JP2014017108A - 固体電解質粒子及びその組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】電池性能が高くリチウムを伝導種としない電池を製造することができる固体電解質粒子を提供する。
【解決手段】ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムから選択される少なくとも1つの成分と、リンと硫黄とを含み、レーザー回折式粒度分布測定方法により測定される体積基準平均粒子径が0.01μm以上50μm以下である固体電解質粒子。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムを伝導種としない硫化物系固体電解質粒子、その組成物及びそれを用いた電池に関する。
近年、携帯情報末端、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モーターを動力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いられる二次電池等の需要が増加している。
ここで、高容量の二次電池としてリチウムイオン電池がある。該リチウムイオン電池は、有機溶媒を含む電解液であるため、液漏れの心配や発火の危険性がある。
このような問題に対し、従来硫化物系固体電解質の研究が種々行われており、イオン伝導度が高い硫化物系固体電解質が開発された(特許文献1)。
しかし、特許文献1に記載の硫化物系固体電解質は、リチウムを必須成分としているため、今後、リチウムイオン電池の需要増加に伴い、原料であるリチウム源が不足する恐れがある。
そのため、原料が豊富なナトリウムを伝導種とするナトリウム系の固体電解質が開発された(特許文献2)。また、特許文献2に記載のナトリウム系の固体電解質を用いて製造したナトリウム電池が開発された(非特許文献1)。
しかし、非特許文献1に記載のナトリウム電池は電池性能が低いという欠点があった。
特開2005−228570号公報 特開2012−121789号公報
全固体型ナトリウム蓄電池の室温作動に世界で初めて成功〜安全性の高い次世代蓄電池の研究開発における大きな一歩〜(辰巳砂先生の発表内容)(2012年5月23日公開、大阪府立大学及び科学技術振興機構)
電池性能が高くリチウムを伝導種としない電池を製造することができる固体電解質粒子を得ることを課題とする。
本発明によれば、以下の固体電解質粒子等が提供される。
1.ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムから選択される少なくとも1つの成分と、リンと硫黄とを含み、レーザー回折式粒度分布測定方法により測定される体積基準平均粒子径が0.01μm以上50μm以下である固体電解質粒子。
2.前記少なくとも1つの成分がナトリウムである1に記載の固体電解質粒子。
3.前記体積基準平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であり、90%以上の粒子の体積基準粒子径が20μm以下である1又は2に記載の固体電解質粒子。
4.1〜3のいずれかに記載の固体電解質粒子を含む組成物。
5.ニトリル化合物を含む4に記載の組成物。
6.1〜3のいずれかに記載の固体電解質粒子、及び/又は4又は5に記載の組成物を含む電解質層。
7.1〜3のいずれかに記載の固体電解質粒子、及び/又は4又は5に記載の組成物を含む電極層。
8.1〜3のいずれかに記載の固体電解質粒子、及び/又は4又は5に記載の組成物を含む電池。
9.1〜3のいずれかに記載の固体電解質粒子、及び/又は4又は5に記載の組成物を用いて製造した電解質層。
10.1〜3のいずれかに記載の固体電解質粒子、及び/又は4又は5に記載の組成物を用いて製造した電極層。
11.1〜3のいずれかに記載の固体電解質粒子、及び/又は4又は5に記載の組成物を用いて製造した電池。
電池性能が高くリチウムを伝導種としない電池を製造することができる固体電解質粒子を得ることができた。
スラリー法で使用する製造装置の一例を示す図である。
[固体電解質粒子]
(1)固体電解質
本発明の固体電解質粒子は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムから選択される少なくとも1つの成分と、リンと、硫黄とを含む。
好ましくは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウムであり、より好ましくは、ナトリウム、カリウムであり、さらに好ましくは、ナトリウムである。
その他の元素として、Ge、Si、Al、Ga、Al、B、Inを含むことができる。
また、ハロゲン元素として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を含んでもよく、ハロゲン元素を含む場合には、好ましくは、塩素、臭素、ヨウ素であり、さらに好ましくは、塩素、臭素である。
式(1)で表わされる固体電解質が好ましい。
…(1)
Lは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、又はラジウムである。
Lは、好ましくはナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウムであり、より好ましくはナトリウム、カリウムであり、さらに好ましくはナトリウムである。
MはB,Al,Si,Ge、Ga、In,As,Se,Sn,Sb,Te,Pb,Bi、又はこれらの組合せである。好ましくは、B、Si,Ge,Al、さらに好ましくは、Ge、Si、Bである。
Xはハロゲン元素であり、ハロゲン元素の組合せであってもよく、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、より好ましくは、塩素、臭素、ヨウ素であり、さらに好ましくは、塩素、臭素である。
0.1<a≦15であり、好ましくは0.2≦a≦13であり、より好ましくは0.3≦a≦12である。
0.1≦b≦3であり、好ましくは0.2≦b≦3であり、より好ましくは0.2≦b≦2であり、最も好ましくはbが0である。
0.5<c≦5であり、好ましくは0.5≦c≦4であり、より好ましくは0.8≦c≦4であり、最も好ましくはcが1である。
