JP2011028234A - 偏光板及びそれを用いた積層光学部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】カチオン重合性化合物に、比較的長波長に吸収を示す光増感剤が配合された接着剤を用いて、偏光子に保護膜を貼合してなり、偏光子のニュートラルグレーを維持しながら、耐湿熱性にも優れる偏光板を提供する。
【解決手段】二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系偏光子に、接着剤層を介して透明樹脂からなる保護膜が貼合されてなり、その接着剤層は、以下の(A)〜(D)を含有する光硬化性接着剤組成物から形成されている偏光板。(A)カチオン重合性化合物100重量部、(B)光カチオン重合開始剤1〜10重量部、(C)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤0.1〜2重量部、及び(D)下式(I)のナフタレン系光増感助剤0.1〜10重量部。式(I)において、R1及びR2は各々独立に炭素数1〜6のアルキル基を表す。
Figure 2011028234

【選択図】なし

Description

本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子に透明樹脂からなる保護膜が貼合された偏光板に関するものである。本発明はまた、この偏光板を他の光学層に積層した積層光学部材にも関係している。
偏光板は、液晶表示装置を構成する光学部品の一つとして有用である。偏光板は通常、偏光子の両面に保護膜が積層された構造を有し、液晶表示装置に組み込まれる。偏光子の片面にのみ保護膜を設けることも知られているが、多くの場合、もう一方の面には、単なる保護膜ではなく、別の機能として例えば光学機能を有する層が、保護膜を兼ねて貼合される。また偏光子の製造方法として、二色性色素により染色された一軸延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸処理し、水洗後、乾燥する方法が広く採用されている。
通常、偏光子には、上述の水洗及び乾燥の後、直ちに保護膜が貼合される。これは、乾燥後の偏光子は物理的な強度が弱く、一旦これを巻き取ると、加工方向に裂けやすいなどの問題があるためである。したがって、通常、乾燥後の偏光子には直ちに、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液である水系の接着剤が塗布され、この接着剤を介して偏光子の両面に同時に保護膜が貼合される。通例、保護膜としては、厚さ30〜100μmのトリアセチルセルロースフィルムが使用されている。
トリアセチルセルロースは透湿度が高く、これを保護膜として貼合した偏光板は、湿熱下、例えば、温度70℃、相対湿度90%といった条件下では劣化を引き起こすなどの問題があった。そこで、トリアセチルセルロースより透湿度の低い、例えば、ノルボルネン系樹脂を代表例とする非晶性ポリオレフィン系樹脂を保護膜とすることも知られている。
透湿度の低い樹脂からなる保護膜をポリビニルアルコール系偏光子に貼合する場合、従来からポリビニルアルコール系偏光子とトリアセチルセルロースとの貼合に接着剤として一般に用いられているポリビニルアルコール系樹脂の水溶液では、接着強度が十分でなかったり、得られる偏光板の外観が不良になったりする問題があった。これは、透湿度の低い樹脂フィルムは一般的に疎水性であることや、透湿度が低いために溶媒である水を十分に乾燥できないことなどの理由による。一方で、偏光子の両面に異なる種類の保護膜を貼合することも知られており、例えば、偏光子の一方の面には、非晶性ポリオレフィン系樹脂などの透湿度の低い樹脂からなる保護膜を貼合し、偏光子の他方の面には、トリアセチルセルロースをはじめとするセルロース系樹脂などの透湿度の高い樹脂からなる保護膜を貼合する提案もある。
そこで、透湿度の低い樹脂からなる保護膜とポリビニルアルコール系偏光子との間で高い接着力を与えるとともに、セルロース系樹脂などの透湿度の高い樹脂とポリビニルアルコール系偏光子との間でも高い接着力を与える接着剤として、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる試みがある。例えば、特開2004−245925号公報(特許文献1)には、芳香環を含まないエポキシ化合物を主成分とする接着剤が開示されており、活性エネルギー線の照射によるカチオン重合でこの接着剤を硬化させ、偏光子と保護膜とを接着することが提案されている。また、特開2008−257199号公報(特許文献2)には、脂環式エポキシ化合物と脂環式エポキシ基を有さないエポキシ化合物とを組み合わせ、光カチオン重合開始剤とともに配合した光硬化性接着剤を、偏光子と保護膜との接着に用いる技術が開示されている。この特許文献2には、アントラセン化合物からなる光増感剤を併用することで、保護膜が紫外線吸収剤を含む場合でも、良好な接着力を与えることが記載されている。
すなわち、エポキシ化合物の如きカチオン重合性化合物を硬化させるために光カチオン重合開始剤が配合されるが、かかる光カチオン重合開始剤は一般に、300nm付近又はそれより短い波長域に極大吸収を示す化合物であるため、それより長い波長域、具体的には380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤を配合することで、この付近の波長の光に感応し、光カチオン重合開始剤からのカチオン種又はルイス酸の発生を促進させることができる。
また、偏光板は一般に、液晶表示装置に適用したときに本来の色が表示できるよう、ニュートラルグレーであることが望まれている。例えば、特開2002−169024号公報(特許文献3)には、よりニュートラルグレーな白表示及び黒表示が可能で、さらに白表示が明るく、コントラストの高い表示が得られるよう、平行色相のa*及びb*、並びに直交色相のa*及びb*が特定の関係を満たす偏光板が提案されている。
一方、偏光板以外の分野で用いられる一般的な光硬化性組成物についても、各種の改良がなされており、例えば、国際公開WO2006/073021号パンフレット(特許文献4)には、アントラセン化合物とナフタレン化合物又はベンゼン化合物とを組み合わせて光増感剤とする技術が開示されている。この特許文献4には、上記の光増感剤にカチオン重合性モノマー及び光カチオン重合開始剤を配合して、光硬化性組成物とすることも記載され、またカチオン重合性モノマーの例としてエポキシ化合物も挙げられている。
特開2004−245925号公報 特開2008−257199号公報 特開2002−169024号公報 国際公開WO2006/073021号パンフレット
上記特許文献2に開示されるような、エポキシ化合物と光カチオン重合開始剤とアントラセン系光増感剤を配合した接着剤を用いることにより、偏光子と保護膜とを強固に接着することができ、例えば、この接着剤を用いて偏光子に保護膜を貼合した偏光板は、保護膜や接着剤層に影響されることなく、偏光子が本来示す偏光度に応じて高い偏光度を示し、例えば湿熱試験を行った後でも、そのような高い偏光度が維持される。しかし、かかる効果を十分に発現させるためには、アントラセン系光増感剤をある程度の量配合する必要がある。その場合には、アントラセン系光増感剤が380nmを超える波長の光に極大吸収を示すものであるため、偏光板をクロスニコルに配置したときに、波長400nm付近の青色光が漏れてくる、いわゆるブルーリークが大きくなるという問題があった。そのためもあって、このようにアントラセン系光増感剤が多量に配合された接着剤を用いて作製された偏光板をクロスニコル下で観察すると、透過光の色相がニュートラルグレーから青色の方向にずれてくることが明らかになってきた。また、アントラセン系光増感剤をある程度の量配合した場合には、湿熱試験によってもクロスニコル下での色相が変化することがあることも明らかになってきた。
そこで本発明の課題は、エポキシ化合物の如きカチオン重合性化合物に、アントラセン系化合物の如き、紫外域でも比較的長波長に吸収を示す光増感剤が配合された接着剤を用いて、偏光子に保護膜を貼合した偏光板であって、クロスニコルに配置したときのニュートラルグレーを維持しながら、耐湿熱性にも優れる偏光板を提供することにある。本発明のもう一つの課題は、この偏光板に他の光学層を積層して、やはり耐湿熱性に優れる積層光学部材を提供することにある。
