JP2012172549A - 燃料噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 現実の圧力変動に対して高い精度で追従して高圧ポンプを制御する。
【解決手段】 コモンレール内の圧力を目標圧力とするための必要燃料流量を決定し、この決定された必要燃料流量づいて高圧ポンプの作動を制御する。これにより、現実に圧力変動が発生していなくても、必要燃料流量に基づいて高圧ポンプの作動が制御されることとなる。このため、必要燃料流量と実流量との差分に基づいてF/B流量が決定されるので、コモンレール4内の圧を目標圧力Tpとするために、実質的に必要燃料流量が学習補正された後に、高圧ポンプの作動が制御されることとなる。現実の圧力変動に対して高い精度で追従して高圧ポンプを制御することができる。
【選択図】 図4

Description

本発明は、コモンレール(畜圧)方式の燃料噴射装置に関するものであり、特に、車両用の内燃機関に適用して有効である。
コモンレール方式の燃料噴射装置(以下、燃料噴射装置と略す。)とは、主にディーゼル式内燃機関に用いられる燃料供給装置である。具体的には、この燃料噴射装置は、燃料タンクに蓄えられた燃料を加圧供給する高圧ポンプ、高圧ポンプから供給された高圧燃料を畜圧するコモンレール、及びコモンレール内に畜圧された高圧燃料を内燃機関(以下、エンジンという。)に噴射供給するインジェクタ(噴射弁)を有して構成されている。
そして、車両用の燃料噴射装置では、コモンレール内の燃料圧力が目標圧力となるように、目標圧力とコモンレール内の実圧力との圧力偏差に基づいて、高圧ポンプの吐出流量がPID制御法等にてフィードバック制御される(例えば、特許文献1参照)。因みに、目標圧力とは、通常、エンジンの負荷や回転数等のエンジンの運転状態に基づいて決定され、コモンレール内の実圧力は圧力センサにて検出される。
特開2010−190147号公報
しかし、特許文献1に記載の発明は、目標圧力と実圧力との圧力偏差が発生した後、その偏差を解消するように高圧ポンプが制御されるので、実圧力が目標圧力となるように精度よく追従して高圧ポンプを制御することが難しい。このため、特に、エンジンの運転状態が変化することによって、目標圧力が変化した場合には、新たに設定された目標圧力に対して実圧力がオーバシュート又はハンチングしてしまう可能性が高い。
本発明は、上記点に鑑み、実圧力が目標圧力に対して高い精度で追従するよう高圧ポンプを制御することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、燃料を内燃機関(8)に供給する燃料噴射装置であって、燃料タンク(9)に蓄えられた燃料を加圧供給する高圧ポンプ(3)と、高圧ポンプ(3)から供給された高圧燃料を畜圧するコモンレール(4)と、コモンレール(4)内に畜圧された高圧燃料を内燃機関(8)に噴射供給するインジェクタ(6)と、コモンレール(4)内の圧力を検出する圧力センサ(10)と、コモンレール(4)内の圧力を、内燃機関(8)の運転状態に基づいて決定される目標圧力(Tp)とするために必要な燃料の流量を決定する必要流量決定手段(7)と、高圧ポンプ(3)からコモンレール(4)に現実に供給された燃料の流量の検出する実流量検出手段(7)と、必要流量決定手段(7)により決定された必要燃料流量(Qn)と実流量検出手段(7)により検出された実流量(Qr)との差分に基づいて、コモンレール(4)内の圧力を目標圧力(Tp)とするためのF/B流量を決定するF/B流量決定手段(7)と、必要燃料流量(Qn)にF/B流量を加えた流量の燃料が高圧ポンプ(3)から吐出されるように高圧ポンプ(3)を制御するポンプ制御手段(7)とを備えることを特徴とする。
これにより、請求項1に記載の発明では、従来技術のように、目標圧力と実圧力との圧力偏差が発生した後、その偏差を解消するように高圧ポンプを制御するのではなく、コモンレール(4)内の圧力を目標圧力(Tp)とするための必要燃料流量(Qn)を決定し、この決定された必要燃料流量(Qn)に基づいて高圧ポンプ(3)の作動を制御するので、実圧力を目標圧力に精度よく追従させることが可能となる。
