JP2012041207A - 固体電解質ガラス及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】原料を微粒子化するために用いるニトリル溶媒と同一の溶媒中で固体電解質ガラスを製造できる方法を提供する。
【解決手段】リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む固体電解質ガラスであって、ニトリル化合物を含み、熱量計測定装置の150℃までの重量減少量が5重量%以下である固体電解質ガラス。
【選択図】なし

Description

本発明は、固体電解質ガラス及びその製造方法に関する。さらに詳しくは固体電解質ガラス及びその製造方法、当該固体電解質ガラスから得られる電解質ガラスセラミックス、並びにこれらを用いてなるリチウム電池に関する。
近年、携帯情報末端、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モーターを動力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いられる高性能リチウム二次電池等の充電放電可能な二次電池の需要が増加しており、その使用用途が広がるにつれて、さらなる安全性の向上及び高性能化が要求されるようになった。
従来、室温で高いリチウムイオン伝導性を示す電解質は、ほとんど有機系電解質に限られていた。しかし、従来の有機系電解質は、有機溶媒を含むため可燃性であり、有機溶媒を含むイオン伝導性材料を電池の電解質として用いる際には、液漏れの心配や発火の危険性があった。また、上記の有機系電解質は液体であるため、リチウムイオンが伝導するだけでなく、対アニオンも伝導するため、リチウムイオン輸率が1以下であるという問題があった。
一方、無機固体電解質は、その性質上不燃性であり、通常使用される有機系電解質と比較して安全性の高い材料である。しかしながら、有機系電解質に比べて電気化学的性能が若干劣るため、無機固体電解質の性能をさらに向上させる必要がある。
このような問題に対し、従来より硫化物系固体電解質の研究が種々行われており、例えば、1980年代に、高イオン伝導性を有するリチウムイオン伝導性固体電解質として、10−3S/cmのイオン伝導性を有する硫化物ガラス、例えばLiI−LiS−P、LiI−LiS−B、LiI−LiS−SiS等が見出されている。
上記硫化物ガラスの製造方法としてメカニカルミリング法(特許文献1)及び溶融法(特許文献2)があるが、メカニカルミリング法は、ボールミル等の特殊な装置を必要とし、製造コストが高くなってしまう問題があった。また、溶融法は高温化で硫化物系ガラスを製造するため特殊な設備等が必要であり、製造コストが高くなってしまうメカニカルミリング法と同様の問題があった。
高コストの問題を解決するため、有機溶媒中で硫化物系ガラスを製造する方法が開示されているが(特許文献3及び4)、当該方法であっても、有機溶媒中での硫化物系ガラスの合成を効率的にするためには、原料を機械的手段(例えば、メカニカルミリング)により粉砕し微粒子化する必要があるとともに、硫化物系ガラスの製造プロセスの簡素化(原料の微粒子化と硫化物系ガラスの合成プロセスを合せたプロセス)が求められていた。
特開平11−134937号公報 WO2005/119706 WO2004/093099 WO2009/047977
本発明の目的は、原料の微粒子化を機械的手段によらずに可能とし、かつ硫化物系ガラスの製造プロセスを簡素化できる方法を提供することである。
本発明によれば、以下の固体電解質ガラス等が提供される。
1.リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む固体電解質ガラスであって、ニトリル化合物を含み、熱量計測定装置の150℃までの重量減少量が5重量%以下である固体電解質ガラス。