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意研究を行った結果、カチオン重合性化合物に、光カチオン重合開始剤及び紫外域でも比較的長波長に吸収を示す光増感剤が配合された光硬化性接着剤組成物に対し、特定の光増感助剤を所定量配合し、これを偏光子と保護膜との貼合に用いることにより、偏光子のニュートラルグレーを維持しながら、偏光子と保護膜とが強固に接着され、耐湿熱性にも優れる偏光板が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。特にカチオン重合性化合物として、脂環式エポキシ化合物と脂肪族エポキシ化合物を所定の割合で配合した場合に、このような処方が有効であることを併せて見出した。
すなわち本発明は、二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子と、該偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して貼合された透明樹脂からなる保護膜とを備え、その接着剤層は、以下の各成分(A)〜(D)を含有する光硬化性接着剤組成物から形成されている偏光板を提供するものである。
(A)カチオン重合性化合物を100重量部、
(B)光カチオン重合開始剤を1〜10重量部、
(C)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤を0.1〜2重量部、及び
(D)下式(I)で示されるナフタレン系光増感助剤を0.1〜10重量部。
Figure 2011028234
式中、R1及びR2は各々独立に炭素数1〜6のアルキル基を表す。
上記の偏光板において、光硬化性接着剤組成物を構成するカチオン重合性化合物(A)は、芳香環を含まないエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
またこれらの偏光板において、光硬化性接着剤組成物を構成する光増感剤(C)は、下式(IV)で示されるアントラセン系化合物であることが好ましい。
Figure 2011028234
式中、R5及びR6は各々独立に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜12のアルコキシアルキル基を表し、R7は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
上記いずれかの偏光板において、ニュートラルグレーを維持する観点からは、偏光子と保護膜との接着力が適度に保たれる範囲で、光硬化性接着剤組成物中の光増感剤(C)の量は少ないほうが有利である。従ってカチオン重合性化合物(A)100重量部に対して光増感剤(C)の量を0.1〜0.5重量部の範囲とするのが好ましい。
上記いずれの偏光板においても、例えば、偏光子の少なくとも一方の面に貼合される保護膜を、アセチルセルロース系樹脂で構成する形態をとることができる。また、偏光子の少なくとも一方の面に貼合される保護膜を、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂の如き透湿度の低い樹脂で構成する形態をとることもできる。さらに、偏光子の一方の面に前記接着剤層を介して、アセチルセルロース系樹脂からなる保護膜を貼合し、偏光子の他方の面に同じく前記接着剤層を介して、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂の如き透湿度の低い透明樹脂からなる保護膜を貼合する形態も、好ましいものの一つである。
これらの偏光板は、その直交色相を偏光子のニュートラルグレーに保つことができ、具体的には、直交色相のa値及びb値がともに−0.5〜+0.5の範囲にあるものとすることができる。
また本発明は、上記いずれかの偏光板と他の光学層との積層体からなる積層光学部材も提供する。この積層光学部材において、光学層は、位相差板を含むことが好ましい。
本発明の偏光板は、偏光子と保護膜を貼合する光硬化性接着剤組成物における380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤の量を少なくし、ナフタレン系光増感助剤を所定量配合したことで、偏光子と保護膜との間の接着強度を保ちながら、偏光子の色相であるニュートラルグレーを発現することができる。また、本発明の偏光板は、湿熱環境下に置かれても偏光度や直交色相が変化しにくく、良好な耐湿熱性を示す。この偏光板に他の光学層を積層した積層光学部材も、偏光板としての機能を十分に発現するとともに、耐湿熱性に優れる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の偏光板は、偏光子と、該偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して貼合された保護膜とを備えるものである。
[偏光子]
偏光子は、二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムで構成される。偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%の範囲である。ポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000、好ましくは1,500〜5,000の範囲である。
偏光子は、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色して、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程を経て、製造される。
一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。またもちろん、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸するには、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤により膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常4〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬すればよい。二色性色素として、具体的にはヨウ素又は二色性有機染料が用いられる。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100重量部あたり0.01〜0.5重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり0.5〜10重量部程度である。この水溶液の温度は、通常20〜40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常30〜300秒程度である。
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は通常、水100重量部あたり1×10-3〜1×10-2重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を含有していてもよい。この水溶液の温度は、通常20〜80℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常30〜300秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は通常、水100重量部あたり2〜15重量部程度、好ましくは5〜12重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり2〜20重量部程度、好ましくは5〜15重量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常100〜1,200秒程度、好ましくは150〜600秒程度、さらに好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上、好ましくは50〜85℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常2〜120秒程度である。その後に行われる乾燥処理は通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥温度は、通常40〜100℃である。また、乾燥処理の時間は、通常120〜600秒程度である。
かくして得られるポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の厚さは、10〜50μm程度とすることができる。
[接着剤層]
このようにして得られる偏光子は、その少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明樹脂からなる保護膜が貼合され、偏光板となる。本発明では、偏光子に保護膜を貼合するための接着剤層を形成する接着剤として、以下の(A)〜(D)の各成分を含有する光硬化性接着剤組成物を用いる。
