JP5719727B2 - 太陽電池用前面保護シート・封止材積層体及びそれを用いて作製された太陽電池モジュール - Google Patents
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Description
このような太陽電池は、通常、前面保護シート、封止材 、発電素子、封止材及び裏面保護シートをこの順で積層し、加熱溶融させることにより接着一体化することで製造される。太陽電池の前面保護シートとしては、紫外線に対する耐久性に優れることが要求されるが、加えて、湿気ないし水の透過による内部の導線や電極の発錆を防止するために、防湿性に優れることが極めて重要な要件となる。また封止材には、太陽電池素子を保護する為の柔軟性や耐衝撃性、太陽電池モジュールが発熱した際の耐熱性、太陽電池素子へ太陽光が効率的に届く為の透明性(全光線透過率など)、耐久性、寸法安定性、難燃性、水蒸気バリア性等が主に要求される。
このため、従来は、前面保護シートには表面側透明保護部材としてガラス板が用いられている。しかし、ガラス板は耐光性、防湿性に優れる反面、重量が重く、また、衝撃に弱く割れ易いという欠点がある。この問題に対して、たとえば特許文献1では前面保護シートに透明樹脂フィルムを用い,封止材と組み合わせることにより、重さ及び衝撃による破損の問題を解決し、また前面保護シートに耐候性、防湿性が良好な樹脂フィルムを組み合わせることにより太陽電池の耐久性の向上に有効な太陽電池用前面保護シートが提案されている。しかしながら、特許文献1記載の太陽電池用前面保護シートにおいて、前面保護シートに接着剤を用いて耐候層と防湿層を張り合わせる場合,接着剤を厚くすることは生産性の観点から難しく,太陽電池受光面への落下物により防湿層が破損し防湿機能を劣下させてしまうことがあった。
しかしながら,前面保護シートにエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用する場合、通常、これに耐熱性を付与することを主な目的として有機過酸化物などの架橋剤を用いた架橋が行われるため,架橋にともなう表面外観悪化や防湿層の劣下が生じる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体には、長期間における使用に際して、エチレン−酢酸ビニル共重合体の加水分解等により発生する酢酸、架橋剤、架橋助剤などに起因して、前面保護シート内の樹脂層や接着剤を劣下させ層内界面での剥離が発生する問題があった。またこの場合、封止材にもエチレン− 酢酸ビニル共重合体を使用されるため,太陽電池を製造する真空ラミネーションにおいて,防湿層の上下において架橋収縮による応力が発生し,防湿層のバリア性を著しく低下させてしまうという問題もあった。
しかし、上記特許文献3で具体的に用いられているプロピレンを主成分とする重合体からなる樹脂組成物では、透明性が不十分であり(全光線透過率:83.2%(実施例参照))、前面保護シート内の張り合わせフィルムとして使用した場合,前面保護シート全体の光線透過率が低下し太陽電池の発電効率が低下する。また、特許文献4で用いられている各ポリマーブレンドは、必ずしも透明性に優れたものではなく、柔軟性と耐熱性および透明性とのバランス化においては未だ問題があった。更に、このような重合体を前面保護シート及び封止材の両方に使用することは太陽電池の性能に重大な影響を与える光線透過率の著しい劣下を招くことになる
尚、上記特許文献3、4のいずれにおいても、前面保護シートと封止材の組み合わせにおいて,透明性,全光線透過率の低下による太陽電池の性能低下を防止しながら,前面保護シートにおける防湿層の劣化を防ぐという着眼はない。このように、従来の太陽電池用前面保護シートと封止材の組み合わせに関する技術において、透明性,全光線透過率の低下による太陽電池の性能低下を防止しながら,前面保護シートにおける防湿層の劣下に対する有用な解決手段は提案されていなかった。
また、本発明の課題は、この太陽電池用前面保護シート・封止材積層体を用いた、軽量、高耐久性の太陽電池モジュール及び太陽電池を提供することにある。
耐候層(A)、下記(1)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Bー1)と下記(2)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(Bー2)とを含有する柔軟層(B)、防湿層(C)、及び下記(1)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Dー1)と下記(2)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(Dー2)とを含有する封止材(D)を積層してなる太陽電池用前面保護シート・封止材積層体に関する。
(1)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(2)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
<耐候層(A)>
本発明の太陽電池用前面保護シート・封止材積層体における耐候層(A)とは高透明で可撓性に富み、耐熱性、防湿性、紫外線耐久性に優れる性能を有する樹脂層をいい、太陽電池前面保護シートと表面外観の維持を目的として用いられる。
