6. 発明の詳細な説明
本発明は一部には、インフルエンザウイルス、特に低温に適応した、および/または温度感受性の、および/または弱毒化インフルエンザウイルスを高力価まで複製することを支持するクローン化MDCK細胞株を得ることができる、という知見に基づいている。したがって本発明は、1態様では、種々の細胞培養条件(インフルエンザウイルス、例えば低温に適応した、および/または温度感受性の、および/または弱毒化したインフルエンザウイルス、を高力価まで複製するのを支持することができる血清無含培地製剤を含む)に適合させたMDCK細胞株を提供し、そのような細胞を本明細書中では「本発明の細胞」と呼ぶ。
さらに、本発明は本発明の細胞およびその他の成分を含んでいる細胞培養組成物を提供し、その他の成分としては、限定はされないが、培地(例えば、本明細書で開示する培地)、培地成分、バッファー、化合物、別の細胞種、ウイルス材料(例えば、ウイルスのゲノム、ウイルス粒子)、および異種タンパク質などが挙げられる。
本発明はまた、1つ以上の特定の性質を有するMDCK細胞細胞の培養方法および培養に有用な培地製剤を提供し、そのような性質としては、限定はされないが、非腫瘍形成性であること(例えば、ヌードマウスに腫瘤を形成させない)、および/または非発癌性であること、および/または付着性の細胞として増殖すること、および/または非付着性の細胞として増殖すること、および/または上皮様の形態を有すること、および/または種々のウイルス(限定はされないが、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、およびフラボウイルスを含む)の複製を支持すること、および/またはインフルエンザウイルス(低温に適応した、および/または温度感受性の、および/または弱毒化したインフルエンザウイルス)の高力価への複製を支持すること、などが挙げられる。本発明の培養条件には、血清を含有した培地製剤および血清無含培地製剤、ならびに動物タンパク質無含(APF)製剤が含まれる。
さらに本発明は、MDCK細胞中でワクチン材料(例えばインフルエンザウイルス)を産生する方法、MDCK細胞からワクチン材料を調製する方法、およびMDCK細胞中で産生されたワクチン材料を用いるインフルエンザ感染の予防方法を提供する。本発明の細胞は、他の哺乳類の細胞株(例えば、Vero、PerC6(登録商標)、HEK-293、MRC-5、およびWI-38細胞など)中では効率的に複製しない、低温適応/温度感受性/弱毒化(ca/ts/att)インフルエンザ株(例えば、FluMist(登録商標)中のもの)の産生に特に有用である。
6.1 定義
本明細書中で用いている腫瘍形成性という用語は、当業者が考える通常の意味を有する。1実施形態においては、腫瘍形成性は、成体のヌードマウスモデルによって判定される(例えば、Stileら, 1976, Cancer Res., 36:1353、および下記の実施例5)。また、腫瘍形成性はその他のアッセイ、例えば、ニワトリ胚への注入、および/または漿尿膜への局所適用によって、試験することもできる(Leightonら, 1970, Cancer, 26:1024)。
「組換え」という用語は、物質(例えば、核酸またはタンパク質)が人工的にまたは合成によって(天然でなく)、ヒトの介入によって改変されていることを示している。改変は、その天然の環境または状態の中で、またはそこから取り出した物質に行うことができる。特に、ウイルス、例えばインフルエンザウイルスに関してこの用語を用いる場合には、ウイルスは組換え核酸の発現によって産生されるときに組換えである。
「再集合体」という用語は、ウイルスに関して用いられる場合には、該ウイルスが、2種以上の親ウイルス株またはソースに由来する遺伝子的および/もしくはポリペプチド成分を含んでいることを示している。例えば、7:1再集合体は、第1の親ウイルス由来の7つのゲノムセグメント(または遺伝子セグメント)と、第2の親ウイルス由来の1つの補充的ウイルスゲノムセグメント(例えば、ヘマグルチニンもしくはノイラミニダーゼをコードする)を含む。6:2再集合体は、第1の親ウイルス由来の6つのゲノムセグメント、最も一般的には6つの内部遺伝子と、別の親ウイルス由来の2つの補充的セグメント、例えばヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼを含む。
本明細書で用いている「約」という用語は、特に断らない限りは、この用語によって修飾される値の10%以下で上下する値を意味する。例えば、「約5μg/kg」という用語は4.5μg/kgから5.5μg/kgの範囲であることを意味する。別の1例として、「約1時間」とは54分間から66分間の範囲を意味する。
「温度感受性」、「低温に適応した」という用語は当業界ではよく知られている。例えば、「温度感受性」(「ts」)という用語は、A型インフルエンザ株については、ウイルスが高温、例えば39℃で、より低い温度、例えば33℃と比較して100倍以上の力価の低減を示すこと、およびB型インフルエンザ株については、ウイルスが高温、例えば37℃で、より低い温度、例えば33℃と比較して100倍以上の力価の低減を示すことを意味している。例えば、「低温に適応した」(「ca」)という用語は、そのウイルスがより低い温度、例えば25℃で、より高い温度、例えば33℃での増殖の100倍以内でより高い増殖速度を示すことを意味する。例えば、「弱毒化した」(「att」)という用語は、そのウイルスがフェレットの上気道では複製するが肺組織では検出できず、そのフェレットにインフルエンザ様疾患を起こさないことを指す。中間的な表現型を有するウイルス、すなわち、39℃(A型ウイルス株について)または37℃(B型ウイルス株)で100倍未満分の力価の低下を示すウイルス、25℃での増殖が33℃での増殖の100倍を超える(例えば、200倍未満内、500倍未満内、1,000倍未満内、10,000倍未満内)、ならびに/または、フェレットの上気道での増殖と比較して肺での増殖が低下している(すなわち、部分的に弱毒化されている)および/もしくはフェレットに起こすインフルエンザ様疾患の程度が軽いウイルスも本発明に包含される有用なウイルスであることは理解されよう。増殖とは、力価、プラークのサイズまたは形態、ウイルス粒子の密度、または当業者には既知のその他の基準で表されるウイルスの量を指す。
6.2 細胞の特性
本発明の細胞は、1実施形態においては、脊椎動物細胞である。別の1実施形態においては、本発明の細胞は、哺乳類細胞、例えばハムスター、ウシ、サル、またはイヌ由来の細胞、特にそれらの動物由来の腎臓細胞または腎臓細胞株である。また別の1実施形態においては、本発明の細胞はMDCK細胞(例えば、ATCC CCL-34 MDCKと系統的に関連した細胞)であり、その細胞を本明細書中では特に「本発明のMDCK細胞」と呼び、「本発明の細胞」という用語に包含される。具体的な1実施形態においては、本発明の細胞はATCC CCL-34 MDCK由来である。本発明の細胞は当業界でよく知られた方法を用いてCCL-34 MDCK細胞から誘導することができる。例えば、最初にCCL-34 MDCK細胞を限定した回数、血清を含んでいる培地(例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+10% ウシ胎児血清(FBS)+4 mM グルタミン+4.5 g/L グルコース、またはその他の本明細書に記載の培地)中で継代した後、個々の細胞のクローニングと該クローンの特性決定を行うことができる。生物学的および生理学的に優れた性質(限定はされないが、倍化時間、腫瘍形成性プロフィール、およびウイルス産性を含む)を有するクローンを、マスターセルバンク(MCB)の作製のために選択することができる。
第1の態様においては、本発明はMadin-Darby Canine Kidney(MDCK)細胞を提供し、その際、複数のMDCK細胞を含んでいる細胞培養組成物はインフルエンザウイルスの複製を支持することができる。具体的な1態様においては、このMDCK細胞は、低温適応、弱毒化、および温度感受性の性質のうちの1つ以上を有するインフルエンザウイルスの複製を支持する。特定の実施形態においては、そのMDCK細胞がウイルス複製を支持する能力は、感染細胞培養物から(例えば、50%組織培養感染量(TCID50)アッセイまたは蛍光フォーカスアッセイ(FFA)を用いて)得られるウイルスの収率を測定することによって求められる。特定の実施形態においては、このMDCK細胞は、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも7.0のミリリットルあたりの50%組織培養感染量の底を10とした対数(log10 TCID50/mL)まで指示するものである。特定の実施形態においては、このMDCK細胞は、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約7.2 log10 TCID50/mLまで指示するものである。特定の実施形態においては、このMDCK細胞は、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約7.4 log10 TCID50/mLまで支持するものである。特定の実施形態においては、このMDCK細胞は、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約7.6 log10 TCID50/mLまで支持するものである。特定の実施形態においては、このMDCK細胞は、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約7.8 log10 TCID50/mLまで支持するものである。特定の実施形態においては、このMDCK細胞は、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約8.0 log10 TCID50/mLまで支持するものである。特定の実施形態においては、このMDCK細胞は、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約8.2 log10 TCID50/mLまで支持するものである。特定の実施形態においては、このMDCK細胞は、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約8.4 log10 TCID50/mLまで支持するものである。特定の実施形態においては、このMDCK細胞は、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約8.6 log10 TCID50/mLまで支持するものである。特定の実施形態においては、このMDCK細胞は、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約8.8 log10 TCID50/mLまで支持するものである。特定の実施形態においては、このMDCK細胞は、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約9.0 log10 TCID50/mLまで支持するものである。あるいはまたは場合により、ウイルスの収率は、蛍光フォーカスアッセイ法(実施例6に記載され、かつ当業界で知られている、例えば、Stokesら, 1988, J. Clin. Microbiol. 26:1263-6、および米国特許公開20040265987を参照)に従ってサンプル中に存在するウイルスの濃度を測定することによって定量することができる。FFA値はlog10 FFU/mL(蛍光フォーカスユニット/mL)で報告されていることが多い。従って、特定の実施形態においては、MDCK細胞は、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約7.0のミリリットルあたりの蛍光フォーカスユニットの底を10とした対数(log10 FFU/mL)まで、または少なくとも約7.2 log10 FFU/mLまで、または少なくとも約7.4 log10 FFU/mLまで、または少なくとも約7.6 log10 FFU/mLまで、または少なくとも約7.8 log10 FFU/mLまで、または少なくとも約8.0 log10 FFU/mLまで、または少なくとも約8.2 log10 FFU/mLまで、または少なくとも約8.4 log10 FFU/mLまで、または少なくとも約8.6 log10 FFU/mLまで、または少なくとも約8.8 log10 FFU/mLまで、または少なくとも約9.0 log10 FFU/mLまで、支持するものである。
特定の実施形態においては、本発明の細胞は培養物中で増殖して細胞培養組成物を生成する(これも本明細書中では「本発明の細胞培養組成物」と呼ぶ)。1実施形態においては、本発明の細胞培養組成物は唯一の宿主細胞種として本発明のMDCK細胞を含んでおり、その際、該細胞培養組成物は低温適応、弱毒化、および温度感受性の性質のうちの1つ以上を有しているインフルエンザウイルスの複製を、log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLで少なくとも約7.0まで、少なくとも約7.2まで、少なくとも約7.4まで、少なくとも約7.6まで、少なくとも約7.8まで、少なくとも約8.0まで、少なくとも約8.2まで、少なくとも約8.4まで、少なくとも約8.6まで、少なくとも約8.8まで、少なくとも約9.0まで、少なくとも約9.2まで、少なくとも約9.4まで、少なくとも約9.6まで、少なくとも約9.8まで、少なくとも約10.0まで、少なくとも約10.2まで、少なくとも約10.4まで、少なくとも約10.6まで、少なくとも約10.8まで、少なくとも約11.0まで支持する。
1態様においては、本発明の細胞は選択培地(例えば、血清無含またはAPF培地、例えば本明細書中に記載のものなど)中での増殖に適合させたものである。そのような適合化は、個々の細胞のクローニングの前、クローニングと同時、またはクローニング後に生じうる。特定の実施形態においては、本発明の細胞は本明細書中で後述するとおり、MediV 101、MediV 102、MediV 103、MediV 104、MediV 105、M-32、MediV 107、M18M、またはそれらの増殖に最適化させた誘導培地中で増殖するように適合される。従って本発明の細胞は、本明細書に開示した培地中で増殖させて本発明の細胞培養組成物を生成することができる。1実施形態においては、本発明の細胞培養組成物は唯一の宿主細胞腫として本発明のMDCK細胞を含んでおり、その際、増殖培地は血清無含培地である。
本発明の具体的な1実施形態においては、細胞は細胞株の細胞であり、そのような細胞株としては、限定はされないが、American Type Culture Collection(10801 University Boulevard, Manassas, Va. 20110-2209)に2005年1月5日に寄託され、ATCC寄託番号PTA-6500、PTA-6501、PTA-6502、PTA-6503の指定を受けたもの、および2006年10月5日に寄託され、それぞれATCC寄託番号PTA-7909およびPTA-7910の指定を受けたそれらのサブクローン1-Aおよび1-Bが含まれる。これらの寄託物は、特許手続のための微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の条項の下に維持される。1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、ヒトへの使用のために、米国食品医薬品局による承認に適切なワクチン材料の調製に有用なセルバンクの作製に用いられる。1実施形態においては、本発明の細胞培養組成物は唯一の宿主細胞種としてATCCアクセッション番号PTA-6500、PTA-6501、PTA-6502、PTA-6503、PTA-7909、またはPTA-7910として寄託されているMDCK細胞を含んでいる。具体的な1実施形態においては、本発明の細胞培養組成物は、唯一の宿主細胞種としてATCCアクセッション番号PTA-7909として寄託されているMDCK細胞を含んでいる。別の具体的な1実施形態においては、本発明の細胞培養組成物は、唯一の宿主細胞種としてPTA-7910として寄託されているMDCK細胞を含んでいる。
いくつかの実施形態においては、本発明は、継代し、そして1つ以上の具体的な特徴(限定はされないが、血清含有培地、もしくは血清無含培地、または動物タンパク質無含培地のいずれかで付着細胞として増殖すること、血清含有培地、もしくは血清無含培地、または動物タンパク質無含培地のいずれかで非付着細胞として増殖すること、上皮様の形態を有する、非腫瘍形成性であること(例えば、ヌードマウスに腫瘤を形成しないこと)、および/または非発癌性であること、および/または種々のウイルス、例えば限定はされないが、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、およびフラボウイルスなど、の複製を支持するものであること、などが挙げられる)に関して選択することによって、細胞株MDCK(CCL 34)由来のMDCK細胞を提供する。
1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は非腫瘍形成性である。別の1実施形態においては、本発明の細胞培養組成物は唯一の宿主細胞種として本発明のMDCK細胞を含んでおり、その際、本発明のMDCK細胞は非腫瘍形成性である。細胞が腫瘍形成性か否かを決定する方法は当業界ではよく知られており(例えば、Leightonら, 1970, Cancer, 26:1024、およびStilesら, 1976, Cancer Res., 36:1353を参照)、米国食品医薬品局によって現在好まれている方法では、下記の第8.7節に詳述しているヌードマウスモデルが用いられている。具体的な1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は成体のヌードマウスモデルにおいて非腫瘍形成性である(Stilesら, 上述の文献、および下記の第8.7節を参照)。別の具体的な1実施形態においては、本発明のMDCK細胞はニワトリ胚中に注入したとき、および/または漿尿膜に局所的にアプライしたときに非腫瘍形成性である(Leightonら, 上述の文献)。さらにまた別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は成体のヌードマウスモデルでは非腫瘍形成性であるが、ニワトリ胚中に注入したとき、および/または漿尿膜に局所的にアプライしたときには非腫瘍形成性ではない。さらに別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は成体のヌードマウスモデルで、およびニワトリ胚中に注入したとき、および/または漿尿膜に局所的にアプライしたとき、非腫瘍形成性である。またさらに別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、培地中で、少なくとも20回の継代後、または少なくとも30回の継代後、または少なくとも40回の継代後、または少なくとも50回の継代後、または少なくとも60回の継代後、または少なくとも70回の継代後、または少なくとも80回の継代後、または少なくとも90回の継代後、または少なくとも100回の継代後、非腫瘍形成性である。またさらに別の具体的な1実施形態においては、その培地は本明細書に記載の培地である(例えば、Medi 105)。
腫瘍形成性は当業者には既知の多数の手法で数量化することができる。一般的に用いられている1方法は、「TD50」値を測定することであり、該TD50は、供試動物の50%に腫瘍を誘発させるのに必要な細胞数と定義される(例えば、Potten C,Hendry J.編, Cell clones, London Churchill Livingstone, 1985, p223の腫瘍細胞のためのHill, R. TD50アッセイを参照)。1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、約1010〜約101、または約108〜約103、または約107〜約104のTD50値を有する。具体的な1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、約1010を超える、または約109を超える、または約108を超える、または約107を超える、または約106を超える、または約105を超える、または約104を超える、または約103を超える、または約102を超える、または約101を超えるTD50値を有する。
1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は非発癌性である。別の1実施形態においては、本発明の細胞培養組成物は唯一の宿主細胞種として本発明のMDCK細胞を含んでおり、該MDCK細胞は非発癌性である。細胞が発癌性であるか否かを決定する方法は当業界ではよく知られており、通常は細胞溶解物および/またはDNAをげっ歯類の新生仔に接種し、時間とともになんらかの腫瘍形成が見られないか評価する(例えば、NowinskiとHays, 1978, J. Virol. 27:13-8;Peeperら, 2002, Nat Cell Biol., 4:148-53; Code of Federal Regulation (CFR), 「Oncogenicity」, Title 40, Vol. 8, Chapter 1, section 798.330, pp. 160-164を参照)。例えば、少なくとも107個の細胞の等価物からの細胞溶解物および/またはDNAを、典型的には4日齢未満のげっ歯類(例えば、ハムスター、ヌードマウス、ラットなど)の新生仔に注射し、その後、最長で5ヶ月またはそれ以上観察する。発癌性のアッセイは民間の試験会社によって慣用的に行われている(例えば、BioReliance、Protocol #001031および#001030を参照)。1実施形態においては、本発明のMDCK細胞の少なくとも105個、または少なくとも106個、または少なくとも107個、から得られる細胞溶解物および/またはDNAは、げっ歯類の新生仔に注射したとき、2ヶ月、または3ヶ月、または4ヶ月、または5ヶ月、または6ヶ月、またはそれ以上の期間で腫瘍の形成を誘発しない。別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞から得られた0.01 mg、または0.02 mg、または0.03 mg、または0.04 mg、または0.05 mg、または0.06 mg、または0.07 mg、または0.08 mg、または0.09 mg、または0.10 mg、またはそれ以上のDNAは、げっ歯類の新生仔に注射したとき、2ヶ月、または3ヶ月、または4ヶ月、または5ヶ月、または6ヶ月、またはそれ以上の期間で腫瘍の形成を誘発しない。
別の1実施形態においては、本発明の細胞は、血清含有もしくは血清無含培地、または動物タンパク質無含培地のいずれかで付着細胞として増殖する。また別の1実施形態においては、本発明の細胞は、血清含有もしくは血清無含培地、または動物タンパク質無含培地のいずれかで非付着細胞(例えば、非付着条件下で増殖することができる)として増殖する。また別の1実施形態においては、本発明の細胞は上皮様の形態を有する。またさらに別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、種々のウイルス、例えば限定はされないが、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、およびフラボウイルスなど、の複製を支持する。本発明のMDCK細胞が1つ以上の具体的な特徴の任意の組合せを有しうることが意図され、そのような特徴として、限定はされないが、非腫瘍形成性であること、非発癌性であること、付着細胞として増殖すること、非付着細胞として増殖すること、上皮様の形態を有すること、種々のウイルスの複製を支持すること、およびインフルエンザウイルスの高力価、例えば、少なくとも約7.0、少なくとも約7.2、少なくとも約7.4、少なくとも約7.6、少なくとも約7.8、少なくとも約8.0、少なくとも約8.2、少なくとも約8.4、少なくとも約8.6、少なくとも約8.8、少なくとも約9.0、少なくとも約9.2、少なくとも約9.4、少なくとも約9.6、少なくとも約9.8、少なくとも約10.0、少なくとも約10.2、少なくとも約10.4、少なくとも約10.6、少なくとも約10.8、もしくは少なくとも約11.0 log10 TCID50/mL、への増殖、および/または少なくとも約7.0、少なくとも約7.2、少なくとも約7.4、少なくとも約7.6、少なくとも約7.8、少なくとも約8.0、少なくとも約8.2、少なくとも約8.4、少なくとも約8.6、少なくとも約8.8、少なくとも約9.0、少なくとも約9.2、少なくとも約9.4、少なくとも約9.6、少なくとも約9.8、少なくとも約10.0、少なくとも約10.2、少なくとも約10.4、少なくとも約10.6、少なくとも約10.8、もしくは少なくとも約11.0 log10 FFU/mL、への増殖を支持すること、などが挙げられる。特定の実施形態においては、本発明の細胞培養組成物は唯一の宿主細胞種と
して本発明のMDCK細胞を含んでおり、その際、該本発明のMDCK細胞は1つ以上の具体的な特徴の任意の組み合わせを有しているものであり、そのような性質としては、限定はされないが、非腫瘍形成性であること、非発癌性であること、付着細胞として増殖すること、非付着細胞として増殖すること、上皮様の形態を有すること、種々のウイルスの複製を支持すること、およびインフルエンザウイルスの高力価(例えば、少なくとも約7.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mL)への複製を支持することが含まれる。
本発明のMDCK細胞の継代の各々および全てが、各細胞株の完全な系統が利用可能であるように十分に詳細に文書化できることが意図されている。継代の各々および全ての文書化があれば、ワクチン材料の調製のための本発明のMDCK細胞の使用についての米国食品医薬品局やその他の世界中の規制機関による承認が得やすくなるであろう。
別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は微生物夾雑物(例えば、細菌、ウイルス、および真菌の夾雑物)を含まない。細菌および真菌の夾雑物の存在を試験する方法は当業界ではよく知られており、民間の試験請負業者(例えば、BioReliance(登録商標)Rockville, MD)によって慣用的に行われている。許可された無菌試験とマイコプラズマ試験の詳細は下記の第8.7節に記載している。試験しうる微生物剤の具体例については表4に列挙している。
また別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞はウイルス、限定はされないが、オルソミクソウイルス(A型および/またはB型のインフルエンザ株)、パラミクソウイルス(A型および/またはB型のRSV、ヒトメタニューモウイルス、および1型、2型、および/または3型のパラインフルエンザウイルスを含む)、ラブドウイルス、およびフラボウイルスんど、の複製を支持する。
具体的な1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は低温に適応した温度感受性の(ca/ts)インフルエンザウイルス、例えばFluMist(登録商標)中に見出すことのできるウイルス(Belsheら, 1998, N Engl J Med 338:1405; Nicholら, 1999, JAMA 282:137; Jacksonら, 1999, Vaccine, 17:19051998)、および/またはこれらのウイルスの骨格(例えば残りの遺伝子セグメント)を含むか、または低温適応、弱毒化および温度感受性の特徴の1つ以上を有するインフルエンザウイルスの骨格(または1つ以上のvRNAセグメント)を含む再集合体ウイルス、の複製を支持する。ある細胞がウイルスの複製を支持する能力があることを示す一つの指標は、感染細胞の培養から得られるウイルスの収量である。ウイルスの収量は当業者には既知の多数の方法によって測定することができる。例えば、ウイルスの収量は感染性のウイルス粒子を測定する50%組織培養感染量(TCID50)アッセイ、または蛍光フォーカスアッセイ(FFA)に従ってあるサンプル中に存在するウイルスの濃度を測定することによって数値化することができる。TCID50値はlog10 TCID50/mLとして報告されることが多く、またFFA値はlog10 FFU/mL(蛍光フォーカスユニット/mL)として報告されることが多い。
1実施形態においては、本発明のMDCK細胞はインフルエンザウイルス(例えば、ca/ts株)が少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLまで複製することを支持する。別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞はインフルエンザウイルス(例えば、ca/ts株)が少なくとも約6.0、または少なくとも約6.2、または少なくとも約6.4、または少なくとも約6.6、または少なくとも約6.8、または少なくとも約7.0、または少なくとも約7.2、または少なくとも約7.4、または少なくとも約7.6、または少なくとも約7.8、または少なくとも約8.0、または少なくとも約8.2、または少なくとも約8.4、または少なくとも約8.6、または少なくとも約8.8、または少なくとも約9.0、または少なくとも約9.2、または少なくとも約9.4、または少なくとも約9.6、または少なくとも約9.8 log10 TCID50/mLまで複製することを支持する。また別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞はインフルエンザウイルス(例えば、ca/ts株)が少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 FFU/mLまで複製することを支持する。さらにまた別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞はインフルエンザウイルス(例えば、ca/ts株)が少なくとも約6.0、または少なくとも約6.2、または少なくとも約6.4、または少なくとも約6.6、または少なくとも約6.8、または少なくとも約7.0、または少なくとも約7.2、または少なくとも約7.4、または少なくとも約7.6、または少なくとも約7.8、または少なくとも約8.0、または少なくとも約8.2、または少なくとも約8.4、または少なくとも約8.6、または少なくとも約8.8、または少なくとも約9.0、または少なくとも約9.2、または少なくとも約9.4、または少なくとも約9.6、または少なくとも約9.8 log10 FFU/mLまで複製することを支持する。
流行性インフルエンザに対する毎年のワクチン接種のためのワクチン株の調製に用いられる野生型ウイルスは、ワクチンおよび関連の生物製剤に関する諮問委員会によって生物学的製剤評価研究センター(CBER)または世界保険機構(WHO)、および欧州医薬品審査庁(EMEA)に対して一年に一回勧告され、FDAまたは疾病管理予防センター(CDC)によって製造者へと供給されることは周知である。これらの株は次に、通常は野生型ウイルスのNA遺伝子および/またはHA遺伝子を、特定の所望の特徴を有するドナーウイルス(しばしばマスタードナーウイルスまたはMDVと称される)由来の残りの遺伝子セグメントと組合せた再集合体ワクチン株の製造のために使用することができる。例えばMDV株は、低温に適応した、および/または温度感受性の、および/または弱毒化された、および/または高い増殖速度を有することができる。下記の実施形態は、様々なインフルエンザ株(例えば、1つ以上の保健機関から勧告されている野生型株など)の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型に関する。当業者であれば承知しているとおり、このような低温適応した、および/または温度感受性の、および/または弱毒化したインフルエンザウイルスは、目的の株からのHAおよびNA遺伝子セグメント、ならびに適切な低温適応した、および/または温度感受性の、および/または弱毒化したインフルエンザ株(本明細書中では、「低温に適応した、温度感受性の、弱毒化した骨格」とも呼ぶ)(例えばFluMist(登録商標)中に見出される低温に適応し、温度感受性の、弱毒化したインフルエンザウイルス、ならびにA/Ann Arbor/6/60またはB/Ann Arbor/1/66など)からの残りの遺伝子セグメントを含んでいる組換えおよび/または再集合体インフルエンザウイルスを得ることによって容易に製造することができる。本明細書で用いている、野生型インフルエンザウイルス株由来のHAおよびNA遺伝子セグメント、ならびに低温適応した、温度感受性の、弱毒化したインフルエンザウイルスからの残りのセグメントを含む組換えおよび/または再集合体ウイルスは、野生型株の名称の前に識別子「ca」を付すことによって言及することもあり、例えば、A/New Caledonia/20/99からのHAおよびNA遺伝子セグメント、ならびに低温に適応した、温度感受性の、弱毒化したインフルエンザウイルスからの残りのセグメントを含んでいる組換えおよび/または再集合体ウイルスは、「ca A/New Caledonia/20/99」と名付けることができる。いくつかの実施形態においては、この再集合体インフルエンザウイルスは、A/Ann Arbor/6/60、B/Ann Arbor/1/66、A/Leningrad/134/47/57、B/Leningrad/14/17/55、またはA/ Puerto Rico/8/34由来の少なくとも1つの遺伝子セグメントを含んでいる。
特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、これに限定されるものではないが、CBER、WHO、EMEA、FDA、およびCDCなどの1つ以上の保険機関によって勧告されるおよび/または年に一回提供される少なくとも1種のインフルエンザ株(例えば、A型インフルエンザ株、B型インフルエンザ株)の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型(例えば、再集合体)の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。1実施形態においては、本発明の細胞培養組成物は唯一の宿主細胞種として本発明のMDCK細胞を含んでおり、その際、該細胞培養組成物は、これに限定されるものではないが、CBER、WHO、EMEA、FDA、およびCDCなどの1つ以上の保険機関によって勧告されるおよび/または年に一回提供される少なくとも1種のインフルエンザ株(例えば、A型インフルエンザ株、B型インフルエンザ株)の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型(例えば、再集合体)の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。
その他の特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、少なくとも1種のA型インフルエンザ株の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。1実施形態においては、本発明の細胞培養組成物は唯一の宿主細胞種として本発明のMDCK細胞を含んでおり、その際、該細胞培養組成物は少なくとも1種のA型インフルエンザ株の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。A型インフルエンザ株はいずれかのサブタイプ(例えば、H1N1、H3N2、H7N7、H5N1、H9N2、H1N2、H2N2)でありうることが意図される。現在までのところ、A型インフルエンザウイルスでは少なくとも16種類の異なるHAサブタイプと9種類の異なるNAサブタイプが同定されている。従って、A型インフルエンザ株は、現在知られている、または将来同定されるHAおよびNAサブタイプの任意の組み合わせを含むことができる。
その他の特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、少なくとも1種のB型インフルエンザ株の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。1実施形態においては、本発明の細胞培養組成物は唯一の宿主細胞種として本発明のMDCK細胞を含んでおり、その際、該細胞培養組成物は、少なくとも1種のB型インフルエンザ株の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。B型インフルエンザウイルスは現在のところ、ヘマグルチニンタンパク質とノイラミニダーゼタンパク質に基づいたサブタイプ分けはなされておらず、系統によって分類されている。現在B型インフルエンザウイルスは2つの系統B/YamagataおよびB/Victoriaに分けられており、それらの系統には多数の下位系統が存在する。従って、B型インフルエンザ株は現在知られている、または将来同定される系統および/または下位系統のいずれかに由来とすることができる。
特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、A/New Caledoniaインフルエンザ株の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型(すなわち、ca A/New Caledonia)の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。
特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、A/Hiroshimaインフルエンザ株の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型(すなわち、ca A/Hiroshima)の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、B/Malaysiaインフルエンザ株の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型(すなわち、ca B/Malaysia)の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、A/Vietnamインフルエンザ株の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型(すなわち、ca A/Vietnam)の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、A/Wisconsinインフルエンザ株の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型(すなわち、ca A/Wisconsin)の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。
特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、A/New CaledoniaおよびA/Hiroshimaインフルエンザ株各々の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、A/New CaledoniaおよびB/Malaysiaインフルエンザ株各々の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、A/New CaledoniaおよびA/Vietnamインフルエンザ株各々の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。
特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、A/HiroshimaおよびB/Malaysiaインフルエンザ株各々の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、A/HiroshimaおよびA/Vietnamインフルエンザ株各々の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、B/MalaysiaおよびA/Vietnamインフルエンザ株各々の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。
特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、A/New Caledonia、A/Hiroshima、およびB/Malaysiaインフルエンザ株各々の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、A/New Caledonia、A/Hiroshima、およびA/Vietnamインフルエンザ株各々の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、A/New Caledonia、B/Malaysia、およびA/Vietnamインフルエンザ株各々の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。
特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、B/Malaysia、A/Hiroshima、およびA/Vietnamインフルエンザ株各々の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、A/New Caledonia、A/Hiroshima、B/Malaysia、およびA/Vietnamインフルエンザ株各々の、低温適応型、および/または温度感受性型、および/または弱毒化型の複製を、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで支持する。
別の1態様においては、本発明は、低温に適応した、および/または温度感受性の、および/または弱毒化したインフルエンザウイルスを、少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8、または少なくとも10.0 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで増殖させる方法を提供し、その方法は、MediV105、M-32、MediV 107、もしくはM18M、または増殖に最適化させたそれらの誘導体中で前記細胞を増殖させた後、該インフルエンザウイルスに感染させ、その後新鮮な培地もしくは培地成分(例えば、グルコース、アミノ酸、脂質など)を感染させている間、もしくは感染後に添加することを含んでいる。また別の1態様においては、本発明は低温に適応した、および/または温度感受性の、および/または弱毒化したインフルエンザウイルスを、少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8、または少なくとも10.0 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで増殖させる方法を提供し、その方法は、前記細胞を血清無含培地、好ましくは動物タンパク質無含培地中で増殖させ、プロテアーゼ、例えばTrypLE(1:10〜1:100)を、該細胞にインフルエンザウイルスを感染させる前、感染させている間、または感染後に添加することを含んでいる。特定の実施形態においては、低温に適応した、および/または温度感受性の、および/または弱毒化したインフルエンザウイルスは、少なくとも6.0、または少なくとも6.2、または少なくとも6.4、または少なくとも6.6、または少なくとも6.8、または少なくとも7.0、または少なくとも7.2、または少なくとも7.4、または少なくとも7.6、または少なくとも7.8、または少なくとも8.0、または少なくとも8.2、または少なくとも8.4、または少なくとも8.6、または少なくとも8.8、または少なくとも9.
