JP5818068B2 - 二次電池 - Google Patents

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Description

本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充電可能な蓄電デバイス一般をいう。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池(lithium-ion secondary battery)」は、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電子の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
リチウム二次電池用の負極活物質には、層構造を有する黒鉛が用いられている。充電時には、リチウムイオンは黒鉛のエッジ部(層のエッジ部)から黒鉛の層間に侵入する。このような黒鉛には、例えば、鱗片状黒鉛(Flake Graphite)がある。鱗片状黒鉛は、負極形成時に黒鉛の層面が集電体の表面に対して平行になりやすい。鱗片状黒鉛の層面が集電体の表面に対して平行になると、負極活物質層の表面から内部の鱗片状黒鉛のエッジ部にリチウムイオンが到達する経路が長くなる。このため、充電時に正極から脱離したリチウムイオンが、負極活物質層内部の黒鉛の層間まで円滑に侵入し難いという問題があった。かかる問題を解決するために、黒鉛の向きを磁場によって制御することが、特許4150516号公報に開示されている。
特許4150516号公報に開示された方法では、まず、黒鉛とバインダ(結着材)と溶媒とが混合されてなるペーストが、集電体(基材)に塗布されている。次に、ペーストに含まれる溶媒が揮発しないうちに、集電体ごとペーストを磁場中に通過させる。磁場を通過させたペースト及び集電体は、加熱炉内に送られ、ペーストに含まれた溶媒が除去される。そして、加熱炉から搬出された集電体はプレスローラに送られて圧延される。同公報に示されるように、集電体ごとペーストを磁場中に通過させることによって、黒鉛粒子の配向が制御できる。また、圧延の前後において、黒鉛粒子の配向が崩れる傾向がある。
特許4150516号公報
ところで、特許4150516号公報には、負極活物質として鱗片状黒鉛を用い、溶媒に鱗片状黒鉛を分散させたペーストを集電体に塗布した後で磁場中を通過させている。これにより、鱗片状黒鉛の配向を制御できるとされている。特許4150516号公報には、その後の圧延工程で、鱗片状黒鉛の配向が大きく崩れる傾向が示されている。圧延工程において、かかる鱗片状黒鉛の配向をより適切に維持できれば、二次電池の抵抗をより低く抑えることができる。また、高容量の二次電池を得るためには、圧延量を大きくし、負極活物質層の密度を高くすることが望ましいが、圧延量を大きくすると、圧延工程で、鱗片状黒鉛の配向が崩れやすくなる。
本発明に係る二次電池は、負極集電体と、負極集電体に保持された負極活物質層とを備えている。負極活物質層は、炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有し、平均粒径が5μm以上の黒鉛粒子と、平均粒径が2μm以下の微小炭素材料とが含まれている。ここで、負極活物質層中に含まれる黒鉛粒子と微小炭素材料のうち、微小炭素材料の重量割合が5重量%以上であり、負極活物質層のX線回析によるピーク強度比I(110)/I(004)が0.6以上である。
かかる二次電池は、負極活物質層中に含まれる黒鉛粒子と微小炭素材料のうち、微小炭素材料の重量割合が5重量%以上であるので、負極活物質層のX線回析によるピーク強度比I(110)/I(004)が0.6以上と、負極活物質の配向が揃った状態で維持されている。このため、低抵抗かつ高出力の二次電池が得られる。
ここで、負極活物質層中に含まれる黒鉛粒子と微小炭素材料のうち、微小炭素材料の重量割合は、20重量%以下でもよい。ここで、微小炭素材料は、繊維径が1μm以下の炭素繊維であってもよい。かかる炭素繊維としては、気相成長炭素繊維でもよい。また、微小炭素材料は、平均粒径が1μm以下の黒鉛粉末であってもよい。
また負極活物質層の密度が1.5g/cm以上であってもよい。かかる二次電池は、負極活物質層中に含まれる黒鉛粒子と微小炭素材料のうち、微小炭素材料の重量割合が5重量%以上である。このため、負極活物質層の密度が1.5g/cm程度でも、負極活物質層のX線回析によるピーク強度比I(110)/I(004)が0.6以上と、負極活物質の配向が揃った状態で維持される。このため、低抵抗かつ高出力で、高容量の二次電池が得られる。
また、二次電池の製造方法は、黒鉛粒子を含む負極合剤を用意する工程と、用意された負極合剤を負極集電体に塗布する塗布工程と、負極合剤に磁場を付与し、負極合剤中の黒鉛粒子を配向させる磁場付与工程と、負極合剤を乾燥させる乾燥工程と、負極合剤を圧延する圧延工程とを備えている。ここで、用意される負極合剤は、溶媒;炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有し、平均粒径が5μm以上の黒鉛粒子;平均粒径が2μm以下の微小炭素材料;および、黒鉛粒子と微小炭素材料とを結着させるバインダ;が混ぜられている。また、負極合剤に含まれる黒鉛粒子と微小炭素材料のうち、微小炭素材料の重量割合が5重量%以上である。かかる二次電池の製造方法によって、低抵抗かつ高出力の二次電池が得られる。
図1は、リチウムイオン二次電池の構造の一例を示す図である。 図2は、リチウムイオン二次電池の捲回電極体を示す図である。 図3は、図2中のIII−III断面を示す断面図である。 図4は、正極合剤層の構造を示す断面図である。 図5は、負極合剤層の構造を示す断面図である。 図6は、捲回電極体の未塗工部と電極端子との溶接箇所を示す側面図である。 図7は、リチウムイオン二次電池の充電時の状態を模式的に示す図である。 図8は、リチウムイオン二次電池の放電時の状態を模式的に示す図である。 図9は、負極シートの製造工程を示す図である。 図10は、負極合剤に気相成長炭素繊維が混ぜられている場合における圧延工程前の負極活物質層の断面を模式的に示す模式図である。 図11は、圧延工程を示す図である。 図12は、負極合剤に気相成長炭素繊維が混ぜられている場合における圧延工程後の負極活物質層の断面を模式的に示す模式図である。 図13は、負極合剤に気相成長炭素繊維が混ぜられていない場合おける圧延工程前の負極活物質層の断面を模式的に示す模式図である。 図14は、気相成長炭素繊維が混ぜられていない場合おける圧延工程後の負極活物質層の断面を模式的に示す模式図である。 図15は、サンプル7について、負極活物質層中に含まれる黒鉛材料の粒度分布を示している。 図16は、二次電池を搭載した車両を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る二次電池を図面に基づいて説明する。ここでは、リチウムイオン二次電池を例に挙げて二次電池を説明する。なお、同じ作用を奏する部材、部位には適宜に同じ符号を付している。また、各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。
図1は、リチウムイオン二次電池100を示している。このリチウムイオン二次電池100は、図1に示すように、捲回電極体200と電池ケース300とを備えている。また、図2は、捲回電極体200を示す図である。図3は、図2中のIII−III断面を示している。
捲回電極体200は、図2に示すように、正極シート220、負極シート240およびセパレータ262、264を有している。正極シート220、負極シート240およびセパレータ262、264は、それぞれ帯状のシート材である。
≪正極シート220≫
正極シート220は、帯状の正極集電体221と、正極活物質層223とを備えている。正極集電体221には、正極に適する金属箔が好適に使用され得る。この実施形態では、正極集電体221には、所定の幅を有し、厚さが凡そ10μmの帯状のアルミニウム箔が用いられている。正極集電体221の幅方向片側の縁部に沿って未塗工部222が設定されている。正極活物質層223は、正極集電体221に設定された未塗工部222を除いて、正極集電体221の両面に形成されている。正極活物質層223は、正極集電体221に保持され、少なくとも正極活物質が含まれている。この実施形態では、正極活物質層223は、正極活物質を含む正極合剤が正極集電体221に塗工されている。
