JP2012082602A - 遮熱化粧シート - Google Patents
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Abstract
【課題】シート表面に柄印刷やベタ印刷などの印刷層を形成するものであっても高い遮熱性能を得ることができる遮熱化粧シートを提供すること。
【解決手段】遮熱化粧シート1は、熱可塑性樹脂と顔料とを含有する組成物をシート状に成形加工したシート層10と、シート層10表面に形成される印刷層11とを備え、顔料は、少なくともカーボンブラックを含まず、赤外線反射顔料20を含み、印刷層11は、少なくともカーボンブラックを含まず、赤外線透過顔料21を含む。
【選択図】図1
【解決手段】遮熱化粧シート1は、熱可塑性樹脂と顔料とを含有する組成物をシート状に成形加工したシート層10と、シート層10表面に形成される印刷層11とを備え、顔料は、少なくともカーボンブラックを含まず、赤外線反射顔料20を含み、印刷層11は、少なくともカーボンブラックを含まず、赤外線透過顔料21を含む。
【選択図】図1
Description
本発明は、熱を遮蔽する機能を有する化粧シートに関するものである。
化粧シートは、建築基材などの表面に貼り付けて、基材表面に各種の色や絵柄などを付与することで意匠性を高めるために用いられる。一般に、ドアや外壁材の表面には明るい色より比較的暗い落ち着いた色を付与することが好まれる。それ故に、ドアや外壁材などの表面に貼り付けられる化粧シートには黒色の顔料を含む塗料でベタ印刷や柄印刷がなされている。
一般に用いられる黒色の顔料は、熱を吸収し易いカーボンブラックを含んでいる。太陽熱などの赤外線に曝される外表面に貼り付けられる化粧シートに黒色顔料を含む塗料が印刷されていると、化粧シート自体が熱を含んで温度が高くなり、この熱が建築基材を介して建築物内部に伝搬することになるので、建築物内部の温度管理に悪影響を及ぼす問題が生じる。
一方、下記特許文献1に記載されるような熱を遮熱する機能を有するシート(遮熱シート)が知られている。この遮熱シートは、混合顔料と熱可塑性樹脂とを含有する組成物をフィルム状に成形したものであり、混合顔料として、赤外線波長域における日射反射率が40%以上ある白色顔料,赤外線波長域における日射反射率が7〜10%以上の青,赤,緑,黄色,黒から選ばれた原色顔料を組み合わせたものを用いている。
前述した従来の遮熱シートでは、赤外線波長域の日射反射率が高い顔料を用いているので、良好な遮熱性能を有すると共に、シートに所望の色味を持たせることができる。これにより、金属層を蒸着したような遮熱シートと比較すると適度な意匠性を得ることができる。
しかしながら、シート表面に絵柄などの更に高度な意匠を付与することを考えた場合には、やはり表面に印刷を施すことが必要になる。この場合、シート自体が高い遮熱性能を有していたとしても、印刷層の塗料に蓄熱性のあるカーボンブラックが含まれていると、シート自体で反射した熱が印刷層で蓄熱されることになり、シート全体で効果的に熱を遮蔽することができない問題があった。
特に、ドアの外表面や建築物外壁の外表面に施される化粧シートには意匠として木目調などの柄模様が好まれる傾向があり、また、シートの熱可塑性樹脂に顔料を混合する場合には、シートの成形性などで混合する顔料の種類が制約されて所望の色味を持たせることができないことがある。このような事情で、化粧シートに高い意匠性を付与するためにはシート表面へ印刷を施さざるを得ない場合があり、このような場合に、化粧シートとしての高い意匠性と遮熱性を両立させることができない問題があった。
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、本発明の目的は、シート表面に柄印刷やベタ印刷などの印刷層を形成するものであっても高い遮熱性能を得ることができる遮熱化粧シートを提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明による遮熱化粧シートは、以下の構成を少なくとも具備するものである。