0<d≦15であり、好ましくは1≦d≦15であり、より好ましくは1≦d≦13であり、最も好ましくは0.5≦d≦12である。
0≦e≦3であり、好ましくは0≦e≦2であり、より好ましくは0≦e≦2である。
又は、0.1<e≦3であることが好ましく、0.1≦e≦2であることがより好ましく、0.2≦e≦2であることがさらに好ましい。
固体電解質は、結晶化していても非晶質であってもよい。結晶が非晶質よりイオン伝導度が高い場合には、結晶化することにより、電解質層や電極層のイオン伝導度を高くすることができ、非晶質の場合には、結晶よりも柔らかいため、固体電解質同士の接触状態や活物質や導電助剤との接触状態を良くすることができる。
ここで、結晶構造として、NaPS結晶構造が好ましい。イオン伝導度を高くすることができるからである。
(2)固体電解質の製法
以下、固体電解質の製造方法を例示するが、固体電解質は、下記製造方法により製造された固体電解質に限定されないことはいうまでもない。
(i)原料
下記式(3)で表わされる化合物と、硫化燐、硫黄と燐、硫化燐と硫黄、又は硫化燐と硫黄と燐と、を原料とする。
S…(3)
Lは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、又はラジウムである。
Lは、好ましくはナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウムであり、より好ましくはナトリウム、カリウムであり、さらに好ましくはナトリウムである。
尚、Sは硫黄を意味する。
yは0.5以上3以下であり、好ましくは0.7以上2.5以下、より好ましくは1以上2以下であり、さらに好ましくは2である。
例えば、NaS(硫化ナトリウム),KS,RbS、BeS,MgS、CaS,SrS、BaS等を用いることができる。これらは2種以上混合して使用してもよい。
ガラス転移温度を低減する化合物(ガラス化促進剤)を添加してもよい。ガラス化促進剤の例としては、NaPO、NaSiO、NaGeO、NaBO、NaAlO、NaCaO、NaInO等の無機化合物が挙げられる。
さらに、下記式(2)で表わされる化合物を原料としてもよい。
…(2)
Mは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム,B,Al,Si,P,S,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Pb,Bi又はこれらの組合せである。
Mは、好ましくは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、燐又はこれらの組合せであり、より好ましくは、ナトリウム、カリウム、燐又はこれらの組合せであり、さらに好ましくはナトリウム、燐又はこれらの組合せである。
wは0.5以上5以下、好ましくは0.5以上4以下、さらに好ましくは以上3以下であり、最も好ましくは1である。
Xはハロゲン元素、ハロゲン元素の組合せであってもよく、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、より好ましくは塩素、臭素、ヨウ素であり、さらに好ましくは塩素、臭素である。
xは1以上10以下の整数から選ばれる任意の整数であり、好ましくは0.5以上6以下の整数から選ばれる任意の整数であり、より好ましくは1以上5以下の整数から選ばれる任意の整数であり、最も好ましくは、1又は3である。
例えば、ハロゲン化ナトリウム(NaI,NaBr,NaCl,NaF等),ハロゲン化燐(PBr,PCl、PCl、PCl、PI、P,PF、PF等)AlF,AlBr,AlI,AlCl,SiF,SiCl,SiCl,SiCl,SiBr,SiBrCl,SiBrCl,SiI,POCl,POBr,SF,SF,SF,S10,SCl,SCl,SBr,GeF,GeCl,GeBr,GeI,GeF,GeCl,GeBr,GeI,AsF,AsCl,AsBr,AsI,AsF,SeF,SeF,SeCl,SeCl,SeBr,SeBr,SnF,SnCl,SnBr,SnI,SnF,SnCl,SnBr,SnI,SbF,SbCl,SbBr,SbI,SbF,SbCl,PbF,PbCl,PbF,PbCl,PbBr,PbI,BiF,BiCl,BiBr,BiI,TeF,Te10,TeF,TeCl,TeCl,TeBr,TeBr,TeI4、等が挙げられ、好ましくは、ハロゲン化ナトリウム(NaI,NaBr,NaCl,NaF等),ハロゲン化燐(PBr,PCl、PCl、PCl,、PI、P,PF,、PF等)であり、さらに好ましくは、NaBr,NaCl、PBr、PClである。
(ii)非晶質の製造方法
以下、原料として硫化ナトリウムと五硫化二リンを用いた固体電解質(ガラス)の製造方法について説明する。
硫化ナトリウムと五硫化二リンの割合(モル比)は、例えば60:40〜90:10、好ましくは65:35〜85:15又は70:30〜90:10であり、より好ましくは67:33〜83:17又は72:28〜88:12であり、さらに好ましくは67:33〜80:20又は74:26〜86:14である。特に好ましくは、70:30〜80:20又は75:25〜85:15である。最も好ましくは、硫化ナトリウムと五硫化二リンの割合(モル比)は、72:28〜78:22、又は77:23〜83:17である。
上記原料を用いて、以下の方法で固体電解質(ガラス)を製造できる。
(ア)溶融急冷法
溶融急冷法は、PとNaSとを所定量混合し、所定温度で反応させた後、急速に冷却することにより固体電解質(ガラス)を得る方法である。
例えば、乳鉢にて混合しペレット状にしたものを、カーボンコートした石英管中に入れ真空封入する。所定の反応温度で反応させた後、氷中に投入し急冷することにより、固体電解質(ガラス)が得られる。
反応温度は、好ましくは400℃〜1000℃、より好ましくは、800℃〜900℃である。
反応時間は、好ましくは0.1時間〜12時間、より好ましくは、1〜12時間である。
上記反応物の急冷温度は、通常10℃以下、好ましくは0℃以下であり、その冷却速度は、通常1〜10000K/sec程度、好ましくは10〜10000K/secである。
(イ)メカニカルミリング法(MM法)
