JP6118521B2 - 硫化物系固体電解質を含む電極層、硫化物系固体電解質を含む電解質層及びそれらを用いた全固体電池 - Google Patents
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Description
ここで、高容量の二次電池としてリチウムイオン電池がある。該リチウムイオン電池は、有機溶媒を含む電解液であるため、液漏れの心配や発火の危険性がある。
このような問題に対し、従来硫化物系固体電解質の研究が種々行われており、イオン伝導度が高い硫化物系固体電解質が開発された(特許文献1)。
しかし、特許文献1に記載の硫化物系固体電解質は、リチウムを多量に必要とするため、今後、リチウムイオン電池の需要増加に伴い、原料であるリチウム源が不足する恐れがある。
しかしながら、NaS電池は、固体電解質のイオン伝導性を確保するため、その作動温度は300℃以上の高温に限られる。
しかし、非特許文献1に記載のナトリウム電池は電池性能が低いという欠点があった。
1.電極活物質と固体電解質とを含み、前記固体電解質は前記電極活物質の表面に融着しており、前記固体電解質は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムから選択される少なくとも1つの成分と、リンと硫黄とを含む電極層。
2.前記少なくとも1つの成分がナトリウムである1記載の電極層。
3.空孔率が25%以下である1又は2記載の電極層。
4.前記固体電解質がガラス状の固体電解質である1〜3のいずれか記載の電極層。
5.前記固体電解質が結晶成分を有する固体電解質である1〜3のいずれか記載の電極層。
6.固体電解質を含み、前記固体電解質同士は融着しており、前記固体電解質は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムから選択される少なくとも1つの成分と、リンと硫黄とを含む電解質層。
7.前記少なくとも1つの成分がナトリウムである6記載の電解質層。
8.空孔率が25%以下である6又は7記載の電解質層。
9.前記固体電解質がガラス状の固体電解質である6〜8のいずれか記載の電解質層。
10.前記固体電解質が結晶成分を有する固体電解質である6〜8のいずれか記載の電解質層。
11.電極活物質と固体電解質と含む合材を加圧成形する工程と、
前記加圧成形した合材を軟化又は溶解させて、前記電極活物質と前記固体電解質を融着させる工程と、
を含む電極層の製造方法。
12.11記載の製造方法により製造した電極層。
13.固体電解質を含む電解質層製造用材料を加圧成形する工程と、
前記加圧成形した電解質層製造用材料を軟化又は溶解させて、前記前記固体電解質同士を融着させる工程と、
を含む電解質層の製造方法。
14.13記載の製造方法により製造した電解質層。
15.1〜5及び12のいずれか記載の電極層及び/又は6〜10及び14のいずれか記載の電解質層を含む全固体電池。
本発明の第1の電極層は、電極活物質と固体電解質とを含み、前記固体電解質は前記電極活物質の表面に融着しており、前記固体電解質は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムから選択される少なくとも1つの成分と、リンと硫黄とを含むものである。
本発明の第1の電解質層は、固体電解質を含み、前記固体電解質同士は融着しており、前記固体電解質は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムから選択される少なくとも1つの成分と、リンと硫黄とを含むものである。
以下、本発明の電極層及び電解質層の詳細について説明する。
固体電解質は、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びラジウム(Ra)から選択される少なくとも1つの成分と、リン(P)と硫黄(S)とを含む。
また、固体電解質は、ハロゲン元素、即ち、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)を含んでもよく、ハロゲン元素を含む場合、好ましくは、塩素、臭素、ヨウ素であり、さらに好ましくは、塩素、臭素である。
LaMbPcSdXe ・・・(1)
式(1)中、Lは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、又はラジウムである。
Lは、好ましくはナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウムであり、より好ましくはナトリウム、カリウムであり、さらに好ましくはナトリウムである。