(A)カチオン重合性化合物、
(B)光カチオン重合開始剤、
(C)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤、及び
(D)前記式(I)で示されるナフタレン系光増感助剤。
(カチオン重合性化合物)
光硬化性接着剤組成物の主成分であり、重合硬化により接着力を与える成分となるカチオン重合性化合物(A)は、カチオン重合により硬化する化合物であればよいが、特に分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。エポキシ化合物には、分子内に芳香環を有する芳香族エポキシ化合物、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個が脂環式環に結合している脂環式エポキシ化合物、分子内に芳香環を有さず、エポキシ基とそれが結合する2個の炭素原子を含む環(通常はオキシラン環)の一方の炭素原子が別の脂肪族炭素原子に結合している脂肪族エポキシ化合物などがある。本発明に用いる光硬化性接着剤組成物は、特にカチオン重合性化合物(A)として、芳香環を含まないエポキシ樹脂、特に脂環式エポキシ化合物を主成分とするものが好ましい。脂環式エポキシ化合物を主成分とするカチオン重合性化合物を用いれば、貯蔵弾性率の高い硬化物を与え、その硬化物(接着剤層)を介して保護膜と偏光子が接着された偏光板において、偏光子が割れにくくなる。
脂環式エポキシ化合物は前記のとおり、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個が脂環式環に結合しているものである。ここで、脂環式環に結合しているエポキシ基とは、次式(V)に示すように、エポキシ基(−O−)の2本の結合手が脂環式環を構成する2個の炭素原子(通常は隣り合う炭素原子)にそれぞれ直接結合していることを意味する。下式(V)において、mは2〜5の整数を表す。
Figure 2011028234
式(V)における(CH2m中の水素原子を1個又は複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合した化合物が、脂環式エポキシ化合物となりうる。脂環式環を構成する水素は、メチル基やエチル基の如き直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。中でも、エポキシシクロペンタン環〔上記式(V)においてm=3のもの〕や、エポキシシクロヘキサン環〔上記式(V)においてm=4のもの〕を有する化合物が好ましい。
脂環式エポキシ化合物の中でも、入手が容易で硬化物の貯蔵弾性率を高める効果が大きいことから、下記(1)〜(11)のいずれかで表される化合物がさらに好ましい。
Figure 2011028234
(式中、R1〜R24は、各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R1〜R24がアルキル基の場合、脂環式環に結合する位置は1位〜6位の任意の数である。炭素原子数1〜6のアルキル基は、直鎖でもよく、分岐を有していてもよく、脂環式環を有していてもよい。Y8は、酸素原子又は炭素原子数1〜20のアルカンジイル基を表し、Y1〜Y7は、各々独立に、直鎖でもよく、分岐を有していてもよく、脂環式環を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルカンジイル基を表し、n、p、q及びrは、各々独立に、0〜20の数を表す。)
前記(1)〜(11)で表される化合物のうち、前記式(2)で示される脂環式ジエポキシ化合物が、入手が容易なので好ましい。式(2)の脂環式ジエポキシ化合物は、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノール(そのシクロヘキサン環に炭素数1〜6のアルキル基が結合していてもよい)と、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸(そのシクロヘキサン環に炭素数1〜6のアルキル基が結合していてもよい)とのエステル化物である。その具体例として、次のような化合物が挙げられる。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〔式(2)において、R5=R6=H、n=0である化合物〕、
3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート〔式(2)において、R5=6−メチル、R6=6−メチル、n=0である化合物〕など。
また、脂環式エポキシ化合物に、脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用することが有効である。脂環式エポキシ化合物を主成分とし、これに脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用したものをカチオン重合性化合物とすれば、硬化物の貯蔵弾性率を高い値に保ちながら、偏光子と保護膜との密着性を一層高めることができる。ここでいう脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂とは、分子内にエポキシ基とそれが結合する2個の炭素原子を含む環(通常はオキシラン環)の一方の炭素原子が別の脂肪族炭素原子に結合している化合物である。その例として、多価アルコール(フェノール)のポリグリシジルエーテルを挙げることができる。中でも、入手が容易で偏光子と保護膜との密着性を高める効果が大きいことから、下記式(12)で示されるジグリシジルエーテル化合物が好ましい。
Figure 2011028234
(式中、Xは直接結合、メチレン基、炭素原子数1〜4のアルキリデン基、脂環式炭化水素基、O、S、SO2、SS、SO、CO、OCO又は下記式で表される3種の置換基からなる群から選ばれる置換基を表し、該アルキリデン基はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
Figure 2011028234
(式中、R25及びR26は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルキル基又はアルコキシ基により置換されてもよいフェニル基あるいは炭素原子数1〜10のアルキル基又はアルコキシ基により置換されてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基を表し、R25及びR26は互いに連結して環を形成してもよく、A及びDは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基又はハロゲン原子を表し、該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基中のメチレン基は不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよく、aは0〜4の数を表し、dは0〜4の数を表す。)
式(12)のジグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノールのような多官能型のエポキシ樹脂;脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル;脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル;アルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられ、中でも、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテルが、入手が容易なので好ましい。
上記の脂肪族多価アルコールとしては、例えば炭素数2〜20の範囲内のものを例示できる。より具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の脂環式ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の三価以上のポリオール、が挙げられる。
