以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る無目構造が適用されている引戸装置の全体正面図が示されている。壁15に沿って設置されているこの引戸装置は、左右方向に開閉移動する扉体1の閉じ側の位置に配置された戸先側縦枠部材2と、扉体1の開き側の位置に配置された戸尻側縦枠部材3と、これらの戸先側縦枠部材2と戸尻側縦枠部材3の上部間に架設された無目4とにより、扉体1が内側で移動する外枠構造体が形成されたものとなっており、戸先側縦枠部材2、戸尻側縦枠部材3及び無目4は、開閉移動する扉体1に対して不動となった不動部材となっている。
扉体1の開閉移動により、壁15に形成された開口部となっている出入口16が開閉され、壁15により、本実施形態に係る引戸装置が設置されている建物内の2つの室内空間である廊下と部屋とが仕切られている。戸先側縦枠部材2、戸尻側縦枠部材3及び無目4は、例えば、壁15の廊下側の外面に配置されており、壁15のうち、出入口16の上方は天井から垂下した下がり壁15Aとなっている。
図2は、この下がり壁15Aの箇所における図1のS2−S2線断面図である。無目4は板金の折り曲げ品であり、この無目4は、上面部4Aと、この上面部4Aにおける無目厚さ方向の一方の端部から下方へ垂下した背面部4Bと、上面部4Aにおける無目厚さ方向の他方の端部に、少し下方へ垂下して斜め上向きに形成された被係止部4Cとを有する。これらの上面部4、背面部4B及び被係止部4Cは、無目の全長に渡る長さ、すなわち、戸先側縦枠部材2から戸尻側縦枠部材3までの長さを有している。被係止部4Cの下方は、無目の全長に渡る長さの点検用開口部4Dとなっており、通常時の点検用開口部4Dは、点検カバー6により塞がれている。
点検カバー6の上端には、被係止部4Cに上から係止される係止部6Aが形成されており、また、点検カバー6の下端には、無目4の厚さ方向の幅を有する下面部6Bが設けられている。この下面部6Bの扉体移動方向(図1の左右方向)両端部に、図1で示されているように、戸先側縦枠部材2と戸尻側縦枠部材3に取り付けられているブラケット7,8にねじ込まれた止着具9,10が挿通されている。無目4の内部には、扉体1を開閉移動させるための扉体移動機構が収納されており、止着具9,10を取り外した後に、無目4を持ち上げて係止部6Aを被係止部4Cから抜き取ることにより、点検カバー6を無目4から取り外すことができ、これにより、図2の点検用開口部4Dが開放され、この点検用開口部4Dから上記扉体移動機構等についての点検作業や補修作業等を行えるようになっている。
図3は、図1のS3−S3線断面図であり、図4は、図3のS4−S4線断面図である。この図4に、無目4の内部に収納配置されている上記扉体移動機構が示されている。この扉体移動機構は、扉体1の開閉移動を案内するためのガイド手段となっているガイドレール20を含むものとなっており、前述の戸先側縦枠部材2等と共に不動部材となっているこのガイドレール20は、図3に示されているように、上下方向に延びる基部20Aと、この基部20Aの下端から無目4の厚さ方向である点検カバー6の側へ延びるアーム部20Bと、このアーム部20Bの先端に立ち上り状態で形成された係合部20Cとを有する断面略L字形となっている。図4に示されているように、扉体1の上面にはローラブラケット21が結合され、このローラブラケット21に回転自在に取り付けられたローラ22がガイドレール20に案内されて転動自在となっている。この転動により扉体1がガイドレール20に沿って移動できるように、図3に示されているように、溝付きローラ22の溝22Aがガイドレール20の係合部20Cに上から係合している。
このため、扉体1は、ガイドレール20から吊り下げられた上吊り式となっている。また、図4に示されているように、ローラブラケット21とローラ22のそれぞれは、扉体1の移動方向に2個設けられている。
なお、図1に示すように、扉体1が上方で移動する床11には、垂直軸を中心に回転自在となったガイドローラ12が配置され、このガイドローラ12は、図2に示すとおり、扉体1の下端に下向きに開口して配置されたチャンネル部材1Aの内部に挿入されており、ガイドレール20に案内される扉体1の開閉移動は、扉体1の下端がこのガイドローラ12に案内されながら行われる。
また、本実施形態に係る扉体1は、図1に示されている把持部1Bを手で握って行われる手動操作移動と、無目4の内部に収納されている駆動装置で行われる自動移動とのうち、選択された一方により開閉移動させることができるようになっており、この選択は、図示されていない選択スイッチを操作することにより行われる。
そして、扉体1の開閉移動が手動操作移動で行われる場合でも、また、上記自動移動で行われる場合でも、扉体1の先端が図1で示した戸先側縦枠部材2に当接することにより、扉体1は、前述した出入口16を閉じた全閉位置に達し、また、扉体1が、図4に示されているストップ部材13で規定される位置まで後退することにより、扉体1は、出入口16を開けた全開位置に達する。なお、ストップ部材13は、ガイドレール20に取り付けられている。
