JP2010252752A - 植物系原料を含む食用塩の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】海水由来の食用塩を得るに際し、海水中に溶解している微量元素成分の配合割合の変化を極力少なくすると共に、海水由来の食用塩に味覚、色彩、または香りの特徴付けを可能とする植物系原料を含む食用塩の製造方法を提供する。
【解決手段】絶対圧1kPa〜12kPaの減圧下において40℃〜50℃で加熱して塩分濃度を15%〜25%に濃縮した海洋深層水の濃縮海水を原料海水とし、この原料海水に植物系原料を混合し、該液状混合物を絶対圧1kPa〜12kPaの減圧下において40℃〜60℃で加熱して塩を析出させ、該析出物を乾燥する。
【選択図】図1
【解決手段】絶対圧1kPa〜12kPaの減圧下において40℃〜50℃で加熱して塩分濃度を15%〜25%に濃縮した海洋深層水の濃縮海水を原料海水とし、この原料海水に植物系原料を混合し、該液状混合物を絶対圧1kPa〜12kPaの減圧下において40℃〜60℃で加熱して塩を析出させ、該析出物を乾燥する。
【選択図】図1
Description
本発明は、植物系原料を含む食用塩の製造方法に関し、特に減圧条件下における製塩方法に関する。
海洋深層水に由来する塩は、微量元素、ミネラル分の配合バランスが良くそのまま食用とするほか、脱塩等の処理を経て農業用水やその他の加工原料としても用いられる。深層水をはじめとする海水から食用塩を製造する場合、通常、そのまま海水を加熱して水分を蒸発する製塩法が一般的である。また、逆浸透膜を利用することにより、製造効率を高めた製塩法も提案されている(特許文献1、特許文献2等参照)。
加熱蒸散や逆浸透膜による製塩法を用いる場合、海水に含まれる微量元素成分の配合割合の変化が指摘されている。近年、自然食指向から海水に含まれる成分を極力変化させずに食用塩として得る手法も提案されている(特許文献3等参照)。同特許文献3の製塩法によると、海水(深層水)を減圧下において常圧での水の沸点以下の温度で加熱して濃縮し、水分を蒸発させる。加熱により海水が受ける影響は低減されることから、微量元素成分の変化は少ない。
また、最近では、海水に含まれる多種のミネラル分等の微量元素成分を利用した製品開発の動きも加速している。そこで産地や製法の違いにより製品ごとの差別化を図り、特徴を訴求することは急務である。現状の海水由来の食用塩を鑑みると、海水由来の食用塩そのものの魅力に加え、塩の味覚や視覚効果のさらなる改良、風味の特徴付けにおいてはまだ改善の余地がある。
その後、発明者は海水の減圧濃縮の製塩法を鋭意検討しながら、地域特産の農産物の有効な利用についても検討を重ねた。この結果、従前の海水由来の食用塩には見られない特徴を備えた食用塩を得るに至った。
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、海水由来の食用塩を得るに際し、海水中に溶解している微量元素成分の配合割合の変化を極力少なくすると共に、海水由来の食用塩に味覚、色彩、または香りの特徴付けを可能とする植物系原料を含む食用塩の製造方法を提供する。
すなわち、請求項1の発明は、原料海水に植物系原料を混合し、該液状混合物を絶対圧1kPa〜12kPaの減圧下において40℃〜60℃で加熱して塩を析出させ、該析出物を乾燥することを特徴とする植物系原料を含む食用塩の製造方法に係る。
請求項2の発明は、前記原料海水が、塩分濃度を15%〜25%に濃縮した濃縮海水である請求項1に記載の植物系原料を含む食用塩の製造方法に係る。
請求項3の発明は、前記濃縮海水が、前記原料海水を絶対圧1kPa〜12kPaの減圧下において40℃〜50℃で加熱して濃縮した海水である請求項2に記載の植物系原料を含む食用塩の製造方法に係る。
請求項4の発明は、前記原料海水が、海洋深層水である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の植物系原料を含む食用塩の製造方法に係る。
請求項5の発明は、前記植物系原料が、柑橘系果実の果汁及び果肉である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の植物系原料を含む食用塩の製造方法に係る。
