JP2010202476A - プレス成形型の離型膜の良否判定方法および光学素子の製造方法 - Google Patents

プレス成形型の離型膜の良否判定方法および光学素子の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2010202476A
JP2010202476A JP2009052023A JP2009052023A JP2010202476A JP 2010202476 A JP2010202476 A JP 2010202476A JP 2009052023 A JP2009052023 A JP 2009052023A JP 2009052023 A JP2009052023 A JP 2009052023A JP 2010202476 A JP2010202476 A JP 2010202476A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
release film
film
press
mold
sliding
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2009052023A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4994405B2 (ja
Inventor
Takashi Igari
隆 猪狩
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hoya Corp
Original Assignee
Hoya Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hoya Corp filed Critical Hoya Corp
Priority to JP2009052023A priority Critical patent/JP4994405B2/ja
Priority to CN2010101179608A priority patent/CN101823833B/zh
Publication of JP2010202476A publication Critical patent/JP2010202476A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4994405B2 publication Critical patent/JP4994405B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P40/00Technologies relating to the processing of minerals
    • Y02P40/50Glass production, e.g. reusing waste heat during processing or shaping
    • Y02P40/57Improving the yield, e-g- reduction of reject rates

Landscapes

  • Re-Forming, After-Treatment, Cutting And Transporting Of Glass Products (AREA)

Abstract

【課題】プレス成形型上の離型膜の良否判定を行うための手段を提供すること。
【解決手段】被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定方法。前記離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定子のいずれか一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること、ならびに、前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に前記離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に前記離型膜と前記被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度に基づき決定することを含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガラス素材をプレス成形してレンズ、プリズム等のガラス光学素子を製造する際に使用される成形型について、その成形面上に成膜された離型膜の良否を判定する方法に関する。
更に本発明は、前記良否判定方法により離型膜の良否判定を行うことを含む光学素子の製造方法に関する。
加熱軟化したガラス素材を成形型によりプレス成形することにより、レンズなどの光学素子を得る際に、成形型の成形面とガラス素材の融着を防止し、離型性を得るために、ガラス素材表面に炭素系材料からなるコーティングを設けることや(特許文献1参照)、成形型の成形面に炭素系薄膜、金属窒化物系薄膜、金属炭化物系薄膜等の離型膜を設けることが行われている(例えば特許文献2〜6参照)。
特開2004−231505号公報 特開平3−50127号公報 特開2003−313046号公報 特開2008−1572号公報 特開平7−138033号公報 特開2001−335331号公報
成形型上に設けられる離型膜には、プレス成形時にワレ(プレス成形時に生じる成形品の割れ)を抑制する効果が求められる。例えば特許文献5および6には、原子間力顕微鏡または触針式形状測定器によって離型膜の面形状を測定することが記載されているが、面形状の測定のみでは、離型膜が前記望ましい性能を有するか否かを判定することは困難である。
そこで本発明は、プレス成形型上の離型膜の良否判定を行うための手段を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
プレス成形型と被成形素材(ガラス素材)との間に働く摩擦力が小さいほど、プレス成形時に型と成形素材との間にかかる変形応力が小さくなるため、プレス成形される光学素子のワレは抑制されると考えられる。そこで本発明者は、市販されている一般的な摩擦係数測定装置により摩擦係数を測定し、光学素子のワレの発生頻度との相関を取ろうとしたが、良好な相関関係を得ることはできなかった。この点について本発明者は、一般的な摩擦係数測定装置における測定条件が、プレス成形時に離型膜が置かれる条件と著しく異なることが、一般的な摩擦係数測定装置ではワレの発生頻度と摩擦係数との間に良好な相関関係が得られない理由であると推察した。
本発明者は、上記知見に基づき更に検討を重ねた結果、摩擦係数測定時、測定対象の膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ測定対象の膜と測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に離型膜と被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度に基づき決定することにより、測定される摩擦係数の値とワレの発生との間に良好な相関関係が成立することを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定方法であって、