≪正極活物質層223、正極活物質610≫
ここで、図4は、リチウムイオン二次電池100の正極シート220の断面図である。なお、図4において、正極活物質層223の構造が明確になるように、正極活物質層223中の正極活物質610と導電材620とバインダ630とを大きく模式的に表している。正極活物質層223には、図4に示すように、正極活物質610や導電材620やバインダ630が含まれている。
正極活物質610には、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いることができる物質を使用することができる。正極活物質610の例を挙げると、LiNiCoMnO(リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物)、LiNiO(ニッケル酸リチウム)、LiCoO(コバルト酸リチウム)、LiMn(マンガン酸リチウム)、LiFePO(リン酸鉄リチウム)などのリチウム遷移金属酸化物が挙げられる。ここで、LiMnは、例えば、スピネル構造を有している。また、LiNiOやLiCoOは層状の岩塩構造を有している。また、LiFePOは、例えば、オリビン構造を有している。オリビン構造のLiFePOには、例えば、ナノメートルオーダーの粒子がある。また、オリビン構造のLiFePOは、さらにカーボン膜で被覆することができる。
≪導電材620≫
導電材620としては、例えば、カーボン粉末やカーボンファイバーなどのカーボン材料が例示される。このような導電材から選択される一種を単独で用いてもよく二種以上を併用してもよい。カーボン粉末としては、種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンブラック、黒鉛、ケッチェンブラック)、グラファイト粉末などのカーボン粉末を用いることができる。
≪バインダ630≫
また、バインダ630は、正極活物質610や導電材620の各粒子を結着させたり、これらの各粒子と正極集電体221とを結着させたりする。かかるバインダ630としては、使用する溶媒に溶解または分散可能なポリマーを用いることができる。例えば、水性溶媒を用いた正極合剤組成物においては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース系ポリマー、また例えば、ポリビニルアルコール(PVA)や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂、酢酸ビニル共重合体やスチレンブタジエン共重合体(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)などのゴム類;などの水溶性または水分散性ポリマーを好ましく採用することができる。また、非水溶媒を用いた正極合剤組成物においては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリルニトリル(PAN)などのポリマーを好ましく採用することができる。
≪増粘剤、溶媒≫
正極活物質層223は、例えば、上述した正極活物質610や導電材620を溶媒にペースト状(スラリ状)に混ぜ合わせた正極合剤を作成し、正極集電体221に塗布し、乾燥させ、圧延することによって形成されている。この際、正極合剤の溶媒としては、水性溶媒および非水溶媒の何れも使用可能である。非水溶媒の好適な例としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。上記バインダ630として例示したポリマー材料は、バインダとしての機能の他に、正極合剤の増粘剤その他の添加剤としての機能を発揮する目的で使用されることもあり得る。
正極合剤全体に占める正極活物質の質量割合は、凡そ50wt%以上(典型的には50〜95wt%)であることが好ましく、通常は凡そ70〜95wt%(例えば75〜90wt%)であることがより好ましい。また、正極合剤全体に占める導電材の割合は、例えば凡そ2〜20wt%とすることができ、通常は凡そ2〜15wt%とすることが好ましい。バインダを使用する組成では、正極合剤全体に占めるバインダの割合を例えば凡そ1〜10wt%とすることができ、通常は凡そ2〜5wt%とすることが好ましい。
≪負極シート240≫
負極シート240は、図2に示すように、帯状の負極集電体241と、負極活物質層243とを備えている。負極集電体241には、負極に適する金属箔が好適に使用され得る。この実施形態では、この負極集電体241には、所定の幅を有し、厚さが凡そ10μmの帯状の銅箔が用いられている。負極集電体241の幅方向片側には、縁部に沿って未塗工部242が設定されている。負極活物質層243は、負極集電体241に設定された未塗工部242を除いて、負極集電体241の両面に形成されている。負極活物質層243は、負極集電体241に保持され、少なくとも負極活物質が含まれている。この実施形態では、負極活物質層243は、負極活物質を含む負極合剤が負極集電体241に塗工されている。
≪負極活物質層243≫
図5は、リチウムイオン二次電池100の負極シート240の断面図である。また、図5において、負極活物質層243の構造が明確になるように、負極活物質層243中の負極活物質710とバインダ730を大きく模式的に表している。ここでは、負極活物質710は、いわゆる鱗片状黒鉛が用いられた場合を図示しているが、負極活物質710は、図示例に限定されない。この実施形態では、負極活物質層243には、図5に示すように、負極活物質710や増粘剤(図示省略)やバインダ730や微小炭素材料750などが含まれている。
≪増粘剤、溶媒≫
負極活物質層243は、例えば、上述した負極活物質710やバインダ730や微小炭素材料750を溶媒にペースト状(スラリ状)に混ぜ合わせた負極合剤を作成し、負極集電体241に塗布し、乾燥させ、圧延することによって形成されている。この際、負極合剤の溶媒としては、水性溶媒および非水溶媒の何れも使用可能である。非水溶媒の好適な例としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。バインダ730には、上記正極活物質層223(図4参照)のバインダ630として例示したポリマー材料を用いることができる。また、上記正極活物質層223のバインダ630として例示したポリマー材料は、バインダとしての機能の他に、正極合剤の増粘剤その他の添加剤としての機能を発揮する目的で使用されることもあり得る。
この実施形態では、負極活物質層243中の負極活物質710は、負極活物質層243を形成する工程において配向が制御されている。すなわち、この実施形態では、負極合剤に微小炭素材料750を所定の割合で含ませるとともに、負極集電体241に負極合剤を塗布した後で、所定の磁場中に負極合剤を通過させ、負極合剤に含まれる負極活物質710を所定の向きに配向させている。この実施形態では、負極合剤に微小炭素材料750が所定の割合で含まれているので、負極活物質710を所定の向きに配向させた後で、負極合剤を乾燥させ、圧延しても、負極活物質710の向きをある程度維持できる。かかる負極活物質層243の構造は、後でより詳しく述べる。
≪セパレータ262、264≫
セパレータ262、264は、図1又は図2に示すように、正極シート220と負極シート240とを隔てる部材である。この例では、セパレータ262、264は、微小な孔を複数有する所定幅の帯状のシート材で構成されている。セパレータ262、264には、例えば、多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成された単層構造のセパレータや積層構造のセパレータを用いることができる。この例では、図2および図3に示すように、負極活物質層243の幅b1は、正極活物質層223の幅a1よりも少し広い。さらにセパレータ262、264の幅c1、c2は、負極活物質層243の幅b1よりも少し広い(c1、c2>b1>a1)。
≪電池ケース300≫
また、この例では、電池ケース300は、図1に示すように、いわゆる角型の電池ケースであり、容器本体320と、蓋体340とを備えている。容器本体320は、有底四角筒状を有しており、一側面(上面)が開口した扁平な箱型の容器である。蓋体340は、当該容器本体320の開口(上面の開口)に取り付けられて当該開口を塞ぐ部材である。
