JP4540823B2 - 引戸装置の外枠組み部材補強構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、引戸装置の引戸本体で開閉される開口部の外周を形成する外枠組み部材の補強構造に係り、例えば、引戸本体が上方のガイド部材から吊り下げられた上吊り式引戸装置等の各種引戸装置に利用できるものである。
【0002】
【背景技術】
上吊り式引戸装置では、引戸本体が移動することにより、この引戸本体の移動機構が収納された無目と、縦枠と、戸袋と、床とに囲まれて形成された開口部の開閉がなされ、引戸本体は、無目に収納されている移動機構のガイド部材から移動自在に吊り下げられている。無目と縦枠は、開口部の外周を形成する外枠組み部材となっており、戸袋の開口部側の端部に、この端部を形成する端部部材が設けられている場合には、この端部部材も開口部の外周を形成する外枠組み部材となる。
【0003】
これらの外枠組み部材は工場で製造され、そして、引戸装置が設置される建物の施工現場へ搬送され、施工現場において、それぞれの外枠組み部材を組み合わせることにより引戸本体の移動で開閉される開口部を形成する作業が行われるとともに、無目の内部に収納された移動機構に引戸本体を移動自在に吊り下げ連結する作業が行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
外枠組み部材は一般的に板金で製造され、また、外枠組み部材は引戸本体の幅寸法、縦寸法に対応した長い長さを有し、移動機構が収納される無目が、前記開口部と、開き移動した引戸本体が収納される戸袋とに跨る長さになっている場合には、この無目は引戸本体の幅寸法の略2倍となった長さを有するものとなる。
【0005】
このような長い長さとなっている外枠組み部材は撓みやすく、外枠組み部材が撓んだときには、工場から施工現場への搬送作業時及び施工現場での組み合わせ作業時等における取り扱いに手間がかかることになり、作業性が低下するという問題が生ずる
本発明の目的は、引戸本体の移動で開閉される開口部を形成する外枠組み部材の撓み強度を大きくし、外枠組み部材を容易に取り扱えるようになる引戸装置の外枠組み部材補強構造を提供するところにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る引戸装置の外枠組み部材補強構造は、移動可能な引戸本体と、この引戸本体が移動することにより開閉される開口部の外周の少なくとも一部を形成する外枠組み部材とを有している引戸装置の外枠組み部材補強構造であって、前記外枠組み部材に、この外枠組み部材の長手方向に延びる段状部が形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
この外枠組み部材補強構造によると、外枠組み部材には、この外枠組み部材の長さ方向に延びる段状部が形成されているため、この段状部によって外枠組み部材の撓み強度が大きくなる。このため、外枠組み部材の取り扱いを外枠組み部材が撓むことなく又は撓み量を少なく抑えて行えることになり、工場から引戸装置の施工現場への外枠組み部材の搬送作業、施工現場での外枠組み部材同士の組み合わせ作業等を容易に行え、外枠組み部材の取り扱いが容易になることから、作業性が向上する。
【0008】
この外枠組み部材の補強構造において、段状部は外枠組み部材の長さ方向に連続して形成してもよく、不連続に形成してもよく、また、外枠組み部材の長さ方向の一方の端部から他方の端部まで形成してもよく、これらの端部のうちの少なくとも一方には達しないで形成してもよい。
【0009】
また、段状部は、外枠組み部材の内側にへこんだ窪み状に1条だけ設けられたものでもよく、外枠組み部材の外側に突出した突状に1条だけ設けられたものでもよい。さらに、段状部は凹部でもよく、凸部でもよい。段状部をこのような凹部又は凸部とすると、互いに向かい合って外枠組み部材の内側にへこんだ又は外側に突出した2条の窪み部、突部が形成されることになるため、外枠組み部材の撓み強度はそれだけ増加する。このような窪み部、突部及び凹部、凸部は1段だけでもよく、複数段形成してもよい。すなわち、凹部では、幅広の凹部の内部に幅狭の凹部又は凸部を形成してもよく、凸部では、幅広の凸部の幅内に幅狭の凸部又は凹部を形成してもよい。
【0010】
このような段状部を形成する外枠組み部材は、引戸本体で開閉される開口部の側部を形成するものでもよく、上部を形成するものでもよく、開口部の下部が床ではなく、この下部が外枠組み部材で形成されるタイプの引戸装置の場合には、この下部を形成する外枠組み部材でもよい。
