JP2012134474A - 太陽電池用多層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】太陽電池素子の保護に十分な防湿性と、優れた透明性、耐熱性、さらには、太陽電池モジュール製造時において優れた封止性や、常温でのハンドリング性を付与するための剛性を兼ね備えた太陽電池用多層体、及び、それを用いて作製された太陽電池モジュールを得る。
【解決手段】特定のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)と、特定のエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有する樹脂層(I)を最外層の少なくとも一層として有し、かつ、特定のエチレン系重合体(C)と、結晶核剤(D)とを含有する樹脂層(II)を有することを特徴とする太陽電池用多層体。
【選択図】なし

Description

本発明は優れた防湿性、透明性、耐熱性を有し、太陽電池モジュール製造時に優れた封止性、ハンドリング性を付与しうる太陽電池用多層体に関する。
近年、地球温暖化等の環境問題に対する意識が高まる中、特に太陽光発電については、そのクリーン性や無公害性という点から期待が高まっている。太陽電池は太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムの中心部を構成するものである。その構造としては一般的に、複数枚の太陽電池素子(セル)を直列、並列に配線し、セルを保護するために種々パッケージングが行われ、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットを太陽電池モジュールと呼び、一般的に太陽光が当たる面を上部保護材としてガラス等の透明基材(フロントシート)で覆い、熱可塑性プラスチック(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体)からなる樹脂層(封止材)で間隙を埋め、裏面を下部保護材として裏面封止用シート(バックシート)で保護された構成になっている。
これらの太陽電池モジュールは主に屋外で使用されるため、その構成や材質構造等に種々の特性が必要とされる。上記の封止材には、太陽電池素子を保護する為の柔軟性や耐衝撃性、太陽電池モジュールが発熱した際の耐熱性、太陽電池素子へ太陽光が効率的に届く為の透明性(全光線透過率など)、耐久性、寸法安定性、難燃性、防湿性等が主に要求される。
現在、太陽電池モジュールにおける太陽電池素子の封止材としては、柔軟性、透明性等の観点から、材料として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと省略することがある)が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。また、EVAに耐熱性を付与することを主な目的として、架橋剤として有機過酸化物を用いた架橋が行われる。そのため、架橋剤(有機過酸化物)や架橋助剤を添加したEVAシートをあらかじめ作製し、得られたシートを用いて太陽電池素子を封止するという工程が採用されている。
しかしながら、EVAシートを用いて太陽電池モジュールを製造する場合、その加熱圧着などの諸条件により、EVAの熱分解による酢酸ガスが発生し、作業環境及び製造装置への悪影響や、太陽電池の回路腐食や、太陽電池素子、フロントシート、バックシートなど各部材界面で発生する剥離等の問題があった。
さらに、EVAは水蒸気バリア性が不十分であり(例えば、厚さ0.3mm、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率が25〜35g/(m2・24時間)程度)、高湿度などの環境下で用いる場合、水分が太陽電池素子に到達し、太陽電池の劣化や発電効率の低下の要因になるという問題があった。
そこで、前記の問題を解決するため、EVAよりも防湿性に優れた封止材が検討されている。例えば、分子鎖中に環状オレフィンを導入した環状オレフィン系重合体は一般的に透明性に優れるだけでなく、防湿性にも優れていることが知られている。このような環状オレフィン系重合体を用いた太陽電池封止材として、特許文献2には環状オレフィン系樹脂としてノルボルネン系開環重合体水素化物を含有する樹脂組成物からなる太陽電池封止材が開示されている。また、特許文献3には、防湿性の向上を目的とはしていないものの、EVAに対してC9系芳香族炭化水素樹脂を添加してなる太陽電池用封止材シートが開示されている。
特開昭58−60579号公報 特開2009−79101号公報 特開2010−171419号公報
しかし、特許文献1に代表されるEVAを用いた封止材は常温における弾性率が低く、太陽電池モジュール支持体としての剛性が不足していたり、太陽電池モジュール製造時におけるハンドリング性に問題が生じたりする場合がある。
また、特許文献2には太陽電池素子を封止する際の封止性に関する記載や示唆がなく、例えば、封止樹脂の流動性(充填性)を高めるために高温、高圧下で封止工程を行った場合、高温による太陽電池素子や配線の変質、あるいは、過圧による太陽電池素子の破損などの問題を生じる可能性がある。
また、例えばバッチ式の太陽電池モジュール製造設備において、一般的に封止工程で用いられる真空ラミネーターは真空ポンプを用いた真空度の差圧を用いているため、太陽電池モジュールにかかる圧力はほぼ大気圧(約101.3MPa)である。これに対し前記特許文献2に記載の封止材を用いようとして太陽電池素子を封止する際の圧力をより高めるためには圧着方式を油圧式等に改造する必要があり、製造コストが高くなる。
さらに、特許文献3に記載の技術においては、C9系芳香族炭化水素樹脂をEVAに添加することで、C9系芳香族炭化水素樹脂が未添加の場合と比較して防湿性は若干向上するものの、太陽電池素子の水分による劣化を抑制するために十分な防湿性を得ることは困難である。
そこで本発明の目的は、このような従来技術の課題に鑑み、太陽電池素子の保護に十分な防湿性と、優れた透明性、耐熱性、さらには、太陽電池モジュール製造時において優れた封止性や、常温でのハンドリング性を付与するための剛性を兼ね備えた太陽電池用多層体、及びそれを用いて作製される太陽電池モジュールを提供することにある。
本発明は、下記(a)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)と、下記(b)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有する樹脂層(I)を最外層の少なくとも一層として有し、かつ、下記(c)の条件を満足するエチレン系重合体(C)と、結晶核剤(D)とを含有する樹脂層(II)を有することを特徴とする太陽電池用多層体、及びそれを用いて作製される太陽電池モジュールを提案するものである。
(a):示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(b):示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100〜145℃であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
(c):示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100〜145℃であり、かつ、結晶融解熱量が120〜190J/g
本発明の太陽電池用多層体は防湿性に優れるため、太陽電池素子の吸湿による劣化を抑制することができ、高湿度下においても長期間の使用が可能となる。また、透明性にも優れるため、一般的な太陽電池用封止材を用いた太陽電池モジュールと同等の発電効率を有している。さらに、耐熱性のほか、封止性及びハンドリング性にも優れているため、太陽電池モジュール製造工程における生産性に優れた太陽電池用封止材として広く使用することが可能である。
本発明の太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。
[樹脂層(I)]
樹脂層(I)は、前記(a)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)と、前記(b)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有し、主に太陽電池素子(セル)を保護するための優れた封止性、耐熱性や、太陽電池に十分な発電効率を付与するための優れた透明性を発現する役割を有する。
<エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)>
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)は、前記条件(a)を満足すれば特に限定されるものではないが、通常、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体が好適に用いられる。ここでエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1等が例示される。本発明においては、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点からエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテンが好適に用いられる。エチレンと共重合するα−オレフィンは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。
また、エチレンと共重合するα−オレフィンの含有量としては、前記条件(a)を満足すれば特に限定されるものではないが、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)中の全単量体単位に対して、通常、2モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは3〜30モル%、さらに好ましくは5〜25モル%である。該範囲内であれば、共重合成分により結晶性が低減されることにより透明性が向上し、また、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難い為好ましい。なお、エチレンと共重合するα−オレフィンの種類と含有量は、周知の方法、例えば、核磁気共鳴(NMR)測定装置、その他の機器分析装置で定性定量分析することができる。
エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)は、前記条件(a)を満足すれば、α−オレフィン以外の単量体に基づく単量体単位を含有していてもよい。該単量体としては、例えば、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物(スチレンなど)、ポリエン化合物等が挙げられる。該単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)中の全単量体単位を100モル%とした場合、20モル%以下であり、15モル%以下であることが好ましい。また、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の立体構造、分岐、分岐度分布や分子量分布は、前記条件(a)を満足すれば特に限定されるものではないが、例えば、長鎖分岐を有する共重合体は、一般に機械物性が良好であり、また、シートを成形する際の溶融張力(メルトテンション)が高くなりカレンダー成形性が向上するなどの利点がある。シングルサイト触媒を用いて重合された分子量分布の狭い共重合体は、低分子量成分が少なく原料ペレットのブロッキングが比較的起こり難いなどの利点がある。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.5〜100g/10分程度、より好ましくは2〜50g/10分、さらに好ましくは3〜30g/10分であるものが用いられる。 ここで、MFRは、シートを成形する際の成形加工性や太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性、回り込み具合などを考慮して選択すればよい。例えば、シートをカレンダー成形する場合には、シートを成形ロールから引き剥がす際のハンドリング性からMFRは、比較的低い値、具体的には0.5〜5g/10分程度が好ましく、また、Tダイを用いて押出成形する場合には、押出負荷を低減させ押出量をUPさせる観点からMFRは、2〜50g/10分が好ましく、さらに好ましくは3〜30g/10分であるものを用いればよい。さらに、太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性や回り込み易さの観点からは、MFRは、2〜50g/10分が好ましく、さらに好ましくは3〜30g/10分であるものを用いればよい。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が採用できる。例えば、チーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒やポストメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法等が挙げられる。本発明においては、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)が比較的軟質の樹脂である為、重合後の造粒(ペレタイズ)のし易さや原料ペレットのブロッキング防止などの観点から低分子量成分が少なく分子量分布の狭い原料が重合できるシングルサイト触媒を用いた重合方法が好適である。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)は、前記条件(a)を満足すること、すなわち示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/gであることが必要であり、好ましくは5〜70J/g、さらに好ましくは10〜65J/gである。0〜70J/gの範囲内であれば、本発明の太陽電池用多層体の柔軟性や透明性(全光線透過率)などが確保される為好ましい。特に、結晶融解熱量が5J/g以上であれば、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難い為好ましい。ここで、該結晶融解熱量の参考値としては、汎用の高密度ポリエチレン(HDPE)が170〜220J/g程度、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が100〜160J/g程度である。当該結晶融解熱量は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7122に準じて加熱速度10℃/分で測定することができる。
また、本発明に用いるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の結晶融解ピーク温度は、特に限定されるものではないが、通常100℃未満であり、30〜90℃である場合が多い。ここで、該結晶融解ピーク温度の参考値としては、汎用の高密度ポリエチレン(HDPE)が130〜145℃程度、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が100〜125℃程度である。すなわち、本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)単独では、示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/gを達成することは困難である。当該結晶融解ピーク温度は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121に準じて加熱速度10℃/分で測定することができる。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の具体例としては、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「エンゲージ(Engage)」、「アフィニティー(Affinity)」、三井化学(株)製の商品名「タフマーA(TAFMER A)」、「タフマーP(TAFMER P)」、日本ポリエチレン(株)製の商品名「カーネル(Karnel)」等を例示することができる。
<エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)>
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)は、前記条件(b)を満足すれば特に限定されるものではないが、通常、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのブロック共重合体が好適に用いられる。ここでエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1等が例示される。本発明においては、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点からエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテンが好適に用いられる。エチレンと共重合するα−オレフィンは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。
また、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)は、前記条件(b)を満足すれば、α−オレフィン以外の単量体に基づく単量体単位を含有していてもよい。該単量体としては、例えば、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物(スチレンなど)、ポリエン化合物等が挙げられる。該単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)中の全単量体単位を100モル%とした場合、20モル%以下であり、15モル%以下であることが好ましい。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)のブロック構造は、前記条件(b)を満足すれば特に限定されるものではないが、柔軟性、耐熱性、透明性等のバランス化の観点から、コモノマー含有率、結晶性、密度、結晶融解ピーク温度(融点Tm)、又はガラス転移温度(Tg)の異なる2つ以上、好ましくは3つ以上のセグメント又はブロックを含有するマルチブロック構造であることが好ましい。具体的には、完全対称ブロック、非対称ブロック、テーパードブロック構造(ブロック構造の比率が主鎖内で漸増する構造)などが挙げられる。該マルチブロック構造を有する共重合体の構造や製造方法については、国際公開第2005/090425号パンフレット(WO2005/090425)、国際公開第2005/090426号パンフレット(WO2005/090426)、および国際公開第2005/090427号パンフレット(WO2005/090427)などで詳細に開示されているものを採用することができる。
本発明においては、前記マルチブロック構造を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体について、以下、詳細に説明する。
該マルチブロック構造を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体は、本発明において好適に使用でき、α−オレフィンとして1−オクテンを共重合成分とするエチレン−オクテンマルチブロック共重合体が好ましい。該ブロック共重合体としては、エチレンに対してオクテン成分が多く(約15〜20モル%)共重合されたほぼ非晶性のソフトセグメントと、エチレンに対してオクテン成分が少なく(約2モル%未満)共重合された結晶融解ピーク温度が100〜145℃である高結晶性のハードセグメントが、各々2つ以上存在するマルチブロック共重合体が好ましい。これらのソフトセグメントとハードセ
グメントの連鎖長や比率を制御することにより、柔軟性と耐熱性の両立を達成することができる。該マルチブロック構造を有する共重合体の具体例としては、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「インフューズ(Infuse)」が挙げられる。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.5〜100g/10分程度、より好ましくは1〜50g/10分、さらに好ましくは1〜30g/10分、特に好ましくは1〜10g/10分であるものが用いられる。
