JP2011156870A - 光学素子及び樹脂成形用金型並びに光学素子製造方法 - Google Patents

光学素子及び樹脂成形用金型並びに光学素子製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】2つの光学機能面の芯ズレが抑えられ、2つの光学機能面間の厚みを精度良く形成できる樹脂成形用金型を得ること及び、2つの光学機能面の芯ズレが抑えられ、2つの光学機能面間の厚みが正確で、高いNA値でも安定した性能を有した光ピックアップ装置用の光学素子を得ること。
【解決手段】光学機能部1aとフランジ部1fを有し、光学機能部は、互いに向かい合う第1の光学機能面1bと第2の光学機能面1aとを有し、第1の光学機能面のほうが第2の光学機能面よりも曲率が小さく、フランジ部の第2の光学機能面側の面に、鏡枠へ装着する際に取り付け基準面となる面と、光軸から離れるに従って高さが低くなる少なくとも2段の段差が設けられている光学素子とする。
【選択図】図2

Description

本発明は光学素子及びこの光学素子を形成するための樹脂成形用金型に関するものである。
従来より、CD、DVD等の光情報記録媒体への記録、又は再生用の光ピックアップ装置用の光学素子である対物レンズは、樹脂成形されたプラスチックレンズが使用されている。
プラスチックレンズはガラスモールドレンズに比べ、比重が小さくこのため軽量化が可能である。このため、レンズを駆動するアクチュエータへの負荷を軽減でき、且つ慣性モーメントが小さいため、その応答性を向上させることが容易である利点を有している。
このような樹脂成形による光ピックアップ装置用の対物レンズとして、レンズの外周にフランジ部を設け、鏡枠やボビンに取り付ける際に鏡枠やボビンに当接する取り付け基準面とレンズ面(光学機能面)との間に凹部を設けたプラスチックレンズが知られている(例えば、特許文献1参照)。
図12は、従来技術(特許文献1)に記載された金型により成形された対物レンズ30が、光ピックアップ装置の鏡枠31に取り付けられた際の模式的断面図である。
上記特許文献1のプラスチックレンズは、鏡枠への取り付け基準面と光学機能面が別の金型によって形成されるため、取り付け基準面に対する光学機能面のティルトが生じる問題があった。ここで、ティルトとは理想光軸Oに対する傾きのことである。また、プラスチックレンズを金型から離型する際に凹部においてひずみが生じ、取り付け基準面の平面度が悪化することにより、鏡枠へのレンズ取り付け安定性が悪化するという問題もあった。これらの問題により、結果として、主にコマ収差の初期性能や安定性が悪化しやすいという課題があった。
また、近年では、従来のDVDよりさらに高密度のピットで、400nm近傍の青紫色レーザを使用し、対物レンズのNA値が0.85程度であるブルーレイディスク(BD)のような高記憶容量のディスク及び、このディスクを使用する光ピックアップ装置も実用化されている。このような青紫色レーザを使用する高記憶容量のディスクへの記録、又は再生に使用する対物レンズは、CDや従来のDVDに対応した対物レンズよりも高いNA値が必要である。
ティルトによるコマ収差の発生量は、高NA値となるほど大きくなり、上記の青紫色レーザを使用する高記憶容量のディスクに対応する対物レンズの場合には、このコマ収差を抑えることがより重要となる。
特開2002−200654号公報
本発明は上記問題に鑑み、プラスチックレンズ成形時に、取り付け基準面に対する光学機能面のティルトを軽減すると共に、取り付け基準面の平面度を確保し、結果としてコマ収差の初期性能や安定性を向上させることが可能な金型及び、それにより成形される高いNA値であるにも関わらず安定した光学性能を有する光学素子を提供することを目的とする。
更に、金型加工の難易度を低減するために、入子部である中心部材(コア)と周辺部材(キャビ)とに分けた金型にした場合、周辺部材に中心部材を組み込むために両部材の境界に隙間(クリアランス)を設ける必要が生じる。このため、レンズ成型の際に、樹脂がこの隙間に入り込み、光軸方向のバリが取り付け基準面側に発生する恐れがある。レンズをアクチュエータのボビンや鏡枠に取り付ける際に、このバリがボビンや鏡枠に接触することで鏡枠に対しレンズがティルトして取り付けられてしまい、レンズの取り付け精度が低下するという問題も起こり得ると考えられる。
そこで、本発明は、さらに上記問題を鑑み、金型を中心部材と周辺部材に分けたとしても、レンズ取り付けの際にティルトが生じず、取り付け精度を向上できる光学素子及びその光学素子を成形する金型を提供することを目的とするものでもある。
上記の目的は、下記に記載する発明により達成される。
1.光学機能部と該光学機能部の周辺にフランジ部を有し、前記光学機能部のNA値が0.7以上であって、前記光学機能部は、互いに向かい合う第1の光学機能面と第2の光学機能面とを有し、前記第1の光学機能面のほうが前記第2の光学機能面よりも曲率が小さく、前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面に、光軸から離れるに従って高さが低くなる少なくとも2段の段差が設けられていることを特徴とする光学素子。
2.前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面が鏡枠へ装着する際に基準面となることを特徴とする1に記載の光学素子。
3.以下の条件式を満たすことを特徴とする1又は2に記載の光学素子。
0.4<Lf1/LfA<1.0
但し、Lf1は前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面のうち、前記第2の光学機能面に隣接する面の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表し、LfAはフランジ部全体の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表す。
4.前記フランジ部の前記第2の光学機能面と隣接する面が、前記フランジ部のうち前記第2の光学機能面側で最も高さの高い面であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の光学素子。
5.前記フランジ部の前記第1の光学機能面側の面に、複数の凹部又は凸部が設けられていることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の光学素子。
6.前記第1の光学機能面の光軸上の高さが、前記フランジ部の前記第1の光学機能面側の面よりも突出していることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の光学素子。
7.前記第2の光学機能面側の前記フランジ部に形成された前記光軸に直交する面に、表面粗さRyが0.3μm以下となる部分を有することを特徴とする1〜6のいずれかに記載の光学素子。
