JP2012063754A - 帯電部材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ブリードをより確実に抑制できる表面層を備えた帯電部材を提供する。
【解決手段】基体101、弾性層102および表面層103を有している帯電部材であって、該表面層103は、下記式(1)で示される構成単位と下記式(2)で示される構成単位とを有し、かつ、Si−O−Zrの結合を有している高分子化合物を含む。
Figure 2012063754

【選択図】図1

Description

本発明は電子写真装置の接触帯電に用いる帯電部材に関する。
電子写真感光体と当接して該電子写真感光体を帯電させる帯電部材は、電子写真感光体と帯電部材との当接ニップを十分かつ均一に確保するためにゴムを含む弾性層を有する構成が一般的である。かかる弾性層中には低分子量成分が不可避的に含まれることから、長期の使用によって、当該低分子量成分が帯電部材の表面に染み出し、電子写真感光体の表面を汚染することがある。このような課題に対して、特許文献1は、弾性層の周面を有機−無機ハイブリッド被膜で被覆し、低分子量成分が帯電部材の表面に染み出すことを抑制してなる構成を開示している。
特開2001−173641号公報
本発明者等は上記特許文献1に記載の発明を検討した。その結果、特許文献1に係る有機−無機ハイブリッド被膜は可撓性を重視しているためか、架橋密度が小さかった。そのため、低分子量成分の染み出し抑制のためには、サブミクロン以上の膜厚が必要であった。しかし、サブミクロン以上の膜厚となるように有機−無機ハイブリッド被膜を形成した場合、膜厚が不均一となり、それによって帯電が不均一化する場合があった。
そこで本発明の目的は薄くてもブリードをより確実に抑制することのできる表面層を備えた帯電部材の提供にある。
本発明によれば、基体、弾性層および表面層を有し、該表面層が、下記式(1)で示される構成単位と下記式(2)で示される構成単位とを有し、かつ、Si−O−Zrの結合を有している高分子化合物を含有する帯電部材が提供される。
Figure 2012063754
Figure 2012063754
式(1)中、R1およびR2は、各々独立に下記式(3)〜(6)で示される基からなる群から選ばれるいずれかを示す。
Figure 2012063754
Figure 2012063754
Figure 2012063754
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式(3)〜(6)中、R3〜R7、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R8、R9、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルコキシル基またはアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1以上8以下の整数を示す。pおよびrは、各々独立に4〜12の整数を示す。xおよびyは、各々独立に0もしくは1を示す。*および**は、各々、式(1)中のケイ素原子及び酸素原子への結合部位を示す。
本発明によれば、感光体ドラムとの当接痕が画像上に現れにくい帯電部材、並びに、該帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することができる。
本発明に係る帯電部材の断面図である。 本発明に係る帯電部材を用いた電子写真装置の断面図である。 実施例1の縮合物1−2の液体17O−NMRのスペクトルチャートである。 実施例1の縮合物1−3の固体29Si−NMRのスペクトルチャートである。 実施例1の縮合物1−3の固体13C−NMRのスペクトルチャートである。 動摩擦係数の測定に用いる測定機の説明図である。 本発明に係る表面層の形成工程における架橋反応の説明図である。 本発明に係る高分子化合物の一例の化学構造を示す図である。
図1に示す本発明に係る帯電部材は、基体101、導電性の弾性層102および表面層103がこの順番で積層されている。
〔基体〕
基体としては、鉄、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金又はニッケルで形成されている金属性(合金製)の基体を用いることができる。
〔弾性層〕
弾性層を構成する材料としては、従来の帯電部材の弾性層(導電性弾性層)に用いられているゴムや熱可塑性エラストマーを1種または2種以上用いることができる。ゴムの具体例を以下に挙げる。ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴムおよびアルキルエーテルゴム等。
熱可塑性エラストマーの具体例を以下に挙げる。スチレン系エラストマーおよびオレフィン系エラストマー等。スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名「ラバロン」、クラレ(株)製の商品名「セプトンコンパウンド」などが挙げられる。オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名「サーモラン」、三井化学(株)製の商品名「ミラストマー」、住友化学工業(株)製の商品名「住友TPE」、アドバンストエラストマーシステムズ社製の商品名「サントプレーン」などが挙げられる。
また、弾性層は、導電剤を適宜使用することによって所定の導電性を有するように構成されている。弾性層の電気抵抗値の目安としては、102Ω以上108Ω以下、特には103Ω以上106Ω以下である。
弾性層に用いられる導電剤の例としては、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、帯電防止剤、電解質などが挙げられる。また、弾性層の硬度は、帯電部材と被帯電体である電子写真感光体とを当接させた際の帯電部材の変形を抑制する観点から、アスカーCで70度以上であることが好ましく、特には73度以上92度以下であることがより好ましい。また、帯電部材は、弾性層の中央部の層厚が端部の層厚よりも厚い、いわゆるクラウン形状とすることが好ましい。
〔表面層〕