【0011】
すなわち、この外枠組み部材を含んで形成される外枠組み体は、左右の側部と上部とを形成する複数の枠部材からなる三方枠でもよく、これに下部を形成する枠部材が加えられた四方枠でもよい。
【0012】
また、この外枠組み体の内側に移動自在に配置される前記引戸本体は1個でもよく、複数個でもよい。外枠組み体の内側に複数個の引戸本体を互いに隣り合わせて配置する場合には、これらの引戸本体は引き分け式のものでもよく、引き違い式のものでもよく、また、これら両方の方式を組み合わせたものでもよい。
【0013】
さらに、外枠組み体の内側に、戸袋を備えない引戸装置の場合には、引戸本体だけを配置してもよく、引戸本体と他の部材、手段、装置とを並設等して配置してもよく、また、戸袋を備える引戸装置の場合には、引戸本体と戸袋だけを配置してもよく、引戸本体と戸袋と他の部材、手段、装置等とを並設等して配置してもよい。これらの場合における上記他の部材、手段、装置は、例えば、開き戸装置、開き戸本体、折れ戸装置、折れ戸本体等の開閉装置やその開閉本体、通気用パネル、遮光パネル、透光パネル、透かしパネル、飾りパネル等の不動部材である。
【0014】
また、外枠組み部材に段状部を形成する引戸装置は、引戸本体を移動させるための移動機構が収納された無目等の枠体を有し、この枠体が前記開口部の外枠組み部材になっているタイプの引戸装置でもよく、引戸本体を移動させるための移動機構が外枠組み部材に収納されていないタイプの引戸装置でもよい。
【0015】
ここでいう移動機構とは、引戸本体の移動を案内するガイド部材と、このガイド部材に案内させて引戸本体を移動させる駆動装置とを備えたものでもよく、ガイド部材だけのものでもよい。
【0016】
そして、駆動装置を備えた移動機構は、引戸本体を自動的に移動させるもので、その自動的移動方向は開方向と閉方向のいずれか一方でもよく、両方でもよい。
【0017】
また移動機構がガイド部材だけとなっている引戸装置は、引戸本体の移動が人手操作によってなされるものでもよく、自動的になされるものでもよい。引戸本体の移動が自動的になされる構造は、例えば、ガイド部材が下り傾斜に固定的に又は可変に配置され、この下り傾斜の方向へ引戸本体を自動的に移動させるようになっているものでもよい。この場合におけるガイド部材は、引戸本体の移動方向へ連続した1本のものでもよく、途中で分割されて複数本となったものでもよい。
【0018】
上記駆動装置は任意な形式、構造のものでよく、例えば、蓄圧されたばね力によって引戸本体を引っ張り移動させる渦巻きばね式のものでもよく、シリンダで引戸本体を移動させるシリンダ式のものでもよく、モータで回転するピニオンで引戸本体を移動させるモータ式のものでもよく、電磁石の吸引力、反発力で引戸本体を移動させるリニアモータ式のもの等でもよい。
【0019】
また、以上におけるガイド部材はガイドレールでもよく、スライディングレールでもよい。
【0020】
さらに本発明が適用される引戸装置は上吊り式タイプのもの、すなわち、上記移動機構が引戸本体の上方に配置され、この移動機構のガイド部材から引戸本体が吊り下げられたタイプのものでもよく、これ以外のタイプのもの、例えば、引戸本体の下方にガイドレールが配置され、このガイドレールに案内されて引戸本体が移動するタイプのもの等でもよい。
【0021】
また、前記段状部が形成された外枠組み部材が、移動機構が収納された無目等の枠体である場合において、この枠体は、移動機構が収納された枠体本体と、この枠体本体に取り外し自在に取り付けられ、取り外すことにより移動機構の点検、修理等を行えるカバーとを含んで構成されたものでもよく、このようなカバーを含まないで構成されたものでもよい。
【0022】
前者の場合には、前記段状部は枠体本体に形成してもよく、カバーに形成してもよく、これらの両方に形成してもよい。
【0023】
また、段状部が凹部である場合には、この凹部を何かを表示するために有効利用してもよく、何も表示せず、そのままとしてもよい。
【0024】
凹部を何かを表示するために有効利用する場合におけるその表示内容は任意であり、その一例は、引戸装置に関係した表示内容である。この表示内容は、例えば、引戸装置で仕切られる両方又は一方の空間の名称や番号、その空間の所有者名、その空間の占有者名、その空間の担当者名、引戸装置の使用方法の説明や注意書き、引戸装置の形式や名称、引戸装置のメインテナンスのための連絡先等である。
【0025】
なお、これらの表示内容は、文字によるものでもよく、絵、図柄、色彩、写真等によるものでもよく、これらを組み合わせたものでもよい。
