JP2013004307A - 二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、負極集電体241と、負極集電体241に保持された負極活物質層243とを備えている。ここで、負極活物質層243は、炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有し、平均粒径が5μm以上の黒鉛粒子(負極活物質710)と、平均粒径が2.0μm以下の微小炭素材料750とが含まれている。かかる負極活物質層243中に含まれる黒鉛粒子(負極活物質710)と微小炭素材料750のうち、微小炭素材料750の重量割合は5重量%以上である。また、かかる負極活物質層243は、X線回析によるピーク強度比I(110)/I(004)が0.6以上であるとよい。
【選択図】図12
Description
正極シート220は、帯状の正極集電体221と、正極活物質層223とを備えている。正極集電体221には、正極に適する金属箔が好適に使用され得る。この実施形態では、正極集電体221には、所定の幅を有し、厚さが凡そ10μmの帯状のアルミニウム箔が用いられている。正極集電体221の幅方向片側の縁部に沿って未塗工部222が設定されている。正極活物質層223は、正極集電体221に設定された未塗工部222を除いて、正極集電体221の両面に形成されている。正極活物質層223は、正極集電体221に保持され、少なくとも正極活物質が含まれている。この実施形態では、正極活物質層223は、正極活物質を含む正極合剤が正極集電体221に塗工されている。
ここで、図4は、リチウムイオン二次電池100の正極シート220の断面図である。なお、図4において、正極活物質層223の構造が明確になるように、正極活物質層223中の正極活物質610と導電材620とバインダ630とを大きく模式的に表している。正極活物質層223には、図4に示すように、正極活物質610や導電材620やバインダ630が含まれている。
導電材620としては、例えば、カーボン粉末やカーボンファイバーなどのカーボン材料が例示される。このような導電材から選択される一種を単独で用いてもよく二種以上を併用してもよい。カーボン粉末としては、種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンブラック、黒鉛、ケッチェンブラック)、グラファイト粉末などのカーボン粉末を用いることができる。
また、バインダ630は、正極活物質610や導電材620の各粒子を結着させたり、これらの各粒子と正極集電体221とを結着させたりする。かかるバインダ630としては、使用する溶媒に溶解または分散可能なポリマーを用いることができる。例えば、水性溶媒を用いた正極合剤組成物においては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース系ポリマー、また例えば、ポリビニルアルコール(PVA)や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂、酢酸ビニル共重合体やスチレンブタジエン共重合体(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)などのゴム類;などの水溶性または水分散性ポリマーを好ましく採用することができる。また、非水溶媒を用いた正極合剤組成物においては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリルニトリル(PAN)などのポリマーを好ましく採用することができる。
正極活物質層223は、例えば、上述した正極活物質610や導電材620を溶媒にペースト状(スラリ状)に混ぜ合わせた正極合剤を作成し、正極集電体221に塗布し、乾燥させ、圧延することによって形成されている。この際、正極合剤の溶媒としては、水性溶媒および非水溶媒の何れも使用可能である。非水溶媒の好適な例としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。上記バインダ630として例示したポリマー材料は、バインダとしての機能の他に、正極合剤の増粘剤その他の添加剤としての機能を発揮する目的で使用されることもあり得る。
