JP2014148952A - 燃料噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】QRコード(登録商標)によるインジェクタ3の個体差補正を実施できなくても、コモンレールに設けた圧力センサを用いてインジェクタの個体差補正を実施する。
【解決手段】制御装置4は、噴射時の減圧量ΔPから実噴射量Qを求めて、複数の実噴射量Qと目標噴射量Qtrgの「バラツキ量の比」の傾きによる個体差指標%Qを求め、この個体差指標%Qを学習値としてインジェクタ3の個体差補正を行う。「バラツキ量の比」の傾きによる個体差指標%Qを用いることで、ショット間バラツキを除去してインジェクタ3の個体差補正を実施できる。ある圧力条件下で得た個体差指針%Qは、目標噴射量Qtrgやコモンレール1の目標圧力が異なっても普遍的に同一の値として使用することができるため、製造工場等において最小1回の学習により個体差指針%Qが得られれば、全運転領域においてインジェクタ3の機差補正を実施できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、コモンレールに蓄圧された高圧燃料をインジェクタから噴射する燃料噴射装置に関する。
現在、インジェクタの個体差(機差)が製造工場(製造元)において所定規格内に押さえ込まれるとともに、個体差情報をQRコード(登録商標)としてインジェクタに刻印し、エンジン組付時に記憶コードを読み込んで制御装置(ECU等)に書き込むことで、インジェクタの個体差補正を実施している。
しかし、新興国には、記憶コードの読み込み、および制御装置への書き込みのツールが普及しておらず、QRコード(登録商標)によるインジェクタの個体差補正を実施できない地域が存在する。
そのような場合には、インジェクタの個体差精度をさらに高める必要があり、部品規格を厳しくしたり、組み直しを実施することで対応しているが、コストアップの要因になってしまう。
また、インジェクタの個体差補正ができない場合は、エンジンの各気筒ごとに出力差が生じるため、トルク変動が大きくなってしまい、燃費の悪化や、エンジン振動および騒音が大きくなるなどの問題が生じてしまう。
さらに、新興国では劣悪な燃料が使用される懸念があり、インジェクタの劣化が予想できずに進行する可能性がある。このため、インジェクタの個体差を新品時に補正できたとしても、劣化によって個体差が生じてしまい、上述した問題が生じてしまう。また、市販後に市場でインジェクタが交換される場合や、不法改造される場合でも同様の問題が生じてしまう。
上記の問題点を解決するべく、インジェクタの噴射時の「レール圧変化(コモンレールにおける燃料圧力の変化)」をコモンレールに設けた圧力センサで検出し、(i)目標値と比較する、(ii)気筒毎で比較する、(iii)基準特性と比較することで、インジェクタの個体差補正を行う技術が考えられる。
しかし、インジェクタは、個体差だけでなく、噴射毎にバラツキ(以下、ショット間バラツキと称す)がある。このため、「レール圧変化に基づく検出量」が安定せず、個体差補正を実用化するのが困難になっている。
一方、上述したQRコード(登録商標)を用いた個体差補正では、複数の特性領域毎に補正値を持つ。このため、エンジン組み上げ後の最初のエンジン始動時から正確な噴射量制御が実施される。
しかし、QRコード(登録商標)による個体差補正を実施できず、インジェクタの噴射時の「レール圧変化」で個体差補正を行う場合は、エンジンの組付ライン上で実際にエンジンを始動させて学習補正を行う必要があり、アイドリング程度のエンジン負荷の低い条件(コモンレールの目標圧力の低い条件)でしか工場学習を実施できない。
このため、アイドリング等のエンジン負荷の低い運転領域とは異なる他の運転領域においてインジェクタの機差補正ができない。即ち、例えば、エンジン負荷が大きい特性領域では、インジェクタの個体差補正を実施できず、エンジン性能を十分に発揮できなくなる懸念がある。
