JP2014034114A - 液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 - Google Patents

液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 Download PDF

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Abstract

【課題】圧電素子の焼損を抑制することが可能な液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置を提供する。
【解決手段】下部電極27、圧電体層28、および上部電極29から成る圧電素子19は、圧力室22の開口部に対応する位置から該圧力室の開口縁を越えて外側の位置まで延設され、且つ、圧電体層は、延設部分において露出部28aを有し、アクチュエーターユニット14と封止板20との間の接着剤Bによって圧電体層の露出部が被覆された。
【選択図】図4

Description

本発明は、圧電素子の駆動により液体を噴射する液体噴射ヘッド、及び、これを備えた液体噴射装置に関するものであり、特に、圧電素子の損傷を抑制可能な液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置に関するものである。
液体噴射装置は液体噴射ヘッドを備え、この噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置としては、例えば、インクジェット式プリンターやインクジェット式プロッター等の画像記録装置があるが、最近ではごく少量の液体を所定位置に正確に着弾させることができるという特長を生かして各種の製造装置にも応用されている。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極形成装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置に応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
上記の液体噴射ヘッドは、圧力室に液体を導入し、当該圧力室の液体に圧力変動を生じさせて、この圧力室に通じるノズルから液体を噴射するように構成されている。上記圧力室は、シリコン等の結晶性基板に対して異方性エッチングによって寸法精度良く形成されている。また、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段としては、圧電素子が好適に用いられる。この圧電素子としては種々の構成があるが、例えば、圧力室に近い側の下部電極と、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電材料からなる圧電体層と、上部電極とが、成膜技術によりそれぞれ積層形成されて構成される。そして、上下の電極のうちの一方が圧力室毎に設けられる個別電極として機能し、他方が複数の圧力室に共通な共通電極として機能する。圧電体膜において上下の電極によって挟まれた部分が、電極への電圧の印加によって変形する能動部であり、上下の何れか一方或いは両方から外れた部分が、電極への電圧の印加によっても変形しない非能動部である。
圧力室の一方(ノズル面側とは反対側)の開口部分は、例えばSiOからなる可撓性を有する弾性膜で塞がれ、この上に絶縁膜(例えばZrO)を介して圧電素子が形成される。これらの弾性膜および絶縁膜が振動板として機能する。従来、圧電素子を駆動させたときに圧力室長手方向の両端部において圧電素子および振動板がうねる等の不規則・複雑な変形が生じることがあり、これにより液体の噴射安定性に悪影響を及ぼすという問題があった。また、このような不規則な振動によって圧電素子の能動部と非能動部との境界部分に応力が集中して、圧電素子にクラック等の損傷が生じる場合があった。このため、例えば、特許文献1では、上部電極(第2の導電層)の上に錘としての金属層を設けることで、圧電素子の端部における不規則な振動を抑制する構成も提案されている。この特許文献1の構成では、上部電極の一方の端部の近傍には、下部電極(第1の導電層)と導通するリード電極部(第4の導電層)が上部電極と僅かな間隔を隔てて設けられており、両者の間に圧電体層が露出している。
特開2010−208071号公報(図2(C))
ところで、上記特許文献1の液体噴射ヘッドの製造工程において、単結晶シリコン基板に対して異方性エッチング処理によって圧力室を形成する場合、圧力室が形成される前の圧力室板のエッチングする側の面(下面)とは反対側の面(上面)に振動板および圧電素子が積層・形成された状態で、水酸化カリウム(KOH)等のエッチング用液に浸漬される。この過程を経て製造された液体噴射ヘッドでは、上記の露出した部分の圧電体層が焼損する現象が生じていた。ここで、圧電素子は、封止板と呼ばれる保護部材によって封止された上、さらに液体を透過させない保護シートによって保護された状態でエッチング用液に浸漬される。しかしながら、エッチング反応時に発生する水素ガスが保護シートと封止板を通過して圧電素子側に回り込むことがある。この水素ガスが上記の圧電体層の露出部分と反応して当該圧電体層を溶融させることにより、上部電極(或いはその上の金属層)とリード電極部との間でリーク電流が生じ易くなって焼損が発生したものと考えられる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電素子の焼損を抑制することが可能な液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、ノズルに連通する圧力室が形成された圧力室形成部材と、
