JP2007205286A - 燃料噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 筒外で測定したインジェクタの噴射率に基づく「インジェクタ個別データ」に「筒内圧Pcyl」を加味してバラツキ補正値を求め、このバラツキ補正値に基づいて目標噴射量およびインジェクタの指令信号の発生時期を補正する。これにより、筒内において略設計中央値に一致する正確な噴射特性を得ることができ、高精度の噴射制御を実施できる。特に、非常に高い精度が要求されるマルチ噴射に適用することで、エンジン振動およびエンジン騒音の防止、排気ガスの浄化、エンジン出力と燃費を高い次元で両立させることができる。
【選択図】 図1
Description
インジェクタは、出荷時にエンジンの筒外において測定したインジェクタの噴射率に基づく「インジェクタ個別データ」をコード表に記憶させ、そのコード表をインジェクタに添付している。
具体的には、出荷時にエンジンの筒外において「噴射開始遅れTd」、「噴射終了遅れTe」および「数点の噴射量Q」を計測し、設計中央値からのバラツキを通電時間等に換算してQRコード等のコード表に記憶させ、そのコード表をインジェクタに添付している。
制御装置は、記憶した「インジェクタ個別データ」に基づいてインジェクタのバラツキ補正を行う補正手段を備える。
この補正手段は、エンジンの運転状態に応じた制御パラメータを「インジェクタ個別データ」に基づいて補正して、インジェクタの噴射特性を略設計中央値(具体的には、設計中央値の±適正バラツキ範囲内)に補正するものである(例えば、特許文献1参照)。
近年、エンジン振動およびエンジン騒音の防止、排気ガスの浄化、エンジン出力と燃費を高い次元で両立させる目的で、高精度な噴射制御が求められている。特に、1サイクル中に複数回の燃料噴射を実施するマルチ噴射においては、非常に高精度な噴射制御が求められている。
そこで、上記のバラツキ補正を実施して、インジェクタの噴射バラツキを補正しているが、エンジンに実装した状態において略設計中央値に一致する正確な噴射特性を得ることができなかった。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、インジェクタのバラツキデータを筒外において測定するものであっても、筒内において略設計中央値に一致する正確な噴射特性が得られる燃料噴射装置の提供にある。
請求項1の手段を採用する燃料噴射装置の補正手段は、筒外の測定により得られた「インジェクタ個別データ」に「筒内圧Pcyl」を加味して筒内バラツキ補正値を求めるため、筒内において略設計中央値に一致する正確な噴射特性を得ることができる。
即ち、インジェクタのバラツキデータを筒外において測定しても、筒内において略設計中央値に一致する正確な噴射特性を得ることができ、高精度の噴射制御を実施できる。
・噴射開始の指令を行ってから(駆動電流のON)、実際にインジェクタが噴射を開始するまでの「噴射開始遅れTd」、
・噴射終了の指令を行ってから(駆動電流のOFF)、実際にインジェクタが噴射を終了するまでの「噴射終了遅れTe」、
・噴射開始指令を行ってから、あるいは噴射開始してからの所定時期(1つまたは複数時期)における「噴射量Q」、
・噴射中の「最大噴射率Qd」、
・噴射中の「噴射率波形」など、「噴射率」を計測することで得られる数値である。
そして、「インジェクタ個別データ」は、「噴射率」に関わる数値から直接、あるいは間接的に導き出されるデータである。
請求項2の手段を採用する燃料噴射装置のインジェクタは、燃料供給圧Pcが流入通路を介して与えられるとともに、排出通路を介して排圧される制御室、排出通路の連通を開閉する電動弁を備え、制御室の制御室圧を制御することにより、ニードルを駆動制御する2ウェイバルブ型インジェクタである。
このため、2ウェイバルブ型インジェクタのバラツキデータを筒外において測定しても、筒内において略設計中央値に一致する高精度な噴射制御を実施できる。
