JP2022109868A - ポリアミド系樹脂フィルムおよび包装体 - Google Patents

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Abstract

【課題】低吸水性に優れ、耐衝撃性の十分なポリアミド系樹脂フィルムを提供する。【解決手段】少なくとも脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)とガスバリア性樹脂を含む層(B)とを有するフィルムであって、前記層(A)の合計質量を100質量%とする場合に、前記層(A)がポリアミド樹脂(a)を1~100質量%含み、前記ポリアミド樹脂(a)が、炭素数10のジアミン及び/又は炭素数10のジカルボン酸を含むポリアミド、及びポリアミド11の分子構造を有するポリアミドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするポリアミド系樹脂フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、低吸水性のポリアミド系樹脂フィルム、および該フィルムを用いた包装体に関する。
ポリアミド系樹脂からなるフィルムは、耐衝撃性、強度などの機械的特性、耐熱性、さらには二軸延伸などの成形加工性に優れていることから、様々な用途として用いられている樹脂材料である。
また、ポリアミド系樹脂はポリオレフィン樹脂等の汎用プラスチックに比べて酸素等のガスバリア性には優れているが、食品や医薬品包装などの内容物の長期保存が求められるガスバリア性のレベルには不十分であることが知られているため、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)やメタキシリレンジアジパミド(MXD6ナイロン)をはじめとする高いガスバリア性を有する樹脂の層と多層化させることによって機械物性、成形加工性、ガスバリア性等を合わせ持たせたポリアミド系樹脂フィルムが広く用いられてきている。
一方で、ポリアミド系樹脂を用いた二軸延伸フィルムは、一般に主成分として汎用性、生産性の点でポリアミド6を用いるため、ポリアミド6が有する比較的高い吸水特性により、高湿度環境下においては吸水伸び、寸法変化が生じ易いという不具合が潜在的に存在し、印刷やラミネート、ボイル・レトルト処理など、包装材作製の二次工程で問題が発生しやすい。また、ガスバリア性樹脂層の吸水を防ぐ点を含め、低吸水性に優れたポリアミド系二軸延伸フィルムが求められている。
また、ポリアミド6フィルムは、高い引張特性から耐突刺し性等の耐衝撃性を必要とする包装用途に重宝されているが、ガスバリア性樹脂層と多層化させたフィルムにおいても、ポリアミド6フィルムと同様な高い耐衝撃性が求められている。
特許文献1には、水に対する良好な寸法安定性を有し、かつ耐屈曲疲労性に優れたポリアミド系樹脂フィルムについて、低吸湿性ポリアミド系樹脂および耐屈曲疲労性改良剤を含む技術が開示されている。しかしながら、好適な低吸湿性ポリアミド系樹脂として挙げられているナイロン6T、ナイロン6T/6、ナイロンMXD、ナイロン12等は、フィルムの耐衝撃性が不十分であった。
特開2010-121136号公報
上記実情に鑑みて、本発明の課題は、低吸水性に優れ、耐衝撃性の十分なポリアミド系樹脂フィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、所定の脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)を用いること、または、所定の脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)とガスバリア性樹脂を含む層(B)とを組み合わせることにより、上述の課題を解決することを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
第1の本発明は、少なくとも脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)とガスバリア性樹脂を含む層(B)とを有するフィルムであって、前記層(A)の合計質量を100質量%とする場合に、前記層(A)がポリアミド樹脂(a)を1~100質量%含み、前記ポリアミド樹脂(a)が、炭素数10のジアミン及び/又は炭素数10のジカルボン酸を含むポリアミド、及びポリアミド11の分子構造を有するポリアミドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするポリアミド系樹脂フィルムである。
第1の本発明において、前記ポリアミド樹脂(a)が、ポリアミド10,10及び/又はポリアミド11であることが好ましい。
第1の本発明において、前記層(A)の合計質量を100質量%とする場合に、前記層(A)がポリアミド樹脂(a)を1~40質量%含むことが好ましい。
第1の本発明において、前記層(A)が前記ポリアミド樹脂(a)とポリアミド6とを含むことが好ましい。
第1の本発明のポリアミド系樹脂フィルムは、23℃24時間浸水試験による吸水率が5.0%以下であることが好ましい。
第1の本発明のポリアミド系樹脂フィルムは、二軸延伸されてなることが好ましい。
第2の本発明は、第1の本発明のポリアミド系樹脂フィルムを用いてなる包装体である。
第3の本発明は、少なくとも脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)を有するフィルムであって、前記層(A)の合計質量を100質量%とする場合に、前記層(A)がポリアミド樹脂(a)を1~100質量%含み、前記ポリアミド樹脂(a)が、炭素数10のジアミン及び/又は炭素数10のジカルボン酸を含むポリアミド、及びポリアミド11の分子構造を有するポリアミドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするポリアミド系樹脂フィルムである。
第3の本発明において、前記ポリアミド樹脂(a)が、ポリアミド10,10及び/又はポリアミド11であることが好ましい。
第3の本発明において、前記層(A)の合計質量を100質量%とする場合に、前記層(A)がポリアミド樹脂(a)を50質量%以上含むことが好ましい。
第3の本発明のポリアミド系樹脂フィルムは、23℃24時間浸水試験による吸水率が2.8%以下であることが好ましい。