0、または少なくとも9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも9.6、または少なくとも9.8、または少なくとも10.0 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mLまで増殖する。特定の実施形態においては、新鮮な培地はプロテアーゼ、例えばTrypLE(1:10〜1:100)を補充したMediV 105である。特定の実施形態においては、新鮮な培地はプロテアーゼ、例えばTrypLE(1:10〜1:100)を補充したM-32である。特定の実施形態においては、新鮮な培地はプロテアーゼ、例えばTrypLE(1:10〜1:100)を補充したMediV 107である。これらの方法では、インフルエンザのタンパク質を切断するために有用であることが当業者に知られる任意のプロテアーゼを用いることができる。特定の実施形態においては、新鮮な培地はプロテアーゼ、例えばTrypLE(1:10〜1:100)を補充したM18Mである。特定の実施形態においては、新鮮な培地は4.5 g/L グルコース、4 mM グルタミン、およびプロテアーゼ、例えばTrypLE(1:10〜1:100)を補充したDMEM/F12である。
当業者であれば、本発明の細胞が細胞培養組成物の一部として頻繁に用できることを理解するであろう。細胞培養組成物の成分は細胞および意図する用途によって変えることができる。例えば、培養目的では、細胞培養組成物は本発明の細胞および該細胞の増殖に適した培地を含むことができる。従って本発明は、本発明の細胞およびその他の成分を含んでいる細胞培養組成物を提供し、その他の成分としては、限定はされないが、培地(例えば、本明細書で開示している培地)、培地成分、バッファー、化合物、別の細胞種、ウイルス材料(例えば、ウイルスゲノム、ウイルス粒子)、および異種タンパク質などが挙げられる。1実施形態においては、細胞培養組成物は本発明の細胞および培地もしくは培地成分を含んでいる。細胞培養組成物中に含有させることのできる培地としては、血清無含培地、血清含有培地、および動物タンパク質無含培地が含まれる。1実施形態においては、細胞組成物は、血清無含培地、例えば、MediV 101、MediV 102、MediV 103、MediV 104、MediV 105、M-32、MediV 107、もしくはM18M、またはそれらの成分もしくは増殖に最適化させたその誘導物を含んでいる。
6.3 方法および培地製剤
本発明はさらに、血清含有培地中でインフルエンザウイルスを高力価まで複製することを支持するMDCK細胞の培養のための方法および培地製剤を提供する。本発明はさらに、血清無含培地(動物タンパク質無含培地製剤を含む)にMDCK細胞を適合させ、その後血清無含培地中でこれを培養するのための方法を提供する。本発明の特定の態様においては、この培地は、MDCK細胞が次の特徴のうちの1つ以上を保持するように製剤化される:限定はされないが、非腫瘍形成性であること、非発癌性であること、付着細胞として増殖すること、非付着細胞として増殖すること、上皮様の形態を有すること、培養した際に種々のウイルスの複製を支持すること、およびインフルエンザウイルスの本明細書に記載される高力価への複製を支持すること。本明細書で開示する培地製剤またはその成分が細胞培養組成物中に存在しうることが意図される。
血清を含有する培地製剤は当業界ではよく知られている。血清を含有する培地製剤としては、限定はされないが、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+ウシ胎児血清(FBS)+グルタミン+グルコースなどが挙げられる。1実施形態においては、FBSは血清含有培地中に約1%〜約20%、約5%〜約15%、または約5%〜約10%の濃度で存在する。具体的な1実施形態においては、FBSは血清含有培地中に10%の濃度で存在する。別の1実施形態においては、グルタミンは血清含有培地中に約0.5 mM〜約10 mM、約1 mM〜10 mM、または約2 mM〜5 mMの濃度で存在する。具体的な1実施形態においては、グルタミンは血清含有培地中に4 mMの濃度で存在する。また別の1実施形態においては、グルコースは血清含有培地中に約1 g/L〜約10 g/L、または約2 g/L〜約5 g/Lの濃度で存在する。具体的な1実施形態においては、グルコースは血清含有培地中に4.5 g/Lという濃度で存在する。また別の1実施形態においては、血清含有培地製剤は、FBSを約1%〜約20%の濃度で、グルタミンを約0.5 mM〜約10 mMの濃度で、およびグルコースを約1 g/L〜約10 g/Lの濃度で含んでいる。具体的な1実施形態においては、血清含有培地製剤は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+10% ウシ胎児血清(FBS)+4 mM グルタミン+4.5 g/Lグルコースを含んでいる。DMEMは多数の市販のソースから容易に入手することができ、そのようなソースとしては例えば、Gibco/BRL(カタログNo. 11965-084)がある。FBSは多数の市販のソースから容易に入手することができ、そのようなソースとしては例えば、JRH Biosciences(カタログNo. 12107-500M)がある。FBSは動物細胞培養培地中で最も一般的に適用される補充物質であるが、その他の血清ソース(ウシの新生仔、ウマ、およびヒトを含む)も日常的に用いられており、本発明に包含される。
1実施形態においては、血清に適合させた本発明のMDCK細胞は、American Type Culture Collection(ATCC CCL34)から取得されるMadin Darby Kidney Cells(MDCK)から、これを血清を補充した化学的に規定された培地中で培養することによって誘導される。具体的な1実施形態においては、MDCK細胞(ATCC CCL34)は、以下の通り、血清に適合させたMDCK細胞株を生じさせるために、血清を補充した化学的に規定された培地中で増殖される:MDCK細胞(ATCC CCL34)を、ウシ胎児血清(10% v/v)、4 mMグルタミン、および4.5 g/Lグルコースを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で継代して、凍結プレマスターセルバンク(PreMCB)を調製するのに十分な細胞を得る。別の具体的な1実施形態においては、この細胞は下記の実施例1および2に詳述する方法を用いて培養される。具体的に、血清に適合させたMDCK細胞は、PreMCBの1バイアルからさらに20回以上継代し、in vivoで成体のヌードマウスモデルで腫瘍形成性について、および核学アッセイで核学について試験することを意図している。特定の実施形態においては、増殖させたMDCK細胞は成体のヌードマウスの皮下に注射しても腫瘍を生じさせず、形式上の染色体数(modal chromosome number)は78で、染色体数の範囲は約60〜88以下、または約65〜85以下、または約65〜80以下、または約70〜85以下である。1実施形態においては、MDCK-S細胞は、ある培地(例えば、本明細書に記載の培地)中での少なくとも20回の継代後、または少なくとも30回の継代後、または少なくとも40回の継代後、または少なくとも50回の継代後、または少なくとも60回の継代後、または少なくとも70回の継代後、または少なくとも80回の継代後、または少なくとも90回の継代後、または少なくとも100回の継代後に非腫瘍形成性である。
当業者であれば、血清や動物の抽出物の組織培養用途における使用に欠点がありうることを理解するであろう(Lambert K.J.ら, Animal Cell Biotechnology, Vol 1, Spier, R.E.ら編, Academic Pres New York, pp. 85-122 (1985))。例えば、それらの補充物の化学的組成は、製造者が単一であってもロットごとに異なりうる。さらに、動物またはヒト起源の補充物は偶発的な物質(例えば、マイコプラズマ、ウイルス、およびプリオンなど)で汚染されることもありうる。これらの汚染された補充物を細胞培養培地製剤中で用いた場合には、これらの物質が培養細胞の健康を著しく損なう可能性がある。さらに、偶発的な物質で汚染された培養物中で産生された物質を細胞療法およびその他の臨床的用途に用いた場合には、健康上の危険性を生じる可能性がある。大きな不安は動物に海綿状脳症を起こし、ヒトにクロイツフェルト-ヤコブ病を引き起こすプリオンの存在である。従って、本発明はさらに、本発明のMDCK細胞を含んでいる血清無含培地製剤を提供する。
本発明の血清無含培地製剤としては、限定はされないが、MediV 101(Taubの培地+植物加水分解物)、MediV 102(Taubの培地+脂質)、MediV 103(Taubの培地+脂質+植物加水分解物)、MediV 104(Taubの培地+脂質+植物加水分解物+成長因子)、MediV 105(トランスフェリンがクエン酸鉄アンモニウム/トロポロンもしくは硫酸鉄アンモニウム/トロポロンで取り替えられていることを除いては、MediV 104と同じ)(例えば、米国特許公開No.2006/0188977を参照)、M-32(微量元素A、B、およびCを補充したMediV 105と同じ)(表9を参照)、MediV 107(表10を参照)、およびM18M(表11を参照)などが挙げられる。TaubのSF培地(TaubとLivingston, 1982, Ann NY Acad. Sci., 372:406)は、DMEMと、5μg/mL インスリン、5μg/mL トランスフェリン、25 ng/mL プロスタグランジンE1、50nM ヒドロコルチゾン、5 pM トリヨードサイロニンの各種ホルモン、および10nM Na2SeO3、4.5 g/L グルコース、2.2 g/L NaHCO3、および4 mM L-グルタミンを補充したHamのF12との、50:50混合物であることを具体的に意図している。TaubのSF培地は本明細書中ではTaubの培地、もしくは単にTaub'sと呼ぶ。具体的な培地製剤及びそれらを調製する方法は本明細書中に下記に記載している(例えば、第8.10節を参照)。
植物加水分解物としては、限定はされないが、次のもののうちの1種以上からの加水分解物が含まれる:トウモロコシ、綿実、エンドウ、ダイズ、麦芽、ジャガイモ及びコムギ。植物の加水分解物は酵素を用いた加水分解によって製造することができ、通常はペプチド、遊離アミノ酸、および成長因子の混合物を含んでいる。植物の加水分解物は多数の商業ソースから容易に入手することができ、そのようなソースとしては例えば、Marcor Development、HyClone、およびOrgano Technieなどが挙げられる。また、酵母の加水分解物も植物の加水分解物に代えて、またはそれとともに用いることができる。酵母の加水分解物は多数の商業ソースから容易に入手することができ、そのようなソースとしては例えば、Sigma-Aldrich、USB Corp、Gibco/BRLなどが挙げられる。特定の実施形態においては、合成の加水分解物を植物または酵母の加水分解物に加えて、またはそれらに代えて用いることができる。
培養培地に補充するために用いうる脂質としては、限定はされないが、化学的に組成の明らかな動物および植物由来の脂質の補充物質および合成の脂質などが挙げられる。脂質補充物質中に存在させることのできる脂質としては、限定はされないが、コレステロール、飽和および/または不飽和脂肪酸(例えば、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸など)が挙げられる。コレステロールは脂質補充物質の100Xストック中、0.10 mg/mL〜0.40 mg/mLの濃度で存在することができる。脂肪酸は脂質補充物質の100Xストック中、1μg/mL〜20μg/mLの濃度で存在することができる。培地製剤に適した脂質は多数の商業ソースから容易に入手することができ、そのようなソースとしては例えば、HyClone、Gibco/BRL、およびSigma-Aldrichなどが挙げられる。
1実施形態においては、Taubの培地には植物の加水分解物が補充され、その最終濃度は、少なくとも0.5 g/L、または少なくとも1.0 g/L、または少なくとも1.5 g/L、または少なくとも2.0 g/L、または少なくとも2.5 g/L、または少なくとも3.0 g/L、または少なくとも5.0 g/L、または少なくとも10 g/L、または少なくとも20 g/Lである。具体的な1実施形態においては、Taubの培地には、コムギの加水分解物が補充される。別の具体的な1実施形態においては、Taubの培地には2.5 g/Lの最終濃度でコムギ加水分解物が補充される。本発明は、本明細書中でMediV 101と呼ぶ血清無含培地を提供し、該培地は最終濃度2.5 g/Lでコムギ加水分解物が補充されたTaubの培地を含んでいる(例えば、第8.10節を参照)。
別の1実施形態においては、Taubの培地には脂質の混合物が補充され、その最終濃度は、製造者の推奨する最終濃度の少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも100%、または少なくとも125%、または少なくとも150%、または少なくとも200%、または少なくとも300%である。具体的な1実施形態においては、Taubの培地には、化学的に組成の明らかな脂質混合物が補充される。また別の具体的な1実施形態においては、Taubの培地には化学的に組成の明らかな脂質混合物が添加され、その最終濃度は、製造者の推奨する最終濃度の100%である(例えば、製造者から入手した100Xのストックを1Xの最終濃度で培地に補充する)。本発明は、本明細書中でMediV 102と呼ぶ血清無含培地を提供し、該培地は製造者の推奨する最終濃度の100%の最終濃度で化学的に組成の明らかな脂質混合物が補充されたTaubの培地を含んでいる(例えば、第8.10節を参照)。
さらに別の1実施形態においては、Taubの培地には植物の加水分解物が少なくとも0.5 g/L、または少なくとも1.0 g/L、または少なくとも1.5 g/L、または少なくとも2.0 g/L、または少なくとも2.5 g/L、または少なくとも3.0 g/L、または少なくとも5.0 g/L、または少なくとも10 g/L、または少なくとも20 g/L、の最終濃度で、および脂質混合物が製造者の推奨濃度の少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも100%、または少なくとも125%、または少なくとも150%、または少なくとも175%、または少なくとも200%、の最終濃度で、補充される。具体的な1実施形態においては、Taubの培地には、コムギ加水分解物および化学的に組成の明らかな脂質混合物が補充される。別の具体的な1実施形態においては、Taubの培地には、コムギの加水分解物が2.5 g/Lの最終濃度で、および化学的に組成の明らかな脂質混合物が製造者の推奨最終濃度の100%の最終濃度で、補充される。本発明は、本明細書中でMediV 103と呼ぶ血清無含培地を提供し、該培地は2.5 g/Lの最終濃度でコムギ加水分解物が補充され、および製造者が推奨する最終濃度の100%の最終濃度で化学的に組成が明らかな脂質混合物が補充されたTaubの培地を含んでいる(例えば、第8.10節を参照)。
また別の1実施形態においては、Taubの培地には成長ホルモンが補充される。用いることのできる成長ホルモンとしては、限定はされないが、上皮成長因子(EGF)、インスリン増殖因子(IGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、および線維芽細胞成長因子(FGF)などが挙げられる。特定の1実施形態においては、前記成長ホルモンは上皮成長因子(EGF)である。1実施形態においては、Taubの培地には、成長因子が約0.1〜約50.0 ng/mL、または約0.5〜約25.0 ng/mL、または約1.0〜約20 ng/mL、または約5.0〜約15.0 ng/mL、または約8 ng/mL〜約12 ng/mL最終濃度で補充される。具体的な1実施形態においては、Taubの培地には、EGFが最終濃度で約10 ng/mL補充される。またさらに別の実施形態においては、Taubの培地には、成長因子が約0.1〜約50.0 ng/mL、または約0.5〜約25.0 ng/mL、または約1.0〜約20.0 ng/mL、または約5.0〜約15.0 ng/mL、または約8 ng/mL〜約12 ng/mLの最終濃度で、および植物加水分解物が少なくとも0.5 g/L、または少なくとも1.0 g/L、または少なくとも1.5 g/L、または少なくとも2.0 g/L、または少なくとも2.5 g/L、または少なくとも3.0 g/L、または少なくとも5.0 g/L、または少なくとも10 g/L、または少なくとも20 g/Lの最終濃度で、および脂質混合物が製造者の推奨濃度の少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも100%、または少なくとも125%、または少なくとも150%、または少なくとも175%、または少なくとも200%の最終濃度で、補充される。具体的な1実施形態においては、Taubの培地には、コムギ加水分解物が2.5 g/Lの最終濃度で、および化学的に組成の明らかな脂質混合物が製造者の推奨する最終濃度の100%の最終濃度で、およびEGFが約10 ng/mL最終濃度で、補充される。本発明は、本明細書中でMediV 104と呼ぶ血清無含培地を提供し、該培地は2.5 g/Lの最終濃度でコムギ加水分解物が、および製造者が推奨する最終濃度の100%の最終濃度で化学的に組成が明らかな脂質混合物が、および約10 ng/mLの最終濃度でEGFが補充されたTaubの培地を含んでいる(例えば、第8.10節を参照)。
また、当業者であれば、動物タンパク質無含の培地製剤が、ワクチンの製造に用いられるウイルスの産生に望ましいことを理解するであろう。従って、特定の実施形態においては、本明細書に記載の血清無含培地(例えば、MediV 101、MediV 102、MediV 103、MediV 104、MediV 105、M-32、MediV 107、M18M)の動物由来の成分の1種以上または全てを、動物由来のものを含まない誘導物と置き換えることができる。例えば、動物以外のソース由来の市販の組換えインスリン(例えば、Biological Industries, カタログNo. 01-818-1)を、動物ソース由来のインスリンに代えて用いることができる。同様にして、鉄結合剤(例えば米国特許第5,045,454号、第5,118,513号、第6,593,140号、およびPCT公開番号WO 01/16294)を、動物ソース由来のトランスフェリンに代えて用いることができる。1実施形態においては、本発明の血清無含培地製剤は、トロポロン(2-ヒドロキシ-2,4,6-シクロヘプタトリエン)および鉄のソース(例えばクエン酸鉄アンモニウム、硫酸鉄アンモニウム)をトランスフェリンの代わりに含む。例えば、トロポロンまたはトロポロン誘導体は、培地中に存在する鉄に対して、モル比で約2:1〜約70:1、または約10:1〜約70:1となるように過剰モル濃度で存在する。具体的な1実施形態においては、本発明の血清無含培地はクエン酸鉄アンモニウムを最終濃度で200μg/L、およびトロポロンを最終濃度で250μg/L含んでいる(例えば第8.10節を参照せよ)。従って、培地中の鉄濃度が約0.3μMの場合には、トロポロンまたはその誘導体は約1.5μM〜約20μM、例えば約3μM〜約20μMの濃度で用いることができる。鉄は、例えば培地中で単純な鉄の塩または複雑な鉄の塩、例えば、硫酸第一鉄、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、または特にクエン酸鉄アンモニウムなど、を用いることによって生じる、第一鉄イオンまたは第二鉄イオンとして存在することができる。本発明は、本明細書中でMediV 105と呼ぶ血清無含培地を提供し、該培地にはトランスフェリンは補充されておらず、2.5 g/Lの最終濃度でコムギ加水分解物が、および製造者が推奨する最終濃度の100%の
最終濃度で化学的に組成が明らかな脂質混合物が、および約10 ng/mLの最終濃度でEGFが補充されており、そしてクエン酸鉄アンモニウム:トロポロン、または硫酸鉄アンモニウム:トロポロンの比が2:1〜70:1である、Taubの培地が含まれる。具体的な1実施形態においては、本発明の血清無含培地はクエン酸鉄アンモニウムを200μg/Lの最終濃度で、およびトロポロンを250μg/Lの最終濃度で、含んでいる(例えば、第8.10節を参照)。
特定の実施形態においては、本明細書で開示した1種以上の培地には、微量元素が補充される(例えば、Trace element Solution A、B、およびC、表9)。用いることのできる微量元素としては、限定はされないが、CuSO4・5H2O、ZnSO4・7H2O、Selenite・2Na、クエン酸第2鉄、MnSO4・H2O、Na2SiO3・9H2O、モリブデン酸-アンモニウム塩、NH4VO3、NiSO4・6H2O、SnCl2 (無水)、AlCl3・6H2O、AgNO3、Ba(C2H3O2)2、KBr、CdCl2、CoCl2・6H2O、CrCl3(無水)、NaF、GeO2、KI、RbCl、ZrOCl2・8H2Oなどが挙げられる。微量元素の濃縮したストック溶液は多数の商業ソースから容易に入手することができ、そのようなソースとしては、例えば、Cell Grow(カタログNo.99-182、99-175、および99-176)などが挙げられる。本発明は、本明細書中でM-32と呼ぶ血清無含培地を提供し、該培地は、2.5 g/Lの最終濃度でコムギ加水分解物が、および製造者が推奨する最終濃度の100%の最終濃度で化学的に組成が明らかな脂質混合物が、および約10 ng/mLの最終濃度でEGFが、およびTrace Element Solution A、B及びC(表9)が補充され、そしてクエン酸鉄アンモニウム:トロポロン、または硫酸鉄アンモニウム:トロポロンの比が2:1〜70:1である、トランスフェリン無含のTaubの培地を含んでいる。具体的な1実施形態においては、本発明の血清無含培地はクエン酸鉄アンモニウムを200μg/Lの最終濃度で、およびトロポロンを250μg/Lの最終濃度で含んでいる(例えば、第8.10節を参照)。また、本明細書で開示している培地の1種以上には、さらにグルコースが補充されることが意図される。1実施形態においては、本発明の血清無含培地はさらに、グルコースの最終濃度が約4.5〜約10 g/Lとなるように1〜5 g/Lのグルコースが補充される。
1実施形態においては、血清無含培地MediV 101、MediV 102、MediV 103、MediV 104、MediV 105、M-32、MediV 107、またはM18M中で増殖するように適合させたMDCK細胞は、American Type Culture Collection(ATCC CCL34)から入手したMadin Darby Canine Kidney(MDCK)細胞から、これを血清を補充した化学的に組成の明らかな培地中で少なくとも1回継代した後、血清無含培地、例えば上述の血清無含培地中で継代することによって誘導される。具体的な1実施形態においては、MDCK細胞(ATCC CCL34)は次のとおり血清無含培地に適合される:MDCK細胞(ATCC CCL34)細胞を、ウシ胎児血清(10% v/v)、4 mM グルタミン、および4.5 g/L グルコースを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で少なくとも1回継代した後、血清無含培地中で継代する。次いでそのMDCK細胞を必要に応じて血清無含培地中で継代させて、凍結プレマスターセルバンク(PreMCB)の調製に十分な血清無含培地に適合させた細胞を得る。特定の実施形態においては、この細胞は血清含有の培地(例えば、ウシ胎児血清(10% v/v)、4 mM グルタミン、および4.5 g/Lグルコースを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM))中で、1〜5回、または4〜10回、または9〜20回、または20回超、継代した後、血清無含培地(例えば、MediV 101、MediV 102、MediV 103、MediV 104、MediV 105、M-32、MediV 107、およびM18M、例えば、第8.10節を参照)中で継代する。
血清無含培地に適合させたMDCK細胞は、PreMCBの1バイアルからさらに20回以上継代して、in vivoで成体ヌードマウスモデルでの腫瘍形成性についておよび核学アッセイで核学について試験することを具体的に意図している。特定の実施形態においては、増殖させた血清無含培地適合型MDCK細胞は、成体のヌードマウスの皮下に注射しても腫瘤を生じない、および/または、形式上の染色体数は78である。別の1実施形態においては、増殖させた血清無含培地適合型MDCK細胞は78という形式上の染色体数を有し、その染色体数の範囲は約60〜88以下、または約65〜85以下、または約65〜80以下、または約70〜約85以下である。1実施形態においては、MDCK-SF細胞は、ある培地(例えば、本明細書に記載の培地)中での少なくとも20回の継代後、または少なくとも30回の継代後、または少なくとも40回の継代後、または少なくとも50回の継代後、または少なくとも60回の継代後、または少なくとも70回の継代後、または少なくとも80回の継代後、または少なくとも90回の継代後、または少なくとも100回の継代後に非腫瘍形成性である。
1実施形態においては、血清無含培地適合型MDCK細胞の誘導のために用いられる血清無含培地はMediV 101である。別の1実施形態においては、血清無含培地適合型MDCK細胞の誘導のために用いられる血清無含培地はMediV 102である。さらに別の1実施形態においては、血清無含培地適合型MDCK細胞の誘導のために用いられる血清無含培地はMediV 103である。また別の1実施形態においては、血清無含培地適合型MDCK細胞の誘導のために用いられる血清無含培地はMediV 104である。別の1実施形態においては、血清無含培地適合型MDCK細胞の誘導のために用いられる血清無含培地はMediV 105である。他の実施形態においては、血清無含培地適合型MDCK細胞の誘導のために用いられる血清無含培地はM-32である。他の実施形態においては、血清無含培地適合型MDCK細胞の誘導のために用いられる血清無含培地はMediV 107である。別の1実施形態においては、血清無含培地適合型MDCK細胞の誘導のために用いられる血清無含培地はM18Mである。また別の1実施形態においては、血清無含培地適合型MDCK細胞の誘導のために用いられる血清無含培地はAPF培地である。本明細書に記載の培地は、動物タンパク質を排除して製剤化できることが意図される。例えば、ウシトランスフェリンは、動物以外のソース由来の組換えトランスフェリンで置き換えることができる。具体的な培地製剤及びそのような培地を調製するための方法は本明細書中下記に提供される(例えば、第8.10節を参照)。
別の1実施形態においては、本発明の細胞は血清無含培地中での増殖に適合していないが、むしろ適合させなくとも血清無含培地中で単純に増殖する。従って、1実施形態においては、前記細胞はMediV 101中で増殖する。別の1実施形態においては、前記細胞はMediV 102中で増殖する。また別の1実施形態においては、前記細胞はMediV 103中で増殖する。さらに別の1実施形態においては、前記細胞はMediV 104中で増殖する。別の1実施形態においては、前記細胞はMediV 105中で増殖する。別の1実施形態においては、前記細胞はM-32中で増殖する。別の1実施形態においては、前記細胞はMediV 107中で増殖する。別の1実施形態においては、前記細胞はM18M中で増殖する。また別の1実施形態においては、前記細胞はAPF培地中で増殖する。本明細書に記載の培地は、動物タンパク質を排除して製剤化しうることが意図される。例えば、ウシトランスフェリンは、動物以外のソース由来の組換えトランスフェリンで置き換えることができる。
6.4 培養条件