車載用の二次電池では、車両の燃費を向上させるため、重量エネルギー効率(単位重量当りの電池の容量)を向上させることが望まれる。このため、この実施形態では、電池ケース300を構成する容器本体320と蓋体340は、アルミニウムやアルミニウム合金などの軽量金属が採用されている。これにより重量エネルギー効率を向上させることができる。
電池ケース300は、捲回電極体200を収容する空間として、扁平な矩形の内部空間を有している。また、図1に示すように、電池ケース300の扁平な内部空間は、捲回電極体200よりも横幅が少し広い。この実施形態では、電池ケース300は、有底四角筒状の容器本体320と、容器本体320の開口を塞ぐ蓋体340とを備えている。また、電池ケース300の蓋体340には、電極端子420、440が取り付けられている。電極端子420、440は、電池ケース300(蓋体340)を貫通して電池ケース300の外部に出ている。また、蓋体340には安全弁360が設けられている。
捲回電極体200は、図2に示すように、捲回軸に直交する一の方向において扁平に押し曲げられている。捲回電極体200は、セパレータ262、264の両側において、正極集電体221の未塗工部222、負極集電体241の未塗工部242はらせん状に露出している。図6に示すように、この実施形態では、未塗工部222、242の中間部分224、244を寄せ集め、電極端子420、440の先端部420a、440aに溶接している。この際、それぞれの材質の違いから、電極端子420と正極集電体221の溶接には、例えば、超音波溶接が用いられる。また、電極端子440と負極集電体241の溶接には、例えば、抵抗溶接が用いられる。
捲回電極体200は、扁平に押し曲げられた状態で、蓋体340に固定された電極端子420、440に取り付けられる。かかる捲回電極体200は、図1に示すように、容器本体320の扁平な内部空間に収容される。容器本体320は、捲回電極体200が収容された後、蓋体340によって塞がれる。蓋体340と容器本体320の合わせ目322(図1参照)は、例えば、レーザ溶接によって溶接されて封止されている。このように、この例では、捲回電極体200は、蓋体340(電池ケース300)に固定された電極端子420、440によって、電池ケース300内に位置決めされている。
≪電解液≫
その後、蓋体340に設けられた注液孔から電池ケース300内に電解液が注入される。電解液は、水を溶媒としていない、いわゆる非水電解液が用いられている。この例では、電解液は、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(例えば、体積比1:1程度の混合溶媒)にLiPFを約1mol/リットルの濃度で含有させた電解液が用いられている。その後、注液孔に金属製の封止キャップを取り付けて(例えば溶接して)電池ケース300を封止する。なお、電解液は、ここで例示された電解液に限定されない。例えば、従来からリチウムイオン二次電池に用いられている非水電解液は適宜に使用することができる。
≪空孔≫
ここで、正極活物質層223は、例えば、正極活物質と導電材の粒子間などに、空洞とも称すべき微小な隙間を有している。かかる正極活物質層223の微小な隙間には電解液(図示省略)が浸み込み得る。また、負極活物質層243は、例えば、負極活物質の粒子間などに、空洞とも称すべき微小な隙間を有している。ここでは、かかる隙間(空洞)を適宜に「空孔」と称する。このように、リチウムイオン二次電池100の内部では正極活物質層223と負極活物質層243には、電解液が染み渡っている。
≪ガス抜け経路≫
また、この例では、当該電池ケース300の扁平な内部空間は、扁平に変形した捲回電極体200よりも少し広い。捲回電極体200の両側には、捲回電極体200と電池ケース300との間に隙間310、312が設けられている。当該隙間310、312は、ガス抜け経路になる。例えば、過充電が生じた場合などにおいて、リチウムイオン二次電池100の温度が異常に高くなると、電解液が分解されてガスが異常に発生する場合がある。この実施形態では、異常に発生したガスは、捲回電極体200の両側における捲回電極体200と電池ケース300との隙間310、312、および、安全弁360を通して、電池ケース300の外にスムーズに排気される。
かかるリチウムイオン二次電池100では、正極集電体221と負極集電体241は、電池ケース300を貫通した電極端子420、440を通じて外部の装置に電気的に接続される。以下、充電時と放電時のリチウムイオン二次電池100の動作を説明する。
≪充電時の動作≫
図7は、かかるリチウムイオン二次電池100の充電時の状態を模式的に示している。充電時においては、図7に示すように、リチウムイオン二次電池100の電極端子420、440(図1参照)は、充電器290に接続される。充電器290の作用によって、充電時には、正極活物質層223中の正極活物質からリチウムイオン(Li)が電解液280に放出される。また、正極活物質層223からは電荷が放出される。放出された電荷は、図4に示すように、導電材(図示省略)を通じて正極集電体221に送られ、さらに、充電器290を通じて負極240へ送られる。また、負極240では電荷が蓄えられるとともに、電解液280中のリチウムイオン(Li)が、負極活物質層243中の負極活物質に吸収され、かつ、貯蔵される。
≪放電時の動作≫
図8は、かかるリチウムイオン二次電池100の放電時の状態を模式的に示している。放電時には、図8に示すように、負極240から正極220に電荷が送られるとともに、負極活物質層243に貯蔵されたリチウムイオン(Li)が、電解液280に放出される。また、正極では、正極活物質層223中の正極活物質に電解液280中のリチウムイオン(Li)が取り込まれる。
このようにリチウムイオン二次電池100の充放電において、電解液280を介して、正極活物質層223と負極活物質層243との間でリチウムイオンが行き来する。また、充電時においては、正極活物質から導電材を通じて正極集電体221に電荷が送られる。これに対して、放電時においては、正極集電体221から導電材を通じて正極活物質に電荷が戻される。
充電時においては、リチウムイオンの移動および電子の移動がスムーズなほど、効率的で急速な充電が可能になると考えられる。放電時においては、リチウムイオンの移動および電子の移動がスムーズなほど、電池の抵抗が低下し、放電量が増加し、電池の出力が向上すると考えられる。また、充電時や放電時に電池反応に活用されるリチウムイオンの数が多いほど、電池容量が多くなると考えられる。
以下、リチウムイオン二次電池100の負極活物質層243の構造および製造工程をより詳しく説明する。
負極活物質層243は、図5に示すように、負極活物質710と、負極活物質710とは別の微小炭素材料750と、バインダ730を含んでいる。負極活物質層243は、負極集電体241に保持されている。負極活物質層243の密度が1.5g/cm以上、好ましくは1.5g/cm以上1.7g/cm以下(この実施形態では、概ね1.5g/cm)になるように、負極活物質層243は圧延されている。
≪負極活物質710≫
ここで、負極活物質710は、炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有し、平均粒径が5μm以上の黒鉛粒子が用いられている。かかる負極活物質には、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛質(グラファイト)、易黒鉛化炭素質(ソフトカーボン)、又は、これらを適当に組み合わせた炭素材料を用いることができる。また、負極活物質710は、天然黒鉛表面に非晶質炭素コートを施した材料でもよい。この実施形態では、鱗片状黒鉛(Flake Graphite)が用いられている。なお、負極活物質710は、磁場によって配向させる効果が高い粒子が好適であり、鱗片状黒鉛に限らず、針状黒鉛でもよい。ここで、「平均粒径」は、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置に基づいて測定した粒度分布から導き出せるメジアン径(d50:50%体積平均粒子径)である。負極活物質層243には、かかる負極活物質710とは別に、微小炭素材料750が含まれている。
≪微小炭素材料750≫
微小炭素材料750は、平均粒径が2.0μm以下の炭素を主たる成分とする材料であり、その大きさにより、負極活物質710と区別される。かかる微小炭素材料750は、炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有していなくてもよい。