第3の本発明のポリアミド系樹脂フィルムは、二軸延伸されてなることが好ましい。
本発明によれば、低吸水性に優れ、耐衝撃性の十分なポリアミド系樹脂フィルムを提供することができる。その特徴から、本発明のポリアミド系樹脂フィルムは、比較的高湿環境下での使用に適し、食料品、医薬衣料品、工業部品等の包装体として好適に用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、「本発明のポリアミド系樹脂フィルム」を「本発明のフィルム」、「脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)」を「層(A)」、「ガスバリア性樹脂を含む層(B)」を「層(B)」と称することがある。
脂肪族ポリアミド樹脂とガスバリア性樹脂の双方を含む層である場合は、層中の脂肪族ポリアミド樹脂の含有率が50質量%以上の場合を層(A)、脂肪族ポリアミド樹脂の含有率が50質量%未満の場合を層(B)とする。
ポリアミド系樹脂フィルムは、空気中の湿気(水分)を吸湿する場合と、水を含む食品を包装しその水を吸水する場合とがあり、本発明の説明では、吸湿性と吸水性とを同義として用いる。
「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
<脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)>
本発明のポリアミド系樹脂フィルムは、脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)を少なくとも1層有する。また、層(A)は、層(A)の合計質量を100質量%とした場合に、ポリアミド樹脂(a)を1~100質量%含む。
本発明における脂肪族ポリアミド樹脂は、公知の各種ラクタムの開環重合により生成するポリアミド樹脂、公知の脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合重合により生成するポリアミド樹脂をいう。
また、ポリアミド樹脂(a)は、炭素数10のジアミン及び/又は炭素数10のジカルボン酸を含むポリアミド、及びポリアミド11の分子構造を有するポリアミドから選ばれる少なくとも1種であり、脂肪族ポリアミド樹脂または半芳香族ポリアミド樹脂のいずれであってもよい。
そのため、脂肪族ポリアミド樹脂のうち、ポリアミド樹脂(a)以外の脂肪族ポリアミド樹脂をポリアミド樹脂(b)と称し以下説明する。また従って、本発明のフィルムに用いる脂肪族ポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂(a)のみの場合と、ポリアミド樹脂(a)とポリアミド樹脂(b)の両方の場合と、ポリアミド樹脂(b)のみの場合とがある。
また、脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)は1層でもよく、複数層でもよい。複数層の場合は、各層の樹脂組成が異なっていてもよい。
(ポリアミド樹脂(a))
本発明に用いるポリアミド樹脂(a)は、炭素数10のジアミン(1,10-デカンジアミン等)及び/又は炭素数10のジカルボン酸(セバシン酸等)を含むポリアミド、及びポリアミド11の分子構造を有するポリアミドから選ばれる少なくとも1種である。これらポリアミドの分子構造は、ポリアミド系樹脂フィルムに多用されるポリアミド6よりもアルキル鎖が長いため、ポリアミド樹脂(a)は疎水性が高く、フィルムの吸水性を低減し、引いてはフィルムの吸水による寸法変化を低減できる。なお、「炭素数10のジアミン及び/又は炭素数10のジカルボン酸を含むポリアミド」とは、炭素数10のジアミン及び/又は炭素数10のジカルボン酸が縮合重合した残基を含むことを意味し、「ポリアミド11の分子構造を有するポリアミド」とは、例えば、以下に示すポリアミド11の他に、ポリアミド11,T、および、ポリアミド11とポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体を包含することを意味する。
ポリアミド樹脂(a)は、例えば、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド4,10、ポリアミド5,10、ポリアミド6,10、ポリアミド8,10、ポリアミド9,10、ポリアミド10,10、ポリアミド10,12等の脂肪族ポリアミド、ポリアミド10,T、ポリアミド11,T等の半芳香族ポリアミド、ポリアミド10またはポリアミド11とポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体等が挙げられる。これらは1種類で用いても良く、2種以上を用いても良い。
ポリアミド10またはポリアミド11とポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体におけるポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等が挙げられ、耐屈曲ピンホール性の点からポリオキシテトラメチレングリコールが好ましい。また、ポリアミド10またはポリアミド11の分子構造特性をフィルムへ寄与させるため、ポリアミド10またはポリアミド11の共重合組成比は65質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。ポリアミド10またはポリアミド11の共重合組成比を係る範囲とすることで、長鎖アルキル鎖の寄与が大きくなり、低吸水性に優れる。
ポリアミド樹脂(a)は、低吸水性の点からポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド10,10、ポリアミド10,12が好ましく、また、耐衝撃性の点からポリアミド10,10、ポリアミド11がより好ましい。
ポリアミド樹脂(a)が、炭素数10のジアミン及び/又は炭素数10のジカルボン酸を含むポリアミド、及びポリアミド11の分子構造を有するポリアミドから選ばれる少なくとも1種であることで、フィルムへ優れた低吸水性と十分な耐衝撃性を付与することができる。
