JP3274808B2 - 強度と曲げ加工性に優れた樹脂塗装建材用アルミニウム合金圧延板の製造方法 - Google Patents

強度と曲げ加工性に優れた樹脂塗装建材用アルミニウム合金圧延板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、高強度を維持
し、曲げ加工性を改善した樹脂塗装建材用アルミニウム
合金圧延板の製造方法に関し、特に弗素樹脂のような高
温焼付を施す樹脂塗装建材用アルミニウム合金圧延板の
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】樹脂塗装建材は、最近、弗素樹脂のよう
な高温焼付塗料を用い、かつ、90゜曲げ以上の100
〜180゜の厳しい曲げ加工の施工デザインとなるケー
スがあり、この場合、従来材では強度が不足したり曲げ
加工時割れてしまうという不都合が生じる。例えば、従
来(イ)高温焼付塗装性に優れた建築用アルミニウム板
の製造方法(特開平6−172945)、(ロ)強度と
曲げ加工性に優れた樹脂塗装建材用アルミニウム合金圧
延板およびその製造方法(特開平6−212333)が
知られている。しかしながら、(イ)は曲げ加工性では
そこそこ優れた効果があるものの、弗素樹脂焼付塗装条
件(通常240〜280℃×20min)が上限(28
0℃×20min)となった場合の耐力は、ほとんど1
10N/mm2以下の低強度となってしまい、これを解
決することは困難である。また(ロ)は耐力では優れた
効果があるものの、90゜曲げ以上の曲げ加工、例えば
120〜180゜の曲げ加工では割れが発生してしま
い、これも解決することは困難である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この発明は上記の従来
技術の欠点を解消し、高温焼付塗装によっても強度(耐
力110N/mm2以上)を損なうことなく曲げ加工性
を向上したアルミニウム合金板の製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するためにAl板の成分組成と製造条件を検討した
結果、本発明を完成したものである。すなわち本発明
は、Mn:0.5〜1.6%(重量%、以下同じ)、F
e:0.10〜0.8%を含み、さらに、Si:0.0
5〜0.5%、Cu:0.05〜0.5%、Mg:0.
05〜0.3%、Zn:0.05〜0.5%、Cr:
0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.2%、V:
0.05〜0.2%の一種以上を含み残部不可避不純物
およびAlとからなるAl合金鋳塊を、500℃を超え
640℃以下の温度で均熱処理し、熱間圧延を550℃
以下の温度で開始し300℃以下で終了し、冷間圧延を
40%以上施した後、A、300〜500℃×0.5〜
24hr または B、400〜620℃×0(保持な
し)〜10min の条件で中間焼鈍し再結晶させ、さ
らに冷間圧延を15〜35%施した後、C、240〜3
50℃×0.5〜24hr または D、300〜50
0℃×0(保持なし)〜10min の条件で新たな再
結晶を生じない最終焼鈍を施す、そして最終焼鈍後に、
耐力が110N/mm2以上で、圧延面の平均結晶粒径
が80μm以下であることを特徴とする強度と曲げ加工
性に優れた樹脂塗装建材用アルミニウム合金圧延板の製
造方法を要旨としている。
【0005】
【発明の実施の形態】まず、本発明における化学成分の
限定理由を説明する。 Mn:Mnは強度を向上する元素であり、0.5%未満
ではその効果が小さく、1.6%を超えると向上しすぎ
て曲げ加工性が低下する。従って、Mn量は0.5〜
1.6%の範囲とする。 Fe:Feは強度に寄与するが、鋳造時にMnと化合し
てAl−Mn−Fe系晶出化合物となり曲げ加工性を阻
害する元素である、0.10%未満では必要強度が得ら
れず、0.8%を超えると曲げ加工性を著しく阻害す
る。従って、Fe量は0.10〜0.8%の範囲とす
る。 Si:Siは強度を付与する元素であるが、0.05%
未満では効果が無く、0.5%を超えると強度の向上が
飽和して、それ以上添加しても無駄である。従って、S
i量は0.05〜0.5%の範囲とする。 Cu:Cuは強度を付与する元素であるが、0.05%
未満では効果が無く、0.5%を超えると耐食性が劣化
するので好ましくない。従って、Cu量は0.05〜
0.5%の範囲とする。 Mg:Mgは固溶して強度を向上する元素であり、0.