本発明の帯電部材を構成する表面層は、Si−O−Zrの結合を有している高分子化合物を含み、該高分子化合物は下記式(1)で示される構成単位と下記式(2)で示される構成単位とを有している。
Figure 2012063754
Figure 2012063754
式(1)中、R1およびR2は、各々独立に下記式(3)〜(6)で示される基からなる群から選ばれるいずれかを示す。
Figure 2012063754
Figure 2012063754
Figure 2012063754
Figure 2012063754
式(3)〜(6)中、R3〜R7、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R8、R9、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルコキシル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1〜8の整数を示し、pおよびrは、各々独立に4〜12の整数を示す。また、xおよびyは、各々独立に0もしくは1を示す。*および**は、各々、式(1)中のケイ素原子及び酸素原子への結合部位を示す。
本発明に係る高分子化合物の一例として、式(1)中のR1が式(3)で示される構造であり、R2が式(4)で示される構造であるときの構造の一部を図8(a)に示す。
また、本発明に係る高分子化合物の他の例として、式(1)中のR1が式(3)で示される構造であり、R2が式(6)で示される構造であるときの構造の一部を図8(b)に示す。
本発明に係る高分子化合物は、シロキサン結合およびケイ素原子に結合した有機鎖部分が互いに重合している構造を有するため架橋密度が大きい。そのため、帯電部材の弾性層上に係る高分子化合物からなる表面層を形成した場合、弾性層中の低分子成分が帯電部材の表面に染み出すことを有効に抑制することができる。加えて、高分子化合物中にSi−O−Zr結合を有することによって薄膜化したときの可撓性に優れる。このことにより、帯電部材を感光体ドラムと当接させた際の表面層への亀裂の発生などを有効に抑制することができる。
前記高分子化合物における式(1)のR1及びR2としては、各々独立に下記式(7)〜(10)で示される構造から選ばれる何れかであることが好ましい。このような構造とすることで、表面層をより強靭で耐久性に優れたものとすることができる。特に下記式(8)および(10)に示されるエーテル基を含む構造は、表面層の弾性層への密着性をより一層向上させることができる。
Figure 2012063754
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Figure 2012063754
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式(7)〜(10)において、N、M、L、Q、S及びTは、各々独立に1以上8以下の整数を示す。x’及びy’は、各々独立に0もしくは1を示す。
〔表面層の製造〕
本発明に係る高分子化合物は、下記式(11)で示される構造を有する加水分解性化合物と、下記式(12)で示される加水分解性化合物とを加水分解、脱水縮合させて縮合物を得た後、当該縮合物が有するエポキシ基を開裂させて架橋させることで得られる。このとき、式(11)の3官能部位と、式(12)の4官能部位とで生じる加水分解と縮合の程度を制御し、膜物性の弾性率、緻密性を制御することができる。また、式(11)のR33の有機鎖部位を硬化サイトとして用いることで、表面層の強靭さ、および表面層の弾性層への密着性の制御が可能である。また、R33を紫外線照射により開環するエポキシ基を有する有機基とすることで、従来の熱硬化性材料と比較して硬化時間を短縮でき、弾性層の熱劣化を抑制し得る。
Figure 2012063754
上記式(11)中、R33は、エポキシ基を有する下記式(13)〜(16)で示される構造から選ばれる何れかを示す。R34〜R36は、各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(12)中、R37〜R40は、各々独立に炭素数1〜9のアルキル基を示す。
Figure 2012063754
Figure 2012063754
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式(13)〜(16)中、R41〜R43、R46〜R48、R53、R54、R59及びR60は、各々独立に水素、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R44、R45、R49〜R52、R57、R58およびR63〜R66は、各々独立に水素、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す。R55、R56、R61およびR62は、各々独立に水素、炭素数1〜4のアルコキシル基、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す。
また、CR4445、CR4950、CR5152、CR5758、CR6364およびCR6566がカルボニル基でも良い。更に、R41、R42、R43および(CR4445n′中の炭素の少なくとも何れか2つ、R46、R47、R48および(CR4950m′中の炭素の少なくとも何れか2つ、及び、R53とR54、および、R59とR60は、共同して環をつくりシクロアルカンを形成してもよい。n’、m’、l’、q’、s’及びt’は、各々独立に1〜8の整数を示す。p’及びr’は、各々独立に4〜12の整数を示す。また、*は、式(11)のケイ素原子との結合位置を示す。
本発明に係る高分子化合物は、前記式(11)及び(12)で示される加水分解性化合物と、下記式(17)で示される加水分解性化合物との架橋物であることが好ましい。この場合、合成段階での式(11)及び(12)の溶解性、塗工性、更に硬化後の膜物性として、電気特性を向上させることが可能となるので好ましい。特にR67が炭素数1〜21のアルキル基の場合、溶解性、塗工性の改善として好ましい。また、R67がフェニル基の場合は、電気特性、特に体積抵抗率の向上に寄与するので好ましい。