上記駆動装置は、図4で示されているリニアモータ装置25である。このリニアモータ装置25は、無目4の内部においてこの無目4に固定された制御装置26と、無目4の内部において無目4に固定され、制御装置26から供給されるパルス電力により磁力を発生させるコイル装置27と、扉体1に配置され、コイル装置27の磁力により扉体1に移動力を生じさせる磁石装置28とを有している。図2に示されているように、制御装置26は、無目4の上面部4Aの下面に取り付けられている。また、図3に示されているように、コイル装置27は、無目4にビス等の取付具29で取り付けられたブラケット27Aと、このブラケット27Aに結合された箱型の本体27Bと、この本体27Bの内部に収納されたコイル部27Cとを有するものとなっている。さらに、磁石装置28は、前述のローラブラケット21に設けられている上側突出部21Aに止着具30で止着され、内部に空洞部28Aが設けられた本体28Bと、空洞部28Aに収納固定された磁石28Cとを備えるものとなっている。
この磁石装置28は、図4に示すとおり、2個のローラブラケット21に架け渡されて扉体1に配置され、これらのローラブラケット21の間において、扉体1と磁石装置28との間に補強部材31が架設されている。上下を長さ方向とするこの補強部材31により、磁石装置28の長さ方向途中部が下方へ湾曲変形することが防止され、これにより、図3に示されているように、上下に対向しているコイル装置27と磁石装置28との間に、適正な小さな寸法となっている上下の隙間を設けることができるようになっている。
扉体1が、この扉体1の先端が前述の戸先側縦枠部材2に当接している全閉位置に達しているときに、図示しないセンサが扉体1に近づいた人間等を検知すると、このセンサからの信号により制御装置26は、コイル装置27に磁力を発生させるパルス電力を供給し、この磁力を受ける磁石装置28により扉体1は開き移動する。また、この開き移動により開放された前述の出入口16を人間等が通過したことが図示しないセンサで検知されると、このセンサからの信号により制御装置26は、コイル装置27に扉体1を閉じ移動させるためのパルス電力を供給し、これにより、コイル装置27が発生させる磁力に受ける磁石装置28によって扉体1は閉じ移動する。
図3に示されているように、無目4の前述した背面部4Bは、無目4の上面部4Aにおける無目厚さ方向の一方の端部から下方へ少し垂下している第1面部41と、この第1面部41の下端から無目4の内側へ水平又は略水平に屈曲している第2面部42と、この第2面部42の先端から下方へ垂下している第3面部43と、この第3面部43の下端から無目4の外側へ水平又は略水平に屈曲している第4面部44と、この第4面部44の先端から上方へ立ち上がっている第5面部45とからなり、第1面部41の真下又は略真下の位置に第5面部45が配置されている。このように背面部4Bが、第1面部41の真下又は略真下の位置に配置された第5面部45を備えたものとなっている場合には、後述する枠構造体53の上側枠部材53Aに第5面部45を当接させることができるため、第1面部41と第5面部45とにより、壁15に無目4を安定させて取り付けることができるようになる。しかし、このような作用効果が求められない場合には、第5面部45を省略してもよい。
また、本実施形態では、第3面部43の上下寸法は第1面部41の上下寸法よりも大きくなっており、本実施形態では、第3面部43の上下寸法は、第1面部41の上下寸法の3倍〜4倍となっている。
また、本実施形態では、第1面部41の下端まで達していない第5面部45の上端には、無目4の外側へ水平又は略水平に延出している外側延出部46が形成されている。このような外側延出部46が無目4に設けられていると、後述する作用効果を得られるが、このような作用効果が求められない場合には、この外側延出部46を省略してもよい。
以上のように本実施形態に係る無目4の背面部4Bは、第1〜第5面部41〜45のうち、少なくとも第1〜第4面部41〜44で形成されているため、この背面部4Bは、全体が下方へ平坦に延びる平坦部となっていない。そして、第3面部43は、無目4の内側に突出した内側突出部43となっており、また、この内側突出部43と、無目4が取り付けられている前述した壁15(出入口16の部分では、下がり壁15A)との間には、空間S1が設けられている。
また、内側突出部43の上方には、無目4の上面部4Aと、第1面部41と、第2面部42とにより、内側突出部43よりも無目4の外側に突出した外側突出空間部S2が形成されており、第1面部41は、この外側突出空間部S2の奥側の壁部41、すなわち、外側突出空間部S2における無目4の外側の壁部41となっている。