上述した理由から、従来技術では、コモンレールに設けた圧力センサを用いてインジェクタの個体差補正を実用化することができなかった。
特開2006−200378号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、コモンレールに設けた圧力センサを用いてインジェクタの個体差補正を実用化できる燃料噴射装置の提供にある。
本発明の燃料噴射装置は、(i)圧力センサによって求めた噴射時の減圧量ΔPから実噴射量Qを求め、(ii)複数の実噴射量Qと目標噴射量Qtrgの「バラツキ量の比」の傾きによる個体差指標%Qを求め、(iii)この個体差指標%Qを学習値としてインジェクタの個体差補正を行う。
「バラツキ量の比」の傾きによる個体差指標%Qを「個体差バラツキの指標」として用いることで、ショット間バラツキを除去してインジェクタの個体差補正を実施できる。また、エンジン負荷の低い条件(コモンレールの目標圧力の低い条件)での工場学習で得た個体差指標%Q(学習値)を、インジェクタの特性全域に反映して補正することができる。このように、コモンレールに設けた圧力センサを用いてインジェクタの個体差補正を実用化することができる。
燃料噴射装置の概略図である。 インジェクタの概略図である。 噴射時のレール圧の挙動を示す圧力波形である。 目標噴射量と機差噴射量の関係を示すグラフである。 通電期間と噴射量との関係を示すグラフである。 制御例を示すフローチャートである。
以下において[発明を実施するための形態]を詳細に説明する。
以下の実施例は具体的な一例を示すものであって、本発明が実施例に限定されないことはいうまでもない。
[実施例1]
図1〜図6を参照して燃料噴射装置を説明する。
燃料噴射装置は、例えばディーゼルエンジン(以下、エンジンα)に燃料噴射を行うシステムであり、図1に示すように、コモンレール1(燃料蓄圧容器の一例)、サプライポンプ2、インジェクタ3、制御装置(ECU+EDU等)4を用いて構成される。
コモンレール1は、サプライポンプ2から高圧に加圧された加圧燃料の供給を受けて、高圧燃料を蓄圧する容器であり、蓄圧した高圧燃料はインジェクタ3に供給される。
サプライポンプ2は、フィードポンプ(低圧ポンプ)によって燃料タンク5から吸い上げた燃料を高圧に圧縮してコモンレール1へ圧送する高圧ポンプを備える。
なお、サプライポンプ2には、高圧ポンプによる燃料の圧送量を調整する調量弁2aが搭載されており、この調量弁2aと、コモンレール1に搭載される減圧弁1aとが制御装置4によって調整されることで、コモンレール1の燃料圧力が目標圧力に調整される。
インジェクタ3は、エンジンαの各気筒毎に搭載されて燃料を各気筒内に噴射供給するものであり、制御装置4によって通電が開始されるとコモンレール1に蓄圧された高圧燃料の噴射を行い、通電が停止されると噴射停止を行うものである。
インジェクタ3の形式は問うものではないが、理解補助の目的として2ウェイインジェクタを用いて以下の実施例を説明する。
このインジェクタ3は、所謂電磁式燃料噴射弁であり、
(i)背圧室i1(制御油室)に与えられる高圧の燃料圧力(閉弁油圧)によってニードルi2を閉弁させるノズルi3と、
(ii)背圧室i1を溢流させてニードルi2の閉弁油圧を低下させる電磁弁i4と、
を備える。
具体的にインジェクタ3は、コモンレール1から供給される高圧燃料をエンジンαの気筒内に噴射するものであり、背圧室i1は流入通路i5(インオリフィスが配置された燃料通路)を介してコモンレール1から供給される高圧燃料が与えられるとともに、排出通路i6(アウトオリフィスが配置された燃料通路)に連通する。そして、排出通路i6を電磁弁i4が開閉して、背圧室i1の圧力が開弁圧力に低下するとニードルi2が上昇して燃料を噴射するノズルi3を有する。
