JP5488657B2 - 壁装用化粧シートの発泡前の積層体 - Google Patents

壁装用化粧シートの発泡前の積層体 Download PDF

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Description

本発明は、壁装用化粧シートに関する。
従来、発泡壁紙等の壁装用化粧シート(発泡化粧シート)としては、紙質基材(裏打紙)に塩化ビニル樹脂の発泡樹脂層を形成したものが知られている。近年では、環境に配慮して発泡樹脂層には、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂等のハロゲンを含有しない樹脂が用いられてきている(特許文献1〜3等)。
例えば、アクリル樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とを含むエマルションに、マイクロカプセル型発泡剤を添加した塗料を、紙質基材に塗工・乾燥後、表面に絵柄模様を印刷し、次いで加熱発泡させ、エンボス版により凹凸模様を形成してなる発泡壁紙が知られている。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂に熱分解型発泡剤を添加した樹脂組成物からなる発泡剤含有樹脂層を、Tダイ押出し機を用いて紙質基材上に形成後、表面に絵柄模様層を印刷し、次いで加熱発泡させ、エンボス版により凹凸模様を形成してなる発泡壁紙が知られている。
特開平6−47875号公報 特開2000−255011号公報 特開2001−347611号公報
しかしながら、従来の壁紙では、発泡層を保護するために保護層が形成されることがあるが、表面強度(耐スクラッチ性等)において改善する余地がある。
従って、本発明は、表面強度に優れた壁装用化粧シートを提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の層構成を採用することによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の壁装用化粧シートの発泡前の積層体に関する。
1. 紙質基材上に少なくとも発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層が順に形成されている、壁装用化粧シートの発泡前の積層体であって
(1)非発泡樹脂層が、エチレン−メタクリル酸共重合体及びエチレン−アクリル酸共重合体から選択される少なくとも1種の重合体を樹脂成分として含む樹脂組成物により形成された層であ
(2)前記発泡剤含有樹脂層及び前記非発泡樹脂層は隣接しており、
(3)前記発泡剤含有樹脂層及び前記非発泡樹脂層が電子線照射により架橋されている、
ことを特徴とする壁装用化粧シートの発泡前の積層体
2. 前記重合体が、メルトフローレート値10〜100g/10分である、前記項1に記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体。
3. 前記重合体が、樹脂組成物中70〜100重量%含有する、前記項1又は2に記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体。
4. 非発泡樹脂層が、厚み10〜50μmである、前記項1〜3のいずれかに記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体。
5. 発泡剤含有樹脂層が、当該樹脂層に水素結合が含まれないようなモノマーの組み合わせから得られる樹脂を含む、前記項1〜4のいずれかに記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体。
6. 発泡剤含有樹脂層が、樹脂成分としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を含む樹脂組成物により形成されている、前記項1〜5のいずれかに記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体。
7. 前記発泡剤が、熱分解型発泡剤である、前記項1〜6のいずれかに記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体。
8. 前記発泡剤含有樹脂層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、無機充填剤、顔料、熱分解型発泡剤及びセル調整剤を含む樹脂組成物により形成されている、前記項1〜7のいずれかに記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体。