05%未満ではその効果が小さく、0.3%を超えると
向上しすぎて曲げ加工性が低下する。従って、Mg量は
0.05〜0.3%の範囲とする。 Zn:Znは強度を付与する元素であるが、0.05%
未満では効果が無く、0.5%を超えると耐食性が劣化
するので好ましくない。従って、Zn量は0.03〜
0.5%の範囲とする。 Cr:Crは強度向上に寄与する元素であるが、0.0
5%未満では効果が無く、0.3%を超えると巨大化合
物が生成され曲げ加工性が低下する。従って、Cr量は
0.05〜0.3%の範囲とする。 Zr,V:ZrおよびVは強度を付与する元素である
が、0.05%未満ではその効果が無く、0.2%を超
えると巨大化合物が生成され曲げ加工性が低下するので
好ましくない。従って、Zr量およびV量は0.05〜
0.2%の範囲とする。
【0006】上記元素以外は不純物あるいは任意添加元
素である。 Ti,B:通常のアルミニウム合金においては、鋳塊の
微細化のために、Ti単独もしくはTiとBを複合添加
することが行なわれている。本発明においてもTi単独
もしくはTiとBを複合添加しても良い。その場合、T
i量は0.005%未満では効果が無く、0.15%を
超えると初晶TiAl3が晶出して曲げ加工性が阻害さ
れるので、Ti量は0.005〜0.15%の範囲とす
る。また、TiとともにBを添加する場合のB量は、1
ppm未満では効果が無く、500ppmを超えるとT
iB2が生成して曲げ加工性が阻害されるので、B量は
1〜500ppmとする。 Be:Beは、溶湯酸化の防止のために添加する場合が
あるが、本発明においても添加しても良い。その場合の
Be量は、1ppm未満では効果が無く、500ppm
を超えると効果が飽和して、それ以上添加することは無
駄である。従って、Be量は1〜500ppmの範囲と
する。また、アルミニウム地金に起因するNa、Ca、
Pb、Bi、Ga、Sn、Ni等の不純物は各々単独で
200ppm未満に抑えることが好ましい。
【0007】次に、アルミニウム合金圧延板の製造方法
について工程順に説明する。 [鋳造]鋳造法は特に限定されず、常法によって鋳塊を
作ればよいが、DC鋳造法(半連続鋳造法)が望まし
い。 [均熱処理]均熱処理は中間焼鈍工程で微細再結晶粒を
得るために行なうが、均熱温度が500℃以下ではAl
6Mn析出物が微小となって中間焼鈍で微細再結晶粒が
得られにくく、640℃を超えると溶解の恐れがある。
従って均熱温度は500℃を超え640℃以下、好まし
くは560℃を超え640℃以下の範囲とする。また、
保持時間は温度にもよるが1〜30hrとすれば本発明
の目的は達成する。 [加熱処理および熱間圧延]熱間圧延終了温度を再結晶
温度以下の300℃以下に抑えるために熱間圧延開始温
度は550℃以下とする。熱間圧延開始温度が550℃
を超えると熱間圧延終了温度が300℃を超えてしまっ
て全面または部分的再結晶を起こし、結晶粒粗大化や強
度低下を招いてしまうので好ましくない。熱間圧延のた
めの加熱はこの熱間圧延条件を満たすように行なう。た
だし、加熱処理は、均熱処理後の鋳塊が550℃以下に
徐冷されるのを待って熱間圧延を行なう場合は省略して
もよい。 [一次冷間圧延]一次冷間圧延は、次の中間焼鈍工程で
微細再結晶粒を得て、曲げ加工時の肌荒れ防止のために
行なうが、40%未満の圧延率では再結晶粒が80μm
を超えて粗大化し肌荒れが目立ってしまう。従って、肌
荒れ防止のために一次冷間圧延率は40%以上とする。 [中間焼鈍]中間焼鈍は再結晶粒を得るために行い、バ
ッチ焼鈍炉、連続焼鈍炉のいずれを用いてもかまわな
い。再結晶粒を得る目的のため、バッチ焼鈍炉を用いる
場合は再結晶温度の300℃以上で、連続焼鈍炉を用い
る場合は時間が短いので400℃以上で行なう。また、
バッチ焼鈍炉では500℃、連続焼鈍炉では620℃を
それぞれ超えると粗大結晶粒となって曲げ加工時に肌荒
れを招く場合がある。従って中間焼鈍は、バッチ焼鈍炉
では 300〜500℃×0.5〜24hr、連続焼鈍
炉では400〜620℃×0(保持なし)〜10min
の条件で行なう。 [二次冷間圧延(最終冷間圧延)]二次冷間圧延は強度
