以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の光学異方性フィルムは、フィルム基材上に液晶配向層、液晶層を積層してなる光学異方性フィルムにおいて、前記液晶層がフッ素−シロキサングラフトポリマーと重合性液晶化合物を含有し、該重合性液晶化合物が液晶層の厚み方向に対して傾斜しており、傾斜した状態で固定化されていることを特徴とし、かかる構成において、液晶層の十分な液晶配向性を付与しながら塗布ムラを改善し、かつ該液晶層と透明フィルム基材の接着性に優れ、さらにフィルムをロール状に巻き取っても該液晶層から対向面への活性剤の転写がなく偏光子との接着性に優れ、該液晶層面と粘着剤との接着性が良好である光学異方性フィルムを提供するものである。
[光学異方性フィルム]
本発明の一実施形態に係る光学異方性フィルムは、フィルム基材と、前記フィルム基材の上に形成された液晶配向層と、前記液晶配向層の上に形成された、重合性液晶化合物を含有する液晶層とを備え、前記液晶層は、さらにフッ素−シロキサングラフトポリマーを含有することを特徴とするものである。
光学異方性フィルムとしては、上記構成を備えるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、図1に示す層構造を備える光学異方性フィルム10等が挙げられる。
まず、光学異方性フィルム10としては、例えば、図1(a)に示すように、フィルム基材11上に、液晶配向層13と、前記液晶配向層13上に液晶層14とが積層された積層体であるものが挙げられる。なお、図1(a)では、液晶配向層13と液晶層14とを、機能層12として示している。
そして、光学異方性フィルム10としては、図1(a)に示すような、機能層12として、液晶配向層13および液晶層14のみで構成されたものに限定されず、他の層を備えたものであってもよい。具体的には、例えば、図1(b)に示すように、機能層12として、液晶配向層13と液晶層14との間に、第1中間層15を備えていてもよいし、図1(c)に示すように、機能層12として、フィルム基材11と液晶層14との間に、第2中間層16を備えていてもよい。また、第1中間層15及び第2中間層16の両方を備えていてもよい。第1中間層15としては、例えば、配向膜、帯電防止層、及び防眩層等が挙げられ、また、第2中間層16としては、例えば、帯電防止層、溶出抑制層、及び防眩層等が挙げられる。
本発明の光学異方性フィルムは、液晶層14が重合性液晶化合物を含有し、該重合性液晶化合物が液晶層の厚み方向に対して傾斜していることを特徴とする。
傾斜角度は、平均傾斜角度が液晶層の厚み方向に対して5〜50°の範囲であることが好ましく、より好ましくは平均傾斜角度が28°±2°の範囲であることが光学補償の観点で好ましい。重合性液晶化合物の厚み方向に対する傾斜角度は、傾斜測定が可能な複屈折計(例えば王子計測機器製KOBRA−31WR、オプトサイエンス社製Axoscan、株式会社溝尻光学工業所製分光エリプソメータDVA36VW)を用いて23℃55%RHの雰囲気下測定することで求めることができ、異なる部位10点を測定し、その平均値をもって平均傾斜角度とする。
傾斜をつける方法としては、特に制限されるものではないが、一般的に、重合性液晶化合物或いは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することが出来る。また、表面側(空気側)の重合性液晶化合物の傾斜角は、一般に重合性液晶性化合物或いは重合性液晶性化合物とともに使用する他の化合物を選択することにより調整することが出来る。重合性液晶性化合物とともに使用する化合物の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーなどを挙げることが出来る。更に、傾斜角の変化の程度も、上記と同様の選択により調整出来る。
ラビング処理を行うには、まずフィルム基材上に配向膜を形成し、形成された配向膜表面を下記のようなラビング処理することにより得ることができる。
例えば、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリアシレート繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
工業的に実施する場合、搬送している配向膜の形成されたフィルム基材に対し、回転するラビングロールを接触させることで達成するが、ラビングロールの真円度、円筒度、振れ(偏芯)はいずれも30μm以下であることが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1乃至90°が好ましい。
ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360°以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。
フィルムの搬送速度は1〜100m/minが好ましい。ラビング角は0〜60°の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40乃至50°が好ましい。45°が特に好ましい。
また別の方法として、重合性液晶化合物を含有する液晶層をフィルム基材の配向膜上に作製し、非偏光つまり自然光と同じモードの光を斜め方向から照射すると、重合性液晶化合物中の感光性部位を斜め配向させることができる。ラビング処理と異なり光を全面に隙間なく照射できるので歩留まりの向上が期待できる。さらに、フォトリソグラフィーの技術を転用することでマルチドメイン化を容易にでき、大きなプレチルト角を発生させることが出来るので好ましい方法である。
また、光学異方性フィルム10は、下記式(1)、(2)で求められる面内方向リターデーションRo、Rtが、0≦Ro≦200nmかつ30≦Rt≦400nmであることが好ましく、より好ましくは30≦Ro≦100nmかつ50≦Rt≦300nmである。また、Rtの変動や分布の幅は±10%未満であることが好ましく、より好ましくは±5%未満である。更に好ましくは±1%未満であることが好ましく、最も好ましくはRtの変動がないことである。
Ro=(nx−ny)×d (1)
Rt={(nx+ny)/2−nz}×d (2)
ここで、nxは、フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率を示し、nyは、フィルムの面内の遅相軸に直交する方向の屈折率を示し、nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を示し、dは、フィルムの厚み(nm)を示す。上記各屈折率は、例えば、王子計測機器株式会社製のKOBRA−21ADHを用いて、温度23℃、相対湿度55%RHの環境下で、波長590nmで測定することができる。
<フッ素−シロキサングラフトポリマー>
本発明においては、光学異方性フィルムの液晶層がフッ素−シロキサングラフトポリマーを含有することが、液晶材料の傾斜配向性や塗布ムラの問題がなく、かつ該液晶層面と粘着剤との接着性を良好にする上で必要である。
フッ素−シロキサングラフトポリマーとは、少なくともフッ素系樹脂に、シロキサンまたはオルガノシロキサン単体を含むポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサンをグラフト化により共重合して得られるポリマーをいうものであり、具体的には、以下に示す化合物である。
フッ素−シロキサングラフトポリマーとしては、例えば、(A)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂〔以下、ラジカル重合性フッ素樹脂(A)とも言う〕、(B)下記一般式(1)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、及び/又は下記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン〔以下、片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)とも言う〕、並びに(C)ラジカル重合反応条件下において、ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体〔以下、ラジカル重合性フッ素樹脂(C)とも言う〕を共重合してなるグラフト共重合によって形成される化合物が挙げられる。
式中、R1は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など)、アリール基(例えば、フェニル基)、又はシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基)等を挙げることができる。R1は、好ましくは水素原子又はメチル基である。R2、R3、R4、R5、及びR6は互いに同一でも異なっていてもよい水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R2、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立してメチル基、又はフェニル基であることが好ましく、R6はメチル基、ブチル基、又はフェニル基であることが好ましい。またnは2以上の整数であり、好ましくは10以上の整数、より好ましくは30以上の整数である。
式中、R7は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。また、R8、R9、R10、R11、及びR12は互いに同一でも異なっていてもよい水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、R8、R9、R10、及びR11は、それぞれ独立してメチル基又はフェニル基であることが好ましく、R12はメチル基、ブチル基、又はフェニル基であることが好ましい。pは0〜10の整数であり、好ましくは10以上の整数、より好ましくは30以上の整数である。qは2以上の整数である。
つぎに、(A)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂について、詳しく説明する。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)は、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)とを反応させることによって得ることができる。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、その構成成分として少なくとも水酸基含有単量体部分とポリフルオロパラフィン部分とを含むものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、繰り返し単位として、下記一般式(3)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(4)で表される繰り返し単位を含むものである。
式中、R21及びR22は、各繰り返し単位毎に独立して、かつ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、又は塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基)、炭素数6〜8のアリール基(例えば、フェニル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜8のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、xは2以上の整数である。
式中、R23は、繰り返し単位毎に独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基)、炭素数6〜8のアリール基(例えば、フェニル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜8のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、R24は、繰り返し単位毎に独立して、OR25a基、CH2OR25b基、及びCOOR25c基から選択した2価の基であり、R25a、R25b、及びR25cは、炭素数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、又はヘキサメチレン基)、炭素数6〜10のシクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレン基)、炭素数2〜10のアルキリデン基(例えば、イソプロピリデン基)、及び炭素数6〜10選択した2価の基であり、yは2以上の整数である。
さらに、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、その他の構成成分として、場合により、下記一般式(5)で表される繰り返し単位を含むことができる。
式中、R26は、各繰り返し単位毎に独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、又は塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜10のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、R27は、繰り返し単位毎に独立して、OR28a基又はOCOR28b基であり、R28a及びR28bは、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、炭素数6〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基)、あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜10のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、zは2以上の整数である。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、この一般式(5)で表される繰り返し単位を含むことで、有機溶剤に対する溶解性が向上する。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)の水酸基価は、5〜250であることが好ましく、10〜200であることがより好ましく、20〜150であることがさらに好ましい。ここで、水酸基価が、5未満であると、イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)の導入量が著しく少なくなるために、反応混合物が濁る傾向がある。一方、水酸基価が250を越えると、後述の片末端ラジカル重合性ポリシロキサン〔成分(B)〕との相溶性が悪化し、グラフト共重合が進行しなくなる場合がある。また、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、遊離カルボン酸基を有していても良い。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、公知の方法で調製、あるいは市販品を用いることもできる。市販品としては、ビニルエーテル系フッ素樹脂(ルミフロンLF−100、LF−200、LF−302、LF−400、LF−554、LF−600、LF−986N;旭硝子株式会社製)、アリルエーテル系フッ素樹脂(セフラルコートPX−40、A606X、A202B、CF−803;セントラル硝子株式会社製)、カルボン酸ビニル/アクリル酸エステル系フッ素樹脂(ザフロンFC−110、FC−220、FC−250、FC−275、FC−310、FC−575、XFC−973;東亞合成株式会社製)、又はビニルエーテル/カルボン酸ビニル系フッ素樹脂(フルオネート;DIC株式会社製)等を挙げることができる。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)は、単独で使用するか、又は2種類以上を混合して使用することができる。
イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)は、イソシアネート基とラジカル重合性を有する部分とを含む単量体であれば、特に限定されるものではないが、イソシアネート基を有し、それ以外の官能基(例えば、水酸基又はポリシロキサン鎖)を有していないラジカル重合体単量体を用いるのが好ましい。
好適なイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)としては、例えば下記一般式(6)で表されるラジカル重合性単量体、あるいは下記一般式(7)で表されるラジカル重合性単量体を用いるのが好ましい。
式中、R36は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基、例えば、炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基)、炭素原子数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基であり、R37は酸素原子又は炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基)、例えば、炭素原子数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、又はテトラメチレン基)、炭素原子数2〜10のアルキリデン基(例えば、イソプロピリデン基)、又は炭素原子数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、又はキシリレン基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレン基)である。
式中、R41は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基、例えば、炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基)、炭素原子数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基であり、R42は酸素原子又は炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基)、例えば、炭素原子数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、又はテトラメチレン基)、炭素原子数2〜10のアルキリデン基(例えば、イソプロピリデン基)、又は炭素原子数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、又はキシリレン基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレン基)である。
ラジカル重合性単量体(A−2)としては、具体的には、メタクリロイルイソシアネート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、又はm−もしくはp−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等があげられる。
水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)とからラジカル重合性フッ素樹脂(A)を調製する反応では、イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)を、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)の水酸基1当量あたり、好ましくは0.001モル以上0.1モル未満の量、より好ましくは0.01モル以上0.08モル未満の量で反応させる。
このイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)が0.001モル未満であると、グラフト共重合が困難となり、反応混合物が濁り、経時的に二層分離するために好ましくない。また、0.1モル以上であると、グラフト共重合の際にゲル化が起こりやすくなり好ましくない。また、水酸基を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)の反応は、無触媒下あるいは触媒存在下、室温〜80℃で行うことができる。
こうして得られたラジカル重合性フッ素樹脂(A)は、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して2〜70質量%、好ましくは4〜60質量%の範囲で用いられる。ラジカル重合性フッ素樹脂(A)が、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して2質量%未満であるとき、グラフト重合時の安定性が低下することがあり、70質量%を越えると、グラフト重合時にゲル化を起こすことがある。
つぎに、前述の片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)について説明する。片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)の市販品としては、例えば、サイラプレーンFM−0711(数平均分子量1,000、チッソ株式会社製)、サイラプレーンFM−0721(数平均分子量5,000、チッソ株式会社製)、サイラプレーンFM−0725(数平均分子量10,000、チッソ株式会社製)、X−22−174DX(数平均分子量4,600、信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
また、片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)は、前記一般式(1)で表される片末端ラジカル重合性ポリシロキサンを、単独で又は2種類以上混合、あるいは前記一般式(2)で表される片末端ラジカル重合性ポリシロキサンを単独で又は2種類以上混合して使用することができ、さらには前記一般式(1)で表される片末端ラジカル重合性ポリシロキサンの1種もしくはそれ以上と前記一般式(2)で表される片末端ラジカル重合性ポリシロキサンの1種もしくはそれ以上とを混合して使用することができる。
これら片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)は、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して4〜40質量%、好ましくは10〜30質量%の範囲で用いられる。片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)が、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して4質量%未満であると、滑り性が不十分となることがあり、40質量%を越えると、重合後の未反応単量体成分が多くなり、塗膜の軟化や未反応単量体成分のブリード等の好ましくない事態を招くことがある。
つぎに、ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)について説明する。
ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)は、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、又はビニルトルエン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタアクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、又はベンジル(メタ)アクリレート等の炭化水素基をもつ(メタ)アクリレート系単量体;これらの(メタ)アクリレート系単量体の水素原子をフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子等で置換した(メタ)アクリレート系単量体;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、又は分岐状モノカルボン酸のビニルエステル(ベオバ;シェル化学株式会社製)等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等のアクリロニトリル系単量体;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、又はシクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、又はジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;ビニルピリジン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、4−(N,N−ジメチルアミノ)スチレン、又はN−{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}ピペリジン等の塩基性窒素含有ビニル化合物系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、又は3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等のエポキシ基含有ビニル化合物系単量体;(メタ)アクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、マレイン酸、4−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、又はモノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の酸性ビニル化合物系単量体;p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、又はこれらのε−カプロラクトン付加物、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸もしくはシトラコン酸のようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とε−カプロラクトンとの付加物、又は前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、分岐状モノカルボン酸グリシジルエステル(カージュラE、シェル化学株式会社製)のようなエポキシ化合物との付加物等の水酸基含有ビニル化合物系単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物系単量体;エチレン、又はプロピレン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、又はクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン系単量体;その他マレイミド、ビニルスルホン等を挙げることができる。
ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)は単独、あるいは2種類以上混合して用いてもよく、主として共重合性の観点から(メタ)アクリレート系単量体が好ましく用いられる。
ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外は反応しないラジカル重合性単量体(C)は、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対し15〜94質量%、好ましくは30〜70質量%の範囲で用いられる。15質量%未満では共重合体のガラス転移点の調整が困難となり、94質量%を越えると滑り性が不十分となる。
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)とラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)との合計質量に対するラジカル重合性フッ素樹脂(A)の質量の比率〔すなわち、A/(B+C);以下、「フッ素樹脂/アクリル比」と称することがある〕は、2/1〜1/50の範囲であることが好ましい。フッ素樹脂/アクリル比:A/(B+C)が、2/1未満の場合には、光沢の低下。また、フッ素樹脂/アクリル比が1/50を越える場合には、ブレンドしたポリマーの安定性が低下することがある。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)と、ラジカル重合反応条件下において前記ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と二重結合による重合反応以外には反応しないラジカル重合性単量体(C)とを用いてフッ素−シロキサングラフトポリマーを調製するには、公知の重合方法を用いることができ、特に溶液ラジカル重合法又は非水分散ラジカル重合法を用いるのが最も簡便で好ましい。
また、フッ素−シロキサングラフトポリマーとしては、(A)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂、(B)前記一般式(1)及び/又は前記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、及び(D)下記一般式(8))で示される片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール、及び(E):成分(A)、(B)、(D)以外のラジカル重合性単量体を、ランダム共重合してなるグラフト共重合からも作製することができる。
式中、R13は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。R14は炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、好ましくはメチル基である。R15は炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐状のハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基であり、好ましくはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)、フェニル基、又はアルキル置換フェニル基である。lは、1以上の整数であり、好ましくは2〜100の整数である。また、mは、任意の整数であり、好ましくは0〜10、より好ましくは0である。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、前記一般式(1)または前記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)は、前述の通りであり、片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)について説明する。