前記離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定子のいずれか一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること、ならびに、
前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に前記離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に前記離型膜と前記被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度に基づき決定すること、
を特徴とする、プレス成形型の離型膜の良否判定方法。
[2]前記測定子は、前記押圧時に前記膜に当接する部分が前記被成形ガラス素材と同じ素材からなる[1]に記載の方法。
[3]前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を、5〜80MPaの範囲に設定する[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、0.2mm/sec以下に設定する[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定方法であって、
前記離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定子のいずれか一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること、ならびに、
前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を5〜80MPaの範囲に設定し、かつ前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を0.2mm/sec以下に設定すること、
を特徴とする、プレス成形型の離型膜の良否判定方法。
[6]前記良否判定を、繰り返し摺動後の摩擦係数の測定値、繰り返し摺動中の摩擦係数の最小値、繰り返し摺動中の摩擦係数の経時変化量が予め設定した基準値以下であるものを良品と判定し、該値を超えるものを不良品と判定することにより行う[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記繰り返し摺動の摺動回数を、前記プレス成形型の所望の使用回数に基づき決定する[6]に記載の方法。
[8]被成形ガラス素材を成形型に供給し、次いで供給された被成形ガラス素材を前記成形型によりプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法であって、
[1]〜[7]のいずれかに記載の方法により前記成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定を行うこと、
前記判定により離型膜が良品と判定された成形型を、前記プレス成形に使用すること、
を特徴とする、ガラス光学素子の製造方法。
本発明のプレス成形型の離型膜の良否判定方法によれば、離型膜の良否を高い信頼性をもって判定することができる。
本発明のガラス光学素子の製造方法によれば、良否判定の結果、良品と判定された良好な離型膜を有するプレス成形型を使用することにより、プレス成形による生産性向上および不良品率低減による生産コストの抑制を達成することができる。
プレス成形型および被成形ガラス素材の斜視図である。 成膜装置の説明図である。 プレス成形型および試料へ同時成膜する態様の説明図である。 離型膜に印加する圧縮荷重および摩擦力の説明図である。 摩擦係数測定装置の構成を示す斜視図である。 実施例1における摩擦係数とワレの発生率との対応を示すグラフである。 比較例1における摩擦係数とワレの発生率との対応を示すグラフである。 実施例2における摩擦係数とワレの発生率との関係を示すグラフである。 参考例の測定結果を示すグラフである。
[プレス成形型の離型膜の良否判定方法]
本発明は、
被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定方法であって、
前記離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定子のいずれか一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること、ならびに、
前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に前記離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に前記離型膜と前記被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度に基づき決定すること、
を特徴とする、プレス成形型の離型膜の良否判定方法(以下、「良否判定方法1」という)に関する。以下において、良否判定方法1と後述する良否判定方法2をまとめて、本発明の良否判定方法ということもある。
図1に、プレス成形型および被成形ガラス素材の斜視図を示す。図1に示すように、プレス成形時には被成形ガラス素材と成形型の成形面とが直接接触する。ここで被成形ガラス素材と成形型成形面との界面で化学反応が起こると融着や高い変形応力によるガラスのワレが発生するため、化学反応を抑制し、変形応力を緩和するために炭素膜等の離型膜を成形型の成形面上に設けることが広く行われている。本発明の良否判定方法は、このように被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否を判定するものである。
本発明の良否判定方法は、プレス成形型の成形面上に成膜された離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定の内の一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること(以下、「摩擦係数測定工程」という)、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること(以下、「良否判定工程」という)を含む。
以下、前記工程の詳細を順次説明する。
摩擦係数測定工程