2.リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む固体電解質ガラスであって、XRDにおいて、2θ=14.7±0.3deg、20.3±0.3deg、29.7±0.3deg、33.9±0.3deg及び41.1±0.3degにピークを有する固体電解質ガラス。
3.単体リン及び/又はリン化合物と硫化リチウムをニトリル系溶剤中で反応させる工程を含む固体電解質ガラスの製造方法。
4.前記硫化リチウムを、前記ニトリル系溶剤中で微粒子化する3に記載の固体電解質ガラスの製造方法。
5.前記リン化合物が硫化リンである3又は4に記載の固体電解質ガラスの製造方法。
6.3〜5のいずれかに記載の製造方法により得られる固体電解質ガラス。
7.1、2及び6のいずれかに記載の固体電解質ガラスを熱処理して得られる電解質ガラスセラミックス。
8.正極層、電解質層及び負極層を含むリチウム電池であって、前記正極層、電解質層及び負極層の少なくとも1層が、1、2及び6のいずれかに記載の固体電解質ガラス、又は請求項7に記載の電解質ガラスセラミックスを含むリチウム電池。
本発明によれば、原料の微粒子化を機械的手段によらずに可能とし、かつ硫化物系ガラスの製造プロセスを簡素化できる方法を提供することである。
実施例1で調製した固体電解質ガラスのTGA曲線を示す図である。 実施例1で調製した固体電解質ガラスのXRDスペクトルを示す図である。 比較例1で調製した固体電解質ガラスのXRDスペクトルを示す図である。 比較例3で調製した固体電解質ガラスのXRDスペクトルを示す図である。
本発明の第1の固体電解質ガラスは、リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む固体電解質ガラスであって、ニトリル化合物を含み、熱量計測定装置の150℃までの重量減少量が5重量%以下である固体電解質ガラスである。
固体電解質ガラスが含むニトリル化合物は、ニトリル基を含む化合物であり、例えばR−CNで表わされる化合物である。Rはアルキル基、フェニル基、シクロアルキル基等を示し、ニトリル化合物はさらにハロゲン元素を含んでもよい。
上記ニトリル化合物は、例えば沸点範囲が30℃以上280℃以下であり、好ましくは40℃以上250℃以下で、且つ融点が30℃以下であり、具体例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル、シクロへキシルニトリル、シクロペンチルニトリル、ジフルオロアセトニトリル、ジクロロアセトニトリル等が挙げられる。
固体電解質ガラスが含むニトリル化合物の含有量は少ないほどよく、好ましくは20wt%以下であり、より好ましくは1〜20wt%である。
ニトリル化合物の含有量が20重量%超の場合、イオン伝導度が低下するおそれがあり、また、粒子状粉末として取扱が困難となる。
固体電解質ガラスは、熱量計測定装置(TGA)において、150℃までの重量減少量が5重量%以下であり、好ましくは3重量%以下であり、より好ましくは0.05重量%以上2重量%以下である。
上記TGAによる重量減少量は、測定する固体電解質ガラスを30℃で15分保持し、その後10℃/分の速度で600℃まで上昇させて、上昇途中の150℃における重量減少量を測定することで得られる値であって、当該重量減少量は、測定前の固体電解質ガラスの重量に対する値である。
本発明の第1の固体電解質ガラスにおいて、TGAによる150℃までの重量減少量が5重量%以下であることは、固体電解質ガラスのリチウム、リン及び/又は硫黄成分と結合していないニトリル化合物が非常に少ないことを意味し、電解質成分は、流動性が良好な粒子状粉末として取り扱える状態となる。
また、本発明の第1の固体電解質の上記重量減少量が5重量%超の場合、イオン伝導度が低下するおそれがあり、また、流動性が良好な粒子状粉末とならないため、次工程での取扱が困難となる。
本発明の第1の固体電解質は、Li、P及びSとニトリル化合物以外に、本発明の効果を損なわない範囲でAl、B、Si、Ge等の他の物質を含んでもよい。