また、例えば、内燃機関(8)の運転状態が変化して目標圧力が変化した場合であっても、新たに設定された目標圧力(Tp)に対して実圧力がオーバシュート又はハンチングしてしまうことを抑制することができ、実圧力を更により高い精度で目標圧力に追従するよう高圧ポンプ(3)を制御することができる。
さらに、請求項1に記載の発明では、必要燃料流量(Qn)と実流量(Qr)との差分に基づいてF/B流量が決定されるので、コモンレール(4)内の圧力を目標圧力(Tp)とするために、実質的に必要燃料流量が学習補正された後に、高圧ポンプ(3)の作動が制御されることとなる。
したがって、高圧ポンプ(3)の製造バラツキ等が生じていた場合であっても、そのバラツキに応じて上記F/B流量が算出され、結果的に上記学習補正が即座に実行されるため、以降は、確実に実圧力を目標圧力に追従させることが可能となる。
なお、請求項1に記載の発明では、必要燃料流量(Qn)及びF/B流量は、正の値、0、及び負の値のいずれの値もであってもよい。また、流量とは、単位時間当たりに流れる燃料の量を意味するが、この流量は、連続的に燃料が流れる場合、及び間欠的に燃料が流れる場合のいずれであってもよく、特に、間欠的に燃料が流れる場合には、燃料が流れる時間(周期)当たりの燃料の量を流量とみなしてもよい。
請求項2に記載の発明では、必要流量決定手段(7)は、今回の噴射供給時にインジェクタ(6)から噴射供給されるべき燃料の量、その今回の噴射供給時にインジェクタ(6)で発生する燃料の漏れ量、及び目標圧力(Tp)と圧力センサ(10)により検出された圧力との差圧に基づいて必要燃料流量(Qn)を決定することを特徴とする。
なお、「今回の噴射供給時」とは、必要流量決定手段(7)が必要燃料流量を決定する時以降のタイミングをいう。つまり、内燃機関が4サイクルのレシプロエンジンの場合には、今回の圧縮行程又は吸入行程のうち所定の燃料噴射タイミングの時となる。
これにより、請求項2に記載の発明では、燃料が内燃機関(8)に噴射供給されることによりコモンレール(4)内から失われる燃料の量を予測して高圧ポンプ(3)から燃料をコモンレール(4)に供給するので、圧力偏差が発生してから高圧ポンプ(3)の制御を開始する従来制御に比べて、実圧力を目標圧力に対して高い精度で追従させて高圧ポンプ(3)を制御することができ、コモンレール(4)内の圧力を安定して目標圧力(Tp)に維持することができる。
なお、請求項3に記載の発明では、実流量検出手段(7)は、予め設定された期間に発生した高圧ポンプ(3)の吐出側圧力変化量、及び当該期間にインジェクタ(6)から噴射供給された燃料の量に基づいて実流量(Qr)を検出することを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明では、必要燃料流量が負の値となったときに、コモンレール(4)内の圧力を低下させる減圧手段(5)を備えることを特徴とする。
これにより、請求項4に記載の発明では、高圧ポンプ(3)と減圧手段(5)とが同時に駆動されることを防止できるので、高圧ポンプ(3)の無用な作動を廃止してコモンレール(4)内の圧力を速やかに目標圧力(Tp)とすることが可能となる。
請求項5に記載の発明では、ポンプ制御手段(7)は、必要燃料流量が0以上の値となったときに、高圧ポンプ(3)からコモンレール(4)に燃料を吐出供給させることを特徴とする。
これにより、請求項5に記載の発明では、減圧手段(5)の無用な作動を廃止してコモンレール(4)内の圧力を速やかに目標圧力(Tp)とすることが可能となる。
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手等に限定されるものではない。