前記圧力室に対応する位置に第1の電極、圧電体層、および第2の電極がこの順に積層されてなる圧電素子を有し、前記圧力室形成部材に積層されるアクチュエーターユニットと、
内部に形成された収容空部内に前記圧電素子を収容した状態で接着剤により前記アクチュエーターユニットに接合される封止部材と、
を備え、
前記圧電素子は、前記圧力室の開口部に対応する位置から該圧力室の開口縁を越えて外側の位置まで延設され、且つ、前記圧電体層は、前記延設された部分において第2の電極が除かれた露出部を有する液体噴射ヘッドあって、
前記アクチュエーターユニットと前記封止部材との間の接着剤によって前記圧電体層の前記露出部が被覆されたことを特徴とする。
この構成によれば、圧力室形成部材と封止部材との間の接着剤によって圧電体層の露出部が被覆されるので、圧力室形成部材に対して異方性エッチングによって圧力室を形成する際に発生する水素ガスが圧電素子側に回り込んだとしても、当該水素ガスに圧電体層の露出部が曝されない。このため、圧電体層が水素ガスに反応して溶融することが防止される。その結果、当該露出部の近傍に設けられた電極間において電流のリークが抑制され、圧電体層の焼損が防止される。
上記構成において、前記アクチュエーターユニットに対する前記封止部材の接合部が、前記圧電体層の前記露出部に対し、封止板およびアクチュエーターユニットの積層方向で重なることが望ましい。
この構成によれば、アクチュエーターユニットに対する封止部材の接合部が、圧電体層の露出部に対し、封止板およびアクチュエーターユニットの積層方向で重なるので、圧力室形成部材と封止部材との間の接着剤および封止部材自体によって圧電体層の露出部がより確実に被覆・保護される。
また、本発明は、前記圧電素子の延設部分の端部上に形成されて前記第1の電極に導通する端子部と前記第2の電極との間に前記圧電体層の前記露出部が位置する構成に好適である。
すなわち、端子部と第2の電極との間に露出部が位置する構成においても、露出部が接着剤で被覆されるので、端子部と第2の電極との間で電流のリークが抑制され、圧電体層の焼損が防止される。
また、上記構成において、前記端子部と前記露出部を間に挟んで対向する第2の電極の端部上に、該端子部と同一金属材料からなる金属膜が形成され、
該金属膜の表面と前記端子部の表面とが同一面上に揃い、前記封止部材の接合部が、前記圧電体層の前記露出部を跨いで前記第2の電極と前記端子部とに当接することで、アクチュエーターユニットに対する前記封止部材の積層方向の位置が規定された構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、封止部材の接合部が、圧電体層の露出部を跨いで金属膜と端子部とに当接することで、アクチュエーターユニットに対する封止部材の積層方向の位置が安定して規定されるので、これにより、露出部を接着剤によってより確実に被覆することができ、歩留まりを向上させることができる。
さらに、本発明の液体噴射装置は、上記各構成の液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、液体噴射ヘッドにおける圧電素子の焼損が抑制されるので、装置の信頼性が向上する。
プリンターの内部構成を説明する斜視図である。 記録ヘッドの分解斜視図である。 記録ヘッドの平面図である。 図3におけるA−A線断面図である。 記録ヘッドの製造工程を示す要部断面図である。 記録ヘッドの製造工程を示す要部断面図である。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の説明では、本発明の液体噴射装置として、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を搭載したインクジェット式プリンター(以下、プリンター)を例に挙げる。
プリンター1の構成について、図1を参照して説明する。プリンター1は、記録紙等の記録媒体2(着弾対象の一種)の表面に対して液体状のインクを噴射して画像等の記録を行う装置である。このプリンター1は、記録ヘッド3、この記録ヘッド3が取り付けられるキャリッジ4、キャリッジ4を主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構5、記録媒体2を副走査方向に移送する搬送機構6等を備えている。ここで、上記のインクは、本発明の液体の一種であり、液体供給源としてのインクカートリッジ7に貯留されている。このインクカートリッジ7は、記録ヘッド3に対して着脱可能に装着される。なお、インクカートリッジ7がプリンター1の本体側に配置され、当該インクカートリッジ7からインク供給チューブを通じて記録ヘッド3に供給される構成を採用することもできる。
