JP7104302B2 - 樹脂組成物及びそれよりなるフィルム - Google Patents
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従来、これらの性能を満たす医療用フィルムおよび食品用フィルムにポリオレフィン樹脂や環状ポリオレフィン樹脂が使用されるが、環状ポリオレフィン樹脂はガラス転移温度が室温以上であることから、環状ポリオレフィンのみからなるフィルムは衝撃によりひび割れるなどの問題があり、耐衝撃性の点で課題がある。
[1]環状ポリオレフィン(A)41~95重量部、および下記特性(a)~(d)を満足する高密度ポリエチレン(B)5~59重量部((A)及び(B)の合計は100重量部)を含む樹脂組成物。
(a)JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した密度が940~970kg/m3である。
(b)JIS K 6922-1に準拠し、190℃、荷重21.18Nで測定したメルトマスフローレート(以下、MFRという)が0.1~15g/10分である。
(c)分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中に炭素数6以上の長鎖分岐を主鎖1000炭素数あたり0.14個以下有する。
(d)ゲルパーミエションクロマトグラフィー(以下、GPCという)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.0~3.5の範囲である。
[2]上記環状ポリオレフィン(A)が60~95重量部、上記高密度ポリエチレン(B)が5~40重量部であることを特徴とする上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]高密度ポリエチレン(B)のMnが25,000以上であることを特徴とする上記[1]または[2]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[4]上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の樹脂組成物からなるフィルム。
[1]環状ポリオレフィン(A)
本発明に用いる環状ポリオレフィン(A)は、環状オレフィン成分を重合成分として含むものであり、環状オレフィン成分を主鎖に含むポリオレフィン樹脂であれば、特に限定されない。例えば下記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー(以下「ポリマー(1)」と称す場合がある。)及び/又は下記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマー(以下「ポリマー(2)」と称す場合がある。)が挙げられる。
なお、上記Ra、Rb、Rc、Rdの有機基としては、炭素数1~8の炭化水素残基、又はハロゲン、エステル、ニトリル、ピリジル等の極性基が挙げられる。
[2]高密度ポリエチレン(B)
本発明に用いる高密度ポリエチレン(B)は、エチレン単独重合体、またはエチレンとα-オレフィンの共重合体である。
Mw/Mnが2.0未満であると、成形時の膜揺れ等成形性が不足し、3.5を超えると、透明性が低下するため好ましくない。
[3]樹脂組成物
本発明に用いる樹脂組成物の環状ポリオレフィン(A)、高密度ポリエチレン(B)の配合割合は、(A)、(B)の合計100重量部中、環状ポリオレフィン(A)が41~95重量部、好ましくは60~90重量部、より好ましくは70~80重量部、高密度ポリエチレン(B)が5~59重量部、好ましくは10~40重量部、より好ましくは20~30重量部である。
[4]フィルム
本発明のフィルムは、上記樹脂組成物からなるものである。
本発明のフィルムの用途としては、医療関係全般に用いることができ、例えば輸液用フィルム、血液用フィルムが挙げられる。また、本発明の樹脂組成物製フィルムは、食品関係全般にも用いることができ、例えばレトルト容器用フィルム、シュリンクフィルムなどの食品用フィルムが挙げられる。
A.樹脂
実施例、比較例に用いた樹脂の諸性質は下記の方法により評価した。
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)およびピークトップ分子量(Mp)は、GPCによって測定した。GPC装置(東ソー(株)製(商品名)HLC-8121GPC/HT)およびカラム(東ソー(株)製(商品名)TSKgel GMHhr-H(20)HT)を用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4-トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正した。なお、MwおよびMnは直鎖状ポリエチレン換算の値として求めた。
分子量分別は、カラムとしてガラスビーズ充填カラム(直径:21mm、長さ:60cm)を用い、カラム温度を130℃に設定して、サンプル1gをキシレン30mLに溶解させたものを注入する。次に、キシレン/2-エトキシエタノールの比率が5/5のものを展開溶媒として用い、留出物を除去する。その後、キシレンを展開溶媒として用い、カラム中に残った成分を留出させ、ポリマー溶液を得る。得られたポリマー溶液に5倍量のメタノールを添加しポリマー分を沈殿させ、ろ過および乾燥することにより、Mnが10万以上である成分を回収した。
長鎖分岐数は、日本電子(株)製JNM-GSX400型核磁気共鳴装置を用いて、13C-NMRによってヘキシル基以上の分岐数を測定した。溶媒はベンゼン-d6/オルトジクロロベンゼン(体積比30/70)である。主鎖メチレン炭素(化学シフト:30ppm)1,000個当たりの個数として、α-炭素(34.6ppm)およびβ-炭素(27.3ppm)のピークの平均値から求めた。
密度は、JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した。
MFRは、JIS K6922-1に準拠して測定を行った。
(1)環状ポリオレフィン
下記市販品を用いた。
(A)-2:日本ゼオン(株)製 (商品名)Zeonor 1020R([MFR(ISO 1133 (280℃、21.2N))]=20g/10min)