インジェクタ3のハウジング(例えば、ノズルホルダ)には、コマンドピストンi7を上下方向(ニードルi2の開閉弁方向)に摺動自在に支持するシリンダi8、コモンレール1から供給された高圧燃料をノズルi3側および流入通路i5側へ導く高圧燃料通路i9、および高圧燃料を低圧側へ排出する排圧燃料通路i10等が形成されている。
コマンドピストンi7は、シリンダi8内に挿入され、プレッシャピンを介してニードルi2に連接されている。
プレッシャピンは、コマンドピストンi7とニードルi2との間に介在され、プレッシャピンの周囲には、ニードルi2を下方(閉弁方向)へ付勢するスプリングi11が配置されている。
背圧室i1は、シリンダi8の上側(電磁弁i4側)に形成され、コマンドピストンi7の上下移動に応じて容積が変化する。
流入通路i5は、高圧燃料通路i9から供給される高圧燃料を減圧する入口側の燃料絞りであり、高圧燃料通路i9と背圧室i1は流入通路i5を介して連通する。
排出通路i6は、背圧室i1の上側に形成され、背圧室i1から排圧燃料通路i10(低圧側)に排出される燃料を絞る出口側の燃料絞りであり、背圧室i1と排圧燃料通路i10は排出通路i6を介して連通する。
電磁弁i4は、通電(ON)されると電磁力を発生するソレノイドi12と、このソレノイドi12の発生する電磁力によって上方(開弁方向)へ吸引されるバルブi13と、バルブi13を下方(閉弁方向)へ付勢するリターンスプリングi14とを備える。
例えば、バルブi13は、下端に排出通路i6を開閉するボール弁を備えるものであり、ソレノイドi12がOFFの状態では、リターンスプリングi14の付勢力によってバルブi13が下方に押し付けられて、排出通路i6を塞ぐ。
逆に、ソレノイドi12がONの状態では、リターンスプリングi14の付勢力に抗してバルブi13が上方に移動して、排出通路i6が開かれる。
インジェクタ3のハウジング(例えば、ノズルボディ)には、ニードルi2を上下方向(開閉方向)へ摺動自在に支持する摺動孔と、高圧燃料通路i9に連通してニードルi2の外周に環状に設けられたノズル室と、ニードルi2が閉弁時に着座する円錐状の弁座と、高圧燃料を噴射するための噴孔i15とが形成されている。
ニードルi2は、摺動孔に保持される摺動軸部と、この摺動軸部の下部に形成される受圧面と、この受圧面より下方へ伸びる小径軸状のシャフトと、弁座に着座および離脱して噴孔i15を開閉する円錐弁とから構成され、摺動軸部がノズル室と低圧側(プレッシャピンの周囲)との間をシールしながら軸方向へ往復動可能に設けられている。
ニードルi2の先端の円錐弁は、上側の円錐台部と下側の円錐先端部とから構成され、その境界部に着座シートが形成される。円錐台部の広がり角度は、弁座の広がり角度より小さいものであり、円錐先端部の広がり角度は、弁座の広がり角度より大きいものである。
つまり、円錐弁が弁座に着座する際は、円錐弁の着座シートが弁座に当接してノズル室と噴孔i15との連通を遮断するものである。
インジェクタ3の噴射例を説明する。
インジェクタ3に駆動電流が付与されると、電磁弁i4がバルブi13を吸引し、そのバルブi13がリフトアップを開始すると、排出通路i6が開いて、流入通路i5で減圧された背圧室i1の圧力が低下を開始する。
背圧室i1の圧力が開弁圧力以下に低下すると、ニードルi2が上昇を開始する。ニードルi2が弁座から離座すると、ノズル室と噴孔i15とが連通し、ノズル室に供給された高圧燃料が噴孔i15から噴射する。
インジェクタ3への駆動電流が停止されると、電磁弁i4がバルブi13の吸引を停止して、そのバルブi13がリフトダウンを開始する。そして、電磁弁i4のバルブi13が排出通路i6を閉じると、背圧室i1の圧力が上昇を開始する。背圧室i1の圧力が閉弁圧以上まで上昇すると、ニードルi2が下降を開始する。
ニードルi2が下降して、ニードルi2が弁座に着座すると、ノズル室と噴孔i15の連通が遮断されて、噴孔i15からの燃料噴射が停止する。
