JP2013159077A - 多層フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エチレン系重合体(A)、核剤(B)、ならびに、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、及びそれらの水素添加誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上の組み合わせからなるオレフィン相溶樹脂(C)を含む樹脂層(I)と、該樹脂層(I)以外の他の層と、を備えた多層フィルムであって、前記樹脂層(I)が下記条件(i)〜(iv)を満たすことを特徴とする多層フィルムを提案する。
条件(i):密度が0.940g/cm3〜0.960g/cm3
条件(ii):結晶融解熱量(ΔHm)が120J/g〜160J/g
条件(iii):200℃における貯蔵せん断弾性率(G’)が、2,000Pa〜50,000Pa
【選択図】なし
Description
しかしながら、インフレーション成形にて得られたLLDPEのシーラント層は、高度な防湿性が要求される用途への使用が困難であった。
そこで、中密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンをインフレーション成形したものを用いた技術が提案されている。例えば特許文献1には、中密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンをインフレーション成形したものをシーラント層として、ポリアミド系樹脂フィルムと積層した多層フィルムが開示されている。
条件(i):密度が0.940g/cm3〜0.960g/cm3
条件(ii):結晶融解熱量(ΔHm)が120J/g〜160J/g
条件(iii):200℃における貯蔵せん断弾性率(G’)が、2,000Pa〜50,000Pa
本多層フィルムは、エチレン系重合体(A)及び核剤(B)、及び、オレフィン相溶樹脂(C)を含有する樹脂層(I)と、樹脂層(I)以外の他の層を一層或いは二層以上備えた多層フィルムである。
樹脂層(I)は、エチレン系重合体(A)、核剤(B)、及び、オレフィン相溶樹脂(C)を含有する層である。
当該樹脂層(I)を設けることにより、各種包装資材へ使用する際のヒートシール性を付与できるだけでなく、優れた防湿性を付与し、各種包装資材として使用する際に内容物の劣化を抑制することができる。
本多層フィルムに用いるエチレン系重合体(A)は、エチレン単独重合体であってもよいし、或いは、エチレンと、エチレン以外のモノマー成分、特にはα―オレフィンとの共重合体であってもよい。また、これらの混合物を用いることもできる。
エチレンと共重合するα−オレフィンは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。
中でも、前記結晶融解ピーク温度(Tm)は115℃以上或いは140℃以下であるのがより好ましく、130℃以上であるのがさらに好ましい。
また、前記結晶融解熱量(ΔHm)は135〜185J/gの範囲であるのがより好ましく、中でも150J/g以上或いは180J/g以下であるのがさらに好ましい。
なお、該結晶融解ピーク温度(Tm)は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121に準じて加熱速度10℃/分で測定することができ、該結晶融解熱量(ΔHm)は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7122に準じて加熱速度10℃/分で測定することができる。
本多層フィルムに用いる核剤(B)は、前記エチレン系重合体(A)の透明性、防湿性を向上させる効果が認められれば、その種類を特に制限するものではない。
この種の核剤としては、例えば、脂肪族、脂環族、および芳香族のカルボン酸、ジカルボン酸または多塩基性ポリカルボン酸、相当する無水物および金属塩などの有機酸の金属塩化合物、環式ビス−フェノールホスフェート、2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプテンジカルボン酸などの二環式ジカルボン酸、及び、その金属塩、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−ジカルボキシレートなどの二環式ジカルボキシレート、及び、その金属塩、1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,3−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,3−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,5−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4,5−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−プロピルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8,−テトラヒドロ−1−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8,−テトラヒドロ−2−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−エチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−エチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−クロルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−クロルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチル−ベンジリデン−2