請求項6の発明は、前記析出物の乾燥後に、前記柑橘系果実の果皮の乾燥粉砕物を添加する請求項5に記載の植物系原料を含む食用塩の製造方法に係る。
請求項1の発明に係る植物系原料を含む食用塩の製造方法によると、原料海水に植物系原料を混合し、該液状混合物を絶対圧1kPa〜12kPaの減圧下において40℃〜60℃で加熱して塩を析出させ、該析出物を乾燥するため、海水の加熱に伴う微量元素成分の配合割合の変化を抑制することができ、同時に液状混合物に含まれる植物系原料由来成分の蒸発、加熱に伴う分解、変質も抑制できる。
請求項2の発明に係る植物系原料を含む食用塩の製造方法によると、請求項1に記載の発明において、前記原料海水が、塩分濃度を15%〜25%に濃縮した濃縮海水であるため、減圧下の加熱工程に要する時間を大きく短縮できる。併せて、植物系原料に由来する成分の熱による影響を回避できる。
請求項3の発明に係る植物系原料を含む食用塩の製造方法によると、請求項2に記載の発明において、前記濃縮海水が、前記原料海水を絶対圧1kPa〜12kPaの減圧下において40℃〜50℃で加熱して濃縮した海水であるため、海水中の微量元素成分の変化を抑え水分のみを減少させることができる。
請求項4の発明に係る植物系原料を含む食用塩の製造方法によると、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発明において、前記原料海水が、海洋深層水であるため、清浄度が高く豊富な無機塩類(微量元素成分)を得ることができる。
請求項5の発明に係る植物系原料を含む食用塩の製造方法によると、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発明において、前記植物系原料が、柑橘系果実の果汁及び果肉であるため、果実の豊富な果汁を得ることができ、果実の芳香や果汁の色合いを生かした果実の特徴を出しやすい。
請求項6の発明に係る植物系原料を含む食用塩の製造方法によると、請求項5に記載の発明において、前記析出物の乾燥後に、前記柑橘系果実の果皮の乾燥粉砕物を添加するため、果皮に含まれる芳香成分により食用塩の香りを高めることができる。
図1の工程図を用い、請求項1に規定する本発明の食用塩の製造方法を説明する。はじめに食用塩の主原料となる海水は海洋から汲み上げられ、適宜の濾過による不純物の除去、オゾンや紫外線等による殺菌を経て原料海水となる。この原料海水に植物系原料が添加、混合され、十分に攪拌されて液状混合物となる。液状混合物は原料海水(後記の濃縮海水を含む)に植物系原料が分散、浮遊している液状物である。そして、液状混合物は低温真空濃縮装置等の減圧及び加熱が可能な装置内に導入される。
液状混合物の減圧条件は前記装置において絶対圧1kPa〜12kPa(kPa abs)の真空状態となる。ちなみにゲージ圧による表記では−100kPa〜−90kPa(kPa G)となる。真空状態は低温真空濃縮装置の真空ポンプにより得ることができる。この数値のとおり、本発明ではほぼ真空に近い状態に減圧される。そして、液状混合物は水の沸点よりも低温となる40℃〜60℃で加熱される。このような減圧(真空)条件とすることにより、水の沸点は常圧(絶対圧101.32kPa)よりも低下する。
加熱温度の上限を60℃とした理由は、原料海水や植物系原料の成分変化を極力回避するためである。特に、後出の各種植物系原料のように、揮発性成分の蒸発、色素成分の分解、変色を抑制しようとする点を考慮するためである。加えて、植物系原料に含まれる水分の蒸発効率も勘案される。加熱温度の下限を40℃とした理由は、液状混合物の水分の蒸発時間を過度に長くせず、作業効率性を重視したためである。
このため、従前の製塩法の問題点である海水の加熱に伴う微量元素成分の配合割合の変化を抑制することができる。さらに、大きな利点として、本発明の特徴である液状混合物に含まれる植物系原料由来成分の蒸発、加熱に伴う分解、変質も抑制できる。
減圧条件を極力真空に近づけることは、加熱温度の低下と共に、加熱時間の減少をもたらす。むろん、減圧時の絶対圧12kPa以上の圧力状態とすることも可能であるものの、この場合、加熱に要する温度は高くなり総加熱時間も伸びるため生産効率は低下する。そして何よりも、原料海水や植物系原料の成分変化が懸念される。なお、絶対圧1kPaは商業規模の真空ポンプによる限界値である。