以上の形状となっている板金製の無目4は、プレス装置及び/又はベンダー装置による板金の折り曲げ加工で形成されている。そして、第1〜第5面部41〜45、空間S1及び外側突出空間部S2は、無目4の全長に渡って連続して形成されている。また、外側延出部46は、無目4の全長に渡って連続して形成してもよく、あるいは、出入口16と対応する部分だけに設けてもよい。外側延出部46を出入口16と対応する部分だけに設ける場合には、外側延出部46を無目4の全長に渡って連続して形成した後に、出入口16と対応する部分だけを残して切除する。
前述のガイドレール20は、基部20Aがビス等の取付具47で内側突出部43に結合されることにより、無目4の内部に固定配置されている。また、コイル装置27は、このコイル装置27のブラケット27Aが前述したビス等の取付具29で内側突出部43に結合されることにより、無目4の内部に固定配置されている。これらの取付具29,47の軸部は内側突出部43に挿通されているとともに、取付具29,47の先端29A,47Aは空間S1に突出しており、これらの先端29A,47Aは壁15まで達していない。なお、これらの先端29A,47Aを壁15まで到達させてもよい。
また、外側突出空間部S2には、電気配線48が収納配置されており、結束部材49で複数本が結束されて外側突出空間部S2に収納されているこれらの電気配線48は、図4に示されているように、リニアモータ装置25の制御装置26とコイル装置27を電気的に接続するためのものや、電源ケーブルとなっているものである。
また、前述した壁15は、図2に示されているように、構造材50が埋設されているコンクリート部51と、このコンクリート部51の外側に設けられたモルタル層52とを有する。コンクリート部51は、壁15のコア部であり、モルタル層52は、壁15の壁仕上げ用表層部である。また、出入口16の部分では、枠構造体53が出入口16の外縁部に配置され、出入口16の見切り材となっているこの枠構造体53は、出入口16の上側外縁部に配置されている上側枠部材53Aについて示している図2のように、コンクリート部51の構造材50にアンカー部材54を介して結合されたプレート状の係止部材55に枠構造体53を取り付けることにより、出入口16の外縁部に配置されている。上側枠部材53Aを含むこの枠構造体53も、モルタル層52と同じく、出入口16の部分における壁15の表面の一部を構成している壁構成部材となっている。
図3に示すとおり、無目4は、無目4の背面部4Bを形成している前述の第1〜第5面41〜45のうち、無目4の最も外側の位置に配置されている第1及び第5面部41及び45の外面が壁15に当てられており、そして、外側突出空間部S2の奥側の壁部41となっている第1面部41にビス等の結合具56の軸部56Aが挿通され、この軸部56Aが壁15のモルタル層52を貫通してコンクリート部51に達することにより、無目4は壁15に結合されている。また、結合具56の頭部56Bは、外側突出空間部S2に露出している。
なお、本実施形態では、外側突出空間部S2の奥側の壁部41の外面に補強部材57(図2も参照)が固定されており、無目4の長さ方向に複数個設けられているこの補強部材57にも結合具56の軸部56Aが挿通されることにより、壁部41の補強が行われているとともに、結合具56による無目4の壁15への結合強度を大きくすることが行われている。
壁15に無目4を取り付けるための作業は、以下のようにして行われる。モルタル層52が設ける前の壁15のコンクリート部51にアンカー部材54を介して係止部材55を結合し、この係止部材55に上側枠部材53Aを含むこの枠構造体53を溶接等で結合する。この後、無目4の外側延出部46を上側枠部材53Aの上面部53Bに上から当接させ、この当接により、無目4を、壁15を構成する壁構成部材となっている上側枠部材53Aに対して上下方向に位置決めする。この後に、無目の第1面部41にビス等による結合具56の軸部56Aを挿通させて、この軸部56Aをコンクリート部51に到達させ、これにより、無目の第1面部41を、コンクリート部51からモルタル層52の厚さに相当する距離分だけ離した状態で、無目4をコンクリート部51に結合する。
次いで、コンクリート部51の表面にモルタルを塗布して壁15を仕上げる作業を行い、これにより、図2及び図3で説明したように、壁15にモルタル層52を設ける。
そして、無目4の背面部4Bの内側突出部43にガイドレール20を取付具47で取り付ける作業を行うとともに、無目4の外側突出空間部S2にリニアモータ装置25の電気配線48を収納する作業や、無目4の上面部4Aの下面にリニアモータ装置25の制御装置26をビス等で取り付ける作業、無目4の内側突出部43にリニアモータ装置25のコイル装置27を取付具29で取り付け作業を行う。また、扉体1のローラブラケット21に回転自在に取り付けられているローラ22をガイドレール20に転動自在に係合させた後に、2個のローラブラケット21の上側突出部21Aにリニアモータ装置25の磁石装置28を結合する作業を行う。
なお、無目4の外側突出空間部S2に電気配線48を収納する際に、複数本の電気配線を結束した結束部材49を、結合具56のうち、外側突出空間部S2に露出している頭部56Bに、例えば、接着剤や結束部材49に形成した切欠部により止着するようにしてもよい。