,4−O−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチル−ベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチル−ベンジリデン−2,4−O−p−クロルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−クロル−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトールなどのジアセタール化合物、ナトリウム2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、アルミニウムビス[2,2’−メチレン−ビス−(4−6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート]、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウムホスフェートなどのリン酸エステル化合物や、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等の脂肪酸、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、シリカ、タルク、カオリン、炭化カルシウム等の無機粒子、グリセロール、グリセリンモノエステルなどの高級脂肪酸エステル等を挙げることができる。
これらの中でも、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩が特に好ましい。
以上の結晶核剤は、これらのうちの一種を単独で用いることも、また、これらのうちの二種類以上を選択して組み合わせて併用することもできる。
前記エチレン系重合体(A)に対して、オレフィン相溶樹脂(C)を添加することで、防湿性を向上できるだけでなく、優れたヒートシール性を付与することができる。
オレフィン相溶樹脂(C)のJIS K2207に基づき測定した軟化温度Ts(C)は、前記エチレン系重合体(A)の示差走査熱量測定における冷却速度10℃/分で測定される結晶化ピーク温度Tc(A)+15℃以下、すなわち結晶化ピーク温度Tc(A)+15℃を超えた高温にならないことが好ましく、Tc(A)+10℃以下であることがより好ましく、Tc(A)+5℃以下であることがさらに好ましい。なお、Ts(C)の下限は80℃であることが好ましい。
前記オレフィン相溶樹脂(C)の軟化温度Ts(C)の上限が前記条件を満たすことで、エチレン系重合体(A)の結晶化過程においてオレフィン相溶樹脂(C)分子の自由度が高い状態にあり、エチレン系重合体(A)の結晶化が阻害されず、微細な結晶が形成され、透明性に優れたポリエチレン系シートが得られる。また、Ts(C)が80℃以上であれば、成形時におけるペレットのブロッキングや、二次加工時、あるいは、輸送時、使用時における成形品表面へのブリードアウトを生じることがない。
樹脂層(I)において、エチレン系重合体(A)の含有量は、樹脂層(I)全体の40〜90質量%であるのが好ましく、中でも45質量%以上或いは、85質量%以下であるのがさらに好ましく、その中でも特に50質量%以上或いは、80質量%以下であるのがより一層好ましい。かかる範囲内でエチレン系重合体(A)を配合することにより、耐熱性、耐衝撃性に優れた多層フィルムを提供することができる。
樹脂層(I)は、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン系重合体(A)、核剤(B)及びオレフィン相溶樹脂(C)以外の樹脂を含有してもよい。例えばポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂や、ポリオレフィン系、あるいは、ポリスチレン系の熱可塑性エラストマー等を配合することができる。例えば環状オレフィン系樹脂を含有すれば、透明性をさらに向上させることができる。
この際、環状オレフィン系樹脂の含有量は、エチレン系重合体(A)、核剤(B)及びオレフィン相溶樹脂(C)の合計含有量に対して、10〜50質量%であることが好ましく、中でも20質量%以上或いは45質量%以下、その中でも25質量%以上或いは35質量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂層(I)は、以下の条件(i)〜(iii)を満たすことが重要である。
条件(i):密度が0.940g/cm3〜0.960g/cm3
条件(ii):結晶融解熱量(ΔHm)が120J/g〜160J/g
条件(iii):200℃における貯蔵せん断弾性率(G’)が、2,000Pa〜50,000Pa
また、上記条件(ii)における結晶融解熱量(ΔHm)のより好ましい範囲の下限は125J/g以上であり、さらに好ましい範囲は130J/g以上である。また、上限は160J/g以下であることが好ましい。
樹脂層(I)の密度及び結晶融解熱量(ΔHm)が、かかる範囲内にあれば、優れた透明性、防湿性、ヒートシール性の全てに優れた本多層フィルムを提供することができる。
樹脂層(I)の200℃における貯蔵せん断弾性率(G’)がかかる範囲内であれば、特にインフレーション成形において優れた成形性(バブルの安定性)を有し、透明性、外観に優れたフィルムを得ることができる。
条件(iv):温度190℃、荷重2.16kgで測定したMFRが0.1g/10分〜5.0g/10分
上記条件(iv)におけるMFRのより好ましい範囲は0.2g/10分〜4.0g/10分であり、さらに好ましい範囲は0.5g〜3.0g/10分である。前記樹脂層(I)のMFRがかかる範囲内であればインフレーション成形においてバブルの安定性に優れ、外観良好なフィルムを採取することができる。
本多層フィルムが備える、上記樹脂層(I)以外の層としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂や、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等のポリオレフィン系樹脂を含む層を挙げることができる。