本発明は、上述の血清含有培地製剤および血清無含培地製剤中で本発明のMDCK細胞およびその他の動物細胞を培養する方法を提供する。追加的な培養条件が本発明のMDCK細胞の性質の維持にある役割を果たす可能性も具体的に意図され、そのような性質としては、非腫瘍形成性であること、非発癌性であること、付着細胞として増殖すること、非付着細胞として増殖すること、上皮様の形態を有すること、種々のウイルスの複製を支持すること、およびインフルエンザウイルス(例えば、低温に適応した、および/または温度感受性の、および/または弱毒化した)の高力価、例えば、少なくとも約7.4、または少なくとも約7.6、または少なくとも約7.8、または少なくとも約8.0、または少なくとも約9.0 log10 TCID50/mLおよび/またはlog10 FFU/mL、への複製を支持することが含まれる。それらの培養条件としては、限定はされないが、付着表面の選択、細胞密度、温度、CO2濃度、培養方法、溶存酸素量、およびpHなどが挙げられる。
当業者であれば本発明のMDCK細胞の増殖を最適化するために培養条件を多数の手法で適合できることが具体的に意図される。そのような適合は、例えば、米国特許公開第2005/0118698号で述べられているとおり、ウイルス材料(例えば、ウイルス)産生の増加をもたらすことができる。あるいはまた、当業者であれば、本発明のMDCK細胞からのワクチン材料の産生を最適化するために、該細胞の増殖を考慮することなく、培養条件を適合させることができる。これらの培養条件としては、限定はされないが、付着表面、細胞密度、温度、CO2濃度、培養方法、溶存酸素量、およびpHなどが挙げられる。
1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、これが付着する表面上で付着細胞として培養される。組織培養細胞が増殖できる付着表面は当業界ではよく知られている。付着表面としては、限定はされないが、表面が改変されたポリスチレンプラスチック、タンパク質をコートした表面(例えば、フィブロネクチンおよび/またはコラーゲンをコートしたガラス/プラスチック)、ならびに多種多様な市販のマイクロキャリア(例えば、DEAE-Dextranマイクロキャリアビーズ、例えばDormacell, Pfeifer & Langen;Superbead, Flow Laboratories;スチレンコポリマー-トリメチルアミンビーズ、例えばHillex、SoloHill、Ann Arbor;Cytodex 1およびCytodex 3, GE Healthcare Life Science)などが挙げられる。マイクロキャリアビーズは小さい球体であり(直径が100〜200ミクロンの範囲)、細胞培養物の体積あたりの付着細胞増殖のための大きな表面領域を提供する。例えば、1リットルの培地は、2000万個より多くのマイクロキャリアビーズを含むことができ、それによって8000cm2を超える増殖表面を与えることができる。付着表面の選択は、本発明のMDCK細胞の培養のために用いられる方法によって決定され、当業者であれば、決定することができる。当業者であれば、付着細胞を継代培養する(すなわち細胞を増殖させる、細胞培養物を増殖させる)プロセスの間に、それらの細胞をコンフルエントとなった支持体表面(例えば、フラスコの表面、マイクロキャリアなど)から新しい支持体表面に移さなければならないことを理解するであろう。そのような細胞の移行を行うために多数の方法を用いることができる。例えば、トリプシン、TrypLE、およびコラゲナーゼを含むプロテアーゼを、フラスコやマイクロキャリアから細胞を取り出すために用いることができ、その後それらの細胞は洗浄され、より大きなフラスコまたはより大きな体積を持つマイクロキャリアを含有する増殖用の培地中に希釈される。このような用途には動物以外に由来するプロテアーゼ、例えば、TrypLE(Invitrogen, Carlsbad, CA)など、を使用することが好ましい。あるいはまた、マイクロキャリアでの
培養では、ビーズからビーズへと直接的に移行する方法を用いることができ、その方法では新鮮なビーズと培地とをコンフルエントとなったビーズと混合し、培養物を、細胞の新しいビーズへの移行が容易に行われる条件下でインキュベートする。特定の実施形態においては、プロテアーゼ処理とビーズからビーズへの移行の組み合わせが用いられる。具体的な1実施形態においては、マイクロキャリア上で付着細胞として増殖している本発明のMDCK細胞の細胞培養物をプロテアーゼ(例えば、TrypLE)で処理し、その後プロテアーゼを不活化し(例えば、アオイマメのトリプシンインヒビターなどのプロテアーゼインヒビターを添加することによって)、次いで新鮮な培地とマイクロキャリアビーズとをその培養物に添加することができる。1実施形態においては、増殖培地の一部または全てをプロテアーゼ処理の前に取り除く。別の1実施形態においては、増殖培地の一部または全てをプロテアーゼ処理の前にバッファーで置換する。また別の1実施形態においては、キレート剤をプロテアーゼ処理の前または処理中に添加する。いくつかの実施形態においては、プロテアーゼ処理した培養物を、新鮮な培地およびマイクロキャリアを添加する前、添加中、または添加後に、より大きな培養容器に移す。
1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は非付着細胞として(例えば、非付着条件下で増殖することができる)、懸濁液中で培養される。本発明のプロセスの過程で用いることのできる適切な培養容器は当業者に既知の全ての容器であり、例えば、スピナーボトル、ローラーボトル、発酵槽、またはバイオリアクターなどが挙げられる。ウイルスの商業的生産、例えばワクチン製造のために、細胞をバイオリアクターまたは発酵槽中で培養することが望ましいことが多い。バイオリアクターは1リットル未満〜10,000リットル超の容積で利用可能であり、例えば、Cyto3 Bioreactor(Osmonics, Minnetonka, MN);NBS バイオリアクター(New Brunswick Scientific, Edison, NJ);B. Braun Biotech International製の実験室および商業スケールのバイオリアクター(B. Braun Biotech, Melsungen, Germany)がある。
1実施形態においては、本発明のMDCK細胞はバッチ培養系で付着細胞として培養される。具体的な1実施形態においては、本発明のMDCK細胞はフェドバッチ培養系で付着細胞として培養されるが、その系では高い細胞密度への増殖を容易なものとするために、開始時の培地から枯渇する追加の栄養成分(例えば、炭素源、アミノ酸など)が添加される。また別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は灌流培養系で付着細胞として培養される。本発明のMDCK細胞を、ワクチン材料(例えば、ウイルス)産生のために灌流培養系で(例えば、攪拌発酵槽中で、当業者に既知の細胞保持システム、例えば、遠心分離、ろ過、スピンフィルターなどを用いて)培養することが具体的に意図される。MDCK細胞を付着細胞として培養することに関してのさらに詳しいガイダンスは、例えば、米国特許出願公開No.2003/0108860および2005/0118140中に見出すことができる。別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、バッチまたはフェドバッチ培養系で非付着細胞として培養される。さらにまた別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は非付着細胞として灌流培養系で培養される。
特定の実施形態においては、使い捨ての要素、例えば細胞を培養するためのフレキシブルなプラスチックバッグなどを備えたリアクターシステムが用いられる。そのようなリアクターシステムは当業界では知られており、市販されている。例えば、国際特許公開WO 05/108546;WO 05/104706;およびWO 05/10849、および下記第8.12節を参照されたい。使い捨ての要素を備えたリアクターシステム(本明細書中では「単回使用のバイオリアクター」、または短縮形で「SUB」とも呼ぶ)は、あらかじめ滅菌しておくことができ、培養システムまたは生産システムで、バッチからバッチへ、または製品から製品への変更のための定置蒸気滅菌(SIP)または定置洗浄(CIP)環境を必要としない。したがってSUBは、バッチからバッチIへの汚染がゼロであることを保証にすることによる規制管理をそれほど必要とせず、その操作にはかなりのコスト的な利点があり、使用前の準備が最小限でよいかまたは全く必要ない。さらに、SUBは洗浄や滅菌を必要としないので、迅速に配備して細胞培養物からの多量のワクチン材料(例えば、ウイルス)の製造を容易にすることができる。特定の実施形態においては、使い捨てのリアクターシステムは攪拌槽リアクターシステムであり、これは細胞培養物の混合のための流体力学的環境を可能にし、その結果、より効率的な栄養素、O2、およびpHの制御が可能になる。
1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は、少なくとも1%、または少なくとも2%、または少なくとも3%、または少なくとも4%、または少なくとも5%、または少なくとも6%、または少なくとも7%、または少なくとも8%、または少なくとも9%、または少なくとも10%、または少なくとも20%のCO2濃度で培養される。
1実施形態においては、本発明のMDCK細胞の培養の間、溶存酸素(DO)濃度(pO2値)を調節することが有利であり、その範囲は5%〜95%(酸素飽和度に基づく)、または10%〜60%である。具体的な1実施形態においては、溶存酸素(DO)濃度(pO2値)は少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも50%、または少なくとも60%である。
別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞の培養に用いられる培養培地のpHが培養の間調節され、それはpH 6.4〜pH 8.0の範囲、またはpH 6.8〜pH 7.4の範囲である。具体的な1実施形態においては、培養培地のpHは、約6.4、または約6.6、または約6.8、または約7.0、または約7.2、または約7.4、または約7.6、または約7.8、または約8.0である。
さらに別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞は25℃〜39℃の温度で培養される。培養温度は所望のプロセスに応じて変化しうることが具体的に意図される。例えば、本発明のMDCK細胞は細胞の増殖のためには37℃で増殖させることができ、ワクチン材料(例えば、ウイルス)の産生のためにより低い温度(例えば、25℃〜30℃)で増殖させることができる。別の1実施形態においては、前記細胞は、30℃未満、または31℃未満、または32℃未満、または33℃未満、または34℃未満の温度で、ワクチン材料産生のために培養される。別の1実施形態においては、前記細胞はワクチン材料産生のために、30℃、または31℃、または32℃、または33℃、または34℃で培養される。
ワクチン材料(例えば、ウイルス)を製造するために、本発明のMDCK細胞を培地が容易に交換できるように培養すること(例えば、灌流系)が具体的に意図される。前記細胞は非常に高い細胞密度、例えば1 x 106および25 x 106 細胞/mL、まで培養することができる。培地中のグルコース、グルタミン、乳酸の含量、pHおよびpO2値、ならびにその他当業者に既知のパラメーター(攪拌など)は、本発明のMDCK細胞の培養の間に、細胞密度および/またはウイルス産生を最適化できるように容易に操作することができる。
本発明は培養物中の細胞(例えば、本発明のMDCK細胞)を、該細胞をSUB中で培養することによって高い細胞密度まで増殖する方法を提供する。特定の実施形態においては、MDCK細胞はSUBシステム中で、少なくとも5 x 105細胞/mL、少なくとも7.5 x 105細胞/mL、少なくとも1 x 106細胞/mL、少なくとも2.5 x 106細胞/mL、少なくとも5 x 106細胞/mL、少なくとも7.5 x 106細胞/mL、少なくとも10 x 106、少なくとも15 x 106細胞/mL、少なくとも20 x 106細胞/mL、または少なくとも25 x 106細胞/mLの細胞密度まで培養される。具体的な1実施形態においては、MDCK細胞はSUB中で、さらにグルコースが補充されている下記に記載するような(例えば第8.10節参照)血清無含培地で培養される。例えば、さらに4.5 g/Lのグルコースが補充されたMediV 105(合計グルコース濃度は9.0 g/L)を用いることができる。さらに別の具体的な実施形態では、MDCK細胞はSUBにおいてマイクロキャリア上の付着細胞として培養される。1実施形態においては、マイクロキャリアが約1空約4 g/Lの濃度で用いられる。別の1実施形態においては、マイクロキャリアは約2〜約3 g/Lの濃度で用いられる。特定の実施形態においては、SUBには培養しようとするMDCK細胞細胞が播種されるが、その播種密度は約5〜約15 x 104細胞/mLである。具体的な1実施形態においては、播種密度は約6〜約14 x 104細胞/mL、または約7〜13 x 104 細胞/mL、または約8〜約12 x 104細胞/mL、または約9〜約11 x 104細胞/mLである。当業者であれば、播種密度がマイクロキャリア1個あたりでも計算できることは明白であろう。従って、特定の実施形態においては、培養しようとするMDCK細胞は、約2〜約30細胞/マイクロキャリア、または約2〜約25細胞/マイクロキャリア、または約2〜約20細胞/マイクロキャリア、または約2〜約15細胞/マイクロキャリア、または約2〜約10細胞/マイクロキャリア、または約5〜約30細胞/マイクロキャリア、または約10〜約30細胞/マイクロキャリア、または約15〜約30細胞/マイクロキャリア、または約20〜約30細胞/マイクロキャリア、または約5〜約30細胞/マイクロキャリア、または約10〜約25細胞/マイクロキャリア、または約15〜約20細胞/マイクロキャリアの播種密度でSUBに播種される。
特定の実施形態においては、MDCK細胞は攪拌タンクSUB内で、モニタリングされおよび/または調節される、温度、攪拌速度、pH、溶存酸素(DO)、O2およびCO2の流速、からなる群から選択した1つ以上のパラメーターで培養される。1実施形態においては、温度は約30℃〜約42℃、または約33℃〜約39℃、または約35℃〜約38℃に維持される。具体的な1実施形態においては、温度は約36℃〜約37℃に維持される。1実施形態においては、攪拌速度は約50〜150 rpmに維持される。具体的な1実施形態においては、攪拌速度は約80〜約120 rpm、または約90〜約100 rpmに維持される。攪拌速度は当業界ではよく知られた手段によって制御される。別の1実施形態においては、培養物のpHは約6.0〜約7.5に維持される。具体的な1実施形態においては、培養開始時のpHは約6.0〜約7.5であり、培養プロセスの間は培養物のpHは約7.0〜7.5に維持される。当業者であれば、開始時のpHが所望の範囲よりも低いかまたは高くてもよく、該pHを、維持される所望のレベル(例えば、7.4)まで低下または上昇させることができることを理解するであろう。pHは当業界で既知のいずれかの方法によって維持される。例えば、pHは必要に応じてCO2を散布することによりおよび/または酸(例えばHCl)もしくは塩基(例えば、NaOH)を添加することによより、制御することができる。また別の1実施形態においては、DOの許容範囲は約100〜約35%である。具体的な1実施形態においては、DOは約35%〜約50%、または約50%に維持される。別の1実施形態においては、DOは約35%より低下すべきでない。当業者であれば、開始時のDOが100%であってよく、該DOを、維持される既定のレベル(例えば、50%)まで低下させることができることを理解するであろう。DOは当業界で既知のいずれかの方法を使用して、例えばO2を培養液中に散布することによって、維持される。特定の実施形態においては、O2の流速は約2.0 L/min未満に維持される。特定の実施形態においては、CO2の流速は約0.4 L/min未満に維持される。
6.5 ワクチン材料(例えば、ウイルス)の製造
本発明は細胞培養でウイルスを産生させる方法を提供し、その方法ではMDCK細胞がウイルス産生のために用いられる。この方法の特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞がウイルス産生に用いられる。1実施形態においては、このプロセスは次のステップを含んでいる:
a. 本発明のMDCK細胞を含んでいる細胞培養組成物にウイルスを感染させ、
b. この細胞培養組成物をウイルスが複製しうる条件下でインキュベートし、
c. この細胞培養組成物からウイルスを単離する。
1実施形態においては、本発明のMDCK細胞はステップ(a)の前に付着細胞として増殖させる。別の1実施形態においては、本発明のMDCK細胞はステップ(a)の前に非付着細胞として増殖させる。本発明のMDCK細胞はこのプロセスの過程で、これに限定されるものではないが上記のものを含む任意の培地中で培養することができる。特定の実施形態においては、本発明のMDCK細胞はこのプロセスの過程で、血清無含培地、例えばMediV 101、MediV 102、MediV 103、MediV 104、MediV 105、MediV 107、M18M、およびそれらのAPF製剤などの培地中で培養される。具体的な1実施形態においては、本発明のMDCK細胞はグルコースを補充した血清無含培地中で培養される。任意で、本発明のMDCK細胞をこのプロセスの過程で血清含有培地(例えば、DMEM+10% FBS+4 mM グルタミン+4.5 g/L グルコース)中で培養することができる。付加的な培養条件、例えば、温度、pH、pO2、CO2濃度、および細胞密度などは、上記で詳細に説明している。当業者であれば、ウイルスの産生のための本発明のMDCK細胞の増殖の培養条件の組み合わせを確立することができる。
ウイルスに感染させる前の細胞の増殖のための温度は、1実施形態においては、22℃〜40℃である。特定の実施形態においては、ウイルスに感染させる前の細胞の増殖のための温度は、39℃未満、または38℃未満、または37℃未満、または36℃未満、または35℃未満、または34℃未満、または33℃未満、または32℃未満、または30℃未満、または28℃未満、または26℃未満、または24℃未満である。具体的な1実施形態においては、感染させる前の細胞の増殖のための温度は約33℃〜約39℃である。細胞の増殖のための培養は、この方法の1実施形態において、灌流系、例えば攪拌発酵槽中で、当業者に既知の細胞保持システム(例えば遠心分離、ろ過、スピンフィルター、マイクロキャリアなど)を用いて行うことができる。具体的な1実施形態においては、細胞の増殖のための培養はSUBシステムで行われる。
そのような実施形態においては、細胞は例えば、1〜20日間、または3〜11日間増殖させることができる。培地の交換がこの過程で行われ、0から1日毎に約1〜5発酵槽容積(fermenter volume)へと増加する。あるいはまた、増殖培地は、培地交換が必要ないように、追加の成分(例えば、グルコース、微量元素、アミノ酸など)が補充されるおよび/またはそれらを含んでいる。細胞はこのようにして高い細胞密度、例えば、少なくとも1 x 106〜25 x 106細胞/mLまで増殖させることができる。灌流システムでの培養の間の灌流速度は、培地中の細胞数、グルコース、グルタミン、または乳酸の含量を介して、およびその他の当業者に既知のパラメーターを介して、調節することができる。あるいはまた、細胞はバッチプロセス、またはフェドバッチシステムで培養することができる。
本発明のプロセスの1実施形態においては、細胞を培養するための培養培地のpH、pO2値、グルコース濃度、およびその他のパラメーターは、当業者に既知の方法を用いて上述のとおり培養の間に調節される。
特定の実施形態においては、培地の一部がステップ(a)の前に交換される。1実施形態においては、交換される培地の部分は約20%〜約100%、または約30%〜約80%、または約30%〜約60%、または約66%〜約80%である。1実施形態においては、培地は等量の培地と交換される。別の1実施形態においては、培地はより少ない量の培地と交換されて細胞が効率的に濃縮される。培地はそれと同一の組成または異なる組成の培地と交換することができる。1実施形態においては、MDCK細胞の増殖に用いられる増殖培地は感染培地(すなわち、感染およびウイルスの複製中に用いられる培地)と交換される。具体的な1実施形態においては、MDCK細胞はMediV 105、MediV 107、またはM18M中で増殖され、感染させる前に培地の一部が感染培地と交換される。あるいはまた、増殖培地は、培地交換が必要ないように追加の成分(例えば、グルコース、微量元素、アミノ酸など)が補充されるおよび/またはそれらを含んでいる。別の具体的な1実施形態においては、感染培地は、セリンプロテアーゼ(例えば、トリプシン、TrypLEなど)を含んでいる。培地が交換されない別の実施形態においては、セリンプロテアーゼ(例えば、トリプシン、TrypLEなど)は感染の直前、感染の間、または感染の直後に添加される。
特定の実施形態においては、プロテアーゼは細胞をウイルスに感染させる前、またはそれと同時に添加される。
いくつかの実施形態においては、細胞のウイルス感染は、約0.00001〜約10、または約0.00001〜約1、または約0.00001〜約0.0003、または約0.00001〜約0.0001、または約0.0001〜約10、または約0.0005〜約5、または約0.002〜約0.5、または約0.001〜約0.003、のm.o.i.(感染の多重度、本明細書中では「MOI」とも略す)で行われる。また別の1実施形態においては、細胞のウイルス感染は、0.0001〜10、または0.0005〜5、または0.002〜0.5、または0.001〜0.003のm.o.i.(感染多重度)で行われる。あるいはまた、細胞のウイルス感染は培養物中のウイルスの最終濃度によって判定される。例えば、ウイルスは約0.001 x 103/mL〜約0.2 x 103/mL、または約0.01 x 103/mL〜約2 x 103/mL、または約0.1 x 103/mL〜約20 x 103/mL、または約1 x 103/mL〜約4 x 103/mLの最終濃度で添加することができる。感染後に、特に最大細胞変性作用また最大量のウイルス抗原が検出されるまで、さらにウイルスを複製させるために、感染した細胞培養物が培養される。1実施形態においては、感染後に細胞は22℃〜40℃の温度で培養される。特定の実施形態においては、ウイルスに感染させた後、細胞は、39℃未満、または38℃未満、または37℃未満、または36℃未満、または35℃未満、または34℃未満、または33℃未満、または32℃未満、または30℃未満、または28℃未満、または26℃未満、または24℃未満の温度で培養される。特定の実施形態においては、ウイルスに感染させた後、細胞は33℃の温度で培養される。別の1実施形態においては、感染後、細胞は33℃未満の温度で培養される。さらにまた別の1実施形態においては、感染後に細胞は31℃の温度で培養される。特定の実施形態においては、細胞の培養は2〜10日間行われる。培養は灌流システムまたは任意でバッチプロセスもしくはフェドバッチプロセスで行うことができる。
そのような実施形態においては、細胞は、例えば、ウイルスに感染させた(ステップ(b))後に、pHおよびpO2の値が上述のとおり維持されるように培養することができる。このプロセスのステップ(a)および/またはステップ(b)のウイルス複製の前の細胞培養の間に、抗原収量を最適化するために、細胞培養用培地を、新たに調製した培地、培地の濃縮物、またはアミノ酸、ビタミン類、脂質画分、リン酸塩などの規定の構成成分で取り替えることも可能である。細胞は、培地または培地濃縮物を数日間かけてさらに添加することによってゆっくりと希釈することができ、または培地もしくは培地濃縮物でさらに灌流する間にインキュベートすることができる。灌流速度は、この場合に今度は、細胞数、培地中のグルコース、グルタミン、乳酸もしくは乳酸デヒドロゲナーゼの含量、またはその他の当業者には既知のパラメーターによって調節することができる。さらに、灌流システムをフェドバッチプロセスと組み合わせることも可能である。
このプロセスの1実施形態においては、産生されたウイルスの回収および単離(ステップ(c))は、適切な収量のウイルスを産生させるために十分な期間、例えば感染後2〜10日目、または任意で3〜7日目に行われる。このプロセスの1実施形態においては、産生されたウイルスの回収および単離(ステップ(c))は、感染後2日目、または3日目、または4日目、または5日目、または6日目、または7日目、または8日目、または9日目、または10日目に行われる。
本発明のMDCK細胞中で産生させることのできるウイルスとしては、限定はされないが、オルソミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、トガウイルス科、ヘルペスウイルス科、ラブドウイルス科、レトロウイルス科、レオウイルス科、フラビウイルス科、アデノウイルス科、ピコルナウイルス科、アレナウイルス科、およびポックスウイルス科を含む、動物のウイルスなどが挙げられる。
細胞培養でインフルエンザウイルスを産生させる系も最近開発されている(例えば、Furminger, Textbook of Influenza, Nicholson, WebsterおよびHay編, pp. 324-332, Blackwell Science (1998);Mertenら, Novel Strategies in The Design and Production of Vaccines, CohenおよびShafferman編, pp. 141-151, Kluwer Academic (1996)を参照)。典型的には、これらの方法には、適切な宿主細胞を、選択したウイルス株で感染させることが含まれる。鶏卵でのワクチン生産に関連した困難性の多くが解消されている一方、病原性のインフルエンザウイルス株の全てが、良好な増殖を示すわけではなく、また確立された組織培養法に従って産生されるわけではない。さらに、望ましい特徴、例えば、弱毒化、温度感受性、および低温適応性などの弱毒化生ワクチンの製造に好適な特徴、を有する多くの株は、確立された方法を用いた組織培養では、特に商業スケールで、増殖が成功を収めていない。
本発明は血清含有培地または血清無含培地のいずれかで増殖するように適合させ、また培養の際にウイルス(これに限定されるものではないがインフルエンザ)の複製を支持することのできるMDCK細胞株を提供する。それらの細胞株は、ワクチン材料として用いるための細胞培養物中のウイルスの経済的な複製に適している。本発明のMDCK細胞は特に、他の確立した細胞株を用いても十分に複製しない、インフルエンザの低温に適応した、温度感受性の(ca/ts)株(例えば、FluMist(登録商標)中に見出されるインフルエンザ株)の産生に有用である。さらに、本発明のMDCK細胞は、孵化卵では増殖しないことがあるインフルエンザ株、例えばヒトの疾患の原因となりうる鳥インフルエンザウイルス(例えば「パンデミック」株)、の産生に有用である。
本発明のMDCK細胞中での本発明のプロセスによって産生させることのできるインフルエンザウイルスとしては、限定はされないが、弱毒化、温度感受性、低温適応(ca/ts/att)のマスター株に関して選択されたヘマグルチニン抗原および/またはノイラミニダーゼ抗原を組み込んでいる、再集合体ウイルスが含まれる。例えば、ウイルスはマスター株の骨格(または1つ以上のvRNAセグメント)を含むことができ、そのマスター株は例えば、温度感受性(ts)、低温適応(ca)、または弱毒化(att)のうちの1つ以上の性質を有している(例えば、A/Ann Arbor/6/60、B/Ann Arbor/1/66、PR8、B/Leningrad/14/17/55、B/14/5/1、B/USSR/60/69、B/Leningrad/179/86、B/Leningrad/14/55、B/England/2608/76など)。再集合体インフルエンザワクチン株の鶏卵中または細胞株中のいずれかでの産生方法は、当業界では知られており、そのような方法としては、例えば、Kilbourne, E.D., Vaccines (第2版), PlotkinおよびMortimer編, WB Saunders Co.(1988)、およびPCT出願公開No.WO 05/062820およびWO 03/091401、ならびに米国特許第6,951,754号、第6,887,699号、第6,649,372号、第6,544,785号、第6,001,634号、第5,854,037号、第5,824,536号、第5,840,520号、第5,820,871号、第5,786,199号、および第5,166,057号、ならびに米国特許出願公開No. 20060019350、20050158342、20050037487、20050266026、20050186563、20050221489、20050032043、20040142003、20030035814、および20020164770中に開示されているものが含まれる。本発明のMDCK細胞中での本発明のプロセスによって産生させることのできるその他のインフルエンザウイルスとしては、異種遺伝子産物を発現することができる組換えインフルエンザウイルスなどが挙げられる。例えば米国特許公開No.2004/0241139および2004/0253273を参照されたい。