脂環式エポキシ化合物と脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用する場合、両者の配合割合は、カチオン重合性化合物全体の量を基準に、脂環式エポキシ化合物を50〜95重量%、そして脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を5重量%以上とするのが好ましい。脂環式エポキシ化合物をカチオン重合性化合物全体中で50重量%以上配合することにより、硬化物の80℃における貯蔵弾性率が1,000MPa以上になり、このような硬化物(接着剤層)を介して偏光子と保護膜とが接着された偏光板において、偏光子が割れにくくなる。また、脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂をカチオン重合性化合物全体に対して5重量%以上配合することにより、偏光子と保護膜との密着性が向上する。脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂の量は、カチオン重合性化合物が脂環式エポキシ化合物との二成分系である場合には、カチオン重合性化合物全体の量を基準に50重量%まで許容されるが、その量があまり多くなると、硬化物の貯蔵弾性率が低下し、偏光子が割れやすくなるので、カチオン重合性化合物全体の量を基準に45重量%以下とするのが好ましい。
光硬化性接着剤組成物を構成するカチオン重合性化合物(A)として、以上説明したような、脂環式エポキシ化合物及び脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用する場合、それぞれが上で説明した量となる範囲において、これらに加え、他のカチオン重合性化合物を含んでいてもよい。他のカチオン重合性化合物としては、式(1)〜式(12)以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
式(1)〜式(12)以外のエポキシ化合物には、式(1)〜式(11)以外の分子内に少なくとも1個の脂環式環に結合するエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物、式(12)以外の脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を有する脂肪族エポキシ化合物、分子内に芳香環とエポキシ基を有する芳香族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物における芳香環が水素化されている水素化エポキシ化合物などがある。
式(1)〜式(11)以外の分子内に少なくとも1個の脂環式環に結合するエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物の例として、4−ビニルシクロヘキセンジエポキシドや1,2:8,9−ジエポキシリモネンの如きビニルシクロヘキセン類のジエポキシドなどがある。
式(12)以外の脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を有する脂肪族エポキシ化合物の例として、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテルなどがある。
分子内に芳香環とエポキシ基を有する芳香族エポキシ化合物は、分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する芳香族ポリヒドロキシ化合物のグリシジルエーテルであることができ、その具体例として、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテルなどがある。
芳香族エポキシ化合物における芳香環が水素化されている水素化エポキシ化合物は、上記の芳香族エポキシ化合物の原料である分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する芳香族ポリヒドロキシ化合物を触媒の存在下、加圧下で選択的に水素化反応を行うことにより得られる水素化ポリヒドロキシ化合物をグリシジルエーテル化したものであることができ、具体例として、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールSのジグリシジルエーテルなどがある。
これら式(1)〜式(12)以外のエポキシ化合物のうち、脂環式環に結合するエポキシ基を有し、先に定義した脂環式エポキシ化合物に分類される化合物を配合する場合は、前記式(1)〜式(11)で示される脂環式エポキシ化合物との和が、カチオン重合性化合物の合計量を基準に95重量%を超えない範囲で用いられる。
また、任意のカチオン重合性化合物となりうるオキセタン化合物は、分子内に4員環エーテル(オキセタニル基)を有する化合物であり、その具体例として、次のような化合物が挙げられる。
3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、
1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、
3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、
ジ〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、
3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、
3−エチル−3−(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、
フェノールノボラックオキセタン、
1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、
オキセタニルシルセスキオキサン、
オキセタニルシリケートなど。
カチオン重合性化合物全体の量を基準に、オキセタン化合物を30重量%以下の割合で配合することにより、エポキシ化合物だけをカチオン重合性化合物として用いた場合に比べ、硬化性が向上するといった効果が期待できることがある。
(光カチオン重合開始剤)
本発明では、以上のようなカチオン重合性化合物を活性エネルギー線の照射によるカチオン重合で硬化させて接着剤層を形成することから、光硬化性接着剤組成物には、光カチオン重合開始剤(B)を配合する。光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線の如き活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物(A)の重合反応を開始するものである。光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、カチオン重合性化合物(A)に混合しても保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じる化合物として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレン錯体などを挙げることができる。
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなど。
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなど。
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4,4’−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4−フェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど。
鉄−アレン錯体としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなど。
これらの光カチオン重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。これらのなかでも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
光カチオン重合開始剤(B)の配合量は、カチオン重合性化合物(A)全体100重量部に対して1〜10重量部とする。カチオン重合性化合物(A)100重量部あたり光カチオン重合開始剤を1重量部以上配合することにより、カチオン重合性化合物(A)を十分に硬化させることができ、得られる偏光板に高い機械強度と接着強度を与える。一方、その量が多くなると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、偏光板の耐久性能を低下させる可能性があるため、光カチオン重合開始剤(B)の量は、カチオン重合性化合物(A)100重量部あたり10重量部以下とする。光カチオン重合開始剤(B)の配合量は、カチオン重合性化合物(A)100重量部あたり2重量部以上とするのが好ましく、また6重量部以下とするのが好ましい。
(光増感剤)