8.光学機能部と該光学機能部の周辺にフランジ部を有し、前記光学機能部のNA値が0.7以上の光学素子を製造する樹脂成形用金型において、前記樹脂成形用金型は型開き状態で前記光学素子が残る第1の金型部と、型開き状態で前記光学素子が残らない第2の金型部とを有し、前記光学機能部は、互いに向かい合う第1の光学機能面と第2の光学機能面とを有し、前記第1の光学機能面のほうが前記第2の光学機能面よりも曲率が小さく、前記第1の金型部により前記第1の光学機能面が、前記第2の金型部により前記第2の光学機能面が、それぞれ形成され、前記第1の金型部に、前記フランジ部を突き出して前記第1の金型部から前記光学素子を離型させる突き出し部を設け、前記第2の金型部は、少なくとも光軸を含む中心部材とその周辺の周辺部材とを有し、前記第2の金型部の前記中心部材により、前記光学素子の前記第2の光学機能面と前記フランジ部の少なくとも一部が共に形成されることを特徴とする樹脂成形用金型。
9.以下の条件式を満たすことを特徴とする8に記載の樹脂成形用金型。
0.4<Lf1/LfA<1.0
但し、Lf1は前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面のうち、前記第2の光学機能面に隣接する面の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表し、LfAはフランジ部全体の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表す。
10.前記フランジ部の前記第2の光学機能面と隣接する面は、前記フランジ部のうち前記第2の光学機能面側で最も高さの高い面であることを特徴とする8又は9に記載の樹脂成形用金型。
11.前記中心部材は、前記フランジ部の光軸と直交する面の少なくとも一部を成形することを特徴とする8〜10のいずれかに記載の樹脂成形用金型。
12.前記周辺部材は、光軸と直交する前記フランジ部の面の他の一部を成形し、前記周辺部材により成形されたフランジ部の面は、前記中心部材により成形されたフランジ部の面よりも前記第1の光学機能面側に位置していることを特徴とする11に記載の樹脂成形用金型。
13.前記中心部材の前記フランジ部に相当する部位は段差を有し、前記周辺部材の前記フランジ部に相当する部位は前記段差と異なる高さに形成されていることを特徴とする12に記載の樹脂成形用金型。
14.光学機能部と該光学機能部の周辺にフランジ部を有し、前記光学機能部のNA値が0.7以上であって、前記光学機能部は、互いに向かい合う第1の光学機能面と第2の光学機能面とを有し、前記第1の光学機能面のほうが前記第2の光学機能面よりも曲率が小さく、前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面に、光軸から離れるに従って高さが低くなる少なくとも1段の段差が設けられていることを特徴とする光学素子。
15.前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面が鏡枠へ装着する際に基準面となることを特徴とする14に記載の光学素子。
16.以下の条件式を満たすことを特徴とする14又は15に記載の光学素子。
0.4<Lf1/LfA<1.0
但し、Lf1は前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面のうち、前記第2の光学機能面に隣接する面の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表し、LfAはフランジ部全体の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表す。
17.前記フランジ部の前記第2の光学機能面と隣接する面が、前記フランジ部のうち前記第2の光学機能面側で最も高さの高い面であることを特徴とする14〜16のいずれかに記載の光学素子。
18.前記フランジ部の前記第1の光学機能面側の面に、複数の凹部又は凸部が設けられていることを特徴とする14〜17のいずれかに記載の光学素子。
19.前記第1の光学機能面の光軸上の高さが、前記フランジ部の前記第1の光学機能面側の面よりも突出していることを特徴とする14〜18のいずれかに記載の光学素子。
20.前記第2の光学機能面側の前記フランジ部に形成された前記光軸に直交する面に、表面粗さRyが0.3μm以下となる部分を有することを特徴とする14〜19のいずれかに記載の光学素子。
21.光学機能部と該光学機能部の周辺にフランジ部を有し、前記光学機能部のNA値が0.7以上の光学素子を樹脂成形用金型で製造する光学素子製造方法であって、前記樹脂成形用金型は、前記フランジ部を突き出して離型させる突き出し部を有すると共に、型開き状態で前記光学素子が残る第1の金型部と、光学機能面と前記フランジ部の少なくとも一部が共に形成される中心部材とその周辺の周辺部材を有すると共に、型開き状態で前記光学素子が残らない第2の金型部とで構成され、前記第1の金型部で形成される光学機能面の曲率のほうが、前記第2の金型部で形成される光学機能面の曲率よりも小さく、前記第2の金型部の、前記中心部材と前記周辺部材の位置関係を予め調整し、所望の相対位置関係で固定する工程と、前記光学素子を成形する工程と、型開き後、前記光学素子の前記フランジ部を、前記突き出し部により突き出して離型する工程と、を有し、以下の条件式を満たすことを特徴とする光学素子製造方法。
0.4<Lf1/LfA<1.0
但し、Lf1は前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面のうち、前記第2の光学機能面に隣接する面の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表し、LfAはフランジ部全体の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表す。
本発明によれば、取り付け基準面を精度よく成形でき、コマ収差の初期性能や安定性を向上させることができ、加工難易度を低減させた金型及び、それによって成形される安定した性能を有した光学素子を(高いNA値であっても)提供することが可能となる。
また、金型を中心部材と周辺部材に分けたとしても、レンズを鏡枠に取り付ける際にティルトが生じず、取り付け精度を向上できる光学素子及びその光学素子を成形する金型を提供することが可能となる。
本実施の形態に係る光学素子である光ピックアップ装置用対物レンズの一例を示す側面図である。 図1に示す対物レンズを製造するための樹脂成形用金型の概略構成を示す断面図である。 図2に示す樹脂成形用金型の型開き状態及び突き出し部の作動状態を示す図3(a)、3(b)である。 図2に示す樹脂成形用金型で製造された、ゲートが付いた状態の対物レンズを示す図4(a)、4(b)である。 図2に示す金型でパーティングラインがフランジ部の厚みの間に設定された際の、フランジ部周辺の型形状を示す拡大断面図である。 本実施の形態に係る光学素子である光ピックアップ装置用対物レンズのその他の例を示す側面図である。 図6に示す対物レンズを製造するための樹脂成形用金型の概略構成を示す断面図である。 図7に示す樹脂成形用金型の型開き状態及び突き出し部の作動状態を示す図8(a)、8(b)である。 図7に示す樹脂成形用金型で製造された、ゲートが付いた状態の対物レンズを示す図9(a)、9(b)である。 図7に示す金型でパーティングラインがフランジ部の厚みの間に設定された際の、フランジ部周辺の型形状を示す拡大断面図である。 図2に示す樹脂成形用金型により成形された対物レンズがピックアップ装置の鏡枠に取り付けられた際の模式的断面図11(a)、11(b)である。 従来技術に記載された金型により成形された対物レンズが、ピックアップ装置の鏡枠に取り付けられた際の模式的断面図である。 図2に示す金型のパーティングラインの他の設定例の、フランジ部周辺の型形状を示す拡大断面図である。 図7に示す金型のパーティングラインの他の設定例の、フランジ部周辺の型形状を示す拡大断面図である。 図7に示す樹脂成形用金型により成形された対物レンズがピックアップ装置の鏡枠に取り付けられた際の模式的断面図15(a)、15(b)である。