上記のキャリッジ移動機構5はタイミングベルト8を備えている。そして、このタイミングベルト8はDCモーター等のパルスモーター9により駆動される。従ってパルスモーター9が作動すると、キャリッジ4は、プリンター1に架設されたガイドロッド10に案内されて、主走査方向(記録媒体2の幅方向)に往復移動する。
図2は、本実施形態の記録ヘッド3の構成を示す分解斜視図である。また、図3は、記録ヘッド3の上面図、図4は、図3におけるA−A線断面図である。なお、図3は、後述する封止板20が接合されていない状態を示している。この図3において、細線によるハッチングで示される部分は上部電極29を示し、太線によるハッチングで示される部分は金属層41を示している(何れも後述)。また、図3および図4は、圧力室22の長手方向(ノズル列方向に直交する方向)の一端部に対応する部分(インク供給路24とは反対側の端部)を図示している。
本実施形態における記録ヘッド3は、流路形成基板15(本発明における圧力室形成部材の一種)、ノズルプレート16、アクチュエーターユニット14、及び、封止板20(本発明における封止部材の一種)等を積層して構成されている。
流路形成基板15は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなる板材である。この流路形成基板15には、複数の圧力室22が異方性エッチングによってノズル列方向に並べて形成されている。本実施形態における圧力室22は、ノズル列方向に直交する方向に長尺な平行四辺形の開口を有する空部である。各圧力室22は、ノズルプレート16の各ノズル25に一対一に対応して設けられている。すなわち、各圧力室22の形成ピッチは、ノズル25の形成ピッチに対応している。また、図2に示すように、流路形成基板15において、圧力室22に対して当該圧力室長手方向の側方(ノズル連通側とは反対側)に外れた領域には、流路形成基板15を貫通する連通部23が、圧力室22の並設方向に沿って形成されている。この連通部23は、各圧力室22に共通な空部である。この連通部23と各圧力室22とは、インク供給路24を介してそれぞれ連通されている。なお、連通部23は、後述する振動板21の連通開口部26および封止板20の液室空部33と連通して、各圧力室22に共通なインク室であるリザーバー(共通液室)を構成する。インク供給路24は、圧力室22よりも狭い幅で形成されており、連通部23から圧力室22に流入するインクに対して流路抵抗となる部分である。
流路形成基板15の下面(アクチュエーターユニット14との接合面側とは反対側の面)には、ノズルプレート16が、接着剤や熱溶着フィルム等を介して接合されている。ノズルプレート16は、所定のピッチで複数のノズル25が列状に開設された板材である。本実施形態では、360dpiに対応するピッチで360個のノズル25を列設することでノズル列(ノズル群の一種)が構成されている。各ノズル25は、圧力室22に対してインク供給路24とは反対側の端部で連通する。なお、ノズルプレート16は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、又はステンレス鋼などからなる。
本実施形態におけるアクチュエーターユニット14は、振動板21、圧電素子19、および金属層41から構成される。振動板21は、流路形成基板15の上面に形成された二酸化シリコン(SiO)からなる弾性膜17と、この弾性膜17上に形成された酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜18と、から成る。この振動板21における圧力室22に対応する部分、即ち、圧力室22の上部開口を塞ぐ部分は、圧電素子19の撓み変形に伴ってノズル25から遠ざかる方向あるいは近接する方向に変位する。この振動板21における流路形成基板15の連通部23に対応する部分には、当該連通部23と連通する連通開口部26が開設されている。
振動板21の絶縁体膜18における圧力室22に対応する部分には、圧電素子19が形成されている。本実施形態における圧電素子19は、振動板21側から順に下部電極27(本発明における第1の電極に相当)、圧電体層28、および上部電極29(本発明における第2の電極に相当)が積層されて構成されている。また、圧電素子19は、絶縁体膜18上において、圧力室22の上部開口の縁(ノズル25と連通する側の開口縁)を越えて当該圧力室22の長手方向の外側に外れた位置まで延設されている。そして、下部電極27および圧電体層28は、上部電極29の本体部29aの圧力室長手方向の端部よりも同方向の外側の位置までさらに延設されている。
