JP5396033B2 - 硫化物系固体電解質の製造方法、全固体リチウム二次電池、全固体リチウム一次電池及びこれらを備えた装置 - Google Patents
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Description
また、特許文献1には硫化物系固体電解質であって、10−4Scm−1台のイオン伝導性を有する固体電解質が開示されている。特許文献2にはLi2SとP2S5から合成され、10−4Scm−1台のイオン伝導性を有する固体電解質が開示されている。
さらに、特許文献3にはLI2SとP2S5を、68〜74モル%:26〜32モル%の比率で合成した硫化物系結晶化ガラスで10−3Scm−1台のイオン伝導性を実現している。
溶融法を選択した場合、900℃以上の高温下における混合と急冷作業が必要であり、不活性環境や耐腐食性設備等の問題から量産化が困難であった。
また、メカニカルミリング法でも目的の固体電解質が得られるまでの処理時間が30時間以上と長いため生産性に問題があり、また、処理時に器壁やボール等に電解質が固着し歩留を低下させる問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、工業生産が可能であり、かつ経済性に優れる固体電解質の製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、以下の硫化物系固体電解質の製造方法等が提供される。
1.少なくとも硫化リチウムと他の硫化物に、炭化水素系有機溶媒を加えた状態でメカニカルミリング処理する工程を含む硫化物系固体電解質の製造方法。
2.前記他の硫化物が、硫化リン、硫化ケイ素、硫化ホウ素及び硫化ゲルマニウムから選択される1つ以上の硫化物である1記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
3.前記炭化水素系有機溶媒中に含まれる水分量が50ppm(重量)以下である1記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
4.前記メカニカルミリング処理を施した後、得られた硫化物系固体電解質を加熱処理する工程を有する1〜3のいずれかに記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
5.上記1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られる硫化物系固体電解質を含む全固体リチウム二次電池。
6.上記1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られる硫化物系固体電解質を含む全固体リチウム一次電池。
7.上記5に記載の全固体リチウム二次電池又は請求項6に記載の全固体リチウム一次電池を備えた装置。
8.少なくともSとLiとを含む固体電解質粗粒子を湿式粉砕する工程を含む、固体電解質粒子の製造方法。
9.湿式粉砕された所定粒径の硫化リチウム粒子と、湿式粉砕された所定粒径である他の硫化物粒子とを混合し、この混合物を80℃〜300℃で加熱処理する、固体電解質粒子の製造方法。
本発明の製造方法で得られる固体電解質は、室温でも高いリチウムイオン伝導性を示し、工業生産が可能で、経済性に優れる。
本発明の製造方法は、少なくとも硫化リチウムと他の硫化物に、炭化水素系有機溶媒を加えた状態でメカニカルミリング処理する工程を含む。
原料である硫化リチウムとしては、例えば、特許第3528866号(特開平7−330312号公報)に記載の方法で合成することができる。特に、国際公開第2005/040039号に記載された方法等で合成し、純度が99%以上であるものが好ましい。
上記の硫化物については、特に限定はなく、市販されているものが使用できる。
飽和炭化水素としては、ヘキサン、ペンタン、2−エチルヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等が挙げられる。
不飽和炭化水素しては、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、デカリン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。
これらのうち、特にトルエン、キシレンが好ましい。
例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を250〜300回転/分とし、10時間〜40時間処理すればよい。
本発明では、有機溶媒の存在下でメカニカルミリング処理するため、処理時間を短縮できる。