減圧(真空)条件下の加熱は装置性能、規模、処理量に応じて異なり、5時間〜40時間にわたる。液状混合物に含まれる海水及び植物系原料の水分は減少し、次第に塩が析出し始め、水気の無い泥床状態となった時点で減圧加熱は終了する。減圧加熱により生じた析出物はその後乾燥される。乾燥前に遠心分離器を用いて水切りを行うことも可能である。乾燥は自然乾燥、温風の吹き付け等の加熱を伴わない条件で行われる。乾燥の後、塩の粉砕や異物検査に続いて、秤量、びんや袋詰め等の包装を経て「植物系原料を含む食用塩」の製品が出来上がる。以上の流れが最も単純な本発明の製造方法例である。
上記の説明では採取した海水をそのまま原料海水として用いた。通常、海水の塩分濃度は約3.5%(約35PSU(35‰))である。この海水に代えて、請求項2の発明に規定するように、塩分濃度を15%〜25%、好ましくは塩分濃度18%〜24%に濃縮した濃縮海水が用いられる。予め原料海水を濃縮しておくことにより、減圧下の加熱工程に要する時間は大きく短縮される。とりわけ、植物系原料に由来する成分の熱による影響を回避できるため効果的である。
原料海水の塩分濃度の濃縮方法は煮沸や浸透膜の利用等の適宜である。しかし、海水中の微量元素成分の変化を極力軽減する必要もある。このため、請求項3の発明に規定され、図示の工程図に示すように、原料海水自体も減圧条件下で低温加熱が行われる。
濃縮海水を得るため、原料海水は絶対圧1kPa〜12kPaの減圧下において40℃〜50℃、より好ましくは42℃〜47℃の範囲内で加熱される。減圧条件は前述のとおり、装置性能や加熱温度を抑える点を考慮したためである。加熱温度については海水中の微量元素成分の変化を抑え水分のみを減少させるためである。この加熱温度よりも低温にすることは可能であるが、濃縮に要する時間が長くなるため実用的ではない。
主原料となる原料海水は清浄であればどの海域の海水を用いることができる。その中においても、請求項4の発明に規定するように、原料海水として海洋深層水が用いられる。海洋深層水は、水深200m以下の太陽光がほとんど届かず、また年間の水温の変動が少ない海中より採水された海水の総称である。海洋深層水はプランクトンやバクテリア等に由来する有機物の含有量が少なく、無機塩類に富み、清浄度が高い(つまり生物的及び化学的汚染が少ない。)。そこで、海洋深層水の清浄度と無機塩類(微量元素成分)の豊富さに着目して、無機塩類の豊富な組成を生かすべく原料海水に用いられる。これまでの説明にあるように、本発明の製造方法における減圧、加熱の条件は、海洋深層水の含まれる無機塩類(微量元素成分)の配合変化を抑えることができ、海洋深層水の使用の利点を最大限に生かすことができる。
本発明の製造方法において原料海水に添加される植物系原料とは、果物、野菜、海藻、キノコ類、香辛料、ハーブ類、薬草等の素材である。植物系原料は、食用塩に味覚、色彩、または香りを付与できる原料であれば特段制約されない。
植物系原料を果物とする場合、例えば、アンズ、アケビ、イチジク、カキ、ブドウ、サクランボ、モモ、スモモ、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、パイナップル、マンゴー、パパイヤ、洋ナシ、ドリアン、メロン等が挙げられる。また、ミカン、スダチ、カボス、オレンジ、ブラッドオレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライム、シークワーサー、夏ミカン、甘夏ミカン、キンカン、イヨカン、ポンカン、ユズ、ザボン、バンペイユ、シラヌイ(デコポン(登録商標))等の種々の柑橘類が好ましく用いられる。
野菜やハーブ類の場合、例えば、ニンジン、トマト、ピーマン、パプリカ、タマネギ、シソ、ウメ、セロリ、ミツバ、シュンギク、ホウレンソウ、ワサビ、ホースラディッシュ、ネギ、ニラ、ニンニク、ショウガ、ミョウガ、セージ、タイム、バジル、パセリ、クレソン、ローズマリー、ジャスミン、カモミール、マジョラム、レモンバーム、ミント、オレガノ、コリアンダー、オリーブ等が挙げられる。