請求項3の手段を採用する燃料噴射装置は、筒内圧設定手段により求められた筒内圧Pcylと、インジェクタ個別データとに基づいて、筒内においてニードルがリフトを開始する制御室の圧力である筒内開弁圧Popn(1)を算出する開弁圧算出手段を備える。そして、補正手段は、筒内開弁圧Popn(1)を加味して筒内バラツキ補正値を求める。
このように、筒内圧Pcylに応じて変化する筒内開弁圧Popn(1)を加味して筒内バラツキ補正値を求めるため、筒内において略設計中央値に一致する高精度な噴射制御を実施できる。
請求項4の手段を採用する燃料噴射装置の補正手段は、筒内開弁圧Popn(1)を加味して目標噴射量Qのバラツキ補正値を求める。
このように、筒内圧Pcylに応じて変化する筒内開弁圧Popn(1)を加味して目標噴射量Qを求めるため、筒内において正確な目標噴射量を得ることができる。
請求項5の手段を採用する燃料噴射装置は、1サイクル中に燃料噴射を複数回に分けて行うマルチ噴射を実行するものである。
上述したように、本発明はインジェクタのバラツキを補正して、筒内において略設計中央値に一致する非常に高精度な噴射制御が実施できる。このため、マルチ噴射に適用することにより、非常に高精度なマルチ噴射制御を実施でき、エンジン振動およびエンジン騒音の防止、排気ガスの浄化、エンジン出力と燃費を高い次元で両立させることができる。
請求項6の手段を採用する燃料噴射装置は、インジェクタへの燃料供給圧Pcに生じる脈動を加味して筒内開弁圧Popn(1)を求めるものである。
このように、筒内開弁圧Popn(1)に脈動が加味されるため、マルチ噴射に伴う脈動の影響を補正することができ、筒内において略設計中央値に一致する非常に高精度なマルチ噴射制御を実施できる。
この燃料噴射装置は、内燃機関の筒内圧Pcylを検出あるいは推定あるいは所定の値に設定する筒内圧設定手段を備える。
そして、補正手段は、インジェクタ個別データに、筒内圧Pcylを加味して筒内バラツキ補正値を求めるものである。
(実施例1の構成)
コモンレール式燃料噴射装置の構成を図2を参照して説明する。
コモンレール式燃料噴射装置は、例えばディーゼルエンジン(以下、エンジン:図示しない)に燃料噴射を行うシステムであり、コモンレール1、インジェクタ2、サプライポンプ3、制御装置4等によって構成される。なお、制御装置4は、ECU(エンジン制御ユニット)4aとEDU(駆動ユニット)4bで構成されるものであり、EDU4bはECU4aのケース内に内蔵されるものであっても良い。
エンジンは、吸入・圧縮・爆発・排気の各工程を連続して行う気筒を複数備えたものであり、図2では一例として4気筒エンジンを想定してインジェクタ2が4つの例を示すが、他の気筒数のエンジンに対応させても良い。
インジェクタ2からのリーク燃料は、燃料還流路(リーク配管)7を経て燃料タンク8に戻される。また、コモンレール1から燃料タンク8への燃料還流路(リリーフ配管)7には、プレッシャリミッタ9が取り付けられている。このプレッシャリミッタ9には、コモンレール1内の燃料圧が限界設定圧を超えた際に開弁して、コモンレール1の燃料圧を限界設定圧以下に抑える圧力安全弁の機能と、ECU4aの指示によってコモンレール圧Pcを急速に減圧する減圧弁の機能とが設けられている。
また、サプライポンプ3には、高圧ポンプに吸引される燃料の量を調整する吸入調量弁(SCV)が搭載されており、この吸入調量弁がECU4aによって調整されることにより、コモンレール圧Pcが調整されるようになっている。
EDU4bは、ECU4aから与えられる制御信号に応じて、インジェクタ2およびプレッシャリミッタ9に駆動電流を与える駆動回路である。
なお、ECU4aには、コモンレール圧Pcを検出するコモンレール圧センサ21の他に、アクセル開度を検出するアクセルセンサ、エンジン回転数を検出する回転数センサ、エンジンの冷却水温度を検出する水温センサなど、種々のセンサが接続されている。
次に、インジェクタ2の基本構造を図3、図4を参照して説明する。