9. 少なくとも前記発泡剤含有樹脂層が電子線照射により架橋されている、前記項1〜8のいずれかに記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体。
10. 紙質基材と発泡剤含有樹脂層との間にさらに非発泡樹脂層が形成されている、前記項1〜9のいずれかに記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体。
本発明の壁装用化粧シートによれば、発泡樹脂層の上に、特定の成分からなる非発泡樹脂層を形成するため、耐スクラッチ性、耐摩耗性等に優れている。特に、非発泡樹脂層中に水素結合が生じるような重合体を用いるので、優れた硬度等を得ることができる。
<壁装用化粧シート>
本発明の壁装用化粧シート(本発明シート)は、紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層及び非発泡樹脂層が順に形成されている壁装用化粧シートであって、
(1)発泡樹脂層が、発泡剤含有樹脂層を発泡させて形成した層であり、
(2)非発泡樹脂層が、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種をモノマーとして得られる重合体を樹脂成分として含む樹脂組成物により形成された層である、
ことを特徴とする。
紙質基材
紙質基材の材質は、壁紙基材として適した機械強度、耐熱性等を有する限り特に限定されず、繊維質シートが一般に使用できる。
具体的には、繊維質シートの中でも、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
紙質基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m程度が好ましく、50〜80g/m程度がより好ましい。
非発泡樹脂層B
本発明では、必要に応じて紙質基材と発泡樹脂層との間に非発泡樹脂層(非発泡樹脂層B)が形成されていても良い。特に、非発泡樹脂層Bが接着剤層として形成される場合は、優れた密着性を得ることができる。非発泡樹脂層Bとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を好適に用いることができる。非発泡樹脂層Bは樹脂成分以外に公知の添加剤を含んでもよいが、樹脂成分の含有量が70〜100重量%となるように配合することが好ましい。
発泡樹脂層
発泡樹脂層は、発泡剤含有樹脂層が発泡することにより形成された層である。発泡剤含有樹脂層は、発泡剤の作用により発泡するもの(例えば加熱された際に発泡するもの)であれば限定でないが、当該樹脂層に水素結合が含まれないようなモノマーの組み合わせから得られる樹脂を用いることが好ましい。従って、例えばエチレンとOH基又はCOOH基を有しないモノマーとの組み合わせから得られるエチレン共重合体樹脂を好適に用いることができる。かかる見地より、前記エチレン共重合樹脂としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(以下「EVA」と略記する)、エチレン−メチルメタクリレート(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)等を用いることができる。特に、樹脂成分としてEVA樹脂を含む樹脂組成物により形成されていることが望ましい。例えば、EVA樹脂、無機充填剤、顔料、熱分解型発泡剤及びセル調整剤を含む樹脂組成物を好適に用いることができる。その他にも、安定剤、滑剤等を添加剤として用いることができる。
樹脂成分としてEVA樹脂を用いる場合、EVA樹脂の酢酸ビニル含有量(共重合比率)は限定的ではないが、特に5〜30重量%程度であることが好ましく、10〜20重量%程度がより好ましい。
樹脂成分のメルトフローレート値(MFR)は特に限定されないが、5〜75g/10分程度が好ましく、40〜70g/10分程度がより好ましい。
なお、本明細書のMFRは、JIS K 7210(熱可塑性プラスチックの流れ試験方法)記載の試験方法により測定した値である。試験条件は、JIS K 6760記載の「190℃、21.18N(2.16kgf)」を採用したものである。
発泡樹脂層の発泡状態(例えば、発泡セルの大きさ、発泡セル密度等)は限定されず、発泡壁紙の種類、用途等に応じて適宜設計することができる。
熱分解型発泡剤としては公知の発泡剤から選択することができる。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率の観点からは、1.5倍以上、好ましくは3〜7倍程度であり、熱分解型発泡剤は、樹脂成分100重量部に対して、1〜20重量部程度とすることが好ましい。