MM法は、PとLiSとを所定量混合し、機械的なエネルギーを与えることにより固体電解質(ガラス)を得る方法である。
機械的なエネルギーを与える方法は特に問わないが、例えば、各種ボールミルを例示することができる。
例えば、PとNaSとを所定量乳鉢にて混合し、例えば、各種ボールミル等を使用して所定時間反応させることにより、固体電解質(ガラス)が得られる。
上記原料を用いたMM法は、室温で反応させることができる。そのため、原料の熱分解が起らず、仕込み組成の固体電解質(ガラス)を得ることができるという利点がある。
また、MM法では固体電解質(ガラス)の製造と同時に、微粉末化できるという利点もある。
MM法には、回転ボールミル、転動ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル等種々の形式を用いることができる。
MM法の条件としては、例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を数十〜数百回転/分とし、0.5時間〜100時間処理すればよい。
また、ボールミルのボールは異なる径のボールを混合して使用してもよい。
また、MM処理の際のミル内の温度を調整してもよい。
MM処理時の原料温度が、60℃以上160℃以下になるようにすることが好ましい。
(ウ)固相法
固相法は、原料を混合し所定温度で加熱することにより固体電解質(ガラス)を得る方法である。具体的には、PとNaSとを所定量乳鉢にて混合し、100〜900℃の温度で加熱することにより、固体電解質(ガラス)が得られる。
(エ)湿式メカニカルミリング法(湿式MM法)
原料を炭化水素系溶媒中でメカニカルミリング処理して製造する方法である。
炭化水素系溶媒としては、飽和炭化水素、不飽和炭化水素又は芳香族炭化水素が使用できる。
飽和炭化水素としては、ヘキサン、ペンタン、2−エチルヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等が挙げられる。
不飽和炭化水素しては、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、デカリン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレンが好ましい。
炭化水素系溶媒は、あらかじめ脱水されていることが好ましい。具体的には、水分含有量として100重量ppm以下が好ましく、特に30重量ppm以下が好ましい。
尚、必要に応じて炭化水素系溶媒に他の溶媒を添加してもよい。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エタノール、ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類等、ジクロロメタン、クロロベンゼン、フッ化ヘプタン、フッ化ベンゼン2,3‐ジハイドロパーフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4‐ヘプタフルオロシクロペンタン等のフッ素系化合物等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
炭化水素系溶媒の量は、原料が、溶媒の添加により溶液又はスラリー状になる程度であることが好ましい。通常、溶媒1リットルに対する原料(合計量)の添加量は0.01Kg以上1Kg以下程度となる。
メカニカルミリング処理には、種々の形式の粉砕法を用いることができる。遊星型ボールミル、ビーズミルが好ましい。
メカニカルミリング処理の回転速度及び回転時間は特に限定されないが、回転速度が速いほど、ガラス状電解質の生成速度は速くなり、回転時間が長いほどガラス状電解質ヘの原料の転化率は高くなる。
例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を250回転/分以上300回転/分以下とし、5分以上50時間以下処理すればよい。
この方法では、炭化系水素溶媒の存在下でメカニカルミリング処理するため、処理時間を短縮できる。室温から200℃まで必要に応じて加熱してもよい。
(オ)スラリー法
原料に、炭化水素系溶媒中で力学的なエネルギーを与える力学的なエネルギー供与手段と、原料を、炭化水素系溶媒中で接触させる接触手段と、前記力学的なエネルギー供与手段と前記接触手段を連結する連結手段と、前記連結手段を通して、原料及び/又は原料の反応物を前記力学的なエネルギー供与手段と接触手段との間を循環させる循環手段とを備える製造装置を用いて固体電解質を製造する方法である。炭化水素系溶媒は、上記と同様のものが使用できる。
図1は、この方法で使用できる製造装置の一例を示す図である。
この装置1を用いて、固体電解質を製造するときは、炭化水素系溶媒と原料を、粉砕機10と温度保持槽20にそれぞれ供給する。ヒータ30には温水(HW)が入り排出される(RHW)。ヒータ30により粉砕機10内の温度を保ちながら、原料を炭化水素系溶媒中で粉砕しつつ反応させて固体電解質を合成する。オイルバス40により温度保持槽20内の温度を保ちながら、原料を炭化水素系溶媒中で反応させて固体電解質を合成する。温度保持槽20内の温度は温度計(Th)で測定する。このとき、撹拌翼24をモータ(M)により回転させて反応系を撹拌し、原料と溶媒からなるスラリーが沈殿しないようにする。冷却管26には冷却水(CW)が入り排出される(RCW)。冷却管26は、容器22内の気化した溶媒を冷却して液化し、容器22内に戻す。粉砕機10と温度保持槽20で固体電解質を合成する間、ポンプ54により、反応中の原料は連結管50,52を通って、粉砕機10と温度保持槽20の間を循環する。粉砕機10に送り込まれる原料と溶媒の温度は、粉砕機10前の第2の連結管に設けられた温度計(Th)で測定する。
粉砕機10として、例えば、回転ミル(転動ミル)、揺動ミル、振動ミル、ビーズミルを挙げることができる。原料を細かく粉砕できる点でビーズミルが好ましい。粉砕機がボールを含むとき、ボールはジルコニウム製、強化アルミナ製、アルミナ製が好ましい。
また、粉砕機10から温度保持槽20へのボールの混合を防ぐため、必要に応じて粉砕機10又は第1の連結管50にボールと原料及び溶媒を分離するフィルタを設けてもよい。