本工程における摩擦係数測定対象は、良否判定対象となる離型膜そのものであってもよく、前記離型膜と同一条件で成膜された膜(以下、「サンプル膜」ともいう)であってもよい。前記離型膜としては特に制限はなく、プレス成形型の成形面上に離型性向上を目的として設けられる各種被膜を挙げることができる。そのような被膜としては、例えば、ダイヤモンド状炭素膜、水素化ダイヤモンド状炭素膜、テトラヘドラルアモルファス炭素膜、水素化テトラヘドラルアモルファス炭素膜、アモルファス炭素膜、水素化アモルファス炭素膜、窒素を含有するカーボン膜等の炭素系膜、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、タングステン(W)、およびタンタル(Ta)から選ばれる少なくとも一つの金属を含む合金膜等を挙げることができる。これら離型膜の膜厚は特に限定されるものではない。また、離型膜の成膜には、DC−プラズマCVD法、RF−プラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、ECR−プラズマCVD法、光CVD法、レーザーCVD法等のプラズマCVD法、イオンプレーティング法などのイオン化蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、蒸着法やFCA(Filtered Cathodic Arc)法等の手法を用いることができる。
前記サンプル膜は、良否判定対象となる離型膜と同一条件で成膜された膜である。ここで「同一条件で成膜された」とは、例えば前記離型膜と同一成膜装置内で同時に成膜されたことをいい、バッチ式の成膜方法においては同一成膜ロット内で成膜されたことをいう。
例えばスパッタリング法による成膜では、図2に示すように、プレス成形型を、成膜材料(ターゲット)と対向するように成膜装置内に配置し、装置内を真空引きした後、アルゴン等のスパッタガスで装置内を所定の圧力に保持した状態で、直流または交流電場をスパッタガスに印加することでプレス成形型の成形面上に離型膜が成膜される。ここで図2に示すように、成膜装置内にプレス成形型とともにサンプル基材を配置しておくことにより、サンプル基材表面にサンプル膜を形成することができる。サンプル基材としては、プレス成形型と同一形状を有する基材であってもよく、平板等の任意形状の基材であってもよい。後述する摩擦係数測定の容易性の点からは、表面が平面であるサンプル基材を用いることが好ましい。サンプル基材表面上には、プレス成形型と被膜(離型膜)の品質、厚さ等が同等の被膜が成膜されることが、良否判定の信頼性の点から望ましい。この観点からは、実成膜に先立ち予備実験を行うことにより、図3に示すように、予めサンプル基材を配置する領域(規定成膜領域)を決定しておくことが好ましい。例えば、成膜される被膜の膜厚分布が10%以下になる領域を規定成膜領域と設定することができる。
本発明では、前記離型膜または前記サンプル膜に測定子を押圧した状態で、前記膜(離型膜もしくはサンプル膜)または該測定子の少なくとも一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定する。例えば前記測定子に対し前記膜を摺動させてもよく、前記膜に対して前記測定子を摺動させてもよい。以下、摩擦係数の測定対象となる膜(離型膜またはサンプル膜)を、「測定対象膜」ともいう。
図4に、摩擦係数測定の説明図を示す。摩擦係数は、図4に示すように、被押圧面に垂直方向に圧縮荷重(垂直荷重)を印加した状態で、測定子を被押圧面上で摺動させた際に生じる摩擦力から、
摩擦係数=摩擦力/圧縮荷重
として測定される。良否判定方法1では、前記押圧時に測定対象膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ測定対象膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に離型膜と被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度に基づき決定する。以下、この点について更に詳細に説明する。
先に説明したように、プレス成形型と被成形ガラス素材との間に働く摩擦力が小さいほど、プレス成形時に型と成形素材との間にかかる変形応力が小さくなるため、プレス成形される光学素子のワレは抑制されると考えられる。そこで本発明者らは、市販されている一般的な摩擦係数測定装置により摩擦係数を測定し、光学素子のワレの発生頻度との相関を取ろうとしたが、良好な相関関係を得ることはできなかった。この点について本発明者は、一般的な摩擦係数測定装置における測定条件が、プレス成形時に離型膜が置かれる条件と著しく異なること、より詳しくは、
(1)一般的な摩擦係数測定装置において被測定対象物に印加される荷重によって生じる圧縮応力、即ち面圧が、プレス成形時に離型膜に生じる面圧と比べて著しく大きいこと、および、
(2)一般的な摩擦係数測定装置における被測定対象物と測定子との摺動時の相対移動速度が、プレス成形時に前記離型膜と前記被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度と比べて著しく大きいこと、
が、一般的な摩擦係数測定装置ではワレの発生頻度と摩擦係数との間に良好な相関関係が得られない理由であると推察した。本発明者の検討によれば、通常のプレス成形時に離型膜上に生じる面圧は5〜80MPa程度、せん断速度は0.2mm/sec以下程度であった。これに対し、一般的な摩擦係数測定装置において測定対象面に加わる垂直圧縮応力は、最小でも685MPa以上、測定対象面と測定子との摺動時の相対移動速度は最低でも10mm/sec以上であり、プレス成形時に離型膜が置かれる条件と著しく相違する。
そこで前述のように、本発明の良否判定方法では、前記押圧時に測定対象膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ測定対象膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に離型膜と被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度に基づき決定する。こうして測定される摩擦係数とワレの発生頻度との間には良好な相関関係が成立し得るため、摩擦係数の測定結果に基づき、離型膜の良否判定を行うことが可能となる。
以下、本発明の良否判定方法において好適に使用される摩擦係数測定装置について説明するが、本発明は、下記態様に限定されるものではない。
図5は、本発明の良否判定方法において好適に使用される摩擦係数測定装置の概略図である。図5に示す装置は、摩擦力発生手段と、圧縮荷重を発生させる圧縮荷重発生手段と、を含む。以下、各手段の詳細を説明する。
(i)摩擦力発生手段