インジェクタ2は、コモンレール1から供給される高圧燃料をエンジンの気筒内に噴射するものであり、コモンレール圧Pcが流入通路31(インオリフィスが配置された燃料通路)を介して与えられるとともに、排出通路32(アウトオリフィスが配置された燃料通路)を介して排圧される制御室33を具備し、排出通路32を電磁弁34(電動弁の一例)によって開閉して、制御室圧力(制御室33内の圧力)Pccが開弁圧Popnに低下するとニードル35が上昇して燃料を噴射するノズル36を有する2ウェイバルブ型インジェクタである。
プレッシャピン44は、コマンドピストン38とニードル35との間に介在され、プレッシャピン44の周囲には、ニードル35を下方(閉弁方向)へ付勢するスプリング45が配置されている。
流入通路31は、高圧燃料通路42から供給される高圧燃料を減圧する入口側の燃料絞りであり、高圧燃料通路42と制御室33は流入通路31を介して連通する。
排出通路32は、制御室33の上側に形成され、制御室33から排圧燃料通路43(低圧側)に排出される燃料を絞る出口側の燃料絞りであり、制御室33と排圧燃料通路43は排出通路32を介して連通する。
例えば、バルブ47は排出通路32を開閉するボール弁47a(符号、図4参照)を備えるものであり、ソレノイド46がOFFの状態では、リターンスプリング48の付勢力によってバルブ47が下方に押し付けられ、ボール弁47aが排出通路32を塞ぐ。ソレノイド46がONの状態では、リターンスプリング48の付勢力に抗してバルブ47が上方に移動し、ボール弁47aが着座面から上方へリフトして排出通路32が開かれる。
つまり、円錐弁35dが弁座53に着座する際は、円錐弁35dの着座シート55が弁座53に当接してノズル室52と噴孔54との連通を遮断するものである。
次に、インジェクタ2の基本動作を、図5、図6を参照して説明する。
(1)インジェクタ2の停止中は、電磁弁34の通電が停止されて、バルブ47が排出通路32を閉じて、制御室33の圧力が高圧に保たれる。これにより、ニードル35が弁座53に押し付けられて、ノズル室52と噴孔54が遮断された状態となっており、噴孔54から燃料の噴射は行われない。
(2)ECU4aの噴射開始の指示(噴射指令ON)により、EDU4bから電磁弁34に駆動電流が与えられると、ソレノイド46がバルブ47を磁気吸引する。バルブ47がリフトアップを開始すると、排出通路32が開いて、流入通路31で減圧された制御室33の圧力が低下を開始する。
ニードル35の上昇に従い、噴射率が上昇する。噴射中に噴射率が最大噴射率に到達する場合は、それ以上噴射率は上昇せず、噴射波形は台形形状となる。
ここで、インジェクタ2は、最大噴射率に到達後もニードル35が上昇を続けるフライングニードルタイプである。
次に、ECU4aによる燃料噴射制御について説明する。
この実施例1では、エンジンの運転状態に応じて、1サイクル中に複数回の燃料噴射(マルチ噴射)を実施し、エンジン振動およびエンジン騒音の防止、排気ガスの浄化、エンジン出力と燃費を高い次元で両立させるものであり、ECU4aは、燃料の各噴射毎に、ROMに記憶されたプログラム(マップ等)と、RAMに読み込まれたエンジンパラメータとに基づいて、現運転状態に応じた目標噴射タイミングと目標噴射量を求め、その目標噴射タイミングでインジェクタ2から燃料噴射を開始させるとともに、インジェクタ2から目標噴射量を噴射させるようにインジェクタ2の指令信号の発生時期(インジェクタ駆動電流のON/OFF時期)を算出するように設けられている。
燃料噴射装置に搭載される各インジェクタ2には、QRコード等のコード表によって「インジェクタ個別データ」が添付されている。
この「インジェクタ個別データ」は、出荷時にエンジンの筒外において測定したインジェクタ2の噴射率に基づく「インジェクタ・バラツキ・データ」である。
ECU4aは、車両搭載時に各インジェクタ2に添付されたコード表から各インジェクタ2の「インジェクタ個別データ」を読み込み、記憶装置に記憶する。
この補正手段は、エンジンの運転状態に応じた燃料噴射のための制御パラメータを「インジェクタ個別データ」に基づいて補正して、インジェクタ2の噴射特性を略設計中央値に補正する。