得られた固体電解質を、さらに、200℃以上400℃以下、より好ましくは250〜320℃で加熱処理することにより、硫化物系固体電解質のイオン伝導性を向上できる。これは、上記の硫化物ガラスである硫化物系固体電解質
が硫化物結晶化ガラス(ガラスセラミック)となるためである。
加熱処理の時間は、1〜5時間が好ましく、特に1.5〜3時間が好ましい。
例えば、正極と、負極と、正極及び負極の間に上記の固体電解質からなる層を形成することで、全固体リチウム二次電池となる。
また、酸化物系では、酸化ビスマス(Bi2O3)、鉛酸ビスマス(Bi2Pb2O5)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V6O13)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)等が使用できる。尚、これらを混合して用いることも可能である。好ましくは、コバルト酸リチウムが使用できる。
尚、上記の他にはセレン化ニオブ(NbSe3)が使用できる。
また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素等の金属自体や他の元素、化合物と組み合わせた合金を、負極材として用いることができる。
また、電解質膜の作製時に使用するスラリー(分散液)は、乾燥粉と溶媒を使用する場合、各重量を計測後、撹拌翼がある槽に入れ、撹拌することで作製できる。湿式粉砕により、固体電解質がスラリーとして得られる場合は、十分に撹拌状態にあるスラリーを分取し、スラリー重量と乾燥後の固形分重量から固形分濃度を算出し、所望の濃度に足りない場合は液を追加、多い場合は長時間放置後に上澄み液を所定量抜くことで固形分濃度既知の分散液を得ることができる。
(1)第1の製造方法
少なくともSとLiとを含む固体電解質粗粒子を湿式粉砕して固体電解質粒子を製造する。固体電解質粒子は、平均粒径が1.5μm以下の範囲、かつ全粒径の90%以上が2.5μm以下であることが好ましい。
湿式粉砕は、ボールミル、ビーズミル、ウォータジェットミル、ホモジナイザー等を用いることができる。
ビーズミルには、バッチ式と連続式があるが基本的に同一と考えられる。一般的に、スラリー中に添加されるビーズ(ZrO2製が一般的)の径により粉砕される粒径が決まる。径が小さいビーズを適用した場合、到達する粒径は小さくなるが、粒子1個当たりのエネルギーが小さいため粉砕効率が低くなる。スラリーを拡散する撹拌翼の形状も各種あるが、固体電解質や原料硫化物程度の硬さであればどれも好適に用いることができる。
ジェットミルでは、乾燥粉を気流に同伴させ気流同士を衝突させる方式と、スラリー状態にある液体同士を衝突させる方式がある。特に、後者はウォータジェットミルと呼ばれている。これらは、流体の移動に関して静電付着が発生しやすい、濃度を極端に増加することができないなどの欠点はあるが、微粒子化することができるメリットがある。
ホモジナイザーは超音波により粉砕する方法であるが、有機溶媒に適用する場合には温度上昇を気にする必要がある。
一方、ビーズミルによる粉砕では有機溶媒中にビーズと固体電解質を分散させた状態で粉砕するため造粒の影響を考慮する必要がなく、また湿式で処理するため静電気が発生せず付着による未処理固体電解質の残留問題もない。
硫化リチウム粒子と他の硫化物粒子との混合物を粉砕して、固体電解質粒子を製造する。固体電解質粒子の平均粒径は1.5μm以下の範囲、かつ全粒径の90%以上が2.5μm以下であることが好ましい。
他の硫化物としては、例えば、硫化リチウム、硫化リン、硫化ケイ素、硫化ホウ素、硫化ガリウムが挙げられる。
粉砕方法はビーズミルによる湿式粉砕が好ましい。具体的に、有機溶媒(より好ましくは、炭化水素系有機溶媒である。)を使用しスラリー混合状態として行うことが好ましい。この方法により、平均粒径が1.5μm以下(好ましくは0.5μm以上)、全粒径の90%以上が2.5μm以下(好ましくは0.1μm未満が10%以下)の固体電解質ガラスが合成される。これは、ビーズミルの粉砕による微粒子化効果と混合効果が同時に発現することによる。この方法は、原料から固体電解質が直接合成できるため、製造工程を削減できる。
尚、ガラスセラミックを製造するときは、固体電解質ガラスに加熱処理を施せばよい。
平均粒径が所定範囲である硫化リチウム粒子と、平均粒径が所定範囲である他の硫化物粒子を混合し、この混合物を80℃〜300℃で加熱処理することにより固体電解質粒子を製造する。