1実施形態においては、細胞を増殖させ、次いでその細胞をインフルエンザウイルスに感染させる。特定の実施形態においては、感染は0.0001〜10、または0.0005〜5、または0.002〜0.5、または0.0001〜0.002、または0.00001〜0.002のm.o.i.(感染多重度)で行われる。別の実施形態においては、感染は約0.0001〜10、または約0.0005〜約5、または約0.002〜約0.5、または約0.0001〜約0.002、または約0.00001〜約0.002のm.o.i.(感染多重度)で行われる。任意で、ヘマグルチニンの前駆体タンパク質[HA0]の切断、およびその結果として細胞へのウイルスの吸着をもたらすプロテアーゼを添加することができる。本発明に従って、プロテアーゼの添加は細胞のインフルエンザウイルスでの感染の直前、感染と同時、または感染の直後に行うことができる。添加が感染と同時に行われる場合には、プロテアーゼは感染させようとする細胞培養物に直接的に添加することができ、または例えば、ウイルス接種とともに濃縮物として添加することができる。本発明の特定の態様においては、プロテアーゼはセリンプロテアーゼ、またはシステインプロテアーゼ、またはアスパラギンプロテアーゼである。1実施形態においては、トリプシンが用いられる。具体的な1実施形態においては、TPCK処理済トリプシンが用いられる。別の1実施形態においては、米国出願No.11/455,818に記載のStreptomyces griseus由来のプロテアーゼが用いられる。トリプシンは動物起源であることができ、より好ましくは組換えソース由来である。
1実施形態においては、トリプシンは細胞培養物に、1〜5000 mU/mL、または5〜1000 mU/mL、または100〜500 mU/mLの最終濃度まで添加される。代替的な1実施形態においては、トリプシンは細胞培養物に、培養培地中、1〜200μg/mL、または5〜50μg/mL、または5〜30μg/mLの最終濃度まで添加される。本発明のプロセスのステップ(iii)に従って感染細胞をさらに培養する間に、バッチもしくはフェドバッチプロセスの場合には、新鮮なトリプシンの添加によって、または灌流システムの場合には、トリプシン溶液の連続的な添加または断続的な添加によって、トリプシンの再活性化を行うことができる。
感染後に、感染した細胞培養物は、特に最大細胞変性作用または最大のウイルスおよび/またはウイルス抗原の量が検出できるまでウイルスをさらに複製させるために培養される。特定の実施形態においては、細胞の培養は2〜10日間行われる。培養は灌流システムまたは任意でバッチプロセスもしくはフェドバッチプロセスで順次行うことができる。さらに別の1実施形態においては、細胞はインフルエンザウイルスに感染させた後、25℃〜36℃、または29℃〜34℃の温度で培養される。感染させた細胞を33℃未満、特に上述の温度範囲で培養させると、特定のインフルエンザウイルス、例えばB型株がより高い収量で産生されるようになる(例えば、米国特許公開2006/0153872を参照)。さらに、温度感受性で、低温に適応した(ts/ca)インフルエンザウイルスの産生のために、感染細胞を35℃未満の温度で培養することが意図されている。ts/caウイルスを弱毒化(att)しうることも意図されている。別の1実施形態においては、細胞は、ts/caインフルエンザ株の産生のために、30℃未満、または31℃未満、または32℃未満、または33℃未満、または34℃未満の温度で培養される。具体的な1実施形態においては、細胞はB型インフルエンザウイルス株の産生のために31℃の温度で培養される。
インフルエンザウイルスによる感染後の細胞培養(ステップ(iii))は、例えば、上述のとおり行われる。
このプロセスの1実施形態においては、産生されたインフルエンザウイルスの回収と単離(ステップ(iii))は、適切な収量のウイルスを産生させるために十分な期間後、例えば感染後2〜10日目、または3〜7日目に行われる。典型的には、ウイルスは感染細胞が増殖した培養培地から回収される。典型的には、未精製の培地を清澄化した後、インフルエンザウイルスを濃縮する。一般的な方法としては、ろ過、限外ろ過、硫酸バリウムへの吸着と溶出、および遠心分離などが挙げられる。例えば、感染させた培養物からの未精製の培地を最初に、例えば1000〜2000 x gで細胞残屑とその他の大きな粒子状物質を除去するのに十分な時間、例えば10〜30分間、遠心分離することにより清澄化することができる。あるいはまた、その培地を0.8μmの酢酸セルロースフィルターを通過させて無傷の細胞やその他の大きな粒子状物質を除去する。任意で、清澄化された培地の上清を、例えば、15,000 x gで約3〜5時間遠心分離してインフルエンザウイルスのペレットとする。そのウイルスペレットを適切なバッファー、例えばSTE(0.01 M Tris-HCl;0.15 M NaCl;0.0001 M EDTA)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH 7.4)中に再懸濁した後、ウイルスをショ糖(60%〜12%)または酒石酸カリウム(50%〜10%)の密度勾配遠心分離によって濃縮することができる。連続的または段階的勾配(例えばショ糖の12%〜60%の間の12%の4段階の勾配)のいずれもが適している。それらの勾配を、回収のための可視バンドへのウイルス濃縮に十分な速度と時間で遠心分離にかける。あるいはまた、最大規模の商業用途のために、ウイルスは連続的な様式で作動するゾーン遠心分離ローターを用いて密度勾配から精製される。組織培養物からのインフルエンザウイルスの調製について当業者の指針となるさらに詳細な情報は、例えばFurminger, Textbook of Influenza pp. 324-332 Nicholson et al. (ed); Merten et al., Novel Strategies in Design and Production of Vaccines pp. 141-151 Cohen & Shafferman (ed), 及び米国特許第5,690,937号に提供されている。所望により、回収されたウイルスを安定化剤、例えばショ糖-リン酸-グルタミン酸(SPG)の存在下、−80℃で保存することができる。
このプロセスの特定の実施形態においては、ウイルスはBenzonase(登録商標)またはその他の非特異的エンドヌクレアーゼで処理される。任意で、Benzonase(登録商標)での処理は産生されたインフルエンザウイルスの回収および単離の早期に行う。このプロセスの別の実施形態においては、Benzonase(登録商標)処理後に、その材料は清澄化される。清澄化に有用な方法としては、限定はされないが、ダイレクトフローろ過(DFF)などが挙げられる。産生されたインフルエンザウイルスの回収と単離(ステップ(iii))のために用いることのできる別のステップとしては、限定はされないが、クロスフローろ過(TFF)、アフィニティークロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィー、および/またはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどが挙げられる。特定の実施形態においては、インプロセスでアフィニティークロマトグラフィーが用いられる。当業者であれば、様々なアフィニティークロマトグラフィー媒質が同様の分離性能で利用可能であこと、例えば多数のウイルスおよびウイルスタンパク質の濃縮と精製のための多数のアフィニティークロマトグラフィー媒質が利用可能であることを理解するだろう。具体的な1実施形態においては、Cellufine TM Sulfate(Chisso Corp.)アフィニティー媒質がアフィニティークロマトグラフィーに用いられる。別の1実施形態においては、FluSelect(GE Healthcare)がアフィニティークロマトグラフィーに用いられる。1実施形態においては、ウイルスはアフィニティークロマトグラフィープロセスと同時にBenzonase(登録商標)で処理される。特定の実施形態においては、このプロセスでメンブレンクロマトグラフィーが用いられる。1実施形態においては、イオン交換クロマトグラフィーがこのプロセスで用いられる。具体的な1実施形態においては、陽イオン交換クロマトグラフィーがこのプロセスで用いられる。特定の実施形態においては、陽イオン交換クロマトグラフィーが高いpHで行われる。具体的な1実施形態においては、陰イオン交換クロマトグラフィーがこのプロセスで用いられる。特定の実施形態においては、陰イオン交換クロマトグラフィーが低いpHで行われる。イオン交換クロマトグラフィーに有用な陰イオンメンブレンとしては、限定はされないが、陰イオンメンブレン吸着剤(例えば、Sartobind(登録商標)Q15, D15)および陽イオンメンブレン吸着剤(例えば、Sartobind(登録商標)S15およびC15)などが挙げられる。その他のステップについては下記の実施例のセクションで例示している。
6.6 ワクチン組成物および使用方法
本発明はさらに、本発明のプロセスによって得ることのできるウイルス(例えば、インフルエンザ)に関する。これらのウイルスは、ヒトまたは動物への投与用のワクチンを提供するために既知の方法で製剤化することができる。それらのウイルスはインタクトなウイルス粒子として(例えば、弱毒化生ウイルス)、または不活性化/崩壊したウイルスとして(例えば、界面活性剤、ホルムアルデヒドで処理したもの)ワクチン中に存在することができる。任意で、規定のウイルス成分(例えば、タンパク質)をウイルスから当業者に既知の方法で単離し、ワクチンの製造に用いることができる。ワクチン組成物用の不活性化/崩壊したウイルス粒子の製造及び製剤化の方法は当業界ではよく知られており、40年以上にわたって用いられている。
インタクトなウイルス粒子(例えば、弱毒化生ウイルス)の製剤化には、追加のステップが含まれ、そのようなステップとして限定はされないが、ろ過でバッファーを交換して最終製剤とした後、滅菌ステップを行うことが含まれる。そのような製剤化に有用なバッファーは、200 mMのショ糖と、アルギニンなどの他のアミノ酸賦形剤を添加したリン酸バッファーまたはヒスチジンバッファー(pH7.0〜7.2)を含んでいてもよい。特定の実施形態においては、コラーゲンやゼラチン(例えば、ブタ、魚、鳥のゼラチン)などの安定化タンパク質加水分解物が添加される。いくつかの実施形態においては、本発明の最終のウイルス溶液/ワクチンは、インフルエンザのワクチン接種のシーズンを通じて(典型的には、北半球ではほぼ9月から3月にかけて)、「現地で」での保管(例えば、2〜8℃、4℃、5℃で冷蔵して販売及び商業化)を可能にするための十分な期間の間、液体形態で安定な生ウイルスを含むことができる。従って、ウイルス/ワクチン組成物は、保存期間にわたってその効力を維持するかまたは許容しうる速度で効力を失うことが望ましい。他の実施形態においては、そのような溶液/ワクチンは、液体形態で、約2℃〜約8℃、例えば冷蔵庫の温度で、安定である。例えば、冷蔵庫で安定な弱毒化インフルエンザワクチンを製剤化するための方法および組成物は、PCT特許公開No. WO/2006/041819中に記載されており、また、PCT公開No. WO/2005/-14862をさらに参照されたい。
したがって、特定の実施形態においては、本発明は冷蔵庫内で安定なワクチン製剤を提供し、該ワクチン製剤は最終製剤中に次のもののうちの1つ以上(1種以上の成分の変動は10%以内)を含んでいる:1〜5%のアルギニン;1〜4%のゼラチン;5〜10%のショ糖(任意でリン酸バッファー中のショ糖);0.01〜0.1%のグルタミン酸(1ナトリウム1水和物);10〜150 mMのリン酸カリウムおよび80〜150 mMのヒスチジン。
具体的な1実施形態においては、ワクチン製剤は下記のものの1つ以上を含んでいる(1種以上の成分の変動は10%以内);1〜2%のアルギニン;2%のゼラチン;7〜10%のショ糖(任意でリン酸バッファー中のショ糖);および100 mMのヒスチジン。別の具体的な1実施形態においては、ワクチン製剤は下記のものの1つ以上を含んでいる(1種以上の成分の変動は10%以内);1〜2%のアルギニン;1%のゼラチン;リン酸バッファー中の7〜10%のショ糖。
他の特定の実施形態においては、本発明は冷蔵庫内で安定なワクチン製剤を提供し、該ワクチン製剤は最終製剤中に次のものの1種以上を含んでいる:ショ糖6〜8% w/v;アルギニン1塩酸塩1〜2% w/v;グルタミン酸1ナトリウム1水和物0.05〜0.1% w/v;ゼラチン加水分解物、ブタA型(または魚や鳥などのその他のソース)0.5〜2% w/v;リン酸水素2カリウム1〜2%;およびリン酸2水素カリウム0.25〜1% w/v。
具体的な1実施形態においては、ワクチン製剤は次のものの1種以上を含んでいる:ショ糖6.84% w/v;アルギニン1塩酸塩1.21% w/v;グルタミン酸1ナトリウム1水和物0.094 w/v;ゼラチン加水分解物、ブタA型(またはその他のソース)1% w/v;リン酸水素2カリウム1.13%;およびリン酸2水素カリウム0.48% w/v。別の具体的な1実施形態においては、ワクチン製剤は次のものの全てを含んでいる:ショ糖6.84% w/v;アルギニン1塩酸塩1.21% w/v;グルタミン酸1ナトリウム1水和物0.094% w/v;ゼラチン加水分解物、ブタA型(またはその他のソース)1% w/v;リン酸水素2カリウム1.13%;およびリン酸2水素カリウム0.48% w/v。
別の具体的な1実施形態においては、ワクチン製剤は次のものの全て(1種以上の成分の変動は10%以内)を含んでいる:ショ糖6.84% w/v;アルギニン1塩酸塩1.21% w/v;グルタミン酸1ナトリウム1水和物0.094% w/v;ゼラチン加水分解物、ブタA型(またはその他のソース)1% w/v;リン酸水素2カリウム1.13%;およびリン酸2水素カリウム0.48% w/v。また別の具体的な1実施形態においては、ワクチン製剤は次のものの全て(1種以上の成分の変動は10%以内)を含んでいる:ショ糖6.84% w/v;アルギニン1塩酸塩1.21% w/v;ゼラチン加水分解物、ブタA型(またはその他のソース)1% w/v。そのような実施形態においては、製剤はバッファー(例えばリン酸カリウムバッファー(pH 7.0〜7.2))中の形態である。別の具体的な1実施形態においては、ワクチン製剤は次のものの全て(1種以上の成分の変動は20%以内)を含んでいる:ショ糖6.84% w/v;アルギニン1塩酸塩1.21% w/v;グルタミン酸1ナトリウム1水和物0.094% w/v;ゼラチン加水分解物、ブタA型(またはその他のソース)1% w/v;リン酸水素2カリウム1.13%;およびリン酸2水素カリウム0.48% w/v。
さらにまた別の具体的な1実施形態においては、ワクチン製剤は次のものの全て(1種以上の成分の変動は30%以内)を含んでいる:ショ糖6.84% w/v;アルギニン1塩酸塩1.21% w/v;グルタミン酸1ナトリウム1水和物0.094% w/v;ゼラチン加水分解物、ブタA型(またはその他のソース)1% w/v;リン酸水素2カリウム1.13%;およびリン酸2水素カリウム0.48% w/v。また別の具体的な1実施形態においては、ワクチン製剤は次のものの全て(1種以上の成分の変動は40%以内)を含んでいる:ショ糖6.84% w/v;アルギニン1塩酸塩1.21% w/v;グルタミン酸1ナトリウム1水和物0.094% w/v;ゼラチン加水分解物、ブタA型(またはその他のソース)1% w/v;リン酸水素2カリウム1.13%;およびリン酸2水素カリウム0.48% w/v。
別の具体的な1実施形態においては、ワクチン製剤は次のものの全て(1種以上の成分の変動は1%以内)を含んでいる:ショ糖6.84% w/v;アルギニン1塩酸塩1.21% w/v;グルタミン酸1ナトリウム1水和物0.094% w/v;ゼラチン加水分解物、ブタA型(またはその他のソース)1% w/v;リン酸水素2カリウム1.13%;およびリン酸2水素カリウム0.48% w/v。また別の具体的な1実施形態においては、ワクチン製剤は次のものの全て(1種以上の成分の変動は3%以内)を含んでいる:ショ糖6.84% w/v;アルギニン1塩酸塩:1.21% w/v;グルタミン酸1ナトリウム1水和物0.094% w/v;ゼラチン加水分解物、ブタA型(またはその他のソース)1% w/v;リン酸水素2カリウム1.13%;およびリン酸2水素カリウム0.48% w/v。具体的な1実施形態においては、ワクチン製剤は、例えばリン酸カリウム(例えば、少なくとも50 mM、または少なくとも100 mM、または少なくとも200 mM、または少なくとも250 mM)をバッファーとして、あるいはヒスチジン(例えば、少なくとも50 mM、または少なくとも100 mM、または少なくとも200 mM、または少なくとも250 mM)を含んでもよい。
任意で、ワクチン製剤の保存期間の延長のために、加熱乾燥ガス流下で製剤の液体飼料を噴霧により霧化して微細な液滴とする、迅速な乾燥方法である噴霧乾燥を用いることができる。その微細な液滴を蒸発させることにより、融解していた溶質からなる乾燥粉末が得られる(例えば米国特許公開No. 2004/0042972を参照)。
通常は、ウイルスもしくはウイルス成分は、1種以上のウイルス株に特異的な免疫応答を刺激するために、適切な担体もしくは賦形剤中で予防的に投与することができる。典型的には、担体もしくは賦形剤は製薬上許容される担体もしくは賦形剤、例えば、滅菌水、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール水溶液、エタノール、またはそれらの組み合わせなどである。無菌性、pH、等張性、および安定性を保証するそのような溶液の調製は当業界で確立されたプロトコールに従って行われる。通常は、担体もしくは賦形剤はアレルギー作用やその他の望ましくない作用を最小限に抑えるため、および特定の投与経路(例えば、皮下、筋肉内、鼻腔内など)に適したものとするために、選択される。
任意で、ウイルスまたはその成分の予防的投与のための製剤は、インフルエンザ抗原に対する免疫応答を増強するために1種以上のアジュバントをさらに含有する。適切なアジュバントとしては:サポニン、無機物ゲル、例えば水酸化アルミニウム、界面活性剤、例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール(pluronic polyols)、ポリアニオン、ペプチド、油または炭化水素乳剤、Bacile Calmette-Guerin(BCG)、Corynebacterium parvum、および合成のアジュバントQS-21およびMF59などが挙げられる。
通常は、ワクチン製剤はインフルエンザウイルスの1種以上の株に対しての特異的な免疫応答を刺激するのに十分な量で投与される。好ましくは、ウイルスの投与によって防御免疫応答が誘起される。1種以上のウイルス株に対しての防御免疫応答を誘起させるための投与量および方法は、当業者には既知である。例えば、不活化インフルエンザウイルスは、1回の投与量あたり約1〜1000 HID50(ヒト感染用量)、すなわち、約105〜108 pfu(プラーク形成単位)で提供される。あるいはまた、約10〜50μg、例えば約15μgのHAがアジュバントなしで投与され、より少ない量がアジュバントとともに投与される。典型的には、投与量は、例えば年齢、身体の状態、体重、性別、食事、投与時間、およびその他の臨床的因子に基づいてこの範囲内で調整される。予防的なワクチン製剤は、例えば、針とシリンジを用いて、または無針注射デバイスを用いて、皮下または筋肉内注射によって全身的に投与される。あるいはまた、ワクチン製剤は、上気道への噴霧、滴下、または大きな粒子のエアロゾル(約10ミクロン以上)のいずれかによって、鼻腔内に投与される。上述の送達経路のいずれかにより、防御的な全身的免疫応答がもたらされるが、鼻腔内投与ではインフルエンザウイルスの侵入部位における粘膜免疫が誘起されるという付加的な利点が得られる。鼻腔内投与には、弱毒化生ウイルスワクチンが好ましいことが多く、例えば、弱毒化、低温適応、および/または温度感受性の組換えまたは再集合体インフルエンザウイルスが好ましい。防御免疫応答の刺激を単回投与で行うことが好ましいが、同じ投与経路または異なる経路で、所望の予防的効果を達成するために追加用量の投与を行うことができる。これらの方法はどのようなウイルスにも適用することができ、そのようなウイルスとしては、限定はされないが、オルソミクソウイルス(A型およびB型のインフルエンザ株を含む)、パラミクソウイルス(RSV、ヒトメタニューモウイルス、およびパラインフルエンザを含む)、ラブドウイルス、およびフラボウイルスなどが挙げられる。
6.6.1 インフルエンザウイルス
本発明の方法、プロセス、および組成物は主としてワクチン用のインフルエンザウイルスの産生に関するものである。インフルエンザウイルスは、セグメント化された一本鎖のRNAゲノムを含んでいる内部リボ核タンパク質のコアと、内側がマトリクスタンパク質で覆われた外側のリポタンパク質エンベロープからできている。A型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスは各々が一本鎖のマイナス鎖RNAの8つのセグメントを含んでいる。A型インフルエンザのゲノムは7種のポリペプチドをコードしている。セグメント1〜3は3種類のポリペプチドをコードし、RNA依存性RNAポリメラーゼを作っている。セグメント1はポリメラーゼ複合タンパク質PB2をコードしている。残りのポリメラーゼタンパク質であるPB1とPAはそれぞれセグメント2とセグメント3によってコードされている。さらに、いくつかのインフルエンザ株のセグメント1は、小タンパク質であるPB1-F2をコードするが、これはPB1コード領域内のオルターナティブリーディングフレームから作られたものである。セグメント4は感染の間にの細胞への付着と進入に関わるヘマグルチニン(HA)という表面の糖タンパク質をコードする。セグメント5はヌクレオカプシドヌクレオタンパク質(NP)ポリペプチドをコードし、これはウイルスRNAに会合する主要な構造成分である。セグメント6はノイラミニダーゼ(NA)というエンベロープ糖タンパク質をコードする。セグメント7は2種のマトリクスタンパク質をコードし、それらはM1およびM2と呼ばれ、別個にスプライスされたmRNAから翻訳されたものである。セグメント8は2種類の非構造タンパク質NS1およびNS2をコードし、これらは選択的にスプライスされたmRNA変種から翻訳されたものである。
B型インフルエンザウイルスの8つのゲノムセグメントは11種のタンパク質をコードする。3つの最も大きな遺伝子はRNAポリメラーゼの成分であるPB1、PB2、およびPAをコードする。セグメント4はHAタンパク質をコードする。セグメント5はNPをコードする。セグメント6はNAタンパク質とNBタンパク質をコードする。NBとNAの両タンパク質は、バイシストロニックなmRNAのオーバーラップするリーディングフレームから翻訳されたものである。B型インフルエンザのセグメント7も2種類のタンパク質M1とM2をコードする。最も小さなセグメントは、完全長のRNAから翻訳されるNS1、およびスプライスされたmRNA変種から翻訳されるNS2の2つの産物をコードする。
再集合体ウイルスは、推奨されるマスター株(マスタードナーウイルス(MDV)とも呼ばれる)の関連で選択したヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼ抗原を組み込むように作製する。FluMist(登録商標)は推奨される低温適応、弱毒化、温度感受性のMDV株(例えば、A/Ann Arbor/6/60およびB/Ann Arbor/1/66)を利用している。
再集合体ウイルスの作製には多数の方法が有用であり、そのような方法としては、卵をベースとした方法およびより最近は細胞培養法が含まれる。例えば、PCT公開WO 03/091401; WO 05/062820、ならびに米国特許第6,544,785号;第6,649,372号;第6,951,75号、ならびに米国特許出願No. 11/455,818、11/455,734、および11/501,067を参照されたい。本発明のMDCK細胞、培地、および方法はインフルエンザウイルスの産生に有用であることが意図されており、そのようなウイルスとしては、限定はされないが、本明細書中で開示しているインフルエンザ株(例えば、A/AnnArbor/6/60およびB/AnnArbor/1/66)、およびA/AnnArbor/6/60、B/AnnArbor/1/66の遺伝子PR8を含んでいる再集合体ウイルスなどが挙げられる。さらに、本発明のMDCK細胞、培地、および方法はインフルエンザウイルスの産生に有用であることが意図されており、そのようなウイルスとしては、温度感受性、低温適応、弱毒化の表現型のうちの少なくとも1つを有する、再集合体ウイルスが含まれる。再集合体は古典的な再集合技法によって作製することができ、例えば、同時感染法、または任意でプラスミドレスキュー法によって作製することができる(例えば、PCT公開WO 03/091401およびWO 05/062820;米国特許第6,544,785号、第6,649,372号、第6,951,754号、第6,887,699号、第6,001,634号、第5,854,037号、第5,824,536号、第5,840,520号、第5,820,871号、第5,786,199号、および第5,166,057号;米国特許出願公開No.20060019350、20050158342、20050037487、20050266026、20050186563、20050221489、20050032043、20040142003、20030035814、および20020164770;ならびにNeumannら(1999) Generation of influenza A virus entirely from cloned cDNAs. Proc Natl Acad Sci USA 96:9345-9350;Fodorら(1999) Rescue of influenza A virus from recombinant DNA. J. Virol 73:9679-9682;Hoffmannら(2000) A DNA transfection system for generation of influenza A virus from eight plasmids Proc Natl Acad Sci USA 97:6108-6113;WO 01/83794;HoffmannとWebster (2000), Unidirectional RNA polymerase I-polymerase II transcription system for the generation of influenza A virus from eight plasmids、81:2843-2847;ならびにHoffmannら, (2002)、Rescue of influenza B viruses from 8 plasmids、99(17): 11411-11416を参照)。