なお、この実施形態では、負極活物質710と、微小炭素材料750は、その大きさによって区別される。負極活物質710の粒径は概ね3μm以上であり、微小炭素材料750の粒径は概ね3μm未満である。このため、負極活物質層243中の負極活物質710の平均粒径は、負極活物質層243中の黒鉛材料のうち、粒径が3μm以上の粒子を抽出して、その平均粒径(d50)を算出している。また、負極活物質層243中の微小炭素材料750の平均粒径は、負極活物質層243中の黒鉛材料のうち、粒径が3μm未満の粒子を抽出して、その平均粒径(d50)を算出している。
≪気相成長炭素繊維≫
図5に示す例では、微小炭素材料750として、気相成長炭素繊維(VGCF)が用いられている。ここで、気相成長炭素繊維は、ベンゼンなどの炭化水素類を気相で熱分解して得られるミクロな炭素繊維である。ここで用いられる気相成長炭素繊維の繊維径(平均繊維径d50)は、凡そ0.5μm〜0.25μmである。気相成長炭素繊維の繊維径(平均繊維径d50)は、好適には0.10μm〜0.30μm程度である。また、ここで用いられる気相成長炭素繊維の繊維長(平均繊維長)は、凡そ5μm〜100μm、好適には凡そ10μm〜20μmである。ここで気相成長炭素繊維の平均繊維径や平均繊維長は、SEM画像を基に測定した値である。かかる気相成長炭素繊維には、例えば、昭和電工株式会社製の気相成長炭素繊維を用いることができる。
なお、微小炭素材料750としては、かかる気相成長炭素繊維に限定されない。例えば、微小炭素材料750は、負極活物質710に比べて小さい小粒径の黒鉛粉末でもよい。ここでは、負極活物質710に平均粒径が5μm以上の鱗片状黒鉛が用いられており、微小炭素材料750は平均粒径が2μm以下(好ましくは1μm程度)の黒鉛粉末を用いるとよい。
≪負極活物質層243の製造工程≫
かかる負極活物質層243(図5参照)の製造工程は、負極合剤を用意する工程と、塗布工程と、磁場付与工程と、乾燥工程と、圧延工程とを備えている。図9は、負極活物質層243(図5参照)の製造工程を模式的に示している。図9に示す例では、走行経路12と、塗布装置14と、磁場付与装置16と、乾燥炉18とを備えている。
≪走行経路12≫
走行経路12は、負極集電体241(図5参照)の素材となる集電体22を走行させる経路である。この実施形態では、走行経路12には、集電体22を走行させる所定の経路に沿って複数のガイド12bが配置されている。走行経路12の始端には、集電体22を供給する供給部32が設けられている。供給部32には、予め巻き芯32aに巻き取られた集電体22が配置されている。供給部32からは適宜に適当な量の集電体22が走行経路12に供給される。また、走行経路12の終端には集電体22を回収する回収部34が設けられている。
回収部34は、走行経路12で所定の処理が施された集電体22を巻き芯34aに巻き取る。この実施形態では、回収部34には、例えば、制御部34bと、モータ34cとが設けられている。制御部34bは、回収部34の巻き芯34aの回転を制御するためのプログラムが予め設定されている。モータ34cは、巻き芯34aを回転駆動させるアクチュエータであり、制御部34bに設定されたプログラムに従って駆動する。
なお、図示は省略するが、走行経路12には、集電体22に適当な張力が作用するように、張力を調整する機構(例えば、ダンサローラ)が必要に応じて適宜に配置されているとよい。また、走行経路12は、集電体22の幅方向の位置を調整する位置調整機構が必要に応じて適宜に配置されているとよい。位置調整機構には、エッジ検知装置(エッジセンサー)と位置補正機構(ポジションコントローラ)とを組み合わせた、いわゆるEPC(edge position control)のような位置調整機構を採用することができる。
≪集電体22≫
ここで、集電体22の好ましい一形態は、例えば、負極集電体241(図5参照)として好適な銅(Cu)などの金属箔である。ただし、集電体22は、必ずしも金属箔に限定されない。例えば、集電体22は、導電性を持たせた樹脂でもよい。導電性を持たせた樹脂には、例えば、ポリプロピレンフィルムに銅を蒸着させたフィルム材を用いることができる。かかる走行経路12には、塗布装置14と、磁場付与装置16と、乾燥炉18とが順に配置されている。
≪塗布装置14(塗布工程)≫
塗布装置14は、図9に示すように、流路41と、塗布部42と、タンク43と、ポンプ44と、フィルタ45とを備えている。この実施形態では、塗布装置14は、走行経路12に配設されたバックロール46を走行する集電体22に対して負極合剤24を塗布するように構成されている。
≪流路41≫
ここで、流路41は、負極合剤24が流通し得る流路である。この実施形態では、流路41は、タンク43から塗布部42へ至るように形成されている。タンク43は、負極合剤24を貯留した容器である。ポンプ44は、タンク43から流路41に負極合剤24を送り出す装置である。フィルタ45は、タンク43から送り出された負極合剤24中の異物(例えば、負極活物質710の凝集物)を取り除く装置である。かかるフィルタ45には、例えば、樹脂や金属の繊維を絡ませた不織布フィルタや、樹脂や金属の繊維を編んだメッシュフィルタなどを用いることができる。フィルタ45の目の粗さは、除去し得る粒子の大きさや、負極合剤24(スラリー)の粘度にも影響するので、適当なフィルタを用いるとよい。
≪塗布部42≫
塗布部42は、図9に示すように、フィルタ45を通過した負極合剤24を集電体22に塗る。ここで、塗布部42は、例えば、スリットコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーター等が用いられる。なお、図9に示す例では、塗布部42にダイコーターが採用されている。塗布部42は、所定の目付量で負極合剤24を集電体22に塗布できる。
≪負極合剤24≫
この実施形態では、集電体22に塗布される負極合剤24は、上述したように溶媒と、負極活物質710としての黒鉛粒子と、バインダ730と、微小炭素材料750(この実施形態では、気相成長炭素繊維)とが混ぜられている。また、負極合剤24には、適宜に増粘剤が混ぜられている。
負極活物質710としての黒鉛粒子は、炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有している。黒鉛粒子の平均粒径は5μm以上である。微小炭素材料750は、平均粒径が2.0μm以下の炭素材料である。乾燥後の負極活物質層243(図5参照)において、負極活物質層243中に含まれる黒鉛粒子(負極活物質710)と微小炭素材料750のうち、微小炭素材料750の重量割合が5重量%以上である。負極合剤24には、黒鉛粒子710(図5参照)と、バインダ730と、微小炭素材料750が、予め定められた所定の重量割合で混ぜられている。塗布部42で負極合剤24が塗布された集電体22は磁場付与装置16に送られる。
≪磁場付与装置16(磁場付与工程)≫
磁場付与装置16は、図9に示すように、一対の磁石61、62を備えている。一対の磁石61、62は、走行経路12を走行する集電体22の表裏に対向している。磁石61、62の一方は、集電体22に向けてS極になり、他方はN極になる。これにより、走行経路12を走行する集電体22に対して、集電体22に直交する方向(集電体22の法線方向)に磁力線が向いた磁場が発生する。この際、磁石61、62は、永久磁石で構成してもよいし、電気の作用によって磁力を生じさせる電磁石で構成してもよい。
集電体22が磁場付与装置16を通過する際、かかる磁場の作用によって、負極合剤24中の負極活物質710は、炭素六角網平面が磁力線に平行(この実施形態では、集電体22に直交する方向)になるように配向する。換言すれば、負極活物質710としての黒鉛粒子の層間の面が磁力線に平行になる。
ここで、負極活物質710の配向の程度は、例えば、磁場付与工程で負極合剤24に作用する磁場の強さと、磁場を与える時間とが影響すると考えられる。磁場付与工程では、負極活物質710が適切に配向しうるように、負極合剤24に作用させる磁場の強さと磁場を与える時間を調整するとよい。磁場付与工程で、負極合剤24に磁場を作用させる時間は短ければ短いほどよい。例えば、1.0秒程度の短時間で負極活物質710が十分に配向するとよい。磁場付与工程で負極合剤24に作用させる磁場の強さは、例えば、走行経路12で負極合剤24が走行する近辺において、0.5T以上、より好ましくは0.75T以上、さらに好ましくは1.0T以上であるとよい。磁場の強さは、市販の磁気測定器で測定するとよい。かかる磁気測定器としては、例えば、LakeShore425型を用いることができる。