以下、実施の形態により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図6は、本実施の形態に係る光学素子である光ピックアップ装置用対物レンズの第一の例を示す側面図である。
図6に示す光ピックアップ装置用対物レンズ1(以下、対物レンズとも称す)は、光学機能部である光学機能面1aと光学機能面1b及びこの光学機能面の周辺に形成されたフランジ部1fを有している。なお、以下で、円形の光学機能面及び円形のフランジ部を有するもので説明するが、フランジ部1fが部分的に形成されたものや外形が矩形状のものであってもよい。また、光学機能面1a、1bの少なくとも一方に輪帯状の段差を有する回折面等の光路差付与構造が形成されたものであってもよい。
図6に示す対物レンズ1は、光ピックアップ装置においては、光学機能面1bが光ディスク側に面し、光学機能面1aが光源側に面するように配置されることが好ましい。なお、本実施の形態においては、光ディスク側に面する光学機能面1bが第1の光学機能面に相当し、光源側に面する光学機能面1aが第2の光学機能面に相当する。
図6に示すように、第2の光学機能面(光学機能面1a)は光ディスク側に面する第1の光学機能面(光学機能面1b)より曲率が大きく、更に、有効径は第2の光学機能面(光学機能面1a)が第1の光学機能面(光学機能面1b)より大きいことが好ましい。また、第2の光学機能面の有効径は0.3mm以上、7mm以下であることが好ましく、0.5mm以上、4mm以下であることがより好ましい。
また、図示の如く、フランジ部1fは、最も第2の光学機能面(光学機能面1a)側に光軸Oに対し垂直な面であるフランジ面1f、更にフランジ面1fより外側に、光ディスク側に段差を有する第1の段差1fが形成されている。この第1の段差は、光軸方向から対物レンズを見た際に光軸を中心とする同心円状に設けられていることが好ましい。
図15(a)、15(b)は、図6に示す対物レンズ1がピックアップ装置の鏡枠に取り付けられた際の模式的断面図である。図15(a)は、全体を示し、図15(b)はフランジ部1f周辺を示す拡大図である。
図15(a)に示すように、対物レンズ1は、鏡枠31にフランジ部1fのフランジ面1fを当接させて固定されている。即ち、図7で示す樹脂成形用金型の断面図に描かれているところの中心部材である金型12によって形成されたフランジ面1fが、鏡枠へ取り付ける際の基準面となる。また、第1の段差1fは、鏡枠31とは隙間を有し当接していない状態とされる。
また、図15(b)に示す取り付け基準面であるフランジ面1fの径方向の幅Aは0.10〜0.80mm程度が好ましく0.20〜0.50mm程度がより好ましい。第1の段差1fの径方向の幅Bは0.01〜0.20mm程度が好ましく、0.05〜0.15mm程度がより好ましい。更に、フランジ面1fを基準とした第1の段差1fの光軸方向の段差量Dはフランジ面1f0の光軸方向の厚みを超えない範囲で0.005〜0.20mm程度が好ましく、0.02〜0.06mmであればより好ましい。フランジ面1fの光軸方向の厚みは、0.2〜1.50mm程度であることが好ましく、0.2〜1.00mmであることがより好ましい。また、フランジ面1fと第1の段差1fを接続する面は光軸に平行に形成されていることが好ましい。
また、少なくとも中心部材である金型12で形成されるフランジ面1fは少なくとも光軸に近い側の部分に表面粗さRyが0.3μm以下となる部分を有することが好ましい。フランジ面1fは、表面粗さRyが0.3μm以下であってもよいが、そうでなくてもよい。更に好ましくは、表面粗さRyが0.1μm以下となる部分を有することである。なお、表面粗さRyとは、当該面の微小凹凸における最低谷底から最大山頂までの高さのことである。また、段差の間の光軸と同じ方向の面又はテーパ面も表面粗さRyが0.3μm以上であってもよい。
改めて説明するが、図7は、図6に示す対物レンズ1を製造するための樹脂成形用金型の概略構成を示す断面図である。
図7に示す樹脂成形用金型は、パーティングラインPLを境にして第1の金型部は金型11で構成され、第2の金型部は金型12及び金型14で構成されている。また、第1の金型部である金型11が可動側、第2の金型部である金型12及び金型14が固定側の金型に相当する。
金型11には、対物レンズ1の光学機能面1bを形成するための形状11bが形成されている。更に、対物レンズ1のフランジ部1fの位置には突き出し部13が、例えば円周上の4箇所に、設けられている。この突き出し部13は、金型11に対し相対的にフランジ部1f側に移動可能とされている。この突き出し部13と金型部11は、直径のクリアランス0.001〜0.06mmで嵌合しており、更に図示の如く、金型部11内部では、突き出し部13と金型部11との間には大きな隙間が形成されている。
金型12は、金型14に対し入子部を構成している。金型12は、対物レンズ1の光学機能部のうち有効径が大きい方の光学機能面である光学機能面1a(第2光学機能面)を形成するための形状12aと、フランジ部1fの第2光学機能面側の面のうち、取り付け基準面であるフランジ面1fを形成する。また、金型14は、段差1fを形成する。即ち、金型12と金型14の境界は、取り付け基準面であるフランジ面1fと段差1fの境界線である。また、光学機能面1a(第2光学機能面)と取り付け基準面であるフランジ面1fの第2光学機能面側の面との間には凹部を形成せず、それぞれの延長線を繋いだ形状に形成されている。別の言い方をすると、フランジ部1fの第2の光学機能面1aと隣接する面1fが、フランジ部1f(1f、1f)のうち、第2の光学機能面側で最も高さの高い面に形成されていることが好ましい。なお、ここでいう「1fの高さが高い」とは、光軸方向で第2の光学機能面側に位置することを高いといい、第1の光学機能面側に位置することを低いという。即ち、図12に示すようなフランジ部の形状とはならないことが好ましい。なお、本明細書で言うところの、それぞれの延長線を繋いだ形状とは、上記のみに限るものでなく、それぞれの延長線の交点近傍でそれぞれの延長線に接するような角丸め(R)で接続した形状をも含むものである。
また、フランジ面については、別の指標として以下の条件式を満たすことが好ましい。
0.4<Lf1/LfA<1.0