片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)としては、公知のものを用いることもできる。具体的には、ブレンマーPME−100、PME−200、PME−400、PME−4000、50POEP−800B(日本油脂株式会社製)、ライトエステルMC、MTG、130MA、041MA(共栄社化学株式会社製)、ライトアクリレートBO−A、EC−A、MTG−A、130A(共栄社化学株式会社製)等を挙げることができる。
また、片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)は単独又は2種類以上を混合して用いることができる。片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)は、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して1〜25質量%、好ましくは1〜15質量%の範囲で用いられる。
ここで、片末端ラジカル重合性アルコキシポリアルキレングリコール(D)が、フッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して1質量%未満あるいは25質量%を越えると、耐汚染性が不十分となる場合がある。
つぎに、成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)について説明する。成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、又はビニルトルエン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、又はベンジル(メタ)アクリレート等の炭化水素基をもつ(メタ)アクリレート系単量体;これらの(メタ)アクリレート系単量体の水素原子をフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子等で置換した(メタ)アクリレート系単量体;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、又は分岐状モノカルボン酸のビニルエステル(ベオバ:シェル化学株式会社製)等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等のアクリロニトリル系単量体;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、又はシクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、又はジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;ビニルピリジン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、4−(N,N−ジメチルアミノ)スチレン、又はN−{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}ピペリジン等の塩基性窒素含有ビニル化合物系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、又は3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等のエポキシ基含有ビニル化合物系単量体;(メタ)アクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、マレイン酸、4−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、又はモノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の酸性ビニル化合物系単量体;p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、又はこれらのε−カプロラクトン付加物、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、もしくはシトラコン酸のようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とε−カプロラクトンとの付加物、前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、又はα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、分岐状カルボン酸グリシジルエステル(カージュラE;シェル化学株式会社製)のようなエポキシ化合物との付加物等の水酸基含有ビニル化合物系単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、又はクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン系単量体;その他マレイミド、ビニルスルホン等を挙げることができる。
これら単量体は、単独、あるいは2種類以上を混合して用いてもよく、主として共重合性の観点から(メタ)アクリレート系が好ましく用いられる。
成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)は、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対し28〜92質量%、好ましくは30〜70質量%の範囲で用いられる。
ここで、ラジカル重合性単量体(E)が、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対し28質量%未満では、共重合体のガラス転移点の調整が困難となり、92質量%を越えると、滑り性が不十分となる。
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)と、前記の片末端アルコキシポリアルキレングリコール(D)と、成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)との合計使用質量に対するラジカル重合性フッ素樹脂(A)の使用質量の比率(すなわち、A/(B+D+E);以下、「フッ素樹脂/アクリル比」と称することがある)は、2/1〜1/50の範囲であることが好ましい。フッ素樹脂/アクリル比が2/1未満の場合には、光沢が低下することがある。また、フッ素樹脂/アクリル比が1/50を越える場合には、安定性が低下することがある。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)と、前記の片末端アルコキシポルアリキレングリコール(D)と、成分(A)、(B)、及び(D)以外のラジカル重合性単量体(E)とを用いて共重合体を調製するには、公知の任意の重合方法を用いることができ、中でも、溶液ラジカル重合法、又は非水分散ラジカル重合法によるのが最も簡便で、特に好ましい。
また、フッ素−シロキサングラフトポリマーは、(A)ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有する有機溶剤可溶性フッ素樹脂、(B)上記一般式(1):及び/又は上記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン、及び(F)分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体、及び(G)成分(A)、(B)、(F)以外のラジカル重合性単量体を共重合してなるグラフト共重合体等から作製することができる。
ラジカル重合性フッ素樹脂(A)と、前記一般式(1)または前記一般式(2)で示される片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B)は、前述の通りであり、分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体(F)について説明する。
分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体(F)は、例えば、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン、1−メトキシ−(パーフルオロ−2−メチル−1−プロペン)、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロデシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルデシル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。市販品としては、アクリエステル3FE、4FE、5FE、8FE、17FE(三菱レイヨン社製)、ビスコート3F、3FM、4F、8F、8FM(大阪有機化学工業社製)、ライトエステルM−3F、M−4F、M−6F、FM−108、ライトアクリレートFA−108(共栄社化学社製)、M−1110、M−1210、M−1420、M−1620、M−1633、M−1820、M−1833、M−2020、M−3420、M−3433、M−3620、M−3633、M−3820、M−3833、M−4020、M−5210、M−5410、M−5610、M−5810、M−7210、M−7310、R−1110、R−1210、R−1420、R−1433、R−1620、R−1633、R−1820、R−1833、R−2020、R−3420、R−3433、R−3620、R−3633、R−3820、R−3833、R−4020、R−5210、R−5410、R−5610、R−5810、R−7210、R−7310(ダイキン工業社製)、HFIP−M、HFIP−A、TFOL−M、TFOL−A、PFIP−A、HpIP−AE、HFIP−I(セントラル硝子社製)等を挙げることができる。
分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体(F)は単独又は2種類以上を混合して用いることもできる。
また、分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体(F)は、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対して1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%の範囲で用いられる。1質量%未満とすると安定性が不十分となる場合があり、50質量%を越えると共重合体の価格が高くなり、実用的でない。
成分(A)、(B)、及び(F)以外のラジカル重合性単量体(G)について説明する。成分(A)、(B)、及び(F)以外のラジカル重合性単量体(G)は、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、又はビニルトルエン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、又はベンジル(メタ)アクリレート等の炭化水素基をもつ(メタ)アクリレート系単量体;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、又は分岐状モノカルボン酸のビニルエステル(ベオバ:シェル化学社製)等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等のアクリロニトリル系単量体;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、又はシクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、又はジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;ビニルピリジン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、4−(N,N−ジメチルアミノ)スチレン、又はN−{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}ピペリジン等の塩基性窒素含有ビニル化合物系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、又は3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等のエポキシ基含有ビニル化合物系単量体;(メタ)アクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、マレイン酸、4−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、又はモノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の酸性ビニル化合物系単量体;p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、又はこれらのε−カプロラクトン付加物、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、もしくはシトラコン酸のようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とε−カプロラクトンとの付加物、前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、又は前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、分岐状カルボン酸グリシジルエステル(カージュラE;シェル化学社製)のようなエポキシ化合物との付加物等の水酸基含有ビニル化合物系単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、又はクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン系単量体;その他マレイミド、ビニルスルホン等を挙げることができる。
成分(A)、(B)、及び(F)以外のラジカル重合性単量体(G)は、単独あるいは2種類以上を混合して用いてもよく、主として共重合性及び耐黄変性の観点から(メタ)アクリレート系が好ましく用いられる。
前記成分(G)は、使用するフッ素−シロキサングラフトポリマー全量に対し4〜93質量%、好ましくは20〜80質量%の範囲で用いられる。4質量%未満では共重合体のガラス転移点の調整が困難となり、93質量%を越えると耐汚染性が不十分となる。
成分(B)、成分(F)、成分(G)との合計使用質量に対する成分(A)の使用質量の比率(すなわち、A/(B+F+G);以下、「フッ素樹脂/アクリル比」と称する)は、2/1〜1/50の範囲であることが好ましい。フッ素樹脂/アクリル比が2/1未満の場合には、光沢が低下することがある。また、フッ素樹脂/アクリル比が1/50を越える場合には撥水性、撥油性が低下することがある。
成分(A)、(B)、(F)、(G)を用いてフッ素−シロキサングラフトポリマーを調製するには、公知の重合方法を用いることができ、中でも溶液ラジカル重合法又は非水分散ラジカル重合法によるのが最も簡便であり、特に推奨される。