本発明に用いる光硬化性接着剤組成物は、以上のようなエポキシ化合物を含むカチオン重合性化合物(A)及び光カチオン重合開始剤(B)に加えて、380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤(C)を含有する。前記の光カチオン重合開始剤(B)は、300nm付近又はそれより短い波長に極大吸収を示し、その付近の波長の光に感応して、カチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物(A)のカチオン重合を開始させるが、それよりも長い波長の光にも感応するように、このような380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤(C)が配合される。かかる光増感剤(C)としては、前記式(IV)で示されるアントラセン系化合物が有利に用いられる。式(IV)で示されるアントラセン系化合物の具体例として、次のような化合物を挙げることができる。
9,10−ジメトキシアントラセン、
9,10−ジエトキシアントラセン、
9,10−ジプロポキシアントラセン、
9,10−ジイソプロポキシアントラセン、
9,10−ジブトキシアントラセン、
9,10−ジペンチルオキシアントラセン、
9,10−ジヘキシルオキシアントラセン、
9,10−ビス(2−メトキシエトキシ)アントラセン、
9,10−ビス(2−エトキシエトキシ)アントラセン、
9,10−ビス(2−ブトキシエトキシ)アントラセン、
9,10−ビス(3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、
2−メチル又は2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、
2−メチル又は2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、
2−メチル又は2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、
2−メチル又は2−エチル−9,10−ジイソプロポキシアントラセン、
2−メチル又は2−エチル−9,10−ジブトキシアントラセン、
2−メチル又は2−エチル−9,10−ジペンチルオキシアントラセン、
2−メチル又は2−エチル−9,10−ジヘキシルオキシアントラセンなど。
光硬化性接着剤組成物に上記のような光増感剤(C)を配合することにより、それを配合しない場合に比べ、接着剤組成物の硬化性が向上する。光硬化性接着剤組成物を構成するカチオン重合性化合物(A)の100重量部に対する光増感剤(C)の配合量を0.1重量部以上とすることにより、このような効果が発現する。一方、光増感剤(C)の配合量が多くなると、低温保管時に析出する等の問題が生じることから、その量は、カチオン重合性化合物(A)100重量部に対して2重量部以下とする。偏光板のニュートラルグレーを維持する観点からは、偏光子と保護膜との接着力が適度に保たれる範囲で、光増感剤(C)の配合量を少なくするほうが有利であり、例えば、カチオン重合性化合物(A)100重量部に対し、光増感剤(C)の量を0.1〜0.5重量部、さらには0.1〜0.3重量部の範囲とするのが好ましい。
(光増感助剤)
本発明に用いる光硬化性接着剤組成物は、以上説明したようなエポキシ化合物を含むカチオン重合性化合物(A)、光カチオン重合開始剤(B)及び光増感剤(C)に加えて、前記式(I)で示されるナフタレン系光増感助剤(D)を含有する。前記式(I)において、R1及びR2はそれぞれ、炭素数1〜6のアルキル基である。ナフタレン系光増感助剤(D)の具体例として、次のような化合物を挙げることができる。
1,4−ジメトキシナフタレン、
1−エトキシ−4−メトキシナフタレン、
1,4−ジエトキシナフタレン、
1,4−ジプロポキシナフタレン、
1,4−ジブトキシナフタレンなど。
光硬化性接着剤組成物にナフタレン系光増感助剤(D)を配合することにより、それを配合しない場合に比べ、接着剤組成物の硬化性が向上する。光硬化性接着剤組成物を構成するカチオン重合性化合物(A)の100重量部に対するナフタレン系光増感助剤(D)の配合量を0.1重量部以上とすることにより、このような効果が発現する。一方、ナフタレン系光増感助剤(D)の配合量が多くなると、低温保管時に析出する等の問題を生じることから、その量は、カチオン重合性化合物(A)100重量部に対して10重量部以下とする。ナフタレン系光増感助剤(D)の配合量は、好ましくは、カチオン重合性化合物(A)100重量部に対して5重量部以下である。
さらに、本発明の光硬化性接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない限り、任意成分である他の成分として、添加剤成分を含有させることができる。添加剤成分としては、前述の光カチオン重合開始剤および光増感剤(C)のほか、光増感剤(C)以外の光増感剤、熱カチオン重合開始剤、ポリオール類、イオントラップ剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、色素、有機溶剤等を配合することができる。
添加剤成分を含有させる場合、添加剤成分の使用量は、前述のカチオン重合性化合物(A)の100重量部に対して1000重量部以下であることが好ましい。該使用量が1000重量部以下である場合、本発明の光硬化性接着剤組成物の必須成分であるカチオン重合性化合物(A)、光カチオン重合開始剤(B)、光増感剤(C)及び光増感助剤(D)の組合せによる、保存安定性の向上、変色防止、硬化速度の向上、良好な接着性の確保という効果を良好に発揮させることができる。
[保護膜]
本発明では、先に説明したポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に、上で説明した光硬化性接着剤組成物を介して、保護膜を積層し、光硬化性接着剤組成物を硬化させて偏光板とする。保護膜は、従来から偏光板の保護膜として最も広く用いられているトリアセチルセルロースをはじめとするアセチルセルロース系樹脂フィルムや、トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い樹脂フィルムで構成することができる。トリアセチルセルロースの透湿度は、概ね400g/m2/24hr程度である。
一つの好ましい形態では、偏光子の少なくとも一方の面に貼合される保護膜が、アセチルセルロース系樹脂で構成される。もう一つの好ましい形態では、偏光子の少なくとも一方の面に貼合される保護膜が、トリアセチルセルロースより透湿度の低い樹脂フィルム、例えば、透湿度が300g/m2/24hr以下の樹脂フィルムで構成される。このような透湿度の低い樹脂フィルムを構成する樹脂として、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂などを挙げることができる。さらにもう一つの好ましい形態では、偏光子の一方の面に前記接着剤層を介して、アセチルセルロース系樹脂からなる保護膜が貼合され、偏光子の他方の面に同じく前記接着剤層を介して、上記のような透湿度の低い透明樹脂からなる保護膜が貼合される。
アセチルセルロース系樹脂は、セルロースにおける水酸基の少なくとも一部が酢酸エステル化されている樹脂であり、一部が酢酸エステル化され、一部が他の酸でエステル化されている混合エステルであってもよい。アセチルセルロース系樹脂の具体例として、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどを挙げることができる。
非晶性ポリオレフィン系樹脂は、ノルボルネンやテトラシクロドデセン(別名ジメタノオクタヒドロナフタレン)、あるいはそれらに置換基が結合した化合物のような、環状オレフィンの重合単位を有する重合体であり、環状オレフィンに鎖状オレフィン及び/又は芳香族ビニル化合物を共重合させた共重合体であってもよい。環状オレフィンの単独重合体、あるいは2種以上の環状オレフィンの共重合体の場合は、開環重合によって二重結合が残るので、そこに水素添加されたものが、非晶性ポリオレフィン系樹脂として一般的に用いられる。なかでも、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が代表的である。
ポリエステル系樹脂は、二塩基酸と二価アルコールとの縮合重合によって得られる重合体であり、ポリエチレンテレフタレートが代表的である。アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルを主な単量体とする重合体であり、メタクリル酸メチルの単独重合体のほか、メタクリル酸メチルと、アクリル酸メチルのようなアクリル酸エステルや芳香族ビニル化合物などとの共重合体であってもよい。ポリカーボネート系樹脂は、主鎖にカーボネート結合(−O−CO−O−)を持つ重合体であり、ビスフェノールAとホスゲンとの縮合重合によって得られるものが代表的である。鎖状ポリオレフィン系樹脂は、エチレンやプロピレンの如き鎖状オレフィンを主な単量体とする重合体であり、単独重合体や共重合体であることができる。なかでも、プロピレンの単独重合体や、プロピレンに少量のエチレンが共重合されている共重合体が代表的である。
