JP6183063B2 - 樹脂組成物、該組成物を用いた包装用フィルム、多層フィルム、及び包装資材 - Google Patents

樹脂組成物、該組成物を用いた包装用フィルム、多層フィルム、及び包装資材 Download PDF

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Description

本発明は、防湿性、透明性、耐ボイル性に優れた包装用フィルムとなり得る新規樹脂組成物、及び当該新規樹脂組成物からなる包装用フィルム等に関する。
食品包装用や医薬品の包装用フィルムとして、ポリオレフィン系樹脂やポリアミド系樹脂からなるフィルムが、単独のフィルムとして、或いは他のフィルムとの積層フィルムとして広く使用されている。特に、液体充填包装等の用途においては、その優れた酸素ガスバリア性、耐屈曲性、透明性、耐熱性、強靱性等の点から、ポリアミド系樹脂フィルムが広く使用されている。
このようなポリアミド系樹脂フィルムを、例えば味噌、醤油等の調味料、スープ、レトルト食品等の水分含有食品、または薬品の包装袋等に使用する際は、シーラント層を設けたポリアミド系フィルム積層体を製造し、この積層体から袋を作製し、該袋の開口部を通じて内容物を充填した後、該開口部をヒートシールして包装するのが一般的であった。この際、ヒートシール性を有するシーラント層としては、一般的に、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」と省略する)やポリプロピレン等が用いられていた。
中でも、透明性、ヒートシール性の点から、LLDPEなどのエチレン系樹脂を主成分とするシーラント層が多用されており、特に、生産性やコストの面から、インフレーション成形にて得られるものが一般的に使用されてきた。
しかしながら、インフレーション成形にて得られたLLDPEのシーラント層は、高度な防湿性が要求される用途への使用が困難であった。
そこで、中密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンをインフレーション成形したものを用いた技術が提案されている。例えば特許文献1には、中密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンをインフレーション成形したものをシーラント層として、ポリアミド系樹脂フィルムと積層した多層フィルムが開示されている。
特開2001−278355号公報
特許文献1に記載される積層フィルムを用いた包装袋は、フィルムが徐冷されることで球晶のサイズが粗大になり、透明性や防湿性を損なうことが多く、高度な防湿性が要求される用途に使用するには不十分なものであった。また、石油樹脂を添加することで防湿性を向上させた場合、ボイル処理が必要とされる用途においては、ボイル処理時に石油樹脂がフィルム表面にブリードアウトするため、外観を損なう場合がある。このように、従来技術においては、インフレーション成形にて得られるシーラント層と他の層との多層フィルムであって、十分な防湿性、透明性、耐ボイル性を有する実用的な包装用フィルムはなかった。
このような従来技術の課題に鑑み、本発明は、十分な防湿性、耐熱性、透明性を有する新たな包装用フィルムとなり得る新規樹脂組成物、及び当該新規樹脂組成物からなる包装用フィルム等を提供することを目的とする。
上記課題を解決するべく鋭意研究を進めた結果、本発明者らは以下の発明を完成させた。
すなわち、第1の本発明は、エチレンとヘキセン−1とオクテン−1とからなるエチレン系共重合体(A)、高圧法エチレン単独重合体(B)、及び、結晶核剤(C)を含有し、結晶融解熱量が120〜160J/gであり、190℃、2.16kg荷重で測定したMFRが1.5〜3.0g/10分である樹脂組成物である。
第1の本発明において、「エチレン系共重合体(A)」とは、全構造単位中、エチレン単位が50質量%以上を占める共重合体であって、ここにさらにヘキセン−1単位とオクテン−1単位とを有する共重合体を意味する。「高圧法エチレン単独重合体(B)」とは、高圧法によって得られるエチレンホモポリマーを意味する。
第2の本発明は、第1の本発明に係る樹脂組成物からなる包装用フィルムである。
第3の本発明は、第2の本発明に係る包装用フィルムの少なくとも片側に、ポリアミド系樹脂を含むフィルムを積層してなる構成を備えた多層フィルムである。
第4の本発明は、第3の本発明に係る多層フィルムを用いて形成された包装資材である。
本発明に係る樹脂組成物によれば、十分な防湿性、透明性、耐ボイル性を有する包装用フィルムを提供できる。当該包装用フィルムは、例えば、食品や医薬品等の包装資材などのように、防湿性、透明性、耐ボイル性が要求される包装資材として好適に用いることができる。
特に、ポリアミド系樹脂を含むフィルムと組み合わせて多層フィルムとすることで、防湿性、透明性、耐ボイル性を維持しつつ、優れた酸素ガスバリア性、耐屈曲性、強靱性を付与できるため、液体充填包装等の用途に好適に用いることができる。
以下、本発明の実施形態の一例としての樹脂組成物、包装用フィルム及び多層フィルムについて説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
1.樹脂組成物
本発明に係る樹脂組成物は、エチレン系共重合体(A)、高圧法エチレン単独重合体(B)、及び、結晶核剤(C)を含有する。
1.1.エチレン系共重合体(A)
本発明に用いるエチレン系共重合体(A)は、エチレンと、ヘキセン−1と、オクテン−1とからなる共重合体であることが重要である。エチレン系共重合体(A)は1種類の共重合体を単独で、或いは、複数種類の共重合体を混合して用いることができる。エチレン系共重合体(A)を用いることで、結晶構造が緻密になり、石油樹脂を添加することなく優れた透明性、防湿性を発現させることができる。すなわち、包装用フィルムとして適用した場合において、ボイル時における石油樹脂のブリードアウトの心配がなく、耐ボイル性にも優れた包装用フィルムとすることができる。
前記エチレン系共重合体(A)において、エチレン単位は全構造単位の50質量%以上を占めている。好ましくは95質量%以上である。上限は好ましくは98質量%以下である。
前記エチレン系共重合体(A)中に占めるヘキセン−1の割合は1.0〜3.0質量%であることが好ましい。下限はより好ましくは1.1質量%以上、さらに好ましくは1.2質量%以上である。上限はより好ましくは2.9質量%以下、さらに好ましくは2.7質量%以下である。
また、前記エチレン系共重合体(A)中に占めるオクテン−1の割合は1.0〜2.0質量%であるのが好ましい。下限はより好ましくは1.1質量%以上、さらに好ましくは1.2質量%以上である。上限はより好ましくは1.8質量%以下、さらに好ましくは1.6質量%以下である。
ヘキセン−1、及び、オクテン−1の割合がかかる範囲内であれば、優れた防湿性と透明性とを有する包装用フィルムが得られる。
また、前記エチレン系共重合体(A)の密度は0.938〜0.950g/cmであることが好ましい。下限はより好ましくは0.939g/cm以上、さらに好ましくは0.940g/cm以上である。上限はより好ましくは0.948g/cm以下、さらに好ましくは0.946g/cm以下である。
前記エチレン系共重合体(A)の密度がかかる範囲内であれば、包装用フィルムの透明性と防湿性とをさらに高めることができる。