負極活物質710の配向の程度は、塗布工程で供給される負極合剤24の粘度や、固形分濃度による影響があると考えられる。本発明者の考えでは、ここで供給される負極合剤24の粘度は、例えば、500mPa・sec〜5000mPa・sec(E型粘度計、25℃、2rpm時)であるとよい。また、塗布工程によって供給される負極合剤の固形分濃度は40wt%〜60wt%であるとよい。磁場付与工程によって、負極合剤24中の負極活物質710が配向した集電体22は、走行経路12に沿って乾燥炉18に送られる。
≪乾燥炉18≫
乾燥炉18は、集電体22の走行経路12に設けられており、高温の乾燥雰囲気に集電体22を曝して、負極合剤24中の溶媒を蒸発させて消失させる。乾燥炉18を通過させた集電体22は、回収部34において巻き芯34aに巻き取られ、次工程に送られる。この実施形態では、回収部34において巻き取られた集電体22は、その後、圧延工程に送られる。
図10は、負極合剤に気相成長炭素繊維が混ぜられている場合における圧延工程前の負極活物質層243の断面を模式的に示す模式図である。図10に示すように、負極活物質層243中の負極活物質710の配向は、圧延前においては、炭素六角網平面が磁力線に平行(この実施形態では、集電体22に直交する方向)になるように概ね制御されている。なお、図10では、バインダ730など、負極活物質710と微小炭素材料750を除く物質は図示を省略している。この点は、後で示される図12〜図14においても同様である。
≪圧延工程≫
ここで、圧延工程は、乾燥工程の後で、負極活物質層243が形成された負極集電体241を圧延する工程である。図11は、かかる圧延工程を示している。この実施形態では、圧延装置70は、図11に示すように、一対のローラー72、74を有している。一対のローラー72、74は、予め所定の間隔で配置されており、負極活物質層243が形成された負極集電体241は当該一対のローラー72、74間に通されて圧延される。これにより、負極活物質層243を所定の厚さにすることができる。
かかる圧延工程によって圧延されることによって、負極活物質層243の密度が高くなる。負極活物質層243の密度が高くなると、負極活物質層243の単位体積辺りの負極活物質710の量が多くなる。負極活物質層243の単位体積辺りの負極活物質710の量が多くなると、負極活物質層243の単位体積辺りに吸蔵し得るリチウムイオンの量が多くなる。このため、リチウムイオン二次電池100の単位体積当りの容量を高くすることができ、高容量の二次電池100が得られる。例えば、ハイブリッド車や電気自動車など、車両を駆動させるモータの電源として利用される用途(車両駆動用電池)では、圧延後の負極活物質層243の密度が1.5g/cm以上になるように、乾燥工程で乾燥させた負極活物質層243を圧延するとよい。
≪負極合剤24に気相成長炭素繊維750が混ぜられている場合≫
図12は、負極合剤24に気相成長炭素繊維750が混ぜられている場合における圧延工程後の負極活物質層243の断面を模式的に示す模式図である。この実施形態では、負極合剤24に気相成長炭素繊維750が混ぜられている。このため、図12に示すように、圧延工程で負極活物質層243が圧延された場合、磁場付与工程で炭素六角網平面が集電体22に直交するように配向した負極活物質710の姿勢は一部において崩れるものの、負極活物質710の姿勢が概ね保たれる。
≪負極合剤24に気相成長炭素繊維750が混ぜられていない場合≫
図13は、負極合剤24に気相成長炭素繊維750が混ぜられていない場合おける圧延工程前の負極活物質層243の断面を模式的に示す模式図である。図14は、気相成長炭素繊維750が混ぜられていない場合おける圧延工程後の負極活物質層243の断面を模式的に示す模式図である。
負極合剤24に気相成長炭素繊維750が混ぜられていない場合には、図13に示すように、圧延工程前には、負極活物質710は、磁場付与工程で炭素六角網平面が集電体22に直交するように配向している。しかし、気相成長炭素繊維750が混ぜられていないために、圧延工程において、負極活物質710の姿勢を維持することができない。このため、図12の場合と同様の圧延条件において圧延工程で負極活物質層243が圧延されると、図14に示すように、負極活物質710の姿勢が概ね崩れる。
すなわち、負極活物質層243に微小炭素材料としての気相成長炭素繊維750が含まれていない場合には、図13に示すように、磁場付与工程で炭素六角網平面が集電体22に直交するように配向した負極活物質710の姿勢が、図14に示すように、圧延工程において概ね崩れる。これに対して、負極活物質層243に微小炭素材料としての気相成長炭素繊維750が含まれている場合には、図10に示すように、磁場付与工程で炭素六角網平面が集電体22に直交するように配向した負極活物質710の姿勢が、図12に示すように、圧延後でも概ね維持される。
≪気相成長炭素繊維750の作用≫
かかる事象について、本発明者は以下のように推測している。微小炭素材料750としての気相成長炭素繊維は、繊維径が細い繊維であり、負極活物質710に絡みつき易い。また、気相成長炭素繊維750は、繊維径が細い繊維であり、剛性が小さい。このため、気相成長炭素繊維750は磁場付与工程において、負極合剤24中で負極活物質710の配向が変化するのを許容する。また、乾燥工程では、気相成長炭素繊維は、バインダ730の作用により、負極活物質710に絡みついた状態で固定される。圧延工程では、負極活物質710は、負極活物質710に絡みついた気相成長炭素繊維によって支持される。このため、磁場付与工程で炭素六角網平面が集電体22に直交するように配向した負極活物質710の姿勢が、圧延後でも概ね維持される。
負極活物質層243に微小炭素材料としての気相成長炭素繊維750が含まれている場合には、図12に示すように、磁場付与工程で炭素六角網平面が集電体22に直交するように配向した負極活物質710の姿勢が、圧延後でも概ね維持される。炭素六角網平面が集電体22に直交するように配向した負極活物質710の姿勢では、負極活物質710(鱗片状黒鉛)のエッジ部が、正極活物質層223に向いている。リチウムイオン二次電池100の充放電において、負極活物質710へリチウムイオンの出入りがスムーズになる。また、負極活物質710(鱗片状黒鉛)の他方のエッジ部は、集電体22に向いており、負極での電荷の移動もスムーズになる。
≪サンプル≫
本発明者は、リチウムイオン二次電池について、いくつかのサンプルを用意して磁場付与工程で負極活物質710を配向させる場合に、微小炭素材料750の作用を検証した。以下、リチウムイオン二次電池のサンプルを説明する。ここでは、リチウムイオン二次電池の基本構成は、上述した説明を適宜に参酌することとし、重複する説明は省略する。また、上述した説明で用いた図面を適宜参照することとし、参照符号は上述した説明と同じ符号を用いている。
≪サンプル1の正極シート≫
サンプル1では、正極活物質610は金属複合酸化物(例えば、Li1.15Ni1/3Co1/3Mn1/32)、導電材620はアセチレンブラック、および、バインダ630はポリフッ化ビニリデン(PVDF:PolyVinylidene DiFluoride)である(図1および図5参照)。ここで、正極活物質610:導電材620:バインダ630は重量比において100:5:5の割合で含まれている。正極集電体221は、帯状のアルミニウム箔であり、その厚さは15μmである。正極活物質層223は、かかる正極集電体221(アルミニウム箔)の両面に形成されている。正極活物質層223が形成された部分における正極シート220の厚さは100μmである。正極シート220に正極活物質層223が形成された幅は98mm、長さは3000mmである。
ここでは、正極活物質610、導電材620、および、バインダ630を溶媒に混ぜた正極合剤を用意する。次に、当該正極合剤を正極集電体221に塗布し、乾燥、圧延して、所要の厚さの正極シート220を得ている。
≪サンプル1の負極シート≫