これらの中でも特に、酸素ガスバリア性、耐屈曲性、強靱性等の点から、後述するポリアミド系樹脂の中でもポリアミドMXD6(ポリメタキシレンアジパミド)を含む層、あるいは、より高度な酸素ガスバリア性の点から後述するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を含有するのが好ましい。
本多層フィルムに占める樹脂層(I)の厚み比率がかかる範囲内であれば、本多層フィルムに優れた防湿性とヒートシール性を付与することができる。
前記ポリアミド系樹脂としては、特に限定されないが、3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、ジアミンとジカルボン酸を主成分とするものを用いることが好ましい。
また、前記ポリアミド系樹脂が他の樹脂、添加剤等を含む組成物である場合、組成部物中に占めるポリアミド成分の割合は70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
上記の重合可能なω−アミノ酸としては、例えば、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノヘプタン酸、ω−アミノノナン酸、ω−アミノウンドデカン酸、ω−アミノドデカン酸などを挙げることができる。
上記のジカルボン酸としては、例えばグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ノナンジオン酸、デカンジオン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環族カルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(1,2−体、1,3−体、1,4−体、1,5−体、1,6−体、1,7−体、1,8−体、2,3−体、2,6−体、2,7−体)、スルホイソフタル酸金属塩などの芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。
上述したように、例えば防湿性の向上を目的として、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、「EVOH」と記載する。)を含有する層を設けることができる。
本発明の効果を損なわない範囲で、本多層フィルムの各層を構成する樹脂組成物に、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の添加剤を配合することができる。
本多層フィルムは種々の方法で製造可能である。例えば、以下の方法により製造することができる。
各層の製膜性、製膜方法を考慮した場合、各層を個々に製膜した後、一般的なラミネート法により貼り合せることが好ましい。
このように、本多層フィルムに用いられる樹脂層(I)は、インフレーション成形にて得ることができ、生産性やコストの面から、有利である。
この際、延伸フィルムの延伸倍率は、面積倍率で1.1〜16倍の範囲にあることが好ましい。また、面積倍率の下限は1.5倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることがさらに好ましい。一方、面積倍率の上限は15倍以下であることがより好ましく、14倍以下であることがさらに好ましい。かかる範囲でフィルムを延伸することにより、本多層フィルムの強度、耐熱性、防湿性、透明性等の特性を向上することができる。
本多層フィルムは次のような物性を備えているのが好ましい。
JIS K7129B法に基づき、温度40℃、相対湿度90%で測定した厚み0.07mmでの本多層フィルムの水蒸気透過率は、2.0g/(m2・24時間)以下であるのが好ましく、中でも1.7g/(m2・24時間)以下、その中でも1.5g/(m2・24時間)以下であるのがさらに好ましい。
JIS K7105に基づき測定した厚み0.07mmでの本多層フィルムのヘーズ値は、20%以下であるのが好ましく、中でも15%以下、その中でも13%以下であるのがさらに好ましい。
本多層フィルムを用いて各種包装資材を形成することができる。特に本多層フィルムは、防湿性、透明性、ヒートシール性の全てに優れるため、医薬品や食品等の包装資材等に広く使用することができる。
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。他方、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
以下の実施例・比較例で表示される原料及び試験片についての種々の測定値及び評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向と呼ぶ。
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(商品名「Pyris1 DSC」)を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)を求めた。
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(商品名「Pyris1 DSC」)を用いて、JIS K7122に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解熱量(ΔHm)(J/g)を求めた。
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(商品名「Pyris1 DSC」)を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温した時に測定されたサーモグラムから結晶化ピーク温度Tc(℃)を求めた。
JIS K2207に準じてオレフィン相溶樹脂(C)の軟化温度を求めた。