制御装置4は、周知のマイクロコンピュータを用いたものであり、制御装置4に読み込まれた種々のセンサ信号(エンジンパラメータ:乗員の運転状態、エンジンαの運転状態等に応じた信号)に基づいて各種の演算処理を行い、演算結果に基づいてコモンレール1の圧力制御やインジェクタ3の駆動制御を実施する。
制御装置4に接続されるセンサ類の一例を開示すると、制御装置4には、アクセル開度を検出するアクセルセンサ6、エンジン回転数を検出する回転数センサ7、コモンレール圧(蓄圧燃料の圧力)を検出する圧力センサ8等がある。
制御装置4は、燃料の各噴射毎に、ROMに記憶された制御プログラムと、センサ類から読み込んだ制御パラメータとに基づいて、現運転状態に応じた目標噴射開始タイミングと目標噴射量Qtrgを求め、その目標噴射開始タイミングでインジェクタ3から燃料噴射を開始させるとともに、インジェクタ3から目標噴射量Qtrgを噴射させるようにインジェクタ3の通電制御を実施する。
具体的に、制御装置4は、通電期間Tq(通電開始から通電終了までの指令パルス長)を、目標噴射量Qtrgとコモンレール圧(燃料圧力)との演算式やマップから求められる。なおこの例は、通電期間Tqを求める一例(理解補助例)であり、限定されないことは言うまでもない。
一方、インジェクタ3は、個体差(機差)を持つ。インジェクタ3の個体差は、出荷前にQRコード(登録商標)を用いた補正技術等を用いて事前に補正することが望ましい。
しかし、新興国には、QRコード(登録商標)の読み込み、および制御装置4への書き込みのツールが普及しておらず、QRコード(登録商標)によるインジェクタ3の個体差補正を実施できない地域が存在する。
また、インジェクタ3における摩耗や、劣悪燃料の使用等によるインジェクタ3内の詰まりは、ユーザーの使用中に徐々に変化する可能性がある。
即ち、インジェクタ3は、新品時の個体差や、使用中の摩耗や詰まり等により、制御装置4が算出した目標噴射量Qtrgに対して、インジェクタ3が実際に燃料を噴射する実噴射量Qがズレる可能性がある。
上記の不具合を回避する手段として、この実施例の制御装置4は、コモンレール1に設けた圧力センサ8を用いて各インジェクタ3毎の個体差補正を実施する機差補正手段(制御プログラム)を備える。
この機差補正手段を以下において説明する。
制御装置4は、圧力センサ8によって蓄圧燃料の圧力をモニターし、圧力センサ8によって検出された噴射時の減圧量ΔPから実噴射量Qを求める。
具体的に、インジェクタ3の噴射前後の圧力差を減圧量ΔPとすると(図3参照)、実噴射量Qは、次式で求められる。
Q=(V/E)・ΔP−(Qd+Qst)
ここで、Vは高圧燃料を蓄圧する容積、Eは燃料の体積弾性係数、Qdはインジェクタ3の作動に伴う動リーク量、Qstはインジェクタ3内の静リーク量である。このように、制御装置4は、リーク量(動リーク量Qdと静リーク量Qst)を考慮して実噴射量Qを求める。
なお、図3において、噴射後にコモンレール圧力が上昇するのは、サプライポンプ2から高圧燃料の供給を受けて目標圧力(目標レール圧)に昇圧されるためである。
制御装置4は、検出した実噴射量を、各噴射毎にQ1、Q2、Q3・・・Qnと記憶してゆき、その時の目標噴射量Qtrgで割って「バラツキ量の比」を求める。この「バラツキ量の比」を補正の指標として用いる。さらに、ショット間バラツキを除去するために、ショット間で平均化して、個体差指標%Qを求める。そして、制御装置4は、この個体差指標%Qを学習値として記憶して、インジェクタ3の個体差補正を行う。
この個体差指標%Qは、次式で表される。
Figure 2014148952
なお、図4の横軸(x軸)は実噴射Qと目標噴射量Qtrgとが一致することを意味するものである。