本実施形態においては、下部電極27および圧電体層28が圧力室22毎にパターニングされており、下部電極27は、圧電素子19毎の個別電極となっている。また、上部電極29は、各圧電素子19に共通な電極となっている。そして、積層方向において、上部電極29、圧電体層28、および下部電極27がオーバーラップする部分が、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる圧電体能動部である。すなわち、上部電極29は圧電素子19の共通電極となっており、下部電極27は圧電素子19の個別電極となっている。なお、駆動回路や配線の都合によってこれらを逆にする構成とすることもできる。
上部電極29は、圧電体能動部を規定する本体部29aと、この本体部29aから独立した導電部29bとから構成されている。導電部29bは、圧力室22の上部開口縁よりも圧力室長手方向の外側に外れた領域における圧電体層28上であって、本体部29aに対して所定の間隔を隔てた位置に形成されている。そして、図4に示すように、導電部29bおよび圧電体層28を貫通する状態で、導電部29bの上面から下部電極27に至るスルーホール42が形成されている。
上部電極29の上には、図示しない密着層(例えば、NiCr)を介して金(Au)からなる金属層41が形成されている。この金属層41は、錘部41a(本発明における金属膜に相当)とリード電極部41b(本発明における端子部の一種)とから構成される。錘部41aは、上部電極29の本体部29a上であって、圧力室22の上部開口縁よりも圧力室長手方向の外側の領域に形成されている。この錘部41aは、圧電素子19の長手方向端部の変位を規制することで、駆動時における当該圧電素子19および振動板21の不規則な変位を抑制する。なお、錘部41aが無い構成を採用することもできる。リード電極部41bは、個別電極である下部電極27に対応してパターニングされており、少なくとも一部が導電部29bの上部に重なるように形成されている。このリード電極部41bは、上記のスルーホール42を通じて下部電極27に導通されている。そして、このリード電極部41bを介して各圧電素子19に選択的に駆動電圧(駆動パルス)が印加される。錘部41aおよびリード電極部41bは、同一の工程で形成され、それぞれの上面(表面)は同一面上に揃っている。
このような構成の記録ヘッド3では、上部電極29の本体部29aおよび導電部29bの間の領域、或いは、錘部41aおよびリード電極部41bの間(錘部41aが無い構成では、上部電極29の本体部29aおよびリード電極部41bの間)の領域に、上部電極29が除かれて圧電体層28の一部が露出している。以下、上部電極29および金属層41が形成されていない圧電体層28の露出部分を露出部28aと称する。
アクチュエーターユニット14における流路形成基板15との接合面である下面とは反対側の上面には、圧電素子19を収容可能な収容空部32を有する封止板20が接合される。この封止板20は、アクチュエーターユニット14との接合面である下面側に収容空部32が開口した中空箱体状の部材である。上記の収容空部32は、封止板20の下面側から上面側に向けて封止板20の高さ方向途中まで形成された窪みである。この収容空部32のノズル列方向の寸法(内法)は、同一列の全ての圧電素子19を収容可能な大きさに設定されている。また、収納空部32のノズル列に直交する方向の寸法は、圧力室22の同方向(長手方向)の寸法よりも大きく、且つ、圧電体層28の同方向の寸法よりも小さく設定されている。また、図2に示すように、封止板20には、収容空部32よりもノズル列に直交する方向の外側に外れた位置であって、振動板21の連通開口部26および流路形成基板15の連通部23に対応する領域には、液室空部33が設けられている。この液室空部33は、封止板20を厚さ方向に貫通して圧力室22の並設方向に沿って設けられており、上述したように連通開口部26および連通部23と一連に連通して各圧力室22の共通のインク室となるリザーバーを画成する。
封止板20上には、封止膜36及び固定板37とからなるコンプライアンス基板38が接合されている。封止膜36は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、ポリフェニレンサルファイドフィルム)からなり、この封止膜36によって液室空部33の一方面が封止されている。また、固定板37は、金属等の硬質の材料(例えば、ステンレス鋼等)で形成される。この固定板37のリザーバーに対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部26となっているため、リザーバーの一方面は可撓性を有する封止膜36のみで封止されている。
なお、図示しないが、封止板20には、収容空部32と液室空部33の他に、封止板20を厚さ方向に貫通する配線開口部が設けられ、この配線開口部内にリード電極部41bの端部が露出される。そして、このリード電極部41bの露出部分には、プリンター本体側からの図示しない配線部材の端子が電気的に接続される。また、収容空部32内を大気圧に調整する目的で、封止板20には、収容空部32と封止板20の外部とを連通する大気連通口が設けられている。