ポリアミド樹脂(a)の分子構造は、後述する代表的なポリアミド樹脂(b)のポリアミド6に比べ炭化水素鎖が長いので、単位質量当たりのアミド結合基数濃度が低いことにより低吸水性を示す。また、ポリアミド樹脂(a)は、ポリアミド6に比べ単位質量当たりのアミド結合基数濃度が低いため、フィルム製膜、特に二軸延伸した場合のポリアミド樹脂同士の水素結合の割合が小さくなってフィルムの弾性を低下させ、耐衝撃性を増大させる。 また、低吸水性樹脂として知られるポリアミド12と比べ、ポリアミド樹脂(a)は、高融点樹脂と溶融押出した際に熱劣化によるゲル化が起きにくい。また弾性率も低いため、耐衝撃性に優れる。
また、ポリアミド10,10、ポリアミド11は、ポリアミド6との親和性が高いため、ポリアミド樹脂(b)にポリアミド6を用いた場合に、ポリアミド樹脂(a)とポリアミド6との非相溶混合形態の海/島構造のドメイン径(島)を微小に設計できる。そのため、二軸延伸時の海/島相界面のボイド形成を抑制し、透明性に優れた二軸延伸ナイロンフィルムを得ることができ好適である。
また、近年の社会問題である環境負荷を低減する点では、ポリアミド樹脂(a)の中でバイオマス由来であるポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド4,10、ポリアミド5,10、ポリアミド6,10、ポリアミド8,10、ポリアミド9,10、ポリアミド10,10、ポリアミド10,12、ポリアミド10,T、ポリアミド11,T、ポリアミド11-ポリオキシテトラメチレングリコールが好ましい。
中でも、ポリアミド11、ポリアミド10,10は、植物由来100%の樹脂であり好ましい。ポリアミド10,10は、セバシン酸、およびセバシン酸をアミノ化して得た1,10-デカンジアミンを共縮重合反応することによって得られる。ポリアミド11は、ヒマシ油から得られる11-アミノウンデカン酸の縮重合によって得られる。
ポリアミド樹脂(a)は、フィルムの耐熱性の点で、融点180℃以上が好ましく、185℃以上がより好ましい。
ポリアミド樹脂(a)は、フィルムの耐衝撃性の点で、密度1100kg/m以下が好ましく、1080kg/m以下がより好ましい。
(ポリアミド樹脂(b))
ポリアミド樹脂(b)は、脂肪族ポリアミド樹脂のうち、ポリアミド樹脂(a)以外の樹脂である。樹脂成分は、特に制限はないが、ポリアミド系樹脂フィルムとして市場の要求仕様を適える点、特にフィルムの機械特性の点から、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,66、ポリアミド12が好ましく、経済性、汎用性の点から、ポリアミド6がより好ましい。ポリアミド樹脂(b)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
ポリアミド6は、ε-カプロラクタムの開環重合により得られる公知の樹脂を使用できる。フィルム製膜性の点で、JIS K6920-2:2009、96%硫酸の条件で測定される相対粘度が1.0~5.0であることが好ましく、2.0~4.5がさらに好ましく、2.5~4.0が特に好ましい。かかる範囲であれば、層(A)においてポリアミド樹脂(a)との混和性が良く、また、他の層(A)や、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物やメタキシレンジアジパミドなどのガスバリア性樹脂で構成されるガスバリア性樹脂を含む層(B)や、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、その他樹脂等で構成される他の層(C)等と安定して共押出製膜しやすく、層間の粘度差による流れムラも少なく好ましい。
ポリアミド6の融点は、200℃~250℃が好ましく、210℃~240℃がより好ましい。ポリアミド6の融点が係る範囲であれば、耐熱性、押出成形性に優れ、二軸延伸フィルムの成形が容易となる。
ポリアミド6の密度は、フィルムの強靭性の点で、1100~1200kg/mが好ましく、1110~1150kg/mがより好ましい。
(他の成分)
脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂、熱可塑性エラストマー、添加剤等を含有することができる。
他の樹脂としては、例えば、半結晶性芳香族ポリアミド、非晶性芳香族ポリアミド等が挙げられる。ガスバリア性等の点でポリアミドMXD6が好ましい。結晶性を低下させて延伸性を向上させる点で非晶性芳香族PAが好ましい。
層(A)の合計質量100質量%に対して、他の樹脂の含有率は10質量%以下が好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
これらは、ハードセグメントとして、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィンの分子骨格を有し、その中にソフトセグメントとして、ポリアルキレンエーテルグリコールやゴム成分を有して、弾性を示す樹脂種である。ここで、ポリアミド系エラストマーは、ソフトセグメントが50質量%以上のものを云う。
また、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーは、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸やその誘導体や無水物により変性処理したものであると、ポリアミド樹脂(a)、(b)との親和性が高くなり分散混和性が良く、フィルムの耐ピンホール性や透明性が向上して好ましい。
好適な熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリアミド11やポリアミド12とポリオキシテトラメチレングリコールとのブロック共重合体及びその酸変性物、ポリブチレンテレフタレートとポリオキシテトラメチレングリコールとのブロック共重合体及びその酸変性物、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)が好ましい。
層(A)の合計質量を100質量%とする場合、熱可塑性エラストマーの含有率はフィルム製膜性、高透明性、低吸水性の観点から10質量%以下が好ましい。
添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、滑剤、フィラー、核剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、難燃剤、染料、顔料、安定剤、カップリング剤、耐衝撃改良材等を含有することができる。
層(A)の構成成分の合計100質量%に対して、添加剤の含有率はフィルム製膜性、高透明性、低吸水性の観点から5質量%以下が好ましい。