Xは、ハロゲン元素であり、ハロゲン元素の組合せであってもよく、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、より好ましくは、塩素、臭素、ヨウ素であり、さらに好ましくは、塩素、臭素である。
b=0、又は、0.1≦b≦3であり、好ましくは0.2≦b≦3であり、より好ましくは0.2≦b≦2であり、最も好ましくはbが0である。
0.5<c≦5であり、好ましくは0.5≦c≦4であり、より好ましくは0.8≦c≦4であり、最も好ましくはcが1である。
0<d≦15であり、好ましくは1≦d≦15であり、より好ましくは1≦d≦13であり、最も好ましくは0.5≦d≦12である。
0≦e≦3であり、好ましくは0≦e≦2.5であり、より好ましくは0≦e≦2である。
又は、0.1<e≦3であることが好ましく、0.1≦e≦2であることがより好ましく、0.2≦e≦2であることがさらに好ましい。
結晶の方がガラスよりもイオン伝導度が高い場合には、結晶化度が高い方が好ましい。
ここで、結晶構造として、Na3PS4結晶構造が好ましい。イオン伝導度を高くすることができるからである。
以下、固体電解質の製造方法を例示するが、固体電解質は、下記製造方法により製造された固体電解質に限定されないことはいうまでもない。
下記式(2)で表わされる化合物と、硫化リン、硫黄とリン、硫化リンと硫黄、又は硫化リンと硫黄とリンとを原料とする。
LyS ・・・(2)
Lは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、又はラジウムである。
Lは、好ましくはナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウムであり、より好ましくはナトリウム、カリウムであり、さらに好ましくはナトリウムである。
尚、Sは硫黄を意味する。
例えば、Na2S(硫化ナトリウム)、K2S、Rb2S、BeS、MgS、CaS、SrS、BaS等を用いることができる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。
ガラス転移温度を低減する化合物(ガラス化促進剤)を添加してもよい。ガラス化促進剤の例としては、Na3PO4、Na4SiO4、Na4GeO4、Na3BO3、Na3AlO3、Na3CaO3、Na3InO3等の無機化合物が挙げられる。
MwXx ・・・(3)
Mは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、B、Al、Si、P、S、Ge、As、Se、Sn、Sb、Te、Pb、Bi又はこれらの組合せである。
Mは、好ましくは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、リン又はこれらの組合せであり、より好ましくは、ナトリウム、カリウム、リン又はこれらの組合せであり、さらに好ましくはナトリウム、リン又はこれらの組合せである。
wは、0.5以上5以下、好ましくは0.5以上4以下、さらに好ましくは以上3以下であり、最も好ましくは1である。
xは、1以上10以下の整数から選ばれる任意の整数であり、好ましくは0.5以上6以下の整数から選ばれる任意の整数であり、より好ましくは1以上5以下の整数から選ばれる任意の整数であり、最も好ましくは、1又は3である。
以下、原料として硫化ナトリウム(Na2S)と五硫化二リン(P2S5)を用いたガラス状の固体電解質の製造方法について説明する。
硫化ナトリウムと五硫化二リンの割合(モル比)は、例えば60:40〜90:10、好ましくは65:35〜85:15又は70:30〜90:10であり、より好ましくは67:33〜83:17又は72:28〜88:12であり、さらに好ましくは67:33〜80:20又は74:26〜86:14である。特に好ましくは、70:30〜80:20又は75:25〜85:15である。最も好ましくは、硫化ナトリウムと五硫化二リンの割合(モル比)は、72:28〜78:22、又は77:23〜83:17である。
溶融急冷法は、P2S5とNa2Sとを所定量混合し、所定温度で反応させた後、急速に冷却することによりガラス状の固体電解質を得る方法である。
例えば、乳鉢にて混合しペレット状にしたものを、カーボンコートした石英管中に入れ真空封入する。所定の反応温度で反応させた後、氷中に投入し急冷することにより、ガラス状の固体電解質が得られる。
反応温度は、好ましくは400℃〜1000℃、より好ましくは、800℃〜900℃である。
反応時間は、好ましくは0.1時間〜12時間、より好ましくは、1〜12時間である。
上記反応物の急冷温度は、通常10℃以下、好ましくは0℃以下であり、その冷却速度は、通常1〜10000K/sec程度、好ましくは10〜10000K/secである。