【0026】
このような表示内容は、外枠組み部材とは別部材として製作した表示部材に記載し、この表示部材を上記凹部に接着剤又はビス等の止着具又は両面粘着テープ又はベルクロ又はマグネットなどの固定手段で、あるいは表示部材自体をマグネット製とすることによって外枠組み部材に取り付けることにより、凹部に表示するようにしてもよく、また、凹部に塗料又は印刷等で直接表示するようにしてもよい。
【0027】
このような表示内容が表示される段状部が凹部になっていると、表示内容が表示部材に表示されている場合には、この表示部材の厚さが凹部の深さよりも小さければ、表示内容が何かにこすれて消失するおそれがなく、また、表示内容が凹部に直接表示されている場合にも、表示内容が何かにこすれて消失するおそれはない。
【0028】
表示内容を表示部材に表示する場合には、その表示部材はパネルでもよく、シールでもよく、シートでもよく、フィルム等でもよい。また、表示内容を表示するものを表示内容が可変になっている装置としてもよく、この装置の一例は、液晶を含む電光式の表示装置であり、また、他の例は、複数のコマのそれぞれに表示内容を表示したフィルム等の送り部材をコマごとに送り移動させる方式の表示装置である。
【0029】
移動機構が収納された前記枠体が角度をなす複数の面を有するものとなっている場合には、以上の凹部等の段状部は一つの面だけに形成してもよく、複数の面に形成してもよい。複数の面に形成すると、段状部の個数がそれだけ増加し、かつ、これらの段状部は角度をなす複数の面に形成されるため、枠体の撓み強度は一層大きくなる。
【0030】
前記枠体に形成される段状部が凹部であって、この枠体と対向して配置された対向部材があり、これらの枠体と対向部材との間に中間部材が配置される場合には、この中間部材の端部を前記凹部に嵌合してもよい。
【0031】
これによると、枠体の撓み強度を確保するために枠体に形成した凹部を中間部材の端部を嵌合させるために有効利用できることになる。
【0032】
この場合における中間部材は、枠体と対向部材との間に配置される部材であれば任意な部材でよく、例えば、枠体と対向部材との間を遮断するための遮断部材、枠体と対向部材との間で採光性を確保するための採光部材、枠体と対向部材との間で通気性を確保するための通気部材等でよい。したがって、中間部材の具体例は、金属製又はガラス製又は合成樹脂製又は木製等の不透明パネル、ガラス製又は合成樹脂製等の透明又は半透明パネル、欄間、嵌め殺し窓、障子、回転窓、ガラリ等である。
【0033】
以上の本発明において、前記移動機構が収納された枠体の長さは、引戸本体によって開閉される前記開口部の引戸本体移動方向の寸法と対応するものになっていてもよく、あるいは、この開口部の引戸本体移動方向の寸法に、引戸本体の引戸本体移動方向の寸法を加えたものと略等しい寸法になっていてもよい。
【0034】
後者では、枠体は前記開口部を開いた引戸本体の後退位置まで延びていて、枠体の長さが引戸本体の引戸本体移動方向の寸法の略2倍となり、枠体の長さは前者よりも長くなるため、それだけ枠体は撓み易くなるが、このような枠体に前記段状部を形成することにより、その撓みに対する強度を付与できるため、後者の枠体に段状部を形成した場合に、本発明の効果は一層有効に発揮される。
【0035】
本発明は、引戸本体が前記開口部を開いたときにこの引戸本体を収納する戸袋を備えている引戸装置にも適用でき、戸袋を備えていない引戸装置にも適用できる。戸袋を備えている引戸装置では、その戸袋は露出して設けられたものでもよく、壁、柱等の内部に収納されて設けられたものでもよい。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。初めに、本実施形態に係る引戸装置の全体を説明する。
【0037】
図1は、本実施形態に係る引戸装置の全体を示す正面図である。この引戸装置は、建物内の廊下と部屋との間を開閉自在に仕切るための室内用仕切り手段として使用され、引戸本体1は把持部1Aを把持することにより左右動させることができ、左右動すると引戸本体1は、無目2と縦枠3と戸袋4と床5とに囲まれて形成されている出入口用の開口部6を開閉し、この開口部6を開いたときの引戸本体1の大部分は戸袋4に収納される。引戸本体1が引戸装置の可動部材になっているのに対して、無目2、縦枠3及び戸袋4の構成部材は引戸装置の不動部材となっており、開口部6から戸袋4に跨る長さを有している無目2は、無目本体2Aと、この無目本体2Aに止め具、具体的には止めねじ7で取り付け、取り外し自在となった点検用カバー2Bとからなる。