以上説明した本実施形態によると、無目4の背面部4Bには内側突出部43が形成されているため、この背面部4Bの全体は平坦部となっていないとともに、背面部4Bの断面係数は、この内側突出部43により大きくなっている。そして、扉体1の開閉移動を案内するガイド手段となっているガイドレール20は、この内側突出部43に取付具47で取り付けられており、この取り付けのために必要される強度が、上記断面係数により大きくなっているため、無目4の背面部4Bに、ガイドレール20を取り付けるための取付部材を設けることが省略できることになる。
また、無目4は板金製であるため、内側突出部43を、板金をプレス装置やベンダー装置による折り曲げにより容易に形成することができる。
また、内側突出部43は、無目4の全長に渡る長さを有するものとなっているため、無目4の全長と同じ又はこの全長よりも短い長さとなっているガイドレール20の全長を内側突出部43でカバーできるとともに、無目4の背面部4Bに、ガイドレール20を取り付けために必要とされる充分な強度を、無目4の全長に渡って付与することができる。
さらに、内側突出部43は無目4の全長に渡る長さとなっているため、無目4を、板金のプレス装置やベンダー装置による折り曲げで形成する際に、この内側突出部43を無目4に容易に形成することができる。
なお、内側突出部43を無目4の全長に渡って形成するのではなく、ガイドレール20を取り付けるための内側突出部43を無目4の全長のうちの一部だけに形成したり、複数個の内側突出部43を無目4の全長に不連続で形成してよい。
また、本実施形態によると、無目4に内側突出部43が形成されていることにより、無目4の背面部4Bと壁15との間に空間S1を設けることができることになり、このため、無目4の内側突出部43にガイドレール20やリニアモータ装置25のコイル装置27を取り付けるために、取付具47,29の軸部を内側突出部43に貫通させたときに、これらの取付具47,29の先端47A,29Aをこの空間S1に突出させることができ、これにより、ガイドレール20とコイル装置27を取付具47,29による大きな強度で無目4に取り付けることが可能となる。また、本実施形態では、取付具47,29の先端47A,29Aは壁15に到達しておらず、これらの先端47A,29Aは壁15と干渉していないため、これらの取付具47,29によってガイドレール20、コイル装置27を無目4に取り付けるための作業を容易に行える。
また、内側突出部43の上方には、この内側突出部43よりも無目4の外側に突出した外側突出空間部S2が形成され、この外側突出空間部S2に、リニアモータ装置25の電気配線48を収納しているため、この電気配線48の収納スペースを無目4に設けることができる。
また、外側突出空間部S2に電気配線48を収納する場合において、前述したように、複数本の電気配線48を結束した結束部材49を結合具56の頭部56Bに、例えば、接着剤や結束部材49に形成した切欠部により止着するようにした場合には、電気配線48を外側突出空間部S2の所定位置に不動状態にして配置することができる。
さらに本実施形態によると、図2及び図3に示されているように、外側突出空間部S2の開口側は、リニアモータ装置25の構成部材となっている制御装置26及びコイル装置27で塞がれた状態になっているため、たとえ、結束部材49が結合具56の頭部56Bから分離することがあっても、また、結束部材49を結合具56の頭部56Bに止着しない場合であっても、電気配線48が外側突出空間部S2から脱落することを制御装置26及びコイル装置27により防止することができる。
また、本実施形態では、無目4に、この無目4の外側へ延出した外側延出部46が設けられ、この外側延出部46を、無目4の背面部4Bの外面が当てられた壁15の構成部材となっている前述の枠構造体53の上側枠部材53Aに上から当接させているため、この当接により、枠構造体53に対して、言い換えると、壁15に対して、無目4を上下方向に位置決め配置することができ、無目4を壁15の所定の高さ位置にして設置できる。
また、外側延出部46を上側枠部材53Aに上から当接させることにより、無目4及びこの無目4の内部に収納固定されている部材の重量を上側枠部材53Aに支持させることができ、これにより、無目4を壁15に結合するために必要となる結合具の個数を削減することができる。
さらに、外側延出部46は、無目4の第3面部43となっている内側突出部43から、第4及び第5面部44及び45により連続して延長されて形成された部分となっているため、無目4を前述の板金の折り曲げ加工で形成する際に、この折り曲げ加工により外側延出部46を容易に無目4に設けることができる。
図5は、別実施形態に係る引戸装置を示す。この引戸装置では、図1で説明した戸尻側縦枠部材3が省略されており、この戸尻側縦枠部材3の代わりとして、無目4の扉体開き側の端部を塞ぐために戸尻側端面部材60が用いられている。そして、この戸尻側端面部材60に、前述のブラケット8の代わりとして、前述の止着具10がねじ込まれていて、無目4に点検カバー6をこの止着具10で止着できるようにするためのブラケット61が設けられている。