MM法は、P2S5とLi2Sとを所定量混合し、機械的なエネルギーを与えることによりガラス状の固体電解質を得る方法である。
機械的なエネルギーを与える方法は特に問わないが、例えば、各種ボールミルを例示することができる。
例えば、P2S5とNa2Sとを所定量乳鉢にて混合し、例えば、各種ボールミル等を使用して所定時間反応させることにより、ガラス状の固体電解質が得られる。
上記原料を用いたMM法は、室温で反応させることができる。そのため、原料の熱分解が起らず、仕込み組成のガラス状の固体電解質を得ることができるという利点がある。
MM法には、回転ボールミル、転動ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル等種々の形式を用いることができる。
MM法の条件としては、例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を数十〜数百回転/分とし、0.5時間〜100時間処理すればよい。
また、ボールミルのボールは異なる径のボールを混合して使用してもよい。
また、MM処理の際のミル内の温度を調整してもよい。
MM処理時の原料温度が、室温から200℃まで必要に応じて加熱してもよい。
固相法は、原料を混合し所定温度で加熱することによりガラス状の固体電解質を得る方法である。具体的には、P2S5とNa2Sとを所定量乳鉢にて混合し、100〜900℃の温度で加熱することにより、ガラス状の固体電解質が得られる。
原料を炭化水素系溶媒中でメカニカルミリング処理して製造する方法である。
飽和炭化水素としては、ヘキサン、ペンタン、2−エチルヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等が挙げられる。
不飽和炭化水素としては、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、デカリン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレンが好ましい。
例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を数十〜数百回転/分とし、0.5時間〜100時間処理すればよい。
また、ボールミルのボールは異なる径のボールを混合して使用してもよい。
また、MM処理の際のミル内の温度を調整してもよい。
原料に、炭化水素系溶媒中で力学的なエネルギーを与える力学的なエネルギー供与手段と、原料を、炭化水素系溶媒中で接触させる接触手段と、前記力学的なエネルギー供与手段と前記接触手段を連結する連結手段と、前記連結手段を通して、原料及び/又は原料の反応物を前記力学的なエネルギー供与手段と接触手段との間を循環させる循環手段とを備える製造装置を用いて固体電解質を製造する方法である。炭化水素系溶媒は、上記と同様のものが使用できる。
この装置1を用いて、固体電解質を製造するときは、炭化水素系溶媒と原料を、粉砕機10と温度保持槽20にそれぞれ供給する。ヒータ30には温水(HW)が入り排出される(RHW)。ヒータ30により粉砕機10内の温度を保ちながら、原料を炭化水素系溶媒中で粉砕しつつ反応させて固体電解質を合成する。オイルバス40により温度保持槽20内の温度を保ちながら、原料を炭化水素系溶媒中で反応させて固体電解質を合成する。温度保持槽20内の温度は温度計(Th)で測定する。このとき、撹拌翼24をモータ(M)により回転させて反応系を撹拌し、原料と溶媒からなるスラリーが沈殿しないようにする。冷却管26には冷却水(CW)が入り排出される(RCW)。冷却管26は、容器22内の気化した溶媒を冷却して液化し、容器22内に戻す。粉砕機10と温度保持槽20で固体電解質を合成する間、ポンプ54により、反応中の原料は連結管50,52を通って、粉砕機10と温度保持槽20の間を循環する。粉砕機10に送り込まれる原料と溶媒の温度は、粉砕機10前の第2の連結管に設けられた温度計(Th)で測定する。
原料を炭化水素系溶媒中で接触させて製造する方法である。炭化水素系溶媒は、上記と同様のものが使用できる。
接触(反応)工程時の温度は、通常、50℃以上300℃以下であり、好ましくは60℃以上250℃以下であり、より好ましくは70℃以上200℃以下である。
また、接触工程時の時間は、通常、5分以上200時間以下、好ましくは、10分以上100時間以下である。
尚、温度や時間は、いくつかの条件をステップにして組み合わせてもよい。例えば、接触開始から1時間は100℃で接触させ、1時間後10時間の間は150℃で加熱する等である。