ここで、MFRは、シートを成形する際の成形加工性や太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性、回り込み具合などを考慮して選択すればよい。具体的には、シートをカレンダー成形する場合には、シートを成形ロールから引き剥がす際のハンドリング性からMFRは、比較的低い方、具体的には0.5〜5g/10分程度が好ましく、また、Tダイを用いて押出成形する場合には、押出負荷を低減させ押出量をUPさせる観点からMFRは、1〜30g/10分であるものが好適に用いられる。さらに、太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性や回り込み易さの観点からは、MFRは、3〜50g/10分であるものが好適に用いられる。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)は、前記条件(b)を満足すること、すなわち示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100〜145℃であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/gであることが必要である。結晶融解ピーク温度は、好ましくは105℃以上、さらに好ましくは、110℃以上であり、上限は通常145℃である。また、結晶融解熱量が、好ましくは10〜60J/g、さらに好ましくは、15〜55J/gである。結晶融解ピーク温度及び結晶融解熱量の測定方法については前述の通りである。
一般に、太陽電池モジュールは発電時の発熱や太陽光の輻射熱などで85〜90℃程度まで昇温するが、結晶融解ピーク温度が100℃以上であれば、本発明の太陽電池用多層体の耐熱性を確保することが出来るため好ましく、一方、その上限が145℃であれば、太陽電池素子の封止工程であまり高温にすることなく封止することができる為好ましい。また結晶融解熱量が5〜70J/gの範囲内であれば、本発明の太陽電池用多層体の柔軟性や透明性(全光線透過率)などが確保され、また、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難い為好ましい。
<樹脂層(I)>
本発明の太陽電池用多層体における樹脂層(I)は、前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)と前記エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有する樹脂層である。ここで、これらの共重合体(A)及び共重合体(B)の各々に用いられるα−オレフィンの種類は、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、本発明においては、同一である方が、混合した際の相溶性や太陽電池用多層体の透明性が向上する、すなわち、太陽電池の光電変換効率が向上するため好ましい。
次に、樹脂層(I)中におけるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)とエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の含有量は、柔軟性、耐熱性、透明性等の優れたバランスを有する観点から、それぞれ、好ましくは、50〜99質量%、1〜50質量%であり、より好ましくは、60〜98質量%、2〜40質量%であり、更に好ましくは、70〜97質量%、3〜30質量%である。また、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)とエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の混合(含有)質量比は、特に制限されるものではないが、好ましくは(A)/(B)=99〜50/1〜50、より好ましくは、98〜60/2〜40、より好ましくは、97〜70/3〜30、より好ましくは、97〜80/3〜20、更に好ましくは、97〜90/3〜10である。但し、(A)と(B)の合計を100質量部とする。ここで、混合(含有)質量比が該範囲内であれば、柔軟性、耐熱性、透明性等のバランスに優れた太陽電池用多層体が得られやすいため好ましい。
樹脂層(I)の厚みは、特に制限されないが、太陽電池素子(セル)の封止性の観点から、0.02〜0.7mmであることが好ましく、0.05〜0.6mmであることがより好ましい。
[樹脂層(II)]
樹脂層(II)は、樹脂層(I)の少なくとも一方の側に設けられ、前記(c)の条件を満足するエチレン系重合体(C)と、結晶核剤(D)とを含有し、主に太陽電池素子(セル)や配線等の水分による劣化を抑制するための優れた防湿性、太陽電池モジュール製造時における封止材のハンドリング性や、太陽電池に十分な発電効率を付与するための優れた透明性を付与する役割を有する。
<エチレン系重合体(C)>
本発明の太陽電池用多層体に用いるエチレン系重合体(C)としては、前記条件(c)を満足すれば特に限定されるものではないが、エチレン単独重合体であってもよいし、或いは、エチレンとα―オレフィンの共重合体であってもよい。また、これらの混合物を用いることができる。ここでエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1等が例示される。本発明においては、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点からエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテンが好適に用いられる。エチレンと共重合するα−オレフィンは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。また、これらの中でも、エチレン単独重合体、或いは、エチレンと、ブテン−1、及び/又は、ヘキセン−1、及び/又はオクテン−1からなる共重合体を用いるのが好ましい。
エチレンとα−オレフィンの共重合体を用いる場合、前記共重合体中に占めるブテン−1、ヘキセン−1、及び、オクテン−1の割合の合計が0.1〜3.0質量%であることが好ましく、中でも0.3質量%以上或いは2.8質量%以下、その中でも0.5質量%以上或いは2.6質量%以下であることがさらに好ましい。α−オレフィンがかかる範囲内であれば、防湿性、剛性、透明性に優れた太陽電池用多層体を提供することができる。
また、前記エチレン系重合体(C)の重合に用いられる触媒は特に限定されないが、例えば、塩化チタンと有機アルミニウム化合物からなるチーグラー・ナッタ触媒、酸化クロムなどのクロム化合物からなるフィリップス触媒、メタロセン化合物等からなるシングルサイト触媒等が挙げられる。その中でも特に、シングルサイト触媒を用いることが好ましい。
シングルサイト触媒を用いて重合されるエチレン単独重合体、及び、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体は分子量分布指数(Mw/Mn)が小さく、分子の長さが比較的均一であるため、結晶核剤を添加した場合に微細な結晶を形成することが可能となるため、透明性、防湿性を特に向上することができる。このような点から、前記エチレン系重合体(C)の分子量分布指数(Mw/Mn)が2.5〜4.5、特に2.6以上或いは4.3以下、中でも3.0以上或いは4.0以下であるのが好ましい。分子量分布指数(Mw/Mn)は、高温GPCシステムを用いて測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比から得られる。
使用しうるシングルサイト触媒の例としては、メタロセン化合物とメチルアルミノオキサンとを組み合わせたメタロセン触媒を挙げることができる。シングルサイト触媒を用いて重合されるエチレン単独重合体、及び/又は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体の特徴として、分子量分布が狭い点、同じ密度であっても結晶融解熱量が低い点などを挙げることができる。
また、前記エチレン系重合体(C)の密度が、0.910〜0.948g/cm3であることが好ましく、0.915g/cm3以上或いは0.947g/cm3以下であることがより好ましく、0.920g/cm3以上或いは0.942g/cm3以下であることがさらに好ましい。前記エチレン系重合体(C)の密度がかかる範囲内であれば、本発明の太陽電池用多層体に優れた剛性、防湿性、透明性を付与することができる。
本発明に用いるエチレン系重合体(C)は、前記条件(c)を満足すること、すなわち示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100〜145℃であり、かつ、結晶融解熱量が120〜190J/gであることが必要である。より好ましくは結晶融解ピーク温度が105℃以上、さらに好ましくは110℃以上であり、上限は145℃である。また、より好ましくは結晶融解熱量が130〜185J/g、さらに好ましくは140〜183J/gである。結晶融解ピーク温度及び結晶融解熱量の測定方法については前述の通りである。
前記エチレン系重合体(C)の結晶融解ピーク温度及び結晶融解熱量がかかる範囲内であれば、本発明の太陽電池用多層体に優れた剛性、防湿性、透明性を付与することができる。
<結晶核剤(D)>
本発明の太陽電池用多層体の樹脂層(II)に含有される結晶核剤(D)は、主に前記エチレン系重合体(C)の球晶サイズの微細化による透明性向上や、結晶融解熱量の増大、剛性向上効果を奏するものであり、その種類は特に制限されるものではない。例えばジベンジリデンソルビトール(DBS)化合物、1,3−O−ビス(3,4ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ジアルキルベンジリデンソルビトール、少なくとも一つの塩素または臭素置換基を有するソルビトールのジアセタール、ジ(メチルまたはエチル置換ベンジリデン)ソルビトール、炭素環を形成する置換基を有するビス(3,4−ジアルキルベンジリデン)ソルビトール、脂肪族、脂環族、および芳香族のカルボン酸、ジカルボン酸または多塩基性ポリカルボン酸、相当する無水物および金属塩などの有機酸の金属塩化合物、環式ビス−フェノールホスフェート、2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプテンジカルボン酸などの二環式ジカルボン酸及び塩化合物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−ジカルボキシレートなどの二環式ジカルボキシレートの飽和の金属または有機の塩化合物、1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,3−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,3−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,5−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4,5−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−プロピルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8,−テトラヒドロ−1−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8,−テトラヒドロ−2−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−エチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−エチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−クロルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−クロルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチル−ベンジリデン−2,4−O−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチル−ベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチル−ベンジリデン−2,4−O−p−クロルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−クロル− ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトールなどのジアセタール化合物、ナトリウム2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、アルミニウムビス[2,2’−メチレン−ビス−(4−6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート]、燐酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウムや、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等の脂肪酸、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、シリカ、タルク、カオリン、炭化カルシウム等の無機粒子、グリセロール、グリセリンモノエステルなどの高級脂肪酸エステル、及び類似物を挙げることができる。
これらの中でも、透明性等の点から、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩が特に好ましい。
結晶核剤(D)の具体例としては、新日本理化(株)の商品名「ゲルオールD」シリーズ、旭電化工業(株)の商品名「アデカスタブ」シリーズ、ミリケンケミカル(株)の商品名「Millad」シリーズ、「Hyperform」シリーズ、BASF(株)の商品名「IRGACLEAR」シリーズ等が挙げられ、また結晶核剤のマスターバッチとしては理研ビタミン(株)の商品名「リケマスターCN」シリーズ、ミリケンケミカル(株)の商品名「HL3−4」等が挙げられる。この中でも特に透明性を向上する効果が高いものとして、ミリケンケミカル(株)の商品名「HYPERFORM HPN−20E」、「HL3−4」、理研ビタミン(株)の商品名「リケマスターCN−001」「リケマスターCN−002」を挙げることができる。
<オレフィン相溶樹脂(E)>
前記樹脂層(II)は、更に、オレフィン相溶樹脂(E)を含有することが、防湿性をさらに高める点で好ましい。
オレフィン相溶樹脂(E)としては、オレフィン系樹脂、特に前記エチレン系重合体(C)と相溶し、かつ、前記オレフィン相溶樹脂(E)のJIS K2207に基づき測定した軟化温度Ts(E)が前記エチレン系重合体(C)のJIS K7121に準じた示差走査熱量測定における冷却速度10℃/分で測定される結晶化ピーク温度Tc(C)+5℃以下であることが好ましく、例えば石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、及びこれらの水素添加誘導体からなる群から選ばれる1種類の樹脂又は2種類以上の樹脂を挙げることができる。
前記石油樹脂としては、例えばシクロペンタジエンもしくはその二量体からの脂環式石油樹脂、C9成分からの芳香族石油樹脂等を挙げることができる。
前記テルペン樹脂としては、例えばβ−ピネンからのテルペン−フェノール樹脂などを挙げることができる。
前記クマロン−インデン樹脂としては、例えば、クマロン−インデン共重合体や、クマロン−インデン−スチレン共重合体などを挙げることができる。
前記ロジン系樹脂としては、例えばガムロジン、ウッドロジン等のロジン樹脂、グリセリン、ペンタエリスリトールなどで変性したエステル化ロジン樹脂等を挙げることができる。
このようなオレフィン相溶樹脂(E)は、前記エチレン系重合体(C)に混合した場合の相溶性、色調、熱安定性、耐湿熱性などをさらに高める観点から、水素添加物誘導体、特に水素添加率(以下「水添率」といい、1H−NMRスペクトルからフェニル基を基準とした共役ジエンの不飽和二重結合の割合から求められる)が95%以上であり、かつ水酸基、カルボキシル基、ハロゲンなどの極性基、あるいは二重結合などの不飽和結合を実質上含有しない、石油樹脂またはテルペン樹脂を用いることが好ましい。
オレフィン相溶樹脂(E)は、その分子量を選択することにより、種々の軟化温度のものを得ることができる。
本発明の太陽電池用多層体においては、オレフィン相溶樹脂(E)のJIS K2207に基づき測定した軟化温度Ts(E)は、前記エチレン系重合体(C)のJIS K7121に準じた示差走査熱量測定における冷却速度10℃/分で測定される結晶化ピーク温度Tc(C)+5℃以下であることが好ましく、より好ましくは該Tc(C)+3℃以下であり、該Tc(C)+2℃以下であり、更に好ましくは該Tc(C)以下であり、該Tc(C)−5℃以下である。なお、該Ts(E)の下限は80℃である。前記軟化温度Ts(E)の上限が前記条件を満たすことで、エチレン系重合体(C)の結晶化過程においては、オレフィン相溶樹脂(E)の分子の自由度が高いため、エチレン系重合体(C)の結晶化が阻害されず、微細な結晶が形成され、防湿性に優れた太陽電池用多層体が得られる。また、オレフィン相溶樹脂(E)の軟化温度Ts(E)が80℃以上であれば、成形時におけるペレットのブロッキングや、二次加工時、あるいは、輸送時、使用時における太陽電池用多層体表面へのブリードアウトを生じにくい。
オレフィン相溶樹脂(E)の具体例としては、例えば、三井化学(株)の商品名「ハイレッツ」シリーズ、「ペトロジン」シリーズ、荒川化学工業(株)の商品名「「アルコン」シリーズ、ヤスハラケミカル(株)の商品名「クリアロン」シリーズ、出光石油化学(株)の商品名「アイマーブ」シリーズ、トーネックス(株)の商品名「エスコレッツ」シリーズ等が挙げられる。
<環状オレフィン系樹脂(F)>
前記樹脂層(II)には、環状オレフィン系樹脂(F)を含有することが透明性をさらに高める点で好ましい。
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂(F)としては、(i)環状オレフィンの開環(共)重合体を必要に応じ水素添加した重合体、(ii)環状オレフィンの付加(共)重合体、(iii)環状オレフィンとエチレン、プロピレン等α−オレフィンとのランダム共重合体、(iv)前記(i)〜(iii)を不飽和カルボン酸やその誘導体等で変性したグラフト変性体等が例示できる。具体的には、日本ゼオン(株)の商品名「ZEONOR」シリーズ、三井化学(株)の商品名「アペル」シリーズ、ポリプラスチックス(株)の商品名「TOPAS」シリーズが挙げられる。なお、環状オレフィン系重合体は、例えば、特開昭60−168708号公報、特開昭61−115916号公報、特開昭61−271308号公報、特開昭61−252407号公報などに記載されている公知の方法に準じて製造することもできる。
さらに、本発明において、環状オレフィン開環(共)重合体あるいは環状オレフィン開環(共)重合体の水添物を、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸あるいはその無水物の変性剤で変性したグラフト共重合体も使用することができる。
また、前記環状オレフィン系樹脂(F)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは50〜105℃であり、より好ましくは55〜90℃である。前記環状オレフィン系樹脂(F)のガラス転移温度がかかる範囲内にあれば耐熱性、加工性を低下させることなく、本発明の太陽電池用多層体の透明性を向上させることができる。
<樹脂層(II)>
本発明の太陽電池用多層体における樹脂層(II)は、前記エチレン系重合体(C)と前記結晶核剤(D)を含有する樹脂層である。
樹脂層(II)中におけるエチレン系重合体(C)の含有量は、通常、30質量%以上であり、30〜90質量%であるのが好ましく、40〜80質量%であるのがさらに好ましい。かかる範囲内でチレン系重合体(C)を配合することにより、優れた剛性、防湿性、透明性を付与することができる。
樹脂層(II)中における結晶核剤(D)の含有量は、透明性、防湿性が良好となる範囲で適宜決定することが可能であるが、0.01〜3質量%であるのが好ましく、中でも0.03質量%以上或いは2質量%以下であるのがさらに好ましく、その中でも特に0.05質量%以上或いは1質量%以下であるのがより一層好ましい。かかる範囲内で結晶核剤(D)を配合することにより、結晶核剤の過剰な添加による透明性の低下を生じることなく、本発明の太陽電池用多層体の剛性、防湿性、透明性を向上させることができる。
前記樹脂層(II)中におけるオレフィン相溶樹脂(E)の含有量としては、5〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがさらに好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。かかる範囲内でオレフィン相溶樹脂(E)を含有することにより、オレフィン相溶樹脂(E)の太陽電池用多層体表面へのブリード、機械物性の低下等を生じることなく、本発明の太陽電池用多層体の防湿性をさらに向上させることができる。
前記樹脂層(II)中における環状オレフィン系樹脂(F)の含有量としては、防湿性を損なうことなく、透明性をさらに向上させる観点から、10〜50質量%であることが好ましく、20〜45質量%であることがさらに好ましく、25〜30質量%であることが特に好ましい。
本発明においては、樹脂層(II)の厚みは、特に制限されないが、防湿性と透明性の観点から、0.01〜0.3mmであることが好ましく、0.03〜0.2mmであることがより好ましい。
<その他の成分>
[その他の樹脂]