Figure 2012063754
式(17)中、R67は、炭素数1〜21のアルキル基又はフェニル基を示し、R68〜R70は、各々独立に炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を示す。
本発明に係る帯電部材は、上記の加水分解縮合物を含む塗料の塗膜を弾性層上に形成した後に、該塗膜中の加水分解縮合物を架橋させて上記高分子化合物を形成し、これを表面層とすることによって形成することができる。
ここでは、高分子化合物の製造例として、弾性層上において上記高分子化合物を形成させて表面層を得る方法をより具体的に説明する。高分子化合物は、次の工程(1)〜工程(6)を経て製造される。尚、成分(A)は式(11)の加水分解性シラン化合物であり、成分(B)は式(17)の加水分解性シラン化合物、成分(C)は式(12)の加水分解性ジルコニウム化合物である。
(1):成分(A)と(B)と(C)のモル比(C)/[(A)+(B)]を0.1以上5.0以下に調整する工程、
(2):成分(A)と(B)を混合し、成分(D)の水、成分(E)のアルコールを添加した後、加熱還流により加水分解・縮合を行う工程、
(3):前記加水分解・縮合を行った溶液に成分(C)を添加し混合する工程、
(4):成分(F)の光重合開始剤を添加し、アルコールで濃度を希釈してコーティング剤(塗料)を得る工程、
(5):基体上に形成された弾性層上にコーティング剤を塗布する工程、
(6):加水分解縮合物を架橋反応させてコーティング剤を硬化する工程。
尚、工程(2)において成分(A)、(B)及び(C)を同時に添加してもよい。また加水分解性シラン化合物は、成分(A)1種類のみを使用してもよく、また成分(A)を2種類以上、もしくは成分(B)を2種類以上併用してもよい。
式(11)に係る加水分解性シラン化合物の具体例を以下に示す。
4−(1,2−エポキシブチル)トリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、8−オキシラン−2−イルオクチルトリメトキシシラン、8−オキシラン−2−イルオクチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルオキシプロピルトリエトキシシラン。
以下に式(12)の具体例を示す。
テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラn−プロポキシジルコニウム、テトラi−プロポキシジルコニウム、テトラn−ブトキシジルコニウム、テトラt−ブトキシジルコニウム、テトラ2−エチルヘキサノアートジルコニウム、テトラ2−メチル−2−ブトキシジルコニウム。
以下に式(17)の具体例を示す。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン。
上記成分のモル比(C)/{(A)+(B)}は、0.1以上5.0以下に調整することが好ましい。更に好ましくは0.5以上3.0以下である。0.1以上であれば、動摩擦係数が大きすぎることがなく、長期の耐久性評価においても汚れの付着が少なく、帯電ムラによる画像不良も起こらない。また5.0以下であれば、保存性は良好である。成分(D)の水の添加量については、(D)/{(A)+(B)}モル比が、0.3以上6.0以下が好ましい。更に1.2以上3.0以下が好ましい。0.3以上であれば、縮合が十分で、未反応の残存モノマーが殆どない。また6.0以下であれば縮合の進行が適度であり、白濁化や沈殿が生じることもない。
成分(E)のアルコールとして、第1級アルコール、もしくは第2級アルコール、もしくは第3級アルコール、もしくは第1級アルコールと第2級アルコールの混合系、もしくは第1級アルコールと第3級アルコールの混合系を用いることが好ましい。特にエタノール、メタノールと2−ブタノールの混合液、エタノールと2−ブタノールの混合液の使用が好ましい。
また成分(F)の光重合開始剤は、ルイス酸あるいはブレンステッド酸のオニウム塩を用いることが好ましい。その他のカチオン重合触媒としては、例えば、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物、過酸化物が挙げられる。光重合開始剤はコーティング剤との相溶性を向上させるために事前にアルコールやケトンなどの溶媒で希釈することが好ましい。
各種カチオン重合触媒の中でも、感度、安定性および反応性の観点から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましい。特には、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、下記式(18)で示される構造を有する化合物(商品名:アデカオプトマ−SP150、旭電化工業(株)製)及び下記化学式(19)で示される構造を有する化合物(商品名:イルガキュア261、チバスペシャルティーケミカルズ社製)が好ましい。
Figure 2012063754
Figure 2012063754
以上のように合成されたコーティング剤を実際塗布する適当な濃度に調整する。このとき塗布性向上のために、加水分解性縮合物以外に、適当な溶剤を用いてもよい。適当な溶剤としては、例えば、メタノールおよび2−ブタノールなどのアルコールや、酢酸エチルや、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン、あるいは、これらを混合したものが挙げられる。特にメタノールが好ましい。
〔表面層の形成〕
このように調製されたコーティング剤は、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、リング塗布などの手法によって、弾性層の上に塗布されコーティング層が形成される。コーティング層に活性化エネルギー線を照射すると、コーティング剤に含まれるシラン加水分解性縮合物中のカチオン重合可能な基が開裂・重合する。これによって、該シラン加水分解性縮合物同士が架橋し硬化し、表面層が形成される。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。表面層の硬化を紫外線で行うことで、余分な熱が発生しにくく、熱硬化のような溶剤の揮発中における相分離が生じにくく、非常に均一な膜状態が得られる。このため、感光体に対して均一で安定した電位を与えることができる。