(層(A)の組成)
本発明のフィルムでは、脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)の合計質量を100質量%とする場合に、層(A)がポリアミド樹脂(a)を1~100質量%含む。層(A)が複数の場合は、各層(A)の合計100質量%に対して、各層におけるポリアミド樹脂(a)の合計が1~100質量%である。係る構成により、ポリアミド系樹脂フィルムの低吸水性と耐衝撃性、および環境負荷の低減を可能にする。
ポリアミド系樹脂フィルムの低吸水性、耐衝撃性、環境負荷低減の点では、ポリアミド樹脂(a)の含有率が高いほど好ましく、上限は100質量%であり、下限は好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
また、ポリアミド系フィルムの弾性率と耐衝撃性のバランスの観点からは、ポリアミド樹脂(a)の含有率は、上限は100質量%であり、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。下限は、例えば5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。
ポリアミド樹脂(b)が例えばポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6,66の場合、フィルムの弾性率、耐薬品性、耐熱性の点ではポリアミド樹脂(b)の含有率が高いと好ましいため、ポリアミド樹脂(a)とポリアミド樹脂(b)の合計を100質量%とする場合、ポリアミド樹脂(a)とポリアミド樹脂(b)の質量含有比は、1~50:50~99が好ましく、1~40:60~99がより好ましい。
層(A)の合計におけるポリアミド樹脂(a)の含有率は、本発明のフィルムの層構成と、各層(A)組成により設定できる。
層(A)中に、ポリアミド樹脂(a)とポリアミド樹脂(b)とが含まれる場合、両者は、非相溶分散形態を為し、組成比の高い成分が海(マトリックス)、組成比の少ない成分が島(ドメイン)となる海/島構造をとる。ポリアミド樹脂(a)とポリアミド樹脂(b)のうち組成比の少ない方の組成比が30質量%以下であると、ドメイン径が小さくなり易く、フィルムのヘーズを低減できフィルムの透明性の点で好ましい。また、海/島相界面を起点とするボイド発生も抑制され易く、安定したフィルム製膜にも有効である。
<ガスバリア性樹脂を含む層(B)>
本発明のフィルムは、ガスバリア性樹脂を含む層(B)を設けることが好ましい。これにより、ガスバリア性を付与することができ、包装材に用いた際に内容物の劣化や腐敗を防ぎ長期保管性を高めることに有用である。
ガスバリア性樹脂としては、公知の樹脂を使用でき、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)系樹脂、ポリメタキシリレンジアジパミド(ポリアミドMXD6)等のメタキシリレンジアミンを含む半芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)系樹脂などが挙げられる。中でも、酸素ガスバリア性、成形性の点で、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)系樹脂、メタキシリレンジアミンを含む半芳香族ポリアミドが好ましく、脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)との層間密着性の点でメタキシリレンジアミンを含む半芳香族ポリアミドがより好ましい。
(エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物)
本発明に使用されるエチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体をアルカリ触媒等により鹸化することによって得られる共重合体であり、エチレン構造単位、ビニルアルコール構造単位(未ケン化のビニルエステル構造単位を含む)の他、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。前記コモノマーとしては、プロピレン、イソブテン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のα-オレフィン;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、3-ブテン-1、2-ジオール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などのヒドロキシ基含有α-オレフィン誘導体;不飽和カルボン酸又はその塩,部分アルキルエステル,完全アルキルエステル,ニトリル,アミド若しくは無水物;不飽和スルホン酸又はその塩;ビニルシラン化合物;塩化ビニル;スチレン等が挙げられる。
さらに、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等で後変性されたEVOH系樹脂を用いることもできる。これらのEVOHは、1種類を単独で用いても良く、2種類以上を混合して用いても良い。
エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物中のエチレン含有率は、特に限定されるものではないが、フィルム製膜安定性の観点から、一般に5モル%以上が好ましく、より好ましくは10モル%以上であり、特に好ましいのは20モル%以上である。エチレン含有率の上限はガスバリア性の観点から、48モル%以下が好ましく、38モル%以下がより好ましく、30モル%以下が更に好ましい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物のケン化度は、96%以上が好ましく、98%以上がより好ましい。本発明のフィルムにおいて、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物中のエチレン含有量、およびケン化度が上記範囲であることにより、製膜性とガスバリア性のバランスに優れたものとなり、層(A)との共押出や、二軸延伸などの成形加工に好適である。
(メタキシリレンジアミンを含む半芳香族ポリアミド)