摩擦力発生手段は、最表面に測定対象膜を有する試料を固定保持する試料保持台の役割と、試料を任意方向に移動させる移動台の役割を果たす。例えば、測定対象面に測定子が押圧された状態で、試料を測定対象面に対して水平方向(図5中のY方向)に移動させることにより、摩擦力を発生させることができる。摩擦力発生手段を、任意方向、例えば図5中のY方向に往復移動可能な構成とすることにより、測定対象面上で測定子を繰り返し摺動させることができる。図5に示す装置では、試料支持体4に固定保持された離型膜成膜済み被測定物1の測定対象面に測定子3が押圧された状態で、せん断動作用Yステージ2をY方向に往復移動する動作を繰り返すことにより、測定対象面上で測定子を繰り返し摺動させることができる。または、せん断動作用Yステージ2の往復移動によらず、測定子3を往復移動させることにより、測定対象面上で測定子を繰り返し摺動させることも可能である。
(ii)圧縮荷重発生手段
圧縮荷重発生手段は、任意方向、例えば図5中のX方向に往復移動可能な構成を有することにより、測定子3を測定対象面に押圧させること、または押圧を解除することができる。測定子の位置調整のため、粗移動と微調整用の2段式の構成とすることも可能である。例えば図5に示す装置では、上方の面圧印加用Xステージ5が精動(微調整用)ステージであり、下方の面圧印加用Xステージ5が粗動(粗移動用)ステージである。
図5に示す装置中、圧縮荷重発生手段は、X方向弾性変形部材およびY方向弾性変形部材を介して測定子3を固定することができる。両弾性変形部材は、単枚構成とすることもできるが、1対の板バネからなるものを採用することが好ましい。これは、一対の板バネからなるものは、垂直圧縮応力と剪断応力とによる弾性変形部材のねじれを回避することができるからである。図5中、面圧変位板バネ6がX方向弾性変形部材としての一対の板バネに相当し、摩擦力変位板バネ8が、Y方向弾性変形部材としての一対の板バネに相当する。
測定子としては、押圧時に測定対象膜に当接する部分が、プレス成形時に使用される被成形ガラス素材と同じ素材からなるものを使用することが、プレス成形時に離型膜が置かれる状態により近い状態で摩擦係数を測定できるため好ましい。この点からは、プレス成形時に使用される被成形ガラス素材そのものまたは被成形ガラス素材と同一素材からなる同一形状のガラス素材を、測定子として使用することが更に好ましい。
前述のように、測定対象膜は、プレス成形に使用されるプレス成形型上に設けられた離型膜そのものであってもよく、プレス成形型と同形状のサンプル基材上に設けられたサンプル膜であってもよく、プレス成形型とは異なる任意の形状を有するサンプル基材上に設けられたサンプル膜であってもよい。摩擦係数測定の単純化(図5中、測定子のX方向における圧縮荷重の印加およびY方向への移動により発生する摩擦力の測定の単純化)の観点からは、平面上に形成されたサンプル膜の摩擦係数を測定することが好ましい。なお、成形面形状のような曲面(凹面または凸面)形状の測定対象面に対応するため、測定子の試料に対する当接位置を調整可能な当接位置調整手段(図5中のX方向、Y方向およびZ方向に移動可能な手段)を圧縮荷重発生手段に設けることもできる。図5中、測定位置変更Zステージ10および測定位置変更Yステージ11が、上記当接位置調整手段に相当する。
圧縮荷重およびせん断応力測定手段として、XおよびY方向弾性変形部材の各々にその変位量を測定可能な変位センサーを配設することができる。変位センサーにより各弾性変形部材の変位量を検出し、検量線(変位量と応力との相関データ)によって、測定対象面に加わる垂直圧縮応力および発生したせん断応力、即ち摩擦力を測定することができる。または、前記垂直圧縮応力及び摩擦力はロードセル等の歪測定器を使用することにより測定することもできる。図5に示す装置中、面圧検出用変位センサー7および摩擦力検出用変位センサー9が、上記変位センサーに相当する。
また、測定対象膜と測定子との摺動時の相対移動速度はサーボモーター等を用いることで、その値を制御することが出来る。
以上により、摩擦係数測定装置の動作状態と、測定対象面に加わる垂直圧縮応力および発生する摩擦力との相関データを得ることができる。
次に、得られた相関データに基づき、測定対象膜の摩擦係数を測定する方法について説明する。
まず図5に示す摩擦係数測定装置に、測定対象膜が最表面に配置されるように試料を固定保持する。次に、測定が試料の所望の位置に当接するように、圧縮荷重発生手段を調節する。
良否判定方法1では、測定子が押圧された際に測定対象膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ測定対象膜と測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に前記離型膜と前記被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度、即ち、離型膜に対して被成形ガラス素材が変形する速度に基づき決定する。
摩擦係数測定時の測定条件の決定のためには、実際のプレス成形と同一条件でプレス成形を行う予備実験を行うことが好ましい。予備実験で複数回のプレス成形を繰り返した結果、成形される光学素子のワレが発生しやすかった領域における面圧およびせん断速度を、前記良否判定方法に於ける条件を決定する基準値として用いることが好ましい。
良否判定結果の信頼性の観点からは、摩擦係数測定時に測定対象膜に加わる圧縮応力は、プレス成形時に離型膜上に生じる面圧の±20%程度の値に設定することが好ましく、測定対象膜と測定子との摺動時の相対移動速度は、プレス成形時に離型膜と被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度の±0.1mm/sec程度の値に設定することが好ましい。なお、測定対象膜と測定子との相対移動速度の設定速度としては、その上限は1mm/sec程度までが好ましく、また、その下限は摺動時の相対移動速度があれば(0でなければ)測定可能であるが、測定所要時間、すなわち、測定効率を考慮して、現実的な値として0.01mm/sec程度までが適当な設定である。また、一般的なプレス成形条件を考慮すると、前記圧縮応力は5〜80Mpaの範囲に設定することが好ましく、前記相対移動速度は0.2mm/sec以下の範囲に設定することが好ましい。
摩擦係数測定時の測定条件の決定後、決定された圧縮応力が測定対象面に対して垂直方向(図5中、X方向)に加わるように、測定子を測定対象面に押圧する。そしてこの状態で、決定された相対移動速度で測定子を測定対象面上で往復移動させることによって摩擦力を(例えば図5中のY方向に)発生させる。ここで発生する摩擦力は、例えば板バネのバネ定数に変位センサーで得られた撓み量を乗ずることによって算出することができる。そして摩擦係数は、先に説明したように、下記式により算出することができる。
摩擦係数=算出された摩擦力/測定された垂直圧縮応力
良否判定工程
良否判定方法1では、こうして得られた摩擦係数に基づき、プレス成形に使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定を行う。良否判定のために、摩擦係数の測定に先立ち、良否判定の基準値を予め設定しておく。基準値の設定のためには、例えば以下の予備実験を行うことができる。なお、摩擦係数測定時の温湿度条件が常温で相対湿度60%以下であれば、測定値に与える影響は極僅かである。したがって、本発明において、摩擦係数測定工程は、基準値設定のための予備実験と同じ温湿度環境で行うことは必須ではない。