本発明に係る無目構造は、このような引戸装置にも適用することができる。
図6は、さらに別実施形態に係る引戸装置を示している。この引戸装置も、扉体101が、ガイド部材であるガイドレールから吊り下げられた上吊り式の扉体となっているとともに、開き移動した扉体101が収納される戸袋103が、壁105の内部に設けられている壁収納式の戸袋となっているものである。
この引戸装置の外枠構造体は、無目110と、扉体101が全閉位置に達して出入口102を閉じたときにこの扉体101の先端が当接する戸先側縦枠部材111と、この戸先側縦枠部材111とは扉体101の移動方向反対側に配置されている戸尻側縦枠部材112と、これらの縦枠部材111と112の間に配置されているとともに、出入口102を開けたときの扉体101が収納される戸袋103における出入口102の側の端部に配置された竪額縁113と、床104における戸袋103の下端に配置された幅木114とにより形成され、板金の折り曲げ品となっているこれらの無目110と戸先側縦枠部材111と戸尻側縦枠部材112と竪額縁113と幅木114は、引戸装置の外枠構造体を形成するための枠部材となっている。
出入口102は、これらの枠部材110〜114で形成された外枠構造体の内側の一部の空間となっている。本実施形態では、出入口102における床104上には沓摺り部材が配置されていないが、沓摺り部材を出入口102における床104上に配置してもよい。出入口102は扉体101で開閉され、この出入口102を開けるために開き移動したときの扉体101が収納される戸袋103は、壁105の内部に設けられた壁収納型の戸袋である。無目110は、戸先側縦枠部材111から戸尻側縦枠部材112まで延びる長さを有し、上記枠部材110〜114のうちの1つとなっている竪額縁113は、戸袋103における出入口102の側の見切り部材となっている。
また、戸袋103は、図6のS7−S7線断面図である図7で示されているように、ハット形状の断面が無目110及び幅木114の長手方向(図6では左右方向)に連続している補強部材120によって補強された構造となっており、板金の折り曲げ品となっているこの補強部材120は、扉体101の厚さ方向でもある戸袋103の厚さ方向の両側に設けられているとともに、縦枠部材111,112及び竪額縁113の長手方向でもある上下方向に複数個配設されている。そして、これらの補強部材120の上下において、内側壁材121が両面粘着テープ等による結合具で補強部材120に結合され、これらの内側壁材121の外側に外側壁材122が配置され、補強部材120にビスやステープル等の結合具で結合されているこの外側壁材122の表面に、クロス等の壁仕上げ材が取り付けられている。
このため、これらの内側壁材121と外側壁材122と壁仕上げ材により、壁105が形成され、戸袋103は、補強部材120が構造材となっている壁105の内部に形成されている。この壁105は、図6から分かるように、無目110の上側や、戸先側縦枠部材111に対して出入口102とは反対側の部分、戸尻側縦枠部材112に対して戸袋103とは反対側にも設けられている。壁105のこれらの部分の表面は、戸袋103における壁105の部分の表面と面一状態となっている。
なお、壁105のうち、出入口102の上方の部分は天井から垂下した下がり壁105Aとなっている。
図8は、図6のS8−S8線断面図である。この図8で示されているように、無目110は、下がり壁105Aの下地材127にアンカー部材128を介して結合された上面部110Aと、この上面部110Aにおける無目110の厚さ方向(図8では左右方向)の一方の端部から垂下した背面部110Bと、背面部110Bとは無目110の厚さ方向(扉体101の厚さ方向)の反対側の端部に、少し下方へ垂下して斜め上向きに形成された被係止部110Cとを有している。これらの上面部110A、背面部110B及び被係止部110Cのうち、上面部110A及び背面部110Bは無目110の全長に渡る長さ、すなわち、戸先側縦枠部材111から戸尻側縦枠部材112までの長さを有し、被係止部110Cは、出入口102と対応する無目110の長さ方向の長さを有している。被係止部110Cの下方は点検用開口部110Dとなっており、通常時の点検用開口部110Dは、図2及び図3で説明した前記実施形態とおなじく、点検カバー131により塞がれている。
なお、被係止部110C及び点検カバー131と対応する高さ位置における戸袋103の上部箇所には、図6及び図7で示されている上下複数個の前記補強部材120のうち、最上部の補強部材120Aが配置されている。