また、帯電部材の置かれる環境が温湿度の変化が急激な環境である場合、その温湿度の変化による弾性層の膨張・収縮に表面層が十分に追従しないと、表面層にシワやクラックが発生することがある。しかしながら、架橋反応を熱の発生が少ない紫外線によって行えば、弾性層と表面層との密着性が高まり、弾性層の膨張・収縮に表面層が十分に追従できるようになるため、環境の温湿度の変化による表面層のシワやクラックも抑制することができる。また、架橋反応を紫外線によって行えば、熱履歴による弾性層の劣化を抑制することができるため、弾性層の電気的特性の低下を抑制することもできる。紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプなどを用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150nm以上480nm以下の光を豊富に含む紫外線源が用いられる。
なお、紫外線の積算光量は、以下のように定義される。
紫外線積算光量[mJ/cm2]=紫外線強度[mW/cm2]×照射時間[s]
紫外線の積算光量の調節は、照射時間や、ランプ出力や、ランプと被照射体との距離で行うことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。
低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやUVD−S254(いずれも商品名)を用いて測定することができる。また、エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやVUV−S172(いずれも商品名)を用いて測定することができる。
本発明にかかる高分子化合物の縮合率DCは50%以上75%以下であることが望ましい。DCはSi原子がどの程度縮合しているかを表す指標であり、以下の数式(1)を用いて算出される。
Figure 2012063754
Si−OHは(Si−O−R34366870)が加水分解した状態を示す。ここで(Si−O−Si)および(Si−O−Zr)はT1〜T3を示すピーク積分値から算出し、[(Si−O−Si)+(Si−O−Zr)+(Si−O−R34366870)+(Si−R3367)+(Si−OH)]はT成分が検出される範囲のピークの積分値の合計値から算出する。
T成分は、RSi(O−)3で示されるように1つの有機基(R)と、加水分解性の官能基またはそれが反応した結合を計3つもつSiの状態を示し、T1〜T3の数値は、T成分のSiがもつ、Oを介した他の原子(Si、Zr)との結合数を示している。そして、縮合率が50%以上であるとき、高分子化合物の硬化が十分に進んでいることを示す。一方、縮合率75%は、高分子化合物の構造中に下記構造式(20)で示されるような4官能のSiが導入されたときになり得る。
Figure 2012063754
本発明に係る高分子化合物における、ジルコニウムとケイ素との原子数比Zr/Siは0.1以上5.0以下であることが好ましい。本発明に係る高分子化合物において、Zr−O−Zr結合に対する割合[(Si−O−Zr)/(Zr−O−Zr)]は、0.1以上であることが望ましい。0.1以上である場合、ジルコニウムの多くが分散しシリコンと結合しており、沈殿等のない均一な液となる。
本発明に係る高分子化合物の形成過程において生じる架橋および硬化反応について図7を用いて説明する。
例えば、前記した成分(A)としての、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、成分(B)と、成分(C)とを加水分解させて得られる縮合物は、カチオン重合可能な基としてエポキシ基を有する。このような加水分解縮合物のエポキシ基は、カチオン重合触媒(図7中、R+と記載)の存在下で、エポキシ環が開環し、連鎖的に重合が進む。その結果、ZrO4/2を含むポリシロキサン同士が架橋し、硬化して本発明に係る高分子化合物が形成される。なお、図7中、nは1以上の整数を表す。
<画像形成装置およびプロセスカートリッジ>
図2によって、本発明の帯電部材が帯電ローラとして使用されるプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の一例を説明する。図2において、円筒状の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体としては、支持体および支持体上に形成された無機感光層もしくは有機感光層を有するものが一般的である。また、電子写真感光体は表面層として電荷注入層を有するものであってもよい。
回転駆動される電子写真感光体1の表面は、本発明の帯電部材3(図2においてはローラ形状の帯電部材)により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光の如き露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受けることで、電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成される。帯電部材3による電子写真感光体1の表面帯電の際、帯電部材3には、電圧印加手段(不図示)から直流電圧のみの電圧あるいは直流電圧に交流電圧を重畳した電圧が印加される。後述の実施例においては、帯電部材には直流電圧のみの電圧(−1000V)を印加した。また、後述の実施例において、暗部電位は−500V、明部電位は−150Vとした。電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像(反転現像もしくは正規現像)されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに順次転写されていく。なお、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送される。現像手段としては、例えば、ジャンピング現像手段、接触現像手段および磁気ブラシ手段などが挙げられるが、トナーの飛散性改善の観点から、接触現像手段が好ましく、後述の実施例においては、接触現像手段を採用した。また、転写ローラとしては、支持体上に中抵抗に調整された弾性樹脂層を被覆してなるものが例示される。トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合、この画像形成物は、不図示の再循環搬送機構に導入されて転写部へ再導入される。