また、本発明の太陽電池用多層体を構成する樹脂層(I)、及び樹脂層(II)には、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、諸物性(柔軟性、耐熱性、透明性、接着性など)や成形加工性あるいは経済性などをさらに向上させる目的で、樹脂層(I)であれば前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)、及び前記エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)以外、樹脂層(II)であれば前記エチレン系重合体(C)、前記オレフィン相溶樹脂(E)、及び前記環状オレフィン系樹脂(F)以外のその他の樹脂を混合することができる。該その他の樹脂としては、例えば、他のポリオレフィン系樹脂や各種エラストマー(オレフィン系、スチレン系など)、カルボキシル基、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基、シラノール基などの極性基で変性された樹脂などが挙げられる。
[添加剤]
また、本発明の太陽電池用多層体を構成する樹脂層(I)、及び/又は樹脂層(II)には、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、光拡散剤、造核剤、顔料(例えば白色顔料)、難燃剤、変色防止剤などが挙げられる。本発明においては、樹脂層(I)においては、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤から選ばれる少なくとも一種の添加剤が添加されていることが後述する理由等から好ましい。また、樹脂層(II)においては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤から選ばれる少なくとも一種の添加剤が添加されていることが後述する理由等から好ましい。
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤は、封止材の保護材(ガラス、樹脂製のフロントシート、バックシートなど)や太陽電池素子等に対する接着性を向上させるのに有用であり、その例としては、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基のような不飽和基、アミノ基、エポキシ基などとともに、アルコキシ基のような加水分解可能な基を有する化合物を挙げることができる。シランカップリング剤の具体例としては、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを例示することができる。本発明においては、接着性が良好であり、黄変などの変色が少ないこと等からγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。該シランカップリング剤の添加量は、各層を構成する樹脂組成物100質量部に対し、通常、0.1〜5質量部程度であり、0.2〜3質量部添加することが好ましい。また、シランカップリング剤と同様に、有機チタネート化合物などのカップリング剤も有効に活用できる。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、種々の市販品が適用でき、モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系、硫黄系、ホスファイト系など各種タイプのものを挙げることができる。モノフェノール系としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどを挙げることができる。ビスフェノール系としては、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔{1,1−ジメチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル}2,4,9,10−テトラオキサスピロ〕5,5−ウンデカンなどを挙げることができる。
高分子フェノール系としては、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ビドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−{メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキスフェニル)プロピオネート}メタン、ビス{(3,3′−ビス−4′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グルコールエステル、1,3,5−トリス(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トリフェノール(ビタミンE)などを挙げることができる。
硫黄系としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオプロピオネートなどを挙げることができる。
ホスファイト系としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(モノおよび/またはジ)フェニルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナスレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどを挙げることができる。
本発明においては、酸化防止剤の効果、熱安定性、経済性等からフェノール系およびホスファイト系の酸化防止剤が好ましく用いられ、両者を組み合わせて用いることがさらに好ましい。該酸化防止剤の添加量は、各層を構成する樹脂組成物100質量部に対し、通常、0.1〜1質量部程度であり、0.2〜0.5質量部添加することが好ましい。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができ、種々の市販品が適用できる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5− クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニル置換ベンゾトリアゾール化合物であって、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2− ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。またトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノールなどを挙げることができる。サリチル酸エステル系としては、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどを挙げることができる。
該紫外線吸収剤の添加量は、各層を構成する樹脂組成物100質量部に対し、通常、0.01〜2.0質量部程度であり、0.05〜0.5質量部添加することが好ましい。
(光安定剤)
上記の紫外線吸収剤以外に耐候性を付与する耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定化剤が好適に用いられる。ヒンダードアミン系光安定化剤は、紫外線吸収剤のようには紫外線を吸収しないが、紫外線吸収剤と併用することによって著しい相乗効果を示す。ヒンダードアミン系以外にも光安定化剤として機能するものはあるが、着色している場合が多く本発明の太陽電池封止材には好ましくない。
ヒンダードアミン系光安定化剤としては、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ}]、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などを挙げることができる。該ヒンダードアミン系光安定化剤の添加量は、各層を構成する樹脂組成物100質量部に対し、通常、0.01〜0.5質量部程度であり、0.05〜0.3質量部添加することが好ましい。
[太陽電池用多層体]
本発明の太陽電池用多層体は、前記樹脂層(I)の少なくとも一方の側に前記樹脂層(II)を有してなる。
本発明の太陽電池用多層体は、防湿性に優れたものであり、厚み0.3mmに成形したときのJIS K7129B法に基づき温度40℃、相対湿度90%で測定した水蒸気透過率が3.0g/(m2・24時間)以下であることが好ましく、2.0g/(m2・24時間)以下であることがより好ましく、1.0g/(m2・24時間)以下であることが更に好ましい。本発明におけるこのよう優れた防湿性は、主として、前記エチレン系重合体(C)と結晶核剤(D)の組合せ、さらには、オレフィン相溶樹脂(E)、環状オレフィン系樹脂(F)の添加等により達成することができる。
本発明の太陽電池用多層体は、適用される太陽電池の形状や厚み、設置場所などを考慮して、その柔軟性を適宜調整することができるが、例えば、シート形状などで本発明の太陽電池封止材を採取した場合のハンドリング性やシート表面同士のブロッキング防止、あるいは、太陽電池モジュールにおける軽量化(通常3mm程度に対して、薄膜ガラス(1.1mm程度)が適用可能、あるいはガラスレスの構成が適用可能)などを考慮すると、動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E’)が100〜1000MPaであることが好ましく、150〜900MPaであることがより好ましく、200MPa〜800MPaであることがさらに好ましい。該貯蔵弾性率(E’)は、粘弾性測定装置を用いて、振動周波数10Hzで所定温度範囲を測定し、温度20℃における値を求めることで得られる。
本発明の太陽電池用多層体のJIS K7105に基づく厚み0.3mmにおける全光線透過率は、適用する太陽電池の種類、例えばアモルファスの薄膜系シリコン型などや太陽電子素子に届く太陽光を遮らない部位に適用する場合には、あまり重視されないこともあるが、太陽電池の光電変換効率や各種部材を重ね合わせる時の作業性などを考慮し、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
本発明の太陽電池用多層体の耐熱性は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の諸特性(結晶融解ピーク温度、結晶融解熱量、MFR、分子量など)およびエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の諸特性(結晶融解ピーク温度、結晶融解熱量、MFR、分子量など)により影響されるが、とくに、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の結晶融解ピーク温度が強く影響する。一般に、太陽電池モジュールは発電時の発熱や太陽光の輻射熱などで85〜90℃程度まで昇温するが、結晶融解ピーク温度が100℃以上であれば、本発明の太陽電池封止材の耐熱性を確保することが出来るため好ましい。