【0038】
図2及び図3には、この点検用カバー2Bを取り外して示した無目本体2Aの内部構造が示されている。この無目本体2Aの内部には引戸本体1を移動させるための移動機構が収納されている。したがって、本実施形態では、無目本体2Aとカバー2Bとで構成される無目2により、移動機構が収納されている枠体が形成され、カバー2Bを取り外すことにより、無目本体2A内に配置された移動機構の点検、修理等のメインテナンス作業を行えるようになっている。
【0039】
図2は、この移動機構によって引戸本体1が閉じ限位置に達しているときを示し、図3は、引戸本体1が開き限位置に達しているときを示す。また、図4は、図2のS4−S4線断面図であって引戸本体1の下部まで示した図である。
【0040】
図2に示すように、無目2の内部には引戸本体1の移動を案内するためのガイド部材であるガイドレール10が組み込まれ、上記移動機構を形成する部材であって、無目2の略全長に亘る長さを有するガイドレール10は、図4に示すとおり、無目2の内部に設けられている取付部材11にビス12と板ナット12Aで取り付けられている。同一断面形状が長さ方向に連続しているこのガイドレール10は、ビス12と板ナット12Aで取付部材11に取り付けられた基部10Aと、この基部10Aの下端から引戸本体1の厚さ方向に水平に延びるアーム部10Bと、このアーム部10Bの先端から垂直に立ち上がった係合部10Cとを有する。
【0041】
図2で示すように、引戸本体1には、ローラブラケット13,14に回転自在に取り付けられた2個のローラ15,16が引戸本体1の移動方向に配設され、ローラブラケット13,14を介して引戸本体1の上方に配置されているこれらのローラ15,16は、図4に示すように、引戸本体1の上方に不動部材となって水平に架設されてガイドレール10の係合部10Cに係合している。このため、引戸本体1は、ローラ15,16が係合部10C上を転動することによりガイドレール10に沿って移動するとともに、引戸本体1は、ガイドレール10の係合部10Cに係合したローラ15,16に吊り下げられた上吊り式となっている。
【0042】
また、図1に示すように、戸袋4に近い床5には、垂直軸を中心に回転自在となったガイドローラ17が配置され、このガイドローラ17は、図4に示すとおり、引戸本体1の下端に下向きに開口して配置されたチャンネル部材1Bの内部に挿入されており、ガイドレール10に沿った引戸本体1の移動は、引戸本体1の下端がこのガイドローラ17に案内されながらなされる。
【0043】
図2に示されているように、ガイドレール10の引戸本体開き側の端部には、引戸本体1を開き限位置に停止させるためのストップ装置20が取り付けられ、このストップ装置20は、引戸本体閉じ側に向けて本体21に突設されたゴム等の弾性材料からなるストップ部材22と、本体21に取り付けられ、板ばねの折り曲げで形成されている係止部材23とを有する。一方、引戸本体1に設けられている2個のローラブラケット13,14のうち、引戸本体開き側のローラブラケット14の後端には板状の受け部材24が結合され、この受け部材24には小径ローラによる被係止部材25が取り付けられている。
【0044】
引戸本体1を前記把持部1Aで開き側に移動させ、この移動が開き限位置に達すると、図3に示されているように、被係止部材25は、一旦上向きに湾曲変形してもとの形状に弾性復帰する係止部材23に係止されるとともに、受け部材24はストップ部材22に当接し、係止部材23が被係止部材25を係止することにより、引戸本体1は開き限位置に停止する。
【0045】
また、引戸本体1の把持部1Aに引戸本体閉じ側への操作力を作用させた場合には、被係止部材25は上向きに弾性変形する係止部材23から離脱するため、ガイドレール10とガイドローラ17に案内されて閉じ側へ移動する。
【0046】
また、図2及び図3に示されているように、ガイドレール10の引戸本体閉じ側の端部には、引戸本体1を閉じ移動させるための駆動装置30が配置され、この駆動装置30は、図3で示されているとおり、ブラケット31がガイドレール10に取り付けられることにより、ガイドレール10に組み付けられている。
【0047】
駆動装置30はケーシング30A内に回転自在に収納されたリール33を有し、このリール33の内部には渦巻きばねが配置され、この渦巻きばねの一端はリール33に結合されているとともに、他端はケーシング30Aに結合されている。また、リール33には、図2及び図3で示されているナイロン紐又はワイヤー等からなる紐状部材34の一端が結合され、この紐状部材34はケーシング30Aから導出され、紐状部材34の他端は、引戸本体1に2個設けられているローラブラケット13,14のうちの引戸本体閉じ側のローラブラケット13に結合されている。