JIS K7112に準じて、密度勾配管法にて、後述する樹脂組成物(X)の密度(g/cm3)を求めた。
JIS K7210に準じて、温度190℃、荷重2.16kgの条件にて、後述する樹脂組成物(X)のMFR(g/10分)を求めた。
レオメトリックス社製RDAII(粘弾性測定装置ダイナミックアナライザー)を用いて、温度140〜220℃、周波数1Hz、昇温速度3℃/分、歪み量0.5%の条件で、後述する樹脂組成物(X)の貯蔵せん断弾性率(G’)の測定を行った。得られた結果より、200℃における貯蔵せん断弾性率(G’)の値を読み取った。
JIS K7126Bに基づき、MOCON社製OX−TRAN 2/21を用いて、23℃、50%RHの雰囲気下において、厚み0.07mmのサンプルについて酸素透過率を測定した。酸素透過率が300ml/(m2・24時間)以下であるものを合格とした。
JIS K7129Bに基づき、MOCON社製PERMATRAN W 3/31を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下において、厚み0.07mmのサンプルについて水蒸気透過率を測定した。水蒸気透過率が2.0g/(m2・24時間・MPa)以下であるものを合格とした。
JIS K7105に基づいて、全光線透過率および拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。厚み0.07mmでのヘーズが15%以下であるものを合格とした。
[ヘーズ]=[拡散透過率]/[全光線透過率]×100
縦方向に150mm、横方向100mmに切り出した多層フィルムサンプルの層(II)同士を合わせた後、圧力1kgf/cm2、温度130℃、シール時間1秒の条件で幅10mmの加熱バーによりサンプルの横方向と並行に、縦方向の中央部をヒートシールした。
次いで、ヒートシールしたサンプルを縦方向に150mm、横方向に15mmに切り出した後、引張試験機(インテスコ社製恒温槽付き材料試験器201X)を用いて、雰囲気温度23℃、剥離速度50mm/分で180℃剥離試験を実施した。剥離強度が10N/15mm以上のものを合格とした。
[エチレン系重合体(A)]
(A)−1:エチレン系共重合体(エチレン/ヘキセン−1/オクテン−1=95.2/3.5/1.3質量%、密度=0.940g/cm3、結晶融解ピーク温度=128℃、結晶融解熱量=145J/g、結晶化ピーク温度Tc(A)=113℃、MFR=0.45g/10分、Mw/Mn=3.56)
(A)−2:エチレン系共重合体(エチレン/ブテン−1/オクテン−1=98.3/0.4/1.3質量%、密度=0.946g/cm3、結晶融解ピーク温度=129℃、結晶融解熱量=176J/g、結晶化ピーク温度Tc(A)=110℃、MFR=1.3g/10分、Mw/Mn=3.14)
(A)−3:エチレン単独重合体(エチレン=100質量%、密度=0.958g/cm3、結晶融解ピーク温度=134℃、結晶融解熱量=207J/g、結晶化ピーク温度Tc(A)=115℃、MFR=1g/10分、Mw/Mn=4.72)
(A)−4:エチレン系共重合体(エチレン/ヘキセン−1=87.9/12.1質量%、密度=0.918g/cm3、結晶融解ピーク温度=121℃、結晶融解熱量=134J/g、結晶化ピーク温度Tc(B)=105℃、MFR=4g/10分、Mw/Mn=2.80)
(A)−5:エチレン系共重合体(エチレン/ブテン−1/オクテン−1=97.7/1.1/1.2質量%、密度=0.941g/cm3、結晶融解ピーク温度=127℃、結晶融解熱量=162J/g、結晶化ピーク温度Tc(A)=114℃、MFR=2.5g/10分、Mw/Mn=3.12)
(B)−1:脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛/1,2−シクロヘキサンジカルボン酸カルシウム塩=34/66質量%)
(C)−1:水素添加石油樹脂(荒川化学工業(株)製の商品名「アルコンP115」、軟化温度Ts(C)=115℃)
(D)−1:三菱化学エンジニアリングプラスチックス(株)製商品名ノバミッド1022C6(ポリアミド6)
(D)−2:三菱化学エンジニアリングプラスチックス(株)商品名MXナイロンS6007(ポリアミドMXD6、ポリメタキシリレンアジパミド(メタキシレンジアミン/アジピン酸=50.5/49.5モル%))
(E)−1:日本合成化学工業(株)製商品名ソアノールDC3203FB(EVOH、エチレン含有率:32モル%、ケン化度:99.5モル%)
(A)−1、(B)−1、及び、(C)−1を、混合質量比79.9:0.1:20の割合でドライブレンドした後、Φ25mm同方向二軸押出機に投入し、設定温度220℃にて溶融混練した後、ストランド状口金より押出した。次いで、水槽にて冷却後、ペレット状にカットし、樹脂組成物(X)を得た。
このようにして得た樹脂組成物(X)のペレットについて、密度、結晶融解熱量(ΔHm)、MFR、貯蔵せん断弾性率(G’)の測定を行った。
次に、得られた未延伸単層フィルムを60℃に加熱したロール式延伸機にて縦方向に3倍延伸した後、この縦延伸フィルムを100℃加熱したテンター式横延伸機で横方向に3.5倍延伸した。次いで、215℃で熱固定し、横方向に20%の弛緩を行った後、180℃に冷却し、5%の再横延伸を行うことで、厚みが0.015mmであるフィルム(Z)を得た。
この際に塗布した接着剤は、その主剤として東洋モートン(株)製の商品名TM−329、硬化剤として東洋モートン(株)製の商品名CAT−8B、さらに、希釈溶剤として酢酸エチルを用い、これらTM−329、CAT−8B及び酢酸エチルを、混合質量比13.8/13.8/72.4の割合で混合してなる接着剤である。