従って、本発明は別の1態様においては、インフルエンザウイルスの1つ以上のゲノムセグメントを含んでいる本発明のMDCK細胞を提供する。特定の実施形態においては、この細胞はインフルエンザウイルスの8つのゲノムセグメント全てを含んでいる。特定の実施形態においては、この8つのゲノムセグメントは各々が同一のインフルエンザウイルス由来である。特定の実施形態においては、この8つのゲノムセグメントは1、2、またはそれ以上の異なるインフルエンザウイルス由来である。特定の実施形態においては、この8つのゲノムセグメントは、HAとNAをそれぞれコードする2つのセグメントを含んでおり、それらは制限はなく当業者には既知の任意のインフルエンザ株に由来し、残りのゲノムセグメントは低温適応、および/または温度感受性、および/または弱毒化インフルエンザウイルスに由来する。特定の実施形態においては、この細胞は上述の刊行物のいずれかに記載のインフルエンザのゲノムセグメントのいずれかを含んでいる。
7. 具体的な実施形態
1. Madin-Darby Canine Kidney(MDCK)細胞であって、複数の該MDCK細胞を含んでいる細胞培養組成物は、弱毒化、低温適応、温度感受性のインフルエンザウイルスを、少なくとも約7.0のミリリットルあたりの50%組織培養感染量の底を10とした対数(log10 TCID50/mL)まで、または少なくとも約7.0のミリリットルあたりの蛍光フォーカスユニットの底を10とした対数(log10 FFU/mL)まで、複製することを支持する、前記MDCK細胞。
2. 前記MDCK細胞がインフルエンザウイルスの複製を少なくとも約7.2 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約7.2 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態1のMDCK細胞。
3. 前記MDCK細胞がインフルエンザウイルスの複製を少なくとも約7.4 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約7.4 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態1のMDCK細胞。
4. 前記MDCK細胞がインフルエンザウイルスの複製を少なくとも約7.6 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約7.6 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態1のMDCK細胞。
5. 前記MDCK細胞がインフルエンザウイルスの複製を少なくとも約7.8 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約7.8 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態1のMDCK細胞。
6. 前記MDCK細胞がインフルエンザウイルスの複製を少なくとも約8.0 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約8.0 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態1のMDCK細胞。
7. 前記MDCK細胞がインフルエンザウイルスの複製を少なくとも約8.2 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約8.2 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態1のMDCK細胞。
8. 前記MDCK細胞がインフルエンザウイルスの複製を少なくとも約8.4 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約8.4 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態1のMDCK細胞。
9. 前記MDCK細胞がインフルエンザウイルスの複製を少なくとも約8.6 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約8.6 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態1のMDCK細胞。
10. 前記MDCK細胞がインフルエンザウイルスの複製を少なくとも約8.8 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約8.8 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態1のMDCK細胞。
11. 前記MDCK細胞がインフルエンザウイルスの複製を少なくとも約9.0 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約9.0 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態1のMDCK細胞。
12. 前記MDCK細胞が血清無含培地中で増殖する、実施形態1のMDCK細胞。
13. 前記血清無含培地が動物タンパク質無含培地である、実施形態1のMDCK細胞。
14. 前記MDCK細胞が付着性である、実施形態1のMDCK細胞。
15. 前記MDCK細胞が非付着性である、実施形態1のMDCK細胞。
16. 前記MDCK細胞が非腫瘍形成性である、実施形態1のMDCK細胞。
17. 前記MDCK細胞が非発癌性である、実施形態1のMDCK細胞。
18. 前記MDCK細胞がAmerican Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号CCL34によって同定されるMDCK細胞株由来のものである、実施形態1のMDCK細胞。
19. 前記MDCK細胞がATCCアクセッション番号PTA-6500、PTA-6501、PTA-6502、またはPTA-6503によって同定されるMDCK細胞株由来のものである、実施形態1のMDCK細胞。
20. 前記MDCK細胞はATCCアクセッション番号PTA-7909またはPTA-7910によって同定される、実施形態1のMDCK細胞。
21. インフルエンザウイルスがA型インフルエンザウイルスである、実施形態1のMDCK細胞。
22. インフルエンザウイルスがB型インフルエンザウイルスである、実施形態1のMDCK細胞。
23. インフルエンザウイルスが低温適応のウイルスである、実施形態1のMDCK細胞。
24. インフルエンザウイルスが温度感受性のウイルスである、実施形態1のMDCK細胞。
25. インフルエンザウイルスが弱毒化ウイルスである、実施形態1のMDCK細胞。
26. インフルエンザウイルスが弱毒化、低温適応、および温度感受性のウイルスである、実施形態1のMDCK細胞。
27. インフルエンザウイルスが温度感受性、弱毒化、低温適応のウイルスの遺伝子セグメントの1つ以上を含んでいる、実施形態1のMDCK細胞。
28. インフルエンザウイルスが、インフルエンザ株A/Ann Arbor/6/60の遺伝子セグメントの1つ以上を含んでいる、実施形態1のMDCK細胞。
29. インフルエンザウイルスが、B/Ann Arbor/1/66の遺伝子セグメントの1つ以上を含んでいる、実施形態1のMDCK細胞。
30. 前述の実施形態のいずれかのMDCK細胞を、少なくとも約1 x 106細胞/mLの細胞密度までSUBシステムで増殖させるための方法であって、細胞培養培地に前述の実施形態のいずれかのMDCK細胞を、約8 x 104〜約12 x 104細胞/mLの播種密度で接種し、該細胞を以下:
a. 約50〜150 rpmの攪拌速度;
b. 約6.0〜約7.5のpH;
c. 約35%〜約100%の溶存酸素(DO);および
d. 約33℃〜約42℃の温度
からなる群から選択された1つ以上の培養条件を維持しながら培養することを含んでいる、前記方法。
31. 細胞培養培地が血清無含培地である、実施形態30の方法。
32. 細胞培養培地が動物タンパク質無含培地である、実施形態30の方法。
33. 細胞培養培地がグルコースを補充したMediV 105、またはM-32、もしくはMediV 107である、実施形態30の方法。
34. 攪拌速度が約90〜約100 rpmである、実施形態30の方法。
35. DOが約35%〜約100%である、実施形態30の方法。
36. 温度が約36℃〜約38℃である、実施形態30の方法。
37. 付着性のMDCK細胞の培養にマイクロキャリアを用いる、実施形態30の方法。
38. マイクロキャリアの濃度が約1〜約4 g/Lである、実施形態37の方法。
39. 実施形態30〜実施形態38のいずれかの方法によって作製される細胞培養組成物。
40. MDCK細胞および細胞培養培地を含んでいる細胞培養組成物であって、該細胞培養組成物がインフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約7.0 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約7.0 log10 FFU/mLまで支持する、前記細胞培養組成物。
41. 前記MDCK細胞培養組成物が、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約7.2 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約7.2 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態40の細胞培養組成物。
42. 前記MDCK細胞培養組成物が、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約7.4 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約7.4 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態40の細胞培養組成物。
43. 前記MDCK細胞培養組成物が、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約7.6 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約7.6 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態40の細胞培養組成物。
44. 前記MDCK細胞培養組成物が、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約7.8 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約7.8 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態40の細胞培養組成物。
45. 前記MDCK細胞培養組成物が、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約8.0 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約8.0 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態40の細胞培養組成物。
46. 前記MDCK細胞培養組成物が、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約8.2 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約8.2 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態40の細胞培養組成物。
47. 前記MDCK細胞培養組成物が、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約8.4 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約8.4 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態40の細胞培養組成物。
48. 前記MDCK細胞培養組成物が、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約8.6 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約8.6 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態40の細胞培養組成物。
49. 前記MDCK細胞培養組成物が、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約8.8 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約8.8 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態40の細胞培養組成物。
50. 前記MDCK細胞培養組成物が、インフルエンザウイルスの複製を、少なくとも約9.0 log10 TCID50/mLまで、および/または少なくとも約9.0 log10 FFU/mLまで支持する、実施形態40の細胞培養組成物。
51. 前記細胞培養組成物が動物血清を含まない、実施形態40の細胞培養組成物。
52. 前記細胞培養組成物が、動物から精製したタンパク質を含まない、実施形態40の細胞培養組成物。
53. 前記細胞培養組成物が、組換えで発現させたタンパク質を含んでいる、実施形態40の細胞培養組成物。
54. 前記タンパク質がMDCK細胞の少なくとも1つによって発現される、実施形態53の細胞培養組成物。.
55. 前記タンパク質が組換え発現系で発現された後、前記細胞培養組成物に添加される、実施形態53の細胞培養組成物。
56. 前記組換えで発現されるタンパク質がインスリンまたはトリプシンである、実施形態53の細胞培養組成物。
57. 前記MDCK細胞の少なくとも一部が付着性である、実施形態40の細胞培養組成物。
58. 前記MDCK細胞が付着性である、実施形態40の細胞培養組成物。
59. 前記MDCK細胞の少なくとも一部が非付着性である、実施形態40の細胞培養組成物。
60. 前記MDCK細胞が非付着性である、実施形態40の細胞培養組成物。
61. 前記MDCK細胞が非腫瘍形成性である、実施形態40の細胞培養組成物。
62. 前記MDCK細胞がAmerican Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号CCL34によって同定されるMDCK細胞株由来である、実施形態40の細胞培養組成物。
63. 前記MDCK細胞がATCCアクセッション番号PTA-6500、PTA-6501、PTA-6502、またはPTA-6503によって同定されるMDCK細胞株由来である、実施形態40の細胞培養組成物。
64. 前記MDCK細胞はATCCアクセッション番号PTA-7909またはPTA-7910によって同定される、実施形態40の細胞培養組成物。
65. インフルエンザウイルスがA型インフルエンザウイルスである、実施形態40の細胞培養組成物。
66. インフルエンザウイルスがB型インフルエンザウイルスである、実施形態40の細胞培養組成物。
67. インフルエンザウイルスが低温適応のウイルスである、実施形態40の細胞培養組成物。
68. インフルエンザウイルスが弱毒化ウイルスである、実施形態40の細胞培養組成物。
69. インフルエンザウイルスが温度感受性、弱毒化、低温適応のインフルエンザウイルスの1つ以上の遺伝子セグメントを含んでいる、実施形態40の細胞培養組成物。
70. インフルエンザウイルスがインフルエンザウイルス株A/Ann Arbor/6/60の1つ以上の遺伝子セグメントを含んでいる、実施形態40の細胞培養組成物。
71. インフルエンザウイルスがB/Ann Arbor/1/66の1つ以上の遺伝子セグメントを含んでいる、実施形態40の細胞培養組成物。
72. MDCK細胞がインフルエンザウイルスの複製の間、約25℃〜約33℃で培養される、実施形態40の細胞培養組成物。
73. 前記MDCK細胞は検出可能な発癌性DNAを含まない、実施形態40の細胞培養組成物。
74. 前記細胞培養組成物は検出可能なマイコプラズマを含まない、実施形態40の細胞培養組成物。
75. 前記細胞培養組成物は検出可能な細菌を含まない、実施形態40の細胞培養組成物。
76. 前記細胞培養組成物はインフルエンザウイルス以外の検出可能なウイルスを含まない、実施形態40の細胞培養組成物。
77. 検出可能なウイルスがイヌまたはヒトの細胞に感染するウイルスである、実施形態40の細胞培養組成物。
78. 前記MDCK細胞は潜伏ウイルスを含まない、実施形態40の細胞培養組成物。
79. 前記MDCK細胞はレトロウイルスを含まない、実施形態40の細胞培養組成物。
80. 前記MDCK細胞は少なくとも約1 x 105細胞/mLの細胞密度まで増殖する、実施形態40の細胞培養組成物。
81. 前記MDCK細胞は少なくとも約5 x 105細胞/mLの細胞密度まで増殖する、実施形態40の細胞培養組成物。
82. 前記MDCK細胞は少なくとも約1 x 106細胞/mLの細胞密度まで増殖する、実施形態40の細胞培養組成物。
83. 前記MDCK細胞は少なくとも約2.5 x 106細胞/mLの細胞密度まで増殖する、実施形態40の細胞培養組成物。
84. 前記MDCK細胞は少なくとも約5 x 106細胞/mLの細胞密度まで増殖する、実施形態40の細胞培養組成物。
85. 細胞培養でインフルエンザウイルスを産生させる方法であって;
a. 実施形態40〜84のいずれかに記載の細胞培養組成物にインフルエンザウイルスを感染させ、
b. 該細胞培養組成物をインフルエンザウイルスの複製が可能な条件下でインキュベートし、
c. 該細胞培養組成物からインフルエンザウイルスを単離すること、
を含んでいる、前記方法。
86. 新鮮な培地または追加の培地成分をステップ(a)の前またはステップ(a)の間に細胞培養物に添加する、実施形態85の方法。
87. ステップ(a)の前またはステップ(a)の間に、前記細胞培養培地が全く除去されないかまたは一部が除去され、新鮮な培地に取り替えられる、実施形態85の方法。
88. ステップ(a)が約0.00001〜約0.00003 FFU/細胞の感染多重度(MOI)で行われる、実施形態85の方法。
89. ステップ(a)が約0.0001〜約0.0003 FFU/細胞のMOIで行われる、実施形態85の方法。
90. ステップ(a)が約0.001〜約0.003 FFU/細胞のMOIで行われる、実施形態85の方法。
91. ステップ(a)の条件が以下:
a. 約50〜150 rpmの攪拌速度;
b. 約6.0〜約7.5のpH;
c.約35%〜約100%の溶存酸素(DO);および
d. 約30℃〜約35℃の温度、
からなる群から選択される、実施形態85の方法。
92. インフルエンザウイルスが、少なくとも約7.0 log10 TCID50/mL、および/または少なくとも約7.0 log10 FFU/mLまで複製する、実施形態85の方法。
93. インフルエンザウイルスが、少なくとも約7.2 log10 TCID50/mL、および/または少なくとも約7.2 log10 FFU/mLまで複製する、実施形態85の方法。
94. インフルエンザウイルスが、少なくとも約7.4 log10 TCID50/mL、および/または少なくとも約7.4 log10 FFU/mLまで複製する、実施形態85の方法。
95. インフルエンザウイルスが、少なくとも約7.6 log10 TCID50/mL、および/または少なくとも約7.6 log10 FFU/mLまで複製する、実施形態85の方法。
96. インフルエンザウイルスが、少なくとも約7.8 log10 TCID50/mL、および/または少なくとも約7.8 log10 FFU/mLまで複製する、実施形態85の方法。
97. インフルエンザウイルスが、少なくとも約8.0 log10 TCID50/mL、および/または少なくとも約8.0 log10 FFU/mLまで複製する、実施形態85の方法。
98. インフルエンザウイルスが、少なくとも約8.2 log10 TCID50/mL、および/または少なくとも約8.2 log10 FFU/mLまで複製する、実施形態85の方法。
99. インフルエンザウイルスが、少なくとも約8.4 log10 TCID50/mL、および/または少なくとも約8.4 log10 FFU/mLまで複製する、実施形態85の方法。
100. インフルエンザウイルスが、少なくとも約8.6 log10 TCID50/mL、および/または少なくとも約8.6 log10 FFU/mLまで複製する、実施形態85の方法。
101. インフルエンザウイルスが、少なくとも約8.8 log10 TCID50/mL、および/または少なくとも約8.8 log10 FFU/mLまで複製する、実施形態85の方法。
102. インフルエンザウイルスが、少なくとも約9.0 log10 TCID50/mL、および/または少なくとも約9.0 log10 FFU/mLまで複製する、実施形態85の方法。
103. 実施形態85の方法に従って産生されたインフルエンザウイルス。
104. 実施形態103のインフルエンザウイルスのポリペプチドを製薬上許容される担体または希釈剤中に含んでいる、免疫原性組成物。
105. 実施形態103のインフルエンザウイルスを製薬上許容される担体または希釈剤中に含んでいる、免疫原性組成物。
106. 前記免疫原性組成物は冷蔵庫内で安定である、実施形態105の免疫原性組成物。
107. ウイルス調製品からDNA夾雑物を排除する方法であって;
(a) 該DNA夾雑物がアフィニティークロマトグラフィー媒質上に保持されず、該ウイルス調製品中に存在するウイルスが保持される条件下で、該ウイルス調製品を該アフィニティークロマトグラフィー媒質に通過させ;
(b) 該アフィニティークロマトグラフィー媒質を洗浄して該DNA夾雑物を除去し;および
(c) 該ウイルス調製品中に存在するウイルスを該アフィニティークロマトグラフィー媒質から溶出させること、
を含んでいる、前記方法。
108. アフィニティークロマトグラフィー媒質がCellufine Sulfate樹脂である、実施形態107の方法。
109. ステップ(a)と(b)の間に非特異的エンドヌクレアーゼ調製品をアフィニティークロマトグラフィー媒質に通過させる、実施形態107の方法。
110. 非特異的エンドヌクレアーゼが、約pH7.2の1X SPバッファー中のBenzonaseを含んでいるBenzonase調製品である、実施形態108の方法。
111. ウイルス調製品がインフルエンザウイルス調製品である、実施形態107の方法。
112. インフルエンザウイルス調製品がほ乳類細胞から調製されたものである、実施形態108の方法。
113. ほ乳類細胞がMDCK細胞もしくはVero細胞、またはPerC6細胞である、実施形態112の方法。
114. ステップ(a)で用いられる条件が約pH7.2の1X SPバッファーである、実施形態107の方法。
115. ウイルス調製品中に存在するウイルスが、約pH 7.2の約1MのNaClを含有している1X SPバッファーで溶出される、実施形態107の方法。
8.実施例
本発明を下記の実施例を参照して説明される。これらの実施例は説明の目的にのみ提示したものであり、これらの実施例に本発明が限定されるものとみなすべきではなく、むしろ本明細書に示した教示の結果として明らかとなる、任意のまたは全てのバリエーションを包含するとみなすべきである。
8.1 血清含有培地中での高いウイルス複製を支持するMDCK細胞株の同定
この実施例は、MDCK細胞株を10% ウシ胎仔血清(FBS)を含んでいるダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養した時に、インフルエンザウイルスの高力価への複製を支持するMDCK細胞株の同定および選択を記載する。このプロセスはその概略を図5Aに示している。
ATCCから入手した1バイアルのMDCK細胞(ATCCアクセッション番号CCL-34;Lot 1805449;継代数54)を解凍し、L-グルタミンと10% ウシ胎仔血清(FBS, 規定)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)10mlを含むT-25フラスコ(Corning)中に接種した。細胞(継代数55)を37±1℃、5±1% CO2で3日間インキュベートした。3日目にその細胞をT-225フラスコに継代した(継代数56)。播種後3日目に、細胞を4 x T-225フラスコに継代した(継代数57)。T-25またはT-225フラスコ内でL-グルタミンおよび10% FBSを含むDMEM中での各継代の方法は下記のとおりである。
細胞を、Ca++とMg++不含のダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で2回洗い、その細胞に1.5 mL(T25の場合)または7.5 mL(T225の場合)のトリプシン0.25%を添加した。細胞の単層をインキュベートし、15〜20分間かけて解離させ、その時点で1.5 mL(T75フラスコの場合)または7.5 mL(T225フラスコの場合)のL-グルタミンおよび10% FBSを含むDMEMを添加してトリプシンを中和した。次いでその細胞数を血球計を用いて計数し、5 x 104 細胞/mLを接種するために必要な量を、L-グルタミンおよび10% FBSを含むDMEM100mLを入れたT-225フラスコに移し、上述のとおり3日間インキュベートした。4本のT-225フラスコからの細胞をトリプシン処理し、プールし、血清含有の増殖培地を上述のとおり添加した。次いで、それらの細胞を混合し計数した。細胞懸濁液を遠心分離し、細胞ペレットをL-グルタミンおよび10% FBSを含むDMEM 10mlで再懸濁した。この懸濁液を再度計数した。10 mLの2X 凍結用培地(L-グルタミンおよび15% v/vジメチルスルホキシドを含むDMEM)を添加し、細胞を十分に混合し、1 mLのアリコートを20本の冷凍バイアル中に分注した。細胞をNalgene冷凍容器中-80℃で凍結した後、液体窒素の蒸気相中に移して保管した。この凍結細胞は継代数57のMDCK細胞であり、本明細書中これをMDCK Pre-MCB lot 1と呼ぶ。
次いで、1バイアルのMDCK Pre-MCB lot 1を解凍し、35mLのDMEMと10% FBSを含むT75フラスコ中に接種した。細胞(継代数58)を37℃、5% CO2で3日間インキュベートした。3日目にその細胞を2 x T225フラスコに継代した(継代数59)。接種後3日目に、細胞を4 x T225フラスコに継代した(継代数60)。接種後3日目に、完全な培地による交換を行った。接種後4日目に、細胞を25 x T225フラスコに継代した(継代数61)。T75またはT225フラスコ中、L-グルタミンおよび10% FBSを含むDMEMでの各継代は、次のとおりに行った。
細胞を、Ca++とMg++不含のダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で2回洗い、その細胞に3 mL(T75の場合)または7.5 mL(T225の場合)のトリプシン0.25%を添加した。細胞の単層をインキュベートし、15から20分間かけて解離させ、その時点で3 mL(T75の場合)または7.5 mL(T225の場合)のL-グルタミンおよび10% FBSを含むDMEMを添加してトリプシンを中和した。次いでその細胞数を血球計を用いて計数し、5 x 104 細胞/mLを接種するために必要な量を、L-グルタミンおよび10% FBSを含むDMEM 100mLを入れたT-225フラスコに移し、上述のとおり3日間インキュベートした。25本のT225フラスコのうちの24本からの細胞をトリプシン処理し、プールし、血清含有の増殖培地を添加した。その細胞懸濁液を遠心分離し、細胞ペレットをL-グルタミンおよび10% FBSを含むDMEM 50mLで再懸濁した。
次いでこの懸濁液を計数した。1 x 107細胞/mLの細胞懸濁液60 mLを作製するために、39.5 mLの細胞懸濁液を20.5 mLの10% FBA DMEM培地と混合した。次いで、1 x 107細胞/mLの細胞懸濁液60 mLに60 mLの2X 凍結用培地(L-グルタミンおよび15% v/vジメチルスルホキシドを含むDMEM)を添加し、細胞を十分に混合し、1 mLのアリコートを100本の各冷凍バイアル中に分注した。細胞をNalgene冷凍容器中-60℃で凍結した後、液体窒素中に移して保管した。この凍結細胞は継代数61のMDCK細胞であり、これらのバイアルをMDCK Pre-MCB lot 2と命名した。このバンクをATCCに寄託し、これはATCCアクセッション番号PTA-6500によって同定される。