負極シート240は、図2に示すように、帯状の負極集電体241と、負極活物質層243とを備えている。負極集電体241には、負極に適する金属箔が好適に使用され得る。この実施形態では、この負極集電体241には、所定の幅を有し、厚さが凡そ10μmの帯状の銅箔が用いられている。負極集電体241の幅方向片側には、縁部に沿って未塗工部242が設定されている。負極活物質層243は、負極集電体241に設定された未塗工部242を除いて、負極集電体241の両面に形成されている。負極活物質層243は、負極集電体241に保持され、少なくとも負極活物質が含まれている。この実施形態では、負極活物質層243は、負極活物質を含む負極合剤が負極集電体241に塗工されている。
図5は、リチウムイオン二次電池100の負極シート240の断面図である。また、図5において、負極活物質層243の構造が明確になるように、負極活物質層243中の負極活物質710とバインダ730を大きく模式的に表している。ここでは、負極活物質710は、いわゆる鱗片状黒鉛が用いられた場合を図示しているが、負極活物質710は、図示例に限定されない。この実施形態では、負極活物質層243には、図5に示すように、負極活物質710や増粘剤(図示省略)やバインダ730や微小炭素材料750などが含まれている。
負極活物質層243は、例えば、上述した負極活物質710やバインダ730や微小炭素材料750を溶媒にペースト状(スラリ状)に混ぜ合わせた負極合剤を作成し、負極集電体241に塗布し、乾燥させ、圧延することによって形成されている。この際、負極合剤の溶媒としては、水性溶媒および非水溶媒の何れも使用可能である。非水溶媒の好適な例としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。バインダ730には、上記正極活物質層223(図4参照)のバインダ630として例示したポリマー材料を用いることができる。また、上記正極活物質層223のバインダ630として例示したポリマー材料は、バインダとしての機能の他に、正極合剤の増粘剤その他の添加剤としての機能を発揮する目的で使用されることもあり得る。
セパレータ262、264は、図1又は図2に示すように、正極シート220と負極シート240とを隔てる部材である。この例では、セパレータ262、264は、微小な孔を複数有する所定幅の帯状のシート材で構成されている。セパレータ262、264には、例えば、多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成された単層構造のセパレータや積層構造のセパレータを用いることができる。この例では、図2および図3に示すように、負極活物質層243の幅b1は、正極活物質層223の幅a1よりも少し広い。さらにセパレータ262、264の幅c1、c2は、負極活物質層243の幅b1よりも少し広い(c1、c2>b1>a1)。
また、この例では、電池ケース300は、図1に示すように、いわゆる角型の電池ケースであり、容器本体320と、蓋体340とを備えている。容器本体320は、有底四角筒状を有しており、一側面(上面)が開口した扁平な箱型の容器である。蓋体340は、当該容器本体320の開口(上面の開口)に取り付けられて当該開口を塞ぐ部材である。
その後、蓋体340に設けられた注液孔から電池ケース300内に電解液が注入される。電解液は、水を溶媒としていない、いわゆる非水電解液が用いられている。この例では、電解液は、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(例えば、体積比1:1程度の混合溶媒)にLiPF6を約1mol/リットルの濃度で含有させた電解液が用いられている。その後、注液孔に金属製の封止キャップを取り付けて(例えば溶接して)電池ケース300を封止する。なお、電解液は、ここで例示された電解液に限定されない。例えば、従来からリチウムイオン二次電池に用いられている非水電解液は適宜に使用することができる。
ここで、正極活物質層223は、例えば、正極活物質と導電材の粒子間などに、空洞とも称すべき微小な隙間を有している。かかる正極活物質層223の微小な隙間には電解液(図示省略)が浸み込み得る。また、負極活物質層243は、例えば、負極活物質の粒子間などに、空洞とも称すべき微小な隙間を有している。ここでは、かかる隙間(空洞)を適宜に「空孔」と称する。このように、リチウムイオン二次電池100の内部では正極活物質層223と負極活物質層243には、電解液が染み渡っている。