本発明の太陽電池用多層体の厚みは、特に限定されるものではないが、通常、0.03〜1mm程度であり、透明性、防湿性、及び、ハンドリング性等の点から、好ましくは0.1〜0.7mmのシート状で用いられる。
[太陽電池用多層体の製造方法]
次に、本発明の太陽電池用多層体の製造方法について説明する。
シート状の太陽電池用多層体の製膜方法としては、公知の方法、例えば単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどの溶融混合設備を有し、Tダイを用いる押出キャスト法、カレンダー法やインフレーション法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、本発明においては、ハンドリング性や生産性等の面からTダイを用いる押出キャスト法が好適に用いられる。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、各樹脂層を構成する樹脂組成物の流動特性や製膜性等によって適宜調整されるが、概ね130〜300℃、好ましくは、150〜250℃である。また、多層化の方法についても公知の方法、例えば、共押出、押出ラミネート、熱ラミネート、ドライラミネート等の方法を用いることができる。
前記製造方法にて作製した本発明の太陽電池用多層体において、厚み方向に占める樹脂層(II)の比率は20%以上、70%以下であることが好ましく、30%以上、60%以上であることがより好ましく、35%以上、55%以下であることがさらに好ましい。樹脂層(II)の比率がかかる範囲内であれば、優れた防湿性が得られ、十分な透明性が得られる。また、本発明の太陽電池用多層体の構成としては、樹脂層(I)が多層体の最外層の少なくとも1層として設けられていれば良く、例えば、樹脂層(I)/樹脂層(II)の2種2層構成、樹脂層(I)/樹脂層(II)/樹脂層(I)の2種3層構成などがあげられる。このような多層構成を採用することにより、樹脂層(I)による太陽電池素子の保護性と、樹脂層(II)による防湿性と封止材全体としてのハンドリング性(常温での弾性率など)の両立が比較的容易に実現することが出来る為好ましい。また、本発明の多層体は常温での剛性に優れるため、薄肉ガラス(例えば、1.1mmなど)が適用、あるいはガラスレスなどの構成が適用出来るようになり軽量化なども期待出来る。
また、本発明の太陽電池用多層体は、上記した樹脂層(I)/樹脂層(II)の2種2層構成、あるいは、樹脂層(I)/樹脂層(II)/樹脂層(I)の2種3層構成が好適であるが、太陽電池モジュールとしての特性向上や外観調整(ソリの改良など)等の目的で他の積層構成を採用することも可能である。例えば、樹脂層(I)(添加剤含む)/樹脂層(I)(添加剤含まず)/樹脂層(II)、樹脂層(I)(添加剤Aを含む)/樹脂層(I)(添加剤Bを含む)(添加剤AとBは添加剤処方が異なる)/樹脂層(II)、樹脂層(I)’/樹脂層(I)’’(樹脂層(I)’と(I)’’は貯蔵弾性率(E’)や添加剤の混合比が異なる)/樹脂層(II)、樹脂層(I)/樹脂層(II)’/樹脂層(II)’’(樹脂層(II)’と(II)’’は貯蔵弾性率(E’)や添加剤の混合比が異なる)の3種3層構成、樹脂層(I)/接着層/樹脂層(II)/接着層/樹脂層(II)、樹脂層(I)/再生層/樹脂層(II)/再生層/樹脂層(I)、および、樹脂層(I)/再生層/樹脂層(II)/再生層/樹脂層(II)の3種5層構成などが挙げられる。
シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤等の各種添加剤は、予め樹脂とともにドライブレンドしてからホッパーに供給しても良いし、予め全ての材料を溶融混合してペレットを作製してから供給しても良いし、添加剤のみを予め樹脂に濃縮したマスターバッチを作製し供給してもかまわない。また、シート状で得られた本発明の太陽電池封止材の表面及び/または裏面には、必要に応じて、シートを巻物とした場合のシート同士のブロッキング防止や太陽電池素子の封止工程でのハンドリング性やエア抜きのし易さ向上などの目的のためエンボス加工や種々の凹凸(円錐や角錐形状や半球形状など)加工を行ってもかまわない。
さらに、本発明の太陽電池用多層体を作製する際に、別の基材フィルム(例えば、延伸ポリエステルフィルム(OPET)、延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)やETFE(四フッ化エチレン・エチレン共重合体)、PVF(ポリビニルフロライド)、PVDF(ポリビニリデンフロライド)およびアクリル系などの各種耐候性フィルムなど)と押出ラミ、共押出やサンドラミなどの方法で積層してもかまわない。本発明の太陽電池用多層体と各種基材フィルムを積層することによりハンドリング性の向上や積層比に応じて必要な特性や経済性などを比較的容易に調整することが出来る。
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池用多層体は、太陽電池用部材として用いられるものであり、その部位は特に限定されるものではないが、主に太陽電池素子に密着し保護する太陽電池封止材としての部位に太陽電池封止用多層体として、また、太陽電池モジュール全体としての柔軟性、剛性、カール、厚みや絶縁破壊電圧の調整などの目的で太陽電池素子に密着しない部位にも使用される。ここで、太陽電池素子に密着しない部位の具体例としては、例えば、上部保護材/封止材/太陽電池素子/封止材/下部保護材のような太陽電池モジュールの上部保護材の構成層として、最表面層/本発明の太陽電池用多層体/バリア層、最表面層/バリア層/本発明の太陽電池用多層体、最表面層/本発明の太陽電池用多層体や、最表面層/本発明の太陽電池用多層体/バリア層/本発明の太陽電池用多層体などが挙げられ、また、下部保護材の構成層として、本発明の太陽電池用多層体/バリア層/最裏面層、他のポリオレフィン層(CPPなど)/本発明の太陽電池用多層体/バリア層/最裏面層、他のポリオレフィン層(CPPなど)/バリア層/本発明の太陽電池用多層体/最裏面層や他のポリオレフィン層(CPPなど)/本発明の太陽電池用多層体/最裏面層などが挙げられる。また、本発明の太陽電池用多層体を太陽電池素子に密着しない部位に用いた場合には、太陽電池素子に密着し保護する太陽電池材には、本発明の太陽電池用多層体、あるいは、市販のEVAやアイオノマー系の太陽電池材を用いることができる。ここでは、本発明の太陽電池用多層体を太陽電池素子に密着し保護する太陽電池材として用いて作製された太陽電池モジュールについて説明する。
[太陽電池モジュール]
次に本発明の太陽電池用多層体を用い、太陽電池素子を上下の保護材であるフロントシートおよびバックシートで固定することにより太陽電池モジュールを製作することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができ、好ましくは、本発明の太陽電池用多層体を封止材、すなわち太陽電池封止用多層体として用い、本発明の太陽電池用多層体と、上部保護材と、太陽電池素子と、下部保護材とを用いて作製された太陽電池モジュールが挙げられ、具体的には、上部保護材/封止材(封止樹脂層)/太陽電池素子/封止材(封止樹脂層)/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止用多層体で挟むような構成のもの(図1参照)、下部保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子上に封止材と上部保護材を形成させるような構成のもの、上部保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系透明保護材上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作製したものの上に封止材と下部保護材を形成させるような構成のものなどを挙げることができる。なお、本発明の太陽電池用多層体を用いた太陽電池モジュールにおいて、封止材が2箇所以上の部位に使用される場合、全ての部位に本発明の太陽電池用多層体を用いてもかまわないし、1箇所のみの部位に本発明の太陽電池用多層体を用いてもかまわない。また、封止材が2箇所以上の部位に使用される場合、各々の部位に使用される本発明の太陽電池用多層体を構成する樹脂層(I)、及び、樹脂層(II)を構成する樹脂組成物の組成や、封止用多層体に占める樹脂層(I)、及び、樹脂層(II)の厚み比率は同一であってもよいし、異なっていてもよい。なお、いずれの場合においても、太陽電池素子側に本発明の太陽電池用多層体の樹脂層(I)側が接触するように太陽電池モジュールを作製することで、太陽電池素子を封止する際に十分な接着性、封止性を得ることができる。
封止樹脂層間に配置され配線される太陽電池素子としては、例えば、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルルなどのIII−V族やII−VI族化合物半導体型、色素増感型、有機薄膜型等が挙げられる。
本発明の太陽電池用多層体を用いて作製された太陽電池モジュールを構成する各部材については、特に限定されるものではないが、上部保護材としては、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂などの板材やフィルムの単層もしくは多層の保護材を挙げることができる。下部保護材としては、金属や各種熱可塑性樹脂フィルムなどの単層もしくは多層のシートであり、例えば、錫、アルミ、ステンレスなどの金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの単層もしくは多層の保護材を挙げることができる。これらの上部および/又は下部の保護材の表面には、本発明の太陽電池用多層体や他の部材との接着性を向上させるためにプライマー処理やコロナ処理など公知の表面処理を施すことができる。また、本発明の太陽電池用多層体は、太陽電池素子を保護することが主な使用目的であるが、柔軟性の向上、厚みの調整あるいは太陽電池モジュール全体としての絶縁破壊電圧の確保などの目的で太陽電池素子に密着しない部位に使用することも可能である。
