%、以下同じ) 、Mg:0.2〜1.6%を含有するAl-Mg-Si系アルミニウム合金である。そして、この6000系Al合金は、プレス成形加工時には成形加工性を低耐力により確保するとともに、プレス成形後の焼付塗装時に時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確保できる。また、スクラップをAl合金溶解原料として再利用する際に、比較的合金量が少なく、元の6000系Al合金鋳塊を得やすい。したがって、従来から輸送機用として使用されてきたMg量などの合金量が多い5000系のAl合金に比して有利である。
【0004】
一方、Al合金板を輸送機用のパネルなどとするためには、Al合金板を前記部材形状にするための、深絞り、張出し、曲げ、伸びフランジなどのプレス成形加工が施される。この際、深絞りや張出し、或いは伸びフランジ成形においては、高い深絞り性 (限界絞り比, LDR)や高い形状凍結性を確保することが必要である。そして製品乃至部材形状の複雑化に伴い、プレス成形加工条件は益々厳しいものとなっている。
【0005】
しかし、6000系Al合金板は、従来プレス成形用に用いられている鋼板に比してプレス成形性が著しく劣り、従来用いられていた5000系Al合金板などに比してもプレス成形性が劣っている。例えば、6000系Al合金板は、板の圧延方向に対し45°または90°方向のr 値であるr45 および/ またはr90 が0.7 以下程度であるのに対し、50000 系Al合金板はr45 および/ またはr90 が0.8 程度ある。
【0006】
したがって、6000系Al合金板が前記輸送機用のパネル材として用いられるためには、より高いプレス成形性、そして特にプレス成形の中でも、深絞り成形性の指標として、限界絞り高さ (比) が高いことが必要である。そして、近年、前記深絞り成形における要求限界絞り深さは益々大きくなっており、2.0 以上の高いLDR が必要とされる。このため、6000系Al合金板は、これらを満足する成形性を有する必要がある。
【0007】
また、自動車のアウターパネルなどでは、深絞りや張出しなどの成形後に、前記ヘム加工、即ち、曲げ中心半径(R) と板厚(t) との比(R/t) が3.0 以下の、加工条件の厳しいロープヘム加工やフラットヘム加工と呼ばれる180 °曲げ加工が行われる。
【0008】
そして、従来用いられている5000系Al合金板などに比して、6000系Al合金板は、この180 °曲げ加工において、板の曲げ部分に特に割れが生じやすい。したがって、6000系Al合金板が、輸送機のアウターパネルなどに適用されるためには、前記加工条件の厳しいヘム加工を受けても割れが生じない、曲げ加工時の割れ性にも優れることが必須となる。
【0009】
更に、自動車などの輸送機の軽量化のためには、より薄肉化するとともに、より高い引張強さと高い耐力とを有するAl合金板が求められており、これらの高強度化は、前記深絞り成形性の問題 (成形性の低下) を益々助長することにつながる。
【0010】
このため、益々条件が厳しくなっている前記プレス成形性をクリアーして、6000系Al合金板が輸送機の前記パネルなどに適用されるために、プレス成形技術の側面からだけではなく、6000系Al合金板の素材側のプレス成形性を高める多大な努力が従来から払われている。
【0011】
代表的な技術は、6000系Al合金板の化学成分組成を制御することである。例えば、特開昭64-65243号、特開平5-291834号、特開平7-228939号公報等に開示されている通り、6000系Al合金板の基本組成としてのSi (過剰Si量) やMg量、あるいはMg2Si 等の晶出物の量や形態を制御することが開示されている。また、Cuなどを添加して成形性を向上させることが、特開平6-2064号、特開平6-136478号、特開平8-109428号、特開平9-209068号、特開平9-202933号公報等で多数提案されている。
【0012】
更に、Al合金板表面をショットダルやレーザーダルによるダル仕上げとしたロールで圧延してダル目をAl合金板表面に転写して粗面化し、成形加工の際の潤滑性を向上させ、成形性を向上させることが、特開昭61-46304号、特開昭63-180331 号、特開平8-168826号、特開平9-78169 号公報等で多数提案されている。
【0013】
また、通常のAl合金板表面や前記粗面化したAl合金板表面に、予めワックスや樹脂などの液体乃至固体潤滑剤や潤滑油を予め塗布したプレコート板とすることが、特開平7-90458 号、特開平7-126785号、特開平8-168826号公報等で多数提案されている。
【0014】
そして、プレス成形方法の側でも、シワ押さえ力(BHF) を調整したり、高粘度油を用いる或いは潤滑油の塗布量を調整するなど、成形条件を調節して成形性を改善している。
【0015】
しかし、6000系Al合金板の基本組成としてのSi量やMg量、あるいはMg2Si 等の晶出物の量や形態を制御する方法は、基本的にSiやMg量を下げて、低い耐力化を図るものであるが、前記焼付硬化性 (高耐力化) の点から、低減できるSiやMg量に限界がある。
【0016】
また、確かにCuを添加すると成形性は向上するものの、塗装後耐蝕性である耐糸錆び性が劣化する。即ち、より具体的には、Cuを0.3%以上添加すると、Cuを添加しないものに比して、極端に耐糸錆び性が劣化することが知られている。
【0017】
更に、Al合金板表面を粗面化したり、潤滑剤を塗布する方法は、成形性の向上に一定の効果があるものの、前記プレス成形の条件の厳しさに対応できるだけの成形性向上効果を有するものではない。
【0018】
そして、決定的な問題は、これら従来の深絞り性などの改善技術によっても、前記ヘム加工などの曲げ加工時の割れ性が改善できるわけではない点である。
【0019】
したがって、従来の特に6000系Al合金板では、プレス成形の条件の厳しさに対応できず、自動車のアウターパネルなどの成形用途では、曲げ中心半径(R) と板厚(t) との比(R/t) などを段階的に小さくするような複数工程として、効率を落として曲げ加工するか、割れを生じない曲げ中心半径の形状に設計変更せざるを得ないのが実情であった。
【0020】
この曲げ加工性 (合わせて伸びフランジ加工性) を改善するため、Al合金板素材の局部伸びを高めて、局部変形時の板厚減少 (くびれ) を抑制する技術も種々提案されている。例えば、特開平6 -228690 号、特開平6 -228691 号公報には、5000系などMg3.5 〜10% を含むAl-Mg 系Al合金板を芯材とし、Mg0.8 〜2.0%を含むAl-Mg 系Al合金板や、Mn0.3 〜4%を含むAl-Mn 系Al合金板を皮材としてクラッドしたクラッド板が提案されている。
【0021】
また、特開平5 -271836 号公報には、5000系などMg2 〜10% を含むAl-Mg 系Al合金板に、強度向上のためのCuを0.05〜0.3%添加するとともに、局部伸びを低下させる不純物元素として、Feを0.01〜0.15% に、またSiを0.15% 以下、Fe/Si を1.4 以下に抑制することが提案されている。