セル調整剤は、例えばステアリン酸亜鉛等の金属石鹸等を使用することができる。セル調整剤の含有量は、樹脂成分100重量部に対して、0.3〜10重量部程度が好ましく、1〜5重量部程度がより好ましい。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。無機充填剤の含有量は、樹脂成分100重量部に対して0〜100重量部程度が好ましく、20〜70重量部程度がより好ましい。
顔料については、例えば酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛
等の無機顔料;例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等の有機顔料が挙げられる。顔料の含有量は、樹脂成分100重量部に対して10〜50重量部程度が好ましく、15〜30重量部程度がより好ましい。
発泡剤含有樹脂層を発泡させる方法としては、後記の製造方法に記載された方法に従って実施すれば良い。
非発泡樹脂層
非発泡樹脂層(非発泡樹脂層A)は、主として発泡樹脂層を保護するものである。本発明では、アクリル酸(CH=CHCOOH)及びメタクリル酸(CH=C(CH)COOH)の少なくとも1種をモノマーとして得られる重合体を樹脂成分として含む樹脂組成物により形成された層を非発泡樹脂層とする。
前記樹脂成分としては、例えばアクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種のモノマーとエチレンとの組み合わせにより得られる共重合体を樹脂成分として好適に用いることができる。より具体的には、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体及びアイオノマー樹脂の少なくとも1種を用いることが望ましい。アイオノマー樹脂としては、エチレン−メタクリル酸共重合体及び/又はエチレン−アクリル酸共重合体の分子間をナトリウム、亜鉛等の金属のイオンで分子間結合した構造を有する樹脂が使用できる。このような樹脂成分を用いる場合には、特に樹脂中の水素結合等に起因する強固な層を形成することができるので、優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。
前記共重合体におけるアクリル酸又はメタクリル酸の含有量は4〜15重量%程度であることが好ましい。このような樹脂も市販品を使用することができる。前記樹脂組成物には、公知の添加剤を配合することもできる。
非発泡樹脂層の厚みは限定的ではないが、10〜50μm程度が好ましく、特に10〜20μm程度がより好ましい。
また、樹脂組成物中の前記樹脂成分の含有量は限定的ではないが、通常70〜100重量%の範囲内で適宜設定することが好ましい。
前記樹脂成分のメルトフローレート値は、用いる樹脂成分の種類等によるが、一般に10g/10分以上の範囲内で適宜設定すれば良い。通常は10〜100g/10分、特に10〜95g/10分、さらに20〜80g/10分の範囲にあることが好ましい。このような数値範囲のものを使用することにより、より優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。
絵柄模様層
本発明シートは、非発泡樹脂層Aのおもて面に必要に応じて絵柄模様層を有してもよい。
絵柄模様層は、発泡壁紙に意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡壁紙の種類に応じて選択できる。
絵柄模様層は、例えば、非発泡樹脂層のおもて面に絵柄模様を印刷することで形成できる。なお、絵柄模様層を形成する際には、必要に応じてあらかじめプライマー層を形成しても良い。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤(又は分散媒)を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用しても良い。
着色剤としては、例えば、前記の発泡剤含有樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。
結着材樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
表面保護層(オーバーコート層)
本発明シートは、絵柄模様層の表面に艶調整及び/又は絵柄模様層の保護を意図して表面保護層を有してもよい。表面保護層の種類は限定的ではない。艶調整を目的とする表面保護層であれば、例えば、シリカなどの既知フィラーを含む表面保護層がある。表面保護層の形成方法としては、グラビア印刷などの公知の方法が採用できる。なお、絵柄模様層と表面保護層との密着性が十分に得られない場合には、絵柄模様層の表面を易接着処理(プライマー処理)した後に表面保護層を設けることもできる。