(a)本発明の実施形態に係る燃料噴射装置のシステム図であり、(b)はECU7の入出力図である。 本発明の実施形態に係る高圧ポンプ3のプレストローク調量の説明図である。 演算開始タイミングを示すチャートである。 本発明の実施形態に係る制御の特徴を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る燃料噴射装置の特徴を示す図である。 従来方式の燃料噴射装置の問題点を示す図である。
本実施形態は、本発明に係る燃料噴射装置を、車両用4サイクルディーゼルエンジンの燃料噴射装置に適用したものであり、以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
1.燃料噴射装置の構成(図1参照)
本実施形態に係る燃料噴射装置1は、いわゆる蓄圧式(コモンレール式)の燃料噴射装置である。この燃料噴射装置1は、図1(a)に示すように、フィードポンプ2、高圧ポンプ3、コモンレール4、減圧弁5、インジェクタ6及び電子制御装置7(図1(b)参照)等から構成されているとともに、ディーゼル式内燃機関(以下、エンジンと記す。)8の各気筒に燃料を適切なタイミングで噴射・供給するための装置である。
フィードポンプ2は、燃料タンク9から燃料を吸入して高圧ポンプ3に供給するものであり、高圧ポンプ3は、エンジン8から駆動力を得てエンジン8と同期するように往復駆動されるプランジャ3A(図2参照)により燃料を吸入・加圧して吐出するものである。
すなわち、高圧ポンプ3の吸入側には、図2に示すように、加圧室3Bに吸入される燃料の量を調節する吸入弁3Cが設けられており、この吸入弁3Cの開閉タイミングは、電子制御装置7(以下、ECU7と記す。)により制御されている。一方、高圧ポンプ3の吐出(高圧)側には、加圧室3Bから燃料が流出することのみを許容し、燃料が高圧(コモンレール4)側から加圧室3Bに流入することを規制する逆止弁3Dが設けられている。
そして、吸入弁3Cを開いた状態でプランジャ3Aが上死点(トップ)から下死点(ボトム)に向かって移動する際には加圧室3Bの体積が膨張するので、これに伴ってフィードポンプ2から供給されてきた燃料が加圧室3Bに吸引される(吸入期間)。
その後、プランジャ3Aが下死点から上死点に向かって移動する際に、吸入弁3Cを開いたままに保持していると、加圧室3Bに吸引された燃料は吸入弁3Cを経由して燃料タンク9側に逆流する(プレストローク期間)。
そして、吸入弁3Cを所定時期で閉弁させるように制御すると、以降は、加圧室3B内の燃料の加圧が開始され、加圧室3B内の圧力がコモンレール4内の圧力を超えると、加圧室3B内の燃料が逆止弁3Dを経由してコモンレール4に供給される(燃料吐出期間)。
したがって、吸入弁3Cの開閉タイミングを制御することにより、高圧ポンプ3からコモンレール4に供給される燃料の量を制御することができる。つまり、吸入弁3Cを早期に閉じればコモンレール4への吐出量を多くすることができ、逆に、吸入弁3Cを遅く閉じれば吐出量を少なくすることができる。
因みに、本実施形態に係る吸入弁3Cは、アクチュエータとしてソレノイドコイルを用いた電磁方式の弁であるが、圧電素子等をアクチュエータとした弁にて吸入弁3Cを構成してもよい。
また、コモンレール4は、図1(a)に示すように、高圧ポンプ3から圧送されてきた燃料を蓄圧するとともに、燃料圧力をエンジン運転状態に応じた所定圧力に保持するための畜圧容器である。減圧弁5は、開弁することによりコモンレール4内の燃料を、燃料タンク9に連通する低圧側通路9Aに排出してコモンレール4内の燃料圧力を低下させる減圧手段である。
複数個のインジェクタ6は、互いにコモンレール4に並列的に接続され、コモンレール4に蓄圧されている燃料を各気筒内に噴射する燃料噴射弁であり、これらのインジェクタ6は、ノズルニードルに閉弁方向に燃料圧力を加える制御室の圧力を制御することにより燃料噴射量を制御する公知の電磁駆動式又はピエゾ駆動方式の弁である。
