JP4583959B2 - 光反射抑制体 - Google Patents

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Description

本発明は、黒色の色調をなす光反射抑制体に関し、例えば車輌や家電にて案内表示や警告表示などの各種表示パネルとして使用される光反射抑制体に関する。
従来、この種の光反射抑制体として、例えば特許文献1に記載されるような光反射抑制体(表示板)が提案されている。特許文献1に記載の光反射抑制体(以下「第1従来抑制体」と示す。)は、合成樹脂からなる基板(基材本体)を備えており、該基板は黒色の色調をなしている。また、第1従来抑制体には、その表面での低光沢化を図るべく、低反射抑制層としての艶消し層が最表層として積層されている。この艶消し層は艶消し剤(マット剤)を含有するインクから形成されているため、第1従来抑制体の表面には、細かい凹凸が形成されている。従って、第1従来抑制体では、その表面側に光(例えば可視光)が照射された場合、その光を乱反射させることにより、光の反射が抑制されるようになっている。
一方、他の光反射抑制体として、例えば特許文献2に記載されるような光反射抑制体(流体容器)が提案されている。特許文献2に記載の光反射抑制体(以下、「第2従来抑制体」と示す。)は、前記第1従来抑制体の基板と同様な構成をなす基板を備えている。そして、第2従来抑制体の表面側には、その表面での光の反射を抑制すべく、梨地加工(「シボ加工」ともいう。)が施されている。すなわち、第2従来抑制体は、その表面に細かい凹凸を形成することにより、その表面での光の反射を抑制するようになっている。
特開2003−254790号公報(請求項7、段落番号[0050],[0052]、図6) 特開2002−68197号公報(請求項1、段落番号[0016]、図2)
ところで、前記各光反射抑制体は、上述したように、その表面を細かい凹凸面とすることにより、その表面で光を乱反射させて光の反射を抑制するようになっている。しかし、このように光を乱反射させた場合、各光反射抑制体の表面の色調が、所望とする黒色ではなく、白くぼやけた(以下、「白ボケした」と示す。)黒色となってしまうという問題があった。
本発明では、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、表面に光が照射された場合に、表面の色調が白ボケした黒色となることを抑制できる光反射抑制体を提供することにある。
上記目的を達成させるために、請求項1に記載の発明は、黒色の不透明又は半透明に着色された基材層と、該基材層に積層された光反射抑制層とを備えた、車輌用の指示計器に用いられる光反射抑制体であって、前記光反射抑制層は、アニリンブラックを顔料として含むインクから形成され、前記基材層は、透明又は半透明な光透過層と、カーボンブラックを顔料として含むインクから形成されるとともに前記光反射抑制層に隣接する光遮蔽層とを有し、前記光遮蔽層及び光反射抑制層には厚さ方向に貫通して前記光透過層を露出させる指標部が形成されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光反射抑制体において、前記光反射抑制層は、JIS K 0601−1982に規定される表面粗さが10μm以下であることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の光反射抑制体において、前記光反射抑制層は、JIS R 3106−1998に規定される光の反射率が3.5%以下であることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の光反射抑制体において、前記光反射抑制層は、JIS R 3106−1998に規定される光の透過率が10%以下であることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の光反射抑制体において、前記光反射抑制層を形成するインクには、アニリンブラックを5〜50質量%含有させることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の光反射抑制体において、前記光反射抑制層は、その厚みが5〜30μmとなるように形成されることを要旨とする。
本発明によれば、表面に光が照射された場合に、表面の色調が白ボケした黒色となることを抑制できる。