シートの表面強度(耐スクラッチ性など)、耐汚染性、絵柄模様層の保護等を目的として表面保護層を形成する場合には、電離放射線硬化型樹脂を樹脂成分として含有するものが好適である。電離放射線硬化型樹脂としては、電子線照射によってラジカル重合(硬化)するものが好ましい。
表面保護層の厚みは限定的ではないが、0.1〜15μm程度が好ましい。
エンボス
本発明シートは、適宜エンボス模様を付してもよい。この場合、シート最表面層(紙質基材と反対側)の上からエンボス加工すれば良い。エンボス加工は、エンボス版の押圧等、公知の手段により実施することができる。例えば、最表面層が表面保護層である場合は、そのおもて面を加熱軟化後、エンボス版を押圧することにより所望のエンボス模様を賦
型できる。エンボス模様としては、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
<壁装用化粧シートの製造方法>
本発明シートの製造方法は特に限定されない。例えば、Tダイ押出し機による同時押出しが好適である。2つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより2層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。この場合、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物及び非発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物をそれぞれ別個のシリンダー中に入れ、2種2層を同時に押出し成膜・積層すればよい。この方法では、同時押出し積層体は、紙質基材上に同時積層(成膜)する。紙質基材上に押出しと同時に積層された樹脂層は、熱溶融により接着性を有するため紙質基材と接着される。
なお、予め2種2層を同時成膜した積層体を用意して、それを紙質基材上に載せて、熱ラミネートすることにより紙質基材と接着してもよい。
なお、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合であって、発泡剤含有樹脂層を押出し成形により形成する場合には、押出し成形機の押出し口(いわゆるダイス)に無機充填剤の残渣(いわゆる目やに)が発生し易く、これがシート表面の異物となり易い。そのため、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合には、上記非発泡樹脂層A及び非発泡樹脂層Bを、発泡剤含有樹脂層とともに同時押出し成形することが好ましい。同時押出し成形は、例えば、マルチマニホールドタイプのTダイを用いることにより行える。このように発泡剤含有樹脂層を非発泡樹脂層によって挟み込んだ態様で同時押出し成形することにより、前記目やにの発生を抑制することができる。
紙質基材上に同時積層後は、発泡剤含有樹脂層を加熱することにより発泡樹脂層を形成する。加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。
前記加熱処理の前に、電子線照射を行ってもよい。これにより樹脂成分を架橋できるため、発泡壁紙の表面強度、発泡程度等を制御することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましい。照射量は、1〜7Mrad程度が好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。なお、架橋は、化学架橋剤(架橋剤又は架橋助剤ともいう。)を用いて実施することもできる。
電子線照射を行う場合には、前記組成物中に架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、電子線照射による架橋を促進するものであればよい。例えば、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性モノマー、オリゴマーなどが挙げられる。架橋剤は、樹脂成分100重量部に対して0〜10重量部程度とすることが好ましく、特に1〜4重量部とすることがより好ましい。