粉砕機での粉砕温度は、通常20℃以上80℃以下、好ましくは20℃以上60℃以下である。容器22内の反応温度は、通常60℃以上300℃以下、好ましくは80℃以上200℃以下である。
炭化系水素溶媒の量は、原料が、溶媒の添加により溶液又はスラリー状になる程度であることが好ましい。通常、溶媒1kgに対する原料(合計量)の添加量は0.03Kg以上1Kg以下程度となる。
(カ)改良スラリー法
原料を炭化水素系溶媒中で接触させて製造する方法である。炭化水素系溶媒は、上記と同様のものが使用できる。
炭化水素系溶媒の量は、原料が、溶媒の添加により溶液又はスラリー状になる程度であることが好ましい。通常、溶媒1リットルに対する原料(合計量)の添加量は0.001Kg以上1Kg以下程度となる。
原料を炭化水素系溶媒中で接触させる方法は、特に限定されない。例えば、撹拌装置を有する容器内で、原料と炭化水素系溶媒の混合物を撹拌させる方法が挙げられる。接触時に撹拌することが好ましい。
接触(反応)工程時の温度は、通常、50℃以上300℃以下であり、好ましくは60℃以上250℃以下であり、より好ましくは70℃以上200℃以下である。
また、接触工程時の時間は、通常、5分以上200時間以下、好ましくは、10分以上100時間以下である。
尚、温度や時間は、いくつかの条件をステップにして組み合わせてもよい。例えば、接触開始から1時間は100℃で接触させ、1時間後10時間の間は150℃で加熱するなどである。
接触工程は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。不活性ガスの露点は−20℃以下が好ましく、特に好ましくは−40℃以下である。圧力は、通常、常圧〜100MPaであり、好ましくは常圧〜20MPaである。
(iii)結晶化方法
固体電解質(ガラスセラミックス)は、上記固体電解質(ガラス)(硫化物ガラス)を加熱処理することにより得られる。加熱は、露点−40℃以下の環境下で行うことが好ましく、より好ましくは露点−60℃以下の環境下で行うことが好ましい。
加熱時の圧力は、常圧であってもよく、減圧下であってもよい。
雰囲気は、空気中であってもよく、不活性雰囲気下であってもよい。
さらに、溶媒中(例えば、炭化水素系有機溶媒、炭化水素系有機溶媒は上記と同様である。)で加熱してもよい。
加熱温度は、好ましくは、固体電解質(ガラス)のガラス転移温度(Tg)以上、電解質前駆体1の結晶化温度(Tc)+100℃以下であることが好ましい。加熱温度が固体電解質(ガラス)のTg未満の場合、製造時間が非常に長くなるおそれがある。一方、(Tc+100℃)を超えると、得られる固体電解質(ガラスセラミックス)中に不純物等が含まれる場合があり、イオン伝導度が低下するおそれがある。
加熱温度は、より好ましくは、(Tg+5℃)以上、(Tc+90℃)以下、さらに好ましくは、(Tg+10℃)以上、(Tc+80℃)以下である。
例えば、加熱温度は、150℃以上360℃以下であり、好ましくは160℃以上350℃以下であり、より好ましくは180℃以上310℃以下であり、さらに好ましくは180℃以上290℃以下であり、特に好ましくは190℃以上270℃以下である。また、熱物性中に2つの温度ピークがある場合は低温側のピーク温度をこの場合のTcとし、低温側のTcと高温側の第二結晶化ピークと(Tc2)の間で熱処理することが好ましい。
固体電解質(ガラス)の結晶化温度は、熱重量測定装置(メトラートレド社製TGA/DSC1)を使用し、固体電解質(ガラス)約20mgを10℃/分で測定する。尚、結晶化温度等は昇温速度等により変化することあり、熱処理する昇温速度に近い速度での測定でのTcを基準に選ぶ必要がある。
加熱時間は、0.005分以上、10時間以下が好ましい。さらに好ましくは、0.005分以上、5時間以下であり、特に好ましくは、0.01分以上、3時間以下である。0.005分未満だと本発明の電解質に電解質前駆体が多く含まれることになり、イオン伝導度が低くなるおそれがある。10時間を越えると、本発明の固体電解質中に不純物等が発生する場合があり、イオン伝導度が低下するおそれがある。
(3)平均粒子径
本発明の固体電解質粒子は、レーザー回折式粒度分布測定方法により測定される体積基準平均粒子径が0.01μm以上50μm以下である。
体積基準平均粒子径が0.01μm以上であれば、ハンドリング容易になり、体積基準平均粒子径が50μm以下であれば、この電解質粒子を用いて製造した電解質層と電極層の空孔を減らすことができるとともに、電極層での電極活物質とより多く接触することができる。エネルギー密度と出力密度を向上させた全固体電池を得ることができる。
体積基準平均粒子径が0.05μm以上20μm以下であることが好ましく、体積基準平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
また、体積基準平均粒子径は、2.5μm以下が好ましく、0.5μm以下が特に好ましい。体積基準平均粒子径がこのように小さいと、固体電解質粒子を含むスラリーを用いて層を形成するとき、均一の層を形成できる。
レーザー回折式粒度分布測定方法により測定される90%以上の粒子の体積基準粒子径が100μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。
レーザー回折式粒度分布測定方法は、組成物を乾燥せずに粒度分布を測定することができ、組成物中の粒子群にレーザーを照射してその散乱光を解析することで粒度分布を測定することができる。
レーザー回折式粒度分布測定装置がMalvern Instruments Ltd社製マスターサイザー2000である場合の測定例は以下の通りである。
まず、装置の分散槽に脱水処理されたトルエン(和光純薬製、製品名:特級)110mlを入れ、さらに分散剤として脱水処理されたターシャリーブチルアルコール(和光純薬製、特級)を6%添加する。ここで、トルエンに分散剤を添加するのは、固体電解質含有組成物内の「凝集している固体電解質粒子」を一次粒子にする(分散させる)ためではなく、測定する固体電解質含有組成物内の固体電解質粒子が凝集しないようにするためである。