前記エチレン系共重合体(A)は、示差走査熱量測定における昇温速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が120〜135℃であり、かつ、結晶融解熱量が150〜190J/gであることが好ましい。かかる範囲内に結晶融解ピーク温度及び結晶融解熱量を有するエチレン系共重合体(A)を用いることで、包装用フィルムの透明性と防湿性とを両立することができる。
前記結晶融解ピーク温度の下限はより好ましくは122℃以上、さらに好ましくは125℃以上である。上限はより好ましくは132℃以下、さらに好ましくは130℃以下である。
前記結晶融解熱量の下限はより好ましくは155J/g以上、さらに好ましくは160J/g以上である。上限はより好ましくは180J/g以下、さらに好ましくは170J/g以下である。
なお、前記結晶融解ピーク温度は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121に準じて昇温速度10℃/分で測定することができ、前記結晶融解熱量は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7122に準じて昇温速度10℃/分で測定することができる。
1.2.高圧法エチレン単独重合体(B)
本発明に係る包装用フィルムに高圧法エチレン単独重合体(B)を添加することでインフレーション成形時におけるバブルの安定性が向上する。本発明に用いる高圧法エチレン単独重合体(B)は、高圧法として一般的に知られている重合方法によって得られるエチレンホモポリマーを使用することできる。高圧法としては、例えば、塊状重合法、または、ICI法などにより、空気中の酸素や過酸化物などのラジカル開始剤を触媒として、エチレンを100〜400MPa、100〜350℃の高圧・高温下で多段ガス圧縮機を用いて重合する方法などを採用することができる。
前記高圧法エチレン単独重合体(B)の密度は0.920〜0.930g/cmであることが好ましい。前記高圧法エチレン単独重合体(B)の密度がかかる範囲内であれば、本発明の包装用フィルムの防湿性を損なうことなく、インフレーション成形時におけるバブルの安定性を向上させることができる。
前記高圧法エチレン単独重合体(B)の密度の下限はより好ましくは0.922g/cm以上、さらに好ましくは0.924g/cm以上である。上限はより好ましくは0.929g/cm以下、さらに好ましくは0.928g/cm以下である。
前記高圧法エチレン単独重合体(B)は、温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が0.3〜2.0g/10分であることが好ましい。前記高圧法エチレン単独重合体(B)のメルトフローレートがかかる範囲内であれば防湿性や透明性を損なうことなく、インフレーション成形時において優れたバブル安定性を付与することができる。
前記高圧法エチレン単独重合体(B)のメルトフローレート(MFR)の下限はより好ましくは0.4g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。上限はより好ましくは1.8g/10分以下、さらに好ましくは1.6g/10分以下である。
1.3.結晶核剤(C)
本発明に用いる結晶核剤(C)は、包装用フィルムの透明性、防湿性を向上させる効果が認められれば、その種類を特に制限するものではない。
この種の核剤としては、例えば、脂肪族、脂環族、および芳香族のカルボン酸、ジカルボン酸または多塩基性ポリカルボン酸、相当する無水物および金属塩などの有機酸の金属塩化合物、環式ビス−フェノールホスフェート、2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプテンジカルボン酸などの二環式ジカルボン酸、及び、その金属塩、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−ジカルボキシレートなどの二環式ジカルボキシレート、及び、その金属塩、1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,3−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,3−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,5−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4,5−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−プロピルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8,−テトラヒドロ−1−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8,−テトラヒドロ−2−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−エチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−エチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−クロルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−クロルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチル−ベンジリデン−2,4−O−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチル−ベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチル−ベンジリデン−2,4−O−p−クロルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−クロル−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトールなどのジアセタール化合物、ナトリウム2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、アルミニウムビス[2,2’−メチレン−ビス−(4−6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート]、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウムホスフェートなどのリン酸エステル化合物や、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等の脂肪酸、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、シリカ、タルク、カオリン、炭化カルシウム等の無機粒子、グリセロール、グリセリンモノエステルなどの高級脂肪酸エステル等を挙げることができる。
これらの中でも、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩が特に好ましい。
以上の結晶核剤は、これらのうちの一種を単独で用いることも、また、これらのうちの二種類以上を選択して組み合わせて併用することもできる。