熱可塑性樹脂と顔料とを含有する組成物をシート状に成形加工したシート層と、該シート層表面に形成される印刷層とを備え、前記顔料は、少なくともカーボンブラックを含まず、赤外線反射顔料を含み、前記印刷層は、少なくともカーボンブラックを含まず、赤外線透過顔料を含むことを特徴とする。
このような特徴を有する遮熱化粧シートは、シート表面に柄印刷やベタ印刷などの印刷層を形成することで高い意匠性を得ることができる。そして、シート層は、カーボンブラックを含まず赤外線反射顔料を含むので、蓄熱することが無く効果的に熱を反射することができる。また、シート層表面に形成される印刷層が、カーボンブラックを含まず赤外線透過顔料を含むので、シート層で反射した熱が印刷層で蓄熱されることもない。このように本発明の遮熱化粧シートは、高い遮熱性能と高い意匠性を両立させることができる。
以下、図面等を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る遮熱化粧シートを示した概念図である。遮熱化粧シート1は、シート層10と印刷層11を少なくとも備え、必要に応じて印刷層の保護や艶調整を行うための表面コート層12を備えている。印刷層11はシート層10の表面全体に施されるものであっても、シート層10の表面の一部に施されるものであってもよい。
シート層10は、熱可塑性樹脂と顔料とを含有する組成物をシート状に成形加工した層である。加工方法としては、カレンダー成形や押し出し成形などが採用される。印刷層11は、シート層10の表面にベタ印刷や柄印刷を施すことで形成される層であり、遮熱化粧シート1に高い意匠性を付与するための層である。
シート層10の基材となる熱可塑性樹脂は、シート状に成形加工可能なものであれば特に限定されないが、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリエステル系共重合樹脂、フッソ系共重合樹脂などの単独、もしくは、2種以上の混合樹脂からなるものが好ましい。特にこれらの熱可塑性樹脂のなかでは、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合樹脂が、樹脂物性、樹脂特性、成形加工性、コスト性などに優れているので好ましい。しかし、環境上の理由からハロゲン非含有の樹脂が要望される場合には、特にオレフィン樹脂、及びオレフィン系共重合樹脂が、好適に用いられる。
このような熱可塑性樹脂の基材中に含有される顔料は、少なくとも蓄熱機能が高いカーボンブラックを含まない顔料であり、更には赤外線を比較的高い反射率で反射する赤外線反射顔料20を含むものとする。シート層10中にカーボンブラックを含有させないことでシート層10自体に熱が蓄熱するのを抑止することができ、シート層10中に赤外線反射顔料20を含有させることで、シート層10を熱が通過して遮熱化粧シート1が貼り付けられた基材が加熱されるのを抑止することができる。シート層10の表面には印刷層11が形成されるので、シート層10自体に高い意匠性を求める必要はないが、印刷層11がシート層10の全面に形成されない場合や、印刷層11と透過して下地が視認できる場合を考慮して、シート層10中の顔料は印刷層11の意匠性を低下させないものが好ましい。このような観点から、シート層10中に含有される赤外線反射顔料20の例としては、赤外線反射酸化チタンが好ましい。
印刷層11は、少なくともカーボンブラックを含まず、赤外線透過顔料21を含むものとする。ここでいう赤外線透過顔料21とは、赤外線の吸収機能と反射機能が少ない顔料である。赤外線透過顔料21は、無機顔料であっても有機顔料であってもよい。無機顔料としては、カーボブラックを除いた天然無機顔料、クロム、酸化クロム、酸化亜鉛(亜鉛華)、合成酸化鉄赤、カドミウム黄、ニッケルチタン黄、ストロンチウム黄、アルミン酸コバルト、合成ウルトラマリン青などの合成無機顔料などを用いることができる。特には、赤外線透過機能が高いクロム及び鉄の複合酸化物が適する。有機顔料としては、多環式系、アゾ系の顔料があり、多環系顔料としては、ペリレン、ペリノン、フタロシアニン、カルボニウム、キナクリドン、イソインドリノンなど、アゾ系顔料としては、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料などを用いることができる。また、このような赤外線透過顔料21はシート層10内に含有させても良い。