耐候層の耐候性は、JIS K7350に準じてなされるサンシャインウェザーメーターによる耐候性試験において、力学物性や全光線透過率の低下が少ないものが好ましく、5000時間経過後の力学物性や全光線透過率の低下がないものがより好ましく、10000時間経過後の力学物性や全光線透過率の低下がないものが特に好ましい。
耐候層(A)の材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂層、或いは、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂に紫外線吸収剤を練り込んだ樹脂組成物を成膜したものが好ましく用いられ、長期耐久性と高光線透過率の観点から、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)がより好ましく用いられる。なお、上記紫外線吸収剤としては、後述の柔軟層に含有される紫外線吸収剤と同様のものが使用できる。上記樹脂は、1種で用いることもできるが2種以上組合せて使用することもできる。
本発明の太陽電池用前面保護シート・封止材積層体における防湿層(C)とは、湿気、水の透過による内部の導線、電極の発錆等を防止するために用いられ、好ましくは高透明であり、防湿性に優れた樹脂層であれば特に制限はないが、基材層の少なくとも一方の面に無機酸化物のコーティング膜を少なくとも1層有するものが好ましく用いられる。
上記基材層としては、熱可塑性高分子フィルムが好ましく、好ましくは高透明であり、その材料としては、通常の包装材料に使用しうる樹脂であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体などのポリオレフィン、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、フッ素樹脂、アクリレート樹脂、生分解性樹脂などが挙げられる。これらの中では、フィルム物性、コストなどの点から、ポリエステル、ポリアミド、およびポリオレフィンから選ばれる少なくとも一つの樹脂が好ましい。中でも、フィルム物性の点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。
上記基材層としての熱可塑性高分子フィルムは、上記の原料を用いて成形してなるものであるが、基材として用いる際は、未延伸であってもよいし延伸したものであってもよい。また、他のプラスチック基材と積層されていてもよい。
本発明における柔軟層(B)とは、前記耐候層(A)と防湿層(C)との間に配置され使用されるものである。柔軟層(B)としては、具体的には、高透明で可撓性に富み、耐熱性、加水分解性に優れることから、エチレン−α−オレフィン共重合体からなる樹脂層が用いられ、さらに、特定の熱特性を有するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体と特定の熱特性を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体を含有する樹脂組成物を使用することが高光線透過率,耐熱性,柔軟性の発現の観点から必要となる。
(1)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(2)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
次に、柔軟層(B)におけるこれらの共重合体の混合(含有)質量比は、特に制限されるものではないが、好ましくは(Bー1)/(Bー2)=99〜50/1〜50、より好ましくは、98〜60/2〜40、さらに好ましくは、97〜70/3〜30である。但し、(Bー1)と(Bー2)の合計を100質量部とする。ここで、混合(含有)質量比が上記範囲内であれば、柔軟性、耐熱性、透明性等のバランスに優れた柔軟層(B)が得られやすいため好ましい。
前述の通り、柔軟層(B)におけるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(Bー2)の結晶融解ピーク温度が100℃以上であれば、本発明における柔軟層(B)の耐熱性を確保することが出来る。そして、前面保護シートは柔軟層(B)の耐熱性と弾性率が部材を構成する層において最も低いことから,前面保護シートの耐熱性については柔軟層(B)がその性能を決定する。
本発明においては、柔軟層(B)の耐熱性は、厚み3mmの白板ガラス(サイズ;縦75mm、横25mm)と厚み5mmのアルミ板(サイズ;縦120mm、横60mm)の間に厚みが0.5mmのシート状の柔軟層(B)を重ね、真空プレス機を用いて150℃、15分の条件で積層プレスした試料を作製し、該試料を100℃の恒温槽内で60度に傾斜して設置し500時間経過後の状態を観察し、ガラスが初期の基準位置からずれなかったものを○、ガラスが初期の基準位置からずれたり、シートが溶融したものを×として評価した。
また、本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Bー1)の結晶融解ピーク温度は、特に限定されるものではないが、通常、100℃未満であり、好ましくは30〜90℃である。ここで、該結晶融解ピーク温度の参考値としては、汎用の高密度ポリエチレン(HDPE)が130〜145℃程度、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が100〜125℃程度である。すなわち、本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Bー1)単独では、示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/gを達成することは困難である。