前記結晶核剤(C)の具体例としては、新日本理化社製「ゲルオールD」シリーズ、「ゲルオールMD」シリーズ、旭電化工業社製「アデカスタブ」シリーズ、ミリケンケミカル社製「Millad」シリーズ、「Hyperform」シリーズ、BASF社製「IRGACLEAR」シリーズ等が挙げられ、また結晶核剤のマスターバッチとしては理研ビタミン社製「リケマスターCN」シリーズ、ミリケンケミカル社製「HL3−4」等があげられる。この中でも特に透明性を向上する効果が高いものとして、ミリケンケミカル社製「HYPERFORM HPN−20E」、「HL3−4」、理研ビタミン社製「リケマスターCN−001」「リケマスターCN−002」等を挙げることができる。
1.4.その他の成分
前記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン系共重合体(A)、及び、高圧法ポリエチレン単独重合体(B)以外の樹脂や熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の添加剤を含有してもよい。例えばポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂や、ポリオレフィン系の石油樹脂、或いは、ポリスチレン系の熱可塑性エラストマー等を配合することができる。
例えば環状オレフィン系樹脂を含有すれば、防湿性を損なうことなく透明性をさらに向上させることができる。環状オレフィン系樹脂の具体例としては、下記一般式(1)で表される環状オレフィンとエチレンのランダム共重合体、環状オレフィン開環(共)重合体、環状オレフィン開環(共)重合体の水素添加物、及び、これらの(共)重合体のグラフト変性物等があげられる。
一般式(1)中のR〜R12は水素原子又は炭化水素基であって、それぞれ同一であっても異なっていても良い。また、RとR10、又はR11とR12とは一体化して2価の炭化水素基を形成してもよい。また、RとR10と、R11又はR12とは互いに環を形成しても良い。nは0又は正の整数であって、R〜Rが複数回繰り返される場合には、これらはそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
ここで、一般式(1)で表される環状オレフィンの例としては、下記一般式(2)のビシクロヘプト−2−エン(2−ノルボルネン)及びその誘導体、例えば、ノルボルネン、6−メチルノルボルネン、6−エチルノルボルネン、6−n−ブチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン等が挙げられる。
また、下記一般式(3)のテトラシクロ−3−ドデセン及びその誘導体としては、例えば、8−メチルテトラシクロー3−ドデセン、8−エチルテトラシクロー3−ドデセン、8−ヘキシルテトラシクロ−3−ドデセン、10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセン、5,10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセン等が挙げられる。
上述した環状オレフィン系樹脂としては、日本ゼオン(株)の商品名「ZEONOR」シリーズ、三井化学(株)の商品名「APEL」シリーズ、ポリプラスチックス(株)の商品名「TOPAS」シリーズなどが工業的に入手することができる。
なお、環状オレフィン系樹脂は、例えば、特開昭60−168708号公報、特開昭61−120816号公報、特開昭61−115912号公報、特開昭61−115916号公報、特開昭61−271308号公報、特開昭61−272216号公報、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報などに記載されている公知の方法に準じて製造することができる。
環状オレフィン系樹脂としては、上記のようなエチレンと環状オレフィン系ランダム共重合体、環状オレフィン開環(共)重合体あるいは環状オレフィン開環(共)重合体の水素添加物を、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸あるいはその無水物等の変性剤で変性したグラフト重合体も使用することができ、これらの変性剤は単独、あるいは、複数を組み合わせて使用することができる。
1.5.各成分の含有割合
前記樹脂組成物中に占める前記エチレン系共重合体(A)の割合は50〜85質量%であることが好ましい。前記エチレン系共重合体(A)の割合がかかる範囲内であれば、優れた防湿性を発現させることができる。
前記樹脂組成物中に占めるエチレン系共重合体(A)の割合は、下限がより好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、上限がより好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
前記樹脂組成物中に占める前記高圧法エチレン単独重合体(B)の割合は15〜50質量%であることが好ましい。前記高圧法エチレン単独重合体(B)の割合がかかる範囲内であれば、防湿性を損なうことなく、インフレーション成形時におけるバブルの安定性を向上させることができる。
前記樹脂組成物中に占める高圧法エチレン単独重合体(B)の割合は、下限がより好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、上限がより好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
前記樹脂組成物中に占める結晶核剤(C)の割合は0.01〜3.00質量%であることが好ましい。結晶核剤(C)の割合がかかる範囲内であれば、優れた透明性と防湿性を付与することができる。
前記樹脂組成物中に占める結晶核剤(C)の割合は、下限がより好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、上限がより好ましくは2.50質量%以下、さらに好ましくは2.00質量%以下である。
前記樹脂組成物中に占める「その他の成分」の割合は特に限定されない。例えば、その他成分として環状オレフィン系樹脂を用いる場合、樹脂組成物中に占める環状オレフィン系樹脂の割合は10〜50質量%であることが好ましい。この場合の下限はより好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。上限はより好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
1.6.樹脂組成物の物性
本発明に係る樹脂組成物は、示差走査熱量測定における昇温速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が120〜160J/gを満足することが重要である。かかる範囲内に結晶融解熱量を有することで、包装用フィルムとした場合の透明性と防湿性を両立することができる。
前記結晶融解熱量の下限は好ましくは122J/g以上、より好ましくは125J/g以上である。上限は好ましくは158J/g以下、より好ましくは156J/g以下である。
なお、前記結晶融解熱量は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7122に準じて昇温速度10℃/分で測定することができる。
本発明では、上記したエチレン系共重合体(A)、高圧法エチレン単独重合体(B)、及び、結晶核剤(C)の種類や組成比を調整することで、樹脂組成物の結晶融解熱量を120〜160J/gとすることができる。
また、前記樹脂組成物は、温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が1.5〜3.0g/10分であることが重要である。メルトフローレートがかかる範囲内であれば防湿性や透明性を損なうことなく、インフレーション成形時において優れたバブル安定性を発現することができる。