以下、本発明の光反射抑制体を車輌用の指示計器に用いられる銘板に具体化した一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の車輌用の指示計器(以下、「指示計器」と略記する。)10は、銘板として黒色の色調をなす光反射抑制体11を備えている。該光反射抑制体11の裏面側(図1では、紙面奥側)には、図示しない光源(例えば、発光ダイオード)が設けられている。前記光反射抑制体11には、走行する車輌の速度を示すための数字や目盛などからなる指標部12が形成されている。この指標部12では、前記光反射抑制体11が前記光源によって照射された場合、その裏面側から表面側(図1では、紙面手前側)に向けて光を透過するようになっている。一方、光反射抑制体11において指標部12以外の部分では、光反射抑制体11が前記光源によって照射された場合でも、光が透過しないようになっている。また、前記指示計器10には、その表面側に指針13が設けられており、該指針13は、車輌の速度に対応する数字や目盛を指すようになっている。
次に、本実施形態の光反射抑制体11について、図2及び図3に基づき以下説明する。なお、以降の記載において、図2及び図3における「上側」を「表面側」、図2及び図3における「下側」を「裏面側」と示すものとする。
図2に示すように、本実施形態の光反射抑制体11は、基材層14と、該基材層14の表面側に積層された光反射抑制層15とを備えている。また、基材層14は、裏面側に設けられた透明又は半透明な光透過層16と、表面側に設けられた黒色不透明の光遮蔽層17とを有している。そして、基材層14は、光透過層16及び光遮蔽層17を積層することにより、黒色の不透明又は半透明に着色されている。なお、本実施形態の光反射抑制体11において、前記指標部12は、光遮蔽層17及び光反射抑制層15を設けることなく、光透過層16の表面を故意に露出させることによって形成されている。
前記光透過層16は、前記指標部12において光を透過させるべく設けられており、透明又は半透明な合成樹脂製の基板から形成されている。このような基板に使用する合成樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル等のエステル系樹脂、ポリアクリル等のアクリル系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられ、これらのうち少なくとも1種以上が使用される。光透過層16は、その光の透過率が85%以上であることが好ましい。これは、前述したように、前記指標部12においては、前記光源からの光を裏面側から表面側に向けて透過させなければならないためである。すなわち、光透過層16における光の透過率が85%未満であった場合は、指標部12における光の強度が充分でなく、結果として、指標部12の数字や目盛が運転手にとって視認しにくくなる虞がある。なお、本実施形態における「光の透過率」とは、JIS K 5400−1900の「塗料一般試験方法」に規定される値を示すものとする。
光透過層16の厚みは、0.05〜10mmとすることが好ましい。すなわち、光透過層16を形成する基板は、光反射抑制体11の、いわゆる「芯材」として機能しており、その厚みが0.05mm未満である場合、光反射抑制体11の強度が不足する虞がある。一方、厚みが10mmを超える場合、光透過層16を通過する光の減衰、あるいは光反射抑制体11の柔軟性が低減して取り付けに不備が生じる等の不具合が発生する虞がある。
前記光遮蔽層17は、前記指標部12以外で前記光源からの光を遮蔽するべく設けられたものである。この光遮蔽層17は、カーボンブラックを顔料として使用し、該顔料を合成樹脂に配合してなるインクから形成されている。このインクに使用される合成樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂のうち少なくとも一種以上が挙げられる。また、このインクは、光を好適に遮蔽するという観点から、顔料であるカーボンブラックを5〜25質量%含有することが好ましい。つまり、カーボンブラックの含有率が5質量%未満である場合、前記光源からの光を光遮蔽層17で十分に遮蔽することができなくなる虞がある。一方、25質量%を超える含有率としても、遮蔽性能の顕著な向上は期待しづらく、むしろ使用量が過多となってコストが嵩む虞がある。
光遮蔽層17は、必要十分な遮蔽性能を得るという観点から、その厚みが5〜30μmとなるように形成されることが好ましい。すなわち、30μmを超える厚みとしても、遮蔽性能の顕著な向上は期待しにくく、むしろインク使用量の過多によるコストの高騰、光反射抑制体11の柔軟性低減、前記光透過層16からの光遮蔽層17の剥離などのような不具合が発生する虞がある。一方、厚みが5μm未満の場合、十分な遮蔽性能が得られず、前記光源からの光の一部が光遮蔽層17を透過して前記指標部12の数字や目盛が運転手にとって視認しづらくなる虞がある。