また、この例では、当該電池ケース300の扁平な内部空間は、扁平に変形した捲回電極体200よりも少し広い。捲回電極体200の両側には、捲回電極体200と電池ケース300との間に隙間310、312が設けられている。当該隙間310、312は、ガス抜け経路になる。例えば、過充電が生じた場合などにおいて、リチウムイオン二次電池100の温度が異常に高くなると、電解液が分解されてガスが異常に発生する場合がある。この実施形態では、異常に発生したガスは、捲回電極体200の両側における捲回電極体200と電池ケース300との隙間310、312、および、安全弁360を通して、電池ケース300の外にスムーズに排気される。
図7は、かかるリチウムイオン二次電池100の充電時の状態を模式的に示している。充電時においては、図7に示すように、リチウムイオン二次電池100の電極端子420、440(図1参照)は、充電器290に接続される。充電器290の作用によって、充電時には、正極活物質層223中の正極活物質からリチウムイオン(Li)が電解液280に放出される。また、正極活物質層223からは電荷が放出される。放出された電荷は、図4に示すように、導電材(図示省略)を通じて正極集電体221に送られ、さらに、充電器290を通じて負極240へ送られる。また、負極240では電荷が蓄えられるとともに、電解液280中のリチウムイオン(Li)が、負極活物質層243中の負極活物質に吸収され、かつ、貯蔵される。
図8は、かかるリチウムイオン二次電池100の放電時の状態を模式的に示している。放電時には、図8に示すように、負極240から正極220に電荷が送られるとともに、負極活物質層243に貯蔵されたリチウムイオン(Li)が、電解液280に放出される。また、正極では、正極活物質層223中の正極活物質に電解液280中のリチウムイオン(Li)が取り込まれる。
ここで、負極活物質710は、炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有し、平均粒径が5μm以上の黒鉛粒子が用いられている。かかる負極活物質には、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛質(グラファイト)、易黒鉛化炭素質(ソフトカーボン)、又は、これらを適当に組み合わせた炭素材料を用いることができる。また、負極活物質710は、天然黒鉛表面に非晶質炭素コートを施した材料でもよい。この実施形態では、鱗片状黒鉛(Flake Graphite)が用いられている。なお、負極活物質710は、磁場によって配向させる効果が高い粒子が好適であり、鱗片状黒鉛に限らず、針状黒鉛でもよい。ここで、「平均粒径」は、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置に基づいて測定した粒度分布から導き出せるメジアン径(d50:50%体積平均粒子径)である。負極活物質層243には、かかる負極活物質710とは別に、微小炭素材料750が含まれている。
微小炭素材料750は、平均粒径が2.0μm以下の炭素を主たる成分とする材料であり、その大きさにより、負極活物質710と区別される。かかる微小炭素材料750は、炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有していなくてもよい。
図5に示す例では、微小炭素材料750として、気相成長炭素繊維(VGCF)が用いられている。ここで、気相成長炭素繊維は、ベンゼンなどの炭化水素類を気相で熱分解して得られるミクロな炭素繊維である。ここで用いられる気相成長炭素繊維の繊維径(平均繊維径d50)は、凡そ0.5μm〜0.25μmである。気相成長炭素繊維の繊維径(平均繊維径d50)は、好適には0.10μm〜0.30μm程度である。また、ここで用いられる気相成長炭素繊維の繊維長(平均繊維長)は、凡そ5μm〜100μm、好適には凡そ10μm〜20μmである。ここで気相成長炭素繊維の平均繊維径や平均繊維長は、SEM画像を基に測定した値である。かかる気相成長炭素繊維には、例えば、昭和電工株式会社製の気相成長炭素繊維を用いることができる。