次いで、1バイアルのMDCK Pre-MCB lot 2(継代数61)を解凍し、35 mLのDMEMと10% FBSを入れたT75フラスコ中に接種した。細胞(継代数62)を37℃、5% CO2で3日間インキュベートした。3日目にその細胞を2 x T75フラスコに継代した(継代数63)。さらに3回の継代を新しいT75フラスコで行った後、T225フラスコで1回継代を行った(継代数67)。
次いで、細胞をトリプシン処理し、希釈法でクローン化した。具体的には、細胞を、96ウェルプレート中、0.5細胞/100μL/ウェルで蒔いた(新鮮な培地:ならし培地の比1:1)。翌日、細胞を顕微鏡下で可視化し、1個の細胞を含んだウェルを見つけ出し、次いでそのプレートをインキュベートするために戻した。7日間のインキュベートの後、プレートを細胞増殖を評価するために調べ、さらに100μLの新鮮な増殖培地を各ウェルに添加した。3日後、培地を完全に交換した(1ウェルあたり200μL)。初回のクローニング播種の2週間後に、それらが100%コンフルエントな状態に達していれば、細胞をトリプシン処理し、2セットの24ウェルプレートに継代した。細胞が100%コンフルエントでなかった場合には細胞に再度新鮮な培地を補給した。
それらのクローンを連続的に増殖させ(24ウェルプレート→T25フラスコまたは6ウェルプレート→T75またはT225フラスコ)、合計54個のクローンを下記の表1に示すとおり選択し、クローニング後の継代4回または5回のいずれかで7.5% DMSOを含む10% FBS DMEM中で凍結し、液体窒素中で保存した。さらに、基本的には上述のとおり行った第2ラウンドのスクリーニングからクローン56、57、および58を単離した。
クローンのウイルス生産性についての最初のスクリーニングは上記で作製した24ウェルプレートのセットのうちの1つを用いて行った。スクリーニングを行うために、4 mMのグルタミンを含むDMEM中で3日間培養した細胞に、インフルエンザウイルス株A/New Caledoniaの再集合体を0.001のMOIで感染させた。500 mU/mLのTPCKトリプシンを感染時に1回添加した。ウイルス力価は下記の実施例5に記載のとおり半自動化TCID
50アッセイ(サンプルあたりn=12)を用いて測定した。各クローンから得られたウイルス力価は7.0〜8.5で、その分布は表2に示すとおりであった。
ウイルス生産性のデータに基づいて、6つのクローンを選択し、さらに分析した:クローン1、5、36、39、40、および55。これらのクローンをTフラスコ中で増殖させ、T25フラスコのセット(1クローンあたり8個のフラスコ)を、A/New Caledonia、A/Panama、およびB/Jilin再集合体によるMOI0.001での感染に用い、感染後の培地としてDMEM+4 mMグルタミンを用いた(ウイルス株あたり2つのフラスコ)。これらのフラスコから感染の4日後に採取し、各フラスコから得られたサンプルを実施例5の半自動化TCID50アッセイ(1フラスコあたりn=12、1ウイルス株あたりn=24)を用いて力価について分析した。これらの実験からの結果は図1に示しており、この図は、再集合体A/New Caledoniaについての最も高い生産細胞であるクローン1と55が、A/PanamaおよびA/Jijin再集合体についても最も高い生産細胞であることを示している。従って、クローン1をその後のサブクローニングおよび血清無含培地へ適合のために選択した。
上述のとおりに行った追加のスクリーニングのラウンドで、高力価のA/New Caledoniaを産生する1000超のクローンをスクリーニングした。これらのクローンのうち63クローンが、高力価のA/PanamaおよびB/Jijin再集合体を産生する能力についてスクリーニングされたが、クローン1より多量のウイルスを産生したものはなかった。従って、これらのクローンでその後の研究用として選択されたものはなく、これらのクローンに関するデータは本明細書には示していない。
次いで、クローン1(P4/P71、単一のクローンから単離した後4回継代したもので、合計71回の継代)を解凍し、L-グルタミンと10% FBSを含むダルベッコ改変イーグル培地/Ham F12(DMEM/F12)35mLを含有するT75フラスコ中に接種した。細胞を37℃、5% CO2で3日間インキュベートした。3日目にその細胞をT225フラスコに継代した。次いで細胞を播種後3または4日ごとにT75またはT225フラスコのいずれかで8回継代した。これらの継代後に細胞(P13/P80)をトリプシン処理し、下記のとおり希釈によりサブクローン化した。
細胞を、10 x 96ウェルプレートに0.5細胞/100μL/ウェルで蒔いた(新鮮な培地:ならし培地の比1:1)。翌日、細胞(P1/P81、P1はサブクローン化以降の継代数を示し、P81は合計の継代数を示す)を顕微鏡下で可視化し、1ウェル当たり1個の細胞を含むウェルに印を付けた。細胞を7日間増殖させ、印を付したウェルが増殖中の細胞を含んでいるかを確かめるためにプレートを調べた。この時点でこれらの細胞に100μLの新鮮な増殖用培地を補給し、次いで3日後に培地を完全に交換した(1ウェルあたり200μL)。初回のクローニング播種の2週間後に、単一細胞クローンをトリプシン処理し、それらが50%超のコンフルエントな状態に達していれば、96ウェルプレートで継代した。50%コンフルエント未満の細胞には、再度新鮮な増殖培地を補給し、増殖を継続させた。50%超のコンフルエンスに到達したクローンを連続的に増殖させ(24ウェルプレート→6ウェルプレート→T75フラスコ)、合計63サブクローンを、このサブクローニングのラウンドの開始以降5回の継代または6回の継代のいずれかで、7.5% DMSOを添加した10% FBS DMEM/F12中で凍結し、液体窒素中で保存した。
クローン増殖の間、クローンをMOI 0.001でウイルス感染(A/PanamaおよびB/Jilin再集合体)させるために、3 x 96ウェルのプレートにもセットした。細胞を4 mMグルタミンを添加したDMEM/F12中で増殖させ、播種の3日後に細胞を感染させ、感染後の培地として4 mM グルタミンを添加したDMEM/F12を用い、ウイルスを感染の4日後に採取し、スクロースリン酸で安定化した。A/Panamaウイルスの力価は下記の実施例4に記載のFFAアッセイを用いて測定した。各サブクローンによって産生されたA/Panamaウイルスの力価は7.0〜8.5であり、その分布は下記の表3に示すとおりであった。
63サブクローンのうち、MDCKサブクローン1-A(P6/P86)、サブクローン1-B(P5/P85)、およびサブクローン1-C(P6/P86)が7.6 log10 FFU/mLのウイルス力価を生じたのに対し、サブクローン1-Dは7.8 log10 FFU/mLのウイルス力価を生じた。
8.2 MDCK細胞クローンの血清無含培地での増殖への適合
この実施例はMDCKクローン1、55、56、57、および58、ならびにサブクローン1-A、1-B(P5/P85)、1-C、および1-Dの、MediV 105血清無含培地中での増殖への適合を記載する。クローン56、57、および58はMDCK細胞(ATCCアクセッション番号CCL-34)由来で、実施例1に記載の方法と同様にして血清含有培地中での増殖に適合させたものである。このプロセスの概略は図5Bに示している。
最初に、1バイアルのMDCKクローンサブクローン1-D(サブクローン化以降5回継代し、凍結、合計85回の継代)を解凍し、L-グルタミンと10% ウシ胎仔血清(FBS、規定)を含むダルベッコ改変イーグル培地/Ham F12(DMEM/F12)35mLを含有するT75フラスコ中に接種し、37℃、5% CO2で3日間インキュベートした。3日目に細胞をT225フラスコに継代した(継代7/P87)。次いで、MDCKサブクローンD細胞を血清無含培地MediV 105中で5回継代して適合させた。
MediV 105中での5回目の継代の時点で細胞を凍結し、アクセッションバンクとした。さらに、1本の細胞のフラスコ(クローン1-D)を、MediV 105血清無含培地中での細胞の安定性を調べるためにセットした。SF MDCKサブクローンD細胞はMediV 105血清無含培地中で8回の継代後に死に始めた。
さらに、血清MDCKクローン1、55、56、および58、ならびにサブクローン1-A、1-B(P5/P85)、およびCをMediV 105血清無含培地に適合させた。最初に、血清MDCKクローン1、55、56、および58、ならびにサブクローン1-A、1-B(P5/P85)、およびCの各1バイアルを解凍し、35 mLの10% FBS DMEDM/F12培地を含有するT75フラスコ中に入れ、37℃、5% CO2で3日間インキュベートした。これらの細胞をトリプシン処理し、新たなT225フラスコに5 x 104細胞/mLの播種密度で蒔いた。播種後3日目に細胞をT75フラスコの血清含有増殖培地中に継代した。
T75またはT225フラスコ内のL-グルタミンおよび10% FBSを添加したDMEM/F12中での各継代方法は次のとおりとした。細胞をCa++とMg++不含のダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で2回洗い、その細胞に3 mL(T75の場合)または7.5 mL(T225の場合)のTrypLEを添加した。細胞の単層をインキュベートし、15〜20分間かけて解離させ、その時点で3 mL(T75フラスコの場合)または7.5 mL(T225フラスコの場合)のL-グルタミンを添加した10% FBS DMEM/F12を添加してTrypLE活性を中和した。次いで細胞数をCydex細胞計数器によって計数し、5 x 104 細胞/mLを接種するために必要な量を、L-グルタミンを添加した10% FBS DMEMの量を35 mL(T75)または100 mL(T225)とするのに十分な培地を含むT75フラスコまたはT225フラスコに移し、上述のとおり3または4日間インキュベートした。
次いで、T75フラスコ中のクローン(解凍後血清培地中で3回継代したもの)の各々をMediV 105血清無含培地中での増殖に適合させた。T75フラスコからの細胞を35 mLのMediV 105含有のT75フラスコ中で3回継代した。4回目の継代の時点でそれらの細胞を100 mLのMediV 105含有のT225フラスコに継代した。T225フラスコからの細胞を5回目の継代のために細胞数に基づいて2本または3本のT225フラスコに蒔いた。播種の3日または4日後に、クローン1、56、および57、ならびにサブクローン1-A、1-B、1-C、および1-Dを凍結し、アクセッションバンクとした。クローン55と58はそれぞれさらに血清無含培地中で継代した後、アクセッションバンクとした。
T75またはT225フラスコ中、MediV 105血清無含培地中での継代の各々の方法は次のとおりとした。MediV 105への第1回目の継代では、バイアル解凍後3回目の継代の細胞を含むT75フラスコから使用済み培地を除去し、細胞をDPBSで洗い、3 mLのTrypLEを添加し、細胞をインキュベートし、15〜20分間で解離させた。次いで、3 mLのアオイマメトリプシンインヒビター溶液(Worthington)を添加してTrypLEを中和し、細胞数をCydex細胞計数器によって計数した。培地1mL当たり5 x 104 細胞で接種するために必要な細胞量を、35 mLのMediV 105を入れたT75フラスコに移した。全てのフラスコを37℃、5% CO2で3〜4日間インキュベートし、その時点で細胞を再度、上述のとおり酵素を用いてはがしたが、今回は2.5 mL(T75の場合)または5 mL(T225の場合)のTrypLEを用い、次いで2.5 mL(T75の場合)または5 mL(T225の場合)のアオイマメトリプシンインヒビター溶液を用いてTrypLE活性を停止させた。細胞懸濁液を新鮮な血清無含培地を入れたフラスコに移した。播種は全て、培地1 mLあたり5 x 104細胞で接種するために計算した。
各クローン/サブクローンのバンキング方法は次のとおりとした:複数のフラスコからの細胞をトリプシン処理し、プールし、トリプシン中和溶液を添加した。次いで、それらの細胞を混合し、計数した。細胞を遠心分離し、保存しておいた使用済み培地中に再懸濁して1 x 107細胞/mLの細胞懸濁液を作製した。次いで、2X凍結用培地(15% v/vジメチルスルホキシドを添加したMediV 105、および等量の使用済み培地)を添加し、細胞を十分に混合し、1 mLのアリコートを2 mL容の冷凍バイアル中に分注した。これらのバイアルはSF MDCKアクセッションバンクと命名した。細胞をNalgene冷凍容器中-60℃で凍結した後、液体窒素中に移して保管した。図5はクローン1およびサブクローン1-Bの選択および適合プロセスの全体のフローチャートである。
バンキングを行うとともに、血清無含培地に適合させた各クローンのT75フラスコを、血清無含培地中での細胞増殖の安定性およびウイルス感染性の検討のためにセットした。この研究では、細胞を培地1 mLあたり5 x 104細胞で蒔き、播種後3日または4日ごとに継代した。クローン56と57はMediV 105中での6回の継代目に死に始めた。
他のクローンおよびサブクローンの各々はMediV 105中で培養を続けた。9回目または10回目の継代時に、ウイルス感染のために各クローンについて5本のT75フラスコをセットした。これらのクローンをA/New Caledonia、A/Hiroshima、B/Malaysia、およびA/Vietnamの再集合体をMOI 0.001で感染させ、感染後の培地として、4 mM グルタミン+500 mU/mL TPCK トリプシンを添加したDMEM/F12を用いた。ウイルス感染後3および4日目に、ウイルスを採取し、10 xのスクロースリン酸バッファーで安定化した。ウイルス力価は下記の実施例4に記載のとおりFFAアッセイで測定した。これらの実験の結果は(データはここには示していない)、クローン1のサブクローンが試験した他のMDCK細胞クローンよりも多量のウイルスを産生したことを示していた。従って、サブクローン1-A、1-B、および1-CをMediV 105中での細胞増殖を評価するためのさらなる実験のために選択した。この実験の結果は図2に示している。図2に示すとおり、サブクローン1-A、1-B、および1-Cはそれぞれ実質的に同じ増殖特性を示した。
さらに、サブクローン1-A、1-B、および1-Cを12回目の継代の時点でウイルス感染性について再試験した。各サブクローンについての9 x T75フラスコに、真上に記載の9回目の継代と同じ条件下でインフルエンザウイルスを感染させ、これを2重に行った(2本のT75フラスコ/クローン/ウイルス株)。この実験の結果は図3に示している。図3に示すとおり、これらの各サブクローンは供試ウイルスの増殖を比較的高い力価まで支持し、異なるサブクローンで各供試ウイルス株の最高力価の増殖を支持したものはなかった。
最後に、ウイルス増殖に及ぼすMediV 105培地の影響を評価するために、サブクローン1-A、1-B、および1-CについてMediV 105中およびOptiPro TM培地(GIBCO)中の双方でウイルス感染性をアッセイし、一方、上述のとおり、サブクローン1-DはOptiPro TM培地のみで試験した。これらのウイルス感染性の各実験の表にまとめた結果を図4に示している。図4に示すとおり、ウイルス生産性についてこれらの2種の培地に有意差は認められなかった。
8.3 MediV 105およびM18M中でのMDCK細胞増殖の比較
この実施例はMediV 105培地およびM18M培地中でのMDCK細胞の相対的な増殖を評価するための実験の結果を記載する。MediV 105とM18Mの製剤は下記の実施例10で記載している。
これらの実験では、血清無含培地に適合させたサブクローン1-Aの1バイアルを解凍し、それぞれMediV 105またはM18Mのいずれかを含むT75フラスコに接種した。次いでそれらのT75フラスコを、5% CO2が供給されている37℃のインキュベーター中に置き、これらの条件下で細胞を3〜4日間増殖させた。細胞増殖速度および生存率は、インキュベーションの終了時に、T75フラスコからの細胞をトリプシン処理した後、Cedex細胞計数器を用いて総細胞数と生細胞数を計数するか、または次の88時間にわたってCedexおよび/またはNucleoCounterでこれらを計数することによってモニターした。
この実験の結果は図6に示している。図6に示すとおり、サブクローン1-AはMediV 105とM18Mのいずれでも複製することができた。しかし、M18M中では時間とともに細胞の生存率は低下し、一方MediV 105での細胞生存率は比較的一定のままであった。さらに、MDCK細胞の細胞数倍化時間を計算し、図7に示している。図7はMDCK細胞サブクローン1-Aの倍化時間がMediV 105中では39時間であり、M18M中では36時間であったことを示している。
8.4 異なるマイクロキャリア上でのMDCK細胞増殖の比較
この実施例はM18培地中で種々のマイクロキャリアを用いたMDCK細胞の増殖を評価するために設計された実験の結果を記載する。具体的に、MDCK細胞の増殖を、マイクロキャリアcytodex 1、cytodex 3、cytopore 1、およびcytopore 2(GE Healthcare)について比較した。
この実験では、MDCK細胞サブクローン1-Aを、M18培地を含む125 mLフラスコ中に接種した。次いで、2 g/Lのcytodex 1、cytodex 3、cytopore 1、またはcytopore 2をそれぞれ各フラスコに添加した。非付着性MDCK細胞の密度は図8に示すとおり、接種の30および60分後に測定した。図8に示すとおり、MDCK細胞は種々のマイクロキャリアの各々に早急に付着し、最終的にはcytodexマイクロキャリアよりもcytoporeマイクロキャリアによりよく付着した。
さらに、種々のマイクロキャリアの存在下、細胞をM18中で約5日間増殖させ(125 mLの培地中に30 mLのマイクロキャリアw/vとし、120 RPMで振盪させた)、総細胞密度は、毎日、トリプシン処理後Cydexで計数して求めた。この実験の結果は図9に示している。図9に示すとおり、cytodexマイクロキャリアはcytoporeマイクロキャリアと比較して細胞密度がより高かった。さらに、cytodex 3ではcytodex 1よりも高い細胞密度が得られた。
8.5 MDCK細胞中でのインフルエンザウイルスの複製
T75フラスコに5 x 10
4細胞/mLで蒔き(35 mLのDMEM+10% FBS+4 mM グルタミン)、37℃、5% CO
2に維持したインキュベーター中で3日間増殖させた。これらのTフラスコのうちの1本の細胞をトリプシンEDTAでトリプシン処理し、トリパンブルー排除法を用いて計数した。残りのTフラスコは次のとおり感染させた。増殖培地は吸引して除き、細胞を1本のフラスコあたり10 mLのDPBS(Ca
2+/Mg
2+不含)で2回洗った。Tフラスコの各々に所望(例えば0.01〜0.001)の感染多重度(MOI)で感染させるためのウイルスの量は下記の式で求めた:
MOIは細胞1個あたりの添加されたウイルス粒子として定義される。
次いで、必要とされるウイルス量を各Tフラスコ内の35 mLの感染後培地(DMEM+4 mM グルタミン+500 mU/mL TPCK トリプシン)に添加した。次いでそれらのTフラスコを33℃、5% CO2でインキュベートし、サンプルを6日間毎日採取した。サンプル量の10分の1量の10X SPを各サンプルに安定化剤として添加し、サンプルを<−70℃で感染性の試験前まで保存した。
各サンプル中に存在するウイルスの濃度は、感染性のウイルス粒子を測定する50%組織培養感染量(TCID50)アッセイに従って求めた。簡潔に記せば、MDCK細胞をコンフルエントな単層となるまで96ウェルマイクロタイタープレート中で増殖させ、連続希釈のca/tsインフルエンザウイルスサンプルを添加した。MDCK細胞アッセイプレート中のサンプルは典型的には最終の希釈度が10-4から10-10となるまで希釈した。カラム1〜5およびカラム8〜12のウェルはウイルス希釈サンプルを含んでおり、カラム6〜7のウェルはウイルス希釈剤のみを含み、細胞の対照として扱った。このフォーマットでは1プレートあたり各サンプル希釈について2つのデータポイント(n=2)を生じた。MDCK細胞中でのウイルスの複製は細胞死と細胞変性作用(CPE)をもたらした。また、子孫ウイルスが培養上清中に放出された。子孫ウイルスは他の細胞に感染し、感染を繰り返して、最終的に単層の破壊をもたらす。単層細胞の感染を、6日間、33±1℃、CO2環境下で続けた。次いでプレートをインキュベーターから取り出し、ウェル内の培地を廃棄し、各ウェルに100μLのMEM/EBSS+1X 非必須アミノ酸+2 mM グルタミン+ペニシリン/ストレプトマイシン+MTTを添加した。それらのプレートを37℃、5% CO2で3〜4時間インキュベートし、CPEを示しているウェルの数を、各ウェル内で形成された色調の目視検査によって測定した(黄色/橙色はCPEウェルを示し、濃い紫色はCPEのないウェルを示す)。ハーフプレートの各々でのCPEを示しているウェルの数を、Reed-Muench法のKarber変法に基づいて力価(log10 TCID50/mL)を計算するために用いた。
8.6 ウイルス増殖のための蛍光フォーカスアッセイ
MDCK細胞をDMEM/EBSS+1X 非必須アミノ酸+2 mM グルタミン+PEN/Strep中で4日間、96ウェルのブラックプレート中で増殖させた。次いで各ウェルに、連続希釈したウイルスサンプル(例えば、ca/ts B型インフルエンザ株(B/Hong Kong/330/01およびB/Yamanashi/166/98))を感染させ、33±1℃、CO2環境で約20時間インキュベートした。このウイルスに感染したプレートを下記の通り固定化し、免疫染色してサンプルのウイルス力価を求めた。ウイルスを含有している培地を各プレートから取り出し、プレートを200μL/ウェルのDPBS (Ca2+/Mg2+不含)で1回洗った後、200μL/ウェルのPBS中の4% (v/v)冷ホルマリンで15分間固定化した。プレートを200μL/ウェルのDPBS (Ca2+/Mg2+不含)で2回洗った後、A型株またはB型株のいずれかに特異的な一次抗体と共に細胞をインキュベートした。一次抗体は所望の希釈度までPBS中の0.1%サポニン、1%BSA中に希釈した。1時間インキュベーションした後、一次抗体を除去し、細胞をPBS中の0.1% Tween 20で3回洗い、これらのウェルをPBS中の0.1% サポニン、1% BSA中に所望の希釈度まで調整した蛍光色素コンジュゲート型二次抗体(例えばFITC標識のウサギ抗ヒツジ)と共にインキュベートした。上述のとおり2回洗った後、ペーパータオルでブロット乾燥を行った後、蛍光染色したウェルを蛍光顕微鏡を用いて毎日観察し、画像をSPOTプログラムを用いて毎日取得した。
8.7 核学、腫瘍形成性、および偶発的物質についてMDCK細胞を試験するためのアッセイ
この実施例は核学、腫瘍形成性、および偶発的物質についてMDCK細胞を試験するのに適した代表的なアッセイ法について記載する。
8.7.1. 核学試験
簡潔に記せば、試験用のMDCK細胞は上述のとおりT225フラスコ中に増殖され、維持され、継代培養される。それらの細胞に有糸分裂細胞が十分にあると考えられた時点で、細胞を有糸分裂分析のために回収する。次いで細胞をコルセミド(0.02μg/mL)により150分間37℃で処理する。次いでそれらの細胞をトリプシン処理して回収し、200 X gで5分間遠心分離する。上清を吸引して除き、それらの細胞をあらかじめ加温しておいた低張溶液中に再懸濁し、37℃で10分間インキュベートする。膨潤した細胞を遠心分離によりペレットとし、次いで、Carnoy溶液(3:1 メタノール:氷酢酸)中、室温で40分間インキュベートすることによって固定化した。細胞を再度遠心分離し、Carnoy固定剤で少なくとも2回洗う。最後の遠心分離後、細胞を1〜3 mLの新鮮な固定剤で再懸濁して、乳白色の細胞懸濁液を生じさせる。最終的な細胞懸濁液の液滴をきれいなスライド上に置き、空気乾燥する。
Wright染色溶液(リン酸バッファー中)をスライドに添加し、7〜10分間インキュベートすることによって細胞を染色する。次いでこのスライドを7〜10分後に水道水で洗った後、空気乾燥する。細胞を低倍率の対物レンズ(10X)でスキャンして、細胞分裂の中期にある細胞を見つけ、中期の細胞の染色体を高倍率の油浸レンズ(100X)で分析する。中期にある約100個の細胞を細胞発生の異常、染色体数について分析する。約1000個の細胞をスキャンして倍数体の頻度および分裂指数(有糸分裂が進行中である細胞のパーセント)を求める。
8.7.2. 無菌試験:静菌性、静真菌性、および4種の培地の滅菌
静菌性および静真菌性試験は、供試サンプル中の対照の生物(例えば、Bacillus subtilis、Candida albicans、Clostridium sporogenes、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、Aspergillus Niger)の増殖に何らかの阻害作用があるか否かを判定するものである。簡潔に記せば、供試物質を、3本の試験管のTSB(ダイズカゼイン消化培地)、4本の試験管のTHIO(チオグリコール酸液体培地)、2本の試験管のSAB(サブローデキストロース寒天)および1本の試験管のPYG (ペプトン酵母エキス)中に接種する。次いで、100cfu未満で対照の生物を含む各対照生物接種物を、適切な培地のタイプに接種する。陽性対照はTSBおよびTHIO中のBacillus subtilis、TSBおよびSAB中のCandida albicans(20〜25℃と30〜35℃)、THIOおよびPYG中のClostridium sporogenes、THIOおよび/またはTSB中のPseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、およびAspergillus Nigerからなるものとすることができる。陰性対照は滅菌のPBSである。培地は3〜5日間インキュベートし生物の増殖をチェックする。
試験の培養物がUSP 26、EP、および21 CFR 610.12に規定される滅菌性の基準に合致するか否かを試験するため、その試験培養物を2本の試験管のTSB(ダイズカゼイン消化培地)、2本の試験管のTHIO(チオグリコール酸培地)、3本の試験管のSAB(サブローデキストロース寒天)および2本の試験管のPYG (ペプトン酵母エキス)中に接種する。それらの培地を適切な温度でインキュベートし(SABスラントは2種類の温度でインキュベートする)、14日間にわたって全ての試験管を観察し、試験管のチェックは試験の3/4日目または5日目、7日目または8日目、および14日目に行う。供試物質を接種された試験管で濁りの見られたものは全てプレートに取り出して、プレート上でグラム染色を行い、その供試サンプル中に含まれる生物のグラム染色タイプを判定する。陰性対照は滅菌PBSである。
8.7.3. マイコプラズマ/マイコプラズマ静止(Mycoplasmastasis)アッセイ
細胞は上記で説明したとおりTフラスコ中で増殖させ培養する。5 x 105細胞/mLの濃度の細胞溶解物を調製し、-70℃で凍結する。次いで供試物質を、寒天ブロス/プレートおよび/またはVERO細胞中のいずれかでMycoplasma pneumoniae、Mycoplasma orale 、およびMycoplasma hyorhinisの増殖を阻害する能力について試験する。