負極活物質層243(図1および図6参照)は、負極活物質710として鱗片状の天然黒鉛(鱗片状黒鉛:平均粒径10μm、日立化成株式会社製)、微小炭素材料750として昭和電工株式会社製の気相成長炭素繊維(VGCF:平均繊維径0.15μm、平均繊維長10μm〜20μm)を用いた。ここで、負極活物質710としての天然黒鉛と、微小炭素材料750としての気相成長炭素繊維は、重量比85:15(天然黒鉛:気相成長炭素繊維)で配合されている。また、負極活物質層243は、バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)が用いられており、負極合剤の増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)が用いられている。天然黒鉛と気相成長炭素繊維の混合黒鉛材(グラファイト粉末):スチレンブタジエンゴム(SBR):カルボキシメチルセルロース(CMC)の重量比を100:1:1にした。
負極集電体241は、厚さが20μmの帯状の銅箔である。負極活物質層243は、かかる負極集電体241(銅箔)の両面に形成されている。負極活物質層243が形成された部分における負極シート240の厚さは120μmである。負極シート240に負極活物質層243が形成された幅は104mm、長さは3300mmである。
負極活物質層243は、上述したように、溶媒に天然黒鉛と気相成長炭素繊維の混合黒鉛材(グラファイト粉末)とスチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)は、重量比100:1:1で混合した負極合剤を用意した。当該負極合剤を負極集電体241に所定の目付で塗布した(図9参照)。次に、負極集電体241の法線方向に磁力線が向いた磁場を付与し、炭素六角網平面が負極集電体241に直交するように天然黒鉛(負極活物質710)を配向させた(図10参照)。次に、負極合剤を乾燥させた後、ロールプレスにて圧延し、圧延後の負極活物質層243の密度を凡そ1.5g/mmにした。
このように用意した正極シート220と負極シート240とは、図1および図2に示すように、セパレータ262、264を介在させて重ねれ、捲回される。ここでは、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)の3層構造で、厚さが20μmのセパレータを用いた。捲回電極体200は、図1に示すように、正極シート220、セパレータ262、負極シート240、セパレータ264の順で重ねられて捲回されている。捲回電極体200は、扁平な形状に押し曲げられて、正極シート220と負極シート240の未塗工部222、242に電極端子420、440が取り付けられ、角型の電池ケース300に収容される。電池ケース300には、電解液が注入される。ここで注入される電解液は、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とが3:4:3となる体積比で含む混合溶媒に支持塩としてのLiPF6を約1mol/リットルの濃度で含有させた非水電解液である。
かかる電池の定格容量は4.6Ahであった。
≪定格容量の測定≫
ここで、定格容量は、上記のように作成した電池について、室温(ここでは、概ね25℃)の環境で次の手順1および2によって測定された値によって評価されている。
手順1:1Cの定電流充電によって4.1Vに到達後、定電圧充電を2.5時間行い、10秒間休止する。
手順2:0.5Cの定電流放電によって、3.0Vに到達後、定電圧放電を2時間行い、10秒間停止する。
ここで、手順2における定電流放電から定電圧放電に至る放電における放電容量(CCCV放電容量)を定格容量とする。
≪サンプル2≫
サンプル2は、負極活物質層243を形成する際に、磁場を与えずに負極シート240を作成した。他の構成は、サンプル1の電池と基本的に同じ構成にした。
≪サンプル3≫
サンプル3は、負極活物質層243を形成する際に、微小炭素材料としての気相成長炭素繊維750を入れず、天然黒鉛とスチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)との重量比は、100:1:1にした。他の構成は、サンプル1の電池と基本的に同じ構成にした。すなわち、サンプル3の電池では、微小炭素材料750が含まれておらず、黒鉛材料は、実質的に負極活物質710としての天然黒鉛100%である。
≪サンプル4≫
サンプル4は、圧延後の負極活物質層243の密度を1.2g/cmとし、負極シート240の長さを3300mmから3100mmとし、正極シート220、セパレータ262、264の長さをそれぞれ、負極シート240と同様の比率(31/33)で短くした、捲回電極体200を用いた。他の構成は、サンプル3の電池と基本的に同じ構成にした。
≪サンプル5≫
サンプル5は、サンプル1の電池と基本構成が同じである。サンプル5の電池では、サンプル1の負極シート240において、微小炭素材料750として、気相成長炭素繊維に代えて平均粒径(d50)が1μm以下の黒鉛粉末(ここでは、負極活物質710に用いられる鱗片状黒鉛と区別するため、適宜に「小粒径黒鉛粉末」とも称する。)を用いた。また、サンプル5では、黒鉛粉末には、詳しくは、ピッチ系球状黒鉛ビーズを用いた。サンプル5の電池では、負極活物質710としての天然黒鉛と、微小炭素材料750としての黒鉛粉末との重量比を、97:3(天然黒鉛:黒鉛粉末)にした。
なお、かかる小粒径黒鉛粉末は、平均粒径(d50)が1μm以下の黒鉛粉末である。かかる小粒径黒鉛粉末は、小粒径であるため磁場付与工程において、負極合剤中で負極活物質710の配向が変化するのを許容する。また、小粒径黒鉛粉末は、乾燥工程においてバインダ730の作用によって負極活物質710間に固定され、圧延工程では、負極活物質710の姿勢を支持する。このため、小粒径黒鉛粉末は、気相成長炭素繊維と同様に、磁場付与工程で炭素六角網平面が集電体22に直交するように配向した負極活物質710の姿勢を、圧延後も概ね維持する機能を有する。
≪サンプル6≫
サンプル6は、サンプル5の電池と基本構成を同じにしている。サンプル6の電池では、サンプル5の負極シート240において、負極活物質710としての天然黒鉛と、微小炭素材料750としての黒鉛粉末との重量比を、95:5(天然黒鉛:黒鉛粉末)にした。
≪サンプル7≫
サンプル7は、サンプル5の電池と基本構成を同じにしている。サンプル7の電池では、サンプル5の負極シート240において、負極活物質710としての天然黒鉛と、微小炭素材料750としての黒鉛粉末との重量比を、85:15(天然黒鉛:黒鉛粉末)にした。
ここで、図15は、サンプル7について、負極活物質層243中に含まれる負極活物質層243としての黒鉛粒子と微小炭素材料750としての小粒径黒鉛粉末を合わせた黒鉛材料の粒度分布を示している。図15に示すグラフには、黒鉛材料の粒度分布について、頻度分布D1、積算分布D2が示されている。サンプル7では、黒鉛粉末と小粒径黒鉛粉末とが85:15の重量比で混ぜ合わされている。このため、図15に示すように、黒鉛材料の粒度分布は、粒径が5μm以上20μm以下の範囲と、5μm未満の範囲とにそれぞれ頻度が5%以上のピークを有する。
≪サンプル8≫
サンプル8は、サンプル5の電池と基本構成を同じにしている。サンプル8の電池では、サンプル5の負極シート240において、負極活物質710としての天然黒鉛と、微小炭素材料750としての黒鉛粉末との重量比を、80:20(天然黒鉛:黒鉛粉末)にした。
≪サンプル9≫
サンプル9は、サンプル5の電池と基本構成を同じにしている。サンプル9の電池では、サンプル5の負極シート240において、負極活物質710としての天然黒鉛と、微小炭素材料750としての黒鉛粉末との重量比を、75:25(天然黒鉛:黒鉛粉末)にした。
また、本発明者は、各サンプルについて、直流内部抵抗(DC−IR)、放電容量を測定した。
≪直流内部抵抗(DC−IR)、放電容量≫
ここで、リチウムイオン二次電池100を充電終止電圧4.1V、放電終止電圧3.0Vの条件下において、25℃の温度環境下で、1.4Aの定電流で3サイクルの充放電を行なった。そして、それぞれSOC50%(SOC:State
Of Charge)に調整した後にI−V特性試験を行ない、入力側の直流内部抵抗を求めた。
≪配向の評価≫
ここで、本発明者は、負極活物質層243における負極活物質710の配向を、X線回析で得られるピーク強度比I(110)/I(004)の値で評価した。X線回析では、負極シート240の負極活物質層243が形成された面に対して、負極シート240の法線方向からX線(例えば、CuKα線)を当てた。I(110)は、負極活物質710の(110)面に帰属するピークの強度である。I(004)は、負極活物質710の(004)面に帰属するピークの強度である。かかるピーク強度比I(110)/I(004)は、負極活物質層243の厚み方向(負極集電体241の法線方向)に対する、負極活物質710の炭素六角網平面の配向の程度を反映している。ピーク強度比I(110)/I(004)が大きいほど、負極活物質710の炭素六角網平面の配向が、負極活物質層243の厚み方向(負極集電体241の法線方向)に揃っていることを示している。