上記硫化リチウム粒子の平均粒径が1.5μm以下、かつ全粒径の90%以上が2.5μm以下であることが好ましく、他の硫化物粒子の平均粒径が1.5μm以下、かつ全粒径の90%以上が2.5μm以下であることが好ましい。
また、硫化リチウム及び他の硫化物粒子は、ビーズミルにより湿式粉砕されることが好ましい。
原料である硫化リチウムと他の硫化物をそれぞれ別々にビーズミルで微粒子化し、80℃〜300℃の温度範囲において撹拌混合加熱することにより固体電解質が合成される。尚、静電凝集等により原料の混合状態に片寄りが存在するときには、目的物質を合成することが困難となる。そのため、微粉原料を有機溶媒スラリーで混合する方法や機械的混合により均一化することが重要となる。
本発明の全固体リチウム一次電池は、正極、固体電解質膜及び負極を備え、これらの内少なくとも1つが本発明の製造方法で得た固体電解質粒子を含む。
本発明のリチウム全固体二次電池は、正極、固体電解質膜及び負極を備え、これらの内少なくとも1つが本発明の製造方法で得た固体電解質粒子を含む。
以下、全固体リチウム二次電池について詳細するが、本発明のリチウム電池は、全固体リチウム二次電池に限定されない。
図1は本発明に係る全固体リチウム二次電池(以下、適宜「全固体二次電池」という。)の一実施形態を示す概略断面図である。
全固体二次電池1は、正極3及び負極5からなる一対の電極間に固体電解質層4が挟持されている。正極3及び負極5にはそれぞれ集電体2が設けられている。この電池1において、固体電解質層4、正極3、負極5のいずれかが本発明の固体電解質粒子を含んで構成される。
(1)硫化リチウムの製造
特開平7−330312号公報における第1の態様(2工程法)の方法に従って硫化リチウムを製造した。具体的には、撹拌翼のついた10リットルオートクレーブに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)3326.4g(33.6モル)及び水酸化リチウム287.4g(12モル)を仕込み、300rpm、130℃に昇温した。昇温後、液中に硫化水素を3リットル/分の供給速度で2時間吹き込んだ。続いてこの反応液を窒素気流下(200cc/分)昇温し、反応した水硫化リチウムを脱硫化水素化し硫化リチウムを得た。昇温するにつれ、上記硫化水素と水酸化リチウムの反応により副生した水が蒸発を始めたが、この水はコンデンサにより凝縮し系外に抜き出した。水を系外に留去すると共に反応液の温度は上昇するが、180℃に達した時点で昇温を停止し、一定温度に保持した。水硫化リチウムの脱硫化水素反応が終了後(約80分)に反応を終了し、硫化リチウムを得た。
上記(1)で得られた500mLのスラリー反応溶液(NMP−硫化リチウムスラリー)中のNMPをデカンテーションした後、脱水したNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌した。その温度のままNMPをデカンテーションした。さらにNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌し、その温度のままNMPをデカンテーションし、同様の操作を合計4回繰り返した。デカンテーション終了後、窒素気流下230℃(NMPの沸点以上の温度)で硫化リチウムを常圧下で3時間乾燥した。得られた硫化リチウム中の不純物含有量を測定した。
尚、亜硫酸リチウム(Li2SO3)、硫酸リチウム(Li2SO4)並びにチオ硫酸リチウム(Li2S2O3)の各硫黄酸化物、及びN−メチルアミノ酪酸リチウム(NMAB)の含有量は、イオンクロマトグラフ法により定量した。その結果、硫黄酸化物の総含有量は0.13質量%であり、LMABは0.07質量%であった。
上記製造例1で製造したLi2SとP2S5(アルドリッチ社製)を出発原料に用いた。Li2S 16.27g(70モル%)、P2S5 33.73g(30モル%)を10mmφアルミナボールが175個入った500mlアルミナ製容器に入れ、さらに脱水トルエン(和光純薬社製)68mlを加えて密閉した。
尚、上記計量、添加、密閉作業は全てグローブボックス内で実施し、使用する器具類は全て乾燥機で事前に水分除去したものを用いた。また、脱水トルエンはカールフィッシャー法による水分測定で8.4ppmであった。
密閉したアルミナ容器を、遊星型ボールミル(レッチェ社製PM400)にて室温下、290rpm、18時間メカニカルミリング処理することで白黄色の粉体スラリー(クリーム状)を得た。
得られたスラリーをろ過・風乾後、160℃で2時間チューブヒーターにより乾燥し固体電解質粉体を得た。このときの回収率は95%であった。
この電解質ガラスセラミックのイオン伝導度は、1.3×10−3S/cmであった。