寒天単離アッセイには、供試物質を寒天プレート上またはブロスボトル上でスパイクされるかまたはスパイクせずに試験する。供試物質をMycoplasma pneumoniaeおよびMycoplasma oraleでスパイクして、希釈度を10〜100 cfu/0.2 mL(寒天での試験)、および10〜100 cfu/10 mL(セミブロス(semi broth)アッセイ)とする。供試サンプルの一部はスパイクしない。4本の半固体状ブロスボトルに各10 mLのスパイクしたもの(2本)またはスパイクしていないもの(2本)を接種する。スパイクされたもの/スパイクしていないもののボトルのうちの各1本を好気的条件または嫌気的条件のいずれかで適切な温度でインキュベートする。10枚のタイプA寒天プレートおよび10枚のタイプB寒天プレートにそれぞれスパイクされたサンプルまたはスパイクしていないサンプルを接種する。タイプA寒天プレートおよびタイプB寒天プレートの半数を好気的条件または嫌気的条件のいずれかで適切な温度でインキュベートする。接種しなかったマイコプラズマ半固体状ブロスは、非接種の陰性対照として用いる。ブロスボトルは全て21日間観察する。各ブロスボトル(非接種の陰性対照を除いて)を3日目、7日目、および14日目にタイプA寒天プレートまたはタイプB寒天プレート上で継代培養し(各10枚、0.2 mL/プレート)、適当なボトルと同じ条件下でインキュベートする。それらは21日間、1日1回調べる。
増強VERO細胞培養アッセイには、供試物質をスパイクされた状態またはスパイクされていない状態で試験する。供試物質にM. orale およびM. hyorhinisを10〜100 cfu/0.2 mLの濃度でスパイクする。スパイクされた供試物質、スパイクされていない供試物質、陽性対照、および陰性対照をそれぞれ、VERO細胞培養物のT75フラスコに接種する。3〜5日間のインキュベーションの後、各フラスコからの細胞を擦り取り、瞬間冷凍する。各フラスコからの細胞溶解物1 mLの10分の2をVERO細胞を含む6ウェルプレートの各ウエルに接種する。さらに、陽性対照および陰性対照をVERO細胞を含む6ウェルプレートの適切なウェル中に接種する。3〜5日後、細胞を固定化し、DNA結合HOECHST染料で染色し、マイコプラズマの存在について評価する。
8.7.4. ヌードマウスでの腫瘍形成性試験
無胸腺のヌードマウス(nu/nu)における腫瘍形成の評価は次のとおり行う。簡潔に記せば、約230匹の無胸腺マウス(4週齢)の各々に、0.2 mL(1 x 107細胞/マウス)の、陽性対照(HeLa細胞)、陰性対照(リン酸緩衝生理食塩水(PBS))、または供試細胞(MDCK細胞)のいずれかを皮下に注射する。それらのマウスは注射前にランダム化し、全てのマウスには22ゲージの針を用いて、同じ日に注射する。84日間にわたって、全てのマウスを就業日に毎日観察し、注射部位は週2回病変の進行について触診する。病変をそれぞれ測定し、そのマウスはその病変のサイズの目に見える増大がないかぎりはそのままマウスを最長で6ヶ月間保持する。瀕死状態のマウスは安楽死させる。これらのマウスと6ヶ月の観察期間の終了時に生存しているマウスは全て屠殺し、解剖する。注射部位、肺、肩甲下リンパ節、および肉眼的病変は組織病理学的方法で分析する。
8.7.5. 追加的アッセイ
下記の表4に示すとおり、入手可能なウイルス性物質についての例示的なPCR試験および/または抗体特異的試験を行う。
8.8 ワクチン材料のプロセスと製剤化
現在ライセンスを受けているポリオワクチンの製造に用いられているものと類似した、高度に拡張可能なマイクロキャリア技術の使用は、上記の実施例4で論じたとおり、MDCK細胞中でのインフルエンザの産生に適用することができる。デキストランからなる球状のビーズはMDCK細胞の、2〜10 Lのバイオリアクター中での増殖の支持に優れている。MediV 105またはOptiPro TM培地中で増殖させた親MDCK細胞は、Cytodex 3マイクロキャリア上、バッチ様式で、いずれのスピナーフラスコ中でも1mL当たり2 x 106個の核密度まで増殖できることが見出され、MDCK細胞は10 Lスケールまでのバイオリアクター中で>2.5 x 106細胞/mLまで増殖した。
これらのMDCK細胞(または類似の非付着性MDCK細胞)を、血清無含プロセスでのワクチン用のインフルエンザ株の高力価への産生について試験して、血清を用いて増殖させたTフラスコ中の細胞で得られた生産性と比較する。臨床上の製造については、インフルエンザウイルスはMDCK細胞中20 Lまたは150 Lスケールで製造され、一方、商業スケールの製造には最大約2500 Lのバイオリアクターが用いられる。図10は細胞培養スケールから商業製造レベルに至るまで使用可能な1プロセスを概説している。ワーキングセルバンクは最初にT75フラスコから、T225フラスコ、1 Lのスピナーフラスコ、20 L、次いで300 Lのバイオリアクターへと連続的に増殖させ、最終的には2500 Lのバイオリアクターまで増殖させる。最適な細胞密度が得られれば、その培養物にワクチン用の株を接種する。次いで培養上清からウイルスをバルク回収する。実施例12は高力価のウイルス材料の製造のための単回使用バイオリアクター(SUB)の実現を詳述したものであり、このバイオリアクターはワクチン材料の製造に用いることができる。
細胞培養物をベースとしたインフルエンザワクチンの精製プロセスは、卵ベースのインフルエンザワクチンの精製をモデルとしたものである(例えば、PCT公開WO 05/014862および2005年10月4日出願のPCT特許出願PCT/US05/035614を参照)。細胞からのウイルスワクチン材料の精製には下記のプロセスのいずれかまたは全てが含まれる:ホモジネーション、清澄ろ過、限外ろ過、硫酸バリウムへの吸着および溶出、タンジェンシャルフローろ過、密度勾配超遠心分離、クロマトグラフィー、および滅菌ろ過。その他の精製ステップも含めることができる。例えば、感染させた培養物からまたはウイルス回収物からの未精製の培地は最初に、例えば1000〜2000 x gで細胞残屑やその他の大きな粒子状物質の除去に十分な時間、例えば、10〜30分間、遠心分離により清澄化することができる。あるいはまた、培地を0.8μmの酢酸セルロースフィルターを通過させてインタクトな細胞やその他の大きな粒子状物質を除去する。任意で、清澄化した培地上清を、例えば15,000 x gで、約3〜5時間遠心分離して、インフルエンザウイルスをペレットとする。適切なバッファー、例えばSTE(0.01M Tris-HCl; 0.15 M NaCl;0.0001 M EDTA)またはリン酸緩衝生理食塩液(PBS)(pH7.4)などにウイルスペレットを再懸濁した後、そのウイルスをショ糖密度勾配(60%〜12%)遠心分離または酒石酸カリウム密度勾配(50%〜10%)遠心分離によって濃縮することができる。連続的または段階的勾配(例えば、12%〜60%のショ糖勾配を12%ごとの4つのステップで)のいずれかが好適である。この勾配は、回収のために目視しうるバンドまでウイルスを濃縮させるのに十分な速度と時間で遠心分離される。あるいはまた、そして大規模商業用途の多くでは、ウイルスは密度勾配からゾーン遠心ローターを連続モードで用いて浄化される。
細胞からウイルスワクチン材料を精製するに際して含めることのできる特徴は、非特異的エンドヌクレアーゼであるBenzonase(登録商標)を、このプロセスの早期に用いることである。細胞DNAの発癌性を評価する研究に基づけばMDCK細胞の細胞DNAは発癌性のリスクを示してはいないが、Benzonase(登録商標)処理はあらゆる潜在的または仮定的リスクを実際上排除する。1精製プロセスにおいては、Benzoase(登録商標)処理後に、この材料をダイレクトフローろ過(DFF)によって清澄化するが、これはバルク材料中の残存するインタクトなほ乳類細胞をも全て除去する。次いでろ過したバルクをタンジェンシャルフローろ過(TFF)によって濃縮した後さらに精製ステップを行う。アフィニティークロマトグラフィー、ならびにイオン交換クロマトグラフィーおよび/またはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを含む精製方法は、他のウイルスシステムで好結果を得ているものであるが、これらは細胞培養をベースとしたインフルエンザワクチン製造に有用である。次いで、この開発されたプロセスによって得られる高度に精製されたウイルス材料がワクチン材料の製造に用いられる。例えば弱毒生ワクチン製造(例えばFluMist(登録商標))における使用のために、ウイルス材料をろ過によるバッファー交換に供して最終製剤とした後、滅菌ステップにかける。そのような製剤化に有用なバッファーは、アルギニンなどの他のアミノ酸賦形剤が添加されたリン酸バッファーまたはヒスチジンバッファー(pH7.0〜7.2)および200 mMショ糖を含むことができる。必要に応じて、安定化のために、タンパク質加水分解物、例えばゼラチン(例えば、ブタ、鳥、魚のゼラチン)も添加することができる。理想的には、ワクチン材料は延長された保存期間で安定であるように製剤化される。保存期間を延長するために用いることのできる1方法は噴霧乾燥であり、これは加熱乾燥ガス流下で製剤の液体飼料を噴霧により霧化して微細な液滴とする、迅速な乾燥方法である。微細な液滴を蒸発させることによって、溶解していた溶質からなる乾燥粉末が得られる(例えば、米国特許公開2004/0042972を参照)。噴霧乾燥は従来の凍結乾燥法と比較すると、スケールアップの容易さや製造コストの点で利点がある。あるいはまた、ワクチン材料は当業界では既知の方法を用いて冷蔵庫内で安定な液状製剤として安定であるように製剤化される。例えば、冷蔵庫内で安定な弱毒化インフルエンザワクチンの製剤化のための方法と組成については2005年10月4日出願のPCT特許出願 PCT/US2005/035614中に記載されている。
インプロセスの特性評価ステップは、製造をモニターするために精製工程中に組み込まれる。用いることのできる特性評価ステップとしては、限定はされないが、蛍光フォーカスアッセイ(実施例6に記載されており、かつ当業界で知られている、例えば、Stokesら, 1988, J. Clin. Microbiol. 26:1263-6を参照)が挙げられ、この方法は単純な抗体結合と蛍光染色法とを用いてウイルスの感染性を測定するものである。総タンパク質とDNAの測定は当業者に既知の多数の方法を用いて行うことができるが、それらの方法は、最初に存在していた不純物の残存%を測定するために用いられる。この調製物の比活性はワクチンの量あたりのウイルス感染性(例えば、感染性/mg)を計算することによって決定することができる。
用いることのできる精製プロセスの1つの概略を図11Aに示している。簡潔に記せば、単味のインフルエンザウイルス回収物を適切なバッファー中で安定化させる(例えばショ糖リン酸バッファー)。次いで、非特異的エンドヌクレアーゼであるBenzonaseを、その安定化させたウイルス回収物に添加してでなを300塩基対未満の断片に分解する。Benzonase処理後に、そのウイルス回収物をろ過して残存するインタクトなMDCK細胞と細胞残屑の大部分を除去する。具体的にダイレクトフローろ過(DFF)を用いることができる。様々な孔径、メンブレンの組成、および立体構造(例えば複合媒体または単一のフィルター)を有する種々のフィルターメンブレン、ならびに最大流速やスケールアップファクターなどのプロセスパラメータは、容易に定めることができる。次いでその清澄化したウイルス回収物を限外ろ過膜を用いたタンジェンシャルフローろ過(TFF)によって濃縮し、その濃縮したウイルスを適切なバッファー(例えば、ショ糖リン酸バッファー)に対して透析ろ過する。次いで、その濃縮し透析ろ過した回収物をカラムクロマトグラフィーまたはメンブレンクロマトグラフィーにかける。アフィニティークロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーを用いてさらにMDCK細胞タンパク質およびDNAを除去することができる。次いでこのクロマトグラフィーで精製したウイルス回収物を濃縮し、製剤化バッファー中に透析ろ過し、最終的に滅菌ろ過にかける。Benzonase(登録商標)ステップをアフィニティークロマトグラフィーと組み合わせて用いることができる別の精製プロセスの概略を図11Bに示している。そのようなプロセスを用いることによってそれよりも下流のプロセスステップを減らすことができる。簡潔に記せば、単味のインフルエンザウイルス回収物は適切なバッファー(例えば、ショ糖リン酸バッファー)で安定化する。その安定化したウイルスは、例えば1.2μmおよび0.45μmのフィルターを用いたダイレクトフローろ過(DFF)によって清澄化する。次いでその清澄化したウイルスを、限外ろ過膜を用いたTFFによって適合/濃縮させ、その濃縮されたウイルスを、例えば500 KD TFF(5X UF/5X DF)を用い、適切なバッファー(例えば、ショ糖リン酸バッファー)に対して透析ろ過する。次いでこの適合されたウイルスをカラムでBenzonase(登録商標)処理にかけ、精製されたウイルス溶出物を濃縮し、例えば、500 KD TFFおよび8X DF プロセスを用いて、製剤化バッファー中に透析ろ過する。製剤化したウイルスバルクは次に、例えば0.45μmおよび0.2μmフィルターを通じて滅菌ろ過する。
8.8.1. Cellfine Sulfateクロマトグラフィー
MDCK DNAはBenzonase(登録商標)抵抗性の約12 kBの断片を含んでおり、これはTFFまたはショ糖密度勾配を用いた超遠心分離によって除去されなかったことが判明した(データはここには示していない)。上述のとおり、クロマトグラフィーは全ての夾雑物の除去を保証するために用いられる。Cellufine Sulfateクロマトグラフィー樹脂は、セロビオースの6位に共有結合し、セルロースビーズに接着した硫酸エステルからなる。この樹脂はヘパリンまたはデキストラン硫酸のアフィニティーを模倣したものである。Cellufine Sulfate(CS)を用いたカラムクロマトグラフィーを試験したところ、夾雑していたDNAのバンドを効果的に除去することが示された。簡潔に記せば、2.6 x 2 cm(10 mL)のカラムをバッファーA(1X SP(218 mM ショ糖、11 mMリン酸カリウム)pH 7.2)で平衡化し、TFFで精製したウイルス(A/New Caledonia再集合体)をロードした。カラムをその用量の5倍量のバッファーAで洗い、0〜100%勾配のバッファーB(1X SP+1M NaCl, pH 7.2)で溶出した。流速は3 mL/minに維持した。ODプロフィールは図12Aの左側のパネルに示している。表5には、出発材料、CSカラムからの流出画分および溶出画分のDNA含量、総HAUおよびFFA感染性が示される。
出発材料、CSカラムからの流出画分および溶出画分をアガロースゲル電気泳動で分析した(図12A、右側のパネル)。DNA夾雑物は出発材料(レーン2)および流出画分(レーン3)の双方に存在していたが、カラムから溶出させた材料中には含まれていない(レーン4)。これらのデータはこのアフィニティークロマトグラフィー樹脂の使用によって、超遠心分離単独よりも効果的に培養培地および宿主細胞から夾雑物を除去することを示している。
8.8.2. カラムでのBenzonase(登録商標)処理
ハンドリングのステップを減らし純度を高めるために、Benzonase(登録商標)処理をCellufine Sulfateクロマトグラフィーと組み合わせることができる。カラムでのBenzonase(登録商標)処理を用いたMDCK dsDNAの分解のスキームは図12Bに示している。
このプロセスの詳細は次のとおりである:プロセス全体は22℃(室温)で行われる。TFFで精製されたウイルスを22〜24℃まで加温した後、必要に応じてクロマトグラフィーを行う。カラムへのローディングは、FFAアッセイによる総ウイルス感染性単位に基づいている。カラムへの対象のローディングは1 mLのカラム容積あたり9〜9.5 log
10 FFUである。平衡化、ローディング、洗浄、および溶出の流速は、表6に示すとおりBenzonase(登録商標)含有の1X SPバッファーでの洗浄の際に流速を下げることを除いては、同じ速度に保つ(155 cm/hr)。カラム(1 x 15 cm)は1X SP (218 mM ショ糖、11 mMリン酸カリウム、pH 7.0±0.2)で、伝導度とpHとがそれぞれ2〜3 mS/cmおよび7.0±0.2に達するまで平衡化する。ウイルスをカラムにロードし、流出画分を集める。ローディングの完了後に、カラムを1カラム容量(CV)の1X SPで洗い(洗浄1)、その洗浄液を集めて流出画分と併せる。次いでそのカラムを異なる流速で(同じウイルスロード材料を用いてステップ1〜3を反復することによって行われる各実験について、0.33、0.46、0.65、0.98、および1.3 mL/minの範囲で)2.5 CVの、2 mM MgCl
2、および50ユニットのBenzonase(登録商標)を含有する1X SPで洗う(洗浄2)。洗浄2の後、カラムを2CVの1X SPで洗う(洗浄3)。ウイルスをカラムから、1 M NaCl含有の1X SPを用いて溶出させる。A
280nm値が5 mAUを読み出した時点で、溶出した物質を回収し、A
280nmの吸光度が5 mAUに戻るまで回収を続ける。カラムを5CVの0.1N NaOHで清浄化し、再使用まで塩基性の状態にしておく。クロマトグラフィーランのデータはこのプロトコールの終わりにデータシートに保存する。行った各クロマトグラフィーのランについてデータシートの複数のコピーを作成する。
溶出されたクロマトグラフィー画分中の残存しているMDCK dsDNAを、PicoGreen定量アッセイキットをInvitrogenの記載しているとおり用いて定量する。蛍光をMolecular Devices Gemini EM 蛍光プレートリーダーを用いて測定し、dsDNAの分解はSoftMax Pro version 4.8ソフトウェアを用いて計算する。
表7は、バッグ内でのBenzonase(登録商標)処理およびカラムでのBenzonase(登録商標)処理を用いたいくつかの開発時のランについての精製収率を要約したものである。
8.9 前臨床の動物モデル
フェレットは弱毒化インフルエンザワクチンおよびコンポーネントワクチン株の弱毒化および免疫原性を評価するために用いられる健全な動物モデルである。MDCK細胞培養物から産生された細胞由来のインフルエンザ株の性能を卵中で産生させた同じ株と比較する。比較対照試験によってこれらの材料を直接的に比較することにより、これらのウイルス製品の比較可能性を高いレベルで保証することができる。
フェレットで感染または「生着(take)」を達成する2種類のワクチンの能力を評価するために、フェレットを軽く麻酔し、鼻腔内に細胞または卵で産生させたウイルス調製品のいずれかを接種する。接種後、鼻洗浄物をいくつかの時点で集め、フェレットの上気道でのウイルス複製の速度およびその程度を評価するために利用可能ないくつかの方法のうちの1つによって、ウイルスの量を調べる。細胞培養で増殖させた株と卵で産生させた株の相対的な感染性を一般化するために、実験は様々な投与量で行い、その中に複数の株や異なる三種類の混合物をも含める。これらと同じ研究はインフルエンザ株の免疫原性(これはウイルスが感染を開始する能力と本質的に関連している性質である)を評価するためにも用いられる。フェレットから採血し、鼻洗浄物は接種後いくつかの時点(週)で採取する。これらの検体は血清中の抗体および感染に対する鼻腔IgA応答の評価のために用いる。感染性、血清中の抗体、および粘膜抗体応答のデータの最高値を、卵で産生させたワクチンに対する細胞で産生させたワクチンの相対的な感染性を比較し評価するために用いる。最も起こりうると考えられる結果は、細胞と卵で産生させたワクチン株が類似の感染性と免疫原性を有していることと予測される。細胞由来のワクチンが卵由来の製品よりも感染性が高く、免疫原性も高い場合には、より低い投与量の可能性を評価する研究をさらに行う。
表7 TVCC-1 下流プロセスの概要
ヒトの単回投与量を含む細胞培養由来のワクチンを評価するために、フェレットモデルで多数の免疫原性および複製研究が行う。ca/ts/att株で感染させると、通常はフェレットで強力かつ迅速な抗体応答を誘起する。さらに、個々のca/ts/att株が慣用的にに試験され、これらのフェレットの鼻咽頭では比較的高力価まで複製するが、肺では検出可能なレベルではないことにより、弱毒型(att)の表現型が発現していることが示される。これらの生物学的形質に及ぼす増殖された細胞培養物の影響をさらに評価する。しかし、att表現型はこれらの株の遺伝子組成の不可欠な部分なので、何らかの相違があるとは考えにくい。ヒトの単回投与量をフェレットに投与した後、これらの株の増殖の速度と交差反応性を評価する。卵由来の材料から作製した弱毒化生ワクチンは、遺伝系統内の複数の株と交差反応する血清抗体を誘起し、細胞由来のワクチンはそれと同じ能力があるものと予想される。
これらの比較可能性評価は、一次ウイルス産物の生化学的および/または生物物理学的相違の可能性について重要な見識を提供し、ヒト細胞研究または動物研究においてウイルスを初回の継代を行うことにより測定されるca/ts/att株の性能に及ぼすこれらの後生的な相違の影響を立証するはずである。現在までの配列情報に基づけば、MDCK細胞での産生から得られるca/ts/att株の免疫原性の性能に影響は与えないものと予想される。
フェレットはインフルエンザについて十分に調べられた動物モデルであり、ca/ts/att株の弱毒型表現型および免疫原性を評価するために慣用的に用いられている。通常は、8〜10週齢のフェレットが弱毒化を調べるために用いられ、典型的な研究設計は、試験群または対照群あたりn=3〜5匹を評価する。免疫原性の研究は、8週齢から6月齢のフェレットで評価され、通常は供試物質の群または対照群あたりn=3〜5匹を必要とする。これらの動物数は、群間の統計学的に有効なまたは観察上重要な比較を得るために十分な情報を提供する。大部分の研究の間に、インフルエンザ様の兆候に気が付くかもしれないが、その可能性は低い。フェレットは食欲や体重の減少、鼻汁や目漏の兆候を示さず、インフルエンザ様疾患の徴候の観察がこの試験に必要であり、鎮痛剤などの介入は保証されない。その他の不快の徴候、例えば開放性の潰瘍(open sore)や著しい体重減少など、は担当の獣医師と相談の上、その動物に適切な処置をする。
8.10 細胞培養用の血清無含培地の製剤化
この実施例は本発明の細胞の培養に適したいくつかの血清無含培地の製剤化を記載する。そのような培地のうちの特定のものについては上述しているが、補完のためおよび使用を容易にするために、その各々を下記に完全に記載する。
Taub血清無含培地の製剤化:Taub培地(TaubおよびLivingston, 1981, Ann NY Acad. Sci., 372:406)は、ベース培地製剤としての4.5 g/Lのグルコースと4 mMのグルタミンを含有するDMEM/HAM F12 (1:1)からなる血清無含培地であり、これに表8に示すホルモン/因子が添加される。
TaubのSFMは、継代培養の時点で新鮮なものを作製するか、またはホルモンのストック溶液をSF DMEM/Ham F12培地+4 mMグルタミン+4.5 g/Lグルコース+10-8 M亜セレン酸ナトリウムに添加することによって再補給される。100 mLのTaub培地は、100μLのインスリンストック(5 mg/mL)溶液、100μLのトランスフェリンストック溶液(5 mg/mL)、100μLのトリヨードサイロニン(T3)溶液(5 x 10-9 M)、5μLのヒドロコルチゾンストック溶液(10-3 M)、および500μLのプロスタグランジンE1ストック溶液(50μg/mL)をベースのDMEM/Ham F12培地+4 mMグルタミン+4.5 g/Lグルコース+10-8 M亜セレン酸ナトリウムに添加することによって作製する。全ストック溶液は次のように調製する:
インスリンストック溶液-適切な量のインスリンを0.01N HCl中に溶解して5 mg/mLのストック溶液を作製する。この溶液を0.2ミクロンの滅菌グレードフィルターに通過させ、Nalgene冷凍バイアル中に分注して4〜20℃で保存する。
トランスフェリンストック溶液-適切な量のトランスフェリンをMilliQ水中に溶解して5 mg/mLのストック溶液を作製する。その溶液を滅菌グレードフィルターに通過させ、Nalgene冷凍バイアル中に分注して<−20℃で保存する。
トリヨードサイロニン(T 3 )ストック溶液-適切な量のT3を0.02N NaOH中に溶解して10-4 Mの溶液を得てストック溶液とする。このストック溶液をさらに0.02N NaOHで希釈して5 x 10-9 Mの濃度のストック溶液とし、滅菌グレードのフィルターに通過させ、Nalgene冷凍バイアル中に分注して<−20℃で保存する。
ヒドロコルチゾンストック溶液-適切な量のヒドロコルチゾンを100% エチルアルコール中に溶解して10-3 Mのストック溶液を作製し、Nalgene冷凍バイアルに分注する。そのバイアルは4℃で3〜4ヶ月保存する。
プロスタグランジンE 1 ストック溶液-適切な量のPGE1を100%の無菌エチルアルコール中に溶解して50μg/mLのストック溶液を作製し、Nalgene冷凍バイアル中に分注して<−20℃で保存する。
Na 2 SeO 3 ストック溶液-適切な量の亜セレン酸ナトリウムをWFI水またはMilliQ水に溶解して10-2 Mのストック溶液を作製する。これをさらに水で希釈して最終濃度を10-5 Mとし、滅菌グレードフィルターに通過させ、4℃で保存する。
クエン酸鉄アンモニウム(FAC)ストック溶液-適切な量のクエン酸鉄アンモニウムをWFI水またはMilliQ水中に溶解して200 mg/Lのストック溶液を作製し、滅菌グレードフィルターに通過させ、4℃で保存する。
トロポロンストック溶液-適切な量のトロポロンをWFI水またはMilliQ水中に溶解して250 mg/Lのストック溶液を作製し、滅菌グレードフィルターに通過させて、4℃で保存する。
MediV 血清無含培地(MediV 101、102、103、104、および105)の製剤化-各MediV血清無含培地の製剤化はその基礎となる培地としてTaub培地を用い、次のものを補充物質を添加する:
MediV 101-Taubの培地+2.5 g/LコムギペプトンE1(Organo Technie、カタログNo.19559)。コムギペプトンE1は水中で滅菌済みの250 g/Lストック溶液として保存する。
MediV 102-Taubの培地+100 X 化学的に組成の明らかな脂質濃縮物(GIBCO BRL、カタログNo.11905)を最終濃度が1Xとなるように添加。
MediV 103-Taubの培地+1X 最終濃度の脂質濃縮物(GIBCO)+2.5 g/LのコムギペプトンE1(Organo Technie)。
MediV 104-Taubの培地+1X 最終濃度の脂質濃縮物(GIBCO)+2.5 g/LのコムギペプトンE1(Organo Technie)+5μg/L EGF(複数のソース)。
MediV 105-Taubの培地(トランスフェリン不含)+1X 最終濃度の脂質濃縮物(GIBCO)+2.5 g/LのコムギペプトンE1(Organo Technie)+5μg/L EGF+0.2 mg/Lのクエン酸鉄アンモニウム+0.25 mg/Lのトロポロン。
M-32-グルコース濃度が4 g/L〜4.5 g/LのMediV 105+微量元素溶液A、B、およびC(表9)(最終濃度1X)。任意でM-32にはさらに4 g/L〜4.5 g/Lのグルコースが補充される(M-32+G)。
MediV 107-特定の微量元素を含むMediV 105をベースとした別の血清無含培地。MediV 107の最終製剤は表10に示している。
M18M培地の製剤化-さらにM18Mは別の血清無含培地で、本発明の細胞の培養に用いることができる。M18Mは下記表11に示す補充物質を含むDMNSO-7粉末をベースとした血清無含培地である。
8.11 かなり高力価へのインフルエンザウイルスの増殖
この実施例は、温度感受性、低温適応、および弱毒化のインフルエンザウイルスのかなり高力価への増殖を示す実験の結果を記載する。具体的に、これらの実験は4種のそのようなウイルスについて9 log10 TCID50/mLのウイルス力価が得られた。
MDCKサブクローン1-Aまたは1-Bを、MediV 105またはM18Mのいずれかで播種後3日間増殖させ、感染させる直前に増殖培地を除去して、例えばMediV 105、M18M、または4.5 g/Lグルコース、4 mMグルタミンおよびTrypLE(1:100)(Invitrogen)を補充したDMEM/F12培地など、新鮮な培地を添加する。次いで細胞を、FluMist TMの骨格(例えば、HAタンパク質とNAタンパク質をコードするもの以外の遺伝子セグメントの全て)ならびにA/New Caledonia、A/Wisconsin、A/Vietnam、もしくはB/Malaysia由来のHAタンパク質およびNAタンパク質を含んでいる、温度感受性、低温適応、弱毒化再集合体インフルエンザウイルスで感染させる。