電離放射線硬化型樹脂を含有する表面保護層を形成した場合には、電子線照射によって表面保護層を硬化させることができる。このような電子線照射は、発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂を架橋させるために行う電子線照射と同時(同処理)とできる。つまり、発泡剤含有樹脂層、非発泡樹脂層、絵柄模様層及び電離放射線硬化型樹脂を含有する表面保護層を順に形成後、電子線照射を行って、発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂を架橋するとともに表面保護層に含まれる樹脂を硬化させることができる。
絵柄模様層を有する発泡壁紙を製造する場合には、上記加熱処理前に非発泡樹脂層の表面に絵柄模様層を形成することが好ましい。絵柄模様層の形成方法は、前記の通りとすれば良い。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
実施例1−1
2種2層マルチマニホールドTダイ押出し機を用い、i)非発泡樹脂層/ii)発泡剤含有
樹脂層の順に厚み15μm/100μmになるように製膜し、前記ii)層の面に裏打紙を
積層した。このときの押し出し条件は、前記i)層の樹脂はシリンダー温度180℃、ダイス温度120℃とし、前記ii)層の樹脂はシリンダー温度120℃、ダイス温度120℃
とした。次に、前記i)層上から電子線(175KV 3Mrad)を照射して、樹脂架橋
させた後、i)層上にコロナ放電処理を行った。さらにグラビア印刷機によりプライマー処理としてEVA系水性エマルジョンを2g/mコートし、その上に絵柄印刷として水性
インキ「ハイドリック(大日精化工業製)」を用いて布目絵柄を印刷した。次に、ギアオーブンにて加熱(220℃×30秒)し、発泡剤含有樹脂層に含有する発泡剤を発泡させた。さらに、その発泡体に対して布目パターンの凹凸エンボスを施し、所望の壁紙を得た。
各層は、それぞれ以下の成分を用いて形成した。
非発泡樹脂層i)は、エチレン−メタクリル酸共重合体「ニュクレルN1035(MFR=35):三井・デュポン ポリケミカル製」により形成した。
発泡樹脂層ii)は、EVA樹脂「エバテートCV5053(MFR=70,VA=20
%):住友化学製」100重量部、炭酸カルシウム「ホワイトンH:東洋ファインケミカル製」30重量部、二酸化チタン「タイピュアR−108:デュポン製」25重量部、発泡剤「ビニホールAC#3:永和化成工業製」4重量部、安定剤「アデカスタブOF−102:旭電化工業製」5重量部及び架橋剤「オプスターJUA−702:JSR製」1重量部を含む樹脂組成物により形成した。
実施例1−2
前記i)層をエチレン−メタクリル酸共重合体「ニュクレルN1050(MFR=500):三井・デュポン ポリケミカル製」により形成したほかは、実施例1−1と同様にして壁紙を作製した。
実施例1−3
前記i)層をエチレン−メタクリル酸共重合体「ニュクレルN1560(MFR=60):三井・デュポン ポリケミカル製」により形成したほかは、実施例1−1と同様にして壁紙を作製した。
実施例1−4
押出し条件を、前記i)層の樹脂はシリンダー温度130℃、ダイス温度100℃とし、前記ii)層の樹脂はシリンダー温度100℃、ダイス温度110℃とし、並びに、前記i)
層上から電子線(200KV 3Mrad)を照射して、樹脂架橋させた以外は、実施例
1−1と同様にして壁紙を作製した。
実施例1−5
押出し条件を、前記i)層の樹脂はシリンダー温度130℃、ダイス温度100℃とし、前記ii)層の樹脂はシリンダー温度100℃、ダイス温度110℃とし、並びに、前記i)
層上から電子線(200KV 3Mrad)を照射して、樹脂架橋させた以外は、実施例
1−2と同様にして壁紙を作製した。
実施例1−6
押出し条件を、前記i)層の樹脂はシリンダー温度130℃、ダイス温度100℃とし、前記ii)層の樹脂はシリンダー温度100℃、ダイス温度110℃とし、並びに、前記i)
層上から電子線(200KV 3Mrad)を照射して、樹脂架橋させた以外は、実施例
1−3と同様にして壁紙を作製した。
比較例1−1
2種2層マルチマニホールドTダイ押出し機を用い、i)非発泡樹脂層/ii)発泡剤含有
樹脂層の順に厚み15μm/10μmになるように製膜し、前記ii)層の面に裏打紙を積
層した。このときの押し出し条件は、前記i)層の樹脂はシリンダー温度130℃、ダイス温度120℃とし、前記ii)層の樹脂はシリンダー温度120℃、ダイス温度120℃と
した。以降の工程は、実施例1と同様にした。
なお、前記i)層は、EVA樹脂「エバテートCV5053(MFR=70,VA=20%):住友化学製」を用いて形成した。前記ii)層は、実施例1と同じである。
比較例1−2
押出し条件を、前記i)層の樹脂はシリンダー温度100℃、ダイス温度100℃とし、前記ii)層の樹脂はシリンダー温度100℃、ダイス温度110℃とした以外は、比較例