そこで、ECU4aは、各インジェクタ2から略設計中央値に一致する正確な噴射特性が得られるように、各インジェクタ2の噴射バラツキを補正している。
しかし、エンジンに実装した状態においては、略設計中央値に一致する正確な噴射特性を得ることができない場合があった。
具体的に従来の技術は、筒外で得た「インジェクタ個別データ」に基づいて噴射補正を行い、筒外において噴射特性が略設計中央値となるように補正するものであった。
これによって、図8に示すように、開弁圧Popnが、筒外値Popn(0)→筒内値Popn(1)に上昇する。この結果、ニードル35のリフト開始時期が早まり、その結果、噴射開始遅れTdが筒外値Td(0)から筒内値Td(1)に短くなる。また、ニードル35の着座時期が遅れることになり、噴射終了遅れTeが筒外値Te(0)から筒内値Te(1)に長くなる。
即ち、筒内圧Pcylの影響により、噴射開始時期が早くなるとともに、噴射終了時期が遅くなる現象が生じる。
次に、図9を参照して、筒外と筒内において、バラツキ補正値が不適切(過補正)になる例を説明する。
例えば、3つのインジェクタ2の噴射開始遅れTdのバラツキが、個体A、B、Cであったとする。なお、各インジェクタ2は、無調整であったとしても、バラツキの範囲が「無調整時バラツキ幅」内に納まるように設けられている。
しかし、筒内では、筒内圧Pcylの影響により、バラツキが縮小する傾向になるため、図9の二点鎖線右側に示すように、筒内において補正量A’、B’、C’の補正量を加えると、個体B、Cのように過補正になる場合が存在し、噴射精度の悪化を招いていた。
そこで、実施例1のECU4aは、インジェクタ2の個体バラツキに関係なく、筒内圧Pcylの影響によって変化してしまう噴射率と噴射開始時期と噴射終了時期の補正を行う第1補正機能と、インジェクタ2の個体バラツキを要因として筒内圧Pcylの影響によって変化してしまう噴射率と噴射開始時期と噴射終了時期の補正を行う第2補正機能とを同時に果たす筒内圧補正手段を備える。
この筒内圧補正手段は、上述した、補正手段(プログラム)の一部であり、「インジェクタ個別データ」に「筒内圧Pcyl」を加味して筒内外で変化する噴射特性のバラツキを適正値に補正するものである。
なお、ECU4aは、少なくても筒内圧補正手段のために、筒内圧Pcylを検出あるいは推定あるいは所定の値に設定する筒内圧設定手段を備えている。
先ず、インジェクタ2の個体バラツキと、筒内圧Pcylとの関係により、噴射特性が変化する要因を推定する。
(推定要因1)
開弁圧Popnの上昇による噴射開始遅れTdの感度の低下の要因を推定する。
上述したように、筒内では、ニードル35が筒内圧Pcylのアシストを受けるため、開弁圧Popnの絶対値が上昇し、噴射開始遅れTdのバラツキ感度が縮小する。
具体的には、図10に示すように、開弁圧Popnの上昇幅ΔPが同じなら、開弁圧Popnが高い方の噴射開始遅れTdの変化差ΔT1が、開弁圧Popnが低い方の噴射開始遅れTdの変化差ΔT2より小さくなる。
シート径Dnsのバラツキの影響による噴射開始遅れTdの変化を推定する。
筒外では、シート径Dnsが大きいと、単に開弁圧Popnが小さくなり、それに従い噴射開始遅れTdが大きくなり、噴射量Qが小さくなる。
しかし、筒内では、図11(a)に示すようにシート径Dnsが小さいと筒内圧Pcylによるニードル35のアシスト量が小さくなり、逆に、図11(b)に示すようにシート径Dnsが大きいと筒内圧Pcylによるニードル35のアシスト量が大きくなる。
噴射流量Q’0、噴射流量バラツキΔQ’0、噴射率Q’噴射率バラツキΔQ’とした場合における、噴射流量バラツキΔQ’0による噴射率Q’の変化を推定する。
筒外は、図12(a)に示すように、噴射空間は大気圧(Pnzl=0)であるため、ノズル36に供給される燃料圧Pnzlと大気圧の差圧が大きい。
しかし、筒内では、図12(b)に示すように、噴射空間は筒内圧Pcylであるため、ノズル36に供給される燃料圧Pnzlと筒内圧Pcylの差圧が筒外より小さくなる。
Q’=Q’0×√(Pnzl−Pcyl)
であるから、