【0022】
更に、特開平7 -278716 号公報には、5000系などMg2.0 〜6.0%を含むAl-Mg 系Al合金板において、局部伸びを低下させる不純物元素として、Feを0.15% 以下に、またSiを0.15% 以下にするとともに、機械的性質を劣化させないために、残存するAl-Mg-Si系、Al-Fe-Si系などの金属間化合物の平均サイズを15μm 以下にすることが開示されている。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらAl合金板素材の局部伸びを高めて曲げ加工性 (合わせて伸びフランジ加工性) を改善する技術は、全て5000系Al合金板に関する技術であって、5000系とは成分、組織と特性が異なる6000系Al合金板には、そのまま適用することができない。
【0024】
そして、より具体的には、芯材のAl合金板よりも局部伸びの高いAl合金板を皮材としてクラッドする前記特開平6 -228690 号、特開平6 -228691 号公報のような従来技術は、プレス成形や曲げ加工に耐える密着性を有するクラッド板自体を製造すること自体が困難である。これは、プレス成形性や製品としての耐傷つき性やへこみ性のためには、皮材にある程度の強度向上合金成分量が必要となり、この合金成分により、圧延クラッドの際に、Al合金板界面が酸化しやすいからである。また、これら酸化を防止してクラッド板を製造すると、製造コストが高騰することになり、実用的ではない。
【0025】
更に、芯材の6000系Al合金板に、皮材として6000系以外のAl合金板を用いた場合には、皮材の厚みを薄くしたとしても、クラッドしない (単一の)6000 系Al合金板に比して、6000系Al合金板の特徴である、成形加工時の低耐力と焼付硬化性による高耐力化の特性がどうしても低下することになり、やはり実用的ではないからである。
【0026】
また、前記焼付硬化性などの特性を出す上で、Siを0.8 〜1.8%必須として含む6000系Al合金板では、前記特開平5 -271836 号公報や特開平7 -278716 号公報のように、局部伸びを低下させる不純物元素として、Siを0.15% 以下に抑制することはできない。なお、これら従来技術のようにFeを0.15% 以下に抑制する、乃至残存するMg-Si 系、Al-Fe 系などの金属間化合物 (晶出物や分散粒子) の平均サイズを15μm 以下に小さくすることは、6000系においても、それなりの曲げ加工性向上効果を有する。しかし、本発明者らが知見したところによれば、これらの手段による曲げ加工性向上効果は、6000系Al合金板においては至って小さい。したがって、これらの手段だけでは、少なくとも6000系Al合金板においては、前記ヘム加工等の厳しい曲げ加工性 (合わせて伸びフランジ加工性) を改善する乃至合わせて優れた深絞り等のプレス成形性を有することはできない。
【0027】
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、輸送機の軽量化のために、より高い耐力とを有するとともに、優れたプレス成形性とヘム加工性を有するAl合金板を提供しようとするものである。
【0028】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明の要旨は、Mg:0.2〜1.6%(mass%、以下同じ) 、Si:0.2〜1.8%、Mn:0.01 〜0.30% を含むとともに、Feを0.30% 以下に規制し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金板であって、最終溶体化処理後のミクロ組織における再結晶粒の平均結晶粒径が45μm 以下であり、Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物の平均径が5 μm 以下であるとともに該晶出物間の平均間隔が20μm 以上であり、かつ分散粒子の平均径が0.02〜0.8 μm であるとともに単位体積当たりの個数が1 個/ μm3以上であるものとする。
【0029】
前記要旨とすることにより、成形時のAl合金板の耐力 (σ0.2)が120N/mm2以上の高強度であっても、最大絞り深さ(LDH0)が25mm以上の優れたプレス成形性、およひ曲げ中心半径(R) と板厚(t) との比(R/t) が3.0 以下のヘム加工時に割れない曲げ加工性 (以下ヘム加工性と言う) とを有するAl合金板を提供することができる。
【0030】
本発明の第1 の特徴は、Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物の形態を制御する点である。本発明者らは、6000系のAl合金板において、ヘム加工性を低下させる最大の要因は、Al-Fe-Si-(Mn、Cr、Zr) などのAl-Fe 系およびMg2Si 系晶出物であり、この晶出物の形態を制御する (大きさと間隔とを規制する) 、より具体的には、この晶出物の平均径と晶出物間の平均間隔を規制することにより、ヘム加工性が格段に向上することを知見した。これは、Al-Fe 系およびMg2Si 系晶出物が、ヘム加工時 (および伸びフランジ加工時) の割れ (破壊) の起点 (ディンプルの起点)となっていることの知見に基づく。
【0031】
しかし、重要なことには、これらAl-Fe 系およびMg2Si 系晶出物およびこの晶出物を構成するSiは、特に6000系Al合金板に必要な強度を確保するために寄与しているため、単純に低減乃至無くすことはできない。この点、発明者らは、必然的に存在乃至必要により存在しているこれら晶出物の形態を制御することで、必要な強度やプレス成形性の確保と、優れたヘム加工性が得られることを知見した。即ち、Al合金組織中に存在するこれら晶出物が互いに集合、或いは互いに大きく長くつながった形状ではなく、微細な晶出物が互いに間隔を開けて分散していることがヘム加工性の向上に寄与することを知見した。
【0032】
そして、このAl-Fe 系およびMg2Si 系晶出物の形態を制御 (大きさと間隔) するために、特に、通常は6000系のAl合金板に0.15〜1.0%程度含まれる不純物元素としてのFeを0.30% 以下、好ましくは0.15% 以下に規制する。但し、この場合、Feを0.30% 以下に規制したのみでは、Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物の平均径が5 μm 以下であるとともに該晶出物間の平均間隔が20μm 以上とすることはできない。即ち、このAl-Fe 系およびMg2Si 晶出物の大きさと間隔の規制のためには、後述する鋳造や圧延および溶体化焼入処理条件の選定が重要となることも知見した。
【0033】