本発明者の知見では、かかる負極活物質層243のX線回析で得られるピーク強度比I(110)/I(004)の値と、リチウムイオン二次電池100の抵抗とは、一定の層間関係があり、負極活物質層243のピーク強度比I(110)/I(004)が大きいほど、リチウムイオン二次電池100の抵抗が低下する傾向がある。
表1は、上述したサンプル1〜4について、直流内部抵抗(DC−IR)と、放電容量(Ah)と、ピーク強度比I(110)/I(004)をそれぞれ示している。ここでは、3サイクル目の直流内部抵抗と放電容量の値が示されている。
Figure 0005818068
表1に示されているように、負極活物質層243は、微小炭素材料750として気相成長炭素繊維を含んでいるサンプル1は、直流内部抵抗(DC−IR)が2.5、放電容量(Ah)が4.62、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.8であった。
≪サンプル2の評価≫
これに対して、合剤塗布後に磁場を与えずに作成したサンプル2は、直流内部抵抗(DC−IR)が3.1、放電容量(Ah)が4.61、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.1であった。この場合には、直流内部抵抗(DC−IR)が3.1と高くなる。このため、サンプル2は、サンプル1に比べて充放電の損失が大きくなり、出力が低下すると考えられる。
≪サンプル3の評価≫
また、合剤塗布後に磁場が与えられるものの微小炭素材料750を含んでいないサンプル3は、直流内部抵抗(DC−IR)が3.0、放電容量(Ah)が4.62、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.3であった。ピーク強度比I(110)/I(004)が0.3と低下しており、微小炭素材料750を含んでいないために、負極活物質710の配向が崩れている。このため、この場合には、直流内部抵抗(DC−IR)が3.0と高い。このため、サンプル3は、サンプル1に比べて充放電の損失が大きくなり、出力が低下すると考えられる。
≪サンプル4の評価≫
また、圧延後の負極活物質層243の密度を1.2g/cmにしたサンプル4は、直流内部抵抗(DC−IR)が2.6、放電容量(Ah)が4.31、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.9であった。サンプル4は、圧延後の負極活物質層243の密度が1.2g/cmと、圧延後の負極活物質層243の密度が1.5g/cmであるサンプル1に比べて、圧延の程度が緩やかである。この場合、サンプル4は、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.9と、負極活物質710の配向が揃った状態である。
サンプル4では、圧延後の負極活物質層243の密度が1.2g/cmと圧延が緩やかであるため、負極活物質層243の単位体積当りの負極活物質710の量が少ない。このため、放電容量(Ah)が4.31と低下している。すなわち、リチウムイオン二次電池100の容量はサンプル1に比べてそれほど高くないが、低抵抗、高出力のリチウムイオン二次電池100が得られる。また、別の見方では、微小炭素材料750が含まれている場合には、サンプル1の電池のように、圧延後の負極活物質層243の密度が1.5g/cmになるように圧延した場合でも、負極活物質710の配向がある程度崩れずに維持されている。従って、負極合剤に微小炭素材料750を含ませて、磁場配向を行なうことによって、高容量、低抵抗、高出力のリチウムイオン二次電池100が得られる。
≪サンプル5からサンプル9≫
サンプル5からサンプル9は、何れも微小炭素材料750として小粒径黒鉛粉末を含んでおり、その重量割合を変えたサンプルである。表2は、サンプル5〜9について、鱗片状黒鉛:小粒径黒鉛粉末の重量比、直流内部抵抗(DC−IR)と、放電容量(Ah)と、ピーク強度比I(110)/I(004)をそれぞれ示している。ここでは、3サイクル目の直流内部抵抗と放電容量の値が示されている。
Figure 0005818068
≪サンプル5の評価≫
鱗片状黒鉛:小粒径黒鉛粉末の重量比を、97:3にしたサンプル5では、直流内部抵抗(DC−IR)が3.0、放電容量(Ah)が4.62、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.5であった。
≪サンプル6の評価≫
鱗片状黒鉛:小粒径黒鉛粉末の重量比を、95:5にしたサンプル6では、直流内部抵抗(DC−IR)が2.7、放電容量(Ah)が4.62、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.6であった。
≪サンプル7の評価≫
鱗片状黒鉛:小粒径黒鉛粉末の重量比を、85:15にしたサンプル7では、直流内部抵抗(DC−IR)が2.6、放電容量(Ah)が4.61、ピーク強度比I(110)/I(004)が0.8であった。
≪サンプル8の評価≫
鱗片状黒鉛:小粒径黒鉛粉末の重量比を、80:20にしたサンプル8では、直流内部抵抗(DC−IR)が2.6、放電容量(Ah)が4.61、ピーク強度比I(110)/I(004)が1.0であった。
≪サンプル9の評価≫
鱗片状黒鉛:小粒径黒鉛粉末の重量比を、75:25にしたサンプル9では、直流内部抵抗(DC−IR)が2.9、放電容量(Ah)が4.54、ピーク強度比I(110)/I(004)が1.1であった。
このように、小粒径黒鉛粉末を含む割合が多くなればなるほど、ピーク強度比I(110)/I(004)が大きくなる。このため、小粒径黒鉛粉末は、気相成長炭素繊維と同様に、圧延後の負極活物質710の配向を維持する機能がある。サンプル5では、負極活物質710に対して微小炭素材料750が少なく、ピーク強度比I(110)/I(004)は0.5まで低下し、直流内部抵抗(DC−IR)が3.0と比較的高い値を示す。
このように、負極活物質710に対する微小炭素材料750の量には、適当な量があることがわかる。負極活物質層243に微小炭素材料750が適当な量の含まれている場合には、負極活物質710を磁場配向させた後で、所要の圧延が施された場合でも負極活物質710の配向が維持され易い。例えば、かかる負極活物質層243をX線回析したピーク強度比I(110)/I(004)は0.6以上であるとよい。
また、サンプル9では、負極活物質710に対して微小炭素材料750が多く、ピーク強度比I(110)/I(004)は1.1と高い値を示すものの、直流内部抵抗(DC−IR)は2.9と比較的高い値を示す。このため、ピーク強度比I(110)/I(004)は1.1程度に高くなると、直流内部抵抗(DC−IR)が増加し、放電容量が低下する傾向がある。このような観点を考慮すると、ピーク強度比I(110)/I(004)は1.0以下であるとよい。
本発明者の知見によれば、例えば、サンプル5からサンプル8のように、負極活物質層243中に含まれる黒鉛粒子(負極活物質710)と微小炭素材料750のうち、微小炭素材料750の重量割合が凡そ5重量%以上20重量%以下であるとよい。微小炭素材料750の重量割合が凡そ5重量%以上であると、負極活物質710の配向がある程度崩れずに維持される。例えば、圧延後の負極活物質層243の密度が1.5g/cmになるように圧延した場合でも、負極活物質710の配向がある程度崩れずに維持されており、低抵抗で高容量のリチウムイオン二次電池100が得られる。
以上、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池100を説明した。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、図1に示すように、負極集電体241と、負極集電体241に保持された負極活物質層243とを備えている。ここで、負極活物質層243は、図5に示すように、炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有し、平均粒径が5μm以上の黒鉛粒子(負極活物質710)と、平均粒径が2.0μm以下の微小炭素材料750とが含まれている。かかる負極活物質層243中に含まれる黒鉛粒子(負極活物質710)と微小炭素材料750のうち、微小炭素材料750の重量割合は5重量%以上である。また、かかる負極活物質層243は、X線回析によるピーク強度比I(110)/I(004)が0.6以上であるとよい。