本発明に使用されるメタキシリレンジアミンを含む半芳香族ポリアミドの例としては、例えばポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、並びにこれらに脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、メタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外の芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸、ラクタム、ω-アミノカルボン酸、芳香族アミノカルボン酸等を共重合した共重合体が挙げられる。中でもガスバリア性、成形性の観点からポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)が好ましい。
ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)とは、主としてメタキシリレンジアミンとアジピン酸との重合生成物を意味する。ポリメタキシリレンアジパミドを構成するジアミン成分を100モル%とした場合、70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上がメタキシリレンジアミンである。オルトキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の異性体、または、炭素数6~12の脂肪族ジアミン等を30モル%以下含んでもよいが、ガスバリア性や耐熱性の点から、これらは含まれていない方が好ましい。ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)を構成するジカルボン酸成分を100モル%とした場合、70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上がアジピン酸である。炭素数7~12の脂肪族ジカルボン酸や、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の環状脂肪族ジカルボン酸等を30モル%以下含んでもよいが、ガスバリア性や延伸性の点から、これらは含まれていない方が好ましい。
(他の成分)
ガスバリア性樹脂を含む層(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で熱可塑性エラストマーを含有できる。熱可塑性エラストマーの含有により、層(B)の柔軟性を向上させ、フィルムの耐ピンホール性を向上させることが可能である。熱可塑性エラストマーとしては、上述の層(A)に含有可能な種類を同様に使用できる。
層(B)を100質量%とした場合に、熱可塑性エラストマーの含有量は20質量%以下が好ましく、1~15質量%がより好ましい。熱可塑性エラストマーの含有量が20質量%以下であることによって、フィルムのガスバリア性や透明性の低下を抑えられ、また、フィルム製膜におけるゲル発生が抑制されるのでフィルム生産性の点で好ましい。
<層構成>
本発明のフィルムは、少なくともポリアミド樹脂を含む層(A)を有するフィルムであり、好ましくはさらに、ガスバリア性樹脂を含む層(B)を有する。
複数の層(A)を配設する場合は、組成の同一な層(A)でもよく、組成の異なる層(A)でもよい。層(A1)/層(A2)/層(B)の様な層構成の場合は、層(A1)と層(B)の層間接着性向上のために、層(A2)に層(A1)及び/又は層(B)と共通な樹脂を含める、例えば、層(A2)はポリアミド樹脂(a)及び/又はポリアミド樹脂(b)とガスバリア性樹脂(例えば、ポリアミドMXD6)とを含むと好適である。
複数の層(B)を配設する場合も、組成の同一な層(B)でもよく、組成の異なる層(B)でもよい。
また、層(A)と層(B)の他に、他の層(C)を有してもよい。
他の層(C)の成分は特に制限はないが、層(C)を層(A)と層(B)との間に配設する場合は、層間接着性の向上のために、接着性樹脂を用いると好ましく、例えば酸変性ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。層(C)をフィルムの表層に配する場合は、フィルムの耐ピンホール性や耐摩擦・磨耗性の向上のために、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,66、ポリアミドMXD6、ポリエステル等からなる層を設けると好ましい。
各層順としては、特に限定はないが、例えば、[A/B]の2層構成、[A/B/A]、[A/B/C]、[A/C/B]、[C/A/B]の3層構成、[A/A/B/A/A]、[A/C/B/C/A]、[C/A/B/A/C]、[A/B/C/B/A]の5層構成などがフィルム製膜安定性の点で好ましい。中でも、[A/B/A]、[A/A/B/A/A]、[A/C/B/C/A]、[C/A/B/A/C]のような層(B)の両側に低吸水性を有する層(A)を配する構成は、層(B)の吸水を防ぎフィルムのガスバリア性を向上させる点、層(B)を含めフィルムに十分な耐衝撃性を付与する点で好ましい。
以下、ポリアミド樹脂(a)を樹脂(a)、ポリアミドMXD6をMXD6、ポリアミド6をPA6、非晶性芳香族ポリアミドを非晶PA、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物をEVOH、熱可塑性エラストマーをエラストマーと略記し、層組成を例示する。
[A/B/A]の好ましい層構成としては、例えば、以下が挙げられる。
・[樹脂(a)]/[EVOH]/[樹脂(a)]
・[樹脂(a)]/[MXD6+エラストマー]/[樹脂(a)]
・[樹脂(a)+非晶PA]/[EVOH]/[樹脂(a)+非晶PA]
・[樹脂(a)+非晶PA]/[MXD6+エラストマー]/[樹脂(a)+非晶PA]
・[PA6+樹脂(a)]/[EVOH]/[PA6+樹脂(a)]
・[PA6+樹脂(a)]/[MXD6+エラストマー]/[PA6+樹脂(a)]
[A/A/B/A/A]の好ましい層構成としては、例えば、以下が挙げられる。
・[樹脂(a)]/[PA6+樹脂(a)]/[EVOH]/[PA6+樹脂(a)]/[樹脂(a)]
・[PA6+樹脂(a)]/[樹脂(a)]/[EVOH]/[樹脂(a)]/[PA6+樹脂(a)]
・[樹脂(a)]/[PA6+MXD6]/[MXD6+エラストマー]/[PA6+MXD6]/[樹脂(a)]
・[樹脂(a)]/[PA6+樹脂(a)+MXD6]/[MXD6+エラストマー]/[PA6+樹脂(a)+MXD6]/[樹脂(a)]