このように、「バラツキ量の比」を用いることにより、目標噴射量Qtrgが絶えず変化しても(即ち、ショット間バラツキが生じても)、ある一定の噴射圧下(即ち、コモンレール圧の一定時)では、同一の個体差指標%Qを得ることができる。
よって、個体差指標%Qは、コモンレール圧(即ち、目標圧力)が一定であれば、どの目標噴射量Qtrgに対しても反映可能となる。即ち、仮に目標噴射量Qtrgよりも実噴射量Qが少ない場合には、次式に示すΔQ分だけ多く噴射することで補正が可能になる。
ΔQ=%Q×Qtrg1
ここで、Qtrg1はある目標噴射量の一例である。
このように、個体差指標%Qは、インジェクタ3の目標噴射量Qtrgが異なる場合であっても、普遍的に同一の値として使用することができる。
一方、個体差指針%Qは、コモンレール1の目標圧力が異なる場合であっても、ベルヌーイの法則(オリフィスの式)から普遍的に同一の値として使用することができる。
このことを、図5を参照して説明する。なお、図5中の「実特性」は通電期間Tq(指令パルス長)に対して補正前のインジェクタ3が実際に噴射する噴射特性の一例であり、図5中の「基準特性」は通電期間Tq(指令パルス長)に対する目標の噴射特性である。
目標圧力が低圧PL時の目標噴射量をQLT、低圧時の実噴射量をQL、低圧時の補正噴射量をΔQLとする。
目標圧力が高圧PH時の目標噴射量をQHT、高圧時の実噴射量をQH、高圧時の補正噴射量をΔQHとする。
すると、ベルヌーイの法則による「オリフィスの式」から、
・高圧時の目標噴射量QHT=QLT×√(PH/PL)
・高圧時の実噴射量QH=QL×√(PH/PL) ・・・(1)
・高圧時の補正噴射量ΔQH=ΔQL×√(PH/PL) ・・・(2)
となる。
個体差指針%Qを低圧時に得た場合、高圧時における個体差指針を%Q’とすると、
上式(1)、(2)から、高圧時の個体差指針%Q’は、次式(図5の下式と同じ)に示すように、%Q’=%Qとなる。
Figure 2014148952
上述したように、ある圧力条件下で得た個体差指針%Qは、目標噴射量Qtrgが異なる場合であっても、コモンレール1の目標圧力が異なる場合であっても、普遍的に同一の値として使用することができる。即ち、製造工場等において最小1回の学習により個体差指針%Qが得られれば、全運転領域においてインジェクタ3の機差補正を実施することができる。
ここで、個体差指針%Qは、図4に示したように「バラツキ量の比」の傾きから得られる。傾きを得るには、異なる噴射量(例えば、少噴射時と大噴射時)における「バラツキ量の比」が必要になる。即ち、2点の学習値が必要になる。なお、(i)1点は周知技術の微小噴射学習(アイドリングの噴射学習)で求め、他の1点を上述した「バラツキ量の比」から求めても良し、(ii)2点とも噴射量Qの異なる「バラツキ量の比」から求めても良い。
2点を上述した「バラツキ量の比」から求める場合は、「バラツキ量の比」の傾きの精度を高める目的で、1点はアイドリングなどの微小噴射で「バラツキ量の比」を求め、他の1点はレーシング(空ぶかし)などで噴射量を多くして「バラツキ量の比」を求めることが望ましい。
次に、上述した「機差補正手段」の具体例を、図6のフローチャートを参照して説明する。なお、ステップS1〜S5は学習値(個体差指針%Q)の算出例であり、続くステップS6〜S8は学習値(個体差指針%Q)に基づく補正例である。
この制御ルーチンに侵入すると(スタート)、圧力センサ8の出力から「噴射前圧力P1」、「噴射終了直後圧力P2」、「噴射終了後圧力P3」の3点圧力検出を行い(図3参照)、
・噴射前圧力P1から噴射終了後圧力P3に至る圧力取得時間差ΔTと、
・噴射終了直後圧力P2から噴射終了後圧力P3に至る圧力取得時間差ΔTsと、
を取得する(ステップS1)。
次に、噴射実施による圧力変化(P1−P2)から噴射時の減圧量ΔPを求めるとともに、噴射終了後における圧力変化(P2−P3)から静リークによる圧力変化ΔPsを算出する(ステップS2)。