これにより、このリチウムイオン二次電池100では、負極活物質層243は、微小炭素材料750が所定量含まれているので、負極活物質710の配向が崩れにくい。このため、負極活物質層243は、X線回析によるピーク強度比I(110)/I(004)が0.6以上であり、磁場によって制御された負極活物質710の配向が、圧延後にも維持されている。この場合、負極活物質層243の密度が1.5g/cm以上でもよい。
また、負極活物質710の配向が、所要の圧延後にも維持する機能について、微小炭素材料750の重量割合は凡そ20重量%程度で十分である。微小炭素材料750の重量割合は20重量%以下にすることにより、負極活物質層243中の単位重量辺りに含まれる黒鉛粒子(負極活物質710)の割合が多くなる。微小炭素材料750の重量割合は20重量%より多くすると、二次電池の容量が低下する場合がある。このため、二次電池の容量を考慮すれば、負極活物質層243中に含まれる黒鉛粒子(負極活物質710)と微小炭素材料750のうち、微小炭素材料750の重量割合は20重量%以下であるとよい。
また、微小炭素材料750としては、繊維径が1.0μm以下の炭素繊維でもよい。この場合、炭素繊維の好ましい一例としては、気相成長炭素繊維が挙げられる。気相成長炭素繊維は、導電性が高く、負極活物質層243の導電助剤として高い機能を有する。また、微小炭素材料750は、上述したように、平均粒径が1μm以下の黒鉛粉末(小粒径黒鉛粉末)でもよい。
また、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法は、負極合剤を用意する工程と、塗布工程と、磁場付与工程と、乾燥工程と、圧延工程とを有している。ここで、用意される負極合剤は、
溶媒;
炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有し、平均粒径が5μm以上の黒鉛粒子;
平均粒径が2μm以下の微小炭素材料;および、
黒鉛粒子と微小炭素材料とを結着させるバインダ;
が混ぜられている。
また、負極合剤に含まれる黒鉛粒子と微小炭素材料のうち、微小炭素材料の重量割合が5重量%以上である。
塗布工程は、用意された負極合剤を負極集電体に塗布する工程である。磁場付与工程は、塗布工程で塗布された負極合剤に磁場を付与し、負極合剤中の黒鉛粒子を配向させる。乾燥工程は、黒鉛粒子が配向した負極合剤を乾燥させる。圧延工程は、乾燥させた負極合剤(負極活物質層)を圧延する。この実施形態では、負極合剤に、平均粒径が2μm以下の微小炭素材料が所定の量含まれている。かかる製造方法によれば、磁場付与工程で制御された負極活物質710の配向が、圧延後にも維持され易い。このため、低抵抗、高出力、高容量の二次電池が得られる。
以上、本発明の一実施形態に係る二次電池および二次電池の製造方法を説明したが、本発明は、特に言及されない限りにおいて、上述した何れの実施形態にも限定されない。
本発明は二次電池の出力向上および高容量化に寄与する。このため、本発明は、ハイレートでの出力特性やサイクル特性について要求されるレベルが高いハイブリッド車や、特に、高容量化について要求されるレベルが高いプラグインハイブリッドや電気自動車の駆動用電池など車両駆動電源としてのリチウムイオン二次電池およびその製造方法に好適である。すなわち、リチウムイオン二次電池は、例えば、図16に示すように、自動車などの車両1のモータ(電動機)を駆動させる電池1000として好適に利用され得る。車両駆動用電池1000は、複数の二次電池を組み合わせた組電池としてもよい。
1 車両
12 走行経路
12b ガイド
14 塗布装置
16 磁場付与装置
18 乾燥炉
22 集電体
24 負極合剤
32 供給部
32a 巻き芯
34 回収部
34a 巻き芯
34b 制御部
34c モータ
41 流路
42 塗布部
43 タンク
44 ポンプ
45 フィルタ
46 バックロール
61、62 磁石
70 圧延装置
72、74 ローラー
100 リチウムイオン二次電池(二次電池)
200 捲回電極体
220 正極シート(正極)
221 正極集電体
222 未塗工部
223 正極活物質層
224 中間部分
240 負極シート(負極)
241 負極集電体
242 未塗工部
243 負極活物質層
262、264 セパレータ
280 電解液
290 充電器
300 電池ケース
310 隙間
320 容器本体
322 蓋体340と容器本体320の合わせ目
340 蓋体
360 安全弁
420、440 電極端子
420a、440a 先端部
610 正極活物質
620 導電材
630 バインダ
710 負極活物質(黒鉛粒子)
730 バインダ
750 気相成長炭素繊維(微小炭素材料)
1000 車両駆動用電池

Claims (11)

  1. 負極集電体と、
    前記負極集電体に保持された負極活物質層と
    を備え、
    前記負極活物質層は、
    炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有し、平均粒径が5μm以上20μm以下鱗片状黒鉛または針状黒鉛である黒鉛粒子と、
    平均粒径が2μm以下の微小炭素材料と
    バインダと
    が含まれており、
    前記黒鉛粒子と前記微小炭素材料とが、前記バインダによって結着しており、
    前記負極活物質層中に含まれる前記黒鉛粒子と前記微小炭素材料のうち、前記微小炭素材料の重量割合が5%重量以上20%重量以下であり、
    前記負極活物質層のX線回析によるピーク強度比I(110)/I(004)が0.6以上である、二次電池。
  2. 前記微小炭素材料は、繊維径が1μm以下の炭素繊維である、請求項1に記載された二次電池。
  3. 前記炭素繊維は、気相成長炭素繊維である、請求項に記載された二次電池。
  4. 前記微小炭素材料は、平均粒径が1μm以下の黒鉛粉末である、請求項1に記載された二次電池。
  5. 前記負極活物質層を前記X線回析したピーク強度比I(110)/I(004)が1.0以下である、請求項1からまでの何れか一項に記載された二次電池。
  6. 前記負極活物質層の密度が1.5g/cm以上である、請求項1からまでの何れか一項に記載された二次電池。
  7. 黒鉛粒子を含む負極合剤を用意する工程と、
    前記負極合剤を用意する工程で用意された前記負極合剤を負極集電体に塗布する塗布工程と
    前記塗布工程で塗布された前記負極合剤に磁場を付与し、前記負極合剤中の前記黒鉛粒子を配向させる磁場付与工程と、
    前記磁場付与工程で前記黒鉛粒子が配向した前記負極合剤を乾燥させる乾燥工程と、
    前記乾燥工程で乾燥させた前記負極合剤を圧延する圧延工程と、
    を備えており、
    前記負極合剤を用意する工程で用意される負極合剤は、
    溶媒;
    炭素六角網平面が複数の層を形成するように重なった層構造を有し、平均粒径が5μm以上20μm以下鱗片状黒鉛または針状黒鉛である黒鉛粒子;
    平均粒径が2μm以下の微小炭素材料;および、
    前記黒鉛粒子と前記微小炭素材料とを結着させるバインダ;
    が混ぜられており、
    前記負極合剤に含まれる前記黒鉛粒子と前記微小炭素材料のうち、前記微小炭素材料の重量割合が5重量%以上20重量%以下である、
    二次電池の製造方法。
  8. 前記微小炭素材料は、繊維径が1μm以下の炭素繊維である、請求項に記載された二次電池の製造方法。
  9. 前記炭素繊維は、気相成長炭素繊維である、請求項に記載された二次電池の製造方法。
  10. 前記微小炭素材料は、平均粒径が1μm以下の黒鉛粉末である、請求項に記載された二次電池の製造方法。
  11. 前記圧延工程は、前記乾燥工程で乾燥させた前記負極合剤の密度が1.5g/cm以上になるように、前記乾燥工程で乾燥させた前記負極合剤を圧延する、請求項7から10までの何れか一項に記載された二次電池の製造方法。
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