図8に示されているように、点検カバー131の上端には、被係止部4Cに上から係止される係止部131Aが形成され、また、点検カバー131の下端には、無目110の厚さ方向の幅を有する下面部131Bが設けられている。この下面部131Bの扉体移動方向(図6の左右方向)両端部に、図6で示されているように、戸先側縦枠部材111と竪額縁113に取り付けられているブラケット132,133にねじ込まれた止着具134,135が挿通されている。無目110の内部には、扉体101を開閉移動させるための扉体移動機構が収納されており、止着具134,135を取り外した後に、無目110を持ち上げて係止部131Aを被係止部110Cから抜き取ることにより、点検カバー131を無目110から取り外すことができ、これにより、点検用開口部110Dが開放されて、この点検用開口部110Dから扉体移動機構等についての点検作業や補修作業等を行える。
また、図8に示されているように、無目110の前述した背面部110Bは、無目110の上面部110Aにおける無目厚さ方向の一方の端部から下方へ少し垂下している第1面部141と、この第1面部141の下端から無目110の内側へ水平又は略水平に屈曲している第2面部142と、この第2面部142の先端から下方へ垂下している第3面部143と、この第3面部143の下端から無目110の外側へ水平又は略水平に屈曲している第4面部144と、この第4面部144の先端から上方へ立ち上がっている第5面部145と、この第5面部145から無目110の内側へ水平又は略水平に屈曲している第6面部146とからなる。そして、第5面部145が上方へ立ち上がっている第4面部144の先端は、第1面部141の位置を越えた無目110の外側の位置まで達している。また、第3面部143の上下寸法は第1面部141の上下寸法よりも大きくなっており、本実施形態では、第3面部143の上下寸法は、第1面部141の上下寸法の1.5倍〜2倍となっている。
また、このように無目110の背面部110Bを形成している第1〜第6面部141〜146のうち、第3面部143は、この実施形態における無目110の内側に突出した内側突出部143となっている。
また、図8において、無目110の背面部110Bの外側に外側壁材130が配置され、この外側壁材130の内側に内側壁材129が配置されている。これらの内側壁材129と外側壁材130は、第5面部145とは無目110の厚さ方向反対側において、無目110の上側にも配置されている。そして、これらの内側壁材129と外側壁材130は、図7に示されている内側壁材121と外側壁材122となっている。
また、無目110の背面部110Bの外側に配置されている外側壁材130の下端は、第4面部144まで達している。このため、この外側壁材130と前述の内側突出部143との間には、内側壁材129の厚さに相当する幅寸法の空間S11となっている。また、この空間S11の上方には、無目110の上面部110Aと第1面部141と第2面部142とにより、内側突出部143よりも無目110の外側に突出した外側突出空間部S12が設けられている。
以上の上面部110A、背面部110Bの第1〜第6面部141〜146、空間S11及び外側突出空間部S12は、板金製の無目110を、板金をプレス装置やベンダー装置による折り曲げ加工で生産する際に、無目110の全長に渡って連続するものとして形成されている。
図12は、図8のS12−S12線断面図である。図8で説明したアンカー部材128の下端は、図12に示されているL字形の接続部材126の水平部126Aの上に載せられ、この接続部材126の水平部126Aは無目110の上面部110Aに溶接で結合されているとともに、アンカー部材128と、接続部材126の水平部126A及び鉛直部126Bとが溶接で結合されている。このようにアンカー部材128と無目110の上面部110Aとの間にL字形の接続部材126を介入することにより、アンカー部材128と無目110の上面部110Aとの結合作業が容易となり、また、アンカー部材128と無目110の上面部110Aとの結合強度を大きくすることができる。
次に、無目110の内部空間に収納配置されている前述の扉体移動機構について説明する。図9は、この扉体移動機構によって扉体101が閉じ限位置(全閉位置)に達しているときを示し、図10は、扉体101が開き限位置(全開位置)に達しているときを示している。
図9及び図10に示すように、無目110の内部には扉体101の移動を案内するためのガイド部材であるガイドレール150が組み込まれ、上記扉体移動機構の主要な構成部材となっていて、無目110の略全長に亘る長さを有するこのガイドレール150は、図8に示すとおり、無目110の背面部110Bの第3面部143にビス等の取付具151で取り付けられている。このガイドレール150は、上下方向の寸法を有する基部150Aと、この基部150Aの下端から扉体101の厚さ方向の点検カバー131側へ水平に延びるアーム部150Bと、このアーム部150Bの先端から立ち上がった状態になっている係合部150Cとを有する。