(A)-3:TOPAS Advanced Polymers製 (商品名)TOPAS 9506F-04 ([MVR(ISO 1133 (230℃、21.18N))]=6g/10min)
(A)-4:TOPAS Advanced Polymers製 (商品名)TOPAS 8007F-04 ([MVR(ISO 1133 (230℃、21.18N))]=12g/10min)
(2)高密度ポリエチレン
下記の製造方法で得られたもの又は市販品を用いた。
(B)-1:下記の製造方法で得られた。
[変性粘土の調製]
脱イオン水4.8L、エタノール3.2Lの混合溶媒に、ジメチルベヘニルアミン;(C22H45)(CH3)2N 354gと37%塩酸83.3mLを加え、ジメチルベヘニルアミン塩酸塩溶液を調製した。この溶液に合成ヘクトライト1,000gを加え終夜撹拌し、得られた反応液をろ過した後、固体分を水で十分洗浄した。固体分を乾燥させたところ、1,180gの有機変性粘土を得た。赤外線水分計で測定した含液量は0.8%であった。次に、この有機変性粘土を粉砕し、平均粒径を6.0μmに調製した。
[重合触媒の調製]
5Lのフラスコに、[変性粘土の調製]の項で得た有機変性粘土450g、ヘキサン1.4kgを加え、その後トリイソブチルアルミニウムのヘキサン20重量%溶液1.78kg(1.8モル)、ビス(n-ブチル-シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド7.32g(18ミリモル)を加え、60℃に加熱して1時間撹拌した。反応溶液を45℃に冷却し、2時間静置した後に傾斜法で上澄液を除去した。次に、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン1重量%溶液1.78kg(0.09モル)を添加し、45℃で30分間反応させた。反応溶液を45℃で2時間静置した後に傾斜法で上澄液を除去し、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン20重量%溶液0.45kg(0.45モル)を加え、ヘキサンで再希釈して全量を4.5Lとし重合触媒を調製した。
[(B)-1の製造]
内容量300Lの重合器に、ヘキサンを135kg/時、エチレンを20.0kg/時、ブテン-1を0.4kg/時、水素8NL/時および[重合触媒の調製]の項で得られた重合触媒を連続的に供給した。また、助触媒として液中のトリイソブチルアルミニウムの濃度を0.93ミリモル/kgヘキサンとなるように、それぞれ連続的に供給した。重合温度は85℃に制御した。得られた高密度ポリエチレン((B)-1)はMFR=3.0g/10分、密度945kg/m3であった。(B)-1の基本特性評価結果を表1に示す。
[変性粘土の調製]
(B)-1と同様の方法により変性粘土を調製した。
[重合触媒の調製]
(B)-1と同様の方法により重合触媒を調製した。
[(B)-2の製造]
内容量300Lの重合器に、ヘキサンを135kg/時、エチレンを20.0kg/時、ブテン-1を0.3kg/時、水素5NL/時および[重合触媒の調製]の項で得られた重合触媒を連続的に供給した。また、助触媒として液中のトリイソブチルアルミニウムの濃度を0.93ミリモル/kgヘキサンとなるように、それぞれ連続的に供給した。重合温度は85℃に制御した。得られた高密度ポリエチレン((B)-2)はMFR=1.0g/10分、密度952kg/m3であった。(B)-2の基本特性評価結果を表1に示す。
(P)-1:下記市販品を用いた。
東ソー(株)製 (商品名)ニポロンハード 5700(MFR=1.0g/10分、密度=954kg/m3)
下記市販品を用いた。
(Q)-1:東ソー(株)製 (商品名)ニポロン-Z HF213K(MFR=2.0g/10分、密度=905kg/m3)
(4)ポリプロピレン
下記市販品を用いた。
(R)-1:日本ポリプロ(株)製 (商品名)ノバテックTM PP FW4B(MFR=6.5g/10分(230℃)、密度=900kg/m3)
実施例1乃至8、比較例1乃至7
<フィルムの製造>
表2,3に示す樹脂組成物に係るペレットを圧縮成形機 AWFA.50(神藤金属工業社製)にて、加熱温度200℃、加熱圧力10kgf/cm2、加熱時間10分にて加熱圧縮後、冷却温度30℃、冷却圧力10kgf/cm2、冷却時間4分で固化させて200μmの評価用フィルムを製造した。
<フィルムの評価>
実施例1乃至8、比較例1乃至7に用いたフィルムの諸性質は下記の方法により評価した。
上記フィルムから、幅10mm×長さ50mmの試験片を切出し、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製 型式V-530)を用いて、純水中で波長450nmにおける光線透過率を測定した。当該光線透過率が40%以上の試料を透明性が高いと判断した。さらに、当該光線透過率が45%以上の試料を特に透明性が高いと判断した。結果を表4及び表5に示す。
<低温衝撃強度>
衝撃強度は、JIS K7160 B法に準拠して、-20℃下で測定を行った。当該衝撃強度が30kJ/m2以上の試料を耐衝撃性が高いと判断した。
Claims (3)
- 環状ポリオレフィン(A)60~90重量部、および下記特性(a)~(d)を満足する高密度ポリエチレン(B)10~40重量部((A)及び(B)の合計は100重量部)を含む樹脂組成物。
(a)JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した密度が940~970kg/m3である。
(b)JIS K 6922-1に準拠し、190℃、荷重21.18Nで測定したメルトマスフローレートが0.1~15g/10分である。
(c)分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中に炭素数6以上の長鎖分岐を主鎖1000炭素数あたり0.14個以下有する。
(d)ゲルパーミエションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.0~3.5の範囲である。 - 高密度ポリエチレン(B)のMnが25,000以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
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