本発明の第2の固体電解質ガラスは、リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含み、XRDにおいて、2θ=14.7±0.3deg、20.3±0.3deg、29.7±0.3deg、33.9±0.3deg及び41.1±0.3degにピークを有する。
本発明の第2の固体電解質ガラスのXRDの各ピークは、新規な結晶相となっていることを表している。固体電解質ガラスがこれら各ピークを有することは、含有するニトリル系化合物が電解質ガラスと相互作用をもって結晶化していることを示している。
電解質ガラスの製造に用いる極性の低いトルエン、キシレン等の溶剤は、電解質ガラスとの相互作用が弱いため、真空乾燥等で容易に除去が可能である。一方、電解質ガラスの製造に極性部位を有する溶剤を用いた場合、極性部分が得られる電解質ガラスと相互作用をもつ場合がある。相互作用が強すぎる溶媒、例えば、アルコールやアミン類を用いた場合、得られる電解質ガラスは、望ましくない反応形態が現れ、目的とする構造を保持できず異なった結晶状態になる。
本発明においては、後述するようにニトリル基のような適当な極性を有する溶剤を用いることで、生成物の反応での結晶崩壊を抑え、且つ、適度な錯化形成により新規な微粒子構造の形成がなされて反応が進行すると予想される。
本発明の第2の固体電解質ガラスは、ニトリル化合物を含んでもよく、当該ニトリル化合物は第1の固体電解質ガラスが含むニトリル化合物と同様である。
また、本発明の第2の固体電解質ガラスは、Li、P及びSとニトリル化合物以外に、本発明の効果を損なわない範囲でAl、B、Si、Ge等の他の物質を含んでもよい。
本発明の固体電解質ガラスの製造方法は、単体リン及び/又はリン化合物と硫化リチウムをニトリル系溶剤中で反応させる工程を含み、上述の本発明の第1及び第2の固体電解質ガラスは、共に本発明の固体電解質ガラスの製造方法により製造することができる。
本発明の固体電解質ガラス製造方法は、固体電解質ガラスをバッチ式反応槽のみで合成できるため生産性を高めることができる。また、特殊な機器(高温に耐えうる設備、ボールミル等)を使用することなく固体電解質ガラスの調製が可能である。
用いる硫化リチウムの平均粒径は特に制限されないが、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上800μm以下である。ハンドリング(硫化リチウムの取扱い易さ)の観点から、硫化リチウムの平均粒径は700μm以上であることが好ましい。
硫化リチウムの表面積は特に制限されないが、好ましくは1.0m/g以上であり、より好ましくは、2.0m/g以上500m/g以下である。
また、硫化リチウムの細孔容積は特に制限されないが、好ましくは0.01ml/g以上であり、より好ましくは、0.02ml/g以上1.0ml/g以下である。
硫化リチウムの純度は特に制限されないが、高純度な硫化リチウムが好ましい。
例えば硫化リチウムは、特許第3528866号(特開平7−330312号公報)に記載の方法で合成することができる。特に、国際公開第2005/040039号又は特願2008−317902に記載された方法等で合成し、純度が95%以上であるものが好ましい。
本発明の製造方法では、硫化リチウムは直接使用することも可能であるが、適当なミル装置によって事前に微粒子化(粉砕)を行って、表面積を増やし、粒径を細かくすることも有効である。
硫化リチウムの微粒子化は、好ましくはニトリル系溶剤中で行う。微粒子化をニトリル系溶剤中で行うことにより、表面積が増加及び/又は粒径を細かくする効果が得られるとともに固体電解質ガラスをニトリル溶媒中で合成するので、硫化リチウムの微粒化に用いる溶媒と固体電解質ガラスの合成に用いる溶媒を同じにでき、製造工程を効率化できる。
用いるリン化合物としては、好ましくは硫化リンであり、より好ましくは五硫化二燐(P)である。