・[PA6+樹脂(a)]/[PA6+樹脂(a)+MXD6]/[MXD6+エラストマー]/[PA6+樹脂(a)+MXD6]/[PA6+樹脂(a)]
・[PA6+樹脂(a)]/[PA6+MXD6]/[MXD6+エラストマー]/[PA6+MXD6]/[PA6+樹脂(a)]
・[PA6+樹脂(a)]/[PA6+樹脂(a)+MXD6+エラストマー]/[MXD6+エラストマー]/[PA6+樹脂(a)+MXD6+エラストマー]/[PA6+樹脂(a)]
また、上記した種々の組成のA層、または、C層を組み合わせて、[A/A]、[A/A/A]、[A/A/A/A]、[A/A/A/A/A]、[A/C/A]、[A/A/C/A/A]、[C/A/C]、[A/C/A/C/A]の層構成等が挙げられる。
本発明のフィルムの総厚は、特に限定されるものではないが、加工性、透明性、ハンドリング性の点から、5~50μmが好ましく、10~30μmがより好ましく、12~25μmが更に好ましい。総厚が上記範囲内であれば、ポリアミド系二軸延伸フィルムとしての機械特性が良好で、ガスバリア性にも優れたフィルムとなる。
各層厚は、フィルムの機械物性と酸素ガスバリア性の点から、フィルム総厚100%に対する層(A)の厚比は25~90%、層(B)の厚比は10~75%とすることが好ましい。なお、層(A)および/または層(B)が複数ある場合は、総厚に対する層(A)または層(B)層の合計厚の比率である。
層(A)、層(B)、層(C)の各層厚は、特に限定されるものではないが、1~15μmが好ましい。より好ましくは2~10μm、更に好ましくは3~8μmである。層(A)、層(B)、層(C)がそれぞれ複数ある場合は、1層ごとに異なる層厚であってもよいし、同じ層厚であってもよい。
本発明のフィルムは、印刷、コーティング、蒸着などの表面処理や表面加工を行うことができる。また、ポリオレフィンやポリエステル等の他の樹脂層や他のフィルムや粘着層、金属箔、紙などを積層して使用することができ、積層方法は公知の方法を用いることが可能で、例えばドライラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法、押出ラミネート法などが挙げられる。また、積層の際に、本発明のフィルム表面にコロナ放電、アンカーコート等の表面処理を施してもよい。
また、本発明のフィルムを包装材に用いる場合は、内容物の品質保持や腐敗防止の観点から、アルミニウム、酸化珪素、アルミナ、ダイヤモンドライクカーボン等を蒸着加工する、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)系樹脂などのガスバリア性コート剤を塗布する等により、さらにガスバリア性や防湿性を向上させることができる。
<製造方法>
本発明のフィルムは、少なとも脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)とガスバリア性樹脂を含む層(B)を有するフィルム構成であればよく、公知の方法により製造することができる。
原材料のポリアミド各種やガスバリア性樹脂は、吸水した樹脂を使用すると熱溶融し押し出す際に水蒸気やオリゴマーが発生しフィルム化を阻害する。そのため、原材料の準備においては、事前に樹脂を乾燥して水分含有率を0.1質量%以下とするのが好ましい。
それら樹脂を各層用の押出機にそれぞれ投入し、溶融した樹脂をフィードブロック、またはマルチマニホールドのフラットダイ、または環状ダイで合流させてから、多層フィルムとして共押出した後、急冷することによりフラット状、または環状の未延伸フィルムを得ることができる。
二軸延伸フィルムを得るには、未延伸フィルムをテンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法を用い、フィルムの流れ方向(縦方向、MD)とこれに直角な幅方向(横方向、TD)に二軸延伸する。例えば、テンター式逐次二軸延伸方法の場合には、未延伸フィルムを40~100℃の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機によって縦方向に延伸し、続いてテンター式横延伸機によって80~230℃の温度範囲内で横方向に延伸することにより製造することができる。また、テンター式同時二軸延伸やチューブラー式同時二軸延伸方法の場合は、例えば、40~230℃の温度範囲において、縦横同時に各軸方向に延伸することにより製造することができる。
延伸倍率は、フィルムの流れ方向(縦方向、MD)、幅方向(横方向、TD)において、各々2.0~5.0倍が好ましく、各々2.5~4.5倍がより好ましい。二軸延伸方向の延伸倍率が各々2.0倍以上により延伸配向が進み、フィルム強度などの機械物性が良好となり、また延伸倍率が各々5.0倍以下により、延伸時にフィルムが破断し難く生産性が良い。
更に、フィルムの寸法安定性を向上させるために、上記の二軸延伸フィルムを熱固定することができる。熱固定温度は、170℃~225℃が好ましく、180~220℃がより好ましい。これにより、常温寸法安定性のよい二軸延伸フィルムを得ることが出来る。
熱固定による結晶化収縮の応力を緩和させるために、熱固定中に幅方向に0~15%、好ましくは3~10%の範囲で弛緩処理を行うこともできる。
また、弛緩処理の後、140℃~200℃の温度で、幅方向に2~9%、好ましくは3~7%、更に好ましくは4~7%の範囲で再延伸を行うことができる。再延伸温度が上記範囲内にあれば、適度な延伸時の応力が得られて均質な延伸となり、幅方向の横収縮率が均等になりやすい。
<フィルム物性>
(低吸水性)
吸水率は、5.00%以下が好ましく、4.00%以下がより好ましく、3.00以下がさらに好ましく、2.50以下が特に好ましく、2.20以下が最も好ましい。二軸延伸フィルムは樹脂の結晶配向化が進むので、未延伸フィルムよりも吸水率が低くなり好ましい。
吸水率は、以下の吸水試験により求められる。直径100mmの円形フィルム試験片を23℃相対湿度50%条件下で24時間以上保管し質量(s)を秤量する。次いで、フィルム試験片を23℃の蒸留水に24時間浸漬させた後、表面に付着した水を拭き取ってフィルム試験片の質量(e)を秤量し、下式1で吸水率を算出する。4枚のフィルム試験片を試験し、平均値を求める。
{(e)-(s)}/(s)×100(%) (式1)
(耐衝撃性)