f1は、フランジ部の第2の光学機能面側の面1f、1fのうち、第2の光学機能面に隣接する面1fの光軸に直交する方向の長さ(mm)を表し、LfAは、フランジ部全体1f(1f、1fを合わせたもの)の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表す。即ち、Lf1は、図15(b)でいうこところのAの長さであり、LfAは、図15(b)でいうこところのA+Bの長さであるともいえる。
f1/LfAの値を上記条件式の上限値より小さくすることにより、フランジ部の前記第2の光学機能面側の面に、少なくとも1段の段差を設けることが可能となり好ましい。一方、金型12上の面1fに対応する部分を加工する観点からはLf1/LfAの値が小さい方が好ましいが、取り付け基準面に対する光学機能面のティルトを軽減すると共に、取り付け基準面の平面度を確保するためには、Lf1/LfAの値を上記条件式の下限値より大きくすることが好ましい。
更に好ましくは、以下の条件式を満たすことである。
0.6<Lf1/LfA<1.0
また、以下の条件式を満たすことがより一層好ましい。
0.6<Lf1/LfA<0.9
なお、中心部材である金型12において、第2光学機能面とフランジ部の第2光学機能面側の面とが一体に形成されていることにより、対物レンズの取り付け基準面であるフランジ部の第2光学機能面側の面と、第2光学機能面(光学機能面1a)との位置関係にズレを生じる余地がなく、取り付け基準面に対し第2光学機能面(光学機能面1a)の位置を正確に形成することが可能となり、安定した性能を有した光ピックアップ装置用対物レンズを得ることが可能となる。
更に、金型12は金型14に対し、対物レンズ厚み方向の位置の微調整が可能に構成されており、厚み方向の位置の微調整がおこなわれた後、固定されている。
パーティングラインPLは、金型11のフランジ部1fの深さが、金型14のフランジ部の深さより深くなる位置に設定されている。また、1gはゲートであり、ここから溶融した樹脂材料が射出される。
図8(a)、8(b)は、図7に示す樹脂成形用金型の型開き状態及び突き出し部の作動状態を示す図である。図8(a)は型開き状態を示し、図8(b)は突き出し部の作動状態を示している。
以下、図7及び図8(a)、8(b)を用いて対物レンズ1の製造工程を説明する。
図7に示す状態で、ゲート1gから溶融状態の樹脂材料が流し込まれる。この時、突き出し部13と金型部11に形成されたクリアランスから、金型内部の気体が流出する。この金型内部の脱気に関しては、真空ポンプ等の吸気する機器及びOリング等を用いた金型内部密封機構を設け、金型に溶融された樹脂材料が流入される前に吸引して事前に脱気しておく方法、金型に溶融された樹脂材料の流入中に吸引を行って脱気する方法、金型に溶融された樹脂材料が流入される前より吸引を開始し、流入中も吸引を行って脱気する方法等が用いられるとより好ましく、このようにすることにより、金型の形状の対物レンズ1への転写性がより向上し、より高精度の光学機能面1a、1bを形成することが可能となる。
次いで、図8(a)に示すように、金型11が金型12及び金型14から離間するよう移動する。この時、対物レンズ1は、金型11側に残った状態となる。
この後、図8(b)に示すように、金型11からフランジ部1fに相当する位置に配置された突き出し部13を図示矢印方向に突出させて対物レンズ1を離型させることで、ゲート1gが付いた状態の対物レンズ1となる。この突き出し部13は、複数箇所に設けられており、それぞれの突き出し部13の作動は同時もしくは異なったとしても突き出しタイミングの差が0.5秒以内に収まって、全ての突き出しが完了するようになっていることが、対物レンズ1の変形を防止する上で好ましい。なお、金型11が第1の金型部に相当し、金型12及び金型14が第2の金型部に相当する。
図9(a)、9(b)は、図7に示す樹脂成形用金型で製造された、ゲート1gが付いた状態の対物レンズ1を示す図である。図9(a)は対物レンズ1を突き出し部側から見た平面図、図9(b)は側面図である。
図9(a)は、突き出し部が略90度間隔でフランジ部1f上の13nで示す4箇所に配置された場合を示している。この突き出し部による、突き出し部跡は、その後の光ヘッド部への組み込み時に、光学機能面1aと1bの判別をする指標となり、組み込みをより容易にする効果をも有している。
この突き出し部による、突き出し部跡は凹部となっていることが好ましいが、凸部となっていてもよい。この場合、フランジ部は複数の凸部を有することになる。また、凹部又は凸部は、図9(a)、9(b)に示すように円形であることが好ましい。更に、突き出し部跡すなわち、凹部又は凸部の数は良好な成形性を保ちつつ離型するという観点から2〜4個程度が好ましい。
図9(b)に示すように、フランジ部1fの突き出し部が当接する側の面は、光学機能面1bの光軸上の位置より、フランジ部1fの厚みを超えない範囲でd=0.005mm〜0.5mmだけ光学機能面1a側に位置していることが望ましく、d=0.02mm〜0.12mmだけ光学機能面1a側に位置していることがより好ましい。このような形状とすることにより、フランジ部1f上の面の少なくとも一部の表面粗さRyを0.1μm以下に形成することが容易になり、この対物レンズ1を光ピックアップ装置に組み込む際の調整に、この表面粗さRyが0.1μm以下の部分を利用することができるようになる。更に、図7における突き出し部13と金型部11の嵌合クリアランスによるバリが突き出し部跡に発生しても、上記dの段差があるため光ピックアップ装置に対物レンズが組み込まれた際にもワーキングディスタンスが短くなることがない。
更に、突き出し部が当接する面は、有効径がDとDの2つの光学機能面のうち、有効径の小さいD側の光学機能面側、即ち光学機能面1b(第1の光学機能面)側のフランジ部に設けられることが望ましい。このようにすることにより、フランジ部1fを含む対物レンズ外形を小さく保ったままで突き出し部を大きく形成することができる。
なお、図9(a)、9(b)に示すゲート1gが付いた状態の対物レンズ1から、ゲート1gが除去されて対物レンズ1が完成する。
図10は、図7に示す金型でパーティングラインPLがフランジ部1fの厚みの間に設定された際の、フランジ部1f周辺の型形状を示す拡大断面図である。
図10に示すように、パーティングラインPLを境に、突き出し部13がある方の金型11側の深さをtとし、他方の金型14及び金型12側の深さをtとしたとき、t>tとすることが好ましい。更に、突き出し部13がある方の金型11側の抜きテーパの角度をαとし、他方の金型12及び金型14側の抜きテーパの角度をβとしたとき、α≦βとすることが好ましい。またαの範囲としては0°≦α≦3°が好ましい。このように金型部11、12、14を形成することにより、型開きの際に対物レンズが金型12、14側に持って行かれることがなく、確実に突き出し部を備えた金型11側に残るようにすることができる。