結晶成分を有する固体電解質は、上記ガラス状の固体電解質(硫化物ガラス)を加熱処理することにより得られる。加熱は、露点−40℃以下の環境下で行うことが好ましく、より好ましくは露点−60℃以下の環境下で行うことが好ましい。
加熱時の圧力は、常圧であってもよく、減圧下であってもよい。
雰囲気は、空気中であってもよく、不活性雰囲気下であってもよい。
ただし、露点は−20℃以下が好ましく、より好ましくは露点が−30℃以下、さらに好ましくは−40℃以下である。
さらに、溶媒中(例えば、炭化水素系有機溶媒、炭化水素系有機溶媒は上記と同様である。)で加熱してもよい。
例えば、加熱温度は、150℃以上360℃以下であり、好ましくは160℃以上350℃以下であり、より好ましくは180℃以上310℃以下であり、さらに好ましくは180℃以上290℃以下であり、特に好ましくは190℃以上270℃以下である。
また、熱物性中に2つの温度ピークがある場合は低温側のピーク温度をこの場合のTcとし、低温側のTcと高温側の第二結晶化ピーク(Tc2)との間で熱処理することが好ましい。
電極活物質には、正極活物質と負極活物質があり、製造される電極が正極であるか負極であるかに応じて使用される。
(i)正極活物質
正極活物質としては、電荷を伝導する元素のイオンをドープかつ脱ドープすることができる化合物であればよく、好ましくは無機化合物である。
硫化物系では、硫黄(S)、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、硫化鉄(FeS、FeS2)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni3S2)等が挙げられる。好ましくは、TiS2である。
酸化物系では、酸化ビスマス(Bi2O3)、鉛酸ビスマス(Bi2Pb2O5)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V6O13)等が挙げられる。
正極活物質の形状としては、粒子形状を挙げることができ、真球状叉は楕円球状であることが好ましい。また、粒子状である場合は、その平均粒径は、0.1〜200μmの範囲内であることが好ましい。この範囲を逸脱すると稠密な正極活物質層が得られない場合がある。
より好ましくは、1〜50μmの範囲、特に好ましくは、1〜25μmの範囲である。
負極活物質としては、電荷を伝導する元素のイオンをドープかつ脱ドープすることができるものであればよく、ナトリウム金属、ナトリウム合金、又は炭素材料を用いることができる。
ナトリウム合金としては、Na−Sn、Na−Zn、Na−Al、Na−Sb等を挙げることができる。
炭素材料としては、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素が挙げられる。又はその混合物でもよい。好ましくは、人造黒鉛である。
固体電解質と電極活物質を含む合材は、導電助剤を含んでもよい。導電助剤を含んでいれば、合材を用いて製造した全固体電池の出力密度を向上させることができる。
導電助剤は導電性を有していればよい。導電助剤の導電率は、1×103S/cm以上が好ましく、より好ましくは1×105S/cm以上である。
導電助剤としては、炭素材料、金属粉末及び金属化合物から選択される物質や、これらの混合物が挙げられる。
炭素材料の具体例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、活性炭等が挙げられる。これらは単独でも2種以上でも併用可能である。
なかでも、電子伝導性が高いアセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラックが好適である。
正極活物質と固体電解質の割合は、50重量%:50重量%〜90重量%:10重量%が好ましく、60重量%:40重量%〜80重量%:20重量%がより好ましく、65重量%:35重量%〜75重量%:25重量%がさらに好ましい。
また、正極活物質と固体電解質の合計に対して導電助剤の割合は、80重量%:20重量%〜99.9重量%:0.1重量%が好ましく、85重量%:15重量%〜99重量%:1重量%がさらに好ましく、90重量%:10重量%〜98重量%:2重量%がさらに好ましい。
尚、負極は負極活物質単体で用いてもよく、固体電解質との合材としなくてもよい。
また、負極活物質と固体電解質の合計に対して導電助剤の割合は、80重量%:20重量%〜99.9重量%:0.1重量%が好ましく、85重量%:15重量%〜99重量%:1重量%がさらに好ましく、90重量%:10重量%〜98重量%:2重量%がさらに好ましい。