例えば、前記特開平7 -278716 号公報のような晶出物の形態制御、即ち、単に鋳造材の晶出物の平均粒径を小さくするだけではヘム加工性の向上に多く寄与しない。言い換えると、本発明者らは、前記特開平7 -278716 号公報のような思想に反して、例えAl合金板組織の晶出物の平均粒径が、それなりに大きくても、それが間隔を開けて分散している (まばらに存在する) ならば、ヘム加工性の向上に寄与することを知見した。つまり、晶出物の粒径が小さくても、互いの間隔が小さく密集した状態乃至つながった状態では、破壊の起点となって、ヘム加工性を劣化させる。勿論、本発明においては、Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物量自体も、必要な強度や成形性を確保する分以外は低減する。
【0034】
そして、この晶出物量の制御と、晶出物が互いに間隔を開けて分散している(晶出物の互いの間隔が小さく密集した状態乃至つながった状態ではない)状況に良く対応する指標として、本発明では、晶出物の平均径と、該晶出物間の平均間隔を選択する。
【0035】
次に、本発明の第2 の特徴は、Al-Mn 系、Al-Cr 系、Al-Zr 系、Al-V系の分散粒子を組織中に積極的に存在させる点である。本発明では、溶体化処理時の再結晶粒径の粗大化を防止し、再結晶粒径を微細化するために、Al-Mn 系などの分散粒子を組織中に積極的に存在させ、再結晶粒の粗大化 (粒成長) を抑制するピン止め効果を発揮させる。そして、この結果、溶体化処理後の再結晶粒径を、プレス成形性の確保やオレンジピールの発生を抑制するために必要な、平均結晶粒径で45μm 以下に微細化させる。
【0036】
更に、Al-Mn 系などの分散粒子を組織中に積極的に存在させることにより、材料の局部伸びを増大させ、ヘム加工性を向上させることができる。また、前記したようにFeを0.30% 以下に規制した場合、溶体化処理時の再結晶粒径は粗大化しやすくなる傾向がある。これに対し、Al-Mn 系などの分散粒子の存在は、この傾向を抑制する点からも有効である。
【0037】
【発明の実施の形態】
(Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物) 次に、本発明における晶出物の規定について説明する。本発明では、ヘム加工性向上のために、溶体化処理後のAl合金板組織の、Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物の平均径が5 μm 以下であるとともに該晶出物間の平均間隔が20μm 以上とする。
【0038】
Al-Fe 系晶出物は、合金組成により種々の種類はあるものの、本発明で制御の対象とするのは、主として鋳造時に生成するAl-Fe-Si-(Mn、Cr、Zr) からなる晶出物である。このAl-Fe 系晶出物および鋳造や熱延および溶体化処理などの工程で溶体化温度以下で生成するMg2Si 晶出物の、平均径が5 μm を越えるあるいはこれら晶出物間の平均間隔が20μm 未満では、成形時のAl合金板の耐力 (σ0.2)が120N/mm2以上などの高強度の場合に、曲げ中心半径(R) と板厚(t) との比(R/t) が3.0 以下のヘム加工時に割れない、というヘム加工性が低下し、従来の6000系Al合金並のヘム加工性しか有さなくなる。
【0039】
これらAl-Fe 系晶出物およびMg2Si 晶出物の平均径と、該晶出物間の平均間隔の測定は、Al合金板の平行断面の組織の、500 倍の走査型電子顕微鏡(SEM) による、Al合金板の材質のバラツキを考慮するためAl合金板の任意の測定箇所20視野の目視観察乃至画像解析観察結果の平均によって行う。測定部位は、板の表面から板中央部位までを20等分した各位置で行う。本発明で言う晶出物の径とは、前記各視野で測定できる個々の晶出物粒子の最大の長さを言う。そして、本発明で言う晶出物の平均径とは、前記各視野で測定できるAl-Fe 系晶出物およびMg2Si 晶出物粒子全ての最大の長さを計測し、この最大長さの総和を晶出物の数で除して、1 視野当たりの晶出物の最大長さの平均値を求め、更にこの各視野での平均最大長さの平均値を、再度20視野で平均値化したものとする。
【0040】
また、本発明で言う晶出物間の間隔とは、各視野で測定される晶出物粒子の数の平方を算出してA とし、次に、各視野の面積 (μm2) の平方を算出してB とし、晶出物間の間隔をB/(A+1)として算出したものとする。そして、本発明で言う晶出物間の平均間隔とは、前記算出したB/(A+1)を20視野で平均値化したものとする。
【0041】
(分散粒子) 本発明で言う分散粒子とはAl-Mn 系、Al-Cr 系、Al-Zr 系、Al-V系の分散粒子を言う。本発明では、前記した通り、溶体化処理時の再結晶粒径の粗大化を防止するために、基本組成ではAl-Mn 系の分散粒子、また、Mn、Cr、Zr、V の含有量が多い場合 (積極的に添加する乃至不純物としての量が多い場合) には、Al-Mn 系、Al-Cr 系、Al-Zr 系、Al-V系の分散粒子を組織中に積極的に微細分散させ、再結晶粒の粗大化 (粒成長) を抑制するピン止め効果を発揮させる。そして、この結果、溶体化処理後の再結晶粒径を平均結晶粒径が45μm 以下に微細化させる。また、分散粒子を組織中に積極的に存在させることにより、材料の局部伸びを増大させ、ヘム加工性を向上させる。
【0042】
この効果を発揮するためには、分散粒子の平均径が0.02〜0.8 μm であるとともに、単位体積当たりの個数が1 個/ μm3以上であることが必要である。なお、Al-Mn 系、Al-Cr 系、Al-Zr 系、Al-V系の複数の分散粒子が混在している場合には、前記分散粒子の平均径については、混在する個々の分散粒子全てについて、単位体積当たりの個数については、混在する個々の分散粒子の総和として規定する。
【0043】
この分散粒子は、合金組成により種々の種類はあるものの、本発明で制御の対象とするのは、均質化熱処理時に生成する分散粒子であって、Al-Mn 系では主となる(Fe,Mn)3SiAl12、(Fe,Mn)Al6、Al-Cr 系では主となるAl12Mg2Cr 、Al-Zr 系では主となるAl3Zr 、Al-V系では主となるAlV などの分散粒子である。
【0044】
これらの分散粒子の平均径が0.02μm 未満および単位体積当たりの個数が1 個/ μm3未満では、前記各効果が発揮されない。また、これらの分散粒子の平均径が0.8 μm を越えると、却って、プレス成形やヘム加工時に破壊の起点となり、成形性を低下させる。
【0045】
これらの分散粒子の平均径と、単位体積当たりの個数の測定は、Al合金板の板厚1/4 部位(L-LT 面) から観察用試料を採取し、5000倍の透過型電子顕微鏡(TEM) の、Al合金板の材質のバラツキを考慮するためAl合金板の任意の測定箇所10視野の目視観察乃至画像解析観察により行う。
【0046】