硫化物系固体電解質ガラスセラミックを錠剤成形機に充填し、4〜6MPaの圧力を加え成形体を得た。さらに、電極としてカーボンと電解質ガラスセラミックを重量比1:1で混合した合材を用い、成形体の両面に乗せ、再度錠剤成形機にて圧力を加えることで、伝導度測定用の成形体(直径約10mm、厚み約1mm)を作製した。この成形体について交流インピーダンス測定によりイオン伝導度測定を実施した。伝導度の値は25℃における数値を採用した。
実施例1において、脱水トルエンの代わりに脱水キシレンを用いた以外は同様に処理を行ない、固体電解質ガラス及び固体電解質ガラスセラミックを得た。尚、脱水キシレンの水分量は6.0ppmであった。
X線回折測定の結果、実施例1同様にガラス及びガラスセラミックである固体電解質が合成されていることを確認した。
この電解質ガラスセラミックの伝導度は、1.1×10−3S/cmであった。
実施例1において、P2S5の代わりにSiS2(Alfa Aesar社製)を用い、原料の仕込み量をLi2S 21.39g(60モル%)とSiS2 28.61g(40モル%)に変えた以外は同様に処理を行ない、固体電解質ガラスを得た。このときの回収率は93%であった。
この固体電解質ガラスの伝導度は、8.9×10−4S/cmであった。
[固体電解質粗粒子の製造]
上記製造例1により製造した平均粒径30μm程度のLi2S 32.54gと平均粒径50μm程度のP2S5(アルドリッチ社製)67.46gを10mmφアルミナボール175個が入った500mlアルミナ製容器に入れ密閉した。上記計量、密閉作業は全てグローブボックス内で実施し、使用する器具類は全て乾燥機で事前に水分除去したものを用いた。
得られた粗粒子のX線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)を行なった結果、原料Li2Sのピークは観測されず、固体電解質ガラスに起因するハローパターンであった。
この固体電解質ガラスセラミック粗粒子の伝導度は、1.3×10−3S/cmであった。
上記固体電解質ガラスセラミック粗粒子をアイメックス社製バッチ式レディーミル(RMB−08)により粉砕した。粉砕条件は、容量800mlのZrO2製ポットに0.5mmφZrO2ビーズ1270g、無水トルエン溶媒254g、固体電解質ガラスセラミック粗粒子109gを仕込み、回転数2000rpmで2時間処理し、固体電解質ガラスセラミック粒子スラリーを得た。この固体電解質ガラスセラミック粒子スラリーを、25μm目開きメッシュシートを用いたヌッチェ式真空ろ過を施し0.5mmφZrO2ビーズを分離除去し、固形分濃度が30%の固体電解質ガラスセラミックトルエン混合液を得た。混合液は撹拌状態で均一な白色を呈する分散液となり、約12秒後に液面上部より若干透明になり始めた。静止後の混合液は、再度撹拌することで速やかに(撹拌とほぼ同時に)分散状態となった。分散液底部に粒子の沈降は認められなかった。
尚、分散液は撹拌を停止した後、数10秒はスラリー状態を維持する。粒径の大きい粒子がある場合、撹拌時に浮遊せず底部に粒子の存在が確認できる。
上記工程で得られた固体電解質ガラスセラミック乾燥粒子の粒径は、倍率10000倍のSEM観察を任意の8視野で実施し、各視野で約60〜70個、合わせて約500個の任意の各粒子の長径を測定し求めた。この約500検体のメジアン径D50を平均粒径とした。また、メジアン径10%及び90%を示すD10及びD90を上記粒径分布から求めた。各メジアン径を表1に示す。粉砕前後のSEM像を図1,2に示す。図1は粉砕前の倍率1,000倍のSEM像、図2(a)は粉砕後の倍率10,000倍のSEM像、図2(b)は粉砕後の倍率1,000倍のSEM像を示す。
尚、イオン伝導度は下記方法に従い測定した。
固体電解質粒子を錠剤成形機に充填し、4〜6MPaの圧力を加え成形体を得た。さらに、電極としてカーボンと固体電解質粒子を重量比1:1で混合した合材を成形体の両面に乗せ、再度錠剤成形機にて圧力を加えることで、伝導度測定用の成形体(直径約10mm、厚み約1mm)を作製した。この成形体について交流インピーダンス測定によりイオン伝導度測定を実施した。伝導度の値は25℃における数値を採用した。
[固体電解質粒子の製造]