上記混合物を十分混合した後、固体電解質含有組成物を添加して粒子径を測定する。固体電解質含有組成物の添加量は、マスターサイザー2000で規定されている操作画面で、粒子濃度に対応するレーザー散乱強度が規定の範囲内(10〜20%)に収まるように加減して加える。この範囲を超えると多重散乱が発生し、正確な粒子径分布を求めることができなくなるおそれがある。また、この範囲より少ないとSN比が悪くなり、正確な測定ができないおそれがある。マスターサイザー2000では、固体電解質含有組成物の添加量に基き、レーザー散乱強度が表示されるので、上記レーザー散乱強度に入る添加量を見つけるとよい。
固体電解質含有組成物の添加量は組成物の濃度によって最適量は異なるが、概ね10μL〜200μL程度である。
[組成物]
本発明の組成物は、上記の固体電解質粒子を含む。さらに溶媒及び/又はニトリル化合物を含むことができる。
本発明の組成物は、上記の体積基準平均粒子径を有する固体電解質粒子を含むため、これを用いて製造した電池の性能が向上する。また、溶媒を含んだスラリー(組成物)の状態を保ち易く、扱いやすい。
本発明の固体電解質粒子を含む組成物では、沈降容積分率が、好ましくは20%以上95%以下であり、より好ましくは30%以上90%以下であり、さらに好ましくは50%以上90%以下であり、最も好ましくは50%以上80%以下である。
上記沈降容積分率は、「固体電解質粒子が沈降した容積/全スラリー容積×100」で表わされ、一次粒子の凝集状態に関係する指標である。沈降容積分率が20%未満の場合、粉砕エネルギーが凝集体の再粉砕に使われるために、微粒化が十分に行われないおそれがあるほか、固体電解質粒子を含む組成物をバーコート法等により塗布する場合に、一部にしか固体電解質膜を形成する事ができず、均一な膜を形成することができないおそれがある。一方、沈降容積分率が95%超の場合、組成物を乾燥して固体電解質粉体を得る時や固体電解質膜を得る場合に、溶媒の乾燥が十分に行われなくなるおそれがある。
沈降容積分率は、後述する実施例に記載の方法で評価できる。
(1)溶媒
溶媒は好ましくは有機溶媒であり、より好ましくは固体電解質と反応性の少ない炭化水素系有機溶媒である。
炭化水素系有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカリン等が挙げられる。塗布形成後の乾燥工程を考慮した場合、沸点が低いヘキサン、トルエン及びキシレンが好適に使用できる。
また、溶媒はニトリル化合物であってもよい。ニトリル化合物については後述する。
本発明の組成物は、好ましくは固体電解質粒子と溶媒を5:95〜50:50(重量比)で含み、より好ましくは5:95〜5:30(重量比)で含む。
固体電解質粒子の含有量が少ない5:95(重量比)未満では、後述する製造方法において、固体電解質の粉砕量が少ないために製造の効率が悪くなるおそれがあり、50:50超では、組成物スラリーの粘度が増大して、移送等の点で取扱いにくくなるおそれがある。
(2)ニトリル化合物
本発明の組成物は、溶媒としてニトリル化合物を含むことができ、また、溶媒がニトリル化合物でない場合には、好ましくはさらにニトリル化合物を含む。ニトリル化合物を含むと固体電解質粒子がよく分散する。
ニトリル化合物は、例えば下記式で表わされる化合物である。
R−CN
(式中、Rは、炭素数が1以上10以下のアルキル基、環形成炭素数が3以上10以下のシクロアルキル基、又は環形成炭素数が6以上18以下の芳香族環を有する基であり、好ましくは分岐した構造を有する炭素数3以上6以下のアルキル基であり、より好ましくは分岐した構造を有する炭素数3以上5以下のアルキル基である。)
上記ニトリル化合物としては、例えばアセトニトリル、ベンゾニトリル、ターシャルブチロニトリル、イソブチロニトリル等が挙げられ、好ましくはイソブチロニトリルである。
溶媒(ニトリル化合物ではない)とニトリル化合物を含む場合、好ましくはニトリル化合物と溶媒を0.1:99.9〜50:50(重量比)で含み、より好ましくは1:99〜30:70(重量比)で含み、さらに好ましくは3:97〜15:85(重量比)で含む。
ニトリル化合物の含有量が少ない0.1:99.9(重量比)未満では、固体電解質粒子の分散効果が低くなるおそれがあり、ニトリル化合物の含有量が多い50:50超では、固体電解質粒子の分散効果が向上しないおそれがある。
[製造方法]
本発明の固体電解質粒子及び本発明の組成物の製造方法は特に問わないが、例えば、粒径が大きな固体電解質粒子を、溶媒を含む組成物中で粉砕することで製造することができる。また、粒径が大きな固体電解質粒子を、ニトリル化合物と溶媒を含む組成物中で粉砕することで製造することができる。
また、粒径が大きな固体電解質粒子に溶媒を添加せずに粉砕することにより製造することもできる。
粉砕する固体電解質粒子の組成及び構造、ニトリル化合物、溶媒、並びにこれらの混合比(重量比)は、上記と同様である。
尚、特にニトリル化合物の溶媒に対する含有量が少ない、ニトリル化合物:溶媒=0.1:99.9(重量比)未満の場合、分散中の固体電解質粒子の凝集を防止できないおそれがあり、固体電解質粒子の微粒化ができないおそれがある。
固体電解質粒子の粉砕方法は特に制限されないが、例えば粉砕機を用いて固体電解質粒子を粉砕する。
上記粉砕機としては、好ましくはボールミル、ビーズミル、ウォータジェットミル、ホモジナイザー等であり、より好ましくはボールミル、ビーズミル等の反応容器の内部にボール又はビーズを備える装置である。
粉砕する固体電解質粒子の平均粒径は、ビーズミル等で効率的に粉砕可能な粒径が、通常、用いるビーズ等の径の10分の1以下であることから、ビーズ等のボールの径の10分の1以下であることが好ましい。従って、一般的にビーズミル等では1mm〜0.1mmの径のビーズ等が使用されるため、粉砕する固体電解質粒子の平均粒径は好ましくは100μm以下である。
尚、ビーズミル等での粉砕は、必要に応じて粒径の異なるビーズ等を併用した多段式粉砕を用いることが好ましい。
本発明の固体電解質粒子は、電解質層に好適に用いることができ、活物質と混合して電極層(正極層及び/又は負極層)に好適に用いることもできる。
本発明の電解質微粒子を用いることにより、電解質層及び電極層を非常に薄くすることができ、電解質層自体のイオン伝導性を高めることができる。例えば本発明の電解質微粒子を含む電解質層及び電極層の膜厚は、10μm以下とすることができる。