ここで、本発明で言う分散粒子の径とは、Al-Mn 系、Al-Cr 系、Al-Zr 系、Al-V系の分散粒子の最大の長さを言う。そして、本発明で言う分散粒子の平均径とは、前記各視野で測定できるこれら全ての分散粒子の最大の長さを各々計測し、この最大の長さの総和を分散粒子の数で除して、1 視野当たりの分散粒子の最大長さの平均値を求め、更にこの各視野での平均最大の長さの平均値を、再度10視野で平均値化したものとする。
【0047】
また、本発明で言う単位体積当たりの個数 (分散粒子の密度) とは、各視野でカウントされるAl-Mn 系、Al-Cr 系、Al-Zr 系、Al-V系の分散粒子の数を各視野の体積V(μm3)[V=各視野の面積 (μm2) ×各視野の試料厚み (μm)] で割り、単位体積当たりの個数とする。
【0048】
なお、前記透過型電子顕微鏡による測定は、機械研磨で約0.1mm 厚みに薄肉化した測定用試料を、更に、電解研磨 (ジェットポリッシュ) で観察部位の厚さを局部的に0.1 〜0.3 μm(1000〜3000Å) の薄膜化した部位を透過型電子顕微鏡で観察して行う。
【0049】
(再結晶粒径) 本発明では、前記した通り、溶体化処理後の再結晶粒径を、プレス成形性の確保やオレンジピールの発生を抑制するために必要な、平均結晶粒径で45μm 以下に微細化させる。即ち、平均結晶粒径で45μm を越えて粗大化した場合、プレス成形性が低下するとともに、オレンジピールなどの発生を招く。
【0050】
再結晶粒径の測定は、圧延方向でラインインターセプト法により評価した。即ち、Al合金板の表面を0.05〜0.1mm まで機械研磨した後、例えば、テトラフルオロほう酸: 水=15: 400の溶液中で、電圧30V 、溶液温度20〜30℃、時間60〜90秒で電解エッチングし、偏光板を使用した50倍の光学顕微鏡(TEM) により、Al合金板の材質のバラツキを考慮するためAl合金板の任意の測定箇所10視野(1視野当たり5 本で、1 本当たりのライン長は500 μm)の目視観察によって行う。
【0051】
後述する実施例の発明例の6000系Al合金板の、溶体化処理し、焼入後の厚み方向断面におけるミクロ組織の、▲1▼Al-Fe 系晶出物およびMg2Si 晶出物の平均径と該晶出物間の平均間隔の、500 倍の走査型電子顕微鏡(SEM) による、20視野の測定および、▲2▼Al-Mn 系などの分散粒子の平均径と単位体積当たりの個数の、5000倍の透過型電子顕微鏡(TEM) による、20視野の測定によれば、▲3▼Al-Fe 系晶出物およびMg2Si 晶出物は平均径が5 μm 以下の微細であって、該晶出物間の平均間隔は20μm 以上で、互いに間隔を開けて細かく分散していた。また、▲4▼Al-Mn 系などの分散粒子の平均径は0.02〜0.8 μm で微細であるとともに、単位体積当たりの個数が1 個/ μm3以上と均一に分散していた。また溶体化処理後の再結晶粒の粒径は平均結晶粒径が45μm 以下に微細化されていた。
【0052】
これに対し、前記と同様に測定した従来の6000系Al合金板では、溶体化処理後の再結晶粒の粒径は平均結晶粒径が45μm 以下に微細化されており、Al-Fe 系晶出物およびMg2Si 晶出物は、微細ではあるものの晶出物間の平均間隔は20μm 未満であり、しかも晶出物同士が集合体化乃至結合し、晶出物同士が長くつながった形状をしていた。
【0053】
そして、前記本発明6000系Al合金板は、後述する実施例の通り、人工時効 (塗装焼付) 後のσ0.2 で160N/mm2以上の高強度を有するとともに、優れたプレス成形性とヘム加工性有する。これに対し、前記従来の6000系Al合金板は、ヘム加工性が顕著に劣り、両者はヘム加工性に顕著な相違がある。したがって、単に6000系Al合金板の晶出物の平均粒径を小さくするだけではヘム加工性の向上に多く寄与せず、例え晶出物の平均粒径がそれなりに大きくても、それが間隔を開けて分散している (まばらに存在する) ならば、ヘム加工性の優れたAl合金板が得られることが裏付けられる。
【0054】
なお、この他の晶出物や析出物についても説明する。他の晶出物や析出物として代表的なものは、例えば、Si単体の析出物、Cuが多く含有された場合のAl7Cu2Fe、更には、CuやMgのAlとの化合物相の晶出物Al2Cu2Mg、Al2Cu2などである。
【0055】
Si単体の析出物は、特に粒界上に析出および存在すると、材料破壊の起点となり、ヘム加工性を著しく低下させる。したがって、Si単体の析出物は粒界上に実質的に存在しないか、本発明Al合金板の諸特性を阻害しない範囲で存在することが好ましい。しかし、後述する好ましい組成および製造方法の範囲で製造した場合には、Si単体の析出物は、特性に悪影響を与えるまでには粒界上に析出してこない。
【0056】
また、他のAl7Cu2Fe、或いはAl2Cu2Mg、Al2Cu2等の晶出物についても、粒界上に存在すると、材料破壊の起点となり、ヘム加工性を著しく低下させる。したがって、これらの量を低減することが好ましい。しかし、これら晶出物は、前記Al-Fe 系晶出物の量に比して絶対量が少なく、しかも、Al-Fe 系晶出物を前記のように形態制御してやれば、これに伴い、必然的に量がヘム加工性に影響しない範囲まで低減できる。したがって、本発明では、前記Al-Fe 系やMg2Si 晶出物以外の晶出物については、特に規定しない。
【0057】
(本発明Al合金の化学成分組成) 次に、本発明Al合金における、化学成分組成について説明する。本発明のAl合金は、自動車、船舶などの輸送機材や構造材あるいは部品用としての強度、伸びなどの機械的特性や、耐蝕性や応力腐食割れ性、あるいは合金量が少ないリサイクル性などの特性を満足する必要がある。この内、特に自動車のパネル材としては、基本的にプレス成形されるAl合金板の引張強さが270N/mm2以上、耐力 (σ0.2)が140N/mm2以下であり、塗装焼き付け後の耐力が160N/mm2以上、好ましくは180N/mm2以上であることが好ましい。
【0058】
したがって、本発明Al合金の化学成分組成は、前記諸特性を満足するために、Al-Mg-Si系の6000系Al合金の成分規格 (6101、6003、6151、6061、6N01、6063など) に相当するものとする。しかし、6000系Al合金の各成分規格通りにならずとも、下記の各元素の含有量の規定に沿って、更なる特性の向上や他の特性を付加するための、適宜成分組成の変更は許容される。この点、上記元素の成分範囲の変更や、より具体的な用途および要求特性に応じて、例えばNi、Sc、Ag、Snなどの下記に記載の無い他の元素を適宜含むことは許容される。また、H2やO2などのガス成分や溶解原料スクラップなどから必然的に混入される他の不純物も、品質や特性を阻害しない範囲で許容される。
【0059】
但し、水素含有量が0.5cc/100g Al を越えて多くなると、製造工程中で、Al合金板にポロシティーやブリスターおよびふくれが発生し、プレス成形性やヘム加工性を含めてAl合金板の成形性などの諸特性を低下させる。したがって、水素含有量は、好ましくは0.5cc/100g Al 以下とする。
【0060】