本発明のフィルムの耐衝撃性は、貫通部がフィルム試験片にあなを開けた際のパンクチャー衝撃強度によって評価でき、0.3J以上が好ましく、0.4J以上がより好ましい。パンクチャー衝撃強度が係る範囲であれば、フィルムは耐衝撃性に優れ、包装材に用いた際に穴があき難く良好である。
本発明のフィルムの耐衝撃性は、JIS P8134:1998の衝撃あな開け強さ試験により測定される。装置の架台は、仕事量の損失がないようにしっかりした基礎に設置し、振子は90度の弧状の腕を有し、その腕の先端には貫通部が取り付けられており、自由に振動することができるものとする。
(引張破断応力、引張破断伸び)
引張破断応力は、流れ方向(MD)、幅方向(TD)共に、また、-20℃、23℃の両温度条件において、150MPa以上が好ましく、200MPa以上がより好ましい。
上限は特にないが、500MPa程度である。係る範囲の引張破断応力のフィルムであれば、内容物を包装した際に、フィルムの剛性を維持しつつ、屈曲によるピンホールや破断が生じにくい。
引張破断伸びは、フィルムの流れ方向(MD)、幅方向(TD)共に、また、-20℃、23℃の両温度条件において、35%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。フィルムは低温であるほど伸び難く、また冷凍食品包装において耐突刺し性が弱くなるため、-20℃条件下で引張破断伸びが35%以上であることが有用となる。引張破断伸びの上限は特にないが、150%程度である。
引張破断伸び、引張破断応力は、JIS K7127:1999、試験速度200mm/min、-20℃、及び23℃の温度条件で測定する。
(透明性)
本発明のフィルムは、ヘーズ10.0%以下が好ましく、8.0%以下がより好ましく、低いほど好ましい。ヘーズ値が係る範囲であれば、フィルムは透明性に優れ、意匠性や、包装フィルムとして用いた際に内容物の視認性が良好である。
ヘーズは、JIS K7136:2000に基づき測定される。
(耐屈曲ピンホール性)
本発明のフィルムは、ゲルボフレックステスターを用い、23℃相対湿度50%下で3000回、5℃相対湿度50%下で500回の各条件で屈曲試験を行い、発生したピンホール数を計測した。各条件で3回試験しその平均値を算出した。ピンホール数は、何れの条件においても10.0個/481cm以下が好ましく、5.0個/481cm以下がより好ましく、ピンホール数が少ないほど好ましい。また一般に、環境温度が低いほどフィルムの柔軟性が失われるので、低温条件下でピンホール数が少ないことが望ましい。
10.0個/481cm以下であれば、包装体が運搬・保管される際のフィルムの屈曲や、包装体同士の衝突によるピンホールが発生しにくく、ガスバリア性の低下による内容物の酸化劣化を抑え易い。
(酸素ガスバリア性)
本発明のフィルムは、23℃相対湿度50%の条件下での酸素透過率が10cc/m/24h/atm以下であることが好ましく、5cc/m/24h/atm以下であることが更に好ましく、より低い値であることが望まれる。酸素透過率が10cc/m/24h/atm以下であれば、包装用フィルムとして、内容物の変質を防止し、新鮮に保つのに十分な酸素ガスバリア性を維持することができるため好ましい。
(バイオマス度)
層(A)にバイオマス由来のポリアミド樹脂(a)を用いた場合、当該層の組成比と、フィルム総厚に対する層厚比により、フィルムのバイオマス度が算出できる。近年の環境問題の観点からは、フィルムのバイオマス度を高くすることが望まれており、例えば1%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上が更に好ましく、50%以上が特に好ましく、高いほどよい。
なお、バイオマス度は、バイオマス由来の有機物質にしか含まれていない炭素(14C)の含有割合(%)を、加速器質量分析装置(AMS)で測定することなどにより求めることができる。
バイオマス由来の有機物質と化石燃料由来の有機物質との区別については、1950年時点の放射性の14Cの存在比率を参照基準とする標準化方法が知られており、米国国立標準局(NIST)による、(Determining the Biobased Control of Solid, Liquid, and Gaseous Samples Using Radiocarbon Analysis)がある。
具体的には、測定対象試料を燃焼して二酸化炭素を発生させ、真空ラインで精製した二酸化炭素を、鉄を触媒として水素で還元し、グラファイトを生成させる。そして、このグラファイトを、タンデム加速器をベースとした14C-AMS専用装置に装着して、14Cの計数、13Cの濃度(13C/12C)、14Cの濃度(14C/12C)の測定を行い、この測定値から標準現代炭素に対する試料炭素の14C濃度の割合(%)を算出することができる。この際、米国国立標準局(NIST)から提供されるシュウ酸(HOxII)を標準試料とすることができる。
本発明のフィルムのバイオマス度は、「バイオマス由来資源を原料とする樹脂のバイオマス度」(%)×「バイオマス由来資源を原料とする樹脂の質量割合」で算出することができる。
<包装体>
本発明のフィルムは、公知のラミネート法によりシーラントフィルム等と積層し、袋体、チューブや、蓋材と底材とを組み合わせた容器等の包装体に成形し利用できる。
以下に本発明は実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<原材料>
実施例、比較例に用いた樹脂の略号、成分、物性等は次の通りである。
(ポリアミド樹脂(b))
PA6: ポリアミド6、相対粘度3.4、融点220℃、密度1140kg/m、バイオマス度0%
(ポリアミド樹脂(a))
PA11: ポリアミド11、融点190℃、密度1030kg/m、バイオマス度100%
PA10,10: ポリアミド10,10、融点189℃、密度1040kg/m、バイオマス度100%
(熱可塑性エラストマー)
PA12-PTMG: ポリアミド12―ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)ブロック共重合体、PTMG共重合組成比70質量%
(ガスバリア性樹脂)
MXD6: ポリメタキシリレンジアジパミド
<フィルム作製、フィルム層構成>
(実施例1~7、比較例1)
原材料を表1に示す質量比で配合した層(A1)、層(A2)の樹脂組成物を各φ40mmの押出機に投入し、層(B)の樹脂組成物をφ32mmの押出機に投入し、それぞれ250℃で溶融させ、分配ブロックで分配し、共押出Tダイ内で多層化させて溶融フィルムを押出し、30℃の冷却ロールの上で急冷して未延伸多層フィルムを作製した。