また、フランジ部1fの第1の光学機能面側の面に、光軸と直交する平面部を形成することが好ましい。特に図14に示す例のように、フランジ部1fの第1の光学機能面側の面において、光軸に近い部分の一部に光軸と直交する平面部1kを形成することが好ましく、特に好ましくは、第1の光学機能面の終端のすぐ外側に光軸と直交する平面部1kを形成することが好ましい。なお、当該平面部1kの表面粗さRyは0.1μm以下で有ることが好ましい。また、この平面部1kの幅W(光軸と直交する方向)は、0.1mm以上、0.5mm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.2mm以上、0.4mm以下である。この平面部1kに平行光を照射し、その反射光を用いて、対物レンズ1を鏡枠に取り付けた際の傾き等を検知することができる。なお、t>tとすることで、型開きの際に、対物レンズ1が金型部12に持って行かれるような力が小さくなるため、当該平面部が歪みにくくなるという効果もある。
更に、図14に示したように、第1の光学機能面1b側の金型を、第1の光学機能面1bと上述の平面部1kを形成する中心部材15と、その周辺を形成する周辺部材とに分割しても良い。これにより金型の加工難易度が低減するというメリットがある。
また、金型12及び金型14の境界は、光軸に平行とすることが好ましく、このように形成することで、金型12及び金型14を非常に微小な隙間(クリアランス)で嵌合させることができ、バリの発生を抑えることが可能となる。
次に、本実施の形態に係る光ピックアップ用対物レンズの第二の例について説明する。この例は、たとえ金型12と金型14の間のクリアランスに起因してバリが生じたとしても、レンズ取り付けの際にティルトが生じず、取り付け精度が向上できる例を示すものである。
図1は、本実施の形態に係る光学素子である光ピックアップ装置用対物レンズの第二の例を示す側面図である。
図1に示す光ピックアップ装置用対物レンズ1(以下、対物レンズとも称す)は、光学機能部である光学機能面1aと光学機能面1b及びこの光学機能面の周辺に形成されたフランジ部1fを有している。なお、以下で、円形の光学機能面及び円形のフランジ部を有するもので説明するが、フランジ部1fが部分的に形成されたものや外形が矩形状のものであってもよい。また、光学機能面1a、1bの少なくとも一方に輪帯状の段差を有する回折面等の光路差付与構造が形成されたものであってもよい。
図1に示す対物レンズ1は、光ピックアップ装置においては、光学機能面1bが光ディスク側に面し、光学機能面1aが光源側に面するように配置されることが好ましい。なお、本実施の形態においては、光ディスク側に面する光学機能面1bが第1の光学機能面に相当し、光源側に面する光学機能面1aが第2の光学機能面に相当する。
図1に示すように、第2の光学機能面(光学機能面1a)は光ディスク側に面する第1の光学機能面(光学機能面1b)より曲率が大きく、更に、有効径は第2の光学機能面(光学機能面1a)が第1の光学機能面(光学機能面1b)より大きいことが好ましい。また、第2の光学機能面の有効径は0.3mm以上、7mm以下であることが好ましく、0.5mm以上、4mm以下であることがより好ましい。
また、図示の如く、フランジ部1fは、最も第2の光学機能面(光学機能面1a)側に光軸Oに対し垂直な面であるフランジ面1f、更にフランジ面1fより外側に、光ディスク側に段差を有する第1の段差1f、第2の段差1fが形成されている。これらの第1の段差及び第2の段差は、光軸方向から対物レンズを見た際に光軸を中心とする同心円状に設けられていることが好ましい。
図11(a)、11(b)は、図1に示す対物レンズ1がピックアップ装置の鏡枠に取り付けられた際の模式的断面図である。図11(a)は、全体を示し、図11(b)はフランジ部1f周辺を示す拡大図である。
図11(a)に示すように、対物レンズ1は、鏡枠31にフランジ部1fのフランジ面1fを当接させて固定されている。即ち、図2で示す樹脂成形用金型の断面図に描かれているところの中心部材である金型12によって形成されたフランジ面1fが、鏡枠へ取り付ける際の基準面となる。また、第1の段差1fは、鏡枠31とは隙間を有し当接していない状態とされる。
また、図11(b)に示す取り付け基準面であるフランジ面1fの径方向の幅Aは0.10〜0.80mm程度が好ましく0.20〜0.50mm程度がより好ましい。第1の段差1fの径方向の幅B′は0.01〜0.25mm程度が好ましく、0.08〜0.15mm程度がより好ましい。第2の段差1fの径方向の幅Cは0.01〜0.20mm程度が好ましく、0.05〜0.15mm程度がより好ましい。更に、フランジ面1fを基準とした第1の段差1fの光軸方向の段差量D及び、第1の段差1fを基準とした第2の段差1fの光軸方向の段差量Eは、フランジ面1fの光軸方向の厚みを超えない範囲で0.005〜0.20mm程度が好ましく、0.02〜0.06mmであればより好ましい。フランジ面1fの光軸方向の厚みは、0.20〜1.50mm程度であることが好ましく、0.20〜1.00mmであることがより好ましい。また、フランジ面1fと第1の段差1fを接続する面は、断面図で見た場合、1°から60°の範囲のテーパで形成されていることが好ましく、第1の段差1fと第2の段差1fを接続する面は光軸に平行に形成されていることが好ましい。
また、フランジ面1fは少なくとも光軸に近い側の部分に表面粗さRyが0.3μm以下となる部分を有することが好ましい。フランジ面1fは、表面粗さRyが0.3μm以下であってもよいが、そうでなくてもよい。更に好ましくは、表面粗さRyが0.1μm以下となる部分を有することである。なお、表面粗さRyとは、当該面の微小凹凸における最低谷底から最大山頂までの高さのことである。また、第2の段差1fは、表面粗さRyが0.3μm以上であってもよい。また、段差の間の光軸と同じ方向の面又はテーパ面も表面粗さRyが0.3μm以上であってもよい。
図2は、図1に示す対物レンズ1を製造するための樹脂成形用金型の概略構成を示す断面図である。
なお、以下の図においては、説明の重複を避けるため、同機能部材には同符号を付与して説明する。
図2に示す樹脂成形用金型は、パーティングラインPLを境にして第1の金型部は金型11で構成され、第2の金型部は金型12及び金型14で構成されている。また、第1の金型部である金型11が可動側、第2の金型部である金型12及び金型14が固定側の金型に相当する。
金型11には、対物レンズ1の光学機能面1bを形成するための形状11bが形成されている。更に、対物レンズ1のフランジ部1fの位置には突き出し部13が、例えば円周上の4箇所に、設けられている。この突き出し部13は、金型11に対し相対的にフランジ部1f側に移動可能とされている。この突き出し部13と金型部11は、直径のクリアランス0.001〜0.06mmで嵌合しており、更に図示の如く、金型部11内部では、突き出し部13と金型部11との間には大きな隙間が形成されている。