(本発明Al合金の元素量) 次に、前記特性を満足する本発明Al-Mg-Si系Al合金板の各元素の含有量について、臨界的意義や好ましい範囲について説明する。
【0061】
Mg:0.2〜1.6%。Mgは人工時効 (成形、塗装後の焼付硬化処理など) により、SiとともにMg2 Siとして析出して、また、Cu含有組成では更にCu、Alと化合物相を形成して、最終製品使用時の高強度 (耐力) を付与するために必須の元素である。Mgの0.2%未満の含有では加工硬化量が低下し、人工時効でもσ0.2 で160N/mm2以上の高い強度が得られない。一方、1.6%を越えて含有されると、強度 (耐力) が高くなりすぎ、成形性を阻害する。したがって、Mgの含有量は0.2 〜1.6%の範囲とする。
【0062】
Si:0.2〜1.8%。SiもMgとともに、人工時効処理により、Mg2 Siとして析出して、最終製品使用時の高強度 (耐力) を付与するために必須の元素である。Siの0.2%未満の含有では人工時効で十分な強度が得られず、σ0.2 で160N/mm2以上の高い強度が得られない。一方、1.8%を越えて含有されると、鋳造時および焼き入れ時に粗大な単体Si粒子として析出して、成形性および靱性を低下させる。また、Al-Fe 系およびMg2 Si晶出物が粗大化しやすく、該晶出物の平均径と晶出物間の平均間隔を規定以下にすることが困難となる。この結果、特に、曲げ中心半径(R) と板厚(t) との比(R/t) が3.0 以下のヘム加工時の割れ性を低下させる。また、靱性や伸びが低くなるなど、成形性も阻害する。したがって、Siの含有量は0.2 〜1.8%の範囲とする。
【0063】
Fe:0.30%以下。Al合金中に不純物として必然的に含まれるFeは、本発明で問題とする粗大なAl-Fe 系晶出物を生成しやすい。これら晶出物が粗大化すると、前記した通り、ヘム加工性やプレス成形性などを劣化させる。通常、不純物としてのFeの含有量は0.15% 〜0.3%程度である。しかし、Feの含有量が特に0.30% 、より厳しくは0.15% を越えると、Al-Fe 系晶出物が粗大化しやすくなり、該晶出物の平均径と晶出物間の平均間隔を規定以下にすることが困難となる。したがって、Feの含有量は低いほど好ましく、0.30% 以下、より好ましくは0.15% 以下のできるだけ少ない量に規制する。
【0064】
Mn:0.01 〜0.30% 。MnはAl-Mn 系分散粒子を生成させるために必要である。本発明では、前記した通り、溶体化処理時の再結晶粒径の粗大化を防止するために、Al-Mn 系分散粒子を組織中に微細分散させ、再結晶粒の粗大化 (粒成長) を抑制するピン止め効果を発揮させる。また、Al-Mn 系分散粒子を組織中に微細分散させることにより、材料の局部伸びを向上させる。このためには、Al-Mn 系分散粒子の平均径が0.02〜0.8 μm であるとともに、単位体積当たりの個数が1 個/ μm3以上であることが必要である。そして、このようにAl-Mn 系分散粒子を形態制御するためには、Mnを0.01〜0.30% 、好ましくは0.01〜0.15% の低いレベルの範囲での含有が必要である。Mnの含有量が0.01% 未満では、Al-Mn 系分散粒子の絶対数が不足して、前記ピン止め効果が不足して再結晶粒の粗大化を抑制する効果や材料の局部伸びを向上させる効果が無くなる。また、0.30% 、より厳しくは0.15% を越えて含有されると、溶解、鋳造時に粗大な金属間化合物を生成しやすく、成形時の破壊の起点となり、却って成形性を低下させる原因となる。
【0065】
Cr:0.01 〜0.2%、Zr:0.01 〜0.2%、V:0.01〜 0.15%の一種または二種以上。これらの元素は、Mnと同様に分散粒子を形成させ、再結晶粒の微細化やヘム加工性向上のために選択的に含有させる元素である。これらの元素は、均質化熱処理時およびその後の熱間圧延などの熱間加工時に、Al-Cr 系としてAl12Mg2Cr 、Al-Zr 系としてAl3Zr 、Al-V系としてAlV などの分散粒子 (分散相) を生成する。そしてこれら生成分散粒子は、前記Mnと同様に再結晶後の粒界移動を妨げるピン止め効果があるため、微細な再結晶粒を得ることができる。これらの元素の下限量が前記数値未満では各々この効果を発揮することができない。しかし過剰な含有は溶解、鋳造時に粗大な金属間化合物を生成しやすく、成形時の破壊の起点となり、却ってヘム加工性などの成形性を低下させる原因となる。また、Zrの過剰な含有は再結晶組織を圧延方向に針長状させ、特定方向の破壊靱性および疲労特性更には成形性を劣化させる。このため、これらの元素の含有量の上限は各々、Cr:0.2% 、Zr:0.2% 、V:0.15% 以下とする。
【0066】
Cu:0.1〜1.5%、Zn:0.005〜1.0%の一種または二種。Cu、Znは、ともに化合物相を形成して析出し、強度を高めるために選択的に含有させる元素である。この内、Cuは組織の強度の向上に寄与する他、時効処理に際して、析出物を微細に均一分散させ、最終製品の人工時効硬化を著しく促進する効果を有する。また、プレス成形性を向上させる効果も有する。Cuの含有量が0.1%未満では、これらの効果が無く、1.5%を越えると効果が飽和する。また、Cuの含有量が1.5%を越えると、耐糸さび性などの耐蝕性および溶接性が顕著に低下する。したがって、Cuの含有量は0.1 〜1.5%とする。
【0067】
また、Znは人工時効時において、MgZn2 を微細かつ高密度に析出させ高い強度を実現させる。また、室温時効を抑制し、しかし、Znの0.005%未満の含有では人工時効で十分な強度が得られず、一方、1.0%を越えて含有されると、耐蝕性が顕著に低下する。したがって、Znの含有量は0.005 〜1.0%の範囲とすることが好ましい。
【0068】
Ti:0.001〜0.1%、B:1 〜300ppmの一種または二種。Ti、B は鋳塊の結晶粒を微細化し、プレス成形性を向上させる元素であり、選択的に含有させる。この内、Tiは、0.001%未満の含有では、この効果が得られず、一方、Tiを0.1%を越えて含有すると、粗大な晶出物を形成し、成形性を低下させる。したがって、Tiの含有量は0.001 〜0.1%の範囲とすることが好ましい。
【0069】
また、B は1ppm未満の含有では、この効果が得られず、一方、300ppmを越えて含有されると、やはり粗大な晶出物を形成し、成形性を低下させる。したがって、B の含有量は1 〜300ppmの範囲とすることが好ましい。
【0070】
Be:0.1〜100ppm。Beは空気中におけるAl溶湯の再酸化を防止するために、選択的に含有させる元素である。しかし、0.1ppm未満の含有では、この効果が得られず、一方、100ppmを越えて含有されると、材料硬度が増大し、成形性を低下させる。したがって、Beの含有量は0.1 〜100ppmの範囲とすることが好ましい。
【0071】