得られた未延伸多層フィルムを、ロール式縦延伸機を用いて56℃条件で流れ方向に3.0倍延伸し、次いでテンター式横延伸機にて120℃条件で幅方向に4.9倍延伸し、続いて、215℃条件で熱固定した後、幅方向に8%弛緩させた。その後、室温まで冷却し、クリップの把持部に相当する両端部はトリミングし、トリミング後のフィルムをロール状に巻き取り、層構成[層(A1)3.4μm/層(A2)2.6μm/層(B)3.0μm/層(A2)2.6μm/層(A1)3.4μm]、総厚15.0μmの二軸延伸多層フィルムを得た。各層厚は、フィルムを垂直に断面出しし、顕微鏡観察により計測した。
<評価>
得られた二軸延伸多層フィルムについて、下記の評価を行い、結果を表1に纏めた。
(1)吸水性(吸水率(%))
直径100mmの円形フィルム試験片を23℃相対湿度50%条件下で24時間以上保管し質量(s)を秤量した。そのフィルム試験片を23℃の蒸留水に24時間浸漬させた後、表面に付着した水を拭き取ってフィルム試験片の質量(e)を秤量し、下式1で吸水率(単位:%)を算出した。4枚のフィルム試験片を試験し、平均値を求めた。
{(e)-(s)}/(s)×100 (式1)
吸水率 2.8%以下 ◎
吸水率 2.8%を超え、かつ、5.0%以下 〇
吸水率 5.0%を超える ×
(2)耐衝撃性(パンクチャー衝撃強度(J))
JIS P8134:1998の衝撃あな開け強さ試験により、パンクチャー衝撃強度(単位:J)を測定した。装置の架台は、仕事量の損失がないようにしっかりした基礎に設置し、振子は90度の弧状の腕を有し、その腕の先端には貫通部が取り付けられており、自由に振動することができるものである。
(3)引張破断応力(MPa)、引張破断伸び(%)
JIS K7127:1999に基づき、試験速度200mm/min、-20℃及び23℃温度条件下で、流れ方向(MD)、幅方向(TD)への引張破断応力(単位:MPa)、引張破断伸び(単位:%)を測定した。
(4)透明性(ヘーズ(%))
JIS K7136:2000に準拠してヘーズ(単位:%)を測定した。
(5)バイオマス度(%)
原材料のポリアミド樹脂のバイオマス度、層組成比、および層厚比からバイオマス度(%)を算出した。
Figure 2022109868000001
実施例1~5の二軸延伸多層フィルムでは、層(A1)と層(A2)の合計100質量%に対し、ポリアミド樹脂(a)に相当するポリアミド11、または、ポリアミド10,10を1質量%以上含むものであり、比較例1に比べフィルム吸水率が低く、パンクチャー衝撃強度で表される耐衝撃性は、ポリアミドフィルムとして十分な強度であった。また、引張破断応力、引張破断伸びも良好であった。
実施例6及び7の二軸延伸多層フィルムでは、層(A1)と層(A2)の合計100質量%に対し、ポリアミド樹脂(a)に相当するポリアミド10,10又はポリアミド11を50質量%以上含むものであり、比較例1に比べフィルム吸水率が低く、実施例1~5よりも吸水率が低くさらに良好な吸水率であった。また、パンクチャー衝撃強度で表される耐衝撃性は、ポリアミドフィルムとして十分な強度であり、引張破断応力、引張破断伸びも良好であった。
本発明のフィルムは、優れた低吸水性と、十分な耐衝撃性を有するポリアミド系樹脂フィルムであり、食料品、医薬衣料品、工業部品等の包装に好適に用いることができる。特に、高湿度下での用途や、水分を含む内容物の包装に有用である。更に、バイオマス由来の樹脂原料を用いることにより、環境負荷の低減にも大いに役立つ。

Claims (12)

  1. 少なくとも脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)とガスバリア性樹脂を含む層(B)とを有するフィルムであって、
    前記層(A)の合計質量を100質量%とする場合に、前記層(A)がポリアミド樹脂(a)を1~100質量%含み、
    前記ポリアミド樹脂(a)が、炭素数10のジアミン及び/又は炭素数10のジカルボン酸を含むポリアミド、及びポリアミド11の分子構造を有するポリアミドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするポリアミド系樹脂フィルム。
  2. 前記ポリアミド樹脂(a)が、ポリアミド10,10及び/又はポリアミド11である請求項1に記載のポリアミド系樹脂フィルム。
  3. 前記層(A)の合計質量を100質量%とする場合に、前記層(A)がポリアミド樹脂(a)を1~40質量%含む、請求項1又は2に記載のポリアミド系樹脂フィルム。
  4. 前記層(A)が前記ポリアミド樹脂(a)とポリアミド6とを含む請求項1~3の何れかに記載のポリアミド系樹脂フィルム。
  5. 23℃24時間浸水試験による吸水率が5.0%以下である請求項1~4の何れかに記載のポリアミド系樹脂フィルム。
  6. 二軸延伸してなる請求項1~5の何れかに記載のポリアミド系樹脂フィルム。
  7. 請求項1~6の何れかに記載のポリアミド系樹脂フィルムを用いてなる包装体。
  8. 少なくとも脂肪族ポリアミド樹脂を含む層(A)を有するフィルムであって、
    前記層(A)の合計質量を100質量%とする場合に、前記層(A)がポリアミド樹脂(a)を1~100質量%含み、
    前記ポリアミド樹脂(a)が、炭素数10のジアミン及び/又は炭素数10のジカルボン酸を含むポリアミド、及びポリアミド11の分子構造を有するポリアミドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするポリアミド系樹脂フィルム。
  9. 前記ポリアミド樹脂(a)が、ポリアミド10,10及び/又はポリアミド11である請求項8に記載のポリアミド系樹脂フィルム。
  10. 前記層(A)の合計質量を100質量%とする場合に、前記層(A)がポリアミド樹脂(a)を50質量%以上含む、請求項8又は9に記載のポリアミド系樹脂フィルム。
  11. 23℃24時間浸水試験による吸水率が2.8%以下である請求項8~10の何れかに記載のポリアミド系樹脂フィルム。
  12. 二軸延伸してなる請求項8~11の何れかに記載のポリアミド系樹脂フィルム。
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