1−1と同様にして壁紙を作製した。
試験例1−1
各実施例及び比較例で得られた壁紙(シート)について、耐スクラッチ性等について調べた。その結果を表1に示す。
Figure 0005488657
*耐スクラッチ性試験:日本ビニル工業会「表面強化性能試験」
表1中の各物性は、以下の方法により測定・評価した。
(1)コインスクラッチ
「水平な面に試験片を置き、10円硬貨を用い、45°の角度で試験片上を荷重100gで引き掻き、表面を観察する。」という測定方法により測定した。試験表面に傷がない場合は「◎」、表面が僅かに傷付いた場合は「○」、発泡層まで傷が達した場合は「△」
、大きく傷付いた場合は「×」と評価した。
(2)テーバー摩耗試験
JIS K6902の耐摩耗試験に規定された摩耗試験機を用い、軟質摩耗輪:CS−
17 荷重:1kg 回転数:200回転の条件で試験後の試験片の表面を観察した。摩耗が発泡層まで達しない場合は「◎」、発泡層まで達するが表面のケバ立ちのない場合は「○」、表面が僅かにケバ立つ場合は「△」、表面が大きくケバ立つ場合は「×」と評価した。
(3)耐スクラッチ試験
日本ビニル工業会ビニル建装部会制定の「表面強化壁紙性能規定」に準拠して行った。すなわち、学振摩耗試験機(JISL0849 摩耗試験機II型)に試験片を取り付け、その試験機の摩擦子に同部会指定の金属製爪を用いて、金属爪先端に200g荷重をかけ、試験片上を5往復させて、試験片の試験後の表面状態を観察し、表面の傷付き具合で判断した。上記規定によれば、1級〜5級の5段階で評価され、5級:変化なし 4級:表面に少し変化あり 3級:表面が破けて見える 2級:表面が破けて紙等の裏打材が見える(長さ1cm未満) 1級:表面が破けて紙等の裏打材が見える(長さ1cm以上)とされている。本評価においては、それを◎、○、△、×で示し、◎:5級 ○:4級 △:3級 ×:2〜1級とした。
実施例2−1
3種3層マルチマニホールドTダイ押出し機を用い、i)非発泡樹脂層/ii)発泡剤含有
樹脂層/iii)非発泡樹脂層の順に厚み15μm/100μm/10μmになるように製膜し、前記iii)層の面に裏打紙を積層した。このときの押し出し条件は、前記i)層の樹脂はシリンダー温度160℃とし、前記ii)層の樹脂はシリンダー温度120℃とし、前記iii)層の樹脂はシリンダー温度100℃とした。いずれも、ダイス温度は120℃とした。
次に、前記i)層上から電子線(175KV 3Mrad)を照射し、前記i)層及びii)層を樹脂架橋させた後、i)層上にコロナ放電処理を行った。さらにグラビア印刷機によりプライマー処理としてEVA系水性エマルジョンを2g/mコートし、その上に絵柄印刷と
して水性インキ「ハイドリック(大日精化工業製)」を用いて布目絵柄を印刷した。次に、ギアオーブンにて加熱(220℃×30秒)し、発泡剤含有樹脂層に含有する発泡剤を発泡させた。さらに、その発泡体に対して布目パターンの凹凸エンボスを施し、所望の壁紙を得た。
各層は、それぞれ以下の成分を用いて形成した。
非発泡樹脂層i)は、エチレン−メタクリル酸共重合体「ニュクレルN1525(MFR=25):三井・デュポン ポリケミカル製」により形成した。
発泡樹脂層ii)は、EVA樹脂「エバテートCV5053(MFR=70,VA=20
%):住友化学製」100重量部、炭酸カルシウム「ホワイトンH:東洋ファインケミカル製」30重量部、二酸化チタン「タイピュアR−108:デュポン製」25重量部、発泡剤「ビニホールAC#3:永和化成工業製」3.2重量部、安定剤「アデカスタブOF−102:旭電化工業製」5重量部及び架橋剤「オプスターJUA−702:JSR製」1重量部を含む樹脂組成物により形成した。
非発泡樹脂層iii)は、EVA樹脂「エバテートCV5053(MFR=70,VA=20%):住友化学製」により形成した。
実施例2−2
前記i)層の形成にアイオノマー樹脂「ハイミラン1702(MFR=14):三井・デュポン ポリケミカル製」を用い、押出し条件としてシリンダー温度180℃としたほか
は、実施例2−1と同様にして壁紙を作製した。
実施例2−3
前記i)層の形成にエチレン−アクリル酸共重合体を用い、押出し条件としてシリンダー温度180℃としたほかは、実施例2−1と同様にして壁紙を作製した。
実施例2−4
前記ii)層の形成にエチレン−メチルメタクリレート樹脂「アクリフトWH401(M
FR=20):住友化学製」を用い、押出し条件としてシリンダー温度130℃としたほかは、実施例2−1と同様にして壁紙を作製した。
実施例2−5
押し出し条件を、前記i)層の樹脂はシリンダー温度140℃とし、前記ii)層の樹脂は
シリンダー温度100℃とし、前記iii)層の樹脂はシリンダー温度100℃とし、ダイス温度は全て110℃とした以外は、実施例2−1と同様にして壁紙を作製した。