次に、本発明におけるAl-Mg-Si系のAl合金板の製造方法について説明する。本発明におけるAl-Mg-Si系のAl合金板は基本的に常法により製造可能であるが、特性向上のための好ましい条件もある。まず、本発明Al合金成分規格範囲内に溶解調整されたAl合金溶湯を、例えば、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。次いで、このAl合金鋳塊に均質化熱処理を施し、熱間圧延後、必要に応じて中間焼鈍 (荒焼鈍) した後、一回或いは複数のパスにて冷間圧延し、最終的に容体化処理および焼入れを行い、所望の板厚の製品板とする。
【0072】
製品板は必要により、アルカリ、酸などの洗浄乃至清浄化処理や、クロメートやZnめっきなどの表面処理が行われる。なお、低コスト化のために、前記中間焼鈍を省略するあるいは冷間圧延を省略することも可能である。次に、製品板の特性向上のための好ましい条件について説明する。
【0073】
▲1▼溶解鋳造については、Al合金鋳造材の結晶粒の微細化のためには鋳塊の冷却速度が大きい方が好ましいが、前記晶出物間の平均間隔の制御を行うためには、冷却速度が大きい方がいいとは限らない。即ち、鋳塊の冷却速度が大き過ぎると微細な晶出物が多数析出して密度が大きくなり、前記晶出物間の平均間隔は小さくなり、本発明の規定を外れる可能性がある。したがって、鋳塊の冷却速度は、0.05℃/sec以上の冷却速度から、Al合金組成 (晶出物の析出量) 毎に、および前記結晶粒の微細化と前記晶出物間の平均間隔との関係から厳密に選択する必要がある。
【0074】
▲2▼次いで、このAl合金鋳塊 (鋳造材) を450 〜540 ℃で均質化熱処理するが、500 ℃以上の温度で均質化熱処理することが好ましい。この種Al合金鋳造材の通常の均質化熱処理温度は、480 〜510 ℃程度であるが、本発明では、前記した通り、Mn、またはこれに加えて、Cr、Zr、V の一種または二種以上を含有させて、均質化熱処理時に、Al-Mn 系分散粒子、Al12Mg2Cr 、Al3Zr 、AlV 系などの分散粒子 (分散相) を生成させる。このためには、高温での均質化熱処理が好ましく、均質化熱処理温度を510 ℃以上、溶解温度以下の温度とすることが好ましい。なお、Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物晶出物を出来るだけ固溶し、晶出した際の平均間隔を大きくするためにも均質化熱処理温度を510 ℃以上の温度とすることが好ましい。
【0075】
▲3▼均質化熱処理の後の熱間圧延の条件は、通常の通り、圧延開始温度を均質化熱処理温度以下とするとともに、200 ℃以上で圧延を終了する。
【0076】
但し、Al合金板の低コスト化のためには、熱間圧延後の中間焼鈍を省略して冷間圧延する、また場合によっては中間焼鈍および冷間圧延を省略して、Al合金熱延板を製品板とする場合もある。したがって、このような場合にはプレス成形加工時のリジングマーク乃至曲げ加工時の割れを防止するために、Al合金熱延 (まま) 板の組織を粒径50μm 以下の等軸状再結晶粒とすることが望ましい。このためには、複数のロールスタンドからなる熱間仕上げ圧延の少なくとも後段のパス乃至ロールスタンドにおける圧下率を50% 以上の高圧下として、かつ熱間圧延終了温度を再結晶温度以上 (再結晶温度は概ね300 〜450 ℃の範囲となる) とすることが好ましい。更に、熱間圧延開始温度は熱間圧延終了温度からして、450 〜540 ℃とすることが好ましい。
【0077】
また、これの熱間圧延条件によって、等軸状再結晶粒のキューブ方位の集積度が改善され、マクロ結晶粒の粒径も1.5mm 以下に微細化できるので、プレス成形の際のリジングマークを防止することも可能となる。
【0078】
▲4▼中間焼鈍: Al合金板の組織は、プレス成形性向上のためには、圧延方向に伸長する繊維状の加工組織乃至圧延組織による異方性を排除し、粒径50μm 以下の微細な等軸状再結晶粒とすることが好ましい。前記加工組織乃至圧延組織が多いほどAl合金板の成形性が低下するので、Al合金板の成形性の向上は、どれだけ微細な等軸状再結晶粒とすることができるか否かに係わっている。但し、前記した通り、Al合金板の低コスト化のために、熱間圧延後の中間焼鈍を省略する場合もある。
【0079】
通常の熱間圧延では、Al合金熱延 (まま) 板の組織は、前記加工組織乃至圧延組織となっており、これを熱間圧延後の中間焼鈍によって、等軸状再結晶粒とする。また、熱間圧延の開始部に当たるコイルの先端部のミクロ組織と熱間圧延の終了部に当たるコイルの後端部とのミクロ組織とは、熱間圧延が安定して行われる定常部位 (コイルの中央部) のミクロ組織と異なるなど、製品Al板の特性が板乃至コイル内で異なりやすいため、これを中間焼鈍することによって、均質化することができる。また、粒径50μm 以下の微細な等軸状再結晶粒とすることによって、前記した通り、プレス成形の際のリジングマークを防止することも可能となる。
【0080】
このための好ましい中間焼鈍条件は、焼鈍温度までを30℃/ 分〜2000℃/ 秒以上の加熱速度で急速加熱し、500 〜580 ℃の焼鈍温度で10秒〜10分保持し、更に保持温度から50℃までを30℃/ 分以上で急冷することが好ましい。
【0081】
▲5▼冷間圧延では、所望の製品板乃至製品コイル厚みとするとともに、ミクロ結晶粒 (通常の結晶粒) を45μm 以下とし、プレス成形加工性を向上させるために、冷間圧延率を50% 以上とすることが好ましい。この冷間圧延率の圧延を、一回或いは複数のパスにて冷間圧延し、最終的に容体化処理および焼入れを行い、所望の板厚の製品板とする。
【0082】
▲6▼最終溶体化処理: 溶体化および焼入れ処理は、処理後のミクロ組織における再結晶粒の平均結晶粒径が45μm 以下とし、Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物の平均径を5 μm 以下とするとともに該晶出物間の平均間隔を20μm 以上とし、かつAl-Mn 系などの分散粒子の平均径を0.02〜0.8 μm 以下とするとともに単位体積当たりの個数を1 個/ μm3以上とする制御を支配する。したがって、溶体化処理は、CAL などの連続焼鈍炉を用い、溶体化処理温度までの加熱速度を10℃/ 分、好ましくは30℃/ 分以上で急速加熱し、530 〜580 ℃で数秒〜10分保持後、保持温度から30℃までを30℃/ 分以上の冷却速度で急冷することが好ましい。しかし、この好ましい条件範囲内であっても、特にCuやSiの量などの化学成分組成やそれまでの製造履歴に応じて晶出物生成状況が変化する可能性があり、前記晶出物条件となる溶体化処理条件を、厳密に決定すべきである。
【0083】
また、溶体化処理時の焼入を室温まで行わずに、特開平1-111851号に示されているように、焼入終了温度を60〜130 ℃の比較的高温に制御し、この温度で0.5 〜48時間保持するようなステップ冷却方法をとっても良い。更に、特公平5-7460号に示されているように、溶体化焼入後、72時間以内に40〜120 ℃の温度で8 〜36時間の最終熱処理を行っても良い。これらの処理によって、塗装焼付時の焼付硬化性、即ち塗装焼付後の耐力を高めることができる。