【0048】
図2で示すように閉じ限位置に達している引戸本体1を把持部1Aで図3で示すように開き側へ移動させたときには、紐状部材34がリール33を回転させながら駆動装置30から繰り出され、このとき、リール33の内部の上記渦巻きばねがリール33の回転で蓄圧されるようになっている。このため、この後に把持部1Aから手を離すと(引戸本体1が図3のように閉じ限位置に達しているときには、前述のように、把持部1Aに操作力を作用させて被係止部材25を係止部材23から離脱させると)、渦巻きばねの蓄圧力によってリール33には、引戸本体1の開き移動時とは逆方向へリール33を回転させようとする回転力が生じているため、この回転力で緊張している紐状部材34の引張力によって引戸本体1は閉じ側へ引っ張られ、閉じ限位置まで自動的に移動する。
【0049】
したがって、本実施形態における引戸本体1を閉じ側へ自動的に移動させるための駆動装置30は渦巻きばね式であるとともに、紐状部材34の引張力による引張式駆動装置となっており、リール33と渦巻きばねとによって、不動部材であるガイドレール10に取り付けられていて、紐状部材34に引張力を付与するための引張力付与手段37が構成されている。
【0050】
図2及び図3に示すように、ガイドレール10には、閉じ側への引戸本体1の移動速度を低速化させて制動させ、引戸本体1を閉じ限位置に減速させて到達させるための制動装置40が取り付けられている。この制動装置40は、シリンダ本体41と、シリンダ本体41にガイドレール10の長さ方向に伸縮自在に挿入されたピストンロッド42とを有するシリンダ装置で構成され、シリンダ本体41は、不動部材となっているガイドレール10に取り付けられている。この取り付けは、図4に示すとおり、ガイドレール10の溝10D付きの取付部10Eにビス43と板ナット43Aでなされている。
【0051】
図2及び図3で示すように、引戸本体1に2個設けられているローラブラケット13,14のうち、引戸本体開き側のローラブラケット14には、ピストンロッド42の先端部が挿抜自在となったキャッチ部材44が取り付けられ、ピストンロッド42の先端部と、この先端部が挿入されるキャッチ部材44の内部とのうち、一方には磁石が設けられ、他方にはこの磁石に吸着する磁性材料が設けられている。このため、ピストンロッド42とキャッチ部材44とは、磁力で接続分離自在となっている。
【0052】
図2に示すように引戸本体1が閉じ限位置に達しているときには、シリンダ本体41に対して収縮しているピストンロッド42の先端部がキャッチ部材44の内部に挿入された状態になっており、引戸本体1を開き側へ移動させると、ピストンロッド42の先端部とキャッチ部材44とが上記磁力で接続されているため、ピストンロッド42はシリンダ本体41に対して伸び作動する。このピストンロッド42が伸び作動限に達してもさらに引戸本体1が開き側に移動すると、図3に示すように、ピストンロッド42とキャッチ部材44とが分離し、ピストンロッド42はその位置で停止する。また、引戸本体1が前記引張式駆動装置30の駆動力で閉じ側へ移動し始め、そして引戸本体1が所定位置に達すると、キャッチ部材44はピストンロッド42に当接してこれらのキャッチ部材44とピストンロッド42とが上記磁力で再度接続され、引戸本体1がさらに閉じ側へ移動することにより、ピストンロッド42はシリンダ本体41に対して収縮作動する。
【0053】
なお、ピストンロッド42の先端部と、この先端部が挿入されるキャッチ部材44の内部とに互いに磁性が逆となった磁石を設けることにより、ピストンロッド42とキャッチ部材44とを上記と同様に接続分離自在としてよい。
【0054】
シリンダ本体41には、ピストンロッド42が伸び作動したときに多量のエアをシリンダ本体41の内部に吸引し、ピストンロッド42が収縮作動したときにはこのエアを絞りながら排出するバルブが設けられている。このため、ピストンロッド42が伸び作動する引戸本体1の開き移動時には、引戸本体1を軽く移動させることができ、また、ピストンロッド42が収縮作動する引戸本体1の閉じ移動時には、引戸本体1がシリンダ本体41の内部のエア圧力によって制動されながら移動し、減速された速度で閉じ限位置に達するようになっている。
【0055】
このため、本実施形態における制動装置40は、シリンダ装置による流体圧力式制動装置となっている。
【0056】