該マルチブロック構造を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体は、本発明において好適に使用でき、α−オレフィンとして1−オクテンを共重合成分とするエチレン−オクテンマルチブロック共重合体が好ましい。該ブロック共重合体としては、エチレンに対してオクテン成分が多く(約15〜20モル%)共重合されたほぼ非晶性のソフトセグメントと、エチレンに対してオクテン成分が少なく(約2モル%未満)共重合された結晶融解ピーク温度が110〜145℃である高結晶性のハードセグメントが、各々2つ以上存在するマルチブロック共重合体が好ましい。これらのソフトセグメントとハードセグメントの連鎖長や比率を制御することにより、柔軟性と耐熱性の両立を達成することができる。
該マルチブロック構造を有する共重合体の具体例としては、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「インフューズ(Infuse)」が挙げられる。
封止材(D)は、太陽電池素子を封止するために用いられ、前記柔軟層(B)と同様、下記(1)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Dー1)と下記(2)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(Dー2)とを含有する。
(1)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(2)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
本発明においては、封止材(D)を構成するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Dー1)及びエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(Dー2)の各々に用いられるα−オレフィンの種類は、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、本発明においては、同一である方が、混合した際の相溶性や前面保護シートの透明性、すなわち、太陽電池の光電変換効率が向上するため好ましい。
封止材(D)の厚みは、特に限定されるものではないが、通常、0.05〜1mm程度であり、好ましくは0.1〜0.7mm,より好ましくは0.3〜0.5mmのシート状で用いられる。
本発明の太陽電池用前面保護シート・封止材積層体には、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、諸物性(柔軟性、耐熱性、透明性、接着性など)や成形加工性あるいは経済性などをさらに向上させる目的で上述したエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Bー1)あるいは(D−1)やエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(Bー2)あるいは(D−2)以外の樹脂を混合することができる。該樹脂としては、例えば、他のポリオレフィン系樹脂や各種エラストマー(オレフィン系、スチレン系など)、カルボキシル基、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基、シラノール基などの極性基で変性された樹脂および粘着付与樹脂などが挙げられる。
硫黄系としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオプロピオネートなどを挙げることができる。
該紫外線吸収剤の添加量は、前面保護シート・封止材積層体を構成する各樹脂層中、通常、0.01〜2.0質量%程度であり、0.05〜0.5質量%添加することが好ましい。
前面保護シート・封止材積層体は、上述の製膜された耐候層(A)、柔軟層(B)、防湿層(C)及び封止材(D)を、定法に従って、真空ラミネーターで温度120〜170℃、脱気時間2〜15分、プレス圧力0.5〜1atm、プレス時間8〜45分で加熱加圧圧着することにより製造することができる。
なお、本発明においては、前面保護シート・封止材積層体は、耐候層(A)をその表面側として、また防湿層(C)をその内面側として、すなわち、前面(上部)から、耐候層(A)、柔軟層(B)、防湿層(C)、封止材(D)の順に配置されるのが好ましい。本発明においては、このような構成により、防湿層の劣化を防止し、長期の高い防湿性と耐候性を達成することができる。
図1に示す太陽電池用前面保護シート・封止材積層体の例は、耐候層1、柔軟層2,防湿層3及び封止樹脂層4を積層し、積層一体化したものである。
本発明の太陽電池用前面保護シート・封止材積層体は、前述の構成を有するものであるが、前面保護シートと封止材を一体化するとともに、特に、防湿層(C)を前述の柔軟層(B)とシート状の封止材(D)の間に配置することにより、高い光線透過率を達成しかつ防湿性の低下を著しく低減することが可能となる。