上記した重合に用いられる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、又は芳香族炭化水素の混合物(ソルベッソ100、エッソ石油株式会社製)等の芳香族炭化水素系化合物;n−ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ミネラルスピリット、又はケロシン等の脂肪族、脂環族炭化水素系化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、又はブチルセロソルブアセテート等のエステル系化合物;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチルセロソルブ、又はブチルセロソルブ等のアルコール系化合物等が挙げることができ、それらの溶剤を単独で又は2種類以上を組合せて用いることができる。
合成は、種々のラジカル重合開始剤、例えば、アゾ系化合物又は過酸化物のラジカル重合開始剤を用いて、常法により実施することができる。重合時間は特に制限されないが、通常1〜48時間の範囲が選ばれる。重合温度は通常30〜120℃、好ましくは60〜100℃である。重合は、さらに必要に応じて公知の連鎖移動剤、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、又はα−メチルスチレンダイマー等を添加して実施することもできる。グラフトポリマーの分子量は特に限定されるものではないが、その質量平均分子量が、ポリスチレン換算のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、好ましくは約5000〜2000000(より好ましくは約10000〜1000000)の範囲である。ここで、グラフトポリマーの重量平均分子量が、5000未満であれば、造膜性が低下することがあり、2000000を越えると重合時にゲル化する危険がある。
また、フッ素−シロキサングラフトポリマーの市販品としては、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等を挙げることができる。
上記フッ素−シロキサングラフトポリマーは重合性液晶化合物に対し0.01〜1質量%含有することが好ましく、0.1〜0.8質量%がさらに好ましい。0.01質量%より少ないと塗布ムラ解消効果が現れず配向欠陥が増大してしまい、1質量%より多いとロール転写性が劣化する。
<液晶層>
本発明の実施形態に係る液晶層14は、前記フッ素−シロキサングラフトポリマーに加えて、重合性液晶化合物を含有する。重合性液晶化合物としては、特に限定されず、液晶層に含有される従来公知の重合性液晶化合物等が挙げられる。
具体的には、例えば、分子内に棒状のメソゲン基や円盤状のメソゲン基を有するもの等が挙げられる。
〈棒状液晶化合物〉
分子内に棒状のメソゲン基を有する重合性液晶化合物としては、液晶層の厚み方向に対して5〜50°傾斜しており、傾斜した状態で固定化されている。すなわち、液晶層14としては、例えば、分子内に棒状のメソゲン基を有する重合性液晶化合物を含有し、前記メソゲン基が、その長軸方向を液晶層の厚み方向に対して5〜50°傾斜させた後、前記配向が固定化されているものである。
また、分子内に棒状のメソゲン基を有する重合性液晶化合物としては、前記棒状のメソゲン基と重合性官能基とを含有する重合性液晶であってもよいし、少なくとも主鎖及び側鎖のいずれか一方に前記棒状のメソゲン基を含有する高分子液晶であってもよいし、前記棒状のメソゲン基と重合性官能基とを含有する高分子液晶であってもよい。前記重合性官能基を含有することによって、前記固定化の際、例えば、液晶転移温度未満まで冷却した後、冷却しながら、重合させることによって、前記配向をより固定化させることができ、さらに、光学異方性層として硬化させることもできる点等から好ましい。そして、前記メソゲン基の配向性や重合による光学異方性層の成形性等の観点から、重合性液晶が好ましい。
前記メソゲン基としては、特に限定されないが、傾斜配向しうる棒状のメソゲン基であることが好ましい。具体的には、例えば、エステル基、シアノ基、アルキル基、及びアリール基を含有する官能基等が挙げられる。また、前記メソゲン基としては、上記各メソゲン基を1種含有するものであってもよいし、2種以上を組み合わせて含有するものであってもよい。
前記重合性官能基としては、特に限定されず、前記配向後、前記配向を保持したまま重合させることができることが好ましい。具体的には、例えば、熱によって重合が開始するものであってもよいし、紫外線等の活性線の照射によって重合が開始するものであってもよい。すなわち、重合性液晶の場合、熱硬化性のものであってもよいし、活性線硬化性のものであってもよい。また、前記重合性液晶化合物を液晶転移温度未満で重合させる場合、あまり加熱しないほうが好ましいので、活性線硬化性のもののほうがより好ましい。
前記重合性官能基としては、具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基やビニルエーテル等のビニル基、エポキシ基、及びオキセタニル基等が挙げられる。また、前記重合性官能基を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記重合性液晶としては、前記重合性官能基を分子内に1つ含有するものであってもよいし、2つ以上含有するものであってもよい。
前記重合性官能基としては、具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基やビニルエーテル等のビニル基、及びエポキシ基等が挙げられる。また、前記重合性官能基を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記重合性液晶としては、前記重合性官能基を分子内に1つ含有するものであってもよいし、2つ以上含有するものであってもよい。
本発明では、特に前記重合性液晶化合物が、下記一般式(L)で表される化合物であることが好ましい。
式中、mは0又は1を表し、W1及びW2はそれぞれ独立的に単結合、−O−、−COO−又は−OCO−を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立的に−COO−又は−OCO−を表し、r及びsはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基、又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。
以下に一般式(L)で表される化合物の具体例を示すが、これに限定されるものではない。
(式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表す。)
前記重合性液晶化合物としては、市販されているものとして、具体的には、例えば、DIC株式会社製のUCL018や、BASF社製のパリオカラーLC242等が挙げられる。
〈ディスコティック液晶化合物〉
ディスコティック液晶性化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることが出来る。更に、ディスコティック液晶化合物としては、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその直鎖として放射線状に置換された構造のものも含まれ、液晶性を示す。但し、分子自身が負の一軸性を有し、一定の配向を付与出来るものであればこれらに限定されるものではない。また、本発明において、ディスコティック液晶化合物から形成する光学異方性層は、最終的に出来た物が前記化合物である必要はなく、例えば、低分子のディスコティック液晶化合物が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。ディスコティック液晶化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
ディスコティック液晶化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶化合物のディスコティック構造のコアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。但し、ディスコティック構造コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶化合物は、下記一般式(d)で表わされる化合物であることが好ましい。
一般式(d) D(−L−P)n
式中、Dはディスコティック構造のコアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、そして、nは4〜12の整数である。円盤状液晶性化合物についてもWO01/88574A1の58頁6行〜65頁8行に記載されている。
ディスコティック液晶性化合物とともに使用できる化合物の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーなどを挙げることが出来る。
ディスコティック液晶性化合物とともに使用できる可塑剤、界面活性剤及び重合性モノマーとしては、ディスコティック液晶性化合物と相溶性を有し、ディスコティック液晶性化合物の傾斜角の変化を与えられるか、或いは配向を阻害しない限り、どのような化合物も使用することが出来る。これらの中で、重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する化合物)が好ましい。上記化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が4以上のモノマーを混合して用いることで配向膜と光学異方性層間の密着性を高めることが出来る。
ディスコティック液晶性化合物とともに使用するポリマーとしては、ディスコティック液晶性化合物と相溶性を有し、ディスコティック液晶性化合物に傾斜角の変化を与えられる限り、どのようなポリマーでも使用することが出来る。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることが出来る。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることが出来る。ディスコティック液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあり、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることが更に好ましい。
液晶層は、一般にディスコティック液晶性化合物及び他の化合物を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱し、その後配向状態(ディスコティックネマチック相)を維持して冷却することにより得られる。或いは、上記液晶層は、ディスコティック液晶性化合物及び他の化合物(更に、例えば重合性モノマー、光重合開始剤)を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱したのち重合させ(UV光の照射等により)、更に冷却することにより得られる。このとき、ネマチック相形成のための温度を本発明においる液晶配向温度(Tlc)と見なすことが出来、Td(1.0)>Tm>Tg(film)>Tlcを満たすことが好ましい。これは、光学異方層に目的の光学異方性を形成するための液晶配向温度が上記関係を満たすことが、支持体のガラス転移温度(Tg(film))よりも低い温度で、液晶化合物を液晶配向温度で配向させることが出来、このとき、液晶層のリターデーション値のバラツキが削減出来る観点で好ましい。
本発明の実施形態に係る液晶層14を形成するために用いる液晶層形成用組成物には、前記重合性液晶化合物以外に、光重合開始剤を含有してもよい。電子線を照射することによって重合させる場合には、光重合開始剤が不要であるが、一般的に用いられている重合、例えば、紫外線(UV)照射による重合の場合には、重合を促進させるために光重合開始剤を含有させることが好ましい。そうすることによって、重合温度を低くすることができ、前記固定化を好適に行うことができる。
前記光重合開始剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ベンジル(ビベンゾイル)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、及び1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。また、これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記光重合開始剤の含有量としては、前記重合性液晶化合物に対し0.1〜30質量%含有することが好ましく、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。光重合開始剤の含有量が少なすぎると、光重合開始剤の効果が発揮できない傾向にあり、また、多すぎると、重合性液晶化合物の重合性が低下して、分子量が低くなり、よって、耐擦傷性等が低下する傾向がある。
また、前記液晶層形成用組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、増感剤を含有させてもよい。前記増感剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、日本化薬株式会社製のカヤキュアDETX等が挙げられる。
また、前記液晶層14を形成する方法としては、溶媒を含有した液状の液晶層形成用組成物を調製し、その液晶層形成用組成物を液晶配向層の上に塗工する方法が好ましい。それによって、液晶層に含まれる前記フッ素−シロキサングラフトポリマーによる塗布ムラの発生を抑える作用効果をより効果的に活かすことができる。
前記液晶層形成用組成物の溶媒としては、前記重合性液晶化合物を溶解することができれば、特に限定されない。また、透明性フィルム基材の性状等を変化させない溶媒であることが好ましい。具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、及びテトラリン等の炭化水素類;メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、及びジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及び2,4−ペンタンジオン等のケトン類;酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びγ−ブチロラクトン等のエステル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、及びジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、及びオルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、及びブチルセルソルブ等のアルコール類;フェノール、及びパラクロロフェノール等のフェノール類等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の溶媒を組み合わせて使用することによって、液晶化好物等の溶解性を高めたり、フィルム基材の変性等を抑制することができる。
また、前記溶媒の中で、例えば、単独で用いる溶媒として好ましいものとしては、炭化水素系溶媒、及びグリコールモノエーテルアセテート系溶媒等が挙げられる。また、2種以上を組み合わせて用いる溶媒の好ましい組み合わせとしては、エーテル類又はケトン類と、グリコール類との組み合わせ等が挙げられる。