本発明の太陽電池用多層体を用いて作製された太陽電池モジュールを既述した上部保護材/封止材(封止樹脂層)/太陽電池素子/封止材(封止樹脂層)/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟むような構成のものを例として説明する。図1に示すように、太陽光受光側から順に、透明基板10、本発明の太陽電池用多層体を用いた封止樹脂層12A、太陽電池素子14A,14B、本発明の太陽電池用多層体を用いた封止樹脂層12B、バックシート16が積層されてなり、さらに、バックシート16の下面にジャンクションボックス18(太陽電池素子から発電した電気を外部へ取り出すための配線を接続する端子ボックス)が接着されてなる。太陽電池素子14A及び14Bは、発電電流を外部へ電導するために配線20により連結されている。配線20は、バックシート16に設けられた貫通孔(不図示)を通じて外部へ取り出され、ジャンクションボックス18に接続されている。
太陽電池モジュールの製造方法としては、公知の製造方法が適用でき、特に限定されるものではないが、一般的には、上部保護材、封止樹脂層、太陽電池素子、封止樹脂層、下部保護材の順に積層する工程と、それらを真空吸引し加熱圧着する工程を有する。また、バッチ式の製造設備やロール・ツー・ロール式の製造設備なども適用することができる。
本発明の太陽電池用多層体を用いて作製された太陽電池モジュールは、適用される太陽電池のタイプとモジュール形状により、モバイル機器に代表される小型太陽電池、屋根や屋上に設置される大型太陽電池など屋内、屋外に関わらず各種用途に適用することができる。
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるシートについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、シートの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向とよぶ。
(1)結晶融解ピーク温度(Tm)
(株)パーキンエルマー製の示差走査熱量計、商品名「Pyris1 DSC」を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)を求めた。
(2)結晶化ピーク温度(Tc)
(株)パーキンエルマー製の示差走査熱量計、商品名「Pyris1 DSC」を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温した時に測定されたサーモグラムから結晶化ピーク温度(℃)を求めた。
(3)結晶融解熱量(ΔHm)
(株)パーキンエルマー製の示差走査熱量計、商品名「Pyris1 DSC」を用いて、JIS K7122に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解熱量(ΔHm)(J/g)を求めた。
(4)軟化温度(Ts)
JIS K2207に準じてオレフィン相溶樹脂(E)の軟化温度を求めた。
(5)分子量分布指数(Mw/Mn)
日本ウォーター(株)製高温GPCシステムを用いて重量平均分子量(Mw)、及び、数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布指数(Mw/Mn)を算出した。
(6)透明性(全光線透過率)
村上色彩技術研究所(株)製「反射・透過率計」を用いて、JIS K7105に準じて、厚み0.3mmのサンプルについて全光線透過率の測定を行った。全光線透過率が85%以上であるものを合格とした。
(7)防湿性(水蒸気透過率)
JIS K7129Bに基づき、MOCON社製PERMATRAN W 3/31を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下において厚み0.3mmのサンプルについて水蒸気透過率を測定した。水蒸気透過率が3.0g/(m2・24時間)以下、かつ、1.0g/(m2・24時間)を超えるものを(○)とし、1.0g/(m2・24時間)以下であるものを(◎)、3.0g/(m2・24時間)を超えるものを(×)とした。
(8)剛性(貯蔵弾性率(E’))
動的粘弾性測定機(アイティ計測(株)製、商品名:粘弾性スペクトロメーターDVA−200)を用いて、振動周波数:10Hz、昇温速度:3℃/分、歪0.1%の条件で、貯蔵弾性率(E’)を−100℃から測定し、得られたデータから、20℃における貯蔵弾性率(E’)を読み取った。20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上、1000MPa以下であるものを合格とした。
(9)封止性
真空ラミネーター((株)エヌ・ピー・シー製、商品名:LM30×30)を用いて、熱板温度:150℃、加工時間:20分(内訳、真空引き:5分、プレス:5分、圧力保持:10分)、圧着速度:急速の条件で、熱板側から順に、3mm厚白板ガラス(旭硝子(株)製、商品名:ソライト)、0.3mm厚封止材、0.4mm厚太陽電池セル(フランスフォトワット社製、商品名:101×101MM)、0.3mm厚封止材、0.125mm厚耐候性PETフィルム(東レ(株)製、商品名:ルミラーX10S)の5層を真空プレスして作製した太陽電池モジュール(サイズ:150mm×150mm)の外観を目視し、その結果を下記の基準で評価した。
(○)封止材が太陽電池素子周囲に隙間なく十分に回り込んでいる。
(×)封止材が太陽電池素子周囲に対し十分に回り込まず、気泡や浮きが発生している。
(10)耐熱性
厚み3mmの白板ガラス(サイズ;縦75mm、横25mm)と厚み5mmのアルミ板(サイズ;縦120mm、横60mm)の間に厚みが0.3mmのシート状の封止材を重ね、真空プレス機を用いて、150℃、15分の条件で積層プレスした試料を作製し、該試料を85℃、85%RHの恒温恒湿槽内で60度に傾斜して設置し2000時間経過後の状態を観察し、下記の基準で評価した。
(○)ガラスが初期の基準位置からずれなかったもの
(×)ガラスが初期の基準位置からずれたもの、あるいは、シートが溶融したもの
<使用した材料>
[エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)]
(A)−1:エチレン−オクテンランダム共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:エンゲージ8200、エチレン/オクテン=76/24質量%(93/7モル%)、結晶融解ピーク温度=65℃、結晶融解熱量=53J/g)
(A)−2:エチレンープロピレン−ヘキセンランダム共重合体(日本ポリエチレン(株)製、商品名:カーネルKJ640T、エチレン/プロピレン/ヘキセン=80/10/10質量%(89/7/4モル%)、結晶融解ピーク温度=53℃、結晶融解熱量=58J/g)
[エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)]
(B)−1:エチレンーオクテンブロック共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:インフューズ9000、エチレン/オクテン=65/35質量%(88/12モル%)、結晶融解ピーク温度=122℃、結晶融解熱量=44J/g)
[エチレン系重合体(C)]
(C)−1:エチレン−ブテン−オクテンランダム共重合体(旭化成(株)製、商品名:クレオレックスK4125、エチレン/ブテン−1/オクテン−1=97.7/1.1/1.2質量%(99.1/0.6/0.3モル%)、密度=0.941g/cm3、結晶融解ピーク温度=130℃、結晶融解熱量=183J/g、結晶化ピーク温度=113℃、Mw/Mn=3.12)
(C)−2:エチレン−ブテン−オクテンランダム共重合体(旭化成(株)製、商品名:クレオレックスK4750、エチレン/ブテン−1/オクテン−1=97.9/0.8/1.3質量%(99.3/0.4/0.3モル%)、密度=0.947g/cm3、結晶融解ピーク温度=131℃、結晶融解熱量=181J/g、結晶化ピーク温度=113℃、Mw/Mn=2.87)
(C)−3:エチレン単独重合体(旭化成(株)製、商品名:サンテックHD F371、エチレン=100質量%(100モル%)、密度=0.944g/cm3、結晶融解ピーク温度=131℃、結晶融解熱量=167J/g、結晶化ピーク温度=114℃、Mw/Mn=4.72)
(C)−4:エチレン−ヘキセンランダム共重合体(宇部丸善ポリエチレン(株)製、商品名:ユメリット2040FC、密度=0.918g/cm3、結晶融解ピーク温度=121℃、結晶融解熱量=134J/g、結晶化ピーク温度=105℃、Mw/Mn=2.80)
[結晶核剤(D)]
(D)−1:脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛/1,2−シクロヘキサンジカルボン酸カルシウム塩=34/66質量%)
[オレフィン相溶樹脂(E)]
(E)−1:水素添加石油樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名:アルコンP115、軟化温度Ts(E)=115℃)
(E)−2:水素添加石油樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名:アルコンP140、軟化温度Ts(E)=140℃)
[環状オレフィン系樹脂(F)]
(F)−1:環状オレフィン系樹脂(ポリプラスチックス(株)製、商品名:TOPAS9506F−04、ガラス転移温度=68℃、非晶性(結晶融解熱量=0J/g))
[添加剤(G)]
(G)−1:シランカップリング剤(信越化学(株)製、商品名:KBM503、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)
(実施例1)
