JP3226259B2 - 成形性、焼き付け硬化性及び耐食性に優れるアルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents

成形性、焼き付け硬化性及び耐食性に優れるアルミニウム合金板及びその製造方法

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JP3226259B2
JP3226259B2 JP23360296A JP23360296A JP3226259B2 JP 3226259 B2 JP3226259 B2 JP 3226259B2 JP 23360296 A JP23360296 A JP 23360296A JP 23360296 A JP23360296 A JP 23360296A JP 3226259 B2 JP3226259 B2 JP 3226259B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車及び航空機
等の輸送機器及び一般機械部品等の用途での使用に適す
るアルミニウム合金板に関するものであり、特に自動車
等の外板等に供せられる成形性、焼き付け硬化性及び耐
食性に優れるアルミニウム合金板及びその製造方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、自動車を初めとする輸送機器
及び一般機械部品等の用途に供せられるAl−Mg−S
i系合金板は、T4あるいはT3に調質した後、プレス
等の種々の成形加工法で製品形状に加工した後、強度を
得るため人工時効処理が施されている。航空機材におい
ては、MIL規格に従って十分な人工時効が施される
が、自動車材のパネル材を初め一般機械部品等に使用さ
れる薄板材においては、主として焼付け塗装時の短時間
加熱処理で人工時効処理に代用され、このため、このよ
うな短時間の加熱処理で十分な強度が得られるように、
高い焼き付け硬化性が求められる。現在、このような用
途に使用されるAl−Mg−Si系合金板としては、例
えば6009合金、6010合金、6111合金が開発
され実用に供されている。また、上記に示したような用
途に用いられるAl−Mg−Si系合金の溶体化処理
は、生産性を高くするため、連続焼鈍炉が一般的に用い
られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、製品の意匠性の
向上要求あるいは成形工程削減によるコスト低減要求等
より、さらに成形性に優れるAl−Mg−Si系合金板
の要望が高まってきている。しかしながら、上記で示し
た実用6000系合金では、製品形状によっては、成形
加工時に加工割れ等が発生してしまうことがある。この
ため、製品形状をより成形しやすいものに変更したり、
1回当りの成形加工量を減らし成形工程数を増やすこと
などして使用されているのが現状であり、さらに成形性
に優れるAl−Mg−Si系合金板が求められている。
【0004】本発明が解決しようとする課題は、アルミ
ニウム合金の材料特性として、特に高い成形性が要求さ
れる部材部品として例えば自動車を初めとする輸送機器
及び一般機械部品等において、成形性さらには焼き付け
硬化性及び耐食性を向上させたAl−Mg−Si系合金
板を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る成形性、焼
き付け硬化性及び耐食性に優れるアルミニウム合金板
は、Mg:0.35〜1.6%、Si:0.35〜1.
6%(但し、Si/Mg≧0.65)を含有し、さらに
Cu:0.8%以下、Ti:0.1%以下、Fe:0.