このような保護膜は、偏光子に貼合される面とは反対側の面に、ハードコート層、反射防止層、防眩層、帯電防止層の如き各種の表面処理層を有していてもよい。保護膜は、このような表面処理層が形成されている場合を含めて、その厚さを5〜150μm程度とすることができる。その厚さは、好ましくは10μm以上であり、また好ましくは120μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
[偏光子と保護膜の接着]
偏光子と保護膜の接着にあたっては、上で説明した光硬化性接着剤組成物の塗布層を、偏光子と保護膜の貼合面の一方又は両方に形成し、その塗布層を介して偏光子と保護膜を貼合し、こうして形成される未硬化の光硬化性接着剤組成物の塗布層を、活性エネルギー線の照射により硬化させ、保護膜を偏光子上に固着させる。光硬化性接着剤組成物の塗布層は、偏光子の貼合面に形成してもよいし、保護膜の貼合面に形成してもよい。塗布層の形成には、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。また、偏光子と保護膜を両者の貼合面が内側となるように連続的に供給しながら、その間に接着剤組成物を流延させる方式を採用することもできる。各塗工方式には各々最適な粘度範囲があるため、溶剤を用いて光硬化性接着剤組成物の粘度調整を行うことも有用な技術である。このための溶剤には、偏光子の光学性能を低下させることなく、光硬化性接着剤組成物を良好に溶解するものが用いられるが、その種類に特別な限定はない。例えば、トルエンに代表される炭化水素類、酢酸エチルに代表されるエステル類などの有機溶剤が使用できる。接着剤層の厚さは、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。接着剤層が厚くなると、接着剤組成物の反応率が低下し、偏光板の耐湿熱性が悪化する傾向にある。
偏光子と保護膜を接着するにあたり、両者の貼合面の一方又は双方には、接着剤組成物の塗布層を形成する前に、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理の如き易接着処理が施されてもよい。
光硬化性接着剤組成物の塗布層に活性エネルギー線を照射するために用いる光源は、紫外線、電子線、X線などを発生するものであればよい。特に波長400nm以下に発光分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好適に用いられる。光硬化性接着剤組成物への活性エネルギー線照射強度は、目的とする組成物毎に決定されるものであって、特に限定されないが、開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜100mW/cm2であることが好ましい。光硬化性接着剤組成物への光照射強度が0.1mW/cm2未満であると、反応時間が長くなりすぎ、100mW/cm2を超えると、ランプから輻射される熱及び光硬化性接着剤組成物の重合時の発熱により、光硬化性接着剤組成物の黄変や偏光子の劣化を生じる可能性がある。光硬化性接着剤組成物への光照射時間は、硬化する組成物毎に制御されるものであって、やはり特に限定されないが、照射強度と照射時間の積として表される積算光量が10〜5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。光硬化性接着剤組成物への積算光量が10mJ/cm2未満であると、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる接着剤層の硬化が不十分となる可能性があり、一方でその積算光量が5,000mJ/cm2を超えると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上には不利なものとなる。
偏光子の両面に保護膜を貼合する場合、活性エネルギー線の照射はどちらの保護膜側から行ってもよいが、例えば、一方の保護膜が紫外線吸収剤を含有し、他方の保護膜が紫外線吸収剤を含有しない場合には、紫外線吸収剤を含有しない保護膜側から活性エネルギー線を照射するのが、照射される活性エネルギー線を有効に利用し、硬化速度を高めるうえで好ましい。
[偏光板の光学特性]
本発明の偏光板は、光硬化性接着剤組成物に配合される380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤(C)の量を少なくし、ナフタレン系光増感助剤(D)を所定量配合することで、偏光子と保護膜との間の接着強度を保ちながら、偏光子が本来有する色相がそのまま発現できるようにしたものである。そのため、偏光子が望まれるニュートラルグレーを示すものであれば、そのニュートラルグレーをそのまま維持することができ、例えば、直交色相のa値及びb値がともに−0.5〜+0.5の範囲に入るようにすることができる。
直交色相とは、2枚の偏光板をそれぞれの吸収軸が直交するように重ねた状態で、一方の面から光をあてたときに他方の面から透過してくる光の色相を意味する。ここでの色相は、Lab表色系で表されるa及びbで、標準の光Cを用いて測定される。Lab表色系は、JIS K 5981:2006の「5.5 促進耐候性試験」に記載されるように、ハンターの明度指数Lと色相a及びbで表されるものである。L、a及びbの値は、JIS Z 8722:2009に規定される三刺激値X、Y及びZから、次の式によって計算される。
L=10Y1/2
a=17.5(10.2X−Y)/Y1/2
b=7.0(Y−0.847Z)/Y1/2
また、本発明の偏光板は、高温高湿の条件にさらされても劣化しにくく、耐湿熱性に優れている。例えば、温度60℃、相対湿度90%の湿熱環境下に240時間放置する湿熱試験を行った後でも、直交色相のa値及びb値を上記範囲に保つことができる。
[積層光学部材]
本発明の偏光板は、偏光板以外の光学機能を有する光学層を積層して、積層光学部材とすることができる。典型的には、偏光板の保護膜に、接着剤や粘着剤を介して光学層を積層貼着することにより、積層光学部材とされるが、その他、例えば、偏光子の一方の面に本発明に従って光硬化性接着剤組成物を介して保護膜を貼合し、偏光子の他方の面に接着剤や粘着剤を介して光学層を積層貼着することもできる。後者の場合、偏光子と光学層を貼着するための接着剤として、本発明で規定する光硬化性接着剤組成物を用いれば、その光学層は、同時に本発明で規定する保護膜ともなりうる。
偏光板に積層される光学層の例を挙げると、液晶セルの背面側に配置される偏光板に関しては、その偏光板の液晶セルに面する側とは反対側に積層される、反射層、半透過反射層、光拡散層、集光板、輝度向上フィルムなどがある。また、液晶セルの前面側に配置される偏光板及び液晶セルの背面側に配置される偏光板のいずれについても、その偏光板の液晶セルに面する側に積層される位相差板などがある。
反射層、半透過反射層、又は光拡散層は、それぞれ反射型の偏光板(光学部材)、半透過反射型の偏光板(光学部材)、又は拡散型の偏光板(光学部材)とするために設けられる。反射型の偏光板は、視認側からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置に用いられ、バックライト等の光源を省略できるため、液晶表示装置を薄型化しやすい。また半透過型の偏光板は、明所では反射型として、暗所ではバックライトからの光で表示するタイプの液晶表示装置に用いられる。反射型偏光板としての光学部材は、例えば、偏光子上の保護膜の上に、反射層として、アルミニウム等の金属からなる箔や蒸着膜を付設することにより形成することができる。半透過型の偏光板としての光学部材は、前記の反射層をハーフミラーとしたり、パール顔料等を含有して光透過性を示す反射板を偏光板に接着したりすることで形成できる。一方、拡散型偏光板としての光学部材は、例えば、偏光板上の保護膜にマット処理を施す方法、微粒子含有の樹脂を塗布する方法、微粒子含有のフィルムを接着する方法など、種々の方法を用いて、表面に微細凹凸構造を形成することにより形成できる。