(1)離型膜と測定子とを繰り返し摺動させた後の摩擦係数の測定値と光学素子のワレの発生頻度との相関関係を求める予備実験を行う。この予備実験の結果に基づき、繰り返し摺動後の摩擦係数の測定値について、良否判定の基準値を決定する。
(2)離型膜と測定子とを繰り返し摺動させた後に繰り返し摺動中の摩擦係数の最小値と光学素子のワレの発生頻度との相関関係を求める予備実験を行う。この予備実験の結果に基づき繰り返し摺動中の摩擦係数の最小値について、良否判定の基準値を決定する。
(3)離型膜と測定子とを繰り返し摺動させた後に繰り返し摺動中の摩擦係数の経時変化量と光学素子のワレの発生頻度との相関関係を求める予備実験を行う。この予備実験の結果に基づき繰り返し摺動後の摩擦係数の経時変化量について、良否判定の基準値を決定する。
なお、上記(2)における最小値は、必ずしも測定開始直後の摩擦係数とは限らない。これは、測定開始時には離型膜表面に粗さがあり、測定子の当接および摺動によりこの粗さが慣らされる(なじむ)ことにより、測定開始初期に摩擦係数の低下が見られる場合があるからである。このような場合、上記(3)の経時変化量は、前記最小値と繰り返し摺動中の摩擦係数(通常、摺動回数が増えるほど摩擦係数が増加するため最終摺動時の摩擦係数であることが多い。)との差分を取ることが、良否判定の信頼性の点から好ましい。
前記繰り返し摺動の摺動回数は、プレス成形型の所望の使用回数に基づき決定することが好ましい。本発明の良否判定方法では、プレス成形時に離型膜が置かれる状態にきわめて近い状態で測定子を測定対象面上で摺動させることができるため、例えば測定子を往復1回摺動させた測定対象面の状態は、プレス成形を2回行った離型膜の状態に近似していると考えられる。この点を考慮し、例えばプレス成形型の所望の使用回数の1/2程度の摺動回数で繰り返し摺動を行うことができる。すなわち100回のプレス成形を行う仕様のものについては、往復50回で繰り返し摺動を行うことが好ましい。なお、前記予備実験は、良否判定のための摩擦係数測定条件と同一測定条件で行うことが好ましい。また、前記予備実験は、実際にプレス成形を行う成形型上に形成された離型膜とは異なる成膜条件で成膜されたものであってもよいが、信頼性の高い良否判定結果を得る観点からは、実際にプレス成形を行う成形型上に形成された離型膜と同一条件で成膜されたものであることが好ましい。
更に本発明は、
被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定方法であって、
前記離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定子のいずれか一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること、ならびに、
前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を5〜80MPaの範囲に設定し、かつ前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を0.2mm/sec以下に設定すること、
を特徴とする、プレス成形型の離型膜の良否判定方法(以下、「良否判定方法2」という)
に関する。
前述の良否判定方法1は、実際のプレス成形条件に基づき摩擦係数の測定条件を決定するものである。これに対し、本発明者の検討によれば、通常のガラス光学素子のプレス成形において、成形型の離型膜上に生じる面圧は5〜80MPa程度、せん断速度は0.2mm/sec以下程度であった。そこで良否判定方法2では、上記通常のプレス成形での面圧およびせん断速度を、前記摩擦係数測定時の条件として採用して離型膜の良否判定を行う。良否判定方法1は、実際のプレス成形条件により近い条件で摩擦係数測定を行うことができるため、良否判定の信頼性の点で有利である。一方、良否判定方法2は、摩擦係数の測定条件の決定が容易であるため、簡便性の点で有利である。良否判定方法2において採用される摩擦係数測定条件は、一般的な摩擦係数測定装置で採用されない条件であるが、プレス成形時に離型膜が置かれる条件に近似している。良否判定方法2によれば、上記測定条件で得た値に基づき良否判定を行うことにより、ワレを発生しやすい離型膜であることを精度よく判定することが可能である。良否判定方法2における前記圧縮応力は、5〜80MPaの範囲であり、好ましくは10〜60MPaの範囲である。また、良否判定方法2における前記相対移動速度は0.2mm/sec以下であり、好ましくは0.1〜0.2mm/secの範囲である。その他の良否判定方法2の詳細は、先に良否判定方法1について述べた通りである。
成形型の成形面上に形成される離型膜は、バッチ式の成膜装置内で成膜を行う場合、成膜条件を同一に設定しても成膜ロット間で離型膜の性能にバラつきが生じることがある。これは、例えばスパッタ法において、成膜原料の新品使用開始時には、成膜原料表面に不純物が存在するため、この不純物を含んだものが飛ばされて離型膜に不純物が混入すること、同じ成膜原料の使用を継続していくと成膜原料を保持する基板材が飛ばされ始めてやはり離型膜に不純物が混入することなど、ターゲット(成膜原料)の変化に起因すると考えられる。このような成膜結果のバラつきは、成形される光学素子のワレの発生しやすさに影響すると考えられるが、離型膜を目視で観察することでは判別困難である。高価なスパッタ装置であれば成膜条件を一定に管理することも可能であるが、安価なスパッタ装置においては、装置冷却水の季節による温度変化等の影響により、成膜条件を一定に管理することが困難な場合がある。また、安価なスパッタ装置を使用して所望の仕様の離型膜を成膜するためには、不純物混入を回避するため、使用開始時に成膜原料を浪費させて安定化を図り、成膜終盤は成膜原料がまだ存在しているにもかかわらず次のものに交換することで対応しているが、本対応では未使用成膜原料が多くなりコスト面で不利である。
これに対し、本発明の良否判定方法によれば、成形型の成形面上に形成された離型膜が、成形される光学素子のワレが発生しやすい離型膜であることを、実際にプレス成形を行うことなく判定することができるため、ワレの発生しやすい離型膜を有する成形型を不良品として実成形から排除することができる。これにより本発明によれば、成膜原料の有効活用、成膜ロット間の不具合を簡便かつ確実に解消することができる。
[ガラス光学素子の製造方法]
本発明のガラス光学素子の製造方法は、
被成形ガラス素材を成形型に供給し、次いで供給された被成形ガラス素材を前記成形型によりプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法であって、
本発明の良否判定方法により前記成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定を行うこと、