また、前記液晶層形成用組成物の固形分濃度は、重合性液晶化合物等の溶解性や製造しようとする液晶層の膜厚等によって異なるので、一概には規定できないが、通常、1〜60質量%であることが好ましく、3〜40質量%であることがより好ましい。
また、前記液晶層形成用組成物には、上記各組成以外にも、本発明の目的を損なわない範囲内で、下記添加剤を含有させてもよい。
前記添加剤としては、まず、例えば、多価アルコールと1塩基酸又は多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族もしくは脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物、及びアクリル基又はメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物、特開2007−45993号公報に記載のオニウム塩、フッ化アクリレートポリマー等が挙げられる。前記添加剤の添加により、前記液晶層形成用組成物の硬化性が向上し、得られる液晶層の機械強度が増大し、またその安定性が改善される。
また、前記添加剤の含有量は、本発明の目的が損なわれない範囲で選択され、一般的には、前記液晶層形成用組成物の40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることが好ましい。
また、溶媒を含有する液晶層形成用組成物には、本発明に係る前記フッ素−シロキサングラフトポリマー以外の界面活性剤等を含有させてもよい。具体的には、例えば、イミダゾリン、第四級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体等の陽イオン系界面活性剤;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、第一級あるいは第二級アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族あるいは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン系界面活性剤;ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン等の両性系界面活性剤;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤の含有量は、本発明に係る前記フッ素−シロキサングラフトポリマーの効果を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
また、前記液晶層14の厚みは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.2〜5μmであることがより好ましい。
また、前記液晶層14は、上記式(1)で求められる面内方向リターデーションRoが、0〜10nmであることが好ましい。また、上記式(2)で求められる厚み方向リターデーションRtが、−500〜−100nmであることが好ましい。
<液晶配向層>
重合性液晶化合物の配向性を高める液晶配向層13は、図1に示すように、フィルム基材11の上、又は第2中間層16を備える場合には前記第2中間層16の上に、形成される。また液晶配向層13は、例えば、活性線硬化樹脂等の樹脂を含み、ラビング処理を施したものであってもよいし、活性線硬化樹脂等の樹脂と前記配向剤とを含むものであってもよい。
前記活性線硬化樹脂としては、紫外線等の活性線によって硬化するものであればよく、具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソプロペニル基、エポキシ基、及びオキセタニル基等の重合性官能基を有するもの等が挙げられる。特に、本発明に係る液晶配向層は、アクリル系重合体を含有することが好ましい。
また、前記活性線硬化樹脂としては、前記重合性官能基を2つ以上有し、活性線を照射することによって、架橋構造又は網目構造となるものも好ましい。また、活性線としては、作業性の観点等から、紫外線であることが好ましい。すなわち、前記活性線硬化樹脂としては、紫外線硬化樹脂であることが好ましい。
また、前記液晶配向層13は、前記活性線硬化樹脂だけではなく、セルロースエステル樹脂を含有していることが、前記液晶配向層13の上層と液晶配向層13の下層との接着性、具体的には、前記液晶層14との接着性およびフィルム基材11との接着性を高めることができ、特に、高温高湿下での接着性を高めることができる。その含有量としては、前記活性線硬化樹脂100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。前記セルロースエステル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、透明性フィルム基材を構成するセルロースエステル樹脂等が挙げられる。具体的には、例えば、透明性フィルム基材のセルロースエステル樹脂として、後述で例示するもの等が挙げられる。
また、前記液晶配向層13の厚みは、1.2〜3μmであることが好ましい。薄すぎると、前記液晶層14の重合性液晶化合物の配向を促進させるという効果や、上記のような接着性を高める効果を発揮しにくくなる傾向がある。さらに、フィルム基材11の成分が前記液晶層14に溶出することを防止する効果も低減する傾向がある。また、厚すぎると、得られる光学異方性フィルムが不必要に厚くなり、光学異方性フィルムの薄型化を阻害するという傾向がある。
<フィルム基材>
フィルム基材11としては、透明性があり、光学異方性フィルムの基材として用いることができるものであれば、特に限定されない。なお、ここで透明性があるとは、可視光の透過率が60%以上であることであり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。前記フィルム基材11としては、具体的には、例えば、透明性が高い樹脂フィルム等が挙げられる。
前記樹脂フィルム用の樹脂としては、具体的には、例えば、セルロースエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、セロファン、セルロースジアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、シンジオタクティックポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂及びアクリル樹脂等が挙げられる。この中でも、セルロースエステル樹脂を含有するセルロースエステルフィルムが好ましい。
<セルロースエステル樹脂>
セルロースエステル樹脂は、セルロースアセテート樹脂、セルロースプロピオネート樹脂、セルロースブチレート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂が好ましく、中でもセルロースアセテート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂が好ましく用いられる。
一つの好ましい実施態様としては、アセチル基の置換度をX、プロピオニル基の置換度をYとした時、XとYが下記の範囲にあるセルロースの混合脂肪酸エステルであるセルロースアセテートプロピオネート樹脂が好ましく用いられる。
式(I) 2.0≦X+Y≦2.6
式(II) 0.1≦Y≦1.2
更に2.4≦X+Y≦2.6、1.4≦X≦2.3のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)樹脂が好ましい。中でも2.4≦X+Y≦2.6、1.7≦X≦2.3、0.1≦Y≦0.9のセルロースアセテートプロピオネート樹脂(総アシル基置換度=X+Y)が好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらのセルロースエステル系樹脂は公知の方法で合成することが出来る。
また、本発明に別の好ましい実施態様であるセルロースアセテート樹脂としては、アセチル基置換度が2.1〜2.6であるジアセチルセルロースであることが好ましい。アセチル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求められる。
本発明に用いられるセルロースアセテートは、慣用の方法、例えば、硫酸触媒法、酢酸法、メチレンクロライド法などの方法で製造でき、原材料を木材パルプとすることが好ましい。
セルロースアセテートは、通常、パルプ(セルロース)を酢酸などにより活性化処理(活性化工程)した後、硫酸触媒を用いて無水酢酸によりトリアセテートを調製し(酢化工程)、ケン化(加水分解)・熟成により酢化度を調整する(ケン化・熟成工程)ことにより製造できる。
この方法において、活性化工程は、例えば、酢酸や含水酢酸の噴霧、酢酸や含水酢酸への浸漬などにより、パルプ(セルロース)を処理することにより行うことができ、酢酸の使用量は、パルプ(セルロース)100質量部に対して10〜100質量部、好ましくは20〜80質量部、さらに好ましくは30〜60質量部程度である。
酢化工程(アセチル化工程)における無水酢酸の使用量は、前記酢化度となる範囲で選択でき、例えば、パルプ(セルロース)100質量部に対して230〜300質量部、好ましくは240〜290質量部、さらに好ましくは250〜280質量部程度である。
酢化工程において、通常、溶媒として酢酸が使用される。酢酸の使用量は、例えば、パルプ(セルロース)100質量部に対して200〜700質量部、好ましくは300〜600質量部、さらに好ましくは350〜500質量部程度である。
アセチル化又は熟成触媒としては、通常、硫酸が使用される。硫酸の使用量は、通常、セルロース100質量部に対して、1〜15質量部、好ましくは5〜15質量部、特に5〜10質量部程度である。また、ケン化・熟成は、例えば、温度50〜70℃程度で行うことができる。
セルロースアセテートの光学的特性を改善するため、セルロースアセテートの製造工程のうち適当な段階、例えば、酢化やケン化・熟成終了後、生成したセルロースアセテートを酸化剤で処理してもよい。
酸化剤としては、例えば、過酸化水素;過ギ酸、過酢酸、過安息香酸などの過酸;過酸化ジアセチルなどの有機過酸化物などが例示できる。酸化剤は単独で又は二種以上使用できる。
好ましい酸化剤には、セルロースアセテートからの除去が容易であり、かつ残留性が小さな酸化剤、例えば、過酸化水素、過ギ酸、過酢酸が含まれ、過酸化水素や過酢酸が特に好ましい。酸化剤の使用量は、所望する光学的特性のレベルに応じて選択でき、例えば、セルロースアセテート100質量部に対して、0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜2.5質量部、特に0.1〜1質量部程度である。
酸化剤による処理は、酸化剤の種類に応じて、例えば、20〜100℃、好ましくは30〜70℃程度で行うことができる。
本発明に用いられるセルロースアセテートは酢酸セルロースL−30、L−40、L−50、L−70(ダイセル化学工業(株)製)、Ca398−6、Ca398−10,Ca398−30,Ca394−60S(イーストマンケミカルジャパン(株)製)等の市販品を使用することができる。
また、樹脂フィルムとしては、可塑剤、および微粒子等が含有されるものであってもよい。また、樹脂フィルムを製造する際、その原料である樹脂組成物の硬化を阻害しない範囲で、紫外線吸収剤が含有されているものであってもよい。このようなフィルム基材である樹脂フィルムの製造方法については、後述する。
前記フィルム基材11の厚みは、光学異方性フィルムの薄型化を達成するため薄いほうが好ましいが、製造中の破断等を防止するため、20μm以上であることが好ましい。ここでの厚みとは、平均膜厚のことであり、株式会社ミツトヨ製の接触式膜厚計により、フィルムの幅方向に20〜200箇所、膜厚を測定し、その測定値の平均値が膜厚として定義される。また、前記フィルム基材11の幅、物性、及び形状等は、特に限定なく、製造する光学異方性フィルムの目的に合わせて、適宜選択することができ、特に限定されないが、光学異方性フィルムの幅は、大型の液晶表示装置への使用、偏光板加工時のフィルムの使用効率、生産効率の点から、1000〜4000mmであることが好ましい。
〈光学異方性フィルムの製造方法〉
本発明の光学異方性フィルムは、前記フィルム基材11上に、液晶配向層形成用組成物を塗布する工程と、前記液晶配向層形成用組成物に活性線を照射して液晶配向層13を形成する工程と、前記液晶配向層上に、フッ素−シロキサングラフとポリマーと、重合性液晶化合物とを含有する液晶層形成用組成物を塗布する工程と、前記液晶層形成用組成物を加熱することによって前記重合性液晶化合物を配向させる配向工程と、配向された重合性液晶化合物を固定させることによって液晶層を形成する固定化工程とを備える製造方法によって、製造することができる。具体的には、以下のように製造される。ここでは、図1(a)に示すような、前記フィルム基材11、前記液晶配向層13、及び前記液晶層14のみからなり、前記第1中間層15及び第2中間層16を備えていない光学異方性フィルムについて説明する。
まず、前記フィルム基材11上に、液晶配向層13を形成する。
具体的には、前記フィルム基材11上に、前記活性線硬化樹脂等を含有する液晶配向層形成用組成物を塗布する。前記液晶配向層形成用組成物は、前記活性線硬化樹脂以外に、例えば、前記セルロースエステル樹脂、有機溶剤、光重合開始剤等を含有していてもよい。
前記有機溶剤としては、前記活性線硬化樹脂を溶解させることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチレンクロライド、ジオキソラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチルや酢酸メチル等のエステル類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、及びジアセトンアルコール等のケトンアルコール類等が挙げられる。この中でも、イソプロピルアルコール等のアルコール類やプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類が好ましく、イソプロピルアルコールとプロピレングリコールモノメチルエーテルとの混合溶媒がより好ましい。また、これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記液晶配向層形成用組成物の固形分濃度としては、組成等によって異なるが、例えば、0.1〜80質量%程度であることが好ましい。
光重合開始剤としては、前記活性線硬化樹脂の硬化反応の開始に寄与できればよく、具体的には、例えば、α−ヒドロキシケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体等が挙げられる。この中でも、α−ヒドロキシケトン及びこの誘導体が好ましい。また、これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、光重合開始剤の含有量は、例えば、前記活性線硬化樹脂100質量部に対して0.1〜1質量部程度であることが好ましい。
前記塗布方法としては、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。具体的には、例えば、グラビアコータ、スピナーコータ、ワイヤーバーコータ、ロールコータ、リバースコータ、押出コータ、エアードクターコータ、ダイコータ、ディップコータ及びインクジェット法等の塗布装置を用いたものが挙げられる。そして、塗布厚みとしては、前記液晶配向層形成用組成物の固形分濃度等によっても異なるが、具体的には、例えば、形成される液晶配向層の厚みが上記範囲内となるような厚みであることが好ましい。