尚、本発明の製造方法では、リン単体及びリン化合物に加えて、単体硫黄、硫化ケイ素、硫化ホウ素、硫化ゲルマニウムから選択される1つ以上の他の硫化物を使用できる。これら硫化物は、市販されているものが使用できる。
本発明の第1及び第2の固体電解質ガラスを製造する場合の原料の組み合わせは、好ましくは硫化リチウム及び五硫化二燐;硫化リチウム、単体燐及び単体硫黄;又は硫化リチウム、五硫化二燐、単体燐及び/又は単体硫黄である。
硫化リチウムと他の硫化物(単体リン、リン化合物、及び他の硫化物)の仕込み量は、硫化リチウムの仕込み量を、好ましくは硫化リチウムと他の硫化物の合計に対し30〜95mol%とし、より好ましくは40〜85mol%とし、特に好ましくは50〜75mol%とすることが好ましい。
例えば原料が硫化リチウム及び五硫化二燐の組み合わせの場合、混合モル比(硫化リチウム:五硫化二燐)は、通常50:50〜85:15であり、好ましくは60:40〜75:25であり、特に好ましくは67:33〜74:26である。
また、例えば原料が硫化リチウム、単体リン及び単体硫黄の組み合わせの場合、混合モル比(硫化リチウム:単体リン:単体硫黄)は、通常10〜40:10〜40:80〜20であり、好ましくは15〜35:10〜35:75〜30である。
用いるニトリル系溶剤は、本発明の第1及び第2の固体電解質ガラスのニトリル化合物と同様である。また、ニトリル系溶剤は、1種単独、又は2種以上の混合溶媒のいずれでもよい。
ニトリル系溶剤は、あらかじめ脱水されていることが好ましい。具体的には、水分含有量が100重量ppm以下のニトリル系溶剤が好ましく、30重量ppm以下のニトリル系溶剤が特に好ましい。
ニトリル系溶剤の使用量は、特に制限されないが、原料である硫化リチウムと他の硫化物(単体リン、リン化合物、及び他の硫化物)が、ニトリル系溶剤の添加によって、溶液又はスラリ状になる程度の量であることが好ましい。例えばニトリル系溶剤が1kgの場合、原料(合計量)の添加量は通常0.01〜1Kg程度であり、好ましくは0.02〜0.5Kg、特に好ましくは0.03〜0.3Kgである。
硫化リチウムと他の硫化物をニトリル系溶剤中で接触させて反応させる。反応温度は特に制限されないが、好ましくは50℃以上200℃以下であり、より好ましくは60℃以上190℃以下である。また、反応時間は特に制限されないが、好ましくは0.1時間以上240時間以下であり、より好ましくは1時間以上168時間以下である。
尚、ニトリル系溶剤の沸点を越えた反応温度で本発明の製造方法を実施する場合は、常圧での反応ではなく、加圧系での反応とするとよい。従って、反応容器は加圧に耐久性のあるオートクレーブ設備を用いることが望ましい。
上記反応温度及び反応時間は、いくつかの条件をステップにして組み合わせてもよい。
接触時は撹拌することが好ましく、反応雰囲気は窒素、アルゴン等の不活性雰囲気であることが好ましい。不活性ガスの露点は好ましくは−20℃以下であり、特に好ましくは−40℃以下である。圧力は、通常、常圧〜100PMaであり、好ましくは常圧〜20MPaである。
反応後、得られた反応生成物を乾燥し、ニトリル系溶媒を除去することにより、硫化物ガラスである固体電解質ガラスが得られる。
乾燥は、真空下又は不活性ガス流通下、室温〜150℃以下で行うことが望ましい。乾燥温度が150℃超の場合、結晶化が部分的に進行し、固体電解質ガラスとしての性能が低下してしまうおそれがある。
本発明の製造方法により得られる固体電解質ガラスを熱処理することにより電解質ガラスセラミックスが得られる。
固体電解質ガラスを熱処理して、固体電解質結晶化ガラス(ガラスセラミック)とすることで、固体電解質のイオン伝導性を向上させることができる。
上記熱処理における加熱温度は、好ましくは200℃以上400℃以下、より好ましくは220〜320℃である。
また、加熱時間は、好ましくは1〜8時間であり、より好ましくは1.5〜5時間である。加熱時間が1時間未満の場合、高イオン伝導性の結晶が得られにくい場合があり、8時間超の場合、イオン伝導性の低い結晶が生じるおそれがある。