圧力センサ10はコモンレール4内の燃料圧力を検出する圧力検出手段であり、レール内燃料温度センサ11はコモンレール4内の燃料温度を検出する第1温度検出手段であり、ポンプ内燃料温度センサ12は高圧ポンプ3(加圧室3B)内の燃料温度を検出する第2温度検出手段である。
エンジン回転数センサ13はエンジン8のクランクシャフトの回転数を検出するエンジン回転数検出手段であり、これらセンサ10〜13及びアクセルペダルの開度(踏み込み量)を検出するアクセルセンサの検出信号は、図1(b)に示すように、ECU7に入力されている。
ECU7は、CPU、ROM、RAM及びフラッシュメモリ等の書換可能な不揮発性メモリ等からなる周知のマイクロコンピュータにて構成された制御手段であり、吸入弁3C減圧弁5及びインジェクタ6はECU7により制御されている。なお、後述する圧力制御等を実行するためのプログラムは、ROM等の不揮発性メモリ(以下、ROMと記す。)に記憶されている。
2.燃料噴射装置(ECU)の制御作動
2.1.圧力制御作動の概略
ECU7は、エンジン回転数やアクセルペダルの開度等に基づいて取得されたエンジン8の運転状態を示すパラメータ、及び予めROMに記憶されている制御マップ等に基づいて、インジェクタ6の開閉タイミングを制御するとともに、目標とするコモンレール4内の圧力(以下、目標圧力Tpという。)を決定し、コモンレール4内の圧力が目標圧力Tpとなるように吸入弁3C及び減圧弁5の開閉タイミングを制御する。
すなわち、ECU7は、コモンレール4内の燃料圧力を目標圧力Tpにするために必要な燃料の流量(以下、この流量を必要燃料流量Qnという。)を決定するとともに、高圧ポンプ3からコモンレール4に現実に供給された燃料の流量(以下、この流量を実流量Qrという。)を検出する。
その後、ECU7は、必要燃料流量Qnと実流量Qrとの差分に基づいて、コモンレール4内の燃料圧力を目標圧力Tpとするための流量、つまり実流量Qrを必要燃料流量Qnとするための流量(以下、この流量をF/B流量Qfという。)を決定した後、必要燃料流量QnにF/B流量Qfを加えた流量の燃料が高圧ポンプ3から吐出されるように高圧ポンプ3(吸入弁3Cの開閉タイミング)を制御する。
このとき、ECU7は、必要燃料流量Qnが0以上の値となったときには、必要燃料流量QnにF/B流量Qfを加えた流量の燃料が高圧ポンプ3から吐出されるように高圧ポンプ3(吸入弁3C)を制御し、一方、必要燃料流量Qnが負の値となったときには、吸入弁3Cを開いたままとして高圧ポンプ3からの吐出量を実質的に0とした状態で、減圧弁5を開く。
なお、本実施形態では、高圧ポンプ3(吸入弁3C)及び減圧弁5は共にPID制御されており、高圧ポンプ3(吸入弁3C)を制御する際に用いるF/B流量Qfを決定するためのゲイン、及び減圧弁5を制御する際に用いるF/B流量Qfを決定するためのゲインそれぞれは、独立して設定されている。
ところで、高圧ポンプ3のプランジャ3Aは、上述したように、エンジン8と同期して往復運動するので、プランジャ3Aは、エンジン8内で往復運動するピストン(図示せず。)と同期して往復運動する。このため、本実施形態では、図3に示すように、プランジャ3Aが上死点(トップ)に到達したタイミング毎に、必要燃料流量Qnや実流量Qr等を決定する演算処理を実行して高圧ポンプ3及び減圧弁5の作動を制御している。
したがって、ECU7は、演算処理の終了後、今回の演算開始タイミング前までに高圧ポンプ3及び減圧弁5を制御するための駆動信号を発し、今回の演算開始タイミング(プランジャ3Aが上死点に到達したタイミング)で、再び、必要燃料流量Qnや実流量Qr等を決定する演算処理を実行する。つまり、本実施形態では、高圧ポンプ3及び減圧弁5への制御指令は、プランジャ3Aが1往復する周期(期間)毎にされる。
なお、必要燃料流量Qn及び実流量Qrは、質量流量ではなく体積流量であるので、質量流量が一定であっても、燃料の温度及び圧力のうちいずれが変化しても流量(体積流量)が変化する。そこで、以下、必要燃料流量Qn及び実流量Qr等の流量とは、基準状態(例えば、燃料温度を40℃とし、燃料圧力を1気圧とした状態)に変換した流量をいう。