シート層10における樹脂組成物の成形加工は、カレンダー成形加工、T−ダイ押出成形加工などによってシート状に成形される。成形加工方法に限定はないが、生産性等の面でカレンダー成形加工が適する。カレンダー成形加工によってシート層10を得る場合には、熱可塑性樹脂に練り込んだ赤外線透過顔料や赤外線反射材が加熱ロールにプレートアウトしてその加工性を悪化させる場合がある。これに対して、一般的なシリカ系のプレートアウト防止剤では大きな改善効果が無く、炭酸カルシウムを添加することでこの加工性の悪化に対する改善効果が得られた。適正な炭酸カルシウムの添加量は熱可塑性樹脂100重量部に対して5〜50重量部、好ましくは10〜30重量部である。また、カレンダー成形加工によってシート層10を得る場合には、バンク回りが不安定になって加工性が悪化する場合がある。これに対しては、加工助剤としてアクリル系改質剤を適量含有させることで、バンク回りを改善することができる。印刷層11の形成は、シート層10の成形後になされ、周知の印刷法(グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷など)を用いることができる。
表面コート層21は、表面保護や艶調整のために設けられる。表面コート層12は、アクリル系樹脂(例えば、アクリル樹脂/塩酢ビ樹脂/セルロース樹脂/シリカの混合物)などによって、印刷層11の形成後にグラビア印刷などで形成することができる。表面コート層21の艶調整は、混合するシリカの量によって調整できるが、ウレタンビーズやアクリルビーズなどの付加でも艶の付与調整を行うことができる。
図2は表面コート層12を塗工後の表面にエンボスEを施した例である。印刷層11として木目印刷を行った場合には木目のエンボス加工を施すことで効果的な意匠効果を得ることができる。木目印刷に限らず、印刷層の印刷内容とエンボスEを組み合わせることで効果的に意匠性を高めることができる。エンボス加工は、表面コート層の塗工後にエンボス機で表面から40μm程の絞を押す。
表1は、本発明の実施例(例1,例3)と比較例(例2,例4)の構成例と遮熱効果を示している。例1と例2は、視覚的に同等の木目調の印刷柄を有するものであり、例3と例4は、視覚的に同等の柿渋調の印刷柄を有するものである。よって、例1と例2或いは例3と例4は印刷層によって同等の意匠性が付与されている。
例1〜例4は、シート層と印刷層を備え、印刷層上に表面コート層が形成された設定厚さ0.20mmのシートであり、シート層の樹脂成分が共通している(塩化ビニル100重量部に対して、可塑剤(DOP、エポキシ化大豆油)が39重量部、Ba-Zn系安定剤が5.4重量部、充填剤(NS#100;日東粉化(株))が15重量部、加工助剤(アクリル系改質剤P-530A;三菱レイヨン(株))が2重量部、紫外線吸収剤(LA-36;(株)ADEKA)が0.4重量部、防カビ剤(SB-1;(株)野村事務所)が2重量部)。
そして、例1のシート層に含有される顔料は、塩化ビニル100重量部に対して、赤外線反射顔料(赤外線反射酸化チタンJR-1000;テイカ(株))が20.8重量部、赤外線透過顔料(クロム及び鉄の複合酸化物(Sicopal Black K0095;BASFジャパン(株)))が0.55重量部、調色顔料として、黄色の顔料2(SP-491;大日精化工業(株))が8.4重量部、茶色の顔料4(SP-811;大日精化工業(株))が0.05重量部含まれている。
例2のシート層に含有される顔料は、塩化ビニル100重量部に対して、カーボンブラック(SP-296;大日精化工業(株))が0.084重量部、調色顔料として、白色の顔料1(CR-90;石原産業(株))が11.6重量部、黄色の顔料2(SP-491;大日精化工業(株))が12.5重量部、茶色の顔料4(SP-811;大日精化工業(株))が0.01重量部含まれている。