得られた多層フィルムについて、酸素透過率、水蒸気透過率、ヘーズ、ヒートシール強度について評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、(A)−1の代わりに(A)−2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、(A)−1、(B)−1、及び、(C)−1の混合質量比を、89.9:0.1:10に変更した以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(D)−1及び(D)−2を用い、(D)−1/(D)−2/(D)−1の3層からなる多層構成のフィルムで共押し出し、30℃のキャストロールで急冷し、厚みが(D)−1/(D)−2/(D)−1=0.053/0.027/0.053mm(総厚み=0.133mm)である未延伸多層フィルムを得た。
次に、得られた未延伸多層フィルムを実施例1と同様の条件で延伸、熱固定を行い、厚みが(D)−1/(D)−2/(D)−1=0.006/0.003/0.006mm(総厚み=0.015mm)であるフィルム(Z)を得た。
得られた多層フィルムについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例4において、フィルム(Y)を作製する際、(A)−1、(B)−1、及び、(C)−1の混合質量比を79.9:0.2:20に変更すると共に、フィルム(Z)を作製する際に、(D)−2を(E)−1に置き換えた以外は、実施例4と同様の方法で多層フィルムを作製した。
得られた多層フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、(A)−1のみからフィルム(Y)を作製した以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、フィルム(Y)を作製する際に、(A)−1及び(B)−1を、混合質量比99.9:0.1の割合でドライブレンドした以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、フィルム(Y)を作製する際に、(A)−1及び(C)−1を、混合質量比80:20の割合でドライブレンドした以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、フィルム(Y)を作製する際に、(A)−1の代わりに(A)−3を用い、(A)−3、(B)−1及び(C)−1を、混合質量比79.9:0.1:20の割合でドライブレンドした以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、フィルム(Y)を作製する際に、(A)−1の代わりに(A)−4を用い、(A)−4、(B)−1、(C)−1を混合質量比79.9:0.1:20の割合でドライブレンドした以外は、実施例1と同様の方法で多層フィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、フィルム(Y)を作製する際に、(A)−1の代わりに(A)−5を用い、(A)−5、(B)−1、(C)−1を混合質量比79.9:0.1:20の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法でインフレーション成形を行ったが、バブルの安定性が悪く、フィルムを作製できなかった。
加えて、樹脂組成物(X)における条件(i)、条件(ii)が本発明の範囲を外れる比較例4、及び、比較例5は、防湿性、透明性、ヒートシール性のいずれか一つ以上が不十分であった。
Claims (9)
- エチレン系重合体(A)、核剤(B)、ならびに、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、及びそれらの水素添加誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上の組み合わせからなるオレフィン相溶樹脂(C)を含む樹脂層(I)と、該樹脂層(I)以外の他の層と、を備えた多層フィルムであって、
前記樹脂層(I)が下記条件(i)〜(iii)を満たすことを特徴とする多層フィルム。
条件(i):密度が0.940g/cm3〜0.960g/cm3
条件(ii):結晶融解熱量(ΔHm)が120J/g〜160J/g
条件(iii):200℃における貯蔵せん断弾性率(G’)が、2,000Pa〜50,000Pa - 樹脂層(I)を最外層として備えた請求項1に記載の多層フィルム。
- 前記樹脂層(I)が、さらに下記条件(iv)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の多層フィルム。
条件(iv):温度190℃、荷重2.16kgで測定したMFRが0.1g/10分〜5.0g/10分 - 樹脂層(I)中に占める核剤(B)の含有割合が0.01〜3.0質量%であり、かつ、オレフィン相溶樹脂(C)の含有割合が5〜30質量%である請求項1〜3の何れかに記載の多層フィルム。
- JIS K2207に基づき測定した前記オレフィン相溶樹脂(C)の軟化温度Ts(C)が、前記エチレン系重合体(A)の示差走査熱量測定における冷却速度10℃/分で測定される結晶化ピーク温度Tc(A)+15℃以下である請求項1〜4の何れかに記載の多層フィルム。
- JIS K7129B法に基づき、温度40℃、相対湿度90%で測定した厚み0.07mmでの前記多層フィルムの水蒸気透過率が2.0g/(m2・24時間)以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の多層フィルム。
- JIS K7105に基づき測定した厚み0.07mmでの前記多層フィルムのヘーズ値が10%以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の多層フィルム。
- 樹脂層(I)以外の他の層として、ポリアミド系樹脂、及び/又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を含む層を少なくとも1層以上備えた請求項1〜7の何れかに記載の多層フィルム。
- 請求項1〜8の何れかに記載の多層フィルムを用いて形成された包装資材。
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