海藻の場合、例えば、コンブ、ワカメ、ノリ、クビレヅタ(海ブドウ)等が挙げられる。また、キノコ類の場合、シイタケ、マツタケ、マイタケ、シメジ、マッシュルーム、トリュフ、サルノコシカケ等が挙げられる。
また、香辛料、薬草については、コショウ、サンショウ、トウガラシ、ウコン、シナモン、ハッカク、バニラ、ラベンダー、キンモクセイ、バラの花、ランの花等、サクラの花や葉、甘草、葛根、ビワの葉、タンポポの根、クチナシ、サフラン、杜仲、高麗人参、ドクダミの葉、天台烏薬等が挙げられる。加えて、緑茶、紅茶、中国茶、コーヒー、チョコレート、ココア等の嗜好品、さらには、ハトムギやトウモロコシ等の葉や実、マツの葉や樹皮、ヒノキ、クマザサ、シダ類等の種々の草木類も含めることができる。
列記の植物系原料は一例に過ぎず、当然、例示以外の原料を用いることができる。植物系原料については、洗浄、消毒、殺菌等を経た後、皮むき作業や、可食部分の分離、成分抽出、粉砕(破砕、擦砕)等の各種原料の特性に応じた準備が適宜行われる。植物系原料において、果実の柑橘類は豊富な果汁を得ることができ、果実の芳香や果汁の色合いを生かして添加した果実の特徴を出しやすい。このことから植物系原料として好ましく用いられる。そこで、請求項5の発明に規定するように、植物系原料としては、柑橘系果実(柑橘類)の果汁及び果皮が用いられる。
柑橘系果実の場合、洗浄、殺菌の後、その果皮が剥かれる。そして、果実内より種子を取り終えた果肉は圧搾(搾汁)され、柑橘果汁が得られる。同時に、果汁を搾った残りの果肉も細かく粉砕される。粉砕は食用塩をふりかけた際の食感を考慮して細かい方が望まれる。たいてい、0.5mm〜2mm程度の大きさとなる。このようにして、図1の工程図に示しているように、植物系原料としての果汁、果肉は原料海水に添加される。以降の処理は、既述のとおりである。減圧(真空)下における加熱により水分を蒸発させるため、柑橘系果実に特有な淡黄色の変色、焦げ等は抑制され、素材の色合い、風味を生かすことができる。
またさらに、植物系原料として柑橘系果実を用いた場合、請求項6の発明に規定するように、柑橘系果実の果皮も利用される。この果皮には、主に果汁圧搾時に剥かれた果皮が使用される。果皮は乾燥され、乾燥後0.5mm〜2mm程度の大きさに粉砕される。そして、図1の工程図に示しているように、果皮の乾燥粉砕物は、原料海水(濃縮海水を含む)と植物系原料の減圧、加熱により生じた析出物の乾燥後に添加される。ここで、植物系原料を含む海水由来塩と果皮の乾燥粉砕物は均一に混合されて製品となる。果皮が添加されることにより、果皮に含まれる芳香成分により食用塩の香りが高まる。
[使用原材料]
原料海水として、三重県尾鷲市の沖約10km、水深415mの海中より採水した海洋深層水(塩分濃度:約3.5%(約35PSU))を用いた。植物系原料として、同県尾鷲市及び近傍の農園にて栽培した柑橘系果実の甘夏みかん(カワノナツダイダイ)を用いた。
原料海水として、三重県尾鷲市の沖約10km、水深415mの海中より採水した海洋深層水(塩分濃度:約3.5%(約35PSU))を用いた。植物系原料として、同県尾鷲市及び近傍の農園にて栽培した柑橘系果実の甘夏みかん(カワノナツダイダイ)を用いた。
[食用塩の製造]
収穫した甘夏みかんを水で洗浄して果皮を剥き、果汁を搾汁して60℃、30分間の低温殺菌をした。また、剥いた果皮も60℃、30分間の低温殺菌し、乾燥機により乾燥して0.5mm〜1mm程度の大きさに細かく粉砕した。搾汁後の甘夏みかんの中身から種子と果肉を取り出し、果肉のみ60℃、30分間の低温殺菌すると共に0.5mm〜1mm程度の大きさに細かく粉砕した。
収穫した甘夏みかんを水で洗浄して果皮を剥き、果汁を搾汁して60℃、30分間の低温殺菌をした。また、剥いた果皮も60℃、30分間の低温殺菌し、乾燥機により乾燥して0.5mm〜1mm程度の大きさに細かく粉砕した。搾汁後の甘夏みかんの中身から種子と果肉を取り出し、果肉のみ60℃、30分間の低温殺菌すると共に0.5mm〜1mm程度の大きさに細かく粉砕した。
低温真空濃縮装置に前記の海洋深層水を導入し、絶対圧1kPa〜12kPa(ゲージ圧では−100kPa〜−90kPa)の減圧下において、42℃〜47℃の温度を維持しながら6〜7時間加熱した。減圧加熱に際し、装置内に海洋深層水を逐次導入しながら、総量で約4500Lの海洋深層水を減圧濃縮し、塩分濃度約18〜24%の濃縮海水に仕上げた。