(A)−1、(B)−1、及び、(G)−1を混合質量比94.5:5:0.5の割合でドライブレンドした後、φ40mm同方向二軸押出機を用いて2種3層のマルチマニホールド式の口金より両外層となる樹脂層(I)として設定温度190〜200℃で押出した。また、同時に(C)−1、及び、(D)−1を混合質量比99.9:0.1の割合でドライブレンドした後、φ40mm同方向二軸押出機を用いて同口金より中間層となる樹脂層(II)として設定温度200〜220℃で押出した。この時、それぞれの層の厚みは樹脂層(I)/樹脂層(II)/樹脂層(I)が0.1/0.1/0.1(mm)となるように溶融樹脂の吐出量を調整した。次いで、この共押出シートを約20℃のキャストロールにて急冷し、厚み0.3mmの多層シートを得た。得られた多層シートについて、透明性、水蒸気透過率、耐熱性の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、樹脂層(II)を構成する樹脂組成物を(C)−1、(D)−1、及び、(E)−1を混合質量比79.9:0.1:20の割合で混合したものに変更した以外は実施例1と同様の方法、厚み構成で多層シートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、樹脂層(II)を構成する樹脂組成物を(C)−1、(D)−1、(E)−1、及び、(F)−1を混合質量比49.9:0.1:20:30の割合で混合したものに変更した以外は実施例1と同様の方法、厚み構成で多層シートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例3において、樹脂層(II)を構成する樹脂組成物中の(C)−1を(C)−2に変更した以外は実施例1と同様の方法、厚み構成で多層シートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例3において、樹脂層(II)を構成する樹脂組成物中の(C)−1を(C)−3に変更した以外は実施例1と同様の方法、厚み構成で多層シートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例3において、樹脂層(I)を構成する樹脂組成物中の(A)−1を(A)−2に変更した以外は実施例1と同様の方法、厚み構成で多層シートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例1において、樹脂層(II)を構成する樹脂組成物中の(C)−1を、(C)−4に変更した以外は実施例1と同様の方法、厚み構成で多層シートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例3において、樹脂層(II)を構成する樹脂組成物中の(E)−1を、(E)−2に変更した以外は実施例3と同様の方法、厚み構成で多層シートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例9)
(A)−1、(B)−1、及び、(G)−1を混合質量比94.5:5:0.5の割合でドライブレンドした後、φ40mm同方向二軸押出機を用いて2種2層のマルチマニホールド式の口金より樹脂層(I)として設定温度190〜200℃で押出した。また、同時に(C)−1、(D)−1、(E)−1、及び、(F)−1を混合質量比49.9:0.1:20:30の割合でドライブレンドした後、φ40mm同方向二軸押出機を用いて同口金より樹脂層(II)として設定温度200〜220℃で押出した。この時、それぞれの層の厚みは樹脂層(I)/樹脂層(II)が0.15/0.15(mm)となるように溶融樹脂の吐出量を調整した。次いで、この共押出シートを約20℃のキャストロールにて急冷し、厚み0.3mmの多層シートを得た。得られた多層シートについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、樹脂層(II)を構成する樹脂組成物として(C)−1を単独で用いた以外は実施例1と同様の方法、厚み構成で多層シートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、樹脂層(II)を構成する樹脂組成物中の(C)−1を、プライムポリマー(株)製、商品名:ハイゼックス3600F(高密度ポリエチレン、エチレン=100質量%(100モル%)、密度=0.958g/cm3、結晶融解ピーク温度=134℃、結晶融解熱量=195J/g、結晶化ピーク温度=116℃、Mw/Mn=4.72、以下(N)−1と略する)に変更した以外は実施例1と同様の方法、厚み構成で多層シートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1において、樹脂層(I)を構成する樹脂組成物を(A)−1、及び、(G)−1を混合質量比99.5:0.5で混合したものに変更した以外は実施例1と同様の方法、厚み構成で多層シートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例1において樹脂層(I)を無くし、樹脂層(II)のみからなる厚み0.3mmの単層シートを得た。得られたシートについて実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
(参考例1)
実施例1において樹脂層(II)を無くし、樹脂層(I)のみからなる厚み0.3mmの単層シートを得た。得られたシートについて実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
Figure 2012134474
表1から明らかである通り、実施例1〜9に示された本発明の太陽電池用多層体は、防湿性、透明性、封止性、ハンドリング性、さらには耐熱性のいずれにも優れていた。一方、本発明とは組成や構成が異なる比較例1〜4のシートは、防湿性、透明性、封止性、ハンドリング性、及び耐熱性のうち、少なくとも1つが劣っていた。
(実施例10)
エヌ・ピー・シー社製真空ラミネーターLM30×30を用いて、熱板温度:150℃、加工時間:20分(内訳、真空引き:5分、プレス:5分、圧力保持:10分)、圧着速度:急速の条件で、熱板側から順に、上部保護材として厚みが3mmの白板ガラス(旭硝子(株)製、商品名:ソライト)、実施例3で採取した厚みが0.3mmの多層シート(封止材、樹脂層(I)が太陽電池素子側)、厚みが0.4mmの太陽電池素子(セル)(フォトワット社製、型式:101×101MM)、実施例3採取した厚みが0.3mmの多層シート(封止材、樹脂層(I)が太陽電池素子側)、下部保護材として厚みが0.125mmの耐候性PETフィルム(東レ(株)製、商品名:ルミラーX10S)の5層を真空プレスして太陽電池モジュール(サイズ:150mm×150mm)を作製した。得られた太陽電池モジュールは透明性や外観などに優れるものであった。
10・・・透明基板
12A,12B・・・封止樹脂層
14A,14B・・・太陽電池素子
16・・・バックシート
18・・・ジャンクションボックス
20・・・配線

Claims (13)

  1. 下記(a)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)と、下記(b)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有する樹脂層(I)を最外層の少なくとも一層として有し、かつ、下記(c)の条件を満足するエチレン系重合体(C)と、結晶核剤(D)とを含有する樹脂層(II)を有することを特徴とする太陽電池用多層体。
    (a):示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
    (b):示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100〜145℃であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
    (c):示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100〜145℃であり、かつ、結晶融解熱量が120〜190J/g
  2. 前記樹脂層(II)中の結晶核剤(D)の含有量が0.01質量%以上、3質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用多層体。
  3. 前記樹脂層(II)が、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、及びそれらの水素添加誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン相溶樹脂(E)を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池用多層体。
  4. JIS K2207に基づき測定した前記オレフィン相溶樹脂(E)の軟化温度Ts(E)が、前記エチレン系重合体(C)の示差走査熱量測定における冷却速度10℃/分で測定される結晶化ピーク温度Tc(C)+5℃以下であることを特徴とする請求項3に記載の太陽電池用多層体。
  5. 前記エチレン系重合体(C)が、エチレン以外の成分として、ブテン−1、ヘキセン−1、及びオクテン−1から選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンを含有し、且つ、前記エチレン系重合体(C)中に含まれる該α−オレフィンの合計が0.1〜3.0質量%であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽電池用多層体。
  6. 前記樹脂層(II)が、環状オレフィン系樹脂(F)を含有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の太陽電池用多層体。
  7. 前記太陽電池用多層体を厚み0.3mmに成形したときのJIS K7129B法に基づき温度40℃、相対湿度90%で測定した水蒸気透過率が3.0g/(m2・24時間)以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の太陽電池用多層体。
  8. 前記太陽電池用多層体を厚み0.3mmに成形したときのJIS K7105に基づき測定した全光線透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の太陽電池用多層体。
  9. 動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E’)が100〜1000MPaであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の太陽電池用多層体。
  10. 前記樹脂層(I)、及び/又は樹脂層(II)に、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤及び耐候安定剤から選ばれる少なくとも一種の添加剤を添加してなることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の太陽電池用多層体。
  11. 前記太陽電池用多層体に占める前記樹脂層(II)の厚み比率が20%以上、70%以下であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の太陽電池用多層体。
  12. 太陽電池素子に密着し保護する太陽電池封止材であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の太陽電池用多層体。
  13. 請求項1から12のいずれか1項に記載の太陽電池用多層体を用いて作製された太陽電池モジュール。
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