前記樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)の下限は好ましくは1.7g/10分以上、より好ましくは1.9g/10分以上である。上限は好ましくは2.8g/10分以下、より好ましくは2.6g/10分以下である。
本発明では、上記したエチレン系共重合体(A)、高圧法エチレン単独重合体(B)、及び、結晶核剤(C)の種類や組成比を調整することで、樹脂組成物のメルトフローレート(190℃、2.16kg)を1.5〜3.0g/10分とすることができる。
加えて、前記樹脂組成物は、密度が0.930〜0.945g/cmであることが好ましい。密度がかかる範囲内であれば透明性と防湿性との両立効果が一層顕著となる。
前記樹脂組成物の密度の下限はより好ましくは0.931g/cm以上、さらに好ましくは0.932g/cm以上である。上限はより好ましくは0.943g/cm以下、さらに好ましくは0.941g/cm以下である。
本発明では、上記したエチレン系共重合体(A)、高圧法エチレン単独重合体(B)、及び、結晶核剤(C)の種類や組成比を調整することで、樹脂組成物の密度を0.930〜0.945g/cmとすることができる。
さらに、前記樹脂組成物は、180℃における貯蔵せん断弾性率(G’)が2〜20kPaであることが好ましい。貯蔵せん断弾性率がかかる範囲内であれば透明性と防湿性との両立効果が一層顕著となる。
前記樹脂組成物の貯蔵せん断弾性率(G’)の下限はより好ましくは3kPa以上、さらに好ましくは4kPa以上である。上限はより好ましくは10kPa以下、さらに好ましくは8kPa以下である。
本発明では、上記したエチレン系共重合体(A)、高圧法エチレン単独重合体(B)、及び、結晶核剤(C)の種類や組成比を調整することで、樹脂組成物の180℃における貯蔵せん断弾性率(G’)を2〜20kPaとすることができる。
以上のような樹脂組成物を用いることで、十分な防湿性、透明性、耐ボイル性を有する実用的な包装用フィルムを提供することができる。
2.包装用フィルム
本発明に係る包装用フィルムは上記した樹脂組成物からなる。
2.1.包装用フィルムの製造方法
包装用フィルムの製造方法は、上述した本発明に係る樹脂組成物を用いた方法であれば特に限定されるものではない。成形時における分子配向により防湿性をさらに向上できる点からは、上記した樹脂組成物をインフレーション法により成形して包装用フィルムとすることが特に好ましい。
インフレーション法による成形では、例えば原料をインフレーション押出成形機に投入し、加熱されたシリンダー内のスクリューによって練りながら完全に溶融した状態としてダイスに送り、ダイスから円形に押し出して空気を吹き上げて、空気を調節しながら吹き上げた形状を整えると共に、エアリングで冷却し、ピンチロールで引っ張り上げながら巻き取るようにすればよい。但し、このような具体的な方法に限定するものではない。
この際、筒状のチューブは、中に入れる空気の量を調整して幅を決め、樹脂を押出す量や巻取りスピードを調整してフィルムの厚みを決めることができる。
包装用フィルムをインフレーション法により製造する際のブロー比は2.0〜4.5以下であることが好ましい。ブロー比がかかる範囲を下回る場合、十分な分子配向が得られず防湿性に劣る場合があり、一方、ブロー比がかかる範囲を上回る場合、フィルム表面の荒れによる透明性の低下や、製膜時におけるバブルの安定性の低下させる場合がある。
ブロー比の下限はより好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.4以上である。上限はより好ましくは4.3以下、さらに好ましくは4.0以下である。
包装用フィルムの厚みについては、用途に応じて適宜決定可能であるが、0.02mm以上、0.3mm以下とすることが好ましい。下限はより好ましくは0.03mm以上である。上限はより好ましくは0.1mm以下である。包装用フィルムの厚みをこの範囲に調整することで、本発明による効果が一層顕著となる。
2.2.包装用フィルムの物性
本発明において、包装用フィルムは、次のような物性を備えるように調製することができる。
(水蒸気透過率)
本発明によれば、JIS K7129B法に基づき、温度40℃、相対湿度90%で測定した厚み0.05mmでの水蒸気透過率が2.0g/(m・24時間)以下となるように、包装用フィルムを調製することができる。中でも1.9g/(m・24時間)以下、その中でも1.8g/(m・24時間)以下となるように調製することがさらに好ましい。
包装用フィルムの水蒸気透過率は、エチレン系共重合体(A)、高圧法エチレン単独重合体(B)、及び、結晶核剤(C)の種類、組成、配合量として上述のものを採用することで調整することができる。或いは、インフレーション成形時のブロー比等によっても調整することができる。
(ヘーズ値)
本発明によれば、JIS K7105に基づき測定した厚み0.05mmでのヘーズ値が20%以下となるように、包装用フィルムを調製することができる。中でも18%以下、その中でも15%以下となるように調製するのがさらに好ましい。
包装用フィルムのヘーズ値は、エチレン系重合体(A)、高圧法エチレン単独重合体(B)、及び、結晶核剤(C)の種類、組成、配合量として上述のものを採用することで調整することができる。或いは、インフレーション成形時のブロー比等によっても調整することができる。
尚、上述の通り、本発明に係る樹脂組成物は石油樹脂が含まれずとも透明性と防湿性とを両立できる。すなわち、包装用フィルムとした場合、ボイル時の石油樹脂のブリードアウトの心配がなく、耐ボイル性に優れている。
このように、フィルムの透明性及び水蒸気透過率を優れたものとしつつ、耐ボイル性も付与できることは、本発明に係る樹脂組成物を用いたことによってはじめて奏される顕著且つ特有の効果である。
2.3.包装用フィルムの用途
本発明に係る包装用フィルムを用いて各種包装資材を形成することができる。特に本発明に係る包装用フィルムは、防湿性、透明性、耐ボイル性に優れており、シーラントフィルムとして各種基材と積層することにより、透明性を損なうことなく各種基材の防湿性を向上させることができる。それゆえ、食品向けをはじめとする各種包装資材等に広く使用することができる。
3.多層フィルム
本発明に係る包装用フィルムを、各種基材フィルムと積層して積層フィルム(多層フィルム)を形成することで、当該多層フィルムを例えば食品や医薬品等の包装資材等として好適に使用することができる。ここで、本発明に係る包装用フィルムは、ヒートシール可能なシーラントフィルム(シーラント層)としても機能し得ることから、前記多層フィルムの少なくとも1つの最外層を構成することが好ましい。
3.1.基材フィルム
基材フィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂や、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
特に、前記基材フィルムとして、酸素ガスバリア性、耐屈曲性、強靱性等の点から、後述するポリアミド系樹脂を含むフィルムを用いることが好ましく、さらにポリアミド系樹脂の中でもポリアミドMXD6(ポリメタキシレンアジパミド)を含むフィルムを用いることがさらに好ましい。