上記収容空部32と液室空部33とは、仕切壁34によって隔てられている。この仕切壁34の下端面を含む封止板20の下面(本発明における接合部に相当)は、図4に示すように、接着剤Bによってアクチュエーターユニット14の上面に接合される。接着剤Bは、例えば、エポキシ系の接着剤から成り、封止板20の下面に転写により予め塗布される。この接着剤Bの厚さは、1.0μm以上3.0μm以下に調整される。封止板20とアクチュエーターユニット14の接合の際、仕切壁34の下端面は、図3においてXで示す領域に重なる状態で配置されて当該領域内のアクチュエーターユニット14と接合される。より具体的には、図4に示すように、少なくとも上部電極29の本体部29a或いは錘部41aと、リード電極部41bとの間を跨ぐ状態で仕切壁34がアクチュエーターユニット14に接合される。これにより、上部電極29の本体部29a或いは錘部41aと、リード電極部41bとの間に露出した圧電体層28の露出部28aが、接着剤Bによって被覆される。このように、圧電体層28の露出部28aが接着剤Bによって被覆・保護されることで、流路形成基板15に対して異方性エッチングによって圧力室22を形成する際に発生する水素ガスが圧電素子19側に回り込んだとしても当該水素ガスに露出部28aが曝されない。このため、圧電体層28が水素ガスに反応して溶融することを防止することができる。その結果、上部電極29の本体部29a或いは錘部41aとリード電極部41bとの間で電流がリークすることが抑制され、圧電体層28の焼損を防止することが可能となる。
また、このように圧力室22の開口縁よりも長手方向の外側まで延設された圧電素子19の端部が、封止板20および接着剤Bによって保護されることで、圧電体層28の露出部28aに対し、封止板およびアクチュエーターユニットの積層方向で重なるので、接着剤Bおよび封止板20によって露出部28aがより確実に被覆・保護される。また、圧電素子19を駆動させたときに当該端部における不規則な変形が抑制されるので、当該不規則な変形によって圧電素子19にクラック等の損傷が生じることが抑制される。
さらに、本実施形態においては、上端面の高さが同一面上に揃った錘部41aおよびリード電極部41bに仕切壁34の下端面が当接する状態で接合されるので、アクチュエーターユニット14に対する封止板20の積層方向の位置が安定して規定される。これにより、露出部28を接着剤Bによってより確実に被覆することができ、歩留まりを向上させることができる。また、接着剤Bは、Auで構成される金属層41に対する接着力が弱い欠点があるが、本実施形態においては、金属層41以外の素材、例えば、密着層や、圧電体層28、上部電極29などの多種の材料と接合されるので、剥離を抑制することができる。
なお、圧電素子19における圧力室22の長手方向の他端部に対応する部分(インク供給路24側の端部)に関しては、リード電極部41bが設けられていないので、電流のリークのおそれが少ないが、勿論、圧電体層28を保護する意味でも、また、圧電素子19の端部のクラック等を防止する意味でも、封止板20および接着剤Bによって被覆されることが望ましい。
ここで、上記の記録ヘッド3の製造方法について説明する。
まず、図5(a)に示すように、流路形成基板15となるシリコン単結晶基板が約1100℃の拡散炉で熱酸化され、その表面に弾性膜17を構成する二酸化シリコン(SiO)膜が形成される。次いで、図5(b)に示すように、弾性膜17上に、酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜18が形成される。具体的には、まず、弾性膜17上に、例えば、DCスパッタ法によりジルコニウム層が形成され、このジルコニウム層が熱酸化されることにより酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜18が形成される。次いで、図5(c)に示すように、例えば、白金(Pt)とイリジウム(Ir)とを絶縁体膜18上に積層することにより下部電極27が形成され、圧力室22の幅よりも小さい幅となるようにパターニングされる。
次に、図5(d)に示すように、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層28が下部電極27の表面に積層される。圧電体層28の形成方法は、本実施形態では、金属有機物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成する、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層28が形成される。なお、圧電体層28の形成方法は、特に限定されず、例えば、MOD法やスパッタ法等を用いることも可能である。圧電体層28も下部電極27と同様に、圧力室22の幅よりも小さい幅となるようにパターニングされる。続いて、図5(e)に示すように、当該圧電体層28の上面に、例えばイリジウムからなる上部電極29が圧電体層28の上面にスパッタリング等により形成される。この上部電極29は、本体部29aと導電部29bにパターニングされる。