このような太陽電池用前面保護シート・封止材積層体を用いて本発明の太陽電池モジュール及び/又は太陽電池を製造するには、従来の太陽電池のガラス板及び封止材の代りに本発明の前面保護シート・封止材積層体を用いて公知の方法により作製すれば良い。
(1)結晶融解ピーク温度(Tm)
(株)パーキンエルマー製の示差走査熱量計、商品名「Pyris1 DSC」を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)を求めた。
(株)パーキンエルマー製の示差走査熱量計、商品名「Pyris1 DSC」を用いて、JIS K7122に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解熱量(ΔHm)(J/g)を求めた。
アイティ計測(株)製の粘弾性測定装置、商品名「粘弾性スペクトロメーターDVA−200」を用いて、試料(縦4mm、横60mm)を振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間25mmで横方向について、−150℃から150℃まで測定し、得られたデータから20℃における貯蔵弾性率(E´)(MPa)を求めた。
厚み3mmの白板ガラス(サイズ;縦75mm、横25mm)2枚の間に耐候層,各柔軟層、防湿層を重ね、真空プレス機を用いて、150℃、15分の条件で積層プレスした試料を作製し、JIS K7105に準じて全光線透過率を測定し、その値を記載するとともに、下記の基準で評価した結果も併記した。
(◎)全光線透過率が90%以上
(○)全光線透過率が85%以上、90%未満
(×)全光線透過率が85%未満、あるいは、明らかに白濁している場合(未測定)
厚み3mmの白板ガラス(サイズ;縦75mm、横25mm)2枚の間に柔軟層を重ね、真空プレス機を用いて、150℃、15分の条件で積層プレスした試料を作製し、該試料を100℃の恒温槽内で60度に傾斜して設置し500時間経過後の状態を観察し、下記の基準で評価した。
(○)ガラスが初期の基準位置からずれなかったもの
(×)ガラスが初期の基準位置からずれたり、シートが溶融したもの
防湿性能はJIS Z0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208「防湿包装材量の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じ、次の手法で評価することができる。
透湿面積10.0cm×10.0cm角の各積層フィルム又は積層体を2枚用い、吸湿剤として無水塩化カルシウム約20gを入れ四辺を封じた袋を作製し、その袋を温度40℃相対湿度90%の恒温恒湿装置に入れ、48時間以上間隔で質量増加がほぼ一定になる目安として14日間まで、質量測定(0.1mg単位)し、水蒸気透過率を下記式から算出する。
水蒸気透過率(g/m2/24h)=(m/s)/t
m; 試験期間最後2回の秤量間隔の増加質量(g)
s; 透湿面積(m2)
t; 試験期間最後2回の秤量間隔の時間(h)/24(h)
耐候層,柔軟層,防湿層,封止樹脂層を株式会社エヌ・ピー・シー社製真空ラミネート装置LM−30x30を用い150℃,15分の条件で定法により積層し前面保護シート封止材積層品を作製した。その後、作製した前面保護シート封止材積層品の水蒸気透過率と、下記構成層(2)の防湿層の水蒸気透過率を、それぞれ上記JIS Z0208「防湿包装材量の透湿度試験方法(カップ法)」に準じて評価し、防湿性能を求めた。下記構成層(2)の防湿層の防湿性能に対する、得られた積層体の防湿性能の低下度が50%以内を◎、50%超100%以内を○、100%超を×として評価した。
(1)耐候層
旭硝子社製50μETFEアフレックス50N1250Dを使用した,本ETFEの全光線透過率は95%であった。
12μmポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムにシリカを蒸着した三菱樹脂製テックバリアLXを使用した.本防湿層の全光線透過率は86%であった。また上述の方法で測定した防湿性は0.2[g/(m2・day)]であった
エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Bー1)として、エチレン−オクテンランダム共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:エンゲージ(「ENG」、以下同じ)8200、オクテン含有量:7.3モル%(24質量%)、MFR:5、Tm:65℃、ΔHm:53J/g)(以下、α−1と略する)を95質量部とエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(Bー2)として、エチレン−オクテンブロック共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:インフューズ(「INFUSE」、以下同じ)D9100.05、オクテン含有量:12.8モル%(37質量%)、MFR:1、Tm:119℃、ΔHm:38J/g)(以下、β−1と略する)とを5質量部の割合で混合した樹脂組成物をTダイを備えた40mmφ 単軸押出機を用いて設定温度200℃で溶融混練し、20℃のキャストロールで急冷製膜することにより厚みが0.5mmの柔軟層1を得た。