以上説明したストップ装置20と駆動装置30と制動装置40はガイドレール10に取り付けられるものとなっているため、これらの装置20,30,40を引戸装置の各部品が生産される工場で予めガイドレール10に取り付けることにより、ガイドレール10とストップ装置20と駆動装置30と制動装置40とで構成された構造体をユニット化されたユニット構造体として引戸装置の施工現場に搬送することができ、施工現場での作業をそれだけ簡単化することができる。
【0057】
なお、このようにストップ装置20と駆動装置30と制動装置40の取り付けによってユニット構造体の一部となったガイドレール10を前記無目2の取付部材11に取り付ける作業は、工場で行ってもよく、引戸装置の施工現場で行ってもよい。
【0058】
前述したように、引戸本体1の移動機構が収納されている図1の無目2は、無目本体2Aと、この無目本体2Aに止めねじ7で取り付け、取り外し自在となっているカバー2Bとからなり、図5は、カバー2Bの一部を拡大した斜視図である。このカバー2Bは、図1に示されているように、無目2の全長に亘る長さを有する細長の部材になっているとともに、図4にも示されているように、上下部には無目2の内側に延びる内側延出部51,52が形成されている。これらの内側延出部51,52の間には、無目2の内側へ浅く窪んだ段状部である凹部53が形成され、この凹部53の上下寸法は、カバー2Bの上下寸法の半分以上、図示例では3分の2以上を占めているとともに、凹部53はカバー2Bの全長に亘って連続して形成されている。この凹部53の内部には表示部材54が取り付けられ、この表示部材54の厚さは凹部53の深さよりも小さい。
【0059】
また、図4に示されているとおり、無目本体2Aは、上面部55と、カバー2Bが配置される部分の上側に形成されている一方の側面部56と、他方の側面部57とを有し、この側面部57の下端には、無目2の内側へ延びる内側延出部58が形成されている。また、側面部57には、無目2の内側へ浅く窪んだ段状部である凹部59が形成され、この凹部59の上下寸法は、無目本体2Aの上下寸法の半分以上を占めているとともに、凹部59は無目本体2Aの全長に亘って連続して形成されている。この凹部59の内部には表示部材60が取り付けられ、この表示部材60の厚さも凹部59の深さよりも小さい。
【0060】
以上の表示部材54,60の表面には本実施形態の引戸装置に関係した表示内容が表示されており、この表示内容の一例は本実施形態の引戸装置で仕切られる両方の空間の名称であり、これ以外に、本実施形態の引戸装置の用途、設置場所等に応じてこの引戸装置に関係した任意な内容を表示できる。
【0061】
また、図1で示されている凹部53の表示部材54のように、凹部53,59に配置する表示部材54,60の個数は、それぞれの凹部53,59について複数個としてもよく、それぞれの凹部53,60について1個としてもよく、一方の凹部については複数個で、他方の凹部については1個としてもよい。
【0062】
図6〜図8は、カバー2Bを無目本体2Aに止めるために図1の左側の前記止めねじ7が螺入される部材65を示した図であり、図6は、カバー2Bを取り外して示すその部材65の正面図、図7は、図6のS7−S7線断面図、図8は図6の左側面図である。
【0063】
部材65は、図1で示した無目本体2Aと縦枠3とを連結するための連結部材ともなっており、この連結のために、結合部材65は、図6〜図8に示されているように、上下方向に延びる主部65Aと、この主部65Aの両側から無目2の内側へ段状に窪んだ段部65B,65Cと、これらの段部65B、65Cのそれぞれ上下部から無目2の内部へ突出した突出片65D,65E,65F,65Gとを有する。突出片65D,65F,65Gは、図8で示すように、無目本体2Aの一方の側面部56と他方の側面部57に溶接又はビス等の止着具で結合され、また、図7で示すように、主部65Aには縦枠3の凹部3Aが嵌合され、主部65Aの裏面に予め溶接で取り付けられているナット66にボルト67を縦枠3側から螺入することにより、連結部材65に縦枠3が結合される。これにより、連結部材65を介して無目本体2Aと縦枠3とが連結される。
【0064】
図6で示す突出片65Eには雌ねじ孔68が形成されており、この雌ねじ孔68に、図5で示すようにカバー2Bに形成されている孔69に挿入される図1の左側の止めねじ7のねじ軸部7Aを螺入することにより、図1のカバー2Bの左端部はこの止めねじ7で無目本体2Aに取り付けられる。
【0065】