Q’+ΔQ’=(Q’0+ΔQ’0)×√(Pnzl−Pcyl)
ΔQ’=ΔQ’0×√(Pnzl−Pcyl)
となり、噴射流量バラツキΔQ’0に対する噴射率バラツキΔQ’の感度は、筒外の方が大きい。なお、数式中の√は、括弧内にかかるものである。
具体的には、個体A、Bの噴射流量Q’0のバラツキは、図13に示すように、筒外よりも筒内の方が小さくなる。即ち、筒内では、個体A、B共に噴射率Q’が減少するが、その差が縮まる。なお、燃料温度等により噴射流量Q’0自体が筒外と筒内で変化する場合も、個体差感度が小さくなる方向へ変化する。
各インジェクタ2には、上述したように、QRコード等のコード表によって「インジェクタ個別データ」が添付されている。
この「インジェクタ個別データ」は、出荷時にエンジンの筒外において測定したインジェクタ2の噴射率に基づく「インジェクタ・バラツキ・データ」である。
具体的に、インジェクタ2は、出荷時に、筒外にて数点、コモンレール圧Pc、インジェクタ通電期間を変え、図14(a)、(b)に示すように、インジェクタ2の各個体毎の噴射量Q、噴射開始遅れTd、噴射終了遅れTe、噴射率Qdを計測し、計測データと設計中央値との差(バラツキ度合)が求められ、そのバラツキデータがQRコード等のコード表としてインジェクタ2に添付される。
具体的には、コード表から読み込んだ噴射量Q、噴射開始遅れTd、噴射終了遅れTe、噴射率Qd等のバラツキから、シート径Dns、オリフィス流量Qor(排出通路32を介して制御室33から流出される燃料の流出量)、バルブリフトLtwv(バルブ47の着座状態から最大リフトまでのリフト量)等のバラツキを次の[数1]の如く推定し、記憶装置に記憶する。
ECU4aの筒内圧補正手段は、インジェクタ2の噴射毎に次のバラツキ補正の演算を行う。
<第1ステップ>
シート径Dnsから筒内開弁圧Popn(1)を求める(開弁圧算出手段の機能に相当する)。
筒内開弁圧Popn(1)は、次の[数2]から求める。
上記で求めた筒内開弁圧Popn(1)と、オリフィス流量Qorの関係とから、筒内噴射開始遅れTd(1)を求める。
具体的には、図15に示すマップと、筒内開弁圧Popn(1)とオリフィス流量Qorの関係から筒内噴射開始遅れTd(1)を求める。
上記<第2ステップ>で求めた筒内噴射開始遅れTd(1)の2倍を、インジェクタ噴射期間Tに加算する(図16参照)。
即ち、「インジェクタ噴射期間Tの筒内外差ΔTd」={Td(1)−Td(0)}×2として求める。
次の[数3]から、噴射率の筒内外差ΔQdを求める。なお、この式中において筒内噴射率Qd、筒外噴射率Qd0とする(図16参照)。
ECU4aにおける具体的な筒内噴射バラツキの補正の流れを、図1に示すブロック図を参照して説明する。
ステップS1において、燃料噴射毎に算出される目標噴射量を読み込む。
ステップS2において、コモンレール圧Pc、筒内圧Pcyl、シート径Dnsの読み込みを行う。なお、筒内圧Pcylは推定値でも良いし、実際に筒内圧センサによって検出した値であっても良い。
ステップS3において、上述した<第4ステップ>により、噴射量の補正値を算出する。
ステップS5において、上述した<第1ステップ>により、筒内開弁圧Popn(1)を算出する。
ステップS6において、オリフィス流量Qorのバラツキを読み込む。
ステップS7において、上述した<第2ステップ>により、筒内噴射開始遅れTd(1)を算出する。
ステップS9において、上述した<第3、第4ステップ>に基づきインジェクタ通電期間(開弁時間)の補正値を求める。
ステップS10において、上記<第2ステップ>で求めた筒内噴射開始遅れTd(1)に基づいてインジェクタ2の指令信号の発生時期(インジェクタ駆動電流のON/OFF時期)の補正値を求める。
この実施例1に示すコモンレール式燃料噴射装置は、上述したように、筒外の測定により得られた「インジェクタ個別データ」に「筒内圧Pcyl」を加味して筒内バラツキ補正値を求めて、目標噴射量およびインジェクタ2の指令信号の発生時期(インジェクタ駆動電流のON/OFF時期)を補正するため、筒内において略設計中央値に一致する正確な噴射特性を得ることができる。