次に、時間差ΔTs、圧力変化ΔPs、基準変化値Psdotに基づき、静リーク量Qstを求める(ステップS3)。
次に、上述したQ=(V/E)・ΔP−(Qd+Qst)を用いて、減圧量ΔPから実噴射Qを算出する(ステップS4)。
次に、複数の実噴射量Qと目標噴射量Qtrgの「バラツキ量の比」の傾きによる個体差指標%Qを求め、個体差指標%Qを学習値として記憶する(ステップS5)。
次に、学習値として記憶した個体差指標%Qを用いて機差に基づく補正噴射量ΔQ1を求める(ステップS6)。
次に、補正噴射量ΔQ1を目標噴射量Qtrgに加算して、補正後の目標噴射量Qtrg’を算出する(ステップS7)。
次に、補正された目標噴射量Qtrg’を用いて機差補正された通電期間Tq’を求める(ステップS8)。
その後、この制御ルーチンから離脱する(エンド)。
(実施例1の効果1)
燃料噴射装置は、上述したように、圧力センサ8によって求めた噴射時の減圧量ΔPから実噴射量Qを求めて、複数の実噴射量Qと目標噴射量Qtrgの「バラツキ量の比」の傾きによる個体差指標%Qを求め、この個体差指標%Qを学習値としてインジェクタ3の個体差補正を行う。
このように、「バラツキ量の比」の傾きによる個体差指標%Qを「個体差バラツキの指標」として用いることで、ショット間バラツキを除去してインジェクタ3の個体差補正を実施できる。
即ち、コモンレール1に設けた圧力センサ8を用いてインジェクタ3の個体差補正を実用化でき、例えば、新興国などでQRコード(登録商標)の読み込み、および制御装置4への書き込みのツールが普及しておらず、QRコード(登録商標)によるインジェクタ3の個体差補正を実施できない地域であっても、インジェクタ3の個体差補正を実施できる。
さらに、インジェクタ3における摩耗や、劣悪燃料の使用等によるインジェクタ3内の詰まりにより、インジェクタ3の個体差が変化しても、学習を実施することで摩耗や詰まりによる個体差を補正することができる。
具体的には、各インジェクタ3の個体差補正が実施されて、各インジェクタ3から高精度の目標噴射量Qtrgを噴射できるため、エンジンαの各気筒ごとの噴射量Qが目標噴射量Qtrgに出力差を小さくでき、トルク変動を抑えることで、燃費の向上や、エンジン振動および騒音を抑えることができる。また、市販後に市場でインジェクタ3が交換されたり、不法改造がなされても、学習により求めた個体差指標%Qからインジェクタ3の個体差補正を実施して、上述した効果を得ることができる。
(実施例1の効果2)
燃料噴射装置は、上述したように、リーク量(動リーク量Qdと静リーク量Qst)を考慮して実噴射量Qを求めるため、個体差指標%Q(学習値)の精度を高めることができ、結果的にインジェクタ3の機差補正の精度を高めることができる。
(実施例1の効果3)
上述したように、ある圧力条件下で得た個体差指針%Qは、目標噴射量Qtrgが異なる場合であっても、コモンレール1の目標圧力が異なる場合であっても、普遍的に同一の値として使用することができる。
これにより、製造工場等において最小1回の学習により個体差指針%Qが得られれば、全運転領域においてインジェクタ3の機差補正を実施することができる。
このため、新興国など、QRコード(登録商標)によるインジェクタ3の個体差補正を実施できない場合であっても、製造工場等において最小1回の学習により個体差指針%Qを得ることにより、全運転領域においてインジェクタ3の機差補正を実施することができる。即ち、QRコード(登録商標)によるインジェクタ3の個体差補正を実施できなくても、エンジン性能を十分に発揮させることができる。
(実施例1の効果4)
車両の出荷後においても、上述した機差補正手段を常時あるいは定期的(予め設定した学習要件を満たす際など)に作動させることにより、広い運転範囲において種々の学習を実施させることができ、その結果、学習による機差補正の精度を広い運転範囲において高めることができる。