そして、前記フィルム基材11上に塗布された液晶配向層形成用組成物に、活性線を照射して、液晶配向層13を形成させる。
次に、前記液晶配向層13上に前記液晶層14を形成する。
具体的には、前記液晶配向層13上に、前記フッ素−シロキサングラフトポリマーと重合性液晶化合物とを含有する液晶層形成用組成物を塗布する。前記液晶層形成用組成物は、前記フッ素−シロキサングラフとポリマーおよび重合性液晶化合物以外に、例えば、有機溶剤、光重合開始剤等を含有していてもよい。前記有機溶剤としては、前記フッ素−シロキサングラフトポリマーおよび重合性液晶化合物を溶解させることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチレンクロライド、ジオキソラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、酢酸エチルや酢酸メチル等のエステル類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、及びジアセトンアルコール等のケトンアルコール類等が挙げられる。この中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の比較的高沸点のものが好ましい。また、これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記液晶層形成用組成物の固形分濃度としては、組成等によって異なるが、例えば、0.1〜80質量%程度であることが好ましい。
前記光重合開始剤は、重合性液晶化合物として重合性官能基を有しているものを用いる場合には、液晶層形成用組成物中に含有させてもよい。その場合、前記光重合開始剤としては、前記重合性液晶化合物の硬化反応の開始に寄与できればよく、前記液晶配向層形成用組成物の光重合開始剤と同様のものが挙げられ、具体的には、例えば、α−ヒドロキシケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体等が挙げられる。この中でも、α−ヒドロキシケトン及びこの誘導体が好ましい。また、これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、光重合開始剤の含有量は、例えば、前記重合性液晶化合物100質量部に対して0.1〜1質量部程度であることが好ましい。
前記塗布方法としては、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができ、前記液晶配向層形成用組成物の塗布方法と同様のものを用いることができる。具体的には、例えば、グラビアコータ、スピナーコータ、ワイヤーバーコータ、ロールコータ、リバースコータ、押出コータ、エアードクターコータ、ダイコータ、ディップコータ及びインクジェット法等の塗布装置を用いたものが挙げられる。そして、塗布厚みとしては、前記液晶層形成用組成物の固形分濃度等によっても異なるが、具体的には、例えば、形成される液晶層の厚みが上記範囲内となるような厚みであることが好ましい。
そして、ラビング処理された前記液晶配向層13上に塗布された前記液晶層形成用組成物を、前記重合性液晶化合物の液晶転移温度以上に加熱することによって、前記重合性液晶化合物を配向させる。その配向時間としては、例えば、1〜10分間程度かかる。その後、前記液晶層形成用組成物を、前記重合性液晶化合物の液晶転移温度未満に冷却し、その配向を固定し、そして、前記液晶層形成用組成物に、活性線を照射する。そうすることによって、その配向性がより固定され、そして、重合性液晶化合物が傾斜配向した液晶層14が形成される。
上記液晶配向層13や上記液晶層14等の機能層12の形成は、例えば、図2に示すような光学異方性フィルムの製造装置によって行うこともできる。なお、光学異方性フィルムの製造装置としては、図2に示すものに限定されず、他の構成のものであってもよい。
図2は、光学異方性フィルムの製造装置20の基本的な構成を示す概略図である。光学異方性フィルムの製造装置20は、巻出装置21、塗布装置22、第1温度調節装置23、第2温度調節装置24、硬化装置25、及び巻取装置26等を備える。
前記巻出装置21は、透明性フィルム基材等の被処理フィルムを前記塗布装置22等に供給する。前記巻出装置21は、例えば、被処理フィルムを繰出可能に巻回された巻出ローラを備え、前記巻出ローラを回転させることによって、被処理フィルムを前記塗布装置22等に供給する装置である。
前記塗布装置22は、前記巻出装置21から供給された被処理フィルムの表面上に液晶配向層形成用組成物又は液晶層形成用組成物を塗布する。前記塗布装置21は、一般的な塗布装置を限定なく使用できる。具体的には、例えば、上述した塗布装置等が挙げられる。また、被処理フィルム上に複数の層を塗布形成する場合には、マルチマニホールドを有するエクストルージョンダイのように一台の塗布装置で多層同時塗布してもよく、また、1層を塗布する塗布装置を複数並べて逐次塗布するようにしてもよい。
前記第1温度調節装置23は、液晶配向層を形成させる場合は、被処理フィルム上に塗布された液晶配向層形成用組成物を加熱して乾燥させる。液晶層を形成させる場合は、被処理フィルム上に塗布された液晶層形成用組成物を加熱して、液晶層形成用組成物中の重合性液晶化合物を配向させる。前記第1温度調節装置23は、例えば、熱風による対流乾燥方式、赤外線等の輻射熱による輻射乾燥方式等を採用してもよい。
前記第2温度調節装置24は、液晶配向層を形成させる場合は、例えば、被処理フィルム上に塗布された液晶配向層形成用組成物を冷却して、硬化前の液晶配向層形成用組成物の流動性等を低下させる。液晶層を形成させる場合は、被処理フィルム上に塗布された液晶層形成用組成物を冷却して、硬化前の液晶層形成用組成物の流動性等を低下させるだけではなく、液晶層形成用組成物中の重合性液晶化合物を固定させる。前記第2温度調節装置24は、例えば、冷風による対流乾燥方式等を採用してもよい。
前記硬化装置25は、被処理フィルム上に塗布され、上記処理が施された組成物に活性線を照射させて、硬化させる。具体的には、例えば、紫外線照射装置等の活性線照射装置が挙げられる。
前記巻取装置26は、上述のようにして得られた光学異方性フィルムを巻き取る。前記巻取装置26は、例えば、回転可能な巻取ローラを備え、前記巻取ローラを回転させることによって、光学異方性フィルムを巻き取る装置である。
〈フィルム基材の製造方法〉
前記フィルム基材としては、上述したように、光学異方性フィルムの基材として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、後述する溶液流延製膜法や溶融流延製膜法等によって得られた樹脂フィルム等を用いることができ、溶融流延製膜法によって得られた樹脂フィルムが好ましく用いられる。このような樹脂フィルムであれば、膜厚が均一であって、光学異方性フィルムの基材として好適に使用できる。なお、ここでは、フィルム基材として好適な樹脂フィルムであるセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
(溶液流延製膜法)
まず、溶液流延製膜法によって樹脂フィルムを製造する場合について説明する。
溶液流延製膜法は、透明性樹脂を溶解した樹脂溶液(ドープ)を、走行する支持体上に流延して流延膜(ウェブ)を形成する流延工程と、前記流延膜をフィルムとして前記支持体から剥離する剥離工程と、剥離したフィルムを延伸する延伸工程と、延伸したフィルムを複数の搬送ローラで搬送させることによって、前記フィルムを乾燥させる乾燥工程とを備える製膜法である。例えば、図3に示すような溶液流延製膜法による樹脂フィルムの製造装置によって行われる。なお、樹脂フィルムの製造装置としては、図3に示すものに限定されず、他の構成のものであってもよい。
図3は、溶液流延法による樹脂フィルムの製造装置31の基本的な構成を示す概略図である。樹脂フィルムの製造装置31は、無端ベルト支持体32、流延ダイ33、剥離ローラ34、延伸装置35、乾燥装置36及び巻取装置37等を備える。前記流延ダイ13は、透明性樹脂を溶解した樹脂溶液(ドープ)38を無端ベルト支持体32の表面上に流延する。前記無端ベルト支持体32は、前記流延ダイ33から流延されたドープ38からなるウェブを形成し、搬送させながら乾燥させることによってフィルムとする。前記剥離ローラ34は、フィルムを無端ベルト支持体32から剥離する。前記延伸装置35は、剥離されたフィルムを延伸する。前記乾燥装置36は、延伸されたフィルムを搬送ローラで搬送させながら、乾燥させる。前記巻取装置37は、乾燥したフィルムを巻き取って、フィルムロールとする。
前記流延ダイ33は、上端部に接続されたドープ供給管からドープが供給される。そして、その供給されたドープが前記流延ダイ33から前記無端ベルト支持体32に吐出され、前記無端ベルト支持体32上にウェブが形成される。
前記無端ベルト支持体32は、図1に示すように、表面が鏡面の、無限に走行する金属製の無端ベルトである。前記ベルトとしては、フィルムの剥離性の点から、例えば、ステンレス鋼等からなるベルトが好ましく用いられる。前記流延ダイ33によって流延する流延膜の幅は、無端ベルト支持体32の幅を有効活用する観点から、無端ベルト支持体32の幅に対して、80〜99%とすることが好ましい。そして、最終的に1000〜4000mmの幅の樹脂フィルムを得るためには、無端ベルト支持体32の幅は、1800〜5000mmであることが好ましい。また、無端ベルト支持体の代わりに、表面が鏡面の、回転する金属製のドラム(無端ドラム支持体)を用いてもよい。
そして、前記無端ベルト支持体32は、その表面上に形成された流延膜(ウェブ)を搬送しながら、ドープ中の溶媒を乾燥させる。前記乾燥は、例えば、無端ベルト支持体32を加熱したり、加熱風をウェブに吹き付けることによって行う。その際、ウェブの温度が、ドープの溶液によっても異なるが、溶媒の蒸発時間に伴う搬送速度や生産性等を考慮して、−5〜70℃の範囲が好ましく、0〜60℃の範囲がより好ましい。ウェブの温度は、高いほど溶媒の乾燥速度を早くできるので好ましいが、高すぎると、発泡したり、平面性が劣化する傾向がある。
無端ベルト支持体32を加熱する場合、例えば、無端ベルト支持体32上のウェブを赤外線ヒータで加熱する方法、無端ベルト支持体32の裏面を赤外線ヒータで加熱する方法、無端ベルト支持体32の裏面に加熱風を吹き付けて加熱する方法等が挙げられ、必要に応じて適宜選択することが可能である。
また、加熱風を吹き付ける場合、その加熱風の風圧は、溶媒蒸発の均一性等を考慮し、50〜5000Paであることが好ましい。加熱風の温度は、一定の温度で乾燥してもよいし、無端ベルト支持体32の走行方向で数段階の温度に分けて供給してもよい。
無端ベルト支持体32の上にドープを流延した後、無端ベルト支持体32からウェブを剥離するまでの間での時間は、作製する樹脂フィルムの膜厚、使用する溶媒によっても異なるが、無端ベルト支持体32からの剥離性を考慮し、0.5〜5分間の範囲であることが好ましい。
前記無端ベルト支持体32による流延膜の搬送速度は、例えば、50〜200m/分程度であることが好ましい。また、前記無端ベルト支持体32の走行速度に対する、流延膜の搬送速度の比(ドラフト比)は、0.8〜1.2程度であることが好ましい。前記ドラフト比がこの範囲内であると、安定して流延膜を形成させることができる。例えば、ドラフト比が大きすぎると、流延膜が幅方向に縮小されるネックインという現象を発生させる傾向があり、そうなると、広幅のフィルムを形成できなくなる。
前記剥離ローラ34は、無端ベルト支持体32のドープ38が流延される側の表面に接しており、無端ベルト支持体32側に加圧することによって、乾燥されたウェブ(フィルム)が剥離される。無端ベルト支持体32からフィルムを剥離する際に、剥離張力及びその後の搬送張力によってフィルムは、フィルムの搬送方向(Machine Direction:MD方向)に延伸する。このため、無端ベルト支持体32からフィルムを剥離する際の剥離張力及び搬送張力は、50〜400N/mにすることが好ましい。
また、フィルムを無端ベルト支持体32から剥離する時のフィルムの全残留溶媒量は、無端ベルト支持体32からの剥離性、剥離時の残留溶媒量、剥離後の搬送性、搬送・乾燥後にできあがる樹脂フィルムの物理特性等を考慮し、30〜200質量%であることが好ましい。
前記延伸装置35は、無端ベルト支持体32から剥離されたフィルムを、ウェブの搬送方向と直交する方向(Transverse Direction:TD方向)に延伸させる。具体的には、フィルムの搬送方向に垂直な方向の両端部をクリップ等で把持して、対向するクリップ間の距離を大きくすることによって、TD方向に延伸する。そして、前記延伸装置35は、クリップを把持していた領域を切断する装置を備えていてもよい。また、延伸装置35は備えていなくてもよい。
前記乾燥装置36は、複数の搬送ローラを備え、そのローラ間をフィルムを搬送させる間にフィルムを乾燥させる。その際、加熱空気、赤外線等を単独で用いて乾燥してもよいし、加熱空気と赤外線とを併用して乾燥してもよい。簡便さの点から加熱空気を用いることが好ましい。乾燥温度としては、フィルムの残留溶媒量により、好適温度が異なるが、乾燥時間、収縮むら、伸縮量の安定性等を考慮し、30〜180℃の範囲で残留溶媒量により適宜選択して決めればよい。また、一定の温度で乾燥してもよいし、2〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥してもよい。また、乾燥装置36内を搬送される間に、フィルムを、MD方向に延伸させることもできる。前記乾燥装置36での乾燥処理後のフィルムの残留溶媒量は、乾燥工程の負荷、保存時の寸法安定性伸縮率等を考慮し、0.01〜15質量%が好ましい。
前記巻取装置37は、前記乾燥装置36で、所定の残留溶媒量となったフィルムを必要量の長さに巻き芯に巻き取る。なお、巻き取る際の温度は、巻き取り後の収縮によるスリキズ、巻き緩み等を防止するために室温まで冷却することが好ましい。使用する巻き取り機は、特に限定なく使用でき、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻き取り方法で巻き取ることができる。
上記のような工程によって、本発明の実施形態に係るフィルム基材として用いることができる樹脂フィルムが得られる。
上記溶液流延製膜法で使用する樹脂溶液の組成について説明する。
前記樹脂溶液に含有される樹脂は、溶液流延製膜法等によって基板状に成形したときに透明性を有する樹脂であればよく、特に制限されないが、溶液流延製膜法等による製造が容易であること、液晶配向層等との接着性に優れていること、光学的に等方性であること等が好ましい。前記透明性樹脂としては、具体的には、例えば、セルローストリアセテート樹脂等のセルロースエステル系樹脂等を挙げることができる。また、溶液流延製膜法で使用されるドープには、微粒子を含有させてもよい。その際、使用される微粒子は、使用目的に応じて適宜選択されるが、透明性樹脂中に含有することによって、可視光を散乱させることができる微粒子であることが好ましい。前記微粒子としては、酸化珪素等の無機微粒子であってもよいし、アクリル系樹脂等の有機微粒子であってもよい。溶液流延製膜法で使用される溶媒は、前記透明性樹脂に対する良溶媒を含有する溶媒を用いることができ、透明性樹脂が析出してこない範囲で、貧溶媒を含有させてもよい。セルロースエステル系樹脂に対する良溶媒としては、例えば、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。また、セルロースエステル系樹脂に対する貧溶媒としては、例えば、メタノール等の炭素数1〜8のアルコール等が挙げられる。溶液流延製膜法で使用される樹脂溶液は、本発明の効果を阻害しない範囲で、透明性樹脂、微粒子及び溶媒以外の他の成分(添加剤)を含有してもよい。前記添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤、導電性物質、難燃剤、滑剤、及びマット剤等が挙げられる。