上記製造例1により製造した平均粒径30μm程度のLi2S 35.2gと平均粒径50μm程度のP2S5(アルドリッチ社製)73.1gをアイメックス社製バッチ式レディーミル(RMB−08)により粉砕合成した。粉砕合成条件は、容量800mlのZrO2製ポットに0.5mmφZrO2ビーズ1271g、無水トルエン溶媒252.7g、Li2S 35.2g、P2S5 73.1gを仕込み、回転数2000rpmで3時間処理し、固体電解質ガラス粒子スラリーを得た。この固体電解質ガラス粒子スラリーを、25μm目開きメッシュシートを用いたヌッチェ式真空ろ過を施し0.5mmφZrO2ビーズを分離除去し、固形分濃度が30%の固体電解質ガラストルエン混合液を得た。混合液は撹拌状態で均一な白色を呈する分散液となり、約15秒後に液面上部より若干透明になり始めた。静止後の混合液は、再度撹拌することで速やかに(撹拌とほぼ同時に)分散状態となった。分散液底部に粒子の沈降は認められなかった。
上記固体電解質粒子をグローブボックス内Ar雰囲気下でSUS製チューブに密閉し、300℃、2時間の加熱処理を施し電解質ガラスセラミック粒子を得た。このガラスセラミック粒子のX線回折測定では、2θ=17.8、18.2、19.8、21.8、23.8、25.9、29.5、30.0degにピークが観測された。
上記工程で得られた固体電解質ガラスセラミック粒子の粒径分布を参考例1同様に測定し、メジアン径D50、D10及びD90を求めた。各メジアン径を表1に示す。
この固体電解質ガラスセラミック粒子の伝導度は、3.4×10−3S/cmであった。
電池評価の結果は、充放電容量比が89%であった。
[固体電解質粒子の製造]
上記製造例1により製造した平均粒径30μm程度のLi2S 105.8gをアイメックス社製バッチ式レディーミル(RMB−08)により粉砕した。粉砕条件は、容量800mlのZrO2製ポットに1.0mmφZrO2ビーズ1271g、無水トルエン溶媒246.8g、Li2S 105.8gを仕込み、回転数2000rpmで1時間処理し、Li2S粒子スラリーを得た。
同様に平均粒径50μm程度のP2S5(アルドリッチ社製)110.2gを粉砕した。粉砕条件は、容量800mlのZrO2製ポットに1.0mmφZrO2ビーズ1271g、無水トルエン溶媒257.0g、P2S5 110.2gを仕込み、回転数2000rpmで1時間処理し、P2S5粒子スラリーを得た。
Li2S分散液は非常に分散性に優れ、約30秒後に液面上部が若干透明になる程度であった。一方、P2S5分散液も同様に分散性に優れ、約22秒後に液面上部が若干透明になる程度であった。
乾燥した原料粒子、Li2S 3.25gとP2S5 6.75gをメノウ乳鉢に採取し、十分に撹拌混合した。
得られた粒子のX線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)を行なった結果、2θ=17.8、18.2、19.8、21.8、23.8、25.9、29.5、30.0degにピークが観測された。
上記工程で得られた固体電解質ガラスセラミック粒子の粒径分布を参考例1同様に測定し、メジアン径D50、D10及びD90を求めた。各メジアン径を表1に示す。この固体電解質ガラスセラミック粒子の伝導度は、1.8×10−3S/cmであった。
[固体電解質粒子の製造]
参考例2と同様に固形分濃度が30%の各原料分散液を調製した。十分に撹拌したLi2S原料分散液から10.83g、P2S5原料分散液から22.5gをそれぞれ注射器で採取し試薬ビン中で混合した。この混合液は撹拌状態で均一な白色を呈する分散液となり、約21秒後に液面上部より若干透明になり始めた。静止後の混合液は、再度撹拌することで速やかに(撹拌とほぼ同時に)分散状態となった。分散液底部に粒子の沈降は認められなかった。混合分散液を十分に撹拌後にシャーレに移し、窒素雰囲気下において24時間で風乾した。さらに得られた混合粒子を150℃チューブヒーターにより乾燥した。
得られた粒子のX線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)を行なった結果、2θ=17.8、18.2、19.8、21.8、23.8、25.9、29.5、30.0degにピークが観測された。
上記工程で得られた固体電解質ガラスセラミック粒子の粒径分布を参考例1同様に測定し、メジアン径D50、D10及びD90を求めた。各メジアン径を表1に示す。
この固体電解質ガラスセラミック粒子の伝導度は、1.6×10−3S/cmであった。
電池評価の結果は、充放電容量比が87%であった。
[固体電解質粒子の製造]
参考例1で作製した、遊星型ボールミル36時間処理後、300℃で2時間処理した固体電解質ガラスセラミック粗粒子を、窒素ガスを用い、ガス圧0.7MPaの条件でジェットミル(セイシン企業社製コジェット)により粉砕した。