[電解質層]
本発明の電解質層は、上記の固体電解質粒子及び/又は組成物を含む、または、上記の固体電解質粒子及び/又は組成物を用いて製造する。
電解質層の厚さは1〜500μmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、3〜300μmである。特に好ましくは、5〜100μmである。
本発明の電解質層は、本発明の組成物を用いて製造することができ、例えば本発明の組成物を静電スクリーン印刷又は静電スプレー印刷して乾燥することによって製造できる。
電解質層の製造に用いる組成物は、さらにバインダーを含んでもよい。
バインダーは、特に問わないが、例えば、フッ化ビニリデン系が好適であり、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリシロキ酸、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が挙げられる。
[電極層]
本発明の電極層は、上記の固体電解質粒子及び/又は組成物を含む、又は上記の固体電解質粒子及び/又は組成物を用いて製造する。
電極層の厚さは、電池の形状や用途に応じて適宜調整すればよく、1μm〜500μmであることが好ましい。より好ましくは、10〜300μmである。特に好ましくは、20〜150μmである。
(1)正極層
活物質が正極活物質である場合、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができる化合物であればよく、無機化合物が好ましく用いることができる。
硫化物系では、硫黄(S)、硫化チタン(TiS),硫化モリブデン(MoS)、硫化鉄(FeS,FeS)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni)等が挙げられる。好ましくは、TiSである。
酸化物系では、酸化ビスマス(Bi)、鉛酸ビスマス(BiPb)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V13)等が挙げられる。
ナトリウム無機化合物では、NaFeO、NaMnO、NaNiO及びNaCoO等のNaM1で表される酸化物、Na0.44Mn1−aM1で表される酸化物、Na0.7Mn1−aM12.05で表される酸化物(M1は1種以上の遷移金属元素、0≦a<1)、NaFeSi1230及びNaFeSi1230等のNaM2Si1230で表される酸化物(M2は1種以上の遷移金属元素、2≦b≦6、2≦c≦5)、NaFeSi18及びNaMnFeSi18等のNaM3Si18で表される酸化物(M3は1種以上の遷移金属元素、3≦d≦6、1≦e≦2)、NaFeSiO等のNaM4Siで表される酸化物(M4は遷移金属元素、Mg及びAlからなる群より選ばれる1種以上の元素、1≦f≦2、1≦g≦2)、NaFePO、NaFe(PO等のリン酸塩;NaFeBO、NaFe(BO等のホウ酸塩;NaFeF及びNaMnF等のNaM5Fで表されるフッ化物(M5は1種以上の遷移金属元素、2≦h≦3)等が挙げられる。
有機ジスルフィド化合物及びカーボンスルフィド化合物等を挙げることができる。
正極活物質は、上記の硫化物系と酸化物系を混合して用いることも可能である。また、上記硫化物系及び酸化物系の他に、セレン化ニオブ(NbSe)も使用することができる。
正極活物質は、必要に応じて表面を酸化物、硫化物等でコート処理した正極活物質も好適に使用できる。
正極活物質の形状としては、粒子形状を挙げることができ、真球状叉は楕円球状であることが好ましい。また、粒子状である場合は、その平均粒径は、0.1〜100μmの範囲内であることが好ましい。この範囲を逸脱すると稠密な正極層が得られない場合がある。
より好ましくは、1〜50μmの範囲、特に好ましくは、1〜25μmの範囲である。
正極層は、正極活物質と固体電解質との合材であることが好ましく、正極活物質の含有量は、50〜90重量%の範囲であることが好ましく、60〜80重量%の範囲内であることがより好ましい。
正極層の厚さは、目的とする全固体電池の種類によって適宜選択すればよいが、通常、1μm〜200μmの範囲であることが好ましい。
正極層に用いる固体電解質は、上記の固体電解質粒子のうちナトリウムイオン固体電解質ガラス、ナトリウムイオン固体電解質ガラスセラミック又はその混合物が好ましく、加圧・加熱し電池を成形する前は、ガラスである方がよい。
また、正極層には、導電性物質を含有させてもよい。導電性物質としては、炭素材料、金属粉末、金属化合物等が挙げられ、好ましくは炭素材料が挙げられる。
(2)負極層
活物質が負極活物質である場合、当該負極活物質は、ナトリウムイオンの挿入脱離が可能な電池分野において公知の負極活物質を使用できる。
具体的には、ナトリウム金属、ナトリウム合金、又は炭素材料を用いることができる。
ナトリウム合金としては、Na−Sn、Na−Zn、Na−Al等を挙げることができる。
炭素材料としては、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素が挙げられる。又はその混合物でもよい。好ましくは、人造黒鉛である。
負極層は、負極活物質と固体電解質との合材であることが好ましく、負極活物質の含有量は、50〜90重量%の範囲であることが好ましく、60〜80重量%の範囲内であることがより好ましい。
負極層の厚さは、目的とする全固体電池の種類によって適宜選択すればよいが、通常、1μm〜200μmの範囲であることが好ましい。
負極層に用いる固体電解質は、上記の固体電解質粒子のうちナトリウムイオン固体電解質ガラス、ナトリウムイオン固体電解質ガラスセラミック又はその混合物が好ましく、加圧・加熱し電池を成形する場合には、ガラスである方がよい。
正極層と負極層は、さらにバインダーを含んでもよい。バインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、又はポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
[電池]
本発明の電池は、上記の固体電解質粒子及び/又は組成物を含む、又は上記の固体電解質粒子及び/又は組成物を用いて製造する、又は上記電解質層及び電極層の少なくとも1つを備える。