【0084】
【実施例】
次に、本発明方法の実施例を説明する。表1 に示すNo.1〜9 までの、本発明範囲内の化学成分組成を有するAl-Mg-Si系Al合金鋳塊(50mm 厚み) を、DC鋳造法により溶製後、535 ℃×8 時間の範囲で均質化熱処理を施した。そして、圧延開始温度を500 ℃とするとともに、300 ℃で圧延を終了し、厚さ2.5mm まで熱間圧延した。次に500 ℃で中間焼鈍し、厚さ1.0mm まで冷間圧延率が60% の冷間圧延を施した。その後、530 ℃の範囲で溶体化処理した後室温まで水焼入 (焼入速度600 ℃/ 分) したAl合金板を供試材とし、表2 に示す発明例No.1〜9 として作製した。なお、発明例No.9のみは、他の製造条件は同じだが、溶体化処理後の焼入を70℃で停止し、この温度で48時間保持し、その後放冷却する処理を行った。
【0085】
前記溶体化焼入後室温で90日間放置後の供試材の引張強さをJIS Z 2241法にて引張試験を行った結果、耐力 (σ0.2)は120N/mm2以上であった (なお、引張方向はLT= 圧延方向に対し90°方向) 。更に、塗装焼き付け後に相当するベーク後の耐力は、2%ストレッチ後170 ℃×20分の加熱を行った後の耐力 (σ0.2)も測定した。これらの結果を表2 に示す。
【0086】
なお、比較のために、表1 のNo.10 、11に示す組成が本発明範囲を外れたAl合金を用い、表2 に示すように、Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物の平均径および/ または該晶出物間の平均間隔、あるいはAl-Mn 系分散粒子の平均径が規定を外れた比較例No.10 、11を製造条件は発明例と基本的に同じとして製作した。
【0087】
更に、組成は表1 のNo.12 の本発明範囲内の Al 合金とし、製造条件も発明例と同じ条件としたが、溶体化処理後の水焼入による焼入速度が200 ℃/ 分と発明例に比して遅いために晶出物が多くなり、従来技術並に晶出物間の平均間隔が小さくなった比較例No.12 を作製した。また、組成は表1 のNo.3 (発明例) と同じで、製造条件も発明例と同じ条件としたが、溶体化処理後の焼入が空冷 (焼入速度10℃/ 分) で焼入速度が遅いために晶出物が多くなり、従来技術並に晶出物間の平均間隔が小さくなった比較例No.13 を、他の条件は実施例と同様にして作製した。
【0088】
そして、前記供試材から各々試験片を採取し、前記した50倍の光学顕微鏡による測定条件で再結晶粒の平均結晶粒径 (μm)を求めた。また、前記した500 倍の倍率の走査型電子顕微鏡(SEM) による測定条件でAl-Fe 系およびMg2Si 晶出物の平均径 (μm)、該晶出物間の平均間隔 (μm)を求めた。更に、前記した5000倍の透過型電子顕微鏡(TEM) による測定条件でAl-Mn 系分散粒子の平均径と単位体積当たりの個数を求めた。これらの結果を表2 に示す。
【0089】
そして、Al合金板が長期間放置されて室温時効し、その後、自動車の前記アウターパネルとしてプレス成形されることを模擬して、前記溶体化焼入後室温で90日間放置後の供試材をブランク材として深絞り成形し、その際に割れを生じずに成形できた最大絞り深さ(LDHO ) を求めた。これらの結果も表2 に示す。なお、深絞り成形の条件は、肩R5.0mmで直径50.0mmφのパンチおよび肩R5.0mmで内径52.8mmφ (外径220mm φ) のダイスを用い、ダイス- シワ押さえ間の隙間をブランク材と同じ厚みのシムにより一定に保った条件で行った。
【0090】
更に、Al合金板が長期間放置されて室温時効し、その後、自動車の前記アウターパネルとして曲げ半径(R) と板厚(t) との比(R/t) が3.0 以下の曲げ加工 (フラットヘム加工) されることを模擬した曲げ試験を行った。即ち、前記溶体化焼入後室温で90日間放置後、5%のストレッチを行った後、曲げ試験を行った。曲げ試験条件は、JIS Z 2204に規定される3 号試験片を用い、JIS Z 2248に規定されるVブロック法による曲げ試験片を、更にJIS Z 2248に規定される押曲げ法により曲げ試験するものとした。試験後の試験片の曲げ部表面の割れの状況を5 倍の倍率のルーペで目視観察した。この結果、曲げ部表面に凹部状の割れも肌あれも発生しなかったものを○とし、曲げ部表面に凹部が発生しており、この凹部の最底部に新生面が観察されたものを割れが発生したとして×とした。なお、前記凹部の最底部に新生面が観察されないものは肌あれが発生したと評価される。これらの結果も表2 に示す。本発明で規定する前記曲げ試験方法は実際のヘム加工結果と良く対応するとともに、JIS Z 2248に規定された他の曲げ試験に比しても、厳しい試験法である。
【0091】
更に、これら深絞り成形した供試材をリン酸亜鉛処理後カチオン電着塗装を施した後、スプレー塗装により2 コート2 ベークの塗装皮膜を設けた。なお、2 コート2 ベークの塗装皮膜は、中塗り塗装として、30μm 厚さのポリエステルメラミン系塗装皮膜を設けて、140 ℃×20分の焼き付けを行い、更に上塗り塗装として、30μm 厚さのポリエステルメラミン系塗装皮膜を設けて、180 ℃×20分の焼き付けを行った。
【0092】
そして、これら発明例、比較例の塗装試験片に、全て同じ条件で、耐糸さび評価試験を行った。これらの評価結果も表2 に示す。耐糸さび評価試験は、塗装試験片の皮材側表面に一片が7cm のクロスカットを施した後、35℃の3%HCl 水溶液に2 分間浸漬した後、次いで40℃、85%RH の恒温恒湿の雰囲気に1500時間放置し、その後発生した糸さびの最大長さL(クロスカットより垂直方向の距離) を測定した。そして、比較のために、表1 、2 の比較例No.11 のAl合金試験片にリン酸塩処理およびED塗装皮膜、更に同じ中塗り、上塗り塗装を施し、この試験片に発生した糸さびの最大長さL を1 とし、これとの比較で、○:L≦0.5 、×:L≧1 と評価した。
【0093】
表2 から明らかな通り、Al合金板が、Mg:0.2〜1.6%、Si:0.2〜1.8%、Mn:0.01 〜0.15% を含むとともに、Feを0.15% 以下に規制した基本組成を有し、溶体化処理後のミクロ組織における再結晶粒の平均結晶粒径が45μm 以下であり、Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物の平均径が5 μm 以下であるとともに該晶出物間の平均間隔が20μm 以上であり、かつAl-Mn 系分散粒子の平均径が0.02〜0.8 μm であるとともに単位体積当たりの個数が1 個/ μm3以上である発明例No.1〜9 は、成形加工されるAl合金板の耐力 (σ0.2)が高くても、プレス (深絞り) 成形性およびヘム加工性に優れていることが分かる。
【0094】