前記光反射抑制層15は、光反射抑制体11の表面11aにおける光の反射、該表面11aの鏡面化による写り込みを抑制するべく設けられたものである。さらに、この光反射抑制層15は、光反射抑制体11の表面11aの色調が白ボケした黒色となることを抑制する機能を有している。すなわち、光反射抑制層15は、光反射抑制体11の表面11aの色調が白ボケした黒色となることを抑制することにより、該表面11aで指標部12を際立たせて視認性を向上させるとともに、該表面11aの外観品質を向上させる。
光反射抑制層15は、アニリンブラックを顔料として含むインクから形成されており、その色調が黒色透明、いわゆるスモーク調とされたものである。そして、色調がスモーク調とされた光反射抑制層15は、その表面15aに照射された光(可視光)を吸収することによって、該表面15aでの光の反射を抑制する機能を発揮する。
ここで、推定ではあるが、従来の光反射抑制体が白ボケした黒色となる原因を説明する。図3に示すように、従来の光反射抑制体31は、合成樹脂製の基板からなる光透過層32を備えており、該光透過層32の表面側には、カーボンブラックを顔料として含むインクから形成される光遮蔽層33が積層されている。光遮蔽層33の表面側には、マット剤(艶消し剤)を含むインクから形成される無色透明な艶消し層34が積層されている。このマット剤は、シリカゲル、タルク、硫酸バリウムなどの無機フィラーからなり、艶消し層34の表面34aを細かい凹凸面とする。そして、従来の光反射抑制体31は、表面31aを細かい凹凸面とすることで、該表面31aの鏡面化を抑制している。換言すると、従来の光反射抑制体31は、その表面31aの「光沢」を低減させることによって反射を抑制している。
一方、黒色は、本来は「光を吸収する色調」であり、「光沢」を有しておらず、光の反射を抑制する色調となり得るはずである。しかし、従来の光反射抑制体31などのような黒色に着色された物品は、その表面における耐薬品性、耐水性などといった耐久性の向上、あるいは外観品質の向上を図るべく、該表面に無色透明な合成樹脂などからなる層、いわゆる「クリヤー層」を設けている。そして、この「クリヤー層」が前記の「光沢」を有することから、物品の表面が鏡面化され、光の反射が起こる。そこで、従来の光反射抑制体31は、表面31aを細かい凹凸面として「光沢」を低減させることにより、鏡面化を抑制している。ただし、従来の光反射抑制体31は、表面31aにおける「光の全反射」を抑制したに過ぎず、「光の乱反射」までをも抑制するものではない。従って、従来の光反射抑制体31は、表面31aで乱反射した光が視認される色調を狂わせることにより、「白ボケした黒色」となってしまう。
光反射抑制層15は、上記従来の無色透明な艶消し層34とは異なり、黒色透明とすることによって光を吸収し、その反射を抑制しており、「光の乱反射」までをも抑制し、白ボケした黒色となることを抑制している。このような光反射抑制層15を形成するべく、インクには、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂のうち少なくとも一種以上の合成樹脂に前記アニリンブラックを配合したものが使用される。また、このインクは、光反射抑制層15に必要十分な光の吸収性能を付与するという観点から、アニリンブラックを5〜50質量%含有することが好ましい。すなわち、アニリンブラックの含有率が5質量%未満の場合、光の吸収性能を十分に発揮できない虞がある。一方、アニリンブラックの含有率が50質量%を超えるとしても、光の吸収性能の顕著な向上は期待しづらく、むしろアニリンブラックの使用量が過多となってコストが嵩む虞がある。
なお、アニリンブラックは、染料として使用するのが一般的である。「染料」とは、下地となる素材を所望とする色調(黒色)に染め上げることにより、該素材を着色するものである。一方、「顔料」とは、下地となる素材(本実施形態では、基板)を覆うことにより、該素材を所望とする色調(黒色)に着色するものである。すなわち、本実施形態においてアニリンブラックは、染料としての用途ではなく、顔料としての用途で使用されている。
光反射抑制層15は、その厚みが5〜30μmに形成されることが好ましい。すなわち、30μmを超える厚みとしても、光の吸収性能の顕著な向上は期待しづらく、むしろインク使用量の過多によるコストの高騰、光反射抑制体11の柔軟性低減、光反射抑制層15の剥離などのような不具合が発生する虞がある。一方、厚みが5μm未満の場合、光の吸収性能を十分に発揮できなくなる虞がある。