例3のシート層に含有される顔料は、塩化ビニル100重量部に対して、赤外線反射顔料(赤外線反射酸化チタンJR-1000;テイカ(株))が0.8重量部、赤外線透過顔料(クロム及び鉄の複合酸化物(Sicopal Black K0095;BASFジャパン(株)))が3.6重量部、調色顔料として、黄色の顔料3(DA-P4443;大日精化工業(株))が4.2重量部、茶色の顔料4(SP-811;大日精化工業(株))が2.6重量部含まれている。
例4のシート層に含有される顔料は、塩化ビニル100重量部に対して、カーボンブラック(SP-296;大日精化工業(株))が0.47重量部、調色顔料として、白色の顔料1(CR-90;石原産業(株))が0.67重量部、黄色の顔料3(DA-P4443;大日精化工業(株))が4.8重量部、茶色の顔料4(SP-811;大日精化工業(株))が2.6重量部含まれている。
前述したように例1と例2(木目調)或いは例3と例4(柿渋調)は印刷層によって同等の意匠性が付与されている。このような印刷層を得るために、例1と例3の印刷層には赤外線透過顔料含有塗料(SX-860;(株)昭和インク工業所)が用いられ、例2と例4の印刷層にはカーボンブラック(CB)含有塗料(SX-851;(株)昭和インク工業所)が用いられている。例1〜例4の表面コート層はいずれもアクリルコート(SX-256;(株)昭和インク工業所)である。
図3は、各例のシートの遮熱効果を計測するために試験機の模式図である。このような試験機によって、例1〜例4のシート表面温度と槽内温度(シートで仕切られた熱源と逆側の空間の温度)を計測した。試験機は、上面を開放した発泡スチロール製の箱a1(底面30cm×30cm、高さ30cm)を用い、その箱a1の開放された上面を試験体Mであるシート(例1〜例4)で覆い、試験体Mの上方(試験体から30cm離れた位置)に配置した赤外線電球(熱源)a2から赤外線を試験体Mに向けて照射するものである。試験体Mの表面に温度計a3の検知部を配置し、箱a1の内部(底面から5cm離れた位置)に熱電対a4の検知部を配置して、試験体Mの表面温度と箱a1内の槽内温度を計測した。計測開始から20分後(2分毎に計測)の計測値を表1のシート表面温度及び槽内温度とした。
例1と例2の比較では、例2に対して例1のシート表面温度が16.0℃低く、例2に対して例1の槽内温度が5.3℃低い結果になり、例3と例4の比較では、例4に対して例3のシート表面温度が12.2℃低く、例4に対して例3の槽内温度が2.7℃低い結果になった。この試験結果から明らかなように、シート層の顔料が少なくともカーボンブラックを含まず赤外線反射顔料を含み、印刷層が少なくともカーボンブラックを含まず赤外線透過顔料を含む、例1と例3の遮熱化粧シートは、例2と例3の化粧シートに対して高い遮熱性能を有していることが判る。
1:遮熱化粧シート,
10:シート層,
11:印刷層,
12:表面コート層,
20:赤外線反射顔料,
21:赤外線透過顔料
10:シート層,
11:印刷層,
12:表面コート層,
20:赤外線反射顔料,
21:赤外線透過顔料
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂と顔料とを含有する組成物をシート状に成形加工したシート層と、該シート層表面に形成される印刷層とを備え、
前記顔料は、少なくともカーボンブラックを含まず、赤外線反射顔料を含み、
前記印刷層は、少なくともカーボンブラックを含まず、赤外線透過顔料を含むことを特徴とする遮熱化粧シート。 - 前記赤外線反射顔料は赤外線反射酸化チタンであることを特徴とする請求項1記載の遮熱化粧シート。
- 前記組成物は、炭酸カルシウムを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の遮熱化粧シート。
- 前記組成物は、加工助剤としてのアクリル系改質剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遮熱化粧シート。
- 前記熱可塑性樹脂は、塩化ビニル樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された遮熱化粧シート。
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