かかる負極活物質層243(図5参照)の製造工程は、負極合剤を用意する工程と、塗布工程と、磁場付与工程と、乾燥工程と、圧延工程とを備えている。図9は、負極活物質層243(図5参照)の製造工程を模式的に示している。図9に示す例では、走行経路12と、塗布装置14と、磁場付与装置16と、乾燥炉18とを備えている。
走行経路12は、負極集電体241(図5参照)の素材となる集電体22を走行させる経路である。この実施形態では、走行経路12には、集電体22を走行させる所定の経路に沿って複数のガイド12bが配置されている。走行経路12の始端には、集電体22を供給する供給部32が設けられている。供給部32には、予め巻き芯32aに巻き取られた集電体22が配置されている。供給部32からは適宜に適当な量の集電体22が走行経路12に供給される。また、走行経路12の終端には集電体22を回収する回収部34が設けられている。
ここで、集電体22の好ましい一形態は、例えば、負極集電体241(図5参照)として好適な銅(Cu)などの金属箔である。ただし、集電体22は、必ずしも金属箔に限定されない。例えば、集電体22は、導電性を持たせた樹脂でもよい。導電性を持たせた樹脂には、例えば、ポリプロピレンフィルムに銅を蒸着させたフィルム材を用いることができる。かかる走行経路12には、塗布装置14と、磁場付与装置16と、乾燥炉18とが順に配置されている。
塗布装置14は、図9に示すように、流路41と、塗布部42と、タンク43と、ポンプ44と、フィルタ45とを備えている。この実施形態では、塗布装置14は、走行経路12に配設されたバックロール46を走行する集電体22に対して負極合剤24を塗布するように構成されている。
ここで、流路41は、負極合剤24が流通し得る流路である。この実施形態では、流路41は、タンク43から塗布部42へ至るように形成されている。タンク43は、負極合剤24を貯留した容器である。ポンプ44は、タンク43から流路41に負極合剤24を送り出す装置である。フィルタ45は、タンク43から送り出された負極合剤24中の異物(例えば、負極活物質710の凝集物)を取り除く装置である。かかるフィルタ45には、例えば、樹脂や金属の繊維を絡ませた不織布フィルタや、樹脂や金属の繊維を編んだメッシュフィルタなどを用いることができる。フィルタ45の目の粗さは、除去し得る粒子の大きさや、負極合剤24(スラリー)の粘度にも影響するので、適当なフィルタを用いるとよい。
塗布部42は、図9に示すように、フィルタ45を通過した負極合剤24を集電体22に塗る。ここで、塗布部42は、例えば、スリットコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーター等が用いられる。なお、図9に示す例では、塗布部42にダイコーターが採用されている。塗布部42は、所定の目付量で負極合剤24を集電体22に塗布できる。
この実施形態では、集電体22に塗布される負極合剤24は、上述したように溶媒と、負極活物質710としての黒鉛粒子と、バインダ730と、微小炭素材料750(この実施形態では、気相成長炭素繊維)とが混ぜられている。また、負極合剤24には、適宜に増粘剤が混ぜられている。
磁場付与装置16は、図9に示すように、一対の磁石61、62を備えている。一対の磁石61、62は、走行経路12を走行する集電体22の表裏に対向している。磁石61、62の一方は、集電体22に向けてS極になり、他方はN極になる。これにより、走行経路12を走行する集電体22に対して、集電体22に直交する方向(集電体22の法線方向)に磁力線が向いた磁場が発生する。この際、磁石61、62は、永久磁石で構成してもよいし、電気の作用によって磁力を生じさせる電磁石で構成してもよい。
乾燥炉18は、集電体22の走行経路12に設けられており、高温の乾燥雰囲気に集電体22を曝して、負極合剤24中の溶媒を蒸発させて消失させる。乾燥炉18を通過させた集電体22は、回収部34において巻き芯34aに巻き取られ、次工程に送られる。この実施形態では、回収部34において巻き取られた集電体22は、その後、圧延工程に送られる。