2.2.必要燃料流量Qnの算出
ECU7は、今回の噴射供給時にインジェクタ6から噴射供給されるべき燃料の量、その今回の噴射供給時にインジェクタ6で発生する燃料の漏れ量、及び目標圧力Tpと圧力センサ10により検出された圧力との差圧ΔPに基づいて必要燃料流量Qnを決定(演算)する。
具体的には、今回の噴射供給時に、ECU7からインジェクタ6に対して発せられた開指令信号に基づく指令噴射量を、原則として、今回の噴射供給時にインジェクタ6で噴射供給されるべき燃料の量として決定する。しかし、指令噴射量が予め設定された最小噴射量未満となるときには、当該最小噴射量を今回の噴射供給時にインジェクタ6で噴射供給されるべき燃料の量として決定する。
また、今回の噴射供給時にインジェクタ6で発生する燃料の漏れ量は、燃料噴射時間(インジェクタ開弁時間)、燃料の温度及び圧力等をパラメータとしてROMに記憶されているマップ等に基づいて決定される。
ここで、「今回の噴射供給時」とは、図3に示すように、現実に演算処理が開始された演算開始タイミングから次回の演算開始タイミングまでの期間をいう。「インジェクタ6から噴射供給されるべき燃料の量」、つまり「ECU7からインジェクタ6に対して発せられた開指令信号に基づく指令噴射量」は、エンジン8の運転状態を示すパラメータ等に基づいてECU7にて決定される。
また、目標圧力Tpとは、現実に演算処理が開始された演算開始タイミングで決定された目標圧力Tpをいい、差圧ΔPとは、現実に演算処理が開始された演算開始タイミングで検出された圧力と目標圧力Tpとの差圧をいう。
なお、本実施形態では、算出された必要燃料流量Qnが高圧ポンプ3の能力(最大吐出量)を超えるときは、高圧ポンプ3の能力を必要燃料流量Qnとして決定し、算出された必要燃料流量Qnが高圧ポンプ3の最小吐出量より小さいときは、高圧ポンプ3の最小吐出量を必要燃料流量Qnとして決定する。
因みに、高圧ポンプ3の最大吐出量及び最小吐出量は、高圧ポンプ3(加圧室3B)の寸法、高圧ポンプ3(加圧室3B)で発生する漏れ量、及びデッドボリューム等により決定される値であり、特に、漏れ量及びデットボリュームは、燃料の温度や圧力によって変化する値である。
なお、デッドボリュームとは、プランジャ3Aによって加圧室3B内の燃料がコモンレール4へ圧送された後に加圧室3B内に残存してしまう燃料の体積をいい、高圧ポンプ3(加圧室3B)で発生する漏れ量とは、プランジャ3Aによる燃料圧送時に、プランジャ3Aとプランジャ3Aを摺動保持するシリンダとの摺動隙間から低圧側のポンプ室へ僅かに流出する燃料量をいう。
2.3.実流量Qrの算出
コモンレール4に燃料が供給されるとコモンレール4内の燃料圧力は上昇し、逆に、コモンレール4から燃料が排出されると、コモンレール4内の圧力が低下することから、ECU7は、予め設定された期間に発生した高圧ポンプ3の吐出側(コモンレール4内)の圧力変化量、及び当該期間にインジェクタ6から噴射供給された燃料の量に基づいて実流量Qrを決定する。
ここで、「予め設定された期間」とは、図3に示すように、現実に演算処理が開始された演算開始タイミングから1つ前の演算開始タイミングまでの期間(以下、前回期間という。)をいう。因みに、前回期間に発生した高圧ポンプ3の吐出側圧力変化量として、本実施形態では、圧力センサ10にて検出したコモンレール4内の圧力変化量を用いている。
なお、ECU7は、原則として、前回期間にインジェクタ6に対して発せられた開指令信号に基づく指令噴射量に、前回期間にインジェクタ6で発生した燃料の漏れ量を加えた値をインジェクタ6から噴射供給された燃料の量として決定する。
なお、このインジェクタ6で発生した燃料の漏れ量とは、インジェクタ6のノズルニードルとそれを摺動保持するボデーとの摺動隙間から低圧側の空間へ僅かに流出する燃料量や、上述した圧力室から低圧側に燃料を逃がすことでノズルニードルを開弁させる際の圧力室から流出する燃料量等をいう。