本発明の電極層において、固体電解質と電極活物質の融着とは、固体電解質を軟化又は溶解させて電極活物質と接触させた後、電解質を硬化させて電解質と電極活物質とを一体化させることである。
融着により固体電解質と電極活物質との接触面積が増加して、この電極層を用いた電池では出力密度とエネルギー密度を向上させることができる。
融着により固体電解質同士の接触面積が増加して、この電解質層を用いた電池では出力密度とエネルギー密度を向上させることができる。
さらに融着により固体電解質粒子間の界面抵抗を少なくすることができ、この電解質層を用いた電池では出力密度とエネルギー密度を向上させることができる。
融着の際の雰囲気は、空気中であってもよく、不活性雰囲気下であってもよい。
ただし、露点が−20℃以下が好ましく、より好ましくは露点が−30℃以下、さらに好ましくは−40℃以下である。
融着に用いる固体電解質は、ガラス状の固体電解質であることが好ましい。結晶成分を有する固体電解質より融着させ易い。
ここで、電極層における融着と電解質層における融着を別々に行ってもよく、電極層と固体電解質層を積層した後、電極層と電解質層の融着を同時に行ってもよい。
例えば、加熱温度は、150℃以上360℃以下であり、好ましくは160℃以上350℃以下であり、より好ましくは170℃以上310℃以下であり、さらに好ましくは180℃以上290℃以下である。
また、熱物性中に2つの温度ピークがある場合は低温側のピーク温度をこの場合のTcとし、低温側のTcと高温側の第二結晶化ピーク(Tc2)との間で熱処理することが好ましい。
本発明の電極層及び電解質層は、空孔率が低いことが好ましい。空孔率を低くすることで、エネルギー密度の向上を図ることができ、また、活物質粒子や固体電解質粒子同士の接触面積が大きくなり、イオン伝導パスが形成しやすくなると考えられるからである。
空孔率は、通常25%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下にするのがよい。
尚、空孔率(%)は、各材料の重量をその真密度で割り、得られた体積の合計を、実際の電池の体積で割ることで求めた充填率(%)から、(100−充填率)(%)で求めることができる。
本発明の電極層の製造方法は、電極活物質と固体電解質と含む合材を加圧成形する工程と、前記加圧成形した合材を軟化又は溶解させて、前記電極活物質と前記固体電解質を融着させる工程と、を含む。
合材は、電極活物質と固体電解質とを含む。合材は、バインダーや導電助剤を含んでいてもよい。
電極活物質、固体電解質、バインダー及び導電助剤は、電極層について上記した通りであることからその説明を省略する。
また、各成分の割合も上記電極層と同様であり、融着についても同様であることからその説明を省略する。
また、加圧の条件や製造雰囲気の条件も上記と同様であることからその説明を省略する。
本発明の第2の電極層は、上記製造方法により製造された電極層である。
本発明の電解質層の製造方法は、固体電解質を含む電解質層製造用材料を加圧成形する工程と、前記加圧成形した電解質層製造用材料を軟化又は溶解させて、前記前記固体電解質同士を融着させる工程と、を含む。
電解質層製造用材料は、固体電解質を含み、バインダーを含んでいてもよい。
固体電解質とバインダーは、電解質層について上記した通りであることからその説明を省略する。
また、各成分の割合も上記電解質層と同様であり、融着についても同様であることからその説明を省略する。
また、加圧の条件や製造雰囲気の条件も上記と同様であることからその説明を省略する。
本発明の第2の電解質層は、上記製造方法により製造された電解質層である。
本発明の全固体電池は、上記説明した電極層及び/又は上記説明した電解質層を含むものである。即ち、本発明の全固体電池は、正極層と電解質層と負極層とを含み、正極層、負極層及び電解質層のうち少なくとも1つが融着しているものである。また、集電体を含むことが好ましい。
電解質層は上記説明した本発明の第1の電解質層又は第2の電解質層を用いることができる。
又は、電解質層は上記固体電解質を含むもので、既知の方法で製造されたものであってもよい。
電解質層は、バインダーを含んでいてもよい。
バインダーは、特に問わないが、例えば、フッ化ビニリデン系が好適であり、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリシロキ酸、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が挙げられる。
電解質層の厚さは、0.001mm以上1mm以下であることが好ましい。
正極層は上記説明した本発明の第1の電極層又は第2の電極層を用いることができる。
又は、正極層は、上記固体電解質と上記正極活物質を含むもので、既知の方法で製造されたものであってもよい。