ここで、圧延工程は、乾燥工程の後で、負極活物質層243が形成された負極集電体241を圧延する工程である。図11は、かかる圧延工程を示している。この実施形態では、圧延装置70は、図11に示すように、一対のローラー72、74を有している。一対のローラー72、74は、予め所定の間隔で配置されており、負極活物質層243が形成された負極集電体241は当該一対のローラー72、74間に通されて圧延される。これにより、負極活物質層243を所定の厚さにすることができる。
図12は、負極合剤24に気相成長炭素繊維750が混ぜられている場合における圧延工程後の負極活物質層243の断面を模式的に示す模式図である。この実施形態では、負極合剤24に気相成長炭素繊維750が混ぜられている。このため、図12に示すように、圧延工程で負極活物質層243が圧延された場合、磁場付与工程で炭素六角網平面が集電体22に直交するように配向した負極活物質710の姿勢は一部において崩れるものの、負極活物質710の姿勢が概ね保たれる。
図13は、負極合剤24に気相成長炭素繊維750が混ぜられていない場合おける圧延工程前の負極活物質層243の断面を模式的に示す模式図である。図14は、気相成長炭素繊維750が混ぜられていない場合おける圧延工程後の負極活物質層243の断面を模式的に示す模式図である。
かかる事象について、本発明者は以下のように推測している。微小炭素材料750としての気相成長炭素繊維は、繊維径が細い繊維であり、負極活物質710に絡みつき易い。また、気相成長炭素繊維750は、繊維径が細い繊維であり、剛性が小さい。このため、気相成長炭素繊維750は磁場付与工程において、負極合剤24中で負極活物質710の配向が変化するのを許容する。また、乾燥工程では、気相成長炭素繊維は、バインダ730の作用により、負極活物質710に絡みついた状態で固定される。圧延工程では、負極活物質710は、負極活物質710に絡みついた気相成長炭素繊維によって支持される。このため、磁場付与工程で炭素六角網平面が集電体22に直交するように配向した負極活物質710の姿勢が、圧延後でも概ね維持される。
本発明者は、リチウムイオン二次電池について、いくつかのサンプルを用意して磁場付与工程で負極活物質710を配向させる場合に、微小炭素材料750の作用を検証した。以下、リチウムイオン二次電池のサンプルを説明する。ここでは、リチウムイオン二次電池の基本構成は、上述した説明を適宜に参酌することとし、重複する説明は省略する。また、上述した説明で用いた図面を適宜参照することとし、参照符号は上述した説明と同じ符号を用いている。
サンプル1では、正極活物質610は金属複合酸化物(例えば、Li1.15Ni1/3Co1/3Mn1/3O2)、導電材620はアセチレンブラック、および、バインダ630はポリフッ化ビニリデン(PVDF:PolyVinylidene DiFluoride)である(図1および図5参照)。ここで、正極活物質610:導電材620:バインダ630は重量比において100:5:5の割合で含まれている。正極集電体221は、帯状のアルミニウム箔であり、その厚さは15μmである。正極活物質層223は、かかる正極集電体221(アルミニウム箔)の両面に形成されている。正極活物質層223が形成された部分における正極シート220の厚さは100μmである。正極シート220に正極活物質層223が形成された幅は98mm、長さは3000mmである。
負極活物質層243(図1および図6参照)は、負極活物質710として鱗片状の天然黒鉛(鱗片状黒鉛:平均粒径10μm、日立化成株式会社製)、微小炭素材料750として昭和電工株式会社製の気相成長炭素繊維(VGCF:平均繊維径0.15μm、平均繊維長10μm〜20μm)を用いた。ここで、負極活物質710としての天然黒鉛と、微小炭素材料750としての気相成長炭素繊維は、重量比85:15(天然黒鉛:気相成長炭素繊維)で配合されている。また、負極活物質層243は、バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)が用いられており、負極合剤の増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)が用いられている。天然黒鉛と気相成長炭素繊維の混合黒鉛材(グラファイト粉末):スチレンブタジエンゴム(SBR):カルボキシメチルセルロース(CMC)の重量比を100:1:1にした。
≪定格容量の測定≫
ここで、定格容量は、上記のように作成した電池について、室温(ここでは、概ね25℃)の環境で次の手順1および2によって測定された値によって評価されている。