しかし、指令噴射量が予め設定された最小噴射量未満となるときには、当該最小噴射量に、前回期間にインジェクタ6で発生した燃料の漏れ量を加えた値を、前回期間にインジェクタ6から噴射供給された燃料の量として決定する。因みに、インジェクタ6で発生する燃料漏れ量は、燃料噴射時間(インジェクタ開弁時間)、燃料の温度及び圧力等に応じて変化する値である。
2.3.圧力制御作動の詳細(図4参照)
図4に示すフローチャートは、圧力制御作動の詳細を示すフローチャートであり、この圧力制御は、上述したように、プランジャ3Aが上死点(トップ)に到達したタイミング毎に実行される。
そして、本制御を実行するためのプログラムが起動されると、先ず、ポンプ圧送損失(高圧ポンプ3の漏れ量及びデッドボリューム等)が算出された後(S1)、今回の噴射供給時にインジェクタ6で発生する燃料の漏れ量(燃料噴射による損失分)、及び基準状態における差圧ΔPに相当する流量(圧力偏差補正分)が算出される(S3、S5)。
次に、燃料噴射による損失分に圧力偏差補正分を加算することにより、今回(現実に演算処理が開始された演算開始タイミングから次回の演算開始タイミングまでの期間)の必要燃料流量Qnが算出された後(S7)、前回期間の実流量Qrが算出される(S9)。
そして、前回、算出された必要燃料流量Qnの値が0以上であるか否か判定され(S11)、前回の必要燃料流量Qnの値が0以上であると判定された場合には(S11:YES)、高圧ポンプ3(吸入弁3C)を制御する際に用いるF/B流量Qfが新たに算出されてF/B流量Qfが更新される(S13)。
一方、前回の必要燃料流量Qnの値が0未満であると判定された場合には(S11:NO)、減圧弁5を制御する際に用いるF/B流量Qfが新たに算出されてF/B流量Qfが更新される(S15)。
つまり、前回の必要燃料流量Qnの値が0以上であると判定された場合には(S11:YES)、高圧ポンプ3を制御する際に用いるF/B流量Qfのみが更新され、減圧弁5を制御する際に用いるF/B流量Qfは更新されず、前回の値が維持される。
一方、前回の必要燃料流量Qnの値が0未満であると判定された場合には(S11:NO)、減圧弁5を制御する際に用いるF/B流量Qfのみが更新され、高圧ポンプ3を制御する際に用いるF/B流量Qfは更新されず、前回の値が維持される。
そして、いずれかのF/B流量Qfが更新されると(S13、S15)、今回、算出された必要燃料流量Qnの値が0以上であるか否か判定され(S19)、今回の必要燃料流量Qnの値が0以上であると判定された場合には(S17:YES)、今回の必要燃料流量Qnに、高圧ポンプ3を制御する際に用いるF/B流量Qf及びS1にて算出されたポンプ圧送損失を加算した値を流量指令値として高圧ポンプ3(吸入弁3C)が駆動される(S19、S21)。
なお、このとき、上記流量指令値が高圧ポンプ3の最大吐出流量に相当する流量指令値を超える場合には、最大吐出流量に相当する流量指令値にて高圧ポンプ3(吸入弁3C)が駆動される。
一方、今回の必要燃料流量Qnの値が0未満であると判定された場合には(S17:NO)、今回の必要燃料流量Qnに、減圧弁5を制御する際に用いるF/B流量Qfを加算した値を流量指令値として減圧弁5が駆動される(S23、S25)。
なお、このとき、上記流量指令値が減圧弁5の最大排出流量に相当する流量指令値を超える場合には、最大排出流量に相当する流量指令値にて減圧弁5が駆動される。
3.本実施形態に係る燃料噴射装置の特徴
本実施形態では、従来技術のように、目標圧力Tpと圧力センサ10にて検出された実圧力Prとの圧力偏差ΔPが発生した後、その偏差ΔPを解消するように高圧ポンプ3を制御するのではない。すなわち、本実施形態では、コモンレール4内の圧力を目標圧力Tpとするための必要燃料流量Qnを決定し、この決定された必要燃料流量Qnに基づいて高圧ポンプ3の作動を制御するので、図5に示すように、常に、必要燃料流量Qnに基づいて高圧ポンプ3の作動が制御されることとなる。