3%以下、Cr:0.3%以下、Mn:0.8%以下、
Zr:0.15%以下のうちから少なくとも1種類以上
を含有し、残部がAl及び不可避不純物(各0.05%
以下)からなるアルミニウム合金であって、結晶粒界上
のSi析出物のサイズが1.0μm以下で、析出物の間
隔が5μm以上であることを特徴とする。
【0006】本発明に係る製造方法は、上記成形性、焼
き付け硬化性及び耐食性に優れるアルミニウム合金板を
得るための方法であり、上記成分組成を有するアルミニ
ウム合金を溶解鋳造後、均質化熱処理し、次いで熱間圧
延後、冷間圧延を施して所望の板厚とした後、加熱速度
200℃/分以上で510〜590℃の温度に加熱し、
この温度域に10秒以上保持した後、冷却速度100℃
/秒以上(溶体化処理温度から290℃までの平均冷却
速度)で50〜120℃の温度まで急速冷却し、そのま
ま50〜120℃の温度域で1〜48hr保持すること
を特徴とする。また、本発明に係る製造方法では、熱間
圧延工程と冷間圧延工程の間に溶体化処理として、加熱
速度200℃/分以上で510〜590℃の温度に加熱
し、この温度域に10秒以上保持した後、冷却速度10
0℃/秒以上(溶体化処理温度から290℃までの平均
冷却速度)で290℃以下まで急速冷却する工程を有す
ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明者らは、鋭意研究を重ねた
結果、Al−Mg−Si系合金板の製造工程において、
本来析出硬化型の合金である6000系アルミニウム合
金に代表されるAl−Mg−Si系合金においては、主
要添加元素であるMg、Siが約500℃以上に加熱す
ることにより十分にマトリックス中に溶体化するが、こ
のような状態から不十分な冷却速度で冷却を行うと、特
に400〜290℃の温度領域で、粗大なMg2Si金
属間化合物や単体Siの析出が生じ、特に単体Siは結
晶粒界上に顕著に析出し、このような粗大な単体Si
は、成形加工時の応力集中源となり、粒界破壊を生じさ
せ、破壊の原因になることを見い出した。そして、加熱
と急速冷却を組み合せ、結晶粒界上のSi析出物のサイ
ズが1.0μm以下、析出物の間隔が5μm以上とする
ことで、優れた成形性が得られるとともに、さらには焼
き付け硬化性及び耐食性を高めたAl−Mg−Si系合
金板を得られることを知見し、本発明を完成したもので
ある。
【0008】ただ、上記Al−Mg−Si系合金板を上
記方法に従って溶体化処理及び焼入れを行い、結晶粒界
上のSi析出物のサイズが1.0μm以下、析出物の間
隔が5μm以上のアルミニウム合金板を得たとしても、
その後の管理状態(人工時効温度以下)によっては、た
とえ結晶粒界上の単体Siの析出状態が大きく変化しな
くても、時効が進みすぎ、強度が高くなるために、成形
性が低下してしまうことがある。そこで、強度に寄与す
るGPゾーン等の析出物を含め、結晶粒内及び粒界上を
合わせた平均的な情報を示すものとして、導電率を用
い、これで時効析出状態を管理するのが好ましく、これ
を40〜45%と規定することで、製造当初の高い成形
性、焼き付け硬化性さらには高い耐食性を維持すること
ができる。なかでも、好ましい導電率の範囲は40〜4
3%である。
【0009】なお、溶体化処理後の冷却途中に生じる化
合物と成形性との関係については、例えば特開平7−2
28956号公報、特開平6−17208号公報などの
本文中に記述されているが、本発明者らは、これらの条
件では、単体Siの粒界上への析出を防止することは不
十分であることを見い出した。つまり、これらの溶体化
処理及び焼入れ条件では、粒界上に粗大な単体Siが密
に析出してしまい、成形時に粒界破断を生じ、高い成形
性を得ることができない。また、粒界上に生じた粗大な
単体Siの分、焼付け塗装硬化も含め人工時効で到達す
る強度も当然のことながら低くなる。また、特開昭64
−65243号公報においても、溶体化処理後の冷却速
度と成形性との関係について実施例で記述しているが、
冷却速度が遅く、高い成形性が得られていない。
【0010】さらに、軽金属学会第90回春期大会講演
概要(1996)第285〜286ページ「Al−Mg
−Si系合金における粒界析出物と曲げ特性」には、S
i相等による粒界被覆率が大きい(つまり粒界へのSi
析出物が多い)と、曲げ特性が劣化することが記述され
ている。しかし、粒界上のSi析出物の析出形態と曲げ
特性の関係については開示がなく、また、導電率と成形
性の関係についても開示されていない。
【0011】次に、本発明における化学成分の限定理由
について説明する。 Mg:MgはSiとともに強度を付与する元素である。
Mg含有量が0.35%未満では、塗装後加熱処理を施
した後に十分な強度が得られず、一方、1.6%を越え
ると伸びが低くなり、成形性が低下する。従って、Mg
含有量は0.35〜1.6%の範囲とする。 Si:SiはMgとともに強度を付与する元素である
が、Si含有量が0.35%未満では、塗装後加熱処理
を施した後に十分な強度が得られず、一方、1.6%を
越えると伸びが低くなり、成形性が低下する。従って、
Si含有量は0.35〜1.6%の範囲とする。なお、
高い焼き付き硬化性を得るため、MgとSiとの含有量
の割合は、Si/Mg≧0.65とする。
【0012】Cu:Cuの添加は人工時効時にMg2
iを微細に析出させ、高い強度が実現する。但し、0.