また、より高度な酸素ガスバリア性の点から、後述するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、「EVOH」と記載する。)を含むフィルムを用いることも好ましい。
なお、基材フィルムは単一の樹脂からなる単層フィルムであっても、2種類以上の樹脂からなる多層フィルムであってもどちらでも構わない。
3.1.1.ポリアミド系樹脂
前記ポリアミド系樹脂としては、特に限定されないが、3員環以上のラクタムを主成分とするもの、重合可能なω−アミノ酸を主成分とするもの、或いは、ジアミンとジカルボン酸を主成分とするものを用いることが好ましい。
ポリアミド系樹脂が共重合体である場合、ポリアミド成分は80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含まれているものが好ましい。
また、前記ポリアミド系樹脂が他の樹脂や添加剤等を含む組成物である場合、組成物中に占めるポリアミド成分の割合は70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
上記の3員環以上のラクタムとしては、例えばε−カプロラクタム、γ−ウンデカンラクタム、ω−ラウリルラクタムなどを挙げることできる。
上記の重合可能なω−アミノ酸としては、例えば、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノヘプタン酸、ω−アミノノナン酸、ω−アミノウンドデカン酸、ω−アミノドデカン酸などを挙げることができる。
上記のジアミンとしては、例えばテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トチメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トチメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,3/1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス−(4’−アミノシクロヘキシル)プロパンなどの脂環族ジアミン、及びメタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミンを挙げることができる。
上記のジカルボン酸としては、例えばグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ノナンジオン酸、デカンジオン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環族カルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(1,2−体、1,3−体、1,4−体、1,5−体、1,6−体、1,7−体、1,8−体、2,3−体、2,6−体、2,7−体)、スルホイソフタル酸金属塩などの芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。
上記のような3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、或いはジアミンとジカルボン酸から誘導される前記ポリアミド系樹脂の具体例としては、例えば、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,9、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ポリアミド6−6,6、ポリアミド6−6,10、ポリアミド6−6,11、ポリアミド6,12、ポリアミド6−6,12、ポリアミド6−6T、ポリアミド6−6I、ポリアミド6−6,6−6,10、ポリアミド6−6,6−12、ポリアミド6−6,6−6,12、ポリアミド6,6−6T、ポリアミド6,6−6I、ポリアミド6T−6I、ポリアミド6,6−6T−6I等が挙げられる。これらのポリアミド系樹脂は、ホモポリマーであってもよく、また共重合体やこれらの混合物であっても良い。
3.1.2.EVOH
上述したように、例えば防湿性の向上を目的として、多層フィルムにおいてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)を含有する層を設けることができる。
この際、前記EVOHは特に限定されない。公知の方法によって製造されるEVOHを用いることができる。その中でも、特にエチレン含有率の下限が25モル%以上、より好ましくは29モル%以上、かつ、上限が38モル%以下、より好ましく35モル%以下であり、ケン化度の下限が95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、かつ、上限が100モル%以下のEVOHが、本多層フィルムに用いるEVOHとして特に適している。エチレン含有率が25モル%以上、38モル%以下の範囲であれば、溶融押出し時の溶融押出し性が良好となり、成形品外観、機械強度、酸素ガスバリア性が良好となる。また、EVOHのケン化度が95モル%以上、100モル%以下の範囲であれば、酸素ガスバリア性や耐湿性が良好となる。
また、前記EVOHは、エチレンと酢酸ビニル二元共重合体のケン化物の他に、共重合成分として少量のプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等のα-オレフィンや、不飽和カルボン酸、またはその塩等を含むものであってもよい。
3.1.3.その他の成分
前記ポリアミド系樹脂、又は、EVOHを含む基材フィルムに柔軟性、耐衝撃性等を付与する目的で、ポリオレフィン類、ポリアミドエラストマー類、ポリエステルエラストマー類などの樹脂を添加することができる。
上記のポリオレフィン類は、主鎖中のポリエチレン単位、ポリプロピレン単位を主成分とするものであり、無水マレイン酸等でグラフト変性していてもよい。ポリエチレン単位、ポリプロピレン単位以外の構成単位としては、酢酸ビニル、あるいはその部分けん化物、(メタ)アクリル酸、あるいは、それらの部分金属イオン中和物、(メタ)アクリル酸エステル類、ブテンなどの1−アルケン類、アルカジエン類、スチレン類などを挙げることができる。これらの構成単位を複数含んでも構わない。
上記のポリアミドエラストマー類は、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド等のポリアミド系ブロック共重合体に属するものであり、アミド成分としてはポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12等が例示され、エーテル成分としては、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシー1,2−プロピレングリコール等が例示されるが、好ましくはポリテトラメチレングリコールとポリラウリルラクタム(ポリアミド12)を主成分とする共重合体である。また、任意成分としてドデカンジカルボン酸、アジピン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸を少量用いたものであってもよい。
上記のポリエステルエラストマー類としては、例えばポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールを組み合わせたポリエーテル・エステルエラストマーや、ポリブチレンテレフタレートとポリカプロラクトンを組み合わせたポリエステル・エステルエラストマーなどを挙げることができる。