加熱処理は、固体電解質ガラスに影響を与えない溶媒中、あるいは固相、真空下、窒素下で行うことができる。溶媒中で行う場合、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤が使用できる。
また、固体電解質ガラスのセラミックス化は、ニトリル系溶媒中でも行うことができる。具体的には、上述の反応生成物の乾燥を上記加熱温度及び加熱時間の条件で加熱処理することでセラミックス化が実施できる。
製造した電解質ガラスセラミックスには錯化したニトリル系溶剤が残存している場合があり、除去するためにも加熱処理は真空下が望ましい。
尚、好ましい様態として、乾燥工程での加熱と結晶化工程の加熱を、別工程とするのではなく、1つの加熱工程とする。
本発明のリチウム電池は、正極層、電解質層及び負極層を含み、これら正極層、電解質層及び負極層の少なくとも1層が、本発明の第1及び第2の固体電解質ガラス、並びに本発明の電解質ガラスセラミックスの少なくとも1つを含む。
本発明の第1及び第2の固体電解質ガラス、並びに本発明の電解質ガラスセラミックス(以下、本発明の電解質材料という場合がある)は、電解質層に用いてもよく、活物質と混合して電極材料(合材)として電極に用いてもよい。
正極層、負極層及び電解質層は、本発明の電解質材料を一部として含んでもよく、又は本発明の電解質材料からなっていてもよい。
本発明のリチウム電池の正極層に用いる正極活物質及び負極活物質は、通常用いられている材料を使用することができる。同様に、本発明のリチウム電池の電解質層に用いる電解質は、ポリマー系の固体電解質でも酸化物系固体電解質であってもよい。
製造例1
(1)硫化リチウムの製造
硫化リチウムは、特開平7−330312号公報における第1の態様(2工程法)の方法に従って製造した。具体的には、撹拌翼のついた10リットルオートクレーブにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)3326.4g(33.6モル)及び水酸化リチウム287.4g(12モル)を仕込み、300rpm、130℃に昇温した。昇温後、液中に硫化水素を3リットル/分の供給速度で2時間吹き込んだ。続いてこの反応液を窒素気流下(200cc/分)昇温し、反応した水硫化リチウムを脱硫化水素化し硫化リチウムを得た。
尚、昇温するにつれ、上記硫化水素と水酸化リチウムの反応により副生した水が蒸発を始めたが、この水はコンデンサにより凝縮し系外に抜き出した。加えて、水を系外に留去すると共に反応液の温度は上昇するが、180℃に達した時点で昇温を停止し、一定温度に保持(約80分)して、水硫化リチウムの脱硫化水素反応を終了させた。
(2)硫化リチウムの精製
上記(1)で得られた500mLのスラリ反応溶液(NMP−硫化リチウムスラリ)中のNMPをデカンテーションした後、脱水したNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌した。その温度のままNMPをデカンテーションした。さらにNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌し、その温度のままNMPをデカンテーションし、同様の操作を合計4回繰り返した。デカンテーション終了後、窒素気流下230℃(NMPの沸点以上の温度)で硫化リチウムを常圧下で3時間乾燥し、精製硫化リチウムを得た。
得られた硫化リチウムについて、亜硫酸リチウム(LiSO)、硫酸リチウム(LiSO)及びチオ硫酸リチウム(Li)の各硫黄酸化物、並びにN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)の不純物含有量を、イオンクロマトグラフ法により定量した。その結果、硫黄酸化物の総含有量は0.13質量%であり、N−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)は0.07質量%であった。