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化される。さらに、前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、帯電手段が接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
上述の電子写真感光体1、帯電部材3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段7などの構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成することができる。そして、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターの如き電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。図2では、電子写真感光体1、帯電部材3、現像手段5およびクリーニング手段7を一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールの如き案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ9としている。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
〔実施例1〕
〔1〕導電性弾性層の形成及び評価
表1に示す材料を6L加圧ニーダー(使用装置:TD6−15MDX トーシン社製)にて、充填率70体積%、ブレード回転数30rpmで24分混合して、未加硫ゴム組成物を得た。
Figure 2012063754
この未加硫ゴム組成物174質量部に対して、加硫促進剤としてのテトラベンジルチウラムジスルフィド[商品名:サンセラーTBzTD、三新化学工業(株)製]4.5部、加硫剤としての硫黄1.2部を加えた。そして、ロール径12インチのオープンロールで、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで、左右の切り返しを合計20回実施した。その後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行い、弾性層用の混練物1を得た。次に、直径6mm、長さ252mmの円柱形の鋼製の支持体(表面をニッケルメッキ加工したもの)を準備した。そして、この支持体の、円柱面軸方向中央を挟んで両側115.5mmまでの領域(あわせて軸方向幅231mmの領域)に、金属およびゴムを含む熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20、(株)東洋化学研究所製)を塗布した。これを30分間温度80℃で乾燥させた後、さらに1時間温度120℃で乾燥させた。
混練物1を、クロスヘッドを用いた押出成形によって、上記接着層付き芯金を中心として、同軸状に外径8.75〜8.90mmの円筒形に同時に押出し、端部を切断して、芯金の外周に未加硫の導電性弾性層を積層した導電性弾性ローラを作製した。押出機はシリンダー径70mm、L/D=20の押出機を使用し、押出時の温調はヘッドの温度を90℃とし、シリンダーの温度を90℃とし、スクリューの温度を90℃とした。次に上記ローラを異なる温度設定にした2つのゾーンをもつ連続加熱炉を用いて加硫した。第1ゾーンを温度80℃に設定し、30分で通過させ、第2ゾーンを温度160℃に設定し、こちらも30分通過させ、加硫された導電性弾性ローラを得た。
次に、表面研磨前の導電性弾性ローラの導電性弾性層部分(ゴム部分)の両端を切断し、導電性弾性層部分の軸方向幅を232mmとした。その後、導電性弾性層部分の表面を回転砥石で研磨(ワーク回転数333rpm、砥石回転数2080rpm、研磨時間12sec)した。こうすることで、端部直径8.26mm、中央部直径8.50mmのクラウン形状で、表面の十点平均粗さ(Rz)が5.5μmで、振れが18μm、アスカーC硬度が73度の導電性弾性ローラ−1(表面研磨後の導電性弾性ローラ)を得た。
十点平均粗さ(Rz)はJISB6101に準拠して測定した。振れの測定は、ミツトヨ(株)製高精度レーザー測定機LSM−430vを用いて行った。詳しくは、該測定機を用いて外径を測定し、最大外径値と最小外径値の差を外径差振れとし、この測定を5点で行い、5点の外径差振れの平均値を被測定物の振れとした。アスカーC硬度の測定は、測定環境25℃、55%RHで、測定対象の表面にアスカーC型硬度計(高分子計器(株)製)の押針を当接し、1000g加重の条件で行った。
〔2〕縮合物の合成及び評価
〔縮合物1−1〕
次に表面層形成用の縮合物1−1を合成した。
(合成−1):第1段階反応
以下の表2の各成分を混合した後、室温で30分攪拌した。続いてオイルバスを用い、120℃で20時間加熱還流を行うことによって、縮合物中間体1を得た。
Figure 2012063754
この縮合物中間体1の理論固形分(加水分解性シラン化合物が全て脱水縮合したと仮定した時のポリシロキサン重合物の、溶液全重量に対する質量比率)は28.0質量%であった。
(合成−2):第2段階反応
次に、室温に冷却した縮合物中間体1の88.12gに対し、テトラn−プロポキシジルコニウム[Gelest(株)製、以下、「Zr−1」と略す。]81.59g(0.174mol)添加し、室温で3時間攪拌し縮合物1−1を得た。一連の攪拌は750rpmで行った。Zr/Si=1.0であった。
評価〔1〕:縮合物1−1の固形分達成率;