8%を越えると耐食性が顕著に低下するため、含有量は
0.8%以下とする。 Fe:FeはAl7Cu2Fe、Al12(Fe,Mn)8
Cu2、(Fe,Mn)Al6、Al2Cu2Mg、Al2
Cu2、Mg2Si等の晶出物を生成する。これらの晶出
物は破壊靱性及び疲労特性に対して有害である。Fe含
有量が0.3%を越えると顕著に破壊靱性及び疲労特性
は低下するため、Fe含有量は0.3%以下とする。
【0013】Mn,Cr,Zr:Mn、Cr、Zrは均
質化熱処理時及びその後の熱間圧延時にAl20Cu2
8、Al12Mg2Cr、Al8Zr等の分散粒子を生成
する。分散粒子は再結晶後の粒界移動を妨げる効果があ
るため、微細結晶粒の作製には必要である。しかしなが
ら、過剰な添加は溶解鋳造時に粗大な不溶性金属間化合
物を生成しやすく、成形不良原因となる。また、特にZ
rの過剰添加はミクロ組織をファイバー状にしやすく特
定方向の破壊靱性及び疲労特性、さらには成形性を劣化
させる。このため、Mn、Cr、Zrそれぞれの添加量
は0.80%、0.30%、0.15%以下とする。
【0014】次に、本発明の製造条件について説明す
る。上記成分を有するAl−Mg−Si系合金板は、常
法に則り溶解鋳造により鋳塊にした後、均質化処理、熱
間圧延後、必要に応じて焼鈍あるいは溶体化処理及び焼
入れした後、冷間圧延を行い、次いで溶体化処理及び5
0〜120℃の温度領域まで焼入れを順次行うことによ
り提供できる。冷間圧延を行った後の溶体化処理及び焼
入れ条件は、加熱速度200℃/分以上で510〜59
0℃の温度に加熱し、この温度域に10秒以上保持した
後、冷却速度100℃/秒以上(溶体化処理温度から2
90℃までの平均冷却速度)で50〜120℃の温度ま
で急速冷却した後、そのまま50〜120℃の温度域で
1〜48hr保持することとしている。
【0015】上記組成のAl−Mg−Si合金板の成形
加工時の粒界破断を防止するには、先に示したように、
結晶粒界上のSi析出物のサイズが1.0μm以下で、
析出物の間隔が5μm以上が必要であるが、溶体化処理
温度510℃未満ではSi単体析出物のマトリックス中
への再固溶は不十分であり、また、600℃を越えると
粒界上での局部溶解が生じ、成形性を劣化させる。この
ため、溶体化処理温度領域は510〜590℃とする。
また、この温度領域では、10秒以上の保持で十分にS
i単体析出物はマトリックス中に再固溶する。なお、好
ましい溶体化処理温度は530〜560℃である。ま
た、Si析出物のサイズは0.5μm以下がより好まし
い。溶体化処理温度までの加熱速度は、加熱速度200
℃/分以上とする。これは、加熱速度が遅い場合、加熱
途中に粗大な単体SiあるいはMg2Siが析出してし
まい、再固溶させるには溶体化処理時間を長時間化させ
る必要が生じ、生産性を極度に低下させるためである。
また、結晶粒を微細に再結晶させるためにも、溶体化処
理温度までの加熱速度は200℃/分以上とする。
【0016】また、溶体化処理後の冷却途中に生じるS
i単体の粒界上への析出を極力防止し、結晶粒界上のS
i析出物のサイズが1.0μm以下で、析出物の間隔が
5μm以上とするには、冷却速度を100℃/秒以上
(溶体化処理温度から290℃までの平均冷却速度)と
する必要がある。ここで、290℃までの冷却速度を特
に規定したのは、Si及びMg2Siの固溶温度以下2
90℃以上の温度域でSiの粒界への析出が顕著になる
ためである。さらに、高い焼き付け硬化性を得るため、
特開昭64−65243号公報に示すように、溶体化処
理後の冷却は50〜120℃の温度域まで急冷却した
後、いったん室温まで冷却することなく、そのまま50