製造例2
窒素気流下でトルエン(広島和光製試薬)270gを600mlセパラブルフラスコに加え、続いて水酸化リチウム30g(本荘ケミカル製)を投入し、フルゾーン撹拌翼300rpmで撹拌しながら、95℃に保持した。このスラリー中に硫化水素(巴商会製)を300ml/分の供給速度で吹き込みながら104℃まで昇温した。セパラブルフラスコからは、水とトルエンの共沸ガスが連続的に排出された。この共沸ガスを、系外のコンデンサで凝縮させることにより脱水した。この間、留出するトルエンと同量のトルエンを連続的に供給し、反応液レベルを一定に保持した。凝縮液中の水分量は徐々に減少し、硫化水素導入後6時間で水の留出は認められなくなった(水分量は総量で22mlであった)。尚、反応の間は、トルエン中に固体が分散して撹拌された状態であり、トルエンから分層した水分は無かった。この後、硫化水素を窒素に切り替え300ml/分で1時間流通し、生じた固形分をろ過・乾燥し、得られた白色粉末を分析したところ(塩酸滴定及び硝酸銀滴定)、99.2%の純度である硫化リチウムであることを確認した。
得られた硫化リチウムについて、X線回折測定したところ、硫化リチウムの結晶パターン以外のピークが検出されないことを確認した。また、得られた硫化リチウム粉末の平均粒径は450μm、比表面積12.6m/g、細孔容積0.12ml/gであった。
実施例1
[改質処理]
製造例2で調製した硫化リチウム2.0g(0.041mol)をグローブボックス内でシュレンクビンに秤量した。これに窒素雰囲気下で水分含有量30ppm以下に脱水したアセトニトリル(和光純薬製)39mlを加え、0℃で24時間、スターラーで攪拌して改質処理を行った。
各種分析用として、上記改質硫化リチウムの一部について、室温窒素気流下で溶媒を留去し、さらに真空下室温で2時間乾燥して、改質処理した硫化リチウムを回収した。得られた改質硫化リチウムは、純度が97.2%、平均粒径が7.8μm、比表面積が15.0m/g、細孔容積が0.14ml/gであった。
[電解質ガラスセラミックの製造]
得られた改質LiS2.0g/39mlアセトニトリル溶液に、五硫化二りん3.93g(0.18mol)、水分含有量30ppm以下に脱水したアセトニトリル21mlを追加し、圧力0.4MPa、150℃にて24時間反応させ、回収物を150℃にて真空乾燥して固体電解質ガラスを得た。得られた固体電解質ガラスをさらに真空下で300℃2時間の加熱処理を行った。
得られたガラスセラミックスは粉末状であり、イオン伝導度を測定したところ、6.8×10−4S/cmであった。
実施例2
電解質ガラスの調製条件において圧力0.4MPa、150℃の条件を常圧、還流条件をとした他は実施例1と同様にしてガラスセラミックスを得た。
実施例3
改質条件を室温で72時間とした他は実施例1と同様にしてガラスセラミックスを得た。
実施例4
質条件を室温で72時間とし、還流条件を圧力0.4MPaで150℃とした他は実施例1と同様にしてガラスセラミックスを得た。
実施例1〜4で得られた固体電解質ガラスについて、150℃におけるTGA重量減少量率及びXRDピーク位置、元素分析値を評価し、並びに実施例1〜4で得られたガラスセラミックスについて、イオン伝導度を評価した。結果を表1に示す。また、実施例1のガラスについては、得られたTGA曲線を図1に、XRDスペクトルを図2に示す。
尚、元素分析は、調製した電解質ガラスを密閉容器に封じた後、アルカリ水溶液にて分解し、溶液中の各元素成分をプラズマ発光装置(ICP)により定量した。
Figure 2012041207
図1から分かるように、実施例1の固体電解質ガラスは200℃から大きな重量損失がある。この重量損失を熱分解ガスクロマトグラフ(GC−MS)において確認したところ、リファレンスに用いたアセトニトリルとのフラグメントが一致した。