前記判定により離型膜が良品と判定された成形型を、前記プレス成形に使用すること、
を特徴とする。
本発明のガラス光学素子の製造方法では、本発明の良否判定方法により良品と判定された成形型を使用することにより、プレス成形されるガラス光学素子のワレの発生を抑制することができる。従来、繰り返しプレス成形を行う際の光学素子のワレの発生しやすさは事前に判定することが困難であったため、実際にプレス成形を行い不良品が発生した場合には不良品を製品素子から排除することにより対応していた。しかし本対応ではガラス光学素子の不良品率を低減することは困難である。これに対し本発明によれば、プレス成形前にワレの発生しやすい成形型を排除することができるため、ガラス光学素子の不良品率を低減することが可能となる。
前記被成形ガラス素材は、球形状、扁平な球形状、平板状等の形状に予備成形されたものであることができる。但し、本発明の製造方法で用いるガラス素材はこれら形状に限定されることはない。また、熔融ガラスから所定重量を流出させて熱間成形された上記形状のガラス素材をそのままプレス成形に供することが、簡便であり経済的であるため好ましい。なお、本発明のガラス光学素子の製造方法は、成形されるガラス光学素子の形状に近似させる研磨工程などを設けることなくガラス光学素子を得る精密プレス成形法として好適であるが、プレス成形後に研削、研磨等の後工程を行いガラスガラス光学素子を得ることも可能である。
成形型の母材としては、例えば、SiC、WC、TiC、TaC、BN、TiN、AlN、Si34、SiO2、Al23 、ZrO2 、W、Ta、Mo、サーメット、サイアロン、ムライト、カーボン・コンポジット(C/C)、カーボンファイバー(CF)、WC−Co合金、結晶化ガラスを含むガラス素材、ステンレス系高耐熱性金属等から選ばれる材料が有用に使用できる。成形型の成形面に設けられる離型膜については、先に説明した通りである。
本発明のガラス光学素子の製造方法では、本発明の良否判定方法により成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定を行い、前記判定により離型膜が良品と判定された成形型を被成形ガラス素材のプレス成形に使用する。前記離型膜の良否判定の詳細は、先に説明した通りである。
前記良否判定により良品と判定された離型膜を有する成形型を使用したプレス成形は、公知の手段で行うことができる。例えば、被成形ガラス素材を成形型の上型と下型の間に導入し、被成形ガラス素材の粘度が108〜1012ポイズ相当の粘度となる温度に加熱、軟化し、これを、上下型により押圧することによって、上下型の成形面を被成形ガラス素材に転写する。または、あらかじめ、その粘度が108〜1012ポイズ相当の温度に昇温した被ガラス素材を、成形型の上型と下型の間に導入し、これを、上下型により押圧することによって、上下型の成形面を被成形ガラス素材に転写する。離型膜の酸化を防ぐため、成形時の雰囲気は、非酸化性とすることが好ましい。この後、成形型とガラス素材を冷却し、好ましくはTg以下の温度となったところで、離型し、成形された光学素子を取出すことができる。
本発明のガラス光学素子の製造方法は、レンズ、ミラー、グレーティング、プリズム、マイクロレンズ、積層型回折光学素子等の光学素子の製造に有効に適用できる。また、本発明に適用できるガラスの硝種には特に制限はない。特に、割れやすい、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ホウリン酸塩系ガラス、フツリン酸塩系ガラスなどに本発明の適用が有効である。
以下、本発明を実施例により更に説明するが、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。なお、以下に記載の摩擦係数測定は、特に断りのない限り常温(20〜25℃程度)で相対湿度60%以下の環境にて行った。
[実施例1]
(1)プレス成形時の面圧およびせん断速度の測定
凸メニスカス形状のガラスレンズを得るための成形面形状を有する成形型を使用し、予備実験として繰り返しプレス成形を行い、離型膜上で、成形された光学素子において最もワレが生じやすかった領域に対応する部分のプレス成形時の面圧を、プレス荷重をワレの発生した部位のレンズ中心からの距離から算出した面積で除することにより求め、せん断速度を、プレス軸の変位速度から算出した。その結果、面圧37MPa、せん断速度0.2mm/secであった。
(2)摩擦係数測定試料の作製
前記予備実験に使用した成形型と同一の形状を有する成形型を10個準備し、同一条件でスパッタを行い各成形型の成形面上に離型膜として炭素膜を成膜した。ただし成膜時間を変えることにより成膜される炭素膜の膜厚を変化させた。
(3)摩擦係数の測定
図5に示す摩擦係数測定装置に上記(2)で作製した試料を配置し、測定子として上記(1)でプレス成形を行った被成形ガラス素材と同一素材からなる同一形状のガラス素材を配置した。摩擦係数測定時の試料表面と測定子との相対移動速度を0.16mm/secとし、Y方向に50回繰り返し摺動した後の摩擦係数を測定することを、各試料について垂直圧縮応力を7MPa、25MPa、33MPa、50MPaまたは75MPaと変化させて行い、平均摩擦係数を算出した。各試料と同一条件で作製した成形型を使用し、測定子として使用したガラス素材と同一素材からなる同一形状のガラス素材をプレス成形する工程を100回行い凸メニスカスレンズを得た。得られたレンズにおけるワレ発生を目視で観察し、(ワレが確認されたレンズ/全レンズ)×100として、ワレ発生率を算出した。ワレの発生率と平均摩擦係数との関係を、図6に示す。
[比較例1]
市販の摩擦係数測定装置を使用した点以外は実施例1と同様の方法で、ワレの発生率と平均摩擦係数との関係を求めた。結果を図7に示す。市販の摩擦係数測定装置における試料表面と測定子との相対移動速度は10mm/secであった。垂直圧縮応力は685MPa、720MPa、1000MPaの3段階に設定可能であったため、垂直圧縮応力を685MPa、720MPaまたは1000MPaに変化させ、各試料について3回測定し平均摩擦係数を算出した。
評価結果
図6に示すように、プレス成形時の面圧およびせん断速度に基づき、面圧に近似した垂直応力およびせん断速度に近似した相対移動速度にて測定した摩擦係数は、ワレ発生率と良好な相関関係を示した。図6の結果から、例えばワレ発生率40%以下でガラスレンズを製造するために、摩擦係数0.2を基準値とし、摩擦係数0.2以下の離型膜を良品と判定することができる。
これに対し図7に示すように市販の摩擦係数測定装置では、摩擦係数の値とワレ発生率との間には相関関係が見られなかった。
以上の結果から、本発明によれば、プレス成形時の面圧およびせん断速度に基づき設定した条件により測定された摩擦係数の値を使用することにより離型膜の良否判定を行うことができることが示された。
[実施例2]