上述のような必要燃料流量Qnを算出して、これに基づき高圧ポンプ3を制御すれば、目標圧力と実圧力との間に圧力偏差が生じたとしても、オーバーシュートやアンダーシュートすることなく、確実に実圧力Prを目標圧力Tpに精度よく追従制御できる。
したがって、例えば、エンジン8の運転状態が変化して目標圧力Tpが変化した場合であっても、新たに設定された目標圧力Tpに対して実圧力Prがオーバシュート又はハンチングしてしまうことを抑制することができ、目標圧力に対して高い精度で実圧力を追従させるよう、高圧ポンプ3を制御することができる。
また、本実施形態によれば、仮に、高圧ポンプ3の製造バラツキや、必要燃料流量Qnの算出プログラム(算出モデルでもよい)の誤差等によって、所望のポンプ吐出性能が得られない場合でも、必要燃料流量Qnと実流量Qrとの差分が発生するため、この差分に基づいてF/B流量Qfが決定される。
そのため、コモンレール4内の圧力を目標圧力Tpとするために、実質的に必要燃料流量が即座に学習補正され、以降は、この学習補正された必要燃料流量に基づいて高圧ポンプ3の作動が制御されることとなる。
したがって、高圧ポンプ3の製造バラツキや必要燃料流量Qnの算出プログラムの誤差等が発生しても、学習補正の完了以降は、確実に実圧力を目標圧力に追従させることが可能となる。このため、高圧ポンプ3の製造バラツキや、要燃料流量Qnの算出プログラムの誤差等が無い場合には、上記のF/B流量Qfは、ほぼ0となる。
以上に述べた本実施形態に係る燃料噴射装置に対して、差圧ΔPに基づいて、高圧ポンプ3から吐出される燃料の流量をPID制御する従来方式のフィードバック制御法では、図6に示すように、目標圧力Tpが実圧力Prより大きい状況が続くと、燃料圧力を上昇させるために徐々に積分項の値が蓄積、増大していき、結果的に、目標圧力Tpを超えてオーバシュートする。
そしてオーバーシュートした後に、次第に燃料圧力を減圧するよう積分項の値が減少側に動き、実圧力Prが目標圧力Tpに収束していくので、従来方式のフィードバック制御法では、現実の圧力変動に対して高い精度で追従して高圧ポンプ3を制御することができない。
また、本実施形態では、今回の噴射供給時にインジェクタ6から噴射供給されるべき燃料の量、その今回の噴射供給時にインジェクタ6で発生する燃料の漏れ量、及び目標圧力Tpと実圧力Prとの差圧ΔPに基づいて必要燃料流量Qnを決定するので、本実施形態に係る燃料噴射装置1は、燃料がエンジン8に噴射供給されることによりコモンレール4内から失われる燃料の量を予測して高圧ポンプ3から燃料をコモンレール4に供給することとなる。
したがって、圧力偏差が発生してから高圧ポンプ3の制御を開始する従来制御に比べて、実圧力を目標圧力に高い精度で追従するよう高圧ポンプ3を制御することができるので、コモンレール4内の圧力を安定して目標圧力Tpに維持することができる。
また、本実施形態では、必要燃料流量Qnが負の値となったときに、減圧弁5を開いてコモンレール4内の圧力を低下させるので、高圧ポンプ3と減圧弁5とが同時に駆動されることを防止でき、高圧ポンプ3の無用な作動を廃止してコモンレール4内の圧力を速やかに目標圧力Tpとすることが可能となる。
また、本実施形態では、必要燃料流量Qnが0以上の値となったときに、高圧ポンプ3からコモンレール4に燃料を吐出供給させるので、減圧弁5の無用な作動を廃止してコモンレール4内の圧力を速やかに目標圧力Tpとすることが可能となる。
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、車両用ディーゼルエンジンの燃料噴射装置に適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではない。
また、必要燃料流量Qnや実流量Qrの算出・決定手法は、上述の実施形態に示された手法に限定されるものではない。