低温真空濃縮装置に濃縮海水、果汁、及び果肉を導入した。濃縮海水は総量で1000L、果汁は60L、果肉は40〜50kg用いた。そして、絶対圧1kPa〜12kPa(ゲージ圧では−100kPa〜−90kPa)の減圧下において、45℃〜55℃の温度を維持しながら6〜7時間加熱した。なお、濃縮海水は30分から1時間に1回ずつ逐次装置に導入した。
濃縮海水の水分状態を随時確認しながら水分を蒸発させて塩を析出、沈澱させた。析出した塩は甘夏みかんの果汁に由来する鮮やかな淡黄色を失うことはなかった。析出物を装置から取り出し、遠心分離器を用いて水分を切った。析出物を室温下にて24〜48時間かけて自然乾燥した。乾燥後の析出物に前出の果皮の乾燥、粉砕物を添加してブレンダーにより均質になるまで混合した。その後、適量ずつ秤量して瓶または袋に充填して製品とした。
[まとめ]
既存の香り付き食用塩の製造方法では、果実等の植物系原料を原料海水に添加したとしても、煮沸段階において色合いや芳香が分解、変質することが多く、本来の色、香りを十分に生かすことができなかった。そこで、製塩工程とは別に植物系原料を添加するか、あるいは、香料により風味等を補強する必要があった。
既存の香り付き食用塩の製造方法では、果実等の植物系原料を原料海水に添加したとしても、煮沸段階において色合いや芳香が分解、変質することが多く、本来の色、香りを十分に生かすことができなかった。そこで、製塩工程とは別に植物系原料を添加するか、あるいは、香料により風味等を補強する必要があった。
これに対し、実施例における食用塩の製造から把握されるように、いずれの原料についても100℃よりも低温下、具体的には60℃以下の加熱しか行われていない。原料海水については、煮沸、イオン交換や浸透膜処理を経ていないため、原料海水である海洋深層水の含まれる無機塩類(微量元素成分)の配合変化は極力抑えることができる。また、植物系原料に関しても殺菌工程を含めて60℃以下の加熱しか行われていない。ゆえに、植物系原料に由来する特徴成分の減少、分解等を改善することができる。実施例では柑橘系果実の甘夏みかんの淡黄色の色合い、果汁や果肉に含まれる芳香の分解を軽減可能である。さらに、果皮の乾燥、粉砕物も含めているため、よりいっそう柑橘果実の芳香を食用塩に重ね合わせることができた。
以上のとおり、本発明の製造方法は、原料本来が備えている素材の良さを最大限に引き出して海水や海洋深層水から製造した食用塩に大きな価値を付加することができた。特に、地域特産の食材、実施例では地元産の甘夏みかん(カワノナツダイダイ)の新しい用途を見出すに至った。また、植物系原料を含む食用塩と料理との組み合わせの妙味により新たな創作も可能となる。なお、植物系原料は実施例の甘夏みかんに限られることなく、果物、野菜、海藻、キノコ類、香辛料、ハーブ類、薬草等の中から自由に使用できる。
Claims (6)
- 原料海水に植物系原料を混合し、該液状混合物を絶対圧1kPa〜12kPaの減圧下において40℃〜60℃で加熱して塩を析出させ、該析出物を乾燥することを特徴とする植物系原料を含む食用塩の製造方法。
- 前記原料海水が、塩分濃度を15%〜25%に濃縮した濃縮海水である請求項1に記載の植物系原料を含む食用塩の製造方法。
- 前記濃縮海水が、前記原料海水を絶対圧1kPa〜12kPaの減圧下において40℃〜50℃で加熱して濃縮した海水である請求項2に記載の植物系原料を含む食用塩の製造方法。
- 前記原料海水が、海洋深層水である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の植物系原料を含む食用塩の製造方法。
- 前記植物系原料が、柑橘系果実の果汁及び果肉である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の植物系原料を含む食用塩の製造方法。
- 前記析出物の乾燥後に、前記柑橘系果実の果皮の乾燥粉砕物を添加する請求項5に記載の植物系原料を含む食用塩の製造方法。
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