向上のために行なうが、冷間圧延率15%未満では最終
焼鈍によって本発明の強度目標を下回り、35%を超え
ると最終焼鈍によって強度と曲げ加工性のバランスが崩
れて本発明の目標を達成しない。従って二次冷間圧延は
15〜35%の範囲とする。 [最終焼鈍]最終焼鈍の温度・保持時間の条件は、弗素
樹脂焼付塗装条件(240〜280℃×20min)以
上でかつ新たな再結晶粒が生じない条件と規定する。こ
うすることにより、弗素樹脂焼付塗装後の強度低下や変
形は起こらない。また、バッチ焼鈍炉、連続焼鈍炉のど
ちらを用いても良い。バッチ焼鈍炉を用いる場合は24
0℃以上、連続焼鈍炉を用いる場合は時間が短いので3
00℃以上で行なう。また、バッチ焼鈍炉では350
℃、連続焼鈍炉では500℃を超えると新たな再結晶粒
が生じて強度が低下する。従って最終焼鈍は、バッチ焼
鈍炉では240〜350℃×0.5〜24hr、連続焼
鈍炉では300〜500℃×0(保持なし)〜10mi
nの条件で行なう。
【0008】また、焼鈍後、必要に応じてストレッチャ
ー、ローラーレベラー等で歪矯正を行なう場合がある
が、この場合、樹脂焼付塗装前の耐力が若干向上し、樹
脂焼付塗装後は低下するが焼鈍直後の耐力以下になるこ
とはなく、本発明の効果を妨げない。
【0009】このようにして得られたアルミニウム合金
圧延板は、特に曲げ加工性に優れ、樹脂焼付塗装後は強
度低下もなく高強度を有していることから、特に曲げ加
工の厳しい90〜180゜曲げ加工を要求される樹脂焼
付塗装建材として好適である。
【0010】
【実施例】表1の合金A〜Gについて、常法に従ってD
C鋳造法(半連続鋳造法)により鋳造し、厚さ450m
m×幅1200mm×長さ3000mm)の鋳塊を得
た。
【0011】
【表1】
【0012】得られた鋳塊に対し、表2の製造番号1〜
14に示す条件で均熱→加熱→熱間圧延を施して厚さ8
mmとした(ただし、製造番号3と14は10mm、製
造番号12は5.5mm)。そして一次冷間圧延で厚さ
4.0mm(ただし、製造番号13は3.35mm、製
造番号14は5.0mm)とし、バッチ焼鈍炉又は連続
焼鈍炉で中間焼鈍を行なった。その後二次冷間圧延を施
して厚さ3.0mmとし、さらにバッチ焼鈍炉又は連続
焼鈍炉で最終焼鈍を行なって最終板とした。そして、各
最終板について強度と結晶粒径と曲げ加工性を調べた。
強度は引張試験で耐力を測定し、結晶粒径は切断法によ
り圧延面の平均結晶粒径を求め、さらに曲げ加工性は1
35゜曲げ(ポンチ先端0mmR)試験にて割れと肌荒れ
の有無を調査した。その結果を表2中に併せて示す。な
お、表中 下線部は本願の範囲から外れる条件を示
す。
【0013】
【表2】
【0014】以下、個々の結果について説明する。製造
番号1〜5の材料は、いずれも成分組成および製造プロ
セスの両者が本発明で規定する条件を満たす発明例であ
り、表2に示すように耐力は110N/mm2以上の高
強度を示し、曲げ性は135゜曲げ試験でも割れや肌荒
れが発生しない、強度と曲げ加工性に優れた材料となっ
ていることが明らかである。
【0015】一方、製造番号6〜9の材料は、本発明で
規定する製造プロセス条件は満たすが、成分組成条件を
満たさない比較例である。製造番号6はMn量が本発明
で規定する成分範囲よりも低い合金Dを用い、製造番号
7はMn量が本発明で規定する成分範囲よりも高い合金
Eを用いたもので、前者はMn量が少ないため曲げ加工
性は良好であるが耐力は110N/mm2以下の低強度
となり、後者はMn量が多いため高耐力になりすぎて曲
げ加工性が低下してしまった。製造番号8はFe量が本
発明で規定する成分範囲よりも低い合金Fを用い、製造
番号9はFe量が本発明で規定する成分範囲よりも高い
合金Gを用いたもので、前者はFe量が少ないため曲げ
加工性は良好であるが耐力は110N/mm2以下の低
強度となり、後者はFe量が多いため高耐力になってし
まったことと、Al−Mn−Fe系晶出化合物のサイズ
が大となったことで曲げ加工性は低下した。
【0016】また、製造番号10〜14の材料は、本発
明で規定する成分組成条件を満たした合金Aを用いては
いるが、製造プロセス条件が本発明で規定する条件から