前記ポリオレフィン類、ポリアミドエラストマー類、ポリエステルエラストマー類などの樹脂は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて混合して使用してもよい。この際、当該樹脂の添加量は、ポリアミド系樹脂組成物中或いはEVOH組成物中、0.1〜20質量%の割合とするのが好ましい。下限はより好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。上限はより好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。かかる範囲で、ポリオレフィン類、ポリアミドエラストマー類、ポリエステルエラストマー類などの樹脂を添加することにより、透明性、耐熱性を低下させることなく、柔軟性や耐衝撃性を付与することができる。
基材フィルムを構成する樹脂組成物には、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の添加剤を配合することができる。
基材フィルムの製造方法は、特に限定されるものではない。例えば一般的なTダイキャスト法、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー法、インフレーション法等により製膜することができる。例えば、ポリアミド樹脂を用いて前記基材フィルムを製造する場合は、生産性、製膜性の点、及び、得られる基材フィルムの強度、耐熱性の点からテンター延伸法を選択することが好ましい。この際、延伸フィルムの延伸倍率は、面積倍率で1.1〜16倍の範囲にあることが好ましい。また、面積倍率の下限は1.5倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることがさらに好ましい。一方、面積倍率の上限は15倍以下であることがより好ましく、14倍以下であることがさらに好ましい。かかる範囲でフィルムを延伸することにより、強度、耐熱性、透明性に優れた基材フィルムを得ることができる。
3.2.多層フィルムにおける各層(各フィルム)の厚み比率
本発明において、多層フィルムに占める包装用フィルムの厚み比率は、50〜90%であることが好ましい。厚み比率の下限はより好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上である。上限はより好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である。
多層フィルムに占める包装用フィルムの厚み比率がかかる範囲内であれば、多層フィルムに優れた防湿性を付与することができる。
多層フィルム全体としての厚みについては、用途に応じて適宜決定可能であるが、0.03mm以上、0.4mm以下とすることが好ましい。下限はより好ましくは0.04mm以上である。上限はより好ましくは0.3mm以下である。多層フィルムの厚みをこの範囲に調整することで、本発明による効果が一層顕著となる。
3.3.多層フィルムの製造方法(積層方法)
本発明に係る包装用フィルムと、前記基材フィルムとの積層方法としては、全ての層を共押出によって一度に製膜してもよいし、また、各層を個々に製膜した後、一般的なラミネート法により貼り合せてもよい。各層の製膜性、製膜方法を考慮した場合、包装用フィルムと基材フィルムとを個々に製膜した後、一般的なラミネート法により貼り合せることが好ましい。
なお、包装用フィルムと基材フィルムとを個別に製膜して一般的なラミネート方法によって貼り合せる場合には、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤を用いたドライラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法、押出ラミネート法等により貼り合せることができる。
3.4.多層フィルムの用途
本発明に係る包装用フィルムと各種基材フィルムとを積層して得られる多層フィルムは、包装資材に好適に用いることができる。例えば多層フィルムを袋状としたのち、ここに食品や医薬品等を充填して密封することができる。
特に、本発明に係る包装用フィルムと、ポリアミド系樹脂を含む基材フィルムとを積層した多層フィルムは、液体充填包装等の用途に好適に用いることができる。
また、本発明に係る包装用フィルムと、ポリアミド系樹脂を含む基材フィルム(ナイロンフィルム)とを積層した多層フィルムは、真空断熱材を構成するフィルムとして好適に用いることができる。
真空断熱材とは、例えば、金属蒸着フィルムとシーラントフィルムとを貼り合せたフィルム同士を、シーラントフィルム側を合わせて3方向をヒートシールして袋状とし、内部に断熱効果を発現しうる材料、例えば、シリカ、ケイ酸カルシウム等の微粉末や、ガラスウール、ロックウール等の無機繊維や、スチレンフォーム、ポリウレタンフォーム等の樹脂発泡成形体などを封入した後、内部を好ましくは100Pa以下の真空度に保持したまま残りの1方向をヒートシールしたものである。真空断熱材は、断熱性、軽量性に優れているため、冷蔵・冷凍庫、炊飯器、卓上ポット、クーラーボックス、住宅建材、自動車、及び、鉄道車両等の断熱構造体として広く用いることができる。
すなわち、真空断熱材における「シーラントフィルム」として、本発明に係る包装用フィルムを用いることができ、また、真空断熱材における「金属蒸着フィルムとシーラントフィルムとを貼り合せたフィルム」として、本発明に係る多層フィルムを用いることができる。
4.用語の説明
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。他方、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、「主成分」と表現した場合、特にことわらない限り、主成分が1つである場合には、全体成分の50%(モル%、質量%、体積%)以上を占める成分の意味であり、全体成分の50%(モル%、質量%、体積%)以上を占める成分がない場合は、全体成分の中で最も含有量が多い成分の意味である。
本発明において、「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
<評価方法>
以下の実施例・比較例で表示される種々の測定値及び評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向と呼ぶ。
(1)密度
JIS K7112に準じて、密度勾配管法にて、後述する樹脂組成物の密度(g/cm3)を求めた。
(2)結晶融解ピーク温度
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(商品名「Pyris1 DSC」)を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを昇温速度10℃/分で−40℃から220℃まで昇温し、220℃で2分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/分で220℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解ピーク温度(℃)を求めた。
(3)結晶融解熱量
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(商品名「Pyris1 DSC」)を用いて、JIS K7122に準じて、試料約10mgを昇温速度10℃/分で−40℃から220℃まで昇温し、220℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/分で220℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解熱量(J/g)を求めた。