1つの実験からの結果を表12に示す。表12は、上記の方法が、少なくとも8.2 log
10 TCID
50/mLのウイルス力価を生じ、感染後2、3、4、および5日目には9.1 log
10 TCID
50/mL程度を生じることができることを示している。これらのデータは感染の前または感染の間に培地を交換するかまたは枯渇していた栄養素を補充することによってウイルスの収量が増大することを示している。
8.12 単回使用バイオリアクタープロセス
ワクチン材料の製造に典型的に用いられる標準的なバイオリアクターまたは発酵槽(すなわち、ステンレススチールもしくはガラス製のリアクター)は、各使用前にクリーニング、滅菌、およびバリデーションを必要とする。クリーニングおよびバリデーションの必要性を軽減するために、使い捨ての細胞培養プロセスが、使い捨てバイオリアクター技術を用いて開発された。このプロセスによってプロセス時間が短縮され、コストが著しく低減し、ワクチン材料の製造のために必要なインフラストラクチャーが軽減される。このプロセスはSingle Use Bioreactor(SUB)を利用している。多数のSUBシステムが市販されており、このプロセスに用いることができる。簡潔に記せば、SUBプロセスは、増殖培地中のマイクロキャリア上でSF MDCK細胞を約4日間増殖させた後、増殖培地を感染用培地に置換する培地交換を行った後にインフルエンザウイルスをその細胞に感染させることを含んでいる。あるいはまた、インフルエンザウイルスによる細胞の感染は直接的に、培地を交換せずに行うことができる。SUBに播種する細胞は、付着性であることができ、付着細胞の増殖に用いられるローラーボトルやその他の容易に拡張可能な培養方法から得ることができる。
パイロット研究は、50〜100 rpmの攪拌速度は細胞増殖を支持するが、90〜100 rpmで増殖された細胞は改善された細胞増殖を生じることを立証した。これらの研究ではより高い攪拌速度は検討されなかった。また、パイロット研究は、約2〜3 g/Lのマイクロキャリア濃度および約9.0 x 104細胞/mLの細胞播種密度(約10〜15細胞/MCに相当する)が改善された細胞増殖およびウイルス収量をもたらすことを立証した。さらに、グルコースを補充した培地の使用によっても改善された細胞増殖およびウイルス収量を生じた。これらのおよびその他のパイロット研究に基づいて、感染前に培地交換を含むまたは含まないSUB法が開発された。
8.12.1. 材料
この実験セットではHyclone製のSUB(Hyclone, Part No.SH30715.01、SH30720.01、およびSH3B1744.01)を用いた。このSUBは3つの主な要素から構成されている:1.外側支持容器(制御ユニットと電気ヒータージャケットとを備えたミキサードライブを有する)、2. Single-Use Bioreactor BioProcess Container(BPC)(ミキサー、スパージャー、排気口および吸気口のフィルターポート、およびセンサープローブ装着用ポートを備える)、3. Mixer Shaft Rod(バイオリアクターBPC中にミキシングドライブモーターを介して挿入され、使い捨ての攪拌アセンブリーに閉じ込める)。SUB装置の1つ以上の要素に対して多数の特注による変更を行うことができ、例えば、排気ポートは回収および培地交換を容易にするために拡大することができ、同様に、インラインのマイクロキャリアフィルターも回収および培地交換を容易にすることができる。
MediV 105(第8.10節を参照)またはMediV 105+追加の4.5 g/Lグルコース(最終濃度9.0 g/L、「MediV 105+G」と呼ぶ)を増殖培地として用いる。MediV 105を用いる場合には、接種後2〜3日目に20 mMのグルコースを補充してグルコースの枯渇を防ぐことができる。MediV 105+Gのより高い開始グルコース濃度は、グルコース補充の必要性を排除することができる。
感染培地は、DMEM/F12、グルコース、グルタミン、およびTrypLE Selectからなる。表13はこの感染培地中の成分および各々の濃度を示している。
8.12.2 培地交換を行う方法
マイクロキャリアをバッファー中で膨潤させた後、バッファーを洗い、滅菌して、マイクロキャリアのストック溶液を調製する。使用前にバッファーを除去し、適切な培地を添加する。例えば、60gのCytodex 3マイクロキャリア(SUB中の作業液量の合計2 g/L)を、5L容のガラス製フィーディングボトル中の3.0 LのCa2+とMg2+不含のPBS(pH7.4)に、少なくとも3時間、室温で浸漬する(50mL/g Cytodex3)。次いで、上清を吸引して除き、1.5Lの新鮮なCa2+とMg2+不含のPBS(pH7.4)と置換する。次いでマイクロキャリアを、このフィードボトルを121℃で30分間オートクレーブすることによって滅菌する。接種直前にPBS溶液を吸引して除き、4.0 LのDMEM/F12培地を添加し、滅菌マイクロキャリアを無菌条件下でSUBに添加する。あるいはまた、Cytodex 3はin situで(すなわち、SUBバッグ中で)ガンマ線照射を用いて滅菌することができる。
SUBに蒔くためのクローン1-Bの細胞は、1本の凍結バイアルからスケールアップして得られる。細胞をMediV 105またはMediV 105+G中で増殖させ、次のとおりスケールアップすることができる:1日目にバイアルT75フラスコ中に解凍する;3日目に細胞をT225フラスコに分ける(播種密度:5.4 x 104細胞/mL);7日目に細胞をローラーボトルに分ける(播種密度:6.7 x 104細胞/mL);10日目に分けた細胞をさらに別のローラーボトルに分ける(播種密度:6.7 x 104細胞/mL);14日目に約30〜36本のローラーボトルからの細胞をトリプシン処理し、SUBバイオリアクターへの接種に用いる。接種のパラメーターは表14に示している。ローラーボトルから回収したプール済みのトリプシン処理細胞を、ペリスタル型ポンプを用い、BPCの接種物添加ラインを経由して、30 LのSFMV 105培地中のCytodex 3マイクロキャリアを含むSUBに移す。その培養物に接種の3日後にグルコースの枯渇を防ぐために20 mM グルコースを補充することができる。
細胞を表15に詳述した増殖パラメーターの条件下で4日間増殖させる。pHはApplikonコントローラーを用い、最初はCO
2を散布するることによって制御し、その後の培養ステージでは塩基(NaOH, 1 M)を添加することによって制御する。DOはApplikonコントローラーを用い、O
2を散布することによって
>50%で制御する。細胞増殖の間、最高で100%、最低で35%までのDOは許容しうる。温度はHycloneコントローラーで適切な値に制御する。攪拌はHycloneコントローラーで100 rpmに制御する。
感染は播種後4±0.5日目に行う。感染させる前に、核の計数を行うことができる。この時点で細胞は0.5〜2.0 x 10
6細胞/mLに達していなければならず、通常は細胞密度が少なくとも約1 x 10
6細胞/mLに達していることが予想される。核計数の後、所望により全てのコントロールループを停止し、マイクロキャリアビーズを約45分間安定させる。次いで培地交換を行うが、その際は増殖培地をSUBの培地交換ポートを介して送り出し、感染培地を培地添加ポートを介して最終容量で30Lまで添加する。約20〜24 Lが除去され、同量の新鮮な感染培地が添加される。これは約66〜80%の培地交換に相当する。感染についてのパラメーターは表16に示している。
感染は約0.001〜0.003 FFU/細胞(下記の式参照)のMOI(感染多重度)で行うことができる。
あるいはまた、プロセスステップを最小限とするために、2 x 10
3 FFU/mLのウイルスを添加することができる。これは約0.001〜0.003 FFU/細胞のMOIに相当する。これらの条件下でSUBに添加されるウイルスの量(μL)は次式である。
モニタリングのためにいくつかのステップでインプロセスのサンプリング方法を用いることができる。感染前 2 x 10 mLの細胞懸濁液を、播種後の0日目〜4日目まで核計数、撮像、pH、代謝物質(グルコース、グルタミン、乳酸、NH4 +)を分析するために毎日回収する。感染後 2 x 5 mLのサンプルを感染の2日後および3日後に採取する。それらのサンプルをショ糖リン酸(ショ糖リン酸:ウイルス上清の比=1:9)で安定化する。それらのサンプルを直ちに凍結し−80℃で保存し、これはウイルス力価を測定するために用いることができる。
ウイルスの回収は感染後3日目(±12時間)に行う。SUBおよびApplikonのコントローラーはオフとし、マイクロキャリアを少なくとも45分間安定させる。次いで上清を無菌の使い捨てバッグに移し、ショ糖リン酸1:9(v/v)で安定化する(ショ糖リン酸:ウイルス回収物=1:9)。ショ糖リン酸は容積によって添加し重量によって添加すべきでない。
8.12.3. 培地交換での結果
第8.12.2節に記載の種々の培地、接種および感染の各パラメーターを試験する複数回のSUB製造ランの結果をここに要約する。表18に示すとおり、試験した全ての条件でウイルス力価のピークは少なくとも8.0 log10 FFU/mLであり、このことは培地交換を伴ったSUBプロセスが健全であることを立証している。
1回のB/Malaysia製造ラン(SUBランA)では、マイクロキャリア(MC)の濃度はワーキングボリューム(30 L)1Lあたり3gで、細胞の播種密度は10細胞/MCまたは約9.0 x 10
4細胞/mLであった。培養液には20 mMのグルコースを接種後3日目に補充してグルコースの枯渇を防止した。MDCKサブクローン1-Bを用い、細胞密度は接種後4日目に約1.3 x 10
6細胞/mLに達した。表15に示した残りの増殖パラメーターは、増殖期を通じて記載のとおり維持された。表17は、B/Malaysia製造ランでの細胞増殖データと倍化時間を示している。B/Malaysia製造ランについて、細胞増殖曲線は図13にプロットし、Bioprofileで測定したグルコース、乳酸、グルタミン、およびアンモニウムイオン濃度の代謝物質分析もプロットしている。
指数増殖期の倍化時間は約20時間であった。播種の4日後に約67%の培地をTrypLE Selectを最終濃度1:100で含有する感染培地(上記参照)に交換した。次いで細胞をB/Malaysia/2506/04に0.001 FFU/細胞のMOIで感染させた。表16に示した感染パラメーターは、増殖期を通じて維持された。感染後2日目および3日目に採取したサンプルを蛍光フォーカスアッセイ(FFA)を用いて分析し、ウイルスの感染性を調べた。ウイルス力価のピークは約2 dpiに見られ、約8.0 log10 FFU/mLであった。TrypLEを最終濃度1:100で用いて得られたウイルス力価のピークといくつかの他のランでは少なくとも8.0 log10 FFU/mLであったが、時に、より低い力価が認められ(データはここには示していない)、そのため、一般的にはより高いTrpLEの濃度(1:33〜1:50)を用いた。
マイクロキャリア濃度を2 g/Lとし、MediV 105+Gを増殖培地として追加のグルコース補充は行わずに2回のSUBのランを行った。MDCKサブクローン1-Bを播種密度約9.0 x 104細胞/mL(これは約15細胞/MCに相当する)として用いた。感染の前に、約80%の培地を交換し、TrypLE Selectを最終濃度1:100(SUBランB)または1:50(SUBランC)で添加した。細胞の感染はウイルス濃度を2 x 103 FFU/mLとして行った。これらのランのウイルス力価のピークは、A/Wisconsin株(SUBランB)では 8.4 log10 FFU/mL、A/New Caleconia株(SUBランC)では8.7 log10 FFU/mLであった。
さらに6回の製造ラン(SUBランD〜I)をマイクロキャリアの濃度を2 g/Lとし、MediV 105+Gを増殖培地とし、追加のグルコースを補充せずに行った。前回と同様に、MDCKサブクローン1-Bを播種密度約9.0 x 10
4細胞/mLとして用いたが、これは約15細胞/MCに相当する。残りの増殖パラメーターは、表15に詳述したとおり維持された。播種後4±0.5日目に約66%の増殖培地(MediV 105+G)を除去して、TrypLE Selectを最終濃度1:33で含有する同量の感染培地(表13を参照)を添加した。次いで、細胞をA/New Caledonia/20/99;A/Wisconsin/67/05;またはB/Malaysia/2506/04に、ウイルス濃度2 x 10
3 FFU/mLで感染させ、表16に示した感染のパラメーターを感染期を通じて維持した。SUBランでのウイルス力価のピークは表18に示しており、その範囲は8.55〜8.75 log
10 FFU/mLであった。増殖、グルコース、乳酸、グルタミン、およびアンモニウムイオンのプロフィールはSUBランAで見られたのと同等であった(図13を参照、データはここには示していない)。
8.12.4. 培地交換しなかった場合の結果
培地交換ステップを除外することによって、コストの低減ができプロセスの効率が改善される。TrypLEの希釈を1:100(約0.01x)として行った初回の試験により、ならし増殖培地にTrypLEの作用を阻害し、その結果ウイルスの増殖を阻害する1種以上の成分が含まれている可能性があることが示唆されていた(データはここには示していない)。パイロット実験を行い、その実験はTrypLEの濃度を変えて行った。簡潔に記せば、2Lのバイオリアクター中で標準的な条件下で4日間、MDCK細胞を増殖させた(母培養)。次いでA/New Caledonia株で感染させる直前に、様々なレベルの培地交換とTrypLE濃度を有する振盪フラスコに接種するためにその母培養物を用いた。4種の異なる希釈度/濃度のTrypLEを用いた; 1:100(約0.01x);1:50(約0.02x);1:33(約0.03x);および1:25(約0.04x)。感染後2日目および3日目にフラスコからウイルス力価用のサンプルを採取した。感染の2日後および3日後に培地交換率ごとに得られたウイルス力価を図14Aにプロットしている。これらのデータは、培地交換を全く行わない場合でも、TrypLEを1:25〜1:33添加すれば8 log10 FFU/mLに近い力価を算出することを示している。これらのデータに基づけば、TrypLEの1:16希釈は、培地交換を全く行わなくとも高力価を産出するはずである。類似の実験をより高いTrypLE濃度で行った。簡潔に記せば、母培養物を上述のとおり調製し、A/New Caledoniaに感染させる直前に、培地交換を行わず1:1〜1:25(TrypLE濃度で0.5x〜0.04xに相当する)で振盪フラスコに接種するために用いた。ウイルス力価のピークは感染後2日目および3日目に測定して図14Bにプロットした。ここで、8 logよりも大きなウイルス力価が、培地交換なしでは初めて得られた。これらのデータは、最適なTrypLE濃度が1:25〜1:12.5希釈の間であり、より高い濃度のTrypLEを用いてもウイルスの収量は改善されないことを示している。これらの結果に基づいて、さらに別の2つのウイルス株であるB/Malaysia/2506/04およびA/Vietnam/1203/2004で培地交換した場合としない場合の製造を調べた(TrypLEはそれぞれ1:33と1:12.5希釈を用いた)。時間経過に対してのウイルス力価の変化を図14Cにプロットしている。ウイルス力価のピークはB/Malaysia/2506/04では8.9および8.7 log10 FFU/mL(それぞれ培地交換ありとなし)であった。同様に、A/Vietnam/1203/2004についてはウイルス力価のピークは8.6および8.0 log10 FFU/mL(それぞれ培地交換ありとなし)であった。従って、TrypLEの量を1:12.5希釈(0.08xに相当)まで増加させると、ならし培地の作用を補償して、培地交換なしで少なくとも8 log10 FFU/mLのウイルス力価のピークを生じる。
8.13 MOIの最適化
様々なインフルエンザ株が次々と出現(または再出現)するため、新しいインフルエンザワクチンは循環するインフルエンザ株に基づいてシーズンごとに製造される。残念ながら、いくつかのインフルエンザワクチン株(例えば、低温適応で温度感受性の再集合体ワクチン株)は高力価まで増殖することがより困難である。バイオリアクターの力価は、製造能力を規定するのみならず、製品製造のコストに影響を与えるので、ウイルス力価(すなわち、ピークウイルス力価)の改善が望ましい。上述のとおり、ワクチン株の生産性を最適化するために多数のパラメーターが検討されてきた。いくつかの株についての生産性(すなわちウイルス力価)を増大させるための研究結果をここに要約する。これらの研究は、容易に試験するためにおよび収量を最適化するために調整することができるパラメーターとしてMOI(1個のMDCK細胞あたりの感染のために用いるウイルス粒子数)を同定し、季節性のおよび大流行のワクチン株の迅速なスケールアップおよび製造を可能にする。
これらの研究はMDCKサブクローン1-B細胞をバイオリアクター中で増殖させ、振盪フラスコ中で様々な量のウイルスに該細胞を感染させることによって行われた。研究の詳細は次のとおりである。3Lのバイオリアクター容器中で、Cytodex 3マイクロキャリアビーズを2 g/L含有しているM-32+G培地に、MDCKサブクローン1-Bを約15細胞/マイクロキャリアで接種した。その細胞を37℃、90 rpm、pH 7.4、および50%DO(O2とCO2の散布を用いて制御)で増殖させた。播種後約4日目(4dps)に、バイオリアクター中の増殖培地の66%を感染培地(DMEM/F12+4.5 g/LのD-グルコース+4 mM L-グルタミン+1X TrypLE Select、1:33最終希釈度)で交換した。等量の培養液(30ml)を別々の125 mLの振盪フラスコに移した。これらの振盪フラスコを様々な量の特定のウイルス株(すなわち、2、20、200、2000、および20000 FFU/mL、これらはそれぞれ約1 x 10-6、1 x 10-5、1 x 10-4、1 x 10-3、および1 x 10-2 FFU/細胞に相当する)に感染させた。感染後にそれらのフラスコを33℃、100 rpmでインキュベートした。生細胞の密度、代謝物質濃度(感染の前と後の双方)、および感染後の種々の時点でのウイルス力価(例えば感染後1、2、3、および4日目(dpi))を含む多数のパラメーターをモニターした。これらの研究で試験した4種類の株のウイルス力価のピークの結果は、表19に示している。試験した各株について、ウイルス力価のピークは、MOIを約1 x 10-3 FFU/細胞(上記第8.12節で記載するSUBプロセスで用いているMOI)から〜1 x 10-4 FFU/細胞へと低下させると、高くなった。ウイルス力価のピークの上昇は0.3 log10 FFU/mL〜1.3 log10 FFU/mLの範囲で観察された。いくつかの場合では、ウイルス力価のピークは感染後の異なる日(すなわち2dpiまたは3dpi)に得られた点に留意すべきである。これはおそらく、1 x 10-4 FFU/細胞という低いMOIでは1 x 10-3 FFU/細胞のMOIと比較してウイルス増幅速度が異なっていることに起因しており、このような傾向が製造バイオリアクターで見られる場合には、ウイルスの回収回数をそれに従って調整しなければならない。
振盪フラスコでの結果を確認するためにバイオリアクターでの研究を行った。この研究のために5種類のマスターセルの培養を平行して上述のとおり3Lのバイオリアクターで調製した。生細胞密度およびグルタミン、NH4+、グルコース、および乳酸の細胞代謝物質プロフィールは、全てのバイオリアクターで同等であった(データはここには示していない)。播種後約4日目(dps)に、全バイオリアクター内の増殖培地の66%を感染培地(DMEM/F12+4.5 g/LのD-グルコース+4 mM L-グルタミン+10X TrypLE Select、1:330最終希釈度)と交換した。5種の培養物にA/Solomon Islands/3/06を様々な量、2、20、200、2000、または20000 FFU/mL(これらはMOIでそれぞれ約1 x 10
-6、1 x 10
-5、1 x 10
-4、1 x 10
-3、および1 x 10
-2 FFU/細胞に相当する)に感染させ、33℃でインキュベートした。感染後の他の全増殖パラメーターは、感染前のマスターセル培養物の増殖のものと同じであった。図15は異なるMOIを用いて得られた時間経過(感染後の時間)に対してのウイルス力価をプロットしたものである。四角で囲んだところは(右側に拡大して示している)、感染後3日目に2000 FFU/mLで感染させた培養物が8.3 log
10 FFU/mLのピークウイルス力価を有した一方、20 FFU/mLで感染させた培養物は8.5 log
10 FFU/mL(0.2 log
10 FFU/mLの改善)のピークウイルス力価を有したことを示している。同様に、感染後4日目に、2 FFU/mLで感染させた培養物でもピーク力価は8.5 log
10 FFU/mLに達した。これらを併せて考えると、これらの研究はMOIを低下させるとウイルス力価の上昇をもたらすことができ、そのような方法が特定のワクチン株の産生収量を増加させるために有用でありうることを示す。さらにこれらの研究は、最適な回収時点を使用したMOIに基づいて決定しなければならない可能性を示している。
8.14 ビーズからビーズへの移行
大スケールの細胞培養には培養物中の細胞数のスケールアップを必要とする。付着性細胞を用いる場合には、スケールアッププロセスには通常、フラスコやマイクロキャリアから細胞を順次解離させることが含まれ、それは例えば、プロテアーゼ処理、解離した細胞をより大きなフラスコまたはより多くのマイクロキャリアへ希釈することによって行われる。スケールアッププロセスの際の洗浄および/または培地交換ステップの回数を最小限にすることにより、効率性を高め、汚染の可能性を低減させることができる。上述のSUB法は30本〜36本の別個のローラーボトルから回収した細胞の使用を必要とし、それら各々をトリプシン処理し、別個に回収しなければならない。下記は、3Lの容器から20Lの容器へとスケールアップするために使用されるハンドリングステップ数を減らすために用いることのできる1方法である。同様の方策はより大きなバイオリアクタープロセス、例えば上述の30LのSUBプロセスなどで実施することができる。
3 L バイオリアクター調製:1. 4 gのCytodex 3を3Lのバイオリアクターに添加する。500 mLのDPBS(Ca、Mg不含のPBS)を添加してマイクロキャリアを4〜6時間水和させる。2. 浸漬管を用いてマイクロキャリアを乱すことなく300 mLのDPBSを容器の底から除く。300 mLの新鮮なDPBSを添加し、容器を30分間121℃でオートクレーブする。リアクターを冷却した後、300 mLのDPBSを除去し300 mLの培地(M-32)を容器に添加する。容器の内容物を10分間200 rpmで攪拌してリアクターの内容物を完全に混合し、マイクロキャリアを全て容器の底から引き離す。4. 攪拌を止め、マイクロキャリアが全て安定した後、300 mLの培地を除去する。5. 1.6Lの新鮮な基礎培地をリアクター中に添加し、パラメーターを一晩安定化させる。プロセスのパラメーターは、pH 7.2、温度37℃、攪拌 120 rpm、エアの散布速度 50 mL/分である。
20 L バイオリアクター調製:5 Lのボトルに28 gのCytodex 3を添加する。3 LのDPBS(Ca、Mg不含)を添加してマイクロキャリアを4〜6時間水和させる。マイクロキャリアを乱すことなく2 LのDPBSを底部から除去する。2 Lの新鮮なDPBSを添加し、容器を30分間121℃でオートクレーブする。2. 2 LのDPBSを除去し2 Lの培地をボトルに添加する。ボトルを激しく振盪して、マイクロキャリアが懸濁されているようにする。マイクロキャリアが安定した後、2 Lの培地を除去する。マイクロキャリアに新鮮な培地を添加してマイクロキャリア溶液の容量を合計3 Lとする。3. 新鮮な培地とマイクロキャリア溶液とを添加してバイオリアクター中の容量を合計14 Lとなるようにし、プロセスのパラメーターを一晩安定化させる。プロセスのパラメーターは、pH 7.2、温度37℃、攪拌 120 rpm、エアの散布速度 400 mL/分である。
3 Lのバイオリアクターの増殖期での操作:サンプリング後にpHと溶存酸素量の読み出しを校正し、NOVA Bioprofileで分析する。2. セルファクトリーから回収した培養物を添加し、標的とする細胞密度を9E4個/mL(1個のマイクロキャリアビーズあたり15細胞)でバイオリアクターに接種する。培地を加えて合計のワーキングボリュームを2 Lとする。3. セットポイント50%でDOの制御を開始する。4. NOVA、核計数器での分析、および顕微鏡下での画像化用にサンプルを毎日採取する。
同スケール(at scale)でのビーズからビーズへの移送プロトコール:3Lの容器で96時間細胞を増殖させた後、攪拌器、ガス流、DOおよび温度制御を止める。マイクロキャリアを安定させる。2. 浸漬管を介して培地を容器の底部から除去するが(>80%)、マイクロキャリアが乱れないようにする。3. DPBS(Ca、Mg不含のPBS)を添加して、当初のワーキングボリュームとする。4. 攪拌のセットポイントを180 rpmまで増加する。攪拌器のスイッチを10分間オンにし、残存する全培地のマイクロキャリアを洗う。5. 攪拌器のスイッチを切り、マイクロキャリアを底部に安定させる。6. 約50%の液体をバイオリアクターから浸漬管を介して除去する。除去後に攪拌器と温度プローブとが完全に浸漬されているようにする(液量の残りは約1 L)。7. 攪拌器と温度の制御を開始する。リアクター内の温度が37℃となるまで待つ。8. 5X TrypLE(残りの容量の5〜7%)をバイオリアクターに添加する。9. 1M 炭酸ナトリウムを添加してリアクター内容物のpHを7.9±0.1に調整する。10. 断続的にサンプリングしながらトリプシン処理を50±10分間行い、顕微鏡下で観察を行って細胞がはがれていることを確認する。11. 5Xアオイマメトリプシンインヒビター(LBTI)のTrypLEと正確に同じ量を添加する。12. 新鮮な培地を添加して液量を当初のワーキングボリュームとする(2 L)。13. リアクターの内容物全てを20 Lのバイオリアクターに移す(1:8スプリット)。
感染パラメーター:ここで用いているビーズからビーズへの移行条件下では、細胞は、ビーズからビーズへの移行後の増殖がわずかに遅くなり、そのためローラーボトルからの移行(感染約4日目)と比較して、感染が1日遅くなる(感染約5日目)。感染は本質的にはSUBプロセスについて記載したとおり、細胞密度が約1 x 10
6細胞/mLに達した時点で行った(上記の第8.12節を参照)。感染は1日遅れるが、ビーズからビーズへの移行を用いた場合のウイルス力価のピークは上記の第8.12節で記載したものと同様の移行条件で得られた値と同等であった(表20を参照)。したがって、ビーズからビーズへの移行方法の使用は、ウイルスの収量を犠牲にすることなく操作回数を減らすことができる。
本発明は具体的な実施例を参照することによって開示してきたが、本発明のその他の実施形態や改変は当業者であれば本発明の精神と範囲から乖離することなく考案することができることは明白である。添付の特許請求の範囲はそのような実施形態や等価な改変の全てを包含するものとみなすことを意図している。例えば、上述の技法や装置の全ては様々な組み合わせで用いることができる。本願で引用される刊行物、特許、特許出願、またはその他の文献は全て、あたかもそれぞれの刊行物、特許、特許出願、またはその他の文献が実際にそれぞれ参照により組み入れられることが示されたのと同じ程度でその全体を実際に参照により組み入れる。さらに、次の米国仮出願第60/845,121号(2006年9月15日出願)、第60/871,721号(2006年12月22日出願)、第60/917,008号(2007年5月9日出願)、および第60/951,813号(2007年7月25日出願)を実際に参照によりその全体を本明細書に組み入れる。本明細書の参考文献の引用または考察はそれが本発明の先行技術であると認めるものではなく、特許の引用はその特許の有効性を認めるものと解釈されるべきではない。