光反射抑制層15は、光の全反射及び乱反射を抑制するという観点から、その表面15aにおける光の反射率が3.5%以下であることが好ましい。これは、光の反射率が3.5%を超えた場合、光反射抑制層15の表面15aにおける光の全反射及び乱反射によって、前記指標部12の数字や目盛が視認しにくくなったり、白ボケを抑制しづらくなったりする虞がある。なお、本実施形態における「光の反射率」は、JIS R 3106の「板ガラス類の方法」に規定される値であって、「光の正反射率」の値を示す。
光反射抑制層15は、光反射抑制体11の表面11aの鏡面化を抑制するという観点から、その光沢度が0.6%以下であることが好ましい。すなわち、光沢度が0.6%を超えた場合は、光反射抑制体11の表面11aが鏡面化して光の反射を十分に抑制することができなくなる虞がある。光の反射を十分に抑制することができなくなった場合、前記指標部12以外の部分の色彩が明るくなり(白ボケ化)、指標部12の数字や目盛が運転手にとって視認しにくくなる虞がある。なお、本実施形態における「光沢度」はJIS K 5400の「鏡面光沢度」に規定される値を示す。
光反射抑制層15は、前記光遮蔽層17による黒色を光反射抑制体11の表面11aに反映させつつ、必要十分な光の吸収性能を発揮するという観点から、光の透過率が10%以下であることが好ましい。すなわち、光の透過率が10%を超える場合、光を十分に吸収しきれず、光の反射を十分に抑制することができなくなる虞がある。光を十分に吸収しきれなかった場合、この光は前記光遮蔽層17と光反射抑制層15との境界面で反射され、光反射抑制層15の表面15a側から漏れ出てしまう虞がある。なお、本実施形態における「光の透過率」はJIS K 5400−1900の「塗料一般試験方法」に規定される値を示す。
光反射抑制層15は、光の乱反射を抑制するという観点から、その表面粗さが10μm以下であることが好ましい。すなわち、表面粗さが10μmを超えた場合、光反射抑制体11の表面11aで光が乱反射され、白ボケした黒色となる虞がある。なお、本実施形態における「表面粗さ」はJIS K 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)を示す。
次に、前記光反射抑制体11の製造方法について以下説明する。
光反射抑制体11は、スクリーン印刷により、光透過層16の表面側に光遮蔽層17及び光反射抑制層15を順次形成することによって製造される。すなわち、まず基材層形成工程として、基板にカーボンブラックを顔料として含むインクをスクリーン印刷によって転位する。この際、インクは、芳香族ケトンなどの溶剤を使用して希釈(例えば、10%に希釈)してもよい。そして、インクの転位後、所定の温度(例えば90℃)、所定時間(例えば15分)でインクを乾燥させることにより、基板からなる光透過層16と、インクからなる光遮蔽層17とを有する基材層14が完成される。次に、光反射抑制層形成工程として、光遮蔽層17の表面側にアニリンブラックを顔料として含むインクをスクリーン印刷によって転位させる。この際、インクは、イソフォロンなどの溶剤を使用して希釈(例えば、10%に希釈)してもよい。そして、インクの転位後、所定の温度(例えば90℃)、所定時間(例えば15分)でインクを乾燥させると、光反射抑制層15が完成する。
従って、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)光反射抑制体11の最表層として積層された光反射抑制層15は、光反射抑制体11の表面11aに照射された光を層内にて吸収することにより、該表面11aにて光が反射することを抑制するようになっている。従って、表面11aに光が照射された場合に、該表面11aの色調が白ボケした黒色となることを抑制できる。
(2)光反射抑制層15は、その表面粗さが10μm以下であるため、その表面15a(光反射抑制体11の表面11a)に光が照射された場合に、その表面15aにて光が乱反射することを抑制できる。
(3)光反射抑制層15は、光の反射率が3.5%以下となるように構成されているため、その表面15a(光反射抑制体11の表面11a)に光が照射された場合でも、光反射抑制体11における指標部12の数字や目盛などが運転手にとって視認しにくくなることを抑制できる。
(4)光反射抑制層15は、光の透過率が10%以下となるように構成されているため、基材層14(光遮蔽層17)の表面にて反射した光が光反射抑制層15の表面15a側から漏れ出ることを抑制できる。