手順1:1Cの定電流充電によって4.1Vに到達後、定電圧充電を2.5時間行い、10秒間休止する。
手順2:0.5Cの定電流放電によって、3.0Vに到達後、定電圧放電を2時間行い、10秒間停止する。
ここで、手順2における定電流放電から定電圧放電に至る放電における放電容量(CCCV放電容量)を定格容量とする。
サンプル2は、負極活物質層243を形成する際に、磁場を与えずに負極シート240を作成した。他の構成は、サンプル1の電池と基本的に同じ構成にした。
サンプル3は、負極活物質層243を形成する際に、微小炭素材料としての気相成長炭素繊維750を入れず、天然黒鉛とスチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)との重量比は、100:1:1にした。他の構成は、サンプル1の電池と基本的に同じ構成にした。すなわち、サンプル3の電池では、微小炭素材料750が含まれておらず、黒鉛材料は、実質的に負極活物質710としての天然黒鉛100%である。
サンプル4は、圧延後の負極活物質層243の密度を1.2g/cm3とし、負極シート240の長さを3300mmから3100mmとし、正極シート220、セパレータ262、264の長さをそれぞれ、負極シート240と同様の比率(31/33)で短くした、捲回電極体200を用いた。他の構成は、サンプル3の電池と基本的に同じ構成にした。
サンプル5は、サンプル1の電池と基本構成が同じである。サンプル5の電池では、サンプル1の負極シート240において、微小炭素材料750として、気相成長炭素繊維に代えて平均粒径(d50)が1μm以下の黒鉛粉末(ここでは、負極活物質710に用いられる鱗片状黒鉛と区別するため、適宜に「小粒径黒鉛粉末」とも称する。)を用いた。また、サンプル5では、黒鉛粉末には、詳しくは、ピッチ系球状黒鉛ビーズを用いた。サンプル5の電池では、負極活物質710としての天然黒鉛と、微小炭素材料750としての黒鉛粉末との重量比を、97:3(天然黒鉛:黒鉛粉末)にした。
サンプル6は、サンプル5の電池と基本構成を同じにしている。サンプル6の電池では、サンプル5の負極シート240において、負極活物質710としての天然黒鉛と、微小炭素材料750としての黒鉛粉末との重量比を、95:5(天然黒鉛:黒鉛粉末)にした。
サンプル7は、サンプル5の電池と基本構成を同じにしている。サンプル7の電池では、サンプル5の負極シート240において、負極活物質710としての天然黒鉛と、微小炭素材料750としての黒鉛粉末との重量比を、85:15(天然黒鉛:黒鉛粉末)にした。
サンプル8は、サンプル5の電池と基本構成を同じにしている。サンプル8の電池では、サンプル5の負極シート240において、負極活物質710としての天然黒鉛と、微小炭素材料750としての黒鉛粉末との重量比を、80:20(天然黒鉛:黒鉛粉末)にした。
サンプル9は、サンプル5の電池と基本構成を同じにしている。サンプル9の電池では、サンプル5の負極シート240において、負極活物質710としての天然黒鉛と、微小炭素材料750としての黒鉛粉末との重量比を、75:25(天然黒鉛:黒鉛粉末)にした。
ここで、リチウムイオン二次電池100を充電終止電圧4.1V、放電終止電圧3.0Vの条件下において、25℃の温度環境下で、1.4Aの定電流で3サイクルの充放電を行なった。そして、それぞれSOC50%(SOC:State
Of Charge)に調整した後にI−V特性試験を行ない、入力側の直流内部抵抗を求めた。
ここで、本発明者は、負極活物質層243における負極活物質710の配向を、X線回析で得られるピーク強度比I(110)/I(004)の値で評価した。X線回析では、負極シート240の負極活物質層243が形成された面に対して、負極シート240の法線方向からX線(例えば、CuKα線)を当てた。I(110)は、負極活物質710の(110)面に帰属するピークの強度である。I(004)は、負極活物質710の(004)面に帰属するピークの強度である。かかるピーク強度比I(110)/I(004)は、負極活物質層243の厚み方向(負極集電体241の法線方向)に対する、負極活物質710の炭素六角網平面の配向の程度を反映している。ピーク強度比I(110)/I(004)が大きいほど、負極活物質710の炭素六角網平面の配向が、負極活物質層243の厚み方向(負極集電体241の法線方向)に揃っていることを示している。