具体的な一例として、広い運転範囲で得た種々の学習値をマップ化し、そのマップ化した学習値に基づいてインジェクタ3の機差補正を行うことで、インジェクタ3の噴射精度を長期に亘って高めることができる。
(実施例1の変形例1)
燃料の体積弾性係数Eを精度良く見積もるために、燃料温度の計測値を制御装置4に与えても良い。
(実施例1の変形例2)
燃料の体積弾性係数Eを精度良く見積もるために、圧力センサ8の実特性を制御装置4に認識させても良い。
(実施例1の変形例3)
圧力センサ8の検出精度を高めるために、燃料の圧力脈動の影響をアナログ回路やデジタル処理で除去しても良い。
(実施例1の変形例4)
噴射時の減圧量ΔPの検出精度を高めるために、高圧燃料を蓄圧する容積Vを小さく設けても良い。
インジェクタ3の形式は問うものではなく、種々の形式のインジェクタ3を適用可能なものである。具体的には、2ウェイインジェクタとは異なる形式の電磁弁型インジェクタ(3ウェイインジェクタ等)、アクチュエータでニードルを直接駆動するダイレクト型インジェクタ、ピエゾアクチュエータでニードルの閉弁油圧(背圧等)をコントロールするピエゾ型インジェクタなど、種々適用可能なものである。
1 コモンレール
3 インジェクタ
4 制御装置
8 圧力センサ

Claims (6)

  1. 加圧燃料を蓄えるコモンレール(1)と、このコモンレール(1)の蓄圧燃料を噴射するインジェクタ(3)と、前記コモンレール(1)に蓄圧された燃料圧力を検出する圧力センサ(8)と、この圧力センサ(8)の検出結果を含む種々の運転状態に基づいて前記インジェクタ(3)の噴射制御を実施する制御装置(4)とを備える燃料噴射装置において、
    前記制御装置(4)は、前記圧力センサ(8)によって検出された噴射時の減圧量(ΔP)から実噴射量(Q)を求め、
    複数の実噴射量(Q)と目標噴射量(Qtrg)のバラツキ量の比の傾きによる個体差指標(%Q)を求め、
    この個体差指標(%Q)を学習値として前記インジェクタ(3)の個体差補正を行うことを特徴とする燃料噴射装置。
  2. 請求項1に記載の燃料噴射装置において、
    個体差指標(%Q)は、目標噴射量(Qtrg)と噴射量機差(ΔQ)の関係においてバラツキ量の傾きとして表されるものであり、
    前記制御装置(4)は、個体差指標(%Q)と目標噴射量(Qtrg)から補正噴射量(ΔQ1)を求めることを特徴とする燃料噴射装置。
  3. 請求項2に記載の燃料噴射装置において、
    前記制御装置(4)は、目標噴射量(Qtrg)を補正噴射量(ΔQ1)で補正した補正後の目標噴射量(Qtrg’)に基づいて前記インジェクタ(3)の通電期間(Tq’)を求めることを特徴とする燃料噴射装置。
  4. 請求項1〜請求項3いずれか1つに記載の燃料噴射装置において、
    前記制御装置(4)は、インジェクタ(3)において燃料の一部を燃料タンク(5)へ戻すリークが存在する場合、このリーク量を考慮して実噴射量(Q)を求めることを特徴とする燃料噴射装置。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の燃料噴射装置において、
    前記制御装置(4)は、前記インジェクタ(3)の目標噴射量(Qtrg)が異なる場合であっても、個体差指標(%Q)を普遍的に同一の値として使用することを特徴とする燃料噴射装置。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の燃料噴射装置において、
    前記制御装置(4)は、前記コモンレール(1)の目標圧力が異なる場合であっても、個体差指標(%Q)を普遍的に同一の値として使用することを特徴とする燃料噴射装置。
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