また、上記各組成を混合させることによってセルロースエステル系樹脂の溶液が得られる。また、得られたセルロースエステル系樹脂の溶液は、濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過することが好ましい。
(溶融流延製膜法)
次に、溶融流延製膜法によって樹脂フィルムを製造する場合について説明する。
溶融流延製膜法は、透明性樹脂を溶融させた樹脂溶融液を、走行する支持体上に流延して流延膜を形成する流延工程と、前記流延膜を冷却させてフィルムを形成する冷却工程と、前記フィルムを前記支持体から剥離する剥離工程と剥離したフィルムを複数の搬送ローラで搬送させることによって、前記フィルムを延伸させる延伸工程とを備える製膜法である。例えば、図4に示すような溶融流延製膜法による樹脂フィルムの製造装置によって行われる。なお、樹脂フィルムの製造装置としては、図4に示すものに限定されず、他の構成のものであってもよい。
図4は、溶融流延製膜法による樹脂フィルムの製造装置41の基本的な構成を示す概略図である。樹脂フィルムの製造装置41は、第1冷却ローラ42、流延ダイ43、タッチローラ44、第2冷却ローラ45、第3冷却ローラ46、剥離ローラ47、搬送ローラ48、延伸装置49、及び巻取装置50等を備える。前記流延ダイ43は、透明性樹脂を溶融させた樹脂溶融液(ドープ)を第1冷却ローラ42の表面上に流延する。前記第1冷却ローラ42は、前記流延ダイ43から流延されたドープからなる流延膜を形成し、搬送させながら冷却させ、前記流延膜を第2冷却ローラ45に搬送する。その際、第1冷却ローラ42に外接されて設けられるタッチローラ44によって、流延膜の厚さの調整、や表面の平滑化がなされる。そして、第2冷却ローラ45は、前記流延膜を搬送させながら冷却させ、前記流延膜を第3冷却ローラ46に搬送する。そうすうことによって、前記流延膜をフィルムとする。前記剥離ローラ47は、フィルムを第3冷却ローラ46から剥離する。前記搬送ローラ48は、剥離されたフィルムを搬送しながら、MD方向に延伸する。前記延伸装置49は、フィルムをTD方向に延伸する。前記巻取装置50は、冷却固化されたフィルムを巻き取って、フィルムロールとする。
前記流延ダイ43は、ドープとして、樹脂溶液の代わりに、樹脂溶融液を吐出する以外、前記流延ダイ33と同様の構成である。
前記第1冷却ローラ42、第2冷却ローラ45及び第3冷却ローラ46は、表面が鏡面の金属製のローラである。前記各ローラとしては、流延膜やフィルムの剥離性の点から、例えば、ステンレス鋼等からなるローラが好ましく用いられる。前記流延ダイ43によって流延する流延膜の幅や前記第1冷却ローラ42、第2冷却ローラ45及び第3冷却ローラ46による流延膜の搬送速度等は、上記溶液流延製膜法と同様である。
前記タッチローラ44は、表面が弾性を有し、前記第1冷却ローラ42への押圧力によって、前記第1冷却ローラ42の表面に沿って変形し、前記第1冷却ローラ42との間に、ニップを形成する。前記タッチローラ44としては、溶融流延製膜法で従来から用いられているタッチローラであれば、特に限定なく使用できる。具体的には、例えば、ステンレス鋼製のものが挙げられる。
前記剥離ローラ47は、第3冷却ローラ46に接しており、加圧することによって、フィルムが剥離される。
前記搬送ローラ48は、複数の搬送ローラからなっており、搬送ローラ毎に異なる回転速度にすることによって、フィルムのMD方向に延伸することができる。
また、前記延伸装置49及び前記巻取装置50は、上記溶液流延製膜法における延伸装置35及び巻取装置37と同様のものを用いることができる。
以下、溶融流延製膜法で使用する樹脂溶融液の組成について説明する。
溶融流延製膜法で使用される樹脂は、加熱して溶融することができれば、上記溶融流延製膜法における樹脂と同様のものを用いることができる。また、その他の組成も、上記溶融流延製膜法における場合と同様のものを用いることができる。
前記フィルム基材は、前記溶液流延製膜法や前記溶融流延製膜法によって形成された樹脂フィルムに限定されず、他の方法によって形成された樹脂フィルムであってもよいし、他の層を積層した樹脂フィルムであってもよい。
なお、前記フィルム基材は、前記透明性樹脂と可塑剤とを含有する樹脂溶融液を、走行する支持体上に流延し、前記流延膜を冷却することによって形成されたフィルムを、前記支持体から剥離することによって得られる樹脂フィルム、すなわち溶融流延法で形成された樹脂フィルムであることが好ましい。
<偏光板>
本発明の他の一実施形態に係る偏光板は、偏光素子と、前記偏光素子の表面上に配置された保護フィルムとを備え、前記保護フィルムとして、本発明の実施形態に係る前記光学異方性フィルムが用いられる。なお、前記偏光素子とは、入射光を偏光に変えて射出する光学素子であり一般に偏光子、または偏光膜といわれるものである。
前記偏光板としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液中に浸漬して延伸することによって作製される偏光素子の少なくとも一方の表面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて、前記光学異方性フィルムを貼り合わせたものが好ましい。また、前記偏光素子のもう一方の表面にも、前記光学異方性フィルムを積層させてもよいし、別の偏光板用の透明保護フィルムを積層させてもよい。この偏光板用の透明保護フィルムとしては、例えば、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC4FR−1、KC4HR−1、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4UESW(以上、コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。あるいは、セルロースエステルフィルム以外の環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート等の樹脂フィルムを用いてもよい。この場合は、ケン化適性が低いため、適当な接着層を介して偏光板に接着加工することが好ましい。
前記偏光板は、上述のように、偏光素子の少なくとも一方の表面側に積層する保護フィルムとして、前記光学異方性フィルムを使用したものである。その際、前記光学異方性フィルムが位相差フィルム等の光学補償フィルムとして働く場合、光学異方性フィルムの遅相軸が偏光素子の吸収軸に実質的に平行または直交するように配置されていることが好ましい。
また、前記偏光素子の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール系偏光フィルムが挙げられる。ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものとがある。前記ポリビニルアルコール系フィルムとしては、エチレンで変性された変性ポリビニルアルコール系フィルムが好ましく用いられる。
前記偏光素子は、例えば、以下のようにして得られる。まず、ポリビニルアルコール水溶液を用いて製膜する。得られたポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸させた後染色するか、染色した後一軸延伸する。そして、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を施す。
前記偏光素子の膜厚は、5〜40μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。
該偏光素子の表面上に、セルロースエステルを含むセルロースエステル系光学異方性フィルムを張り合わせる場合、完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせることが好ましい。また、セルロースエステル系光学異方性フィルム以外の光学異方性フィルムの場合は、適当な粘着層を介して偏光板に接着加工することが好ましい。
上述のような偏光板は、透明保護フィルムとして、上記実施形態に係る光学異方性フィルムを用いることによって、前記光学異方性フィルムが光学補償性能等に優れているので、光学補償性能等に優れた偏光板が得られる。さらに、前記光学異方性フィルムの前記光学異方性層の接着性が高いので、その優れた光学補償性能が、例えば、高温高湿下等の劣悪な環境下であっても維持される偏光板が得られる。
<液晶表示装置>
本発明の他の一実施形態に係る液晶表示装置は、液晶セルと、前記液晶セルを挟むように配置された2枚の偏光板とを備え、前記2枚の偏光板のうち少なくとも一方が、本発明に係る偏光板である。なお、液晶セルとは、一対の電極間に液晶物質が充填されたものであり、この電極に電圧を印加することで、液晶の配向状態が変化され、透過光量が制御される。このような液晶表示装置は、光学補償性能等に優れた偏光板が用いられているので、液晶表示装置の視野角特性等の光学特性を改善することができる。したがって、液晶表示装置の高精細化を実現できる。
また、前記液晶表示装置としては、具体的には、例えば、反射型、透過型、及び半透過型のものが挙げられ、また、TN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のものが挙げられる。この中でも、本実施形態に係る光学異方性フィルムを備えた偏光板は、TN型の液晶表示装置で好適に用いられる。
本発明に係るTN型液晶表示装置により、光漏れによる黒表示時の着色を低減し、正面コントラストなど視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
本発明に係るTN型液晶表示装置は、液晶セルを挟む2枚の基板のラビング軸と、第1の偏光板、及び第2の偏光板の吸収軸を各々直交して配置させ、且つ液晶表示装置とした時の液晶セルの水平方向を0°とおいたときに、該液晶セルの水平方向に対して反時計回りの角度として、第1偏光板の吸収軸を45+0.1〜3度の範囲の角度で配置し、第2偏光板の吸収軸を135−0.1〜3度の範囲の角度で配置させることが好ましい。このような配置のTN型液晶表示装置を本発明ではEモードと呼称する。
TN型液晶表示装置には、液晶セルのラビング軸と、第1の偏光板、及び第2の偏光板の吸収軸を各々平行に配置させる場合もあり、これを本発明ではOモードと呼称する。
本発明ではEモードのTN型液晶表示装置の方が視野角、階調反転、カラーシフト、にじみにおいて優れる結果が得られるため好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
<フッ素−シロキサングラフトポリマー1の調製>
以下、フッ素−シロキサングラフトポリマー1の調製に用いた素材の市販品名を示す。
フッ素樹脂(A):セフラルコートCF−803(水酸基価60、数平均分子量15000;セントラル硝子株式会社製)
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(A):サイラプレーンFM−0721(数平均分子量5000;チッソ株式会社製)
ラジカル重合開始剤:パーブチルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート;日本油脂株式会社製)
硬化剤:スミジュールN3200(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型プレポリマー;住化バイエルウレタン株式会社製)
〔ラジカル重合性フッ素樹脂(A)の合成〕
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、セフラルコートCF−803(1554質量部)、キシレン(233質量部)、及び2−イソシアナトエチルメタクリレート(6.3質量部)を入れ、乾燥窒素雰囲気下で80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、ウレタン結合を介して50質量%のラジカル重合性フッ素樹脂(A)を得た。
(フッ素−シロキサングラフトポリマー1の調製)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記合成したラジカル重合性フッ素樹脂(A)(26.1質量部)、キシレン(19.5質量部)、酢酸n−ブチル(16.3質量部)、メチルメタクリレート(2.4質量部)、n−ブチルメタクリレート(1.8質量部)、ラウリルメタクリレート(1.8質量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.8質量部)、FM−0721(5.2質量部)、及びパーブチルO(0.1質量部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチルO(0.1部)を追加し、さらに90℃で5時間保持することによって、重量平均分子量が171000である35質量%フッ素−シロキサングラフトポリマー1の溶液を得た。
重量平均分子量はGPCにより求めた。またフッ素−シロキサングラフトポリマー1の質量%はHPLC(液体クロマトグラフィー)により求めた。
<フッ素−シロキサングラフトポリマー2の調製>
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(A)を下記化合物に変更した以外は、上記ポリマー1の合成法により、重量平均分子量が204000である35質量%フッ素−シロキサングラフトポリマー2の溶液を得た。
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B):X−22−174DX(数平均分子量4600;信越化学工業株式会社製)
<フッ素−シロキサングラフトポリマー3の調製>
以下、フッ素−シロキサングラフトポリマー3の調製で新たに用いた素材の市販品名を示す。
分子内に1個のラジカル重合性二重結合と少なくとも1個のフルオロアルキル基を有するラジカル重合性単量体(F):ライトエステルFM−108(ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート;共栄社化学社製)
硬化型アクリル樹脂:デスモフェンA160(水酸基価90;住化バイエルウレタン社製)
硬化剤:コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型プレポリマー;日本ポリウレタン社製)
(フッ素−シロキサングラフトポリマー3の調製)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記合成したラジカル重合性フッ素樹脂(A)(36.2質量部)、メチルメタクリレート(11.6質量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(4.9質量部)、FM−0721(10.5質量部)、FM−108(7.7質量部)、メタクリル酸(0.4質量部)、キシレン(1.5質量部)、酢酸n−ブチル(60.2質量部)、パーブチルO(0.3質量部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチルO(0.1部)を追加し、さらに90℃で5時間保持することによって、重量平均分子量が168000である40質量%のフッ素−シロキサングラフトポリマー3の溶液を得た。重量平均分子量はGPC、フッ素−シロキサングラフトポリマー3の質量%はHPLCにより求めた。