(4)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210に準じて、温度190℃、荷重2.16kgの条件にて、後述する樹脂組成物のMFR(g/10分)を求めた。
(5)貯蔵せん断弾性率(G’)
レオメトリックス社製RDAII(粘弾性測定装置ダイナミックアナライザー)を用いて、温度140〜220℃、周波数1Hz、昇温速度3℃/分、歪み量0.5%の条件で、後述する樹脂組成物の貯蔵せん断弾性率(G’)の測定を行った。得られた結果より、180℃における貯蔵せん断弾性率(G’)の値を読み取った。
(6)水蒸気透過率
JIS K7129Bに基づき、MOCON社製PERMATRAN W 3/31を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下において、厚み0.05mmのサンプルについて水蒸気透過率を測定した。
評価基準としては、水蒸気透過率が2.0g/(m・24時間)以下であるものを「合格」とした。
(7)ヘーズ(透明性)
JIS K7105に基づいて、全光線透過率および拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。
評価基準としては、厚み0.05mmでのヘーズが20%以下であるものを「合格」とした。
[ヘーズ]=[拡散透過率]/[全光線透過率]×100
(8)フィルム外観
インフレーション成形したフィルムサンプルの外観を目視にて評価した。フィルム全体が平滑であり、シワ等の外観不良がないものを「○」、フィルムの中央部、又は、端部にシワが入っているものを「×」とした。
(9)耐ボイル性
インフレーション成形したフィルムサンプルを98℃の熱水中で30分間ボイルした後、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で24時間保管後のフィルム外観を目視にて評価した。外観に変化がないものを「○」、表面が白化しているものを「×」とした。
<使用した材料>
[エチレン系共重合体(A)]
(A)−1:エチレン系共重合体(エチレン/ヘキセン−1/オクテン−1=97.0/1.5/1.5質量%、密度=0.944g/cm、結晶融解ピーク温度=128℃、結晶融解熱量=169J/g、MFR=4g/10分)
(A)−2:エチレン系共重合体(エチレン/ヘキセン−1/オクテン−1=95.8/2.9/1.3質量%、密度=0.938g/cm、結晶融解ピーク温度=126℃、結晶融解熱量=156J/g、MFR=4g/10分)
(A)−3:エチレン系共重合体(エチレン/ブテン−1/オクテン−1=98.0/0.8/1.2質量%、密度=0.941g/cm、結晶融解ピーク温度=128℃、結晶融解熱量=160J/g、MFR=0.9g/10分)
(A)−4:エチレン系共重合体(エチレン/ブテン−1/オクテン−1=98.3/0.4/1.3質量%、密度=0.946g/cm、結晶融解ピーク温度=129℃、結晶融解熱量=176J/g、MFR=1.3g/10分)
(A)−5:エチレン系共重合体(エチレン/ヘキセン−1/オクテン−1=93.8/4.6/1.6質量%、密度=0.936g/cm、結晶融解ピーク温度=128℃、結晶融解熱量=141J/g、MFR=0.5g/10分)
[高圧法エチレン単独重合体(B)]
(B)−1:高圧法エチレン単独重合体(エチレン=100質量%、密度=0.924g/cm、結晶融解ピーク温度=112℃、結晶融解熱量=93J/g、MFR=1.5g/10分)
(B)−2:高圧法エチレン単独重合体(エチレン=100質量%、密度=0.926g/cm、結晶融解ピーク温度=114℃、結晶融解熱量=115J/g、MFR=0.4g/10分)
(B)−3:高圧法エチレン単独重合体(エチレン=100質量%、密度=0.929g/cm、結晶融解ピーク温度=116℃、結晶融解熱量=123J/g、MFR=1.3g/10分)
[核剤(C)]
(C)−1:脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛/1,2−シクロヘキサンジカルボン酸カルシウム塩=34/66質量%)
(実施例1)
(A)−1、(B)−1、及び、(C)−1を、混合質量比84.9:15:0.1の割合でドライブレンドした後、Φ25mm同方向二軸押出機に投入し、設定温度220℃にて溶融混練した後、ストランド状口金より押出した。次いで、水槽にて冷却後、ペレット状にカットし、樹脂組成物を得た。
このようにして得た樹脂組成物のペレットについて、密度、結晶融解熱量、MFR、貯蔵せん断弾性率(G’)の測定を行った。
上記のようにして得た樹脂組成物のペレットを、Φ30mm単軸押出機に投入し、設定温度180℃で溶融混練した後、環状口金より設定温度180℃、ブロー比2.8の条件でインフレーション成形を行い、厚み0.05mmのフィルムサンプルを得た。
得られたフィルムサンプルについて水蒸気透過率、ヘーズ、フィルム外観、耐ボイル性の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、(A)−1、(B)−1、及び、(C)−1の混合質量比を69.9:30:0.1とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムサンプルの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、(A)−1、(B)−1、及び、(C)−1の混合質量比を54.9:45:0.1とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムサンプルの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例2において、(B)−1の代わりに(B)−2を用いた以外は実施例2と同様の方法でフィルムサンプルの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例2において、(B)−1の代わりに(B)−3を用いた以外は実施例2と同様の方法でフィルムサンプルの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例4において、(A)−1の代わりに(A)−2を用いた以外は実施例4と同様の方法でフィルムサンプルの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、(B)を添加せず、(A)−1、及び、(C)−1を混合質量比99.9:0.1の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法でフィルムサンプルの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、(A)−1、(B)−1、及び、(C)−1の混合質量比を39.9:60:0.1した以外は実施例1と同様の方法でフィルムサンプルの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例2において、(A)−1の代わりに(A)−3を用いた以外は実施例2と同様の方法でフィルムサンプルの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例2において、(A)−1の代わりに(A)−4を用いた以外は実施例2と同様の方法でフィルムサンプルの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例5)