金型12は、金型14に対し入子部を構成している。金型12は、対物レンズ1の光学機能部のうち有効径が大きい方の光学機能面である光学機能面1a(第2光学機能面)を形成するための形状12aと、フランジ部1fの第2光学機能面側の面のうち、取り付け基準面であるフランジ面1f、及び第1の段差1fとを形成する。また、金型14は、第2の段差1fを形成する。即ち、金型12と金型14の境界は、第1の段差1fと第2の段差1fの境界線である。また、光学機能面1a(第2光学機能面)と取り付け基準面であるフランジ面1fの第2光学機能面側の面との間には凹部を形成せず、それぞれの延長線を繋いだ形状に形成されている。別の言い方をすると、フランジ部1fの第2の光学機能面1aと隣接する面1fが、フランジ部1f(1f、1f、1f)のうち、第2の光学機能面側で最も高さの高い面に形成されていることが好ましい。即ち、図12に示すようなフランジ部の形状となされないことが好ましい。なお、ここでいう「1fの高さが高い」とは、光軸方向で第2の光学機能面側に位置することを高いといい、第1の光学機能面側に位置することを低いという。また、本明細書で言うところの、それぞれの延長線を繋いだ形状とは、上記のみに限るものでなく、それぞれの延長線の交点近傍でそれぞれの延長線に接するような角丸め(R)で接続した形状をも含むものである。
また、フランジ面については、別の指標として以下の条件式を満たすことが好ましい。
0.4<Lf1/LfA<1.0
f1は、フランジ部の第2の光学機能面側の面1f、1f、1fのうち、第2の光学機能面に隣接する面1fの光軸に直交する方向の長さ(mm)を表し、LfAは、フランジ部全体1f(1f、1f、1fを合わせたもの)の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表す。即ち、Lf1は、図11(b)でいうこところのAの長さであり、LfAは、図11(b)でいうこところのA+B+Cの長さであるともいえる。
f1/LfAの値を上記条件式の上限値より小さくすることにより、フランジ部の前記第2の光学機能面側の面に、少なくとも2段の段差を設けることが可能となり好ましい。一方、金型12上の面1fに対応する部分を加工する観点からはLf1/LfAの値が小さい方が好ましいが、取り付け基準面に対する光学機能面のティルトを軽減すると共に、取り付け基準面の平面度を確保するためには、Lf1/LfAの値を上記条件式の下限値より大きくすることが好ましい。
更に好ましくは、以下の条件式を満たすことである。
0.6<Lf1/LfA<1.0
また、以下の条件式を満たすことがより一層好ましい。
0.6<Lf1/LfA<0.9
なお、中心部材である金型12において、第2光学機能面とフランジ部の第2光学機能面側の面とが一体に形成されていることにより、対物レンズの取り付け基準面であるフランジ部の第2光学機能面側の面と、第2光学機能面(光学機能面1a)との位置関係にズレを生じる余地がなく、取り付け基準面に対し第2光学機能面(光学機能面1a)の位置を正確に形成することが可能となり、安定した性能を有した光ピックアップ装置用対物レンズを得ることが可能となる。
更に、金型12は金型14に対し、対物レンズ厚み方向の位置の微調整が可能に構成されており、厚み方向の位置の微調整がおこなわれた後、固定されている。
パーティングラインPLは、金型11のフランジ部1fの深さが、金型14のフランジ部の深さより深くなる位置に設定されている。また、1gはゲートであり、ここから溶融した樹脂材料が射出される。
図3(a)、3(b)は、図2に示す樹脂成形用金型の型開き状態及び突き出し部の作動状態を示す図である。図3(a)は型開き状態を示し、図3(b)は突き出し部の作動状態を示している。
以下、図2及び図3(a)、3(b)を用いて対物レンズ1の製造工程を説明する。
図2に示す状態で、ゲート1gから溶融状態の樹脂材料が流し込まれる。この時、突き出し部13と金型部11に形成されたクリアランスから、金型内部の気体が流出する。この金型内部の脱気に関しては、真空ポンプ等の吸気する機器及びOリング等を用いた金型内部密封機構を設け、金型に溶融された樹脂材料が流入される前に吸引して事前に脱気しておく方法、金型に溶融された樹脂材料の流入中に吸引を行って脱気する方法、金型に溶融された樹脂材料が流入される前より吸引を開始し、流入中も吸引を行って脱気する方法等が用いられるとより好ましく、このようにすることにより、金型の形状の対物レンズ1への転写性がより向上し、より高精度の光学機能面1a、1bを形成することが可能となる。
次いで、図3(a)に示すように、金型11が金型12及び金型14から離間するよう移動する。この時、対物レンズ1は、金型11側に残った状態となる。
この後、図3(b)に示すように、金型11からフランジ部1fに相当する位置に配置された突き出し部13を図示矢印方向に突出させて対物レンズ1を離型させることで、ゲート1gが付いた状態の対物レンズ1となる。この突き出し部13は、複数箇所に設けられており、それぞれの突き出し部13の作動は同時もしくは異なったとしても突き出しタイミングの差が0.5秒以内に収まって、全ての突き出しが完了するようになっていることが、対物レンズ1の変形を防止する上で好ましい。なお、金型11が第1の金型部に相当し、金型12及び金型14が第2の金型部に相当する。
図4(a)、4(b)は、図2に示す樹脂成形用金型で製造された、ゲート1gが付いた状態の対物レンズ1を示す図である。図4(a)は対物レンズ1を突き出し部側から見た平面図、図4(b)は側面図である。
図4(a)は、突き出し部が略90度間隔でフランジ部1f上の13nで示す4箇所に配置された場合を示している。この突き出し部による、突き出し部跡は、その後の光ヘッド部への組み込み時に、光学機能面1aと1bの判別をする指標となり、組み込みをより容易にする効果をも有している。
この突き出し部による、突き出し部跡は凹部となっていることが好ましいが、凸部となっていてもよい。この場合、フランジ部は複数の凸部を有することになる。また、凹部又は凸部は、図4(a)、4(b)に示すように円形であることが好ましい。更に、突き出し部跡すなわち、凹部又は凸部の数は良好な成形性を保ちつつ離型するという観点から2〜4個程度が好ましい。
図4(b)に示すように、フランジ部1fの突き出し部が当接する側の面は、光学機能面1bの光軸上の位置より、フランジ部1fの厚みを超えない範囲でd=0.005mm〜0.5mmだけ光学機能面1a側に位置していることが望ましく、d=0.02mm〜0.12mmであればより好ましい。このような形状とすることにより、フランジ部1f上の面の少なくとも一部の表面粗さRyを0.1μm以下に形成することが容易となり、この対物レンズ1を光ピックアップ装置に組み込む際の調整に、この表面粗さRyが0.1μm以下の部分を利用することができるようになる。更に、図2における突き出し部13と金型部11の嵌合クリアランスによる突き出し部跡にバリが発生しても、上記dの段差があるため光ピックアップ装置に対物レンズが組み込まれた際にもワーキングディスタンスが短くなることがない。
更に、突き出し部が当接する面は、有効径がDとDの2つの光学機能面のうち、有効径の小さいD側の光学機能面側、即ち光学機能面1b(第1の光学機能面)側のフランジ部に設けられることが望ましい。このようにすることにより、フランジ部1fを含む対物レンズ外形を小さく保ったままで突き出し部を大きく形成することができる。
なお、図4(a)、4(b)に示すゲート1gが付いた状態の対物レンズ1から、ゲート1gが除去されて対物レンズ1が完成する。