即ち、インジェクタ2のバラツキデータを筒外において測定しても、筒内において略設計中央値に一致する正確な噴射特性を得ることができ、非常に高い精度の噴射制御を実施できる。
さらに、インジェクタ2に与えられるコモンレール圧Pcに生じる脈動を加味して筒内開弁圧Popn(1)を求め、その筒内開弁圧Popn(1)に基づいて「筒内圧Pcyl」を加味したバラツキ補正を行うものであるため、マルチ噴射に伴う脈動の影響を補正することができ、筒内において略設計中央値に一致する非常に高精度なマルチ噴射制御を実施できる。
上記の実施例では、マルチ噴射を行う例を説明したが、本発明はマルチ噴射に限定されるものではなく、例えば1サイクル中に1回の噴射を実施する単噴射時であっても適用可能なものである。
また、マルチ噴射に適用する場合、1サイクル中に噴射される噴射量をほぼ均等に複数回に分割して噴射する均等マルチ噴射に適用しても良いし、1サイクル中の噴射を微少噴射とメイン噴射に分け、メイン噴射の前に1回の微少噴射、あるいは複数回の微少噴射を行うマルチ噴射に本発明を適用しても良いし、メイン噴射の後に1回の微少噴射、あるいは複数回の微少噴射を行うマルチ噴射に本発明を適用しても良いし、メイン噴射の前後に1回の微少噴射、あるいは複数回の微少噴射を行うマルチ噴射に本発明を適用しても良い。
上記の実施例では、本発明をコモンレール式燃料噴射装置に適用した例を示したが、コモンレールを用いない燃料噴射装置に本発明を適用しても良い。つまり、ディーゼルエンジン以外の例えばガソリンエンジン等に用いられる燃料噴射装置に本発明を適用しても良い。
4a ECU(筒内圧設定手段、補正手段、開弁圧算出手段)
31 流入通路
32 排出通路
33 制御室
34 電磁弁(電動弁)
35 ニードル
Claims (6)
- 内燃機関の筒外で測定したインジェクタの噴射率に基づくインジェクタ個別データを用いて、前記インジェクタのバラツキ補正を行う補正手段を備えた燃料噴射装置において、 この燃料噴射装置は、前記内燃機関の筒内圧Pcylを検出あるいは推定あるいは所定の値に設定する筒内圧設定手段を備え、
前記補正手段は、前記インジェクタ個別データに、前記筒内圧Pcylを加味して筒内バラツキ補正値を求めることを特徴とする燃料噴射装置。 - 請求項1に記載の燃料噴射装置において、
前記インジェクタは、燃料供給圧Pcが流入通路を介して与えられるとともに、排出通路を介して排圧される制御室、前記排出通路の連通を開閉する電動弁を備え、前記制御室の制御室圧を制御することにより、ニードルを駆動制御する2ウェイバルブ型インジェクタであることを特徴とする燃料噴射装置。 - 請求項2に記載の燃料噴射装置において、
この燃料噴射装置は、
前記筒内圧設定手段により求められた筒内圧Pcylと、前記インジェクタ個別データとに基づいて、筒内において前記ニードルがリフトを開始する前記制御室の圧力である筒内開弁圧Popn(1)を算出する開弁圧算出手段を備え、
前記補正手段は、前記筒内開弁圧Popn(1)を加味して前記筒内バラツキ補正値を求めることを特徴とする燃料噴射装置。 - 請求項3に記載の燃料噴射装置において、
前記補正手段は、前記筒内開弁圧Popn(1)を加味して目標噴射量Qのバラツキ補正値を求めることを特徴とする燃料噴射装置。 - 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の燃料噴射装置において、
この燃料噴射装置は、1サイクル中に燃料噴射を複数回に分けて行うマルチ噴射を実行することを特徴とする燃料噴射装置。 - 請求項3に記載の燃料噴射装置において、
この燃料噴射装置は、1サイクル中に燃料噴射を複数回に分けて行うマルチ噴射を実行するものであり、
前記開弁圧算出手段は、前記インジェクタへの燃料供給圧Pcに生じる脈動を加味して前記筒内開弁圧Popn(1)を求めることを特徴とする燃料噴射装置。
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