実施例2において、さらに水素添加石油樹脂(荒川化学工業(株)製の商品名「アルコンP115」、軟化温度Ts=115℃、以下(P)−1とする)を添加し、(A)−1、(B)−1、(C)−1、及び、(P)−1を混合質量比49.9:30:0.1:20でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法でフィルムサンプルの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例6)
実施例2において、(C)を添加せず、(A)−1、及び、(B)−1を混合質量比70:30の割合でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法でフィルムサンプルの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例7)
実施例2において、(A)−1の代わりに(A)−5を用いた以外は実施例1と同様の方法でフィルムサンプルの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜6に係る樹脂組成物を用いて包装用フィルムを得た場合、優れた水蒸気透過率(防湿性)、ヘーズ(透明性)、外観、及び耐ボイル性を備えるフィルムとすることができる。
一方、比較例1に係る樹脂組成物には高圧法ポリエチレン単独重合体(B)が含まれておらず、外観に劣るフィルムしか得られなかった。
比較例2に係る樹脂組成物は結晶融解熱量が小さく、フィルムに所望の防湿性を付与することができなかった。
比較例3、4に係る樹脂組成物は、ヘキセン−1に替えてブテン−1を含むエチレン系共重合体を用いたため、フィルムに所望の防湿性を付与することができなかった。
比較例5に係る樹脂組成物は石油樹脂を含むため、フィルムのボイル時にブリードアウトが生じ、実用的なフィルムとすることができなかった。
比較例6に係る樹脂組成物は、結晶核剤(C)が含まれておらず、水蒸気透過率、ヘーズが劣るフィルムしか得られなかった。
比較例7に係る樹脂組成物は、結晶融解熱量及びMFRが小さく、フィルムに所望の防湿性を付与することができなかった。
(応用実施例1)
三菱化学エンジニアリングプラスチックス(株)製商品名ノバミッド1022C6(ポリアミド6)を、Φ65mm単軸押出機を用いて270℃で溶融混練した後、Tダイ口金より押出し、次いで、30℃のキャストロールで急冷し、厚みが0.133mmである未延伸単層フィルムを得た。
次に、得られた未延伸単層フィルムを60℃に加熱したロール式延伸機にて縦方向に3倍延伸した後、この縦延伸フィルムを100℃に加熱したテンター式横延伸機で横方向に3.5倍延伸した。次いで、215℃で熱固定し、横方向に20%の弛緩を行った後、180℃に冷却し、5%の再横延伸を行うことで、厚みが0.015mmであるフィルム(以下、基材フィルムという)を得た。
次に、実施例2において作製したフィルム(以下、シーラントフィルムという)の片面に、コロナ処理を行って濡れ指数を50dyne/cm以上とし、該片面に下記接着剤をグラビアコート塗布後、70℃で乾燥して酢酸エチルを除去して、厚み0.005mmの接着剤塗布層を形成した。この際に塗布した接着剤は、その主剤として東洋モートン(株)製の商品名TM−329、硬化剤として東洋モートン(株)製の商品名CAT−8B、さらに、希釈溶剤として酢酸エチルを用い、これらTM−329、CAT−8B及び酢酸エチルを、混合質量比13.8/13.8/72.4の割合で混合してなる接着剤である。
次に、接着剤を塗布したシーラントフィルムに、基材フィルムを重ねて、90℃でドライラミネートして貼り合わせた後、40℃で24時間エージングを行うことで、厚み0.07mmの多層フィルムを作製した。
上述した方法にて得られた多層フィルムについて、ヒートシール性の試験を実施した。
縦方向に150mm、横方向100mmに切り出した多層フィルムサンプルのシーラントフィルム同士を合わせた後、圧力1kgf/cm2、温度180℃、シール時間1秒の条件で幅10mmの加熱バーによりサンプルの横方向と並行に、縦方向の中央部をヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルを縦方向に150mm、横方向に15mmに切り出した後、引張試験機(インテスコ社製恒温槽付き材料試験器201X)を用いて、雰囲気温度23℃、剥離速度50mm/分で180℃剥離試験を実施した結果、10N/15mm以上の剥離強度が得られ、実用上十分なヒートシール性を有することを確認した。
以上の通り、実施例に係る樹脂組成物を用いることで、優れた防湿性及び透明性を有しながら、耐ボイル性にも優れた実用的なフィルムを提供できることが示された。また、当該フィルムはヒートシール性にも優れており、接着剤等を用いずとも各種材料を密封できる包装用フィルムとして適用できることが分かった。
本発明に係る樹脂組成物は、防湿性が要求される種々のフィルムを製造する場合に適用できる。本発明の利用分野は、食品包装用や医薬品の包装用フィルム等、多岐に亘る。

Claims (10)

  1. エチレンとヘキセン−1とオクテン−1とからなるエチレン系共重合体(A)、高圧法エチレン単独重合体(B)、及び、結晶核剤(C)を含有し、結晶融解熱量が120〜160J/gであり、190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が1.5〜3.0g/10分である樹脂組成物。
  2. 前記エチレン系共重合体(A)中に占めるヘキセン−1の割合が1.0〜3.0質量%、オクテン−1の割合が1.0〜2.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記樹脂組成物に占める高圧法エチレン単独重合体(B)の割合が15〜50質量%、結晶核剤(C)の割合が0.01〜3.00質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 180℃における貯蔵せん断弾性率(G’)が2〜20kPaであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の樹脂組成物からなる包装用フィルム。
  6. 請求項1〜4の何れかに記載の樹脂組成物をインフレーション成形してなる包装用フィルム。
  7. 前記包装用フィルムが、JIS K7129B法に基づき、温度40℃、相対湿度90%で測定した厚み0.05mmでの水蒸気透過率が2.0g/(m・24時間)以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の包装用フィルム。
  8. 前記包装用フィルムが、JIS K7105に基づき測定した厚み0.05mmでのヘーズ値が20%以下であることを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の包装用フィルム。
  9. 請求項5〜8の何れかに記載の包装用フィルムの少なくとも片側に、ポリアミド系樹脂を含むフィルムを積層してなる構成を備えた多層フィルム。
  10. 請求項9に記載の多層フィルムを用いて形成された包装資材。
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