〜120℃の温度域で1〜48hr保持する。
【0017】本発明方法では、熱間圧延工程と冷間圧延
工程との間に、必要に応じて溶体化処理を行うことがで
きる。これは、冷間圧延工程後の最終溶体化処理効果を
高め、さらに成形性を向上させるために行うものであ
る。溶体化処理条件は、最終溶体化処理条件と同様に加
熱速度200℃/分以上で510〜590℃の温度に加
熱し、この温度域に10秒以上保持した後、冷却速度1
00℃/秒以上(溶体化温度から290℃までの平均冷
却速度)で290℃以下までの急速冷却するものであ
る。
【0018】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳述す
る。なお、実施例中にて用いた材料測定法を下記に示
す。粒界析出物の形態、導電率、素材の引張特性及びエ
リクセン値の材料特性は最終溶体化処理・焼き入れした
後、20〜30℃で4カ月放置後、測定した。低温加熱
(焼き付け硬化相当)も20〜30℃で4カ月放置した
試料で行った。 (粒界析出物の測定方法)Si単体析出物は、板表面か
ら板厚1/10以内の部位(L−LT面)をTEM(成
分分析装置及び画像処理装置付属、×5000倍)を用
いて20視野観察した。Si単体析出物のサイズは各粒
子の最大長とし、20視野(視野面積:160μm2×
20)中の最大サイズをその試料のSi単体析出物のサ
イズとした。また、Si単体析出物の間隔は20視野中
の平均値とした。
【0019】(導電率の測定方法)導電率は板表面を2
0℃に保持した状態でJIS−H0505に準拠し、2
0点測定してそれらの平均値をその試料の導電率とし
た。 (引張特性及びエリクセン値の測定方法)引張特性は、
JIS−Z2241に準拠し、常温大気中でJIS5号
試験片を用いて、LT方向(圧延方向に対して90°方
向)に引張速度5mm/分にて測定した。エリクセン値
はJISB法で測定した。
【0020】(耐食性試験;糸錆性の評価方法)糸錆性
の評価に用いる試料は、脱脂→水洗→燐酸亜鉛処理→水
洗→乾燥→カチオン電着(塗膜20μm、150℃×2
0分加熱)→中塗り(塗膜30μm、140℃×25分
加熱)→上塗り(塗膜35μm、150℃×25分加
熱)の順で作製した。糸錆試験は、塗膜にナイフで×印
状に人工疵を入れた後、塩水噴霧(JIS−Z2371
に準じる。24hr暴露)→湿潤(温度45℃、湿度9
5%、20日暴露)した後、糸錆性を評価した。評価基
準は下記のとおりである。糸錆の長さ1.0mm以下が
◎、1.0〜2.0mmが○、2.1〜4.0mmが
△、4.1〜8.0mmが×、8.1mm以上が××。
【0021】(耐食性試験;粒界腐食感受性の評価方
法)粒界腐食感受性の評価は、低温加熱処理後の試料を
50℃の10%苛性ソーダ溶液中で1分間アルカリ洗浄
後、硝酸中で中和、水洗後アノード電解した後、試料断
面を研磨し、光学顕微鏡(×200)で粒界腐食の有無
を観察した。評価基準は下記のとおりである。結晶粒界
中の粒界腐食の割合が5%未満が◎ 5以上10%未満が○、10%以上30%未満が△、3
0%以上が×。
【0022】(実施例1)表1に示す化学成分を有する
アルミニウム合金を400mm厚の鋳塊に溶解鋳造し、
面削後(片面10mm、両面で20mm)、加熱速度4
0℃/hr(常温から540℃の平均加熱速度)で54
0℃に加熱後、4hr保持し均熱処理を行った。その
後、熱間圧延及び冷間圧延を行い、1mm厚の板とし
た。この板に溶体化処理及び焼入れ処理として、530
℃に加熱速度250℃/分で加熱後、20秒間保持し、
60℃の温度に冷却速度200℃/秒で焼入れし、その