(5)光反射抑制層15を形成するインクは、アニリンブラックを5〜50質量%含有している。すなわち、本実施形態では、適量のアニリンブラックにて光反射抑制層15を形成することができる。
(6)光反射抑制層15は、その厚みが5〜30μmとなるように形成されている。すなわち、本実施形態では、適量のインクで光反射抑制層15を形成することができる。
(7)基材層14は、光透過層16と光遮蔽層17とにより構成しているため、光反射抑制体11に指標部12を形成する際に、光反射抑制体11に断面形状(孔形状)が数字を模した形状(例えば、「2」)をなす貫通孔を形成しなくてもよい。すなわち、光反射抑制体11において指標部12となる部位に各インクを転位させないようにするだけで、指標部12を容易に形成できる。
(8)光遮蔽層17を形成するインクは、カーボンブラックを5〜25質量%含有している。すなわち、本実施形態では、適量のカーボンブラックにて光遮蔽層17を形成することができる。
(9)光遮蔽層17は、その層の厚みが5〜30μmとなるように形成されている。すなわち、本実施形態では、適量のインクで光遮蔽層17を形成することができる。
(10)光透過層16は、その光の透過率が85%以上となるように形成されているため、前記光源が発光した場合、指標部12の数字や目盛を非常に鮮やかに表示することができる。
(11)光透過層16は、その厚みが0.05〜10mmとなるように形成されている。すなわち、本実施形態では、光透過層16における光の透過率が85%以上となるように設定することができる。
以下、前記実施形態をさらに具体化した実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
スクリーン印刷により、基板からなる光透過層16、インクからなる光遮蔽層17及びインクからなる光反射抑制層15を順次形成し、図2に示すような実施例1の光反射抑制体11を形成した。基板には、厚みが0.5mmのポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック社製 ユーピロンNF)を使用した。光遮蔽層17を形成するインクには、酢酸ビニル変性塩化ビニル系樹脂にカーボンブラックを15質量%となるように配合したものを、芳香族ケトンで10%に希釈して使用した。光反射抑制層15を形成するインクには、酢酸ビニル変性塩化ビニル系樹脂にアニリンブラックを25質量%となるように配合したものを、イソフォロンで10%に希釈して使用した。スクリーン印刷時において、インクの乾燥は、光遮蔽層17及び光反射抑制層15ともに、90℃、15分で行った。そして、形成された光遮蔽層17及び光反射抑制層15の厚みは、それぞれ8μmであった。
(実施例2)
指標部12となる部位周辺で光透過層16と光遮蔽層17との間にインクからなる白印刷部を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例2の光反射抑制体11を形成した。この白印刷部は、光遮蔽層17を形成する前に、スクリーン印刷によって形成した。白印刷部を形成するインクには、酢酸ビニル変性塩化ビニル系樹脂に白色の顔料であるルチル型酸化チタンを15質量%となるように配合したものを、イソフォロンで10%に希釈して使用した。白印刷部は、透過濃度計(エックスライト社製 エックスライト341)で測定した印字濃度(OD値)が0.82であり、自記分光強度計(株式会社日立製作所製 U4000)で測定した光の透過率が15%であった。また、光遮蔽層17及び光反射抑制層15は、白印刷部をその外周から0.2mmだけ内側の部位まで被覆するように形成した。
(実施例3)
実施例1の光反射抑制体11に、さらに真空成形を施して実施例3の光反射抑制体11を形成した。真空成形は、成形型にアルミニウム製の凸型を使用し、光反射抑制体11の表面及び裏面を遠赤外線ヒータで加熱して行った。成形条件は、型温度が90℃、光反射抑制体11の温度が170℃、成形圧力が0.75MPa、成形時間が25秒とした。
(比較例1)
光反射抑制層15をインクからなる艶消し層34とした以外は、実施例1と同様にして図3に示すような比較例1の光反射抑制体31を形成した。艶消し層34を形成するインクには、塩化ビニル系樹脂にマット剤としてシリカゲルを5質量%となるように配合したものを使用した。そして、形成された艶消し層34の厚みは、5μmであった。
(比較例2)
マット剤としてシリカゲルを10質量%となるように配合した以外は、比較例1と同様にして比較例2の光反射抑制体31を形成した。
(比較例3)