これに対して、合剤塗布後に磁場を与えずに作成したサンプル2は、直流内部抵抗(DC−IR)が3.1、放電容量(Ah)が4.61、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.1であった。この場合には、直流内部抵抗(DC−IR)が3.1と高くなる。このため、サンプル2は、サンプル1に比べて充放電の損失が大きくなり、出力が低下すると考えられる。
また、合剤塗布後に磁場が与えられるものの微小炭素材料750を含んでいないサンプル3は、直流内部抵抗(DC−IR)が3.0、放電容量(Ah)が4.62、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.3であった。ピーク強度比I(110)/I(004)が0.3と低下しており、微小炭素材料750を含んでいないために、負極活物質710の配向が崩れている。このため、この場合には、直流内部抵抗(DC−IR)が3.0と高い。このため、サンプル3は、サンプル1に比べて充放電の損失が大きくなり、出力が低下すると考えられる。
また、圧延後の負極活物質層243の密度を1.2g/cm3にしたサンプル4は、直流内部抵抗(DC−IR)が2.6、放電容量(Ah)が4.31、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.9であった。サンプル4は、圧延後の負極活物質層243の密度が1.2g/cm3と、圧延後の負極活物質層243の密度が1.5g/cm3であるサンプル1に比べて、圧延の程度が緩やかである。この場合、サンプル4は、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.9と、負極活物質710の配向が揃った状態である。
サンプル5からサンプル9は、何れも微小炭素材料750として小粒径黒鉛粉末を含んでおり、その重量割合を変えたサンプルである。表2は、サンプル5〜9について、鱗片状黒鉛:小粒径黒鉛粉末の重量比、直流内部抵抗(DC−IR)と、放電容量(Ah)と、ピーク強度比I(110)/I(004)をそれぞれ示している。ここでは、3サイクル目の直流内部抵抗と放電容量の値が示されている。
鱗片状黒鉛:小粒径黒鉛粉末の重量比を、97:3にしたサンプル5では、直流内部抵抗(DC−IR)が3.0、放電容量(Ah)が4.62、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.5であった。
鱗片状黒鉛:小粒径黒鉛粉末の重量比を、95:5にしたサンプル6では、直流内部抵抗(DC−IR)が2.7、放電容量(Ah)が4.62、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.6であった。
鱗片状黒鉛:小粒径黒鉛粉末の重量比を、85:15にしたサンプル7では、直流内部抵抗(DC−IR)が2.6、放電容量(Ah)が4.61、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.8であった。
鱗片状黒鉛:小粒径黒鉛粉末の重量比を、80:20にしたサンプル8では、直流内部抵抗(DC−IR)が2.6、放電容量(Ah)が4.61、ピーク強度比I(110)/I(004)が1.0であった。
鱗片状黒鉛:小粒径黒鉛粉末の重量比を、75:25にしたサンプル9では、直流内部抵抗(DC−IR)が2.9、放電容量(Ah)が4.54、ピーク強度比I(110)/I(004)が1.1であった。
溶媒;
炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有し、平均粒径が5μm以上の黒鉛粒子;
平均粒径が2μm以下の微小炭素材料;および、
黒鉛粒子と微小炭素材料とを結着させるバインダ;
が混ぜられている。
また、負極合剤に含まれる黒鉛粒子と微小炭素材料のうち、微小炭素材料の重量割合が5重量%以上である。
12 走行経路
12b ガイド
14 塗布装置
16 磁場付与装置
18 乾燥炉
22 集電体
24 負極合剤
32 供給部
32a 巻き芯
34 回収部
34a 巻き芯