また、上述の実施形態では、コモンレール4内の圧力を急速低下させるための減圧弁5を備えるものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、減圧弁5に代えて、過剰圧力上昇を抑制するリリーフ弁(JIS B 0125 番号14−1等参照)を備える燃料噴射装置にも適用できる。
また、上述の実施形態では、プレストローク調量方式の高圧ポンプ3であったが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、上述の実施形態は、本発明に係る燃料噴射装置を、車両用4サイクルディーゼルエンジンの燃料噴射装置に適用したが、本発明の適用はこれに限定されものではない。
また、上述の実施形態では、「予め設定された期間」として、現実に演算処理が開始された演算開始タイミングから1つ前の演算開始タイミングまでの期間を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
1…燃料噴射装置、2…フィードポンプ、3…高圧ポンプ、3A…プランジャ、
3B…加圧室、3C…吸入弁、3D…逆止弁、4…コモンレール、5…減圧弁、
6…インジェクタ、7…電子制御装置(ECU)、8…エンジン、9…燃料タンク、
9A…低圧側通路、10…圧力センサ、11…レール内燃料温度センサ、
12…ポンプ内燃料温度センサ、13…エンジン回転数センサ。

Claims (5)

  1. 燃料を内燃機関に供給する燃料噴射装置であって、
    燃料タンクに蓄えられた燃料を加圧供給する高圧ポンプと、
    前記高圧ポンプから供給された高圧燃料を畜圧するコモンレールと、
    前記コモンレール内に畜圧された高圧燃料を前記内燃機関に噴射供給するインジェクタと、
    前記コモンレール内の圧力を検出する圧力センサと、
    前記コモンレール内の圧力を、前記内燃機関の運転状態に基づいて決定される目標圧力とするために必要な燃料の流量を決定する必要流量決定手段と、
    前記高圧ポンプから前記コモンレールに現実に供給された燃料の流量の検出する実流量検出手段と、
    前記必要流量決定手段により決定された必要燃料流量と前記実流量検出手段により検出された実流量との差分に基づいて、前記コモンレール内の圧力を前記目標圧力とするためのF/B流量を決定するF/B流量決定手段と、
    前記必要燃料流量に前記F/B流量を加えた流量の燃料が前記高圧ポンプから吐出されるように前記高圧ポンプを制御するポンプ制御手段と
    を備えることを特徴とする燃料噴射装置。
  2. 前記必要流量決定手段は、今回の噴射供給時に前記インジェクタから噴射供給されるべき燃料の量、その今回の噴射供給時に前記インジェクタで発生する燃料の漏れ量、及び前記目標圧力と前記圧力センサにより検出された圧力との差圧に基づいて前記必要燃料流量を決定することを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射装置。
  3. 前記実流量検出手段は、予め設定された期間に発生した前記高圧ポンプの吐出側圧力変化量、及び当該期間に前記インジェクタから噴射供給された燃料の量に基づいて前記実流量を検出することを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射装置。
  4. 前記必要燃料流量が負の値となったときに、前記コモンレール内の圧力を低下させる減圧手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の燃料噴射装置。
  5. 前記ポンプ制御手段は、前記必要燃料流量が0以上の値となったときに、前記高圧ポンプから前記コモンレールに燃料を吐出供給させることを特徴とする請求項4に記載の燃料噴射装置。
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