縮合物1−1の固形分達成率を表3に示した。この縮合物固形分は、縮合物1を2.0g、160℃のオーブンで30分加熱することにより測定した。加熱により得られる実質固形分と理論固形分の差より達成値を算出し、縮合物1−1に残存している未反応のモノマー(残モノマー)量を算出した。
〔縮合物1−2〕
イオン交換水を17O−H2O(7−9.9atm%、CIL社製)に代えた他は、縮合物1と同様にして縮合物1−2を得た。
評価〔2〕:(Si−O−Zr)/(Zr−O−Zr)比;
縮合物1−2を測定用試料として、17O−NMR[使用装置:Avance500 BRUKER社製]測定をし、図3のスペクトルを得た。150〜250ppmのピークをSi−17O−Zr、250〜350ppmのピークをZr4 17O、350〜450ppmのピークをZr3 17Oとした。Zr4 17O、Zr3 17Oの面積和をZr−17O−Zrとし、(Si−O−Zr)/(Zr−O−Zr)比を算出した。また、このときZr−O−Hが確認できず、また評価〔1〕において固形分達成率が十分に高いことよりモノマーとしての残存はないことから、Zr−OR69もないと考えられ、Zrは大部分が式(2)の状態で存在していることが示唆された。ここでR69は炭化水素基もしくは一部酸素、窒素で置換された炭化水素基を示す。
〔縮合物1−3〕
25gの縮合物1−1に光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩[商品名:アデカオプトマー SP−150、旭電化工業(株)製]をメタノールで10質量%に希釈したものを2.00g添加して、縮合物1−3を得た。
評価〔3〕:縮合物1−3の硬化膜の化学構造;
次に[JMN−EX400、JEOL社製]を用いて29Si−NMR、13C−NMR測定により、縮合物1−3の硬化膜を構成する高分子が式(1)の構造を有していることを確認した。
理論固形分が7.0質量%になるようにエタノールと2−ブタノールの混合液(エタノール:2−ブタノール=1:1)で縮合物1−3を希釈した希釈液を調製した。この希釈液を、ケトンおよびアルコールで脱脂したアルミニウム製シート(厚み100μm)上に滴下し、回転数300rpmで2秒間、回転させて膜を形成し、乾燥させた。
乾燥後、254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cm2になるように照射し、縮合物1−3を架橋させた。架橋させた縮合物をアルミニウム製シートから剥離し、粉砕したものをNMR測定用試料として用いた。
29Si−NMR測定で得られたスペクトルを図4に示す。同図内にスペクトルを波形分離したピークを同時に示した。−64ppm〜−74ppm付近のピークがT3成分を示す。ここでT3成分とは有機官能基との結合を1つもつSiが、Oを介した他の原子(Si、Zr)との結合を3つもつ状態を示す。図4より、より、エポキシ基を含む有機鎖をもつ加水分解性シラン化合物が縮合し、−SiO3/2の状態で存在する種があることを確認した。また13C−NMR測定で得られたスペクトルを図5に示す。開環前のエポキシ基を示すピークは44ppm、51ppm付近に現れ、開環重合後のピークは69ppm、72ppm付近に現れる。図5より未開環のエポキシ基がほとんど残存せずに重合していることを確認した。以上の29Si−NMR、13C−NMRより式(1)の構造を硬化膜内に有していることを確認した。
評価〔4〕:硬化膜の縮合度;
縮合物1−3の硬化物の縮合度(DC)を評価〔3〕の29Si−NMRの結果より算出した。
評価〔5〕:硬化膜の弾性率;
評価〔3〕に記載した方法と同様にアルミニウム製シート上に縮合物1―3の硬化膜を形成し、表面皮膜物性試験機(商品名:フィッシャースコープH100V、フィッシャーインストルメンツ社製)を用いて弾性率を測定した。圧子を測定対象の表面から1μm/7sの速度で進入させたときの値を弾性率とした。なお、弾性率測定用のサンプルは、硬化膜厚が10μm以上になるよう調整した。
〔3〕表面層の形成及び評価
縮合物1−3を固形分が3.0質量%になるようにエタノールと2−ブタノールの混合液(エタノール:2−ブタノール=1:1)で希釈し、表面層形成用コーティング液−1を調製した。続いてこのコーティング液−1を用いて以下の方法で帯電ローラ−1を製造した。先ず、導電性弾性ローラ−1(表面研磨後のもの)の導電性弾性層上にコーティング液−1を、リング塗布(吐出量:0.060ml/s、リング部のスピード:85mm/s、総吐出量:0.065ml)した。これに、254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cm2になるように照射し、コーティング液−1を硬化(架橋反応による硬化)させることによって表面層を形成した。紫外線の照射には低圧水銀ランプ[ハリソン東芝ライティング(株)製]を用いた。以上のようにして作製した帯電ローラ−1を用いて以下の各評価7〜9を行った。
評価〔6〕:帯電ローラのSi−O−Zr結合の確認;
帯電ローラ−1の表面層最表面のSi−O−Zr結合の存在をESCAで確認した。[Quantum2000、アルバックファイ社製]を用いて、ローラ面にX線が照射されるようにし、表面層内の結合様式を評価した。検出されたO1sスペクトルより、Si−O−Zr結合の存在が確認された。
評価〔7〕:帯電ローラの外観
帯電ローラ−1の表面の外観状態を目視にて以下のように判断した。
A:帯電ローラの表面に全く塗工不良がない場合。
B:帯電ローラの表面の一部に塗工不良が生じた場合。
C:帯電ローラの表面の全領域に塗工不良が生じた場合。
評価〔8〕:表面層の厚み;
帯電ローラ−1に形成された表面層の層厚を測定した。切断した断面を観察し計測した。使用装置:走査型透過電子顕微鏡[STEM 製品名:HD−2000、(株)日立ハイテクノロジーズ製]
評価〔9〕:帯電ローラの当接試験;
上記と同様にして作製した帯電ローラ−1を用いて、以下のように当接試験を行った。帯電ローラと電子写真感光体とを、これらを一体に支持するプロセスカートリッジに組み込んだ。このとき帯電ローラには合計1kgの荷重がかかるようにした。その後高温高湿下(温度40℃、湿度95%RH)に10日及び30日放置した。取り出し後常温常湿下(温度25℃、湿度50%RH)に72時間放置し、A4紙縦出力用のレーザービームプリンター[商品名:HP Color LaserJet 4700 Printer、HP社製]に装着し、出力画像を評価した。このレーザービームプリンターの現像方式は反転現像方式であり、転写材の出力スピードは164mm/sであり、画像解像度は600dpiである。