正極層は、さらに上記導電助剤を含んでいてもよい。バインダーを含んでいてもよい。
固体電解質と正極活物質との割合や、固体電解質と正極活物質の合計に対する導電助剤の割合は上記の通りである。
正極層の厚さは、目的とする全固体電池の種類によって適宜選択すればよいが、通常、1μm〜200μmの範囲であることが好ましい。
負極層は上記説明した本発明の第1の電極層又は第2の電極層を用いることができる。
又は、負極層は、上記固体電解質と上記負極活物質を含むもので、既知の方法で製造されたものであってもよい。
負極層は、さらに上記導電助剤を含んでいてもよい。バインダーを含んでいてもよい。
固体電解質と負極活物質との割合や、固体電解質と負極活物質の合計に対する導電助剤の割合は上記の通りである。
負極層の厚さは、目的とする全固体電池の種類によって適宜選択すればよいが、通常、1μm〜200μmの範囲であることが好ましい。
本発明の電池は、正極層、電解質層及び負極層の他に集電体を使用することが好ましい。集電体は公知のものを用いることができる。例えば、Au、Pt、Al、Ti、又は、Cu等のように、硫化物系固体電解質と反応するものをAu等で被覆した層が使用できる。
充填率は、通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上にするのがよい。尚、充填率は、各材料の重量をその真密度で割り、得られた体積の合計を、実際の電池の体積で割ることで、求めることができる。
また、正極活物質層及び/又は負極活物質層を予め成形し、加圧・加熱処理して融着状態のシート状にしたものと固体電解質層と貼り合わせてもよい。
また、固体電解質層を成形し、加圧・加熱処理し融着状態とした後に、正極活物質層及び負極活物質層を成形してもよい。
また、正極活物質層、固体電解質層、及び負極活物質層を順次積層してもよく、また、この逆であってもよく、各層の成形の順序は特に問わない。
[Na2S−P2S5固体電解質の合成(MM法)]
Na2S(高純度化学研究所製)とP2S5(アルドリッチ製)を出発原料に用いた。Na2S 25.72g(75モル%)とP2S5 24.288g(25モル%)を10mmφアルミナボールが175個入った500mlアルミナ製容器に入れ、さらに脱水トルエン(和光純薬社製)68mlを加え密閉した。上記の計量、添加、密閉作業はすべてグローブボックス内で実施し、使用した器具類はすべて乾燥機で事前に水分除去した。また、脱水トルエンはカールフィッシャー法による水分測定で8.4ppmであった。
密閉したアルミナ製容器を、遊星型ボールミル(レッチェ社製PM400)にて室温下、290rpmで、18時間メカニカルミリング処理することで白黄色の粉末スラリー(クリーム状)を得た。
これをろ過・風乾後、160℃で2時間チューブヒータにより乾燥し、粉体を得た。
この固体電解質ガラス粉体の一部をグローボックス内、アルゴン雰囲気下でSUS製チューブに密閉し、280℃で2時間の加熱処理を行った。処理後の粉体のX線回折測定の結果、立方晶Na3PS4結晶構造であることが確認され、Na3PS4結晶成分を有する固体電解質であることが判った。
なお、融着をさせていない場合のNa3PS4結晶成分を有する固体電解質のイオン伝導度は0.9×10−4S/cmであった。
上記ガラス状の固体電解質を、5MPaで直径10mmの錠剤状に加圧成形し、280℃で2時間熱処理して、ペレット状の固体電解質シートを得た。
ここで、加熱温度が280℃で2時間であることから、立方晶Na3PS4結晶成分を有する固体電解質シートであることが分かる。また、SEM(走査型電子顕微鏡)により確認したところ、固体電解質は融着していることが分かった。
このペレット状の固体電解質シートのイオン伝導度を交流インピーダンス法(測定周波数100Hz〜15MHz)により測定したところ、室温で3×10−4S/cmを示した。空孔率は、イオン伝導度測定後のペレットの密度から測定し、17%であった。
[全固体電池の製造]
活物質としてTiS2(アルドリッチ製)を70wt%、電解質として参考例1のガラス状の固体電解質30wt%を混合して正極活物質合材とした。
参考例1のガラス状の固体電解質50mgを直径10mmのプラスチック製の円筒に投入し、5MPaで加圧成形した。その後、上記の正極活物質合材を30mg投入し、再び加圧成形した。この状態で、280℃、2時間熱処理した。
ここで、加熱温度が280℃で2時間であることから、立方晶Na3PS4結晶成分を有する固体電解質を含む正極であることが分かる。また、SEM(走査型電子顕微鏡)により確認したところ、正極中の固体電解質が正極活物質に融着していたり、固体電解質同士が融着していたりすることが分かった。