トルエン等の極性の低い溶媒を用いて固体電解質ガラスを調製した場合、固体電解質ガラスは真空乾燥等をすることでppmレベルまで低下させることが可能である。これは、極性部位を持たない溶媒の場合、電解質ガラスとの相互作用が小さいため、比較的低い温度での乾燥によって容易に取り除くことができるからである。一方、今回のニトリル系溶媒に代表されるアセトニトリルは、沸点こそ約80℃と比較的低いにもかかわらず、トルエン溶媒(沸点110℃)等と同条件で乾燥を行ってもppmレベルとすることは困難であった。XRDスペクトルにおいて認められるように明確な結晶系ピークが観測されており、これは、これまでとは、異なった新規なアセトニトリルと錯化した結晶形態が現れていることを示唆している。
比較例1
[電解質ガラスセラミックの製造]
オートクレーブ内を窒素で置換し、製造例1のLiSを1.55g、五硫化二リン3.46g、水分含有量10ppm以下に脱水した50mlのキシレン(和光純薬工業株式会社製)を仕込み、140〜150℃で24時間反応させ、固体電解質ガラスを得た。XRDスペクトルを図3に示す。得られた結果からは、未反応の原料硫化リチウム由来のピーク(×印部分)が観測され、実施例1〜4とは異なったパターンとなっていることがわかった。
得られた固体電解質ガラスを抜き取り、真空乾燥し、真空下で250℃で2時間の加熱処理を行った。得られたガラスセラミックスは粉末状であり、イオン伝導度を測定したところ、6.73×10−8S/cmであった。
比較例2
加熱処理温度を300℃としたほかは比較例1と同様にして電解質ガラスセラミックの製造を実施した。その結果、得られた固体状電解質は、粉末状であったが、粗粒子が混ざっているため、伝導度測定が可能な形状に圧密することができず、伝導度は測定不能であった。
比較例3
製造例1のLiSの代わりに製造例2のLiSを用いた他は比較例1と同様にして電解質ガラスセラミックを製造した。得られた電解質ガラスセラミックのXRDピーク位置を評価した。XRDスペクトルを図4に示す。得られた結果からは、未反応の原料硫化リチウム由来のピーク(×印部分)が観測され、実施例1〜4とは異なったパターンとなっていることがわかった。
また、イオン伝導度を測定したところ、8.96×10−6S/cmであった。
本発明の固体電解質ガラスの製造方法では、リチウムイオン伝導性固体電解質を原料を微粒子化しなくとも効率的に有機溶媒中で製造することができる。

Claims (8)

  1. リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む固体電解質ガラスであって、
    ニトリル化合物を含み、熱量計測定装置の150℃までの重量減少量が5重量%以下である固体電解質ガラス。
  2. リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含む固体電解質ガラスであって、
    XRDにおいて、2θ=14.7±0.3deg、20.3±0.3deg、29.7±0.3deg、33.9±0.3deg及び41.1±0.3degにピークを有する固体電解質ガラス。
  3. 単体リン及び/又はリン化合物と硫化リチウムをニトリル系溶剤中で反応させる工程を含む固体電解質ガラスの製造方法。
  4. 前記硫化リチウムを、前記ニトリル系溶剤中で微粒子化する請求項3に記載の固体電解質ガラスの製造方法。
  5. 前記リン化合物が硫化リンである請求項3又は4に記載の固体電解質ガラスの製造方法。
  6. 請求項3〜5のいずれかに記載の製造方法により得られる固体電解質ガラス。
  7. 請求項1、2及び6のいずれかに記載の固体電解質ガラスを熱処理して得られる電解質ガラスセラミックス。
  8. 正極層、電解質層及び負極層を含むリチウム電池であって、
    前記正極層、電解質層及び負極層の少なくとも1層が、請求項1、2及び6のいずれかに記載の固体電解質ガラス、又は請求項7に記載の電解質ガラスセラミックスを含むリチウム電池。
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