まま60℃の温度で24hr保持した。その後、20〜
30℃で4カ月放置した後、材料特性を測定した。ま
た、20〜30℃で4カ月放置後、2%の引張変形を付
加し、170℃×20分間の加熱処理(低温加熱処理)
後の材料特性を測定した。素材の材料特性(20〜30
℃に4カ月放置後)並びに低温加熱処理後の耐力(焼き
付け硬化性)を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】表1より分かるように、本発明例は比較例
に比べて素材の成形性は著しく高く、また、焼き付け硬
化性も高く優れた材料であることが分かる。一方、導電
率が高い比較例1は素材の成形性は低く、焼き付け硬化
性も低く、Mg量及びSi量が多い比較例2は成形性が
低いことが分かる。
【0025】(実施例2)Mg0.5%、Si1.3
%、Mn0.05%、Fe0.16%、Ti0.06%
を含み、残部不純物とアルミニウムとからなるアルミニ
ウム合金を溶解鋳造し460mm厚の鋳塊とし、次に5
40℃×4hrの均熱処理を行った後、熱間圧延及び冷
間圧延を行い、1mm厚の板とした。この板を種々の溶
体化処理温度に加熱して20秒間保持し、種々の冷却速
度で60℃に焼入れ、そのまま60℃の温度で24hr
保持した。その後、20〜30℃に4カ月放置した後、
材料特性を測定した。また、20〜30℃に4カ月放置
後、2%の引張変形を付加し、170℃×20分間の加
熱処理(低温加熱処理)後の材料特性を測定した。素材
の材料特性(20〜30℃に4カ月放置後)並びに低温
加熱処理後の耐力(焼き付け硬化性)及び耐食性を表2
に示す。
【0026】
【表2】
【0027】表2より分かるように、本発明例は、比較
例に比べて素材の成形性は著しく高く、耐食性に優れた
材料であることが分かる。一方、比較例は、素材の成形
性は低く、焼き付け硬化性も低く、また、耐食性も低い
ことが分かる。
【0028】(実施例3)Mg0.5%、Si1.3
%、Mn0.05%、Fe0.16%、Ti0.06%
を含み、残部不純物とアルミニウムとからなるアルミニ
ウム合金を溶解鋳造し460mm厚の鋳塊とし、次に5
40℃×4hrの均熱処理を行った後、熱間圧延、溶態
化処理(加熱速度250℃/分、保持温度530℃、保
持時間20秒、冷却速度250℃/秒)、冷間圧延を行
い、1mm厚の板とした。この板を各溶体化温度に加熱
して20秒間保持し、各冷却速度で60℃の温度に焼入
れ、そのまま60℃の温度で24hr保持した。その
後、20〜30℃に4カ月放置後、材料特性を測定し
た。また、20〜30℃に4カ月放置後、2%の引張変
形を付加し、170℃×20分間の加熱処理(低温加熱
処理)後の材料特性を測定した。素材の材料特性(20
〜30℃に3カ月放置後)並びに低温加熱処理後の耐力
(焼き付け硬化性)及び耐食性を表3に示す。また、表
3には実施例2の発明例6及び発明例7(中間溶体化し
ていないもの)のデータをあわせて載せた。
【0029】
【表3】
【0030】表3より分かるように、本発明例は比較例
に比べて素材の成形性は著しく高く、また焼き付け硬化
性も高く、耐食性に優れた材料であることが分かる。一
方、比較例は、素材の成形性は低く、焼き付け硬化性も
低く、また耐食性も低いことが分かる。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、高い成形性が要求され
る部材部品として例えば自動車を初めとする輸送機器及
び一般機械部品等において、成形性さらには焼き付け硬
化性及び耐食性を向上させたアルミニウム合金板を得る
ことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22F 1/00 692 C22F 1/00 692A (56)参考文献 特開 平4−318144(JP,A) 特開 平5−65586(JP,A) 特開 平9−268356(JP,A) 特公 平6−74480(JP,B2) 特公 平6−60366(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 21/00 - 21/18 C22F 1/00 - 1/057

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で(以下、同じ)、Mg:0.3
    5〜1.6%、Si:0.35〜1.6%を含有し、か
    つSi/Mg≧0.65であり、さらにCu:0.8%
    以下、Ti:0.1%以下、Fe:0.3%以下、C
    r:0.3%以下、Mn:0.8%以下、Zr:0.1
    5%以下のうちから少なくとも1種類以上を含有し、残
    部がAl及び各0.05%以下の不可避不純物からなる
    アルミニウム合金であって、結晶粒界上のSi析出物の
    サイズが1.0μm以下で、析出物の間隔が5μm以上
    であることを特徴とする成形性、焼き付け硬化性及び耐
    食性に優れるアルミニウム合金板。
  2. 【請求項2】 導電率が40〜45%であることを特徴
    とする請求項1に記載された成形性、焼き付け硬化性及
    び耐食性に優れるアルミニウム合金板。
  3. 【請求項3】 Mg:0.35〜1.6%、Si:0.
    35〜1.6%を含有し、かつSi/Mg≧0.65で
    あり、さらにCu:0.8%以下、Ti:0.1%以
    下、Fe:0.3%以下、Cr:0.3%以下、Mn:
    0.8%以下、Zr:0.15%以下のうちから少なく
    とも1種類以上を含有し、残部がAl及び各0.05%
    以下の不可避不純物からなるアルミニウム合金を溶解鋳
    造後、均質化熱処理し、次いで熱間圧延後、冷間圧延を
    施して所望の板厚とした後、加熱速度200℃/分以上
    で510〜590℃の温度に加熱し、この温度域に10
    秒以上保持した後、溶体化処理温度から290℃までの
    平均冷却速度を100℃/秒以上として50〜120℃
    の温度まで急速冷却して焼入れし、そのまま50〜12
    0℃の温度域で1〜48hr保持し、結晶粒界上のSi
    析出物のサイズが1.0μm以下で、析出物の間隔が5
    μm以上のアルミニウム合金板を得ることを特徴とす
    る、成形性、焼き付け硬化性及び耐食性に優れるアルミ
    ニウム合金板の製造方法。
  4. 【請求項4】 熱間圧延工程と冷間圧延工程の間に溶体
    化処理として、加熱速度200℃/分以上で510〜5
    90℃の温度に加熱し、この温度域に10秒以上保持し
    た後、溶体化処理温度から290℃までの平均冷却速度
    を100℃/秒以上として290℃以下まで急速冷却す
    る工程を有することを特徴とする請求項3に記載された
    成形性、焼き付け硬化性及び耐食性に優れるアルミニウ
    ム合金板の製造方法。
  5. 【請求項5】 アルミニウム合金板の導電率が40〜4
    5%であることを特徴とする請求項3又は4に記載され
    た成形性、焼き付け硬化性及び耐食性に優れるアルミニ
    ウム合金板の製造方法。
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