上記電解質層以外の電解質層は公知の電解質層(ポリマー電解質、非水系電解質等)を用いることができる。また、上記電極層以外の電極層は公知の電極層を用いることができ、例えば、上記活物質と電解質との合材を用いた電極がある。
実施例1
[固体電解質ガラス粗粒子1の製造]
NaS(高純度化学研究所製)とP(アルドリッチ製)を出発原料に用いた。NaS 25.72g(75モル%)とP 24.288g(25モル%)を10mmφアルミナボールが175個入った500mlアルミナ製容器に入れ、さらに脱水トルエン(和光純薬社製)68mlを加え密閉した。上記の計量、添加、密閉作業はすべてグローブボックス内で実施し、使用した器具類はすべて乾燥機で事前に水分除去した。また、脱水トルエンはカールフィッシャー法による水分測定で8.4ppmであった。
密閉したアルミナ製容器を、遊星型ボールミル(レッチェ社製PM400)にて室温下、290rpmで、18時間メカニカルミリング処理することで白黄色の粉末スラリー(クリーム状)を得た。
これをろ過・風乾後、160℃で2時間チューブヒータにより乾燥し、固体電解質ガラス粗粒子1(粉体)を得た。
この操作を20回行い、800gの固体電解質ガラス粗粒子1を得た。
体積基準平均径は、110μmであった。体積基準平均径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern Instruments Ltd製、型番:マスターサイザー2000)で測定した。
この粉体のX線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)を行った結果、非晶質に由来するハローパターン以外にピークが観測されず固体電解質ガラスであることが確認された。
[固体電解質ガラスセラミック粗粒子1の製造]
上記固体電解質ガラス粗粒子(粉体)をグローボックス内、アルゴン雰囲気下でSUS製チューブに密閉し、280℃で2時間の加熱処理を行った。処理後の粉体のX線回折測定の結果、立方晶NaPS構造であることが確認され、固体電解質ガラスセラミック粗粒子1であることが判った。
体積基準平均径は、137μmであった。
この固体電解質ガラスセラミック粗粒子1のイオン伝導度は、2×10−4 S/cmであった。
尚、イオン伝導度の測定は、以下の方法で行った。
固体電解質を錠剤成形機に充填し、4〜6MPaの圧力を加えて成形体を得た。次いで、電極としてカーボンと固体電解質を重量比1:1で混合した合材を成形体の両面に配置し、再度錠剤成形機にて圧力を加えることで、伝導度測定用の成形体(直径10mm、厚み1mm)を作成した。この成形体について、交流インピーダンス測定によりイオン伝導度測定を実施した。伝導度の値は25℃における数値を採用した。
尚、上記の計量及び密閉作業は、すべてグローブボックス内で実施し、使用する器具類はすべて乾燥機で事前に水分除去して用いた。
得られた粗粒子のX線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)を行なった結果、原料Na2Sのピークは観測されず、固体電解質ガラスセラミックのXRDパターンであった。
[固体電解質粒子1の製造]
アシザワファインテック社製ビーズミルLMZ015に攪拌機付容器を連結し、得られた上記固体電解質ガラスセラミック粗粒子1を含むスラリーを、ポンプにより循環する方法で粉砕した。
具体的には、ビーズミルに0.5φZrOビーズを440g仕込み、攪拌機付容器に無水トルエン溶媒1031.9g、イソブチロニトリル102.1g、固体電解質ガラスセラミック粗粒子1を126.0gからなるスラリーを仕込んだ。スラリーを200mL/minで循環しながら、ミルの翼先端速度10m/srpmで2時間処理し、固体電解質粒子を含むスラリーを回収した。次に、ビーズミルのZrOビーズを0.1φZrOビーズに入れ換え、この回収した固体電解質粒子を含むスラリーを上記方法と同様にして再度処理し、固体電解質粒子1を含むスラリー得た。
得られた固体電解質粒子1の粒径を、上記のレーザー回折式粒度分布測定装置で測定した結果、体積基準平均粒子径0.13μmであり、体積基準粒子径0.29μm以下の粒子が90%であった。
また、得られた固体電解質粒子1を含むスラリーをよく攪拌した後、24時間静置し、沈降容積分率(固体電解質粒子1が沈降した容積/全スラリー容積×100)を測定したところ、82%であった。加えて、得られたスラリーを用いてドクターブレード法にて、塗布膜(膜厚 70μm)を形成したところ、目視で均一な膜が得られた。結果を表1に示す。
尚、上記沈降容積分率は、次のように測定した。
固体電解質粒子1を含むスラリーを攪拌しながら20ml抜き出し、メスシリンダーで全スラリー容積を測定した。スラリーをよく攪拌した後、24時間静置し、固体電解質粒子1が沈降した部分の容積を測定した。それぞれの値を用いて、固体電解質粒子1が沈降した容積/全スラリー容積×100から、沈降容積分率を求めた。全ての操作は、不活性ガス雰囲気下で行い、試料が大気に触れないように実施した。
実施例2
固体電解質粒子1の製造において、無水トルエン溶媒の仕込み量を1088.6g、及びイソブチロニトリルの仕込み量を45.4gとした他は実施例1と同様にして、固体電解質粒子を含むスラリーを調製し、評価した。
その結果、得られた固体電解質粒子の体積基準平均粒子径は0.32μmであり、体積基準粒子径1.12μm以下の粒子が90%であった。また、沈降容積分率は50%であった。実施例1と同様に塗布膜を形成したところ、目視で均一な膜が得られた。結果を表1に示す。
実施例3
固体電解質粒子1の製造において、固体電解質ガラスセラミック粗粒子1の代わりに固体電解質ガラス粗粒子1を用いた他は実施例1と同様にして、固体電解質粒子を含むスラリーを調製し、評価した。
その結果、得られた固体電解質粒子の体積基準平均粒子径0.14μmであり、粒子径0.44μm以下の粒子が90%であった。また、沈降容積分率は79%であった。実施例1と同様に塗布膜を形成したところ、目視で均一な膜が得られた。結果を表1に示す。
実施例4
[固体電解質ガラス粗粒子2の製造]