<フッ素−シロキサングラフトポリマー4の調製>
以下、フッ素−シロキサングラフトポリマー4の調製で新たに用いた素材の市販品名を示す。
片末端アルコキシポリアルキレングリコール(D):ブレンマーPME−400(分子量470;日本油脂株式会社製)
(フッ素−シロキサングラフトポリマー4の調製)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記合成したラジカル重合性フッ素樹脂(A)(26.7質量部)、キシレン(14.2質量部)、酢酸n−ブチル(13.7質量部)、メチルメタクリレート(5.4質量部)、n−ブチルメタクリレート(2.7質量部)、ラウリルメタクリレート(0.9質量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.8質量部)、FM−0721(1.3質量部)、ブレンマーPME−400(1.3質量部)、パーブチルO(0.1質量部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチルO(0.1質量部)を追加し、さらに90℃で5時間保持することによって、重量平均分子量が146000である40質量%のフッ素−シロキサングラフトポリマー4の溶液を得た。重量平均分子量はGPC、フッ素−シロキサングラフトポリマー4の質量%はHPLCにより求めた。
<フッ素−シロキサングラフトポリマー5>
市販品のフッ素−シロキサングラフトポリマー5(ZX−049、富士化成工業社製)使用
(重合性液晶化合物)
重合性液晶化合物として下記、重合性液晶化合物A、重合性液晶化合物Bを用いた。
<光学異方性フィルム1の作製>
[フィルム基材の作製]
〈エステル化合物1の調製〉
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、エステル化合物1を得た。酸価0.10、数平均分子量450であった。
(二酸化珪素分散液)
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製) 10質量部
(一次粒子の平均径7nm)
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過した。
(ドープ組成物)
セルローストリアセテート 90質量部
(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、アセチル基置換度2.88、Mn=140000)
エステル化合物1 10質量部
チヌビン928(チバ・ジャパン(株)製) 2.5質量部
二酸化珪素分散希釈液 4質量部
メチレンクロライド 432質量部
エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液を調製した。
次に、調製したドープ液をステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルフィルムのウェブを35℃で溶剤を蒸発させ、1.65m幅にスリットし、テンターでTD方向(フィルムの幅手方向)に1.3倍、MD方向の延伸倍率は1.01倍で延伸しながら、160℃の乾燥温度で乾燥させた。乾燥を始めたときの残留溶剤量は20%であった。その後、120℃の乾燥装置内を多数のロールで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.49m幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、セルロースエステルフィルムを得た。セルロースエステルフィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は40μm、巻数は3900mであった。
セルロースエステルフィルムのリターデーション値は、Roが5nm、Rtが55nmであった。リターデーション値は、23℃55%RHに調湿後、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて、波長590nmの測定した値である。
上記作製したセルロースエステルフィルムに下記手順により液晶配向層を設け、次いで液晶配向層上に液晶層を設け、光学異方性フィルム1を作製した。
セルロースエステルフィルム上に、下記液晶配向層塗布液を、ダイコートで塗布し、80℃で30秒乾燥後、酸素濃度2.0%、紫外線を120mJ/cm2、照度200mW/cm2で照射して硬化した。硬化後の液晶配向層の膜厚は、2.0μmであった。
次いでこのフィルムにラビング処理を行った。フィルムの搬送速度は20m/minで行い、配向膜の表面を、回転するラビングロールを接触させ、ラビング角は45°とした。
次いで、この液晶配向層上に下記の液晶層塗布液をダイコートでウェット7μmの厚みで塗布した。
100℃で30秒乾燥後、30秒の時間をかけ液晶化合物を配向させた。次に、液晶化合物を配向させたフィルムを250mJ/cm2、照度300mW/cm2で照射して硬化させ、光学異方性フィルム1を得た。液晶層の厚みは、1.6μmであった。重合性液晶化合物の厚み方向に対する傾斜角度は、傾斜測定が可能な複屈折計(例えば王子計測機器製KOBRA−31WR、オプトサイエンス社製Axoscan、株式会社溝尻光学工業所製分光エリプソメータDVA36VW)を用いて23℃55%RHの雰囲気下10点測定し、重合性液晶化合物が液晶層の厚み方向に対して平均傾斜角度が28°±2°の範囲で傾斜していることが確認された。また、10点測定値のばらつきも少なかった。
この光学異方性フィルム1の全体としてのリターデーションはRoは40nm、Rtは138nmであった。
(液晶配向層塗布液)
ポリエステルアクリレート 25質量部
(ラロマーLR8800 BASFジャパン(株)製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 290質量部
イソプロピルアルコール 685質量部
光重合開始剤(イルガキュア184 チバ・ジャパン(株)製) 0.05質量部
(液晶層塗布液)
重合性液晶化合物A 10質量部
重合性液晶化合物B 10質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 80質量部
光重合開始剤(イルガキュア184 チバ・ジャパン(株)製) 1質量部
フッ素−シロキサングラフトポリマー1 0.1質量部
<光学異方性フィルム2の作製>
フッ素−シロキサングラフトポリマー1の代わりにフッ素−シロキサングラフトポリマー2を用いた以外フィルム1と同様である。
<光学異方性フィルム3の作製>
フッ素−シロキサングラフトポリマー1の代わりにフッ素−シロキサングラフトポリマー3を用いた以外フィルム1と同様である。
<光学異方性フィルム4の作製>
フッ素−シロキサングラフトポリマー1の代わりにフッ素−シロキサングラフトポリマー4を用いた以外フィルム1と同様である。
<光学異方性フィルム5の作製>
フッ素−シロキサングラフトポリマー1の代わりにフッ素−シロキサングラフトポリマー5を用いた以外フィルム1と同様である。
<光学異方性フィルム6の作製>
フッ素−シロキサングラフトポリマー1の添加量を0.01質量部に変更した以外フィルム1と同様である。
<光学異方性フィルム7の作製>
フッ素−シロキサングラフトポリマー1の添加量を0.20質量部に変更した以外フィルム1と同様である。
<光学異方性フィルム8の作製>
フッ素−シロキサングラフトポリマー1の添加量を0.001質量部に変更した以外フィルム1と同様である。
<光学異方性フィルム9の作製>
フッ素−シロキサングラフトポリマー1の添加量を0.30質量部に変更した以外フィルム1と同様である。
<光学異方性フィルム10の作製>
光学異方性フィルム1の光重合開始剤添加量を0.02質量部に変更した以外フィルム1と同様である。
<光学異方性フィルム11の作製>
光学異方性フィルム1よりフッ素−シロキサングラフトポリマー1を添加しない以外フィルム1と同様である。
<光学異方性フィルム12の作製>
フッ素−シロキサングラフトポリマー1の代わりにF−477(パーフルオロアルキル基・親油性基・親水性基含有オリゴマー;DIC株式会社製)を用いた以外フィルム1と同様である。
<光学異方性フィルム13の作製>
フッ素−シロキサングラフトポリマー1の代わりにFM−0721(片末端ラジカル重合性ポリシロキサン)を用いた以外フィルム1と同様である。
上記光学異方性フィルム2〜10は重合性液晶化合物が液晶層の厚み方向に対して平均傾斜角度が28°±2°の範囲で傾斜していることが確認された。それに対し、上記光学異方性フィルム11〜13は平均傾斜角度が28°±2°の範囲であったが、10点測定値のばらつきが大きかった。
《評価》
以上作製した光学異方性フィルム1〜13を用いて以下の評価を実施した。
評価方法を以下に示す。
<配向欠陥>
液晶層の配向欠陥はOLYMPUS社製BX51偏光顕微鏡を用いて光学異方性フィルムの配向欠陥個数を測定することで評価した。個数はmm2あたりの個数を表す。
偏光板をクロスニコル状態にし、光学異方性フィルムの面内遅相軸が偏光用回転アナライザ透過軸と平行となるようにセットし、その際観察される点欠陥の個数を評価した。
数字が小さい方が配向の均一性が優れており良好であることを示す。
<液晶層の接着性>
〈剥離試験サンプル作製方法〉
作製した光学異方性フィルムを、幅4cm、長さ15cmに裁断し、表面をメタノールでふき取り、表面の汚れを取った後、温度25℃湿度60%の条件下で2時間サンプルを保存した。
その後、長さ方向に、NTカッターを用いて、45度に刃を傾けた状態で、支持体を切断しないように、サンプルの幅方向の両端1cm、長さ方向の両端4cmずつ空け、幅方向5mm間隔で、長さ方向に6cmの切り込みを入れた。
SUS板(30cm×30cm、厚さ8mm)1枚につき、総研化学社製粘着シート(PET製剥離シートが両側に付着している)を幅5cm、長さ24cmに裁断し、剥離シートの片方を剥離し、SUS板の端から上5cm、下5cm、左右3cm隙間が開くように2枚貼り付け、もう片方の剥離シートを剥離した。その後、前記切り込みの入った光学異方性フィルム6枚を並べて、該フィルムの長手方向の中心部5cmの光学異方性層側を、SUS板上の粘着剤に、気泡が入らないように貼り付け、さらに、該フィルムの支持体を市販のプラスチック定規でこすりつけた。
前記のような状態で、温度25℃湿度60%の条件下で、一晩(約15時間)保存した後、さらに温度90℃湿度0%の恒温槽で5時間保存した後SUS板を取り出し、さらに温度25℃湿度60%の条件下で2時間保存した。
〈剥離試験〉
光学異方性フィルム1枚の塗布長手方向の端を手で持ち、SUS板に対して可能な限り90度方向に光学異方性フィルムを傾け、上方向に5秒間で引っ張り、粘着シートと光学異方性フィルムの粘着部を剥離した。
〈液晶層の接着性評価〉
剥離後のサンプルについて、光学異方性フィルムと粘着シートの粘着部中の光学異方性層の剥離面積によって、5段階評価した。
光学異方性層が全く剥離していない場合を◎、剥離面積が〜5%の場合を○、〜10%の場合を△、〜25%の場合を×、〜50%の場合を××、50%以上剥離している場合を×××とした。
<偏光子接着性>
〈偏光板の作製〉
(アルカリ鹸化処理)
液晶層に剥離性の保護フィルム(PET製)を張り付けた光学異方性フィルム1とコニカミノルタオプト社製KC4UYSWフィルムの片面に剥離性の保護フィルム(PET製)を張り付けて下記に記載する条件でアルカリ鹸化処理を実施した。また、アルカリ鹸化処理後に保護フィルムを剥がし、下記のように偏光膜と貼り合せて偏光板を作製した。
ケン化工程 2.5M−NaOH 50℃ 90秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工程 10質量部HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
ケン化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで80℃で乾燥。
(偏光膜の作製と貼り合わせ)
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で6倍に製膜方向に延伸して偏光膜を作製した。
次に、ポリビニルアルコール系の接着剤を用いて、偏光膜の透過軸とフィルムの面内遅相軸が平行になるように偏光膜の片面に鹸化処理したKC4UYSWフィルムを対側の面に光学異方性フィルム1を貼り合わせ偏光板1を作製した。
また、同様にして光学異方性フィルム2〜13を用いて偏光板2〜13を作製した。
得られた偏光板について、下記方法で評価を行った。
〈鹸化後接着性〉
下記基準で評価した。
◎:乾燥後も全くはがれない
○:乾燥後、手で強く引っ張れば剥がすことができる
△:乾燥後、弱い力で剥がれてしまう
×:貼合後、しばらくすると自然と剥がれる
××:貼合不可能
<液晶層とガラス面の接着性>
各光学異方性フィルムのガラス面との接着性を下記のように評価した。
各光学異方性フィルムを用いて下記要領で作製した偏光板の液晶層面とガラスを粘着テープ(日東電工株式会社製No.31B)で貼り合わせ、80℃、90%RHの環境下で2週間放置した後、目視にて貼り合わせ状態を以下の基準で評価した。
○:剥離が全く確認できない
△:四方の一部に剥離が確認できる
×:剥離が四方で確認できる
表1からわかるように、本発明に係るフッ素−シロキサングラフトポリマーを用いることで、塗布ムラが良化し配向欠陥を抑制でき、粘着剤との接着性に優れ、偏光子との接着性、ガラス面との接着性に問題のない光学異方性フィルムを提供することが可能になることが分かった。
実施例2
<液晶表示装置1〜13の作製>
(液晶セル、液晶表示装置1〜13の作製)
ITO透明電極が設けられたガラス基板の上に、ポリイミド配向膜を設け、ラビング処理を行った。4.3μmのスペーサーを介して、二枚の上記ガラス基板を配向膜が向き合うように重ねた。二枚のガラス基板は、配向膜のラビング方向が直交するように配置した。基板の間隙に、棒状液晶性分子(ZLI−4792、メルク社製)を注入し、以上のように作製したTN液晶セルの両側に上記作製した偏光板を光学異方性フィルム1〜13が液晶セル側となるように粘着剤を用いて、視認側、バックライト側偏光板の透過軸が直交するように貼り付けてTN型液晶表示装置1〜13を作製した。
液晶表示装置として視認性を目視にて評価した結果、本発明の光学異方性フィルムから作製した偏光板は視野角、階調反転、カラーシフト、にじみに優れた表示性を示した。これにより、液晶ディスプレーなどの画像表示装置用の偏光板として優れていることが確認された。
実施例3
実施例1で用いた重合性液晶化合物A、重合性液晶化合物Bの変わりに下記ディスコティック化合物を用い120℃で30秒乾燥後、30秒の時間をかけ液晶化合物を配向させた以外は同様にして、光学異方性フィルム、偏光板、液晶表示装置を作製したところ、視野角、階調反転、カラーシフト、にじみに加えコントラストにも優れた液晶表示装置が得られることが分かった。
実施例4
実施例1で作製したセルロースエステルフィルムのセルロースエステルをジアセチルセルロース(イーストマンケミカル製、CA−394−60S)に変えた以外は同様にしてセルロースエステルフィルムを基材として作製し、光学異方性フィルムを作製したところ、本発明の光学異方性フィルムは、上記偏光子接着性がいずれも◎になり、優れた接着性を有していることが分かった。