次に、図6(a)に示すように、導電部29bおよび圧電体層28に、スルーホール42が開設される。続いて、図6(b)に示すように、上部電極29の上に、図示しない密着層を介してスパッタ法、真空蒸着法、或いはCVD法等により金属層41が形成される。金属層41は、エッチング等によって錘部41aとリード電極部41bとにパターニングされる。続いて、封止板20がアクチュエーターユニット14に接合される。上述したように、封止板20とアクチュエーターユニット14の接合の際、仕切壁34の下端面が、圧電体層28の露出部28aに対し、封止板20およびアクチュエーターユニット14の積層方向で重なる状態でアクチュエーターユニット14に接合されるので、圧電体層28の露出部28aが、封止板20および接着剤Bによって被覆される。その後、アクチュエーターユニット14および封止板20が図示しない保護シートで覆われた状態で、圧力室22が形成される前の状態の記録ヘッド3がエッチング用液に浸漬されて、流路形成基板15に圧力室22やインク供給路24等の流路がエッチングにより形成される。この際、エッチング反応によって発生する水素ガスが、保護シートや封止板20の大気開放口を通過して収容空部32内に侵入したとしても、圧電体層28の露出部28aが接着剤Bによって被覆・保護されているので、当該水素ガスに露出部28aが曝されない。圧力室22等の流路が形成されたならば、ノズルプレート16を流路形成基板15に接合する工程が行われる(図4参照)。
このように本発明に係る記録ヘッド3は、封止板20の形状(特に、収容空部32の形状)を変更するのみで、部品等の追加あるいは工程の追加を招くことなくコストアップを抑えつつ圧電体層28の露出部28aを保護することができる。したがって、封止板によって圧電素子を封止する構成を採用する種々の液体噴射ヘッドに本発明を適用することができる。また、当該記録ヘッド3を搭載したプリンター1は、圧電素子19の焼損が抑制されるので、装置の耐久性・信頼性が向上する。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。また、上述した実施形態では、インクジェットプリンターに搭載されるインクジェット式記録ヘッドを例示したが、上記構成の圧電素子を用いるものであれば、インク以外の液体を噴射するものにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも本発明を適用することができる。
3…記録ヘッド,14…アクチュエーターユニット,15…流路形成部材,16…ノズルプレート,17…弾性膜,18…絶縁体膜,19…圧電素子,20…封止板,21…振動板,22…圧力室,25…ノズル,27…下部電極,28…圧電体層,29…上部電極,32…収容空部,34…仕切壁,41…金属膜,41a…錘部,41b…リード電極部,42…スルーホール

Claims (5)

  1. ノズルに連通する圧力室が形成された圧力室形成部材と、
    前記圧力室に対応する位置に第1の電極、圧電体層、および第2の電極がこの順に積層されてなる圧電素子を有し、前記圧力室形成部材に積層されるアクチュエーターユニットと、
    内部に形成された収容空部内に前記圧電素子を収容した状態で接着剤により前記アクチュエーターユニットに接合される封止部材と、
    を備え、
    前記圧電素子は、前記圧力室の開口部に対応する位置から該圧力室の開口縁を越えて外側の位置まで延設され、且つ、前記圧電体層は、前記延設された部分において第2の電極が除かれた露出部を有する液体噴射ヘッドあって、
    前記アクチュエーターユニットと前記封止部材との間の接着剤によって前記圧電体層の前記露出部が被覆されたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
  2. 前記アクチュエーターユニットに対する前記封止部材の接合部が、前記圧電体層の前記露出部に対し、封止板およびアクチュエーターユニットの積層方向で重なることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
  3. 前記圧電素子の延設部分の端部上に形成されて前記第1の電極に導通する端子部と前記第2の電極との間に前記圧電体層の前記露出部が位置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
  4. 前記端子部と前記露出部を間に挟んで対向する第2の電極の端部上に、該端子部と同一金属材料からなる金属膜が形成され、
    該金属膜の表面と前記端子部の表面とが同一面上に揃い、前記封止部材の接合部が、前記圧電体層の前記露出部を跨いで前記金属膜と前記端子部とに当接することで、アクチュエーターユニットに対する前記封止部材の積層方向の位置が規定されたことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
  5. 請求項1から請求項4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置。
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