さらに、積層光学部材は、反射拡散両用の偏光板であることもできる。反射拡散両用の偏光板は、例えば、拡散型偏光板の微細凹凸構造面にその凹凸構造が反映された反射層を設けるなどの方法により形成できる。微細凹凸構造を有する反射層は、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラツキを防止し、明暗のムラを抑制しうるなどの利点を有する。また、微粒子を含有した樹脂層やフィルムは、入射光及びその反射光が微粒子含有層を透過する際に拡散され、明暗ムラを抑制しうるなどの利点も有する。表面微細凹凸構造を反映させた反射層は、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングの如き蒸着やメッキ等の方法により、金属を微細凹凸構造の表面に直接付設することで形成できる。表面微細凹凸構造を形成するために配合する微粒子は、例えば、平均粒径が0.1〜30μmであるシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモンの如き無機系微粒子、架橋又は非架橋のポリマーの如き有機系微粒子などでありうる。
集光板は、光路制御等を目的に用いられるもので、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、あるいはドット付設シートなどであることができる。
輝度向上フィルムは、液晶表示装置における輝度の向上を目的に用いられるもので、その例としては、屈折率の異方性が互いに異なる薄膜フィルムを複数枚積層して反射率に異方性が生じるように設計された反射型偏光分離シート、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持した円偏光分離シートなどが挙げられる。
他方、上記した光学層としての位相差板は、液晶セルによる位相差の補償等を目的として使用される。その例としては、各種プラスチックの延伸フィルム等からなる複屈折性フィルム、ディスコティック液晶やネマチック液晶が配向固定されたフィルム、フィルム基材上に上記の液晶層が形成されたものなどが挙げられる。フィルム基材上に液晶層を形成する場合、フィルム基材として、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
複屈折性フィルムを形成するプラスチックとしては、例えば、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレンのような鎖状ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリアミドなどが挙げられる。延伸フィルムは、一軸や二軸等の適宜な方式で処理したものであることができる。なお、位相差板は、広帯域化など光学特性の制御を目的として、2枚以上を組み合わせて使用してもよい。
積層光学部材においては、偏光板以外の光学層として位相差板を含むものが、液晶表示装置に適用したときに有効に光学補償を行えることから、好ましく用いられる。位相差板の位相差値(面内及び厚み方向)は、適用される液晶セルに応じて、最適なものを選べばよい。
積層光学部材は、偏光板と、上述した各種の光学層から使用目的に応じて選択される1層又は2層以上とを組み合わせ、2層又は3層以上の積層体とすることができる。その場合、積層光学部材を形成する各種光学層は、接着剤や粘着剤を用いて偏光板と一体化されるが、そのために用いる接着剤や粘着剤は、接着剤層や粘着剤層が良好に形成されるものであれば特に限定はない。接着作業の簡便性や光学歪の発生防止などの観点から、粘着剤(感圧接着剤とも呼ばれる)を使用することが好ましい。粘着剤には、アクリル系重合体や、シリコーン系重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとするものを用いることができる。なかでも、アクリル系粘着剤のように、光学的な透明性に優れ、適度な濡れ性や凝集力を保持し、基材との接着性にも優れ、さらには耐候性や耐熱性などを有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等の剥離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。アクリル系粘着剤においては、メチル基やエチル基やブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどからなる官能基含有アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下となるように配合した、重量平均分子量が10万以上のアクリル系共重合体が、ベースポリマーとして有用である。
偏光板への粘着剤層の形成は、例えば、トルエンや酢酸エチルなどの有機溶媒に粘着剤組成物を溶解又は分散させて10〜40重量%の溶液を調製し、これを偏光板上に直接塗工する方式や、予めプロテクトフィルム上に粘着剤層を形成しておき、それを偏光板上に移着する方式などにより、行うことができる。粘着剤層の厚さは、その接着力などに応じて決定されるが、1〜50μm程度の範囲が適当である。
また、粘着剤層には必要に応じて、ガラス繊維やガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粉やその他の無機粉末などからなる充填剤、顔料や着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが配合されていてもよい。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがある。
積層光学部材は、液晶セルの片側又は両側に配置することができる。用いる液晶セルは任意であり、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、スーパーツイステッドネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなど、種々の液晶セルを使用して液晶表示装置を形成することができる。積層光学部材と液晶セルの接着には、通常粘着剤が用いられる。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り重量基準である。また、以下の例で用いたカチオン重合性化合物、光カチオン重合開始剤、光増感剤及び光増感助剤は次のとおりであり、以下それぞれの記号で表示する。
(A)カチオン重合性化合物(表では「エポキシ化合物」と略記する)
(a1)3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〔前記式(2)において、R5=R6=H、n=0である化合物〕、
(a2)セロキサイド2081(ダイセル化学社製脂環式エポキシ樹脂)〔前記式(2)において、R5=R6=H、Y2=(CH25、n=1である化合物〕、
(a3)エポリードGT−301(ダイセル化学社製脂環式エポキシ樹脂)〔前記式(3)において、R7=R8=R9=H、Y3=Y4=(CH25、p=q=1である化合物〕、
(a4)1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル〔前記式(12)において、X=(CH24である化合物〕、
(a5)アデカレジンEP−4080E〔前記式(12)において、X=2,2−イソブチリデン−ビスシクロヘキシルである化合物〕、
(a6)式(13)で表される化合物。
Figure 2011028234
(B)光カチオン重合開始剤(表では「開始剤」と略記する)
(b1)トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート。
(C)光増感剤
(c1)9,10−ジブトキシアントラセン〔前記式(IV)において、R5=R6=ブチル、R7=Hの化合物、波長382nmで極大吸収を示す〕。
(D)光増感助剤(表では「増感助剤」と略記する)
(d1)1,4−ジエトキシナフタレン〔前記式(I)において、R1=R2=エチルの化合物〕、
(d2)1−ナフトール。
[参考例](防眩層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムの作製)
次の各成分が酢酸エチルに固形分濃度60%で溶解されており、硬化後に1.53の屈折率を与える紫外線硬化性樹脂組成物を用意した。
ペンタエリスリトールトリアクリレート 60部、
多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物) 40部。
次に、この紫外線硬化性樹脂組成物の固形分100部に対し、多孔質シリカ粒子〔商品名“サイリシア”、富士シリシア化学(株)製〕を2部と、光重合開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名“ルシリン TPO”、BASF社製)を5部添加して、塗布液を調製した。