艶消し層34を省略し、光遮蔽層33を光透過層32の裏面側となるように配置した以外は、比較例1と同様にして比較例3の光反射抑制体31を形成した。
(比較例4)
ポリプロピレン製のリング状をなす樹脂成形品の表面に、アクリル系樹脂にカーボンブラックを配合したインクからなる光遮蔽層33を形成し、さらに塩化ビニル系樹脂にマット剤としてシリカゲルを3質量%配合したインクからなる艶消し層34を形成して比較例4の光反射抑制体31を得た。
(考察)
上記実施例1〜3及び比較例1〜4について、白ボケ、表面粗さ、光の反射率、光沢性、密着性、耐薬品性について測定した。また、実施例2及び実施例3については、インクの段差についても測定した。その結果を表1に示す。また、実施例1及び比較例1については、走査型電子顕微鏡(SEM)によって光反射抑制体11,31の表面11a,31aを観察した。実施例1の結果を図5(a)に、比較例1の結果を図5(b)に示す。なお、白ボケ及びインクの段差は、目視によって測定した。光の反射率は、日立製作所製のU4000を使用して測定した。光沢性は、日本電色製の変角光沢計VG−1Dを使用して測定した。密着性は、JIS K 5400に規定のテーピング剥離試験に従って測定した。耐薬品性は、室温22℃とした雰囲気下で試料を1級エタノールに30分浸漬した後、JIS K 5400に規定の密着性試験に従って測定した。
Figure 0004583959
表1の結果より、白ボケについては、実施例1〜3は無く、比較例1〜4は有った。光の反射率(正反射率)については、実施例1〜3が約2.0%であり、比較例1〜4に比べて反射を好適に抑制していることが示された。光沢率については、実施例1〜3が0.5%以下であり、比較例1〜4に比べて光沢を好適に抑制していることが示された。また、実施例1〜3は、密着性及び耐薬品性について、比較例1〜4に劣るものではないことが示された。また、実施例2及び実施例3から、インクの段差は見られず、外観品質も好適であることが示された。また、図5(a)(b)に示すように、実施例1の光反射抑制体11においては、最表層である光反射抑制層15を構成する粒子の大きさが、比較例1の光反射抑制体31の最表層である艶消し層34を構成する粒子の大きさよりも小さく形成されている。そのため、実施例1の光反射抑制体11の表面粗さが比較例1の光反射抑制体31の表面粗さよりも小さくなることが確認された。
なお、実施形態は以下のような別の実施形態(別例)に変更してもよい。
・前記実施例3のように、真空成形を施す場合において、基板は、その破断伸び率が50〜150%であることが好ましい。これは、破断伸び率が50%未満である場合は、光反射抑制体11に真空成形を施した場合に、基板が破断してしまう虞がある。一方、破断伸び率が150%を越える場合は、却って剛性が低下し、基板の表面のスクラッチ耐性が低下してしまう虞がある。同様に、光反射抑制体11に対して真空成形を施す場合において、光遮蔽層17及び光反射抑制層15は、その破断伸び率が50〜150%であることが好ましい。なお、破断伸び率は、JIS K 6251に規定される値を示す。
・前記実施形態において、プレスやローラを用いることにより、基板にフィルムからなる光遮蔽層17及び光反射抑制層15を押圧によって成形してもよい。
・前記実施形態において、基板の表面全体を覆うように光遮蔽層17及び光反射抑制層15を順に積層して、指標部12を形成する部位にレーザ(例えば、炭酸ガスレーザ)によってエッチングを施すことにより、光反射抑制体11に指標部12を形成してもよい。また、光遮蔽層17及び光反射抑制層15を積層する前に、基板にて指標部12となる部位に、基板に接着しない樹脂製(例えば、ポリビニルアルコール樹脂製)のインクにて印刷を行う。そして、光遮蔽層17及び光反射抑制層15が基板に積層された後に、ポリビニルアルコール樹脂製のインクと共に、該インク上に積層してなる光遮蔽層17及び光反射抑制層15を剥離することにより、光反射抑制体11に指標部12を形成してもよい。
・前記実施形態において、スプレーコート、ロールコート及びグラビアコート(グラビア印刷)等の方法によって、基板に光遮蔽層17及び光反射抑制層15を形成するようにしてもよい。
・前記実施形態において、光反射抑制体11は、図4に示すように、最表層として光反射抑制層15が形成されていれば、光遮蔽層17は基板の裏面側に形成されていてもよい。
・前記実施形態において、基板は、ガラスであってもよい。また、基板は、黒色の色調をなす非透明な基板であってもよい。この場合、基板には光遮蔽層17を形成しなくてもよい。