34b 制御部
34c モータ
41 流路
42 塗布部
43 タンク
44 ポンプ
45 フィルタ
46 バックロール
61、62 磁石
70 圧延装置
72、74 ローラー
100 リチウムイオン二次電池(二次電池)
200 捲回電極体
220 正極シート(正極)
221 正極集電体
222 未塗工部
223 正極活物質層
224 中間部分
240 負極シート(負極)
241 負極集電体
242 未塗工部
243 負極活物質層
262、264 セパレータ
280 電解液
290 充電器
300 電池ケース
310 隙間
320 容器本体
322 蓋体340と容器本体320の合わせ目
340 蓋体
360 安全弁
420、440 電極端子
420a、440a 先端部
610 正極活物質
620 導電材
630 バインダ
710 負極活物質(黒鉛粒子)
730 バインダ
750 気相成長炭素繊維(微小炭素材料)
1000 車両駆動用電池
Claims (13)
- 負極集電体と、
前記負極集電体に保持された負極活物質層と
を備え、
前記負極活物質層は、
炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有し、平均粒径が5μm以上の黒鉛粒子と、
平均粒径が2μm以下の微小炭素材料とが含まれており、
前記負極活物質層中に含まれる前記黒鉛粒子と前記微小炭素材料のうち、前記微小炭素材料の重量割合が5重量%以上であり、
前記負極活物質層のX線回析によるピーク強度比I(110)/I(004)が0.6以上である、二次電池。 - 前記負極活物質層中に含まれる前記黒鉛粒子と前記微小炭素材料のうち、前記微小炭素材料の重量割合が20重量%以下である、請求項1に記載された二次電池。
- 前記微小炭素材料は、繊維径が1μm以下の炭素繊維である、請求項1又は2に記載された二次電池。
- 前記炭素繊維は、気相成長炭素繊維である、請求項3に記載された二次電池。
- 前記微小炭素材料は、平均粒径が1μm以下の黒鉛粉末である、請求項1又は2に記載された二次電池。
- 前記負極活物質層を前記X線回析したピーク強度比I(110)/I(004)が1.0以下である、請求項1から5までの何れか一項に記載された二次電池。
- 前記負極活物質層の密度が1.5g/cm3以上である、請求項1から6までの何れか一項に記載された二次電池。
- 黒鉛粒子を含む負極合剤を用意する工程と、
前記負極合剤を用意する工程で用意された前記負極合剤を負極集電体に塗布する塗布工程と
前記塗布工程で塗布された前記負極合剤に磁場を付与し、前記負極合剤中の前記黒鉛粒子を配向させる磁場付与工程と、
前記磁場付与工程で前記黒鉛粒子が配向した前記負極合剤を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程で乾燥させた前記負極合剤を圧延する圧延工程と、
を備えており、
前記負極合剤を用意する工程で用意される負極合剤は、
溶媒;
炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有し、平均粒径が5μm以上の黒鉛粒子;
平均粒径が2μm以下の微小炭素材料;および、
黒鉛粒子と微小炭素材料とを結着させるバインダ;
が混ぜられており、
前記負極合剤に含まれる前記黒鉛粒子と前記微小炭素材料のうち、前記微小炭素材料の重量割合が5重量%以上である、
二次電池の製造方法。 - 前記負極合剤に含まれる前記黒鉛粒子と前記微小炭素材料のうち、前記微小炭素材料の重量割合が20重量%以下である、請求項8に記載された二次電池の製造方法。
- 前記微小炭素材料は、繊維径が1μm以下の炭素繊維である、請求項8又は9に記載された二次電池の製造方法。
- 前記炭素繊維は、気相成長炭素繊維である、請求項10に記載された二次電池の製造方法。
- 前記微小炭素材料は、平均粒径が1μm以下の黒鉛粉末である、請求項8又は9に記載された二次電池の製造方法。
- 前記圧延工程は、前記乾燥工程で乾燥させた前記負極合剤の密度が1.5g/cm3以上になるように、前記乾燥工程で乾燥させた前記負極合剤を圧延する、請求項8から12までの何れか一項に記載された二次電池の製造方法。
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