なお、帯電ローラとともにプロセスカートリッジに組み込んだ電子写真感光体は、支持体上に層厚19.0μmの有機感光層を形成してなる有機電子写真感光体である。また、この有機感光層は、支持体側から電荷発生層と変性ポリカーボネート(結着樹脂)を含有する電荷輸送層とを積層してなる積層型感光層であり、この電荷輸送層は電子写真感光体の表面層となっている。
また、上記レーザービームプリンターに使用したトナーは、いわゆる重合トナーであり、そのガラス転移温度は63℃、体積平均粒子径は6μmである。この重合トナーは、ワックス、荷電制御剤、色素、スチレン、ブチルアクリレートおよびエステルモノマーを含む重合性単量体系を水系媒体中で懸濁重合して得られた粒子に、シリカ微粒子および酸化チタン微粒子を外添してあるトナー粒子を含んでいる。
帯電ローラの当接試験後の当接痕による、画像上のスジの評価基準(「Cセットランク」という)は以下のとおりである。以下の評価に記載している長さはA4縦用紙上での横方向のスジの長さであり、そのスジの太さはおよそ1mm程度である。
5.0:画像上全く確認できないもの、
4.5:画像上ほとんど確認できないもの、
4.0:画像端部に確認できるが、薄く、4〜5mm程度の長さのもの、
3.5:画像端部に確認でき、15mm未満の長さのもの、
3.0:画像端部に確認でき、30mm未満の長さのもの、
2.0:30mm以上70mm未満の長さのもの、
1.0:70mm以上の長さのもの。
評価〔10〕:帯電ローラの動摩擦係数;
図6の動摩擦係数測定機を用いて帯電ローラ−1の動摩擦係数を測定した。図6において、測定対象である帯電部材201には、ベルト202(厚さ100μm、幅30mm、長さ180mm、ポリエチレンテレフタレート(PET)製(商品名:ルミラーS10 #100、東レ(株)製))が所定の角度θで接触されている。また、ベルト202の一端には重り203がまた他端には荷重計204が繋がれている。荷重計204には記録計205が接続されている。図6に示す状態で、帯電部材201を所定の方向および所定の速度で回転させたとき、荷重計204で測定された力をF[g重]、重りの重さとベルトの重さとの和をW[g重]とすると、摩擦係数は以下の式で求められる。なお、この測定方法は、オイラーのベルト式に準拠している。
摩擦係数=(1/θ)ln(F/W)
本発明においては、W=100[g重]とし、帯電部材の回転速度を115rpmとし、測定環境を23℃、50%RHとした。
評価〔11〕:帯電ローラの耐久試験;
帯電ローラと電子写真感光体とを、評価〔9〕と同様にプロセスカートリッジに組み込み、同様の装置を用いて耐久試験を行い、耐久による汚れの付着の評価を行った。画像出力は、常温常湿下(温度25℃、湿度50%RH)で行い、A4紙に印字率1%のE文字パターンを形成し、2枚毎に4秒間の空回転を入れる間欠出力モードで出力した。間欠出力モードでの画像出力は、連続通紙に比べて、同じ通紙枚数でも帯電部材と感光体との摺擦回数が多くなるため、帯電部材表面の汚れの評価に対しては、より厳しい評価である。各条件下にてこれを164mm/sのプロセススピードで4000枚出力した。出力画像の評価は、出力画像と耐久試験後の帯電ローラを目視することによって行った。
画像評価基準は以下のとおりである。
A:帯電ローラの表面に、塗工時のムラやスジ部分にトナーや外添剤が固着することによる帯電ムラが出力画像上ほとんど確認できないもの、
B:帯電ローラの表面に、塗工時のムラやスジ部分にトナーや外添剤が固着することによる帯電ムラが出力画像上確認できるもの、
C:帯電ローラの表面に、塗工時のムラやスジ部分にトナーや外添剤が固着することによる帯電ムラが出力画像上確認でき、その帯電ムラの程度が大きいもの、具体的には、白い縦スジ状の帯電ムラが確認できるもの。
ローラの評価基準は以下のとおりである。
A:汚れ(付着物)が目視で確認できないもの、
B:端部のみ汚れが確認できるもの、
C:ローラ全体に汚れが確認できるもの。
〔実施例2〜20〕
合成−1及び合成−2における各成分の配合量を表3の値に変えた以外は実施例1と同様にして、帯電ローラ2〜20を作製した。実施例1と同様の評価を行った。なお、表3中で表記されている記号の詳細を表6に示す。
また、表3中、実施例5、7、8および11に係る硬化膜の弾性率は測定しなかった。その理由は、弾性率測定用の厚み10μmの膜にはクラックが生じたためである。これは、4官能であるZr量が多いためと考えられる。ただし、導電性弾性ローラ上へのコーティング剤塗布により成形する表面層は、弾性率測定用の硬化膜よりも格段に薄い膜であり、また、導電性弾性層と縮合物との密着性が大きいことから、表面層の形成に支障はなかった。弾性層以外の物性や試験結果は通常通り評価した。また、後述する比較例2に関しても同様である。評価3により全ての実施例において式(1)の構造の存在が確認できた。また評価6により全ての実施例においてSi−O−Zr結合の存在が確認できた。
〔比較例1〕
表4の配合の通り、テトラ−n−プロポキシジルコニウムを加える合成−2を行わず、光カチオン重合開始剤を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、帯電ローラ−21を作製し、評価した。ただし、UV照射ではなく250℃で1時間加熱し硬化させ成膜した。
〔比較例2〕
合成−1を実施せず、合成−2を実施した。即ち、表4の配合の通り、加水分解性シリカを加えず、水とエタノールにテトラ−n−プロポキシジルコニウムを添加し、室温で3時間攪拌し縮合物を得た。その後は光カチオン重合開始剤を添加しないこと以外は実施例1と同様にして、帯電ローラ−22を作製し、評価した。
〔比較例3〕