図9で示すように、扉体101には、扉体101の上面に結合されたローラブラケット153,154に回転自在に取り付けられた2個のローラ155,156が扉体101の開閉移動方向に配設され、ローラブラケット153,154を介して扉体101の上方に配置されているこれらの溝付きローラ155,156は、ローラ156について示している図8のとおり、扉体101の上方に不動部材となって水平に架設されてガイドレール150の係合部150Cに係合している。このため、扉体101は、ローラ155,156が係合部150C上を転動することによりガイドレール150に沿って開閉移動するとともに、扉体101は、ガイドレール150にローラ155,156及びローラブラケット153,154を介して吊り下げられた上吊り式となっている。
また、図6に示すように、戸袋103に近い前記出入口102の床104には、垂直軸を中心に回転自在となったガイドローラ157が配置され、このガイドローラ157は、図8に示すとおり、扉体101の下端に下向きに開口して配置されたチャンネル部材101Bの内部に挿入されており、ガイドレール150に沿った扉体101の開閉移動は、扉体101の下端がこのガイドローラ157に案内されながら行われる。
図9に示されているように、ガイドレール150の扉体開き移動方向の端部には、扉体101を開き限位置に停止させるためのストップ装置170が取り付けられ、このストップ装置170は、扉体閉じ方向に向けて本体171に突設されたゴム等の弾性材料からなるストップ部材172と、本体171に取り付けられ、板ばねの折り曲げで形成されている係止部材173とを有する。一方、扉体101に設けられている2個のローラブラケット153,154のうち、扉体開き方向のローラブラケット154の後端には板状の受け部材174が結合され、この受け部材174には、小径ローラによる被係止部材175が取り付けられている。
扉体101を図6で示す把持部101Aで開き方向に移動させ、この移動が開き限位置に達すると、図10に示されているように、被係止部材175は、一旦上向きに湾曲変形してもとの形状に弾性復帰する係止部材173に係止されるとともに、受け部材174はストップ部材172に当接し、係止部材173が被係止部材175を係止することにより、扉体101は全開位置である開き限位置に停止する。
また、扉体101の把持部101Aに扉体閉じ方向への操作力を作用させた場合には、被係止部材175は上向きに弾性変形する係止部材173から離脱するため、扉体101は、ガイドレール150とガイドローラ157に案内されて閉じ方向へ移動する。
また、図9及び図10に示されているように、ガイドレール150の扉体閉じ方向の端部には、扉体101を自動的に閉じ移動させるための引張式駆動装置180が配置され、この駆動装置180は、図10で示されているとおり、ブラケット181がガイドレール150に取り付けられることにより、ガイドレール150に組み付けられている。
駆動装置180は、装置本体となっているケーシング180Aの内部に回転自在に収納されたリール183を有し、このリール183の内部には渦巻きばねが配置され、この渦巻きばねの一端はリール183に結合されているとともに、他端はケーシング180Aに結合されている。また、リール183には、図9及び図10で示されているナイロン紐又はワイヤー等からなる紐状部材184の一端が結合され、この紐状部材184はケーシング180Aから導出され、紐状部材184の他端は、扉体101に2個設けられているローラブラケット153,154のうち、扉体閉じ方向のローラブラケット153に結合されている。
図9で示すように全閉位置である閉じ限位置に達している扉体101を把持部101Aにより図10で示すように開き方向へ移動させたときには、紐状部材184がリール183を回転させながら駆動装置180から繰り出され、このとき、リール183の内部の上述の渦巻きばねがリール183の回転で蓄圧されるようになっている。このため、この後に把持部101Aから手を離すと(扉体101が図10のように閉じ限位置に達しているときには、前述のように、把持部101Aに扉体閉じ方向への操作力を作用させて被係止部材175を係止部材173から離脱させると)、渦巻きばねの蓄圧力によってリール183には、扉体101の開き移動時とは逆方向へリール183を回転させようとする回転力が作用しているため、この回転力で緊張する紐状部材184の引張力により、扉体101は閉じ方向へ引っ張られ、これにより、扉体101は閉じ限位置まで自動的に移動する。
図9及び図10に示すように、ガイドレール150には、閉じ方向への扉体101の移動速度を低速化させて制動させ、扉体101を閉じ限位置に減速させて到達させるための制動装置190が取り付けられている。この制動装置190は、シリンダ本体191と、シリンダ本体191にガイドレール150の長さ方向に伸縮自在に挿入されたピストンロッド192とを有するシリンダ装置で構成され、シリンダ本体191は、不動部材となっているガイドレール150に取り付けられている。
図9及び図10で示すように、扉体101に2個設けられているローラブラケット153,154のうち、扉体開き方向のローラブラケット154には、ピストンロッド192の先端部が挿抜自在となったキャッチ部材194が取り付けられ、ピストンロッド192の先端部と、この先端部が挿入されるキャッチ部材194の内部とのうち、一方には磁石が設けられ、他方にはこの磁石に吸着する磁性材料が設けられている。このため、ピストンロッド192とキャッチ部材194とは、磁力で接続分離自在となっている。