・前記実施形態において、基材層14は、その厚みが0.05〜10mmの範囲内であれば、任意の厚み(例えば1mm)のものであってもよい。また、光の透過率が85%以上であれば、任意の光の透過率(例えば90%)のものであってもよい。
・前記実施形態において、光遮蔽層17は、その厚みが5〜30μmの範囲内であれば、任意の厚み(例えば10μm)を有するものであってもよい。また、光遮蔽層17を形成するインクは、カーボンブラックの含有量が5〜25質量%の範囲内であれば、任意の含有量(例えば20質量%)を有するものであってもよい。
・前記実施形態において、光反射抑制層15は、その厚みが5〜30μmの範囲内であれば、任意の厚み(例えば20μm)を有するものであってもよい。また、光の透過率が10%未満であれば、任意の光の透過率(例えば7%)を有するものであってもよい。また、光の反射率が3.5%未満であれば、任意の光の反射率(例えば3%)を有するものであってもよい。また、表面粗さが10μm以下であれば、任意の表面粗さ(例えば8μm)を有するものであってもよい。
・さらに、光反射抑制層15を形成するインクは、アニリンブラックの含有量が5〜25質量%の範囲内であれば、任意の含有量(例えば20質量%)を有するものであってもよい。
・前記実施形態において、光反射抑制体11は、家電の指示計器に用いられるものに具体化してもよい。また、オーディオ機器の指示計器に用いられるものに具体化してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記光遮蔽層は、その厚みが5〜30μmとなるように形成されている光反射抑制体。
(ロ)前記光透過層は、その厚みが0.05〜10mmとなるように形成されている光反射抑制体。
(ハ)前記光透過層は、JIS R 3601−1998に規定される光の透過率が85%以上となるように形成されている光反射抑制体。
(ニ)前記光透過層、光遮蔽層及び光反射抑制層は、JIS K 6251に規定される破断伸び率が50〜150%となるようにそれぞれ形成されている光反射抑制体。
(ホ)黒色の不透明又は半透明に着色された基材層と、該基材層に積層された光反射抑制体とを備えた光反射抑制体を製造する製造方法であって、前記基材層に、アニリンブラックを顔料とするインクを転位させることにより前記光反射抑制層を形成するようにした製造方法。
本実施形態における車輌用の指示計器の概略正面図。 本実施形態における光反射抑制体の概略断面図。 比較例の光反射抑制体の概略断面図。 別例の光反射抑制体の概略断面図。 (a)は走査型電子顕微鏡による実施例1の光反射抑制体の表面写真、(b)は走査型電子顕微鏡による比較例1の光反射抑制体の表面写真。
符号の説明
11,31…光反射抑制体、14…基材層、15…光反射抑制層、16,32…光透過層、17,33…光遮蔽層。

Claims (6)

  1. 黒色の不透明又は半透明に着色された基材層と、該基材層に積層された光反射抑制層とを備えた、車輌用の指示計器に用いられる光反射抑制体であって、
    前記光反射抑制層は、アニリンブラックを顔料として含むインクから形成され、
    前記基材層は、透明又は半透明な光透過層と、カーボンブラックを顔料として含むインクから形成されるとともに前記光反射抑制層に隣接する光遮蔽層とを有し、前記光遮蔽層及び光反射抑制層には厚さ方向に貫通して前記光透過層を露出させる指標部が形成されている光反射抑制体。
  2. 前記光反射抑制層は、JIS K 0601−1982に規定される表面粗さが10μm下である請求項1に記載の光反射抑制体。
  3. 前記光反射抑制層は、JIS R 3106−1998に規定される光の反射率が3.5%以下である請求項1又は請求項2に記載の光反射抑制体。
  4. 前記光反射抑制層は、JIS R 3106−1998に規定される光の透過率が10%以下である請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の光反射抑制体。
  5. 前記光反射抑制層を形成するインクには、アニリンブラックを5〜50質量%含有させる請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の光反射抑制体。
  6. 前記光反射抑制層は、その厚みが5〜30μmとなるように形成される請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の光反射抑制体。
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