また、図6〜図8で示した連結部材65と同様の連結部材によって図1で示す無目本体2Aと引戸本体開き側の縦枠70とが連結されており、この連結部材にも雌ねじ孔が形成された突出片が設けられているため、図1の右側の止めねじ7のねじ軸部が、カバー2Bの右端部に形成されている孔に挿入されてからこの突出片の雌ねじ孔に螺入されることにより、カバー2Bの図1の右端部はこの止めねじで無目2に取り付けられる。
【0066】
また、図6〜図8で示した連結部材65の主部65Aの下部には、折り曲げにより無目2の内側へ延びる延出部65Hが設けられており、この延出部65Hには、図7で示すとおり、無目2の内側にU字状に開口する開口部71が形成されている。図6及び図8に示すように、延出部65Hの下面には板状の補助材72がビス73で結合され、この補助材72には、図7で示すとおり、U字状開口部71と一致する孔74が設けられている。
【0067】
これらのU字開口部71と孔74には、図1で示した引戸本体1に設けられている鍵装置75にキーに差し込んで回動操作したときに上昇する図6及び図7のロックバー76が挿入され、これにより、閉じ限位置に達している引戸本体1がその位置でロックされるようになっている。
【0068】
すなわち、無目本体2Aと縦枠3とを連結するための連結部材65は、引戸本体1を鍵装置75と共に閉じ限位置にロックさせておくための鍵手段を構成するものとなっている。
【0069】
以上説明した本実施形態によると、カバー2Bにはカバー2Bの長手方向に延びる凹部53が形成され、無目本体2Aにも無目本体2Aの長手方向に延びる凹部59が形成されているため、カバー2B及び無目本体2Aの撓み強度は大きくなっている。このため、カバー2B及び無目本体2Aが引戸本体1で開閉される前記開口部6と戸袋4とに跨る長い長さを有するものとなっていて、工場においてカバー2Bが無目本体2Aに止めねじ7で取り付けられる場合であっても、取り付けられない場合であっても、これらのカバー2B及び無目本体2Aを工場から引戸装置が設置される施工現場へ搬送する際、カバー2B及び無目本体2Aが撓むのを凹部53,59が防止し、少なくともこれらの凹部53,59が形成されているカバー2Bの面、無目本体2Aの面が撓むのを防止でき、このため、工場から施工現場への搬送するときの取り扱い性が向上する。また、施工現場において前記連結部材65により無目本体2Aに縦枠3を連結し、これにより引戸本体1で開閉される図1の開口部6を形成する作業などを行う際も、カバー2B及び無目本体2Aの撓みは凹部53,59で防止されるため、このときの取り扱い性も向上する。
【0070】
また、凹部53,59には、表面に引戸装置と関係した内容が表示された表示部材54,60が取り付けられているため、これらの凹部53,59を引戸装置と関係した内容を表示するための箇所としても有効に利用できる。
【0071】
さらに、凹部53,59の深さは表示部材54,60の厚さよりも大きいため、表示部材54,60の表面に表示された字、図形等による表示内容が何かにこすれて消失するのを防止できる。
【0072】
また、これらの表示部材54,60を凹部53,59に取り付ける作業は施工現場で全部の作業が終了した後に行ってもよいが、工場で予め表示部材54,60をカバー2B、無目本体2Aの凹部53,59に取り付けておき、そして、これらのカバー2B及び無目本体2Aを施工現場に搬送し、施工現場で無目本体2Aと縦枠3とを連結部材65で連結するなどの所定の作業を行うようにした場合には、厚さを有している表示部材54,60によってカバー2B及び無目本体2Aの撓み強度が一層大きくなるため、搬送時や施工現場での取り扱い性を一層良好にできる。
【0073】
図9〜図11は、別実施形態に係る引戸装置を示す。図9はこの実施形態の引戸装置の全体正面図で、図10は、図9のS10―S10線断面図であって、無目2の内部の引戸本体1の移動機構を省略した図、図11は、図9のS11―S11線断面図である。以下の説明では、前記実施形態の部材と同じ又は対応する部材には、同一符号を付する。
【0074】
この実施形態の引戸装置では、図9に示されているように、引戸本体1の開閉方向の両端部に配置されている縦枠3と70の上端は、天井80に取り付けられた上枠81に達する位置まで延長されている。すなわち、天井80には無目2と平行に対向する対向部材となっている上枠81が設けられており、無目2と上枠81との間には、無目2と上枠81の長さを二等分する位置において中柱82が立設されている。これらの無目2と上枠81と中柱82と縦枠3,70とで囲まれる空間には中間部材83が配置されている。これらの中間部材83を配置するために、図10に示すように、無目本体2Aの上面部55には段状部である凹部84が無目本体2Aの全長に亘って連続して形成され、上枠81の下面にも凹部85が上枠81の全長に亘って連続して形成されている。さらに、図11に示すように、中柱82の両側面には凹部86が形成され、縦枠3,70のうちの中柱82と左右に対向する部分にも、凹部87,88が形成されている。