柔軟層1の調製において、シートを構成する樹脂組成物を表1に示すように、(α−1)80質量部とエチレン−オクテンブロック共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:インフューズD9507.15、オクテン含有量:16.4モル%(44質量%)、MFR:5、Tm:123℃、ΔHm:21J/g)(以下、β−2と略する)20質量部との樹脂組成物に変更した以外は、柔軟層1と同様にして、厚みが0.5mmの柔軟層2を得た
柔軟層1の調製において、シートを構成する樹脂組成物を表1に示すように、(α−1)をエチレン−プロピレン−ヘキセン3元ランダム共重合体(日本ポリエチレン(株)製、商品名:カーネル(「Karnel」、以下同じ)KJ640T、プロピレン含有量:7.4モル%(10質量%)、ヘキセン含有量:4.4モル%(10質量%)、MFR:30、Tm:53℃、ΔHm:58J/g)(以下、α−2と略する)に変更した以外は、柔軟層1と同様にして、厚みが0.5mmの柔軟層3を得た。
柔軟層1の調製におけるα−1及びβ−1を用い、シートの厚みを0.3mmに変更した以外は、実施例1と同様にして柔軟層4を得た。
柔軟層3の調製において、シートを構成する樹脂組成物を表1に示すように、(α−2)100質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚みが0.5mmの柔軟層5を得た。
柔軟層1の調製において、シートを構成する樹脂組成物を表1に示すように、(β−1)を汎用の結晶性ポリエチレン樹脂であるエチレン−オクテンランダム共重合体((株)プライムポリマー製、商品名:モアテック0238CN、オクテン含有量:1モル%(4質量%)、MFR:2.1、Tm:121℃、ΔHm:127J/g)(以下、P−1と略する)に変更した以外は、柔軟層1と同様にして、厚みが0.5mmの柔軟層6を得た。
柔軟層1の調製において、シートを構成する樹脂組成物を表1に示すように、(P−1)100質量部に変更した以外は、柔軟層1と同様にして、厚みが0.5mmの柔軟層7を得た。
Etimex社製EVA封止材496を用いた。なお,本EVA封止材単体を下記実施例に示す方法で真空ラミネートし,その後,EVA封止材のみを取り出し,全光線透過率を前記の方法で測定した。
東洋インク製ウレタン系接着剤IS801と硬化剤CR001を10:1の比で配合し固形分塗工量10g/m2となるようにシリコーン離型PETフィルムに塗布し,40℃,4日間養生した。その後,接着剤層のみを取り出し,全光線透過率を上記の方法で測定した。
以上の柔軟層1〜9の各々について、その厚み、組成及び全光線透過率、並びに耐熱性及び柔軟性(貯蔵弾性率)を前記の方法で測定し、柔軟層に使用したB−1(D−1)及びB−2(D−2)のTm、ΔHmの値と共に、以下の表1にまとめて示す。尚、表中における、「ENG」は、ダウ・ケミカル(株)製、商品名:エンゲージを意味し、例えば「ENG8200(95)」は、商品名エンゲージ8200を95質量部含有することを意味するものとする。
前記調製した耐候層、柔軟層1、防湿層及び柔軟層1を株式会社エヌ・ピー・シー社製真空ラミネート装置LM−30x30を用い150℃,15分の条件で定法によりこの順に積層し前面保護シート封止材積層品1を作製した。その後、作製した前面保護シート封止材積層品1を使用して、前述の方法で全光線透過率及び防湿保持性を測定した。結果を表2に示す。
耐候層、柔軟層2、防湿層及び柔軟層2を実施例1と同様に真空ラミを行い積層し前面保護シート封止材積層品2を作製し、同様に全光線透過率及び防湿保持性を測定した。結果を表2に示す。
耐候層、柔軟層3、防湿層及び柔軟層3を実施例1と同様に真空ラミを行い積層し前面保護シート封止材積層品3を作製し、同様に全光線透過率及び防湿保持性を測定した。結果を表2に示す。
耐候層、柔軟層4、防湿層及び柔軟層4を実施例1と同様に真空ラミを行い積層し前面保護シート封止材積層品4を作製し、同様に全光線透過率及び防湿保持性を測定した。結果を表2に示す。
耐候層,柔軟層5,防湿層,柔軟層5を実施例1と同様に真空ラミを行い積層し前面保護シート封止材積層品5を作製し、同様に全光線透過率及び防湿保持性を測定した。その結果を表2に示す。
耐候層,柔軟層6,防湿層,柔軟層6を実施例1と同様に真空ラミを行い積層し前面保護シート封止材積層品6を作製し、同様に全光線透過率及び防湿保持性を測定した。その結果を表2に示す。
耐候層,柔軟層7,防湿層,柔軟層7を実施例1と同様に真空ラミを行い積層し前面保護シート封止材積層品7を作製し、同様に全光線透過率及び防湿保持性を測定した。その結果を表2に示す。
耐候層,柔軟層8,防湿層,柔軟層8を実施例1と同様に真空ラミを行い積層し前面保護シート封止材積層品8を作製し、同様に全光線透過率及び防湿保持性を測定した。その結果を表2に示す。
耐候層,柔軟層9,防湿層,柔軟層9を実施例1と同様に真空ラミを行い積層し前面保護シート封止材積層品9を作製し、同様に全光線透過率及び防湿保持性を測定した。その結果を表2に示す。
耐候層,柔軟層1,防湿層,柔軟層8を実施例1と同様に真空ラミを行い積層し前面保護シート封止材積層品10を作製し、同様に全光線透過率及び防湿保持性を測定した。その結果を表2に示す。
耐候層,柔軟層8,防湿層,柔軟層1を実施例1と同様に真空ラミを行い積層し前面保護シート封止材積層品11を作製し、同様に全光線透過率及び防湿保持性を測定した。その結果を表2に示す。