図5は、図2に示す金型でパーティングラインPLがフランジ部1fの厚みの間に設定された際の、フランジ部1f周辺の型形状を示す拡大断面図である。
図5に示すように、パーティングラインPLを境に、突き出し部13がある方の金型11側の深さをtとし、他方の金型14及び金型12側の深さをtとしたとき、t>tとすることが好ましい。更に、突き出し部13がある方の金型11側の抜きテーパの角度をαとし、他方の金型14側の抜きテーパの角度をβとしたとき、α≦βとすることが好ましい。また金型12の抜きテーパの角度をγとしたとき、α≦γとすることが好ましい。また、αの範囲としては0°≦α≦3°が好ましい。なお、図13に示す例のように、パーティングラインを第2の段差の位置に設定し、α=0°としてもよい。このように金型部11、12、14を形成することにより、型開きの際に対物レンズが金型12、14側に持って行かれることがなく、確実に突き出し部を備えた金型11側に残るようにすることができる。
また、フランジ部1fの第1光学機能面側の面に、光軸と直交する平面部を形成することが好ましい。特に、図13に示す例のようにフランジ部1fの第1光学機能面側の面において、光軸に近い部分の一部に、光軸と直交する平面部1kを形成することが好ましく、特に好ましくは、第1の光学機能面の終端のすぐ外側に光軸と直交する平面部1kを形成することが好ましい。この平面部1kの表面粗さRyは0.1μm以下であることが好ましい。なお、この平面部1kの幅W(光軸と直交する方向)の長さは、0.1mm以上、0.5mm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.2mm以上、0.4mm以下である。この平面部1kに平行光を照射し、その反射光を用いて、レンズ1を鏡枠に取り付けた際の傾きなどを検知することができる。なお、t1>t2とすることで、型開きの際に対物レンズが金型部12側に持って行かれるよな力が小さくなるため、当該平面部が歪みにくくなるという効果もある。
さらに、これも図13に示したように、第1の光学機能面側の金型を、第1の光学機能面1bと上述した平面部1kを形成する中心部材15と、その周辺を形成する周辺部材11とに分割しても良い。
また、金型12及び金型14の境界は、光軸に平行とすることが好ましく、このように形成することで、金型12及び金型14を非常に微小な隙間(クリアランス)で嵌合させることができ、バリの発生を抑えることが可能となる。また、例え発生しても段差があるため、鏡枠への取り付け時に取り付け基準面に影響を与えることがない。
以上説明したように、可動側である第1の金型部から、対物レンズを離型する際に光学機能面の外周に形成されたフランジ部の一部を突き出すことで、第1の金型部11側の第1の光学機能面を形成する金型を離型のために移動させる必要がなくなり、これにより第1の光学機能面を形成する金型のティルト量やシフト量が毎ショット異なってしまうということがなくなる。ここで、シフトとは金型の理想光軸Oに対する垂直方向の変位のことである。更に、第2の金型部である金型12及び金型14については、2つの金型に分割されているが、取り付け基準面と光学機能面が同一の金型12に一体に形成されているため、対物レンズ1の鏡枠への取り付け基準面であるフランジ部の第2の光学機能面側の面に対する第2の光学機能面(光学機能面1a)のティルト量が毎ショット異なってしまうということがなくなる。このため、安定した性能を有した光ピックアップ装置用対物レンズが得られる、樹脂成形用金型を得ることが可能となる。
また、突き出し部のクリアランスを利用して脱気することで、別途脱気部を形成する必要が無く、良好な光学機能面を形成することができる。更に、突き出し部の精度は比較的緩いものでよく、光学機能面の形成に影響を与えることがない。
更に、第2の実施例で説明したように、2段の段差を有するフランジ部を持つ形態の場合、金型12及び金型14の間のクリアランスに起因してバリが生じたとしても、レンズ取り付けの際にティルトが生じず、取り付け精度を向上できる。これにより、第1の実施例に比べて、第2の実施例の金型は、金型12と金型14の間のクリアランスを多少広げることが可能となるため金型加工がより容易になるという効果がある。
なお、本実施の形態に示す対物レンズは、2つの光学機能面が芯ズレを起こさず、取り付け基準面からの光学機能面の位置が安定するものであるため、NA値が0.7〜0.9程度で、波長400〜450nm程度の青紫色レーザを用いる高記憶容量のディスクへの記録、又は再生に使用される対物レンズに適用した場合に、より大きな効果を奏するものである。
本実施の形態に示す対物レンズが複数の光ディスクの記録・再生を行う互換レンズである場合、前記NA値とは、記録又は再生に適用される光ディスクのうち最もNAが高い光ディスクのNA値をいう。例えば、本発明に係る光学素子をBD、HD DVDの互換レンズとして使用する場合、前記NA値とはBDのNA値である約0.85を指し、BD、DVD、CDの互換レンズとして使用する場合に、前記NA値とはBDのNA値である約0.85を指すものとする。
1 対物レンズ
1a 第2の光学機能面
1b 第1の光学機能面
1f フランジ部
1g ゲート部
11 金型(第1の金型部)
12、14 金型(第2の金型部)
13 突き出し部
31 鏡枠
PL パーティングライン

Claims (21)

  1. 光学機能部と該光学機能部の周辺にフランジ部を有し、前記光学機能部のNA値が0.7以上であって、前記光学機能部は、互いに向かい合う第1の光学機能面と第2の光学機能面とを有し、前記第1の光学機能面のほうが前記第2の光学機能面よりも曲率が小さく、前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面に、光軸から離れるに従って高さが低くなる少なくとも2段の段差が設けられていることを特徴とする光学素子。
  2. 前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面が鏡枠へ装着する際に基準面となることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
  3. 以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
    0.4<Lf1/LfA<1.0
    但し、Lf1は前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面のうち、前記第2の光学機能面に隣接する面の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表し、LfAはフランジ部全体の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表す。
  4. 前記フランジ部の前記第2の光学機能面と隣接する面が、前記フランジ部のうち前記第2の光学機能面側で最も高さの高い面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学素子。