【0075】
それぞれの中間部材83の上部と左右の三辺は凹部85,86,87,88に嵌合されて、凹部85,87,88に取り付けられた補助枠89で固定され、また、それぞれの中間部材83の下辺は凹部84に嵌合され、この凹部84にビス91で取り付けられた押し縁92と補助枠93とで固定されている。
【0076】
この実施形態によると、無目本体2Aの撓み強度を大きくするために無目本体2Aに段状部として形成された凹部84は、無目2と、この無目2と対向して配置された上枠81との間の中間部材83の端部を嵌合するために利用されることになる。
【0077】
また、この実施形態によると、図10に示されているとおり、直角をなす上面部55と両方の側面部56,57を有している無目本体2Aには、上面部55と側面部57に凹部59,84が形成されていることになる。このため、前記実施形態よりも無目本体2Aの撓み強度は大きくなり、工場から引戸装置の施工現場へ無目本体2Aを搬送する際、及び施工現場で無目本体2Aに縦枠3,70を連結する際などに、その取り扱いが一層容易となり、作業性がより向上することになる。
【0078】
【発明の効果】
本発明によると、引戸装置の引戸本体で開閉される開口部を形成する外枠組み部材の撓み強度を大きくでき、外枠組み部材を容易に取り扱えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る引戸装置の全体を示す正面図である。
【図2】引戸本体が閉じ限位置に達しているときの引戸本体を移動させるための移動機構を示す図である。
【図3】引戸本体が開き限位置に達しているときの引戸本体を移動させるための移動機構を示す図である。
【図4】図2のS4−S4線断面図で、引戸本体の下部まで示した図である。
【図5】引戸本体の移動機構が収納された枠体である無目のカバーの一部を拡大して示す斜視図である。
【図6】図1で示された無目本体と縦枠とを連結し、かつ無目のカバーの止めねじが螺入される雌ねじ孔が形成されている連結部材を示す正面図である。
【図7】図6のS7−S7線断面図である。
【図8】図7の左側面図である。
【図9】別実施形態に係る引戸装置の全体を示す正面図である。
【図10】図9のS10−S10線断面図であって、無目の内部の引戸本体の移動機構を省略した図である。
【図11】図9のS11−S11線断面図である。
【符号の説明】
1 引戸本体
2 引戸本体の移動機構が収納された枠体である無目
2A 無目本体
2B カバー
3,70 縦枠
6 引戸本体で開閉される開口部
10 ガイドレール
53,59,84 段状部である凹部
54,60 表示部材
81 対向部材である上枠
83 中間部材
Claims (3)
- 移動可能な引戸本体と、この引戸本体が移動することにより開閉される開口部の外周の少なくとも一部を形成する外枠組み部材とを有している引戸装置の外枠組み部材補強構造であって、
前記外枠組み部材となっていて前記引戸本体を移動させるための移動機構が収納された無目は、無目本体と、この無目本体に取り付け、取り外し自在となったカバーとを有し、細長部材となっているこのカバーの上下中間部には、前記無目の内側へ窪んだ凹部が前記カバーの長手方向に形成され、
前記凹部の内部には、表面に字、図形等が表示された表示部材が取り付けられており、
前記引戸本体は、この引戸本体の上側で前記無目の内部に組み込まれたガイドレールの係合部に転動自在に係合しているローラが取り付けられたローラブラケットが前記引戸本体の上面に結合されている上吊り式であり、
前記カバーの下端は前記引戸本体の上面よりも下側の位置に達しているとともに、このカバーの前記下端には、前記無目の内側に延びる内側延出部が形成されていることを特徴とする引戸装置の外枠組み部材補強構造。 - 請求項1に記載の引戸装置の外枠組み部材補強構造において、前記凹部は、前記カバーの全長に亘って連続して形成されていることを特徴とする引戸装置の外枠組み部材補強構造。
- 請求項1又は2に記載の引戸装置の外枠組み部材補強構造において、前記表示部材の厚さは前記凹部の深さよりも小さくなっていることを特徴とする引戸装置の外枠組み部材補強構造。
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