抜き出した分散液は粗大粒子の沈降により固形分濃度が少なくなっているため、静止状態で放置し液面上部よりトルエンをシリンジで抜き出すことにより固形分濃度を調整した。この固形分濃度を調整した混合液は、撹拌状態で均一な白色を呈し、約16秒後に液面上部より若干透明になり始めた。静止後の混合液は、再度撹拌することで速やかに(撹拌とほぼ同時に)分散状態となった。この分散液では、ビーカー底部に沈降する粗大粒子は観察されなかった。
上記方法により簡易的に分級された固体電解質粒子の粒径分布を参考例1同様に測定し、メジアン径D50、D10及びD90を求めた。各メジアン径を表1に示す。
この固体電解質ガラスセラミック粒子の伝導度は、1.2×10−3S/cmであった。
電池評価の結果は、充放電容量比が86%であった。
[固体電解質粒子混合液から作製した固体電解質膜を含む電池の製造]
参考例1で作製した固形分濃度30%の固体電解質ガラスセラミックトルエン分散液を用いて、In箔上に塗布、乾燥することにより固体電解質ガラスセラミック薄膜を形成した。
さらに参考例1で作製した乾燥電解質粒子とLiCoO2粒子を7:3で混合作製した正極合材を40MPaで加圧成形した薄膜を積層し、Tiメッシュ、Ti箔をこの順序で重ね30MPaで一括圧縮し電池を形成した。
実施例1において、トルエン溶媒を添加しない以外は、同様に処理を行ない固体電解質ガラス及び固体電解質ガラスセラミックを得た。
加熱処理前の電解質ガラスのX線回折測定の結果、原料であるLi2Sのピークが観測され、18時間処理では十分に反応していないことが判明した。原料のLi2SのXRDピークが消滅するまで処理を継続したところ、36時間が必要であった。また、この乾式によるメカニカルミリング処理では、有機溶媒を添加した実施例には見られなかったアルミナ容器の器壁、蓋部、ボールに極端な固着が観測された。固着物をハンマー等の衝撃により長時間かけて掻き落した場合の回収率は78%であった。実施例同様の回収法では殆ど回収できなかった。
18時間処理した場合の固体電解質ガラスセラミックX線回折では、同様に2θ=17.8、18.2、19.8、21.8、23.8、25.9、29.5、30.0degにピークが若干観測されているが、それ以外に原料Li2S等のピークも観測された。
この36時間処理した固体電解質ガラスセラミックの伝導度は、1.7×10−3S/cmであった。18時間処理した固体電解質ガラスセラミックの伝導度は、8.6×10−5S/cmであった
実施例1において、トルエンをエタノールに変えた以外は同様に行ない、固体電解質ガラス及び固体電解質ガラスセラミックの作製を試みた。尚、エタノールの水分量は32.1ppmであった。
X線回折測定の結果、目的とするガラス及びガラスセラミックである固体電解質は合成されておらず、同定できないピークが観測された。さらに、31P-NMRを測定した結果、PO4、PSO3、PS2O2、P2O7の生成が確認された。このことから、エタノールと固体電解質が反応していることを確認した。
本発明の全固体リチウム電池は、携帯情報末端、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モーターを動力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等で使用するリチウム電池として使用できる。
2:集電体
3:正極
4:電解質層
5:負極
Claims (7)
- 少なくとも硫化リチウムと他の硫化物を、炭化水素系有機溶媒を加えた状態でメカニカルミリング処理して反応させて、硫化物系固体電解質を得る工程を含む硫化物系固体電解質の製造方法。
- 前記他の硫化物が、硫化リン、硫化ケイ素、硫化ホウ素及び硫化ゲルマニウムから選択される1つ以上の硫化物である請求項1記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
- 前記炭化水素系有機溶媒中に含まれる水分量が50ppm(重量)以下である請求項1記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
- 前記メカニカルミリング処理を施した後、得られた硫化物系固体電解質を加熱処理する工程を有する請求項1〜3のいずれかに記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られる硫化物系固体電解質を含む全固体リチウム二次電池。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られる硫化物系固体電解質を含む全固体リチウム一次電池。
- 請求項5に記載の全固体リチウム二次電池又は請求項6に記載の全固体リチウム一次電池を備えた装置。
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