比較例2−1
3種3層マルチマニホールドTダイ押出し機を用い、i)非発泡樹脂層/ii)発泡剤含有
樹脂層/iii)非発泡樹脂層の順に厚み15μm/100μm/10μmになるように製膜し、前記iii)層の面に裏打紙を積層した。このときの押出し条件は、前記i)層の樹脂はシリンダー温度160℃とし、前記ii)層の樹脂はシリンダー温度120℃とし、前記iii)
層の樹脂はシリンダー温度100℃とした。いずれも、ダイス温度は120℃とした。その後の工程は、実施例2−1と同様にした。
非発泡樹脂層i)は、エチレン−メチルメタクリレート樹脂「アクリフトWH401(MFR=20):住友化学製」により形成した。
発泡樹脂層ii)及び非発泡樹脂層iii)は、実施例2−1と同様にした。
比較例2−2
押出し条件を、前記i)層の樹脂はシリンダー温度130℃とし、前記ii)層の樹脂はシ
リンダー温度100℃とし、前記iii)層の樹脂はシリンダー温度100℃とし、ダイス温度は全て120℃とした以外は、比較例2−1と同様にして壁紙を作製した。
試験例2
実施例2−1〜2−4及び比較例2−1で得られた壁紙(シート)について、試験例1−1と同様にして耐スクラッチ性等について調べた。その結果を表2に示す。なお、表2中、発泡層セル形状の外観及びエンボス賦型は、いずれも問題がなかったため、「○」と表示した。
Figure 0005488657
*耐スクラッチ性試験:日本ビニル工業会「表面強化性能試験」

Claims (10)

  1. 紙質基材上に少なくとも発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層が順に形成されている壁装用化粧シートの発泡前の積層体であって
    (1)非発泡樹脂層が、エチレン−メタクリル酸共重合体及びエチレン−アクリル酸共重合体から選択される少なくとも1種の重合体を樹脂成分として含む樹脂組成物により形成された層であ
    (2)前記発泡剤含有樹脂層及び前記非発泡樹脂層は隣接しており、
    (3)前記発泡剤含有樹脂層及び前記非発泡樹脂層が電子線照射により架橋されている、
    ことを特徴とする壁装用化粧シートの発泡前の積層体
  2. 前記重合体が、メルトフローレート値10〜100g/10分である、請求項1に記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体
  3. 前記重合体が、樹脂組成物中70〜100重量%含有する、請求項1又は2に記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体
  4. 非発泡樹脂層が、厚み10〜50μmである、請求項1〜のいずれかに記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体
  5. 発泡剤含有樹脂層が、当該樹脂層に水素結合が含まれないようなモノマーの組み合わせから得られる樹脂を含む、請求項1〜のいずれかに記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体
  6. 発泡剤含有樹脂層が、樹脂成分としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を含む樹脂組成物により形成されている、請求項1〜のいずれかに記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体
  7. 前記発泡剤が、熱分解型発泡剤である、請求項1〜のいずれかに記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体
  8. 前記発泡剤含有樹脂層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、無機充填剤、顔料、熱分解型発泡剤及びセル調整剤を含む樹脂組成物により形成されている、請求項1〜のいずれかに記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体
  9. 少なくとも前記発泡剤含有樹脂層が電子線照射により架橋されている、請求項1〜のいずれかに記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体
  10. 紙質基材と発泡剤含有樹脂層との間にさらに非発泡樹脂層が形成されている、請求項1〜のいずれかに記載の壁装用化粧シートの発泡前の積層体
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