実施例1と同一ロット内で成膜を行った離型膜を有する成形型を複数準備し、実施例1と同様の方法で離型膜の摩擦係数を測定した。その後、各成形型を使用し、実施例1と同一の成形条件でプレス成形を100回行った結果、各成形型について100個のガラスレンズが得られた。得られたガラスレンズを目視で観察し、ワレの有無を判定した。ワレの発生率と離型膜の摩擦係数の値との関係を図8に示す。図8の棒グラフは平均値を表すものであり、棒グラフ先端の幅を示す線はエラーバー(誤差範囲)を示す。図8の結果から、本発明において測定される摩擦係数の値は、ワレの発生率と良好な相関関係を示すこと、実施例1で設定した摩擦係数の基準値0.2を採用して良否判定を行えばワレ発生率の低い成形型を選別できることが確認できる。
[参考例]
繰り返し摺動による摩擦係数の経時変化
同一成膜装置を使用してスパッタ法により、SiC基板上に厚さ約40nmのアモルファス炭素膜を成膜したサンプルを3つ(サンプル1〜3)、作製した。
各サンプルについて、下記条件で測定子とアモルファス炭素膜を繰り返し摺動させ摩擦係数を測定した。測定結果を図9に示す。
測定条件
圧縮応力:30MPa、せん断速度:0.16mm/sec
測定子:光学レンズ材料(ホウ酸シリケート系ガラス(HOYA(株)製硝種BACD12)
測定環境:大気下(室温、湿度約50%RH)
サンプル1〜3は、成膜ロットは異なるが同じ成膜厚さになるように同条件で成膜したサンプルである。図9に示すように各サンプルにおける摩擦係数の測定結果が異なった原因としては、成膜原料の成膜時の経時変化等が考えられる。また、各サンプルにおいて、上述したとおり、測定開始初期に摩擦係数の低下が見られる。この繰り返し摺動は、プレス成形回数に準じて設定することが好ましく、例えば、100回のプレス成形を行う仕様のものについては、少なくとも往復50回、すなわち100回の摩擦係数の測定を行なうことが好ましい。摩擦係数の測定結果においてその良否判定の基準値は、その成形型に求められる仕様に応じて設定すればよい。例えば図9に示すサンプルについては、所望のプレス回数を100回とし、最終摺動時の摩擦係数が0.2以下のものを良品と判定することが考えられる。上記判定基準によれば、図9中、サンプル1は不良品、サンプル2は実用上使用可能な良品、そして、サンプル3はきわめて良好な品質を有する良品と判定することができる。または、測定開始初期の摩擦係数の低下後の摩擦係数が0.1以下となり、それ以降の往復50回における摩擦係数の変化量(増加量)が0.1以下となるものが良品と判定することも可能である。
本発明は、ガラスレンズ等のガラス光学素子の製造分野において有用である。
1 離型膜成膜済み被測定物
2 せん断動作用Yステージ
3 測定子
4 試料支持体
5 面圧印加用Xステージ(2種/粗動、精動)
6 面圧変位板バネ
7 面圧検出用変位センサー
8 摩擦力変位板バネ
9 摩擦力検出用変位センサー
10 測定位置変更Zステージ
11 測定位置変更Yステージ

Claims (8)

  1. 被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定方法であって、
    前記離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定子のいずれか一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること、ならびに、
    前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に前記離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に前記離型膜と前記被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度に基づき決定すること、
    を特徴とする、プレス成形型の離型膜の良否判定方法。
  2. 前記測定子は、前記押圧時に前記膜に当接する部分が前記被成形ガラス素材と同じ素材からなる請求項1に記載の方法。
  3. 前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を、5〜80MPaの範囲に設定する請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、0.2mm/sec以下に設定する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定方法であって、
    前記離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定子のいずれか一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること、ならびに、
    前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を5〜80MPaの範囲に設定し、かつ前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を0.2mm/sec以下に設定すること、
    を特徴とする、プレス成形型の離型膜の良否判定方法。
  6. 前記良否判定を、繰り返し摺動後の摩擦係数の測定値、繰り返し摺動中の摩擦係数の最小値、繰り返し摺動中の摩擦係数の経時変化量が予め設定した基準値以下であるものを良品と判定し、該値を超えるものを不良品と判定することにより行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記繰り返し摺動の摺動回数を、前記プレス成形型の所望の使用回数に基づき決定する請求項6に記載の方法。
  8. 被成形ガラス素材を成形型に供給し、次いで供給された被成形ガラス素材を前記成形型によりプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法であって、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により前記成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定を行うこと、
    前記判定により離型膜が良品と判定された成形型を、前記プレス成形に使用すること、
    を特徴とする、ガラス光学素子の製造方法。
JP2009052023A 2009-03-05 2009-03-05 プレス成形型の離型膜の良否判定方法および光学素子の製造方法 Expired - Fee Related JP4994405B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009052023A JP4994405B2 (ja) 2009-03-05 2009-03-05 プレス成形型の離型膜の良否判定方法および光学素子の製造方法