この塗布液を、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)上に塗布して紫外線硬化性樹脂組成物層を形成し、80℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムの紫外線硬化性樹脂組成物層側から、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で300mJ/cm2となるように照射し、紫外線硬化性樹脂組成物層を硬化させて、表面に凹凸を有する防眩層(硬化樹脂)と二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとの積層体からなり、ヘイズ値が10%である防眩フィルムを得た。なお、ヘイズ値は、ヘイズ・透過率計“HM−150”〔(株)村上色彩技術研究所製〕を用いて測定した。
[実施例1〜26及び比較例1〜13]
(1)光硬化性接着剤組成物の調製
表1に示す配合割合(単位は部)で各成分を混合した後、脱泡して、光硬化性接着剤液を調製した。なお、光カチオン重合開始剤(b1)は、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、表1にはその固形分量で表示した。
Figure 2011028234
(2)偏光板の作製
紫外線吸収剤を含む厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム〔商品名“フジタック”、富士フイルム(株)製〕の表面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、バーコーターを用いて、上で調製したそれぞれの接着剤液を硬化後の膜厚が約3μmとなるように塗工した。その接着剤層にポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光子を貼合した。また、参考例で作製した防眩層を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ43μm)の貼合面(防眩層側とは反対側の表面)にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、上と同じ接着剤液を硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗工した。その接着剤層に、上で作製したトリアセチルセルロースフィルムが片面に貼合された偏光子の偏光子側を貼合し、積層物を作製した。この積層物の防眩層を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製の“Dバルブ”を使用)を用いて積算光量が750mJ/cm2となるように紫外線を照射し、接着剤を硬化させた。こうして、偏光子の両面に保護膜が貼合された偏光板を作製した。
(3)偏光板の光学特性評価
上記(2)で作製した偏光板を30mm×30mmの大きさに裁断し、それぞれの直交透過率、偏光度、直交色相のa値及びb値(表では、それぞれ「直交a」及び「直交b」と略記する)を測定した。測定には、(株)島津製作所製の紫外可視分光光度計“UV−2450”にオプションアクセサリーである“偏光子付きフィルムホルダー”をセットしたものを用い、波長380nmから780nmの範囲における偏光板の透過軸方向と吸収軸方向の透過スペクトルを求めて、その分光光度計に付属するソフトウェア“UV−Probe”によって、波長410nm、550nm及び650nmにおける直交透過率、偏光度、並びに直交色相のa値及びb値を算出した。結果を、表1における接着剤組成の変量(光増感剤及び光増感助剤の量)とともに、表2に示した。
(4)湿熱下における偏光板の耐久性評価
上記(2)で作製した偏光板を30mm×30mmの大きさに裁断し、温度60℃、相対湿度90%の湿熱環境下に240時間放置する湿熱試験を行い、試験後の偏光板の偏光度、直交色相のa値及びb値を測定した。測定は、上記(3)と同様の方法で行った。結果を併せて表2に示した。表2中、「試験前」とした欄は、湿熱試験を行う前、すなわち上記(3)に示した作製直後の偏光板について得られた値であり、「試験後」とした欄は、湿熱試験を行った後の偏光板について得られた値である。
Figure 2011028234
表2からわかるように、接着剤にアントラセン系光増感剤(c1)を多量に配合した比較例1〜3、6および11で得られた偏光板は、波長410nmにおける直交透過率が高く、青色の光が漏れるものであるとともに、直交色相のa値及びb値の絶対値がともに高く、ニュートラルグレーから青色方向にずれていた。また、湿熱試験により直交色相が大きく変化した。一方、接着剤にアントラセン系光増感剤(c1)を配合していない比較例4、8、9および13で得られた偏光板は、製造直後には良好な偏光度を示し、青色の光漏れもなく、ニュートラルグレーの色相を与えるものの、耐湿熱性が悪く、湿熱試験後には偏光度が99%を下回り、また直交色相もニュートラルグレーからずれていた。
これに対し、アントラセン系光増感剤(c1)の配合量を少量にとどめるとともに、ナフタレン系光増感助剤(d1)を所定量配合した接着剤を用いた実施例1〜26で得られた偏光板は、高い偏光度並びに直交色相で0に近いa値及びb値を与えるとともに、これらの値が湿熱試験前後でほとんど変わらず、良好な耐湿熱性を有することが確認された。

Claims (10)

  1. 二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して貼合された透明樹脂からなる保護膜とを備える偏光板であって、前記接着剤層は、
    (A)カチオン重合性化合物を100重量部、
    (B)光カチオン重合開始剤を1〜10重量部、
    (C)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤を0.1〜2重量部、及び
    (D)下式(I):
    Figure 2011028234
    (式中、R1及びR2は各々独立に炭素数1〜6のアルキル基を表す)
    で示されるナフタレン系光増感助剤を0.1〜10重量部
    含有する光硬化性接着剤組成物から形成されている偏光板。
  2. 前記カチオン重合性化合物(A)が芳香環を含まないエポキシ樹脂である請求項1に記載の偏光板。
  3. 前記光増感剤(C)は、下式(IV):
    Figure 2011028234
    (式中、R5及びR6は各々独立に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数2〜12のアルコキシアルキル基を表し、R7は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す)
    で示されるアントラセン系化合物である請求項1または2に記載の偏光板。
  4. 前記光硬化性接着剤組成物は、前記カチオン重合性化合物(A)100重量部に対し、前記光増感剤(C)を0.1〜0.5重量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板。
  5. 偏光子の少なくとも一方の面に貼合される保護膜は、アセチルセルロース系樹脂からなる請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板。
  6. 偏光子の少なくとも一方の面に貼合される保護膜は、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及び鎖状ポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる透明樹脂からなる請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板。
  7. 偏光子の一方の面に、前記接着剤層を介して貼合されたアセチルセルロース系樹脂からなる保護膜と、偏光子の他方の面に前記接着剤層を介して貼合された非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及び鎖状ポリオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる透明樹脂からなる保護膜とを備える請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板。
  8. 直交色相のa値及びb値がともに−0.5〜+0.5の範囲にある請求項1〜7のいずれかに記載の偏光板。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の偏光板と他の光学層との積層体からなる積層光学部材。
  10. 前記光学層は位相差板を含む請求項9に記載の積層光学部材。
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