正極/固体電解質層/Na−Snの三層構造を有するナトリウムイオン電池を作成した。
電解質層の空孔率を上記と同様の方法により測定した結果、18%であった。
この電池を、室温にて、1cm2あたり0.064mAで、1.2V〜2.4Vの10回充放電を行ったところ容量は120mAh/gであった。
[全固体電池の製造]
熱処理を実施しなかった以外は、実施例2と同様にして電池を作成した。容量は、90mAh/gであった。
[Na2S−P2S5固体電解質の合成(スラリー法)]
Na2S(高純度化学研究所製)をジェットミル(アイシンナノテクノロジー製)により粉砕し、平均粒径0.3μmのものを得た。粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布想定器LMS−30(株式会社セイシン企業製)を用いて測定した。また、この作業は、窒素雰囲気下で行った。
粉砕したNa2S 2.9g、P2S5(アルドリッチ製)2.76g、及び水分含有量が7ppmであるトルエン(和光純薬工業製)50mlを、内部を窒素で置換した撹拌機付きのオートクレーブに仕込み、190℃で24時間撹拌しながら接触させた。
その後、固体成分をろ過により分離し、150℃で120分間真空乾燥し、粉体を得た。
この固体電解質の一部を、280℃で2時間、加熱処理した。加熱処理後の固体電解質のイオン伝導度は3.5×10−4S/cmであった。X線回折測定の結果、立方晶Na3PS4結晶構造であることが確認され、Na3PS4結晶成分を有する固体電解質であることが判った。
参考例1と同様にして熱処理を行った。
このペレット状の固体電解質シートのイオン伝導度は、室温で4×10−4S/cmを示した。空孔率は、イオン伝導度測定後のペレットの密度から測定し、15%であった。
ここで、加熱温度が280℃で2時間であることから、立方晶Na3PS4結晶成分を有する固体電解質シートであることが分かる。また、SEM(走査型電子顕微鏡)により確認したところ、固体電解質は融着していることが分かった。
ガラス状の固体電解質として、参考例3で製造したガラス状の固体電解質を使用した以外は、実施例2と同様にして電池を作成した。容量は、110mAh/gであった。
10 粉砕機
20 温度保持槽
22 容器
24 撹拌翼
26 冷却管
30 ヒータ
40 オイルバス
50 第1の連結管
52 第2の連結管
54 ポンプ
Claims (6)
- 電極活物質と固体電解質とを含み、前記固体電解質は前記電極活物質の表面に融着しており、前記固体電解質は、ナトリウムとリンと硫黄とを含み、下記式(1)で表わされる、ナトリウムイオン電池用電極層。
L a M b P c S d X e ・・・(1)
(式(1)中、Lはナトリウムであり、Mは、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ヒ素(As)、セレン(Se)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、又はこれらの組合せであり、Xは、ハロゲン元素であり、aは0.1<a≦15であり、bはb=0、又は、0.1≦b≦3であり、cは0.5<c≦5であり、dは0<d≦15であり、eは0≦e≦3である。) - 空孔率が25%以下である請求項1記載のナトリウムイオン電池用電極層。
- 前記固体電解質がガラス状の固体電解質である請求項1又は2記載のナトリウムイオン電池用電極層。
- 前記固体電解質が結晶成分を有する固体電解質である請求項1又は2記載のナトリウムイオン電池用電極層。
- 電極活物質と、ナトリウムとリンと硫黄とを含み、下記式(1)で表わされる固体電解質と、含む合材を加圧成形する工程と、
前記加圧成形した合材を軟化又は溶解させて、前記電極活物質と前記固体電解質を融着させる工程と、
を含む、ナトリウムイオン電池用電極層の製造方法。
L a M b P c S d X e ・・・(1)
(式(1)中、Lはナトリウムであり、Mは、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ヒ素(As)、セレン(Se)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、又はこれらの組合せであり、Xは、ハロゲン元素であり、aは0.1<a≦15であり、bは0、又は、0.1≦b≦3であり、cは0.5<c≦5であり、dは0<d≦15であり、eは0≦e≦3である。) - 請求項1〜4のいずれか記載のナトリウムイオン電池用電極層を含むナトリウムイオン全固体電池。
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