表4の配合の通り、加水分解性シリカの原料として両末端シラノールポリジメチルシロキサン[PDSと表記、商品名:DMS−S12、GELEST(株)製、分子量400〜700]を用いて合成−1を実施した。また合成−2においてはPDSの分子量を550としたとき、Zr/Si=1.0となるようにZr−1を添加した。それ以外は実施例1と同様にして縮合物を得た。膜を硬化するためにUV照射ではなく250℃で1時間加熱し、光重合開始剤を添加しないこと以外は実施例1と同様にして、帯電ローラ−23を作製した。実施例1と同様の評価を行った。
上記実施例1〜20の評価結果を表5−1に、比較例1〜3の評価結果を表5−2に示す。
Figure 2012063754
Figure 2012063754
Figure 2012063754
Figure 2012063754
Figure 2012063754
101 基体
102 導電性弾性層
103 表面層
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電部材(帯電ローラ)
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 クリーニング手段
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
P 転写材
201 帯電部材(帯電ローラ)
202 ベルト
203 重り
204 荷重計
205 記録計

Claims (6)

  1. 基体、弾性層および表面層を有している帯電部材であって、該表面層は、下記式(1)で示される構成単位と下記式(2)で示される構成単位とを有し、かつ、Si−O−Zrの結合を有している高分子化合物を含有していることを特徴とする帯電部材:
    Figure 2012063754
    Figure 2012063754
    [式(1)中、R1およびR2は、各々独立に下記式(3)〜(6)で示される基からなる群から選ばれるいずれかを示す:
    Figure 2012063754
    Figure 2012063754
    Figure 2012063754
    Figure 2012063754
    [式(3)〜(6)中、R3〜R7、R10〜R14、R19、R20、R25およびR26は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R8、R9、R15〜R18、R23、R24およびR29〜R32は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21、R22、R27およびR28は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルコキシル基またはアルキル基を示す。n、m、l、q、sおよびtは、各々独立に1〜8の整数を示す。pおよびrは、各々独立に4〜12の整数を示す。xおよびyは、各々独立に0もしくは1を示す。*および**は、各々、式(1)中のケイ素原子及び酸素原子への結合部位を示す。]]。
  2. 前記式(1)のR1及びR2が、各々独立に下記式(7)〜(10)で示される構造から選ばれる何れかである請求項1に記載の帯電部材:
    Figure 2012063754
    Figure 2012063754
    Figure 2012063754
    Figure 2012063754
    [式(7)〜(10)において、N、M、L、Q、S及びTは、各々独立に1以上8以下の整数を示す。x’及びy’は、各々独立に0もしくは1を示す。]。
  3. 前記高分子化合物における、ジルコニウムとケイ素との原子数比Zr/Siが、0.1以上5.0以下である請求項1または2に記載の帯電部材。
  4. 前記高分子化合物が、式(11)で示される加水分解性シラン化合物と、式(12)で示される加水分解性ジルコニウム化合物との架橋物である請求項1から3のいずれかの一項に記載の帯電部材:
    Figure 2012063754
    Figure 2012063754
    [式(11)中、R33は、下記式(13)〜(16)のいずれかを示し、R34〜R36は、各々独立して炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(12)中、R37〜R40は、各々独立して炭素数1〜9のアルキル基を示す:
    Figure 2012063754
    Figure 2012063754
    Figure 2012063754
    Figure 2012063754
    [式(13)〜(16)中、R41〜R43、R46〜R48、R53、R54、R59およびR60は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R44、R45、R49〜R52、R57、R58およびR63〜R66は各々独立して水素、炭素数1〜4のアルキル基を示す。R55、R56、R61およびR62は、各々独立して水素、炭素数1〜4のアルコキシル基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’およびt’は、各々独立して1〜8の整数を示す。p’およびr’は、各々独立して4〜12の整数を示す。また、*は、式(11)のケイ素原子との結合位置を示す。]]。
  5. 前記高分子化合物が、前記式(11)および(12)で示される加水分解性化合物と、下記式(17)で示される加水分解性化合物との架橋物である請求項1〜4のいずれかの一項に記載の帯電部材:
    Figure 2012063754
    [式(17)中、R67は、炭素数1〜21のアルキル基、またはフェニル基を示し、R68〜R70は、各々独立して炭素数1〜6のアルキル基を示す。]。
  6. 請求項5に記載の帯電部材の製造方法であって、前記式(11)で示される加水分解性化合物と前記式(12)で示される加水分解性化合物から合成される加水分解縮合物を含む塗料の塗膜を前記弾性層上に形成する工程と、該加水分解縮合物のエポキシ基を開裂させて、該加水分解縮合物を架橋させることによって前記表面層を形成する工程とを含むことを特徴とする帯電部材の製造方法。
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