固体電解質ガラス粗粒子1の製造において、NaSを29.2gとP(アルドリッチ社製)を20.8gをアルミナ容器に入れ密閉した他は、実施例1と同様にして690gの固体電解質ガラス粗粒子2を得た。原料のモル比は、NaS:P=80:20(モル比)であった。得られた固体電解質ガラス粗粒子2の体積基準平均粒子径は126μmであり、X線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)を行なった結果、原料NaSのピークは観測されず、固体電解質ガラスに起因するハローパターンであった。
[固体電解質粒子2の製造]
固体電解質粒子1の製造において、固体電解質ガラスセラミック粗粒子1の代わりに固体電解質ガラス粗粒子2を用いた他は実施例1と同様にして、固体電解質粒子を含むスラリーを調製し、評価した。
その結果、得られた固体電解質粒子2の体積基準平均粒子径は0.26μmであり、粒子径0.88μm以下の粒子が90%であった。また、沈降容積分率は78%であった。実施例1と同様に塗布膜を形成したところ、目視で均一な膜が得られた。結果を表1に示す。
実施例5
固体電解質粒子1の製造において、脱水トルエンの仕込み量を1134.0gとし、イソブチロニトリルを添加しなかった他は実施例1と同様にして、固体電解質粒子を含むスラリーを調製し、評価した。
その結果、得られた固体電解質粒子の体積基準平均粒子径は2.60μmであり、粒子径10.0μm以下の粒子が90%であった。また、沈降容積分率は15%であった。実施例1と同様に塗布膜を形成したところ、一部に穴の開いた膜が得られた。結果を表1に示す。
実施例6
実施例5において、固体電解質ガラスセラミック粗粒子1の代わりに固体電解質ガラス粗粒子2を用いた他は実施例5と同様にして、固体電解質粒子を含むスラリーを調製し、評価した。
その結果、得られた固体電解質粒子の体積基準平均粒子径は2.75μmであり、粒子径12.0μm以下の粒子が90%であった。また、沈降容積分率は13%であった。実施例1と同様に塗布膜を形成したところ、一部に穴の開いた膜が得られた。結果を表1に
示す。
実施例7
ジェットミル(セイシン企業社製子ジェット)を用いて、固体電解質ガラス粗粒子1を粉砕した。
処理条件は、処理量90g/hr、粉砕流体に圧力0.7MPaの窒素を用いた。
その結果、得られた固体電解質粒子の体積基準平均粒子径は1.5μmであり、粒子径8μm以下の粒子が90%であった。また、沈降容積分率は35%であった。実施例1と同様に塗布膜を形成したところ、均一な膜が得られた。
実施例8
固体電解質ガラス粗粒子1を固体電解質ガラス粗粒子2に変更した以外は、実施例7と同様に行った。
その結果、得られた固体電解質粒子の体積基準平均粒子径は2μmであり、粒子径10μm以下の粒子が90%であった。また、沈降容積分率は30%であった。実施例1と同様に塗布膜を形成したところ、ほぼ均一な膜が得られた。
実施例9
固体電解質ガラス粗粒子1を固体電解質ガラスセラミック1に変更した以外は、実施例7と同様に行った。
その結果、得られた固体電解質粒子の体積基準平均粒子径は1.2μmであり、粒子径7μm以下の粒子が90%であった。また、沈降容積分率は40%であった。実施例1と同様に塗布膜を形成したところ、均一な膜が得られた。
比較例1
固体電解質ガラスセラミック粗粒子1を13.7gに溶媒として脱水トルエンを123.7g加えて調整したスラリーに直径0.2mmジルコニアビーズ545gを加えてバッチ式ビーズミル(アイメックス社製)を用いて回転数2000rpmで1時間粉砕した。体積基準平均粒子径は、55μm、90μm以下の粒子が90%であった。また、沈降容積分率は5%であった。塗布膜を形成したところ膜に一部に穴ができた。固体電解質層のシートとして使用できない。
Figure 2014017108
本発明の固体電解質粒子、組成物は、電池の電解質層、電極層に用いることができる。
1 製造装置
10 粉砕機
20 温度保持槽
22 容器
24 撹拌翼
26 冷却管
30 ヒータ
40 オイルバス
50 第1の連結管
52 第2の連結管
54 ポンプ

Claims (11)

  1. ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムから選択される少なくとも1つの成分と、リンと硫黄とを含み、レーザー回折式粒度分布測定方法により測定される体積基準平均粒子径が0.01μm以上50μm以下である固体電解質粒子。
  2. 前記少なくとも1つの成分がナトリウムである請求項1に記載の固体電解質粒子。
  3. 前記体積基準平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であり、90%以上の粒子の体積基準粒子径が20μm以下である請求項1又は2に記載の固体電解質粒子。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解質粒子を含む組成物。
  5. ニトリル化合物を含む請求項4に記載の組成物。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解質粒子、及び/又は請求項4又は5に記載の組成物を含む電解質層。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解質粒子、及び/又は請求項4又は5に記載の組成物を含む電極層。
  8. 請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解質粒子、及び/又は請求項4又は5に記載の組成物を含む電池。
  9. 請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解質粒子、及び/又は請求項4又は5に記載の組成物を用いて製造した電解質層。
  10. 請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解質粒子、及び/又は請求項4又は5に記載の組成物を用いて製造した電極層。
  11. 請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解質粒子、及び/又は請求項4又は5に記載の組成物を用いて製造した電池。
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