図9に示すように扉体101が閉じ限位置に達しているときには、シリンダ本体191に対して収縮しているピストンロッド192の先端部がキャッチ部材194の内部に挿入された状態になっており、扉体101を開き方向へ移動させると、ピストンロッド192の先端部とキャッチ部材194とが上記磁力で接続されているため、ピストンロッド192はシリンダ本体191に対して伸び作動する。このピストンロッド192が伸び作動限に達してもさらに扉体101が開き方向に移動すると、図10に示すように、ピストンロッド192とキャッチ部材194とが分離し、ピストンロッド192はその位置で停止する。また、扉体101が前述の引張式駆動装置180の駆動力で閉じ方向へ移動し始め、そして、この扉体101が所定位置に達すると、キャッチ部材194はピストンロッド192に当接してこれらのキャッチ部材194とピストンロッド192とが上記磁力で再度接続され、扉体101がさらに閉じ方向へ移動することにより、ピストンロッド192はシリンダ本体191に対して収縮作動する。
なお、ピストンロッド192の先端部と、この先端部が挿入されるキャッチ部材194の内部とに互いに磁性が逆となった磁石を設けることにより、ピストンロッド192とキャッチ部材194とを上述と同様に接続分離自在としてよい。
シリンダ本体191には、ピストンロッド192が伸び作動したときに多量のエアをシリンダ本体191の内部に吸引し、ピストンロッド192が収縮作動したときにはこのエアを絞りながら排出するバルブが設けられている。このため、ピストンロッド192が伸び作動する扉体101の開き移動時には、扉体101を軽く移動させることができ、また、ピストンロッド192が収縮作動する扉体101の閉じ移動時には、扉体101がシリンダ本体191の内部のエア圧力によって制動されながら移動し、これにより、扉体101は、減速された速度で閉じ限位置に達するようになっている。
このため、本実施形態における制動装置190は、シリンダ装置による流体圧力式制動装置となっている。
なお、制動装置を、シリンダ装置によるものとせず、この制動装置を、扉体の閉じ移動がラック及びピニオンを介して回転運動として伝達されるロータリ式のオイルダンパーとしてもよい。
図8で説明したように、この実施形態に係る無目110の背面部110Bにも、図2及び図3で示した無目4の背面部4Bと同じく、内側突出部143が設けられているため、この背面部110Bの全体は平坦部になっていないとともに、背面部110Bの断面係数は、この内側突出部143により大きくなっている。そして、扉体101の開閉移動を案内するガイド手段となっていて、背面部110Bに沿って配置されるガイドレール150は、この内側突出部143に取付具151で取り付けられており、この取り付けのために必要される強度が、上記断面係数により大きくなっているため、この実施形態でも、無目110の背面部110Bに、ガイドレール150を取り付けるための取付部材を設けることが省略できることになる。
また、内側突出部143の外側には空間S11が設けられ、このため、内側突出部43にガイドレール150を取り付けるために、取付具151の軸部を内側突出部143に貫通させたときに、この取付具151の先端151Aをこの空間S1に突出させることができ、これにより、ガイドレール150を取付具151による大きな強度で無目110に取り付けることが可能となる。また、取付具151の先端151Aが壁105の構成部材となっている外側壁材130に到達してこの外側壁材130と干渉することはないため、取付具151によってガイドレール150を無目110に取り付けるための作業を容易に行える。
この実施形態における前述の外側突出空間部S12には、何も収納しなくてよく、あるいは、引張式駆動装置180や制動装置に関係する部材、例えば、引張式駆動装置180の引張力調整工具や制動装置の制動力調整工具を両面テープ等の固定手段により固定して収納してもよい。
図11は、図6のS11−S11線断面図である。前述の縦枠部材111には、扉体101が全閉位置に達して出入口102を閉じたときにこの扉体101の先端に設けられている先端部材101Cが当接する凹部111Aが形成されており、この凹部111Aは、板金の折り曲げ品となっている縦枠部材111に1回のプレス加工を行うことにより凹部111Aを形成できるように、深さが浅くなった溝状として形成されている。この凹部111Aの深さは、先端部材101Cの扉体開閉移動方向の寸法と同じ又は略同じであり、又はこの寸法よりも小さくなっている。また、凹部111Aの深さは、縦枠部材111の扉体開閉移動方向の寸法の半分と同じ又は略同じであり、又はこの寸法よりも小さくなっており、又は縦枠部材111の扉体開閉移動方向の寸法の2分の1から4分の1の範囲の寸法となっている。