耐候層,柔軟層9,防湿層,柔軟層1を実施例1と同様に真空ラミを行い積層し前面保護シート封止材積層品12を作製し、同様に全光線透過率及び防湿保持性を測定した。その結果を表2に示す。
一方、柔軟層5,9は、耐熱性に劣り、高温下・傾斜条件で使用されることによれば、基準位置からずれたりシートが溶融したりすることが明らかとなった。したがって、柔軟層5,9を用いて作製された前面保護シート封止材積層品においては、柔軟層がその役割を果たしきれず、防湿層の保護が十分ではないものであった。すなわち、高温下・傾斜条件での使用が見込まれる太陽電池用部材の素材としては好ましくない。また、柔軟層6〜8は、柔軟性(貯蔵弾性率)に劣り、防湿層の保護が不十分であることが示された。したがって、柔軟層6〜8を用いて作製された前面保護シート封止材積層品においても、柔軟層がその役割を果たしきれず、防湿層の保護が十分ではないものであった。
2・・・・柔軟層
3・・・・防湿層
4・・・・封止樹脂層
10・・・前面保護シート・封止材積層体
12・・・封止樹脂層
14A,14B・・・太陽電池素子
16・・・バックシート
18・・・ジャンクションボックス
20・・・配線
Claims (9)
- 耐候層(A)、下記(1)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B−1)と下記(2)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B−2)とを含有する柔軟層(B)、防湿層(C)、及び下記(1)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(D−1)と下記(2)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(D−2)とを含有する封止材(D)を積層してなり、該柔軟層(B)中において、該エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(B−1)の含有量が50〜99質量%であり、該エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B−2)の含有量が1〜50質量%である太陽電池用前面保護シート・封止材積層体。
(1)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(2)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g - 前記エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B−2)及び(D−2)の各々におけるα−オレフィンが、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン及び1−オクテンからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の太陽電池用前面保護シート・封止材積層体。
- 前記防湿層(C)が、基材層の少なくとも一方の面に、無機酸化物コーティング膜を有するものである請求項1又は2に記載の太陽電池用前面保護シート・封止材積層体。
- 前記基材層がポリエステル、ポリアミド、及びポリオレフィンより選ばれる少なくとも1つの樹脂を有するものである請求項3に記載の太陽電池用前面保護シート・封止材積層体。
- 前記耐候層(A)が、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート(PEN)より選ばれる少なくとも1つの樹脂に紫外線吸収剤を含有する樹脂組成物を成膜したもの、又はフッ素系樹脂層である請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用前面保護シート・封止材積層体。
- 前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(Bー1)と前記エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B−2)を構成するα−オレフィンの種類、又は、前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(D−1)と前記エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(D−2)を構成するα−オレフィンの種類が同一である、請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池用前面保護シート・封止材積層体。
- 前記柔軟層(B)と前記封止材(D)とが同一の組成である請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池用前面保護シート・封止材積層体。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池用前面保護シート・封止材積層体を用いて作製された太陽電池モジュール。
- 請求項8に記載の太陽電池モジュールを用いて作製された太陽電池。
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