外れた比較例である。製造番号10は熱間圧延前の加熱
温度が高すぎて、熱間圧延終了温度が300℃を超えて
しまったため熱間圧延終了時に再結晶が起こってしま
い、耐力と曲げ加工性が低下してしまった。製造番号1
1は均熱温度が低すぎて、均熱処理でAl6Mnの析出
が不充分であったため中間焼鈍で再結晶粒の粗大化が起
り、結晶粒が大きくなりすぎて耐力と曲げ加工性が低下
してしまった。製造番号12は一次冷間圧延率が低すぎ
て、結晶粒が大きくなってしまい、曲げ加工性が低下し
てしまった。製造番号13は二次冷間圧延率が低すぎ
て、耐力不足となってしまった。さらに、製造番号14
は二次冷間圧延率が高かったため、軟化が早まり、耐力
不足となってしまった。
【0017】またさらに、製造番号15〜21は、他の
条件は一定とし、中間焼鈍条件と最終焼鈍条件の影響を
見たものである。すなわち、製造番号18〜21は製造
プロセス条件の内、中間焼鈍条件あるいは最終焼鈍条件
のいずれかが本発明で規定する条件から外れた比較例で
ある。製造番号18は中間焼鈍温度が低すぎて、中間焼
鈍終了時点で再結晶していないため最終焼鈍で軟化が早
まり耐力不足となってしまった。製造番号19は中間焼
鈍温度が高すぎて、中間焼鈍終了時点で再結晶粒が粗大
化してしまい、曲げ加工で肌荒れが生じてしまった。製
造番号20は最終焼鈍温度が低すぎて、焼き付け塗装工
程で変形が生じてしまった。製造番号21は最終焼鈍温
度が高すぎて、最終焼鈍で新たな粗大再結晶粒が発生し
て、強度低下や曲げ加工での肌荒れが生じてしまった。
一方、製造番号15〜17は製造プロセス条件も本発明
で規定する条件範囲内の発明例であり、いずれも強度と
曲げ性に優れた材料となっている。
【0018】
【発明の効果】上記実施例からも明らかなように、本発
明によれば、特に曲げ加工性が良好で、かつ、樹脂焼付
塗装後の耐力は110N/mm2以上と高い、曲げ加工
性と強度に優れたアルミニウム合金圧延板を得ることが
できる。そして、本発明によるアルミニウム合金圧延板
を特に高温の焼付塗装が必要な弗素等の樹脂塗装建材
(カーテンウォールや内外装建材等)に使用することに
よって、高強度を要する厳しい曲げ加工の施工デザイン
が可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22F 1/00 691 C22F 1/00 691B 691C 694 694A (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22F 1/04 - 1/057 C22C 21/00 - 21/18

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mn:0.5〜1.6%(重量%、以下
    同じ)、Fe:0.10〜0.8%を含み、さらに、S
    i:0.05〜0.5%、Cu:0.05〜0.5%、
    Mg:0.05〜0.3%、Zn:0.05〜0.5
    %、Cr:0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.
    2%、V:0.05〜0.2%の一種以上を含み残部不
    可避不純物およびAlとからなるAl合金鋳塊を、 500℃を超え640℃以下の温度で均熱処理し、 熱間圧延を550℃以下の温度で開始し300℃以下で
    終了し、 冷間圧延を40%以上施した後、 A、300〜500℃×0.5〜24hr または
    B、400〜620℃×0(保持なし)〜10min
    の条件で中間焼鈍し再結晶させ、 さらに冷間圧延を15〜35%施した後、 C、240〜350℃×0.5〜24hr または
    D、300〜500℃×0(保持なし)〜10min
    の条件で新たな再結晶を生じない最終焼鈍を施す、 そして最終焼鈍後に、耐力が110N/mm2以上で、
    圧延面の平均結晶粒径が80μm以下であることを特徴
    とする強度と曲げ加工性に優れた樹脂塗装建材用アルミ
    ニウム合金圧延板の製造方法。
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