また、これら発明例は塗装後の耐蝕性の点でも、耐糸さび性に顕著に優れていることが分かる。この理由は、後述する比較例に比して、発明例は晶出物間の間隔が大きく、このため、糸さびの発生自体或いは発生した糸さびの伝播が抑制されているものと推考される。
【0095】
これに対し、Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物の平均径および/ または該晶出物間の平均間隔、あるいは、Al-Mn 系分散粒子の平均径が規定を外れた比較例No.10 〜13は、発明例に比して、著しくプレス加工性およびヘム加工性に劣っていることが分かる。また、これら比較例は塗装後の耐蝕性の点でも、耐糸さび性に劣っていることが分かる。
【0096】
この比較例の中でも、比較例No.13 は、基本組成は本発明を満足するものの、製造方法、特に溶体化処理条件に問題があり (空冷で冷却速度遅い) 、Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物の平均間隔が小さくなっている。したがって、この事実から本発明晶出物および分散粒子の規定を満足するためには、Al合金の組成だけではなく、製造方法条件を厳密に選択する必要があることが裏付けられる。
【0097】
更に、特筆すべきは、比較例No.12 であり、比較例No.12 は、基本組成は本発明を満足し、また製造方法、特に溶体化処理後に、好ましい製造条件の範囲内で水焼入しているものの、晶出物の平均間隔が小さくなっている。これは、組成としてCuを比較的多く(0.60%) 含んでいるため、200 ℃/ 分と焼入速度が大きくても (空冷に比して) 、Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物の平均間隔が小さくなっている。このような現象は、Cuの他にSi量が比較的高い場合に起こりうる。したがって、これらの事実から、基本組成および製造条件が本発明範囲内であっても、晶出物乃至分散粒子の規定を満足できない場合があることが分かる。このため、本発明晶出物および分散粒子の規定を満足するためには、Al合金の組成の選択に応じて製造条件を厳密に選択していく必要があることが裏付けられる。
【0098】
以上の実施例から、自動車や車両などの輸送機用のパネル材として、プレス成形性およびヘム加工の両者を満足しうる、本発明の、特に、MnとFe量の特定の意義、溶体化処理後のミクロ組織における再結晶粒の平均結晶粒径特定の意義、更に、Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物およびAl-Mn 系分散粒子の特定の意義が裏付けられる。そして、これら本発明の晶出物や分散粒子の組織の特定が、Al合金の組成や製造条件とは独立して規定される必要性も裏付けられる。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、輸送機の軽量化のために、より高い引張強さと高い耐力とを有するとともに、優れた深絞り成形性とヘム加工性を有するAl合金板を提供可能にした点で、Al合金板の用途を大きく拡大するものであり、工業的な価値が大きい。
Claims (11)
- Mg:0.2〜1.6%(mass%、以下同じ) 、Si:0.2〜1.8%、Mn:0.01 〜0.30% を含むとともに、Feを0.30% 以下に規制し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金板であって、最終溶体化処理後のミクロ組織における再結晶粒の平均結晶粒径が45μm 以下であり、Al-Fe 系およびMg2Si 晶出物の平均径が5 μm 以下であるとともに該晶出物間の平均間隔が20μm 以上であり、かつ分散粒子の平均径が0.02〜0.8 μm であるとともに単位体積当たりの個数が1 個/ μm3以上であることを特徴とするプレス成形性およびヘム加工性に優れたアルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金が、Mn:0.01 〜0.15% を含むとともに、Feを0.15% 以下に規制した請求項1に記載のプレス成形性およびヘム加工性に優れたアルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金が、更に、Cr:0.01 〜0.2%、Zr:0.01 〜0.2%、V:0.01〜 0.15%の一種または二種以上を含み、Al-Mn 系、Al-Cr 系、Al-Zr 系、Al-V系の各々の分散粒子の平均径が0.02〜0.8 μm であるとともに、これら分散粒子の総和の単位体積当たりの個数が1 個/ μm3以上である請求項1または2に記載のプレス成形性およびヘム加工性に優れたアルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金が、更に、Zn:0.005〜1.0%、Cu:0.1 〜 1.5%の一種または二種を含む請求項1乃至3のいずれか1 項に記載のプレス成形性およびヘム加工性に優れたアルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金が、更に、Ti:0.001〜0.1%、B:1 〜300ppmの一種または二種の一種または二種を含む請求項1乃至4のいずれか1 項に記載のプレス成形性およびヘム加工性に優れたアルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金が、更に、Be:0.1〜100ppmを含む請求項4に記載のプレス成形性およびヘム加工性に優れたアルミニウム合金板。
- ヘム加工されるアルミニウム合金板の耐力 (σ0.2)が120N/mm2以上である請求項1乃至6のいずれか1 項に記載のプレス成形性およびヘム加工性に優れたアルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金板の塗装焼き付け後の耐力が150N/mm2以上である請求項1乃至7のいずれか1 項に記載のプレス成形性およびヘム加工性に優れたアルミニウム合金板。
- 前記ヘム加工性が、曲げ中心半径(R) と板厚(t) との比(R/t) が3.0 以下のヘム加工時に割れない加工性である請求項1乃至8のいずれか1 項に記載のプレス成形性およびヘム加工性に優れたアルミニウム合金板。
- 前記ヘム加工性の評価をJIS Z 2204に規定される3 号試験片を用い、JIS Z 2248に規定されるVブロック法による曲げ試験片を、更にJIS Z 2248に規定される押曲げ法により曲げ試験して行う請求項9に記載のプレス成形性およびヘム加工性に優れたアルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金板が、輸送機用である請求項1乃至10のいずれか1 項に記載のプレス成形性およびヘム加工性に優れたアルミニウム合金板。
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