  5. 前記フランジ部の前記第1の光学機能面側の面に、複数の凹部又は凸部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学素子。
  6. 前記第1の光学機能面の光軸上の高さが、前記フランジ部の前記第1の光学機能面側の面よりも突出していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学素子。
  7. 前記第2の光学機能面側の前記フランジ部に形成された前記光軸に直交する面に、表面粗さRyが0.3μm以下となる部分を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学素子。
  8. 光学機能部と該光学機能部の周辺にフランジ部を有し、前記光学機能部のNA値が0.7以上の光学素子を製造する樹脂成形用金型において、前記樹脂成形用金型は型開き状態で前記光学素子が残る第1の金型部と、型開き状態で前記光学素子が残らない第2の金型部とを有し、前記光学機能部は、互いに向かい合う第1の光学機能面と第2の光学機能面とを有し、前記第1の光学機能面のほうが前記第2の光学機能面よりも曲率が小さく、前記第1の金型部により前記第1の光学機能面が、前記第2の金型部により前記第2の光学機能面が、それぞれ形成され、前記第1の金型部に、前記フランジ部を突き出して前記第1の金型部から前記光学素子を離型させる突き出し部を設け、前記第2の金型部は、少なくとも光軸を含む中心部材とその周辺の周辺部材とを有し、前記第2の金型部の前記中心部材により、前記光学素子の前記第2の光学機能面と前記フランジ部の少なくとも一部が共に形成されることを特徴とする樹脂成形用金型。
  9. 以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項8に記載の樹脂成形用金型。
    0.4<Lf1/LfA<1.0
    但し、Lf1は前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面のうち、前記第2の光学機能面に隣接する面の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表し、LfAはフランジ部全体の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表す。
  10. 前記フランジ部の前記第2の光学機能面と隣接する面は、前記フランジ部のうち前記第2の光学機能面側で最も高さの高い面であることを特徴とする請求項8又は9に記載の樹脂成形用金型。
  11. 前記中心部材は、前記フランジ部の光軸と直交する面の少なくとも一部を成形することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の樹脂成形用金型。
  12. 前記周辺部材は、光軸と直交する前記フランジ部の面の他の一部を成形し、前記周辺部材により成形されたフランジ部の面は、前記中心部材により成形されたフランジ部の面よりも前記第1の光学機能面側に位置していることを特徴とする請求項11に記載の樹脂成形用金型。
  13. 前記中心部材の前記フランジ部に相当する部位は段差を有し、前記周辺部材の前記フランジ部に相当する部位は前記段差と異なる高さに形成されていることを特徴とする請求項12に記載の樹脂成形用金型。
  14. 光学機能部と該光学機能部の周辺にフランジ部を有し、前記光学機能部のNA値が0.7以上であって、前記光学機能部は、互いに向かい合う第1の光学機能面と第2の光学機能面とを有し、前記第1の光学機能面のほうが前記第2の光学機能面よりも曲率が小さく、前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面に、光軸から離れるに従って高さが低くなる少なくとも1段の段差が設けられていることを特徴とする光学素子。
  15. 前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面が鏡枠へ装着する際に基準面となることを特徴とする請求項14に記載の光学素子。
  16. 以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項14又は15に記載の光学素子。
    0.4<Lf1/LfA<1.0
    但し、Lf1は前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面のうち、前記第2の光学機能面に隣接する面の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表し、LfAはフランジ部全体の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表す。
  17. 前記フランジ部の前記第2の光学機能面と隣接する面が、前記フランジ部のうち前記第2の光学機能面側で最も高さの高い面であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の光学素子。
  18. 前記フランジ部の前記第1の光学機能面側の面に、複数の凹部又は凸部が設けられていることを特徴とする請求項14〜17のいずれか1項に記載の光学素子。
  19. 前記第1の光学機能面の光軸上の高さが、前記フランジ部の前記第1の光学機能面側の面よりも突出していることを特徴とする請求項14〜18のいずれか1項に記載の光学素子。
  20. 前記第2の光学機能面側の前記フランジ部に形成された前記光軸に直交する面に、表面粗さRyが0.3μm以下となる部分を有することを特徴とする請求項14〜19のいずれか1項に記載の光学素子。
  21. 光学機能部と該光学機能部の周辺にフランジ部を有し、前記光学機能部のNA値が0.7以上の光学素子を樹脂成形用金型で製造する光学素子製造方法であって、前記樹脂成形用金型は、前記フランジ部を突き出して離型させる突き出し部を有すると共に、型開き状態で前記光学素子が残る第1の金型部と、光学機能面と前記フランジ部の少なくとも一部が共に形成される中心部材とその周辺の周辺部材を有すると共に、型開き状態で前記光学素子が残らない第2の金型部とで構成され、前記第1の金型部で形成される光学機能面の曲率のほうが、前記第2の金型部で形成される光学機能面の曲率よりも小さく、前記第2の金型部の、前記中心部材と前記周辺部材の位置関係を予め調整し、所望の相対位置関係で固定する工程と、前記光学素子を成形する工程と、型開き後、前記光学素子の前記フランジ部を、前記突き出し部により突き出して離型する工程と、を有し、以下の条件式を満たすことを特徴とする光学素子製造方法。
    0.4<Lf1/LfA<1.0
    但し、Lf1は前記フランジ部の前記第2の光学機能面側の面のうち、前記第2の光学機能面に隣接する面の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表し、LfAはフランジ部全体の光軸に直交する方向の長さ(mm)を表す。
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