CN2010101179608A CN101823833B (zh) 2009-03-05 2010-03-05 冲压成型模具的离型膜的好坏判定方法及光学元件的制造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009052023A JP4994405B2 (ja) 2009-03-05 2009-03-05 プレス成形型の離型膜の良否判定方法および光学素子の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010202476A true JP2010202476A (ja) 2010-09-16
JP4994405B2 JP4994405B2 (ja) 2012-08-08

Family

ID=42688034

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009052023A Expired - Fee Related JP4994405B2 (ja) 2009-03-05 2009-03-05 プレス成形型の離型膜の良否判定方法および光学素子の製造方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP4994405B2 (ja)
CN (1) CN101823833B (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102944513A (zh) * 2012-11-23 2013-02-27 浙江大学 一种金属塑性成形中的摩擦因子测算方法

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10606166B2 (en) 2015-06-17 2020-03-31 Hoya Corporation Substrate with electrically conductive film, substrate with multilayer reflective film, reflective mask blank, reflective mask, and method of manufacturing semiconductor device

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02199036A (ja) * 1989-01-30 1990-08-07 Hoya Corp ガラスプレス成形型の製造方法
JPH11171563A (ja) * 1997-12-16 1999-06-29 Ueno Hiroshi 耐熱性に優れた潤滑性被膜及びガラスびん成形用金型
JP2000327344A (ja) * 1999-05-17 2000-11-28 Olympus Optical Co Ltd 光学素子成形用型の製造方法及び光学素子成形用型
JP2003104737A (ja) * 2001-09-28 2003-04-09 Olympus Optical Co Ltd 光学素子成形用型およびその製造方法
JP2006016247A (ja) * 2004-07-01 2006-01-19 Nihon Yamamura Glass Co Ltd 焼付け潤滑離型剤層を有する成形用金型の製造方法
JP2006052253A (ja) * 2004-08-10 2006-02-23 Nihon Yamamura Glass Co Ltd 固体潤滑膜形成用コーティング組成物及び該コーティング組成物で被覆した金属製品
JP2006089313A (ja) * 2004-09-22 2006-04-06 Olympus Corp 可塑性素材の成形方法

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1292770A (zh) * 1999-01-05 2001-04-25 松下电器产业株式会社 光学器件用成型模具及其制造方法和光学器件
TW486438B (en) * 2000-03-09 2002-05-11 Sumitomo Rubber Ind Device and method for determining coefficient of road surface friction
JP2005239435A (ja) * 2004-02-12 2005-09-08 Hoya Corp モールドプレス成形装置及びガラス光学素子の製造方法

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02199036A (ja) * 1989-01-30 1990-08-07 Hoya Corp ガラスプレス成形型の製造方法
JPH11171563A (ja) * 1997-12-16 1999-06-29 Ueno Hiroshi 耐熱性に優れた潤滑性被膜及びガラスびん成形用金型
JP2000327344A (ja) * 1999-05-17 2000-11-28 Olympus Optical Co Ltd 光学素子成形用型の製造方法及び光学素子成形用型
JP2003104737A (ja) * 2001-09-28 2003-04-09 Olympus Optical Co Ltd 光学素子成形用型およびその製造方法
JP2006016247A (ja) * 2004-07-01 2006-01-19 Nihon Yamamura Glass Co Ltd 焼付け潤滑離型剤層を有する成形用金型の製造方法
JP2006052253A (ja) * 2004-08-10 2006-02-23 Nihon Yamamura Glass Co Ltd 固体潤滑膜形成用コーティング組成物及び該コーティング組成物で被覆した金属製品
JP2006089313A (ja) * 2004-09-22 2006-04-06 Olympus Corp 可塑性素材の成形方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102944513A (zh) * 2012-11-23 2013-02-27 浙江大学 一种金属塑性成形中的摩擦因子测算方法
CN102944513B (zh) * 2012-11-23 2014-09-17 浙江大学 一种金属塑性成形中的摩擦因子测算方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP4994405B2 (ja) 2012-08-08
CN101823833B (zh) 2013-08-14
CN101823833A (zh) 2010-09-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4842633A (en) Method of manufacturing molds for molding optical glass elements and diffraction gratings
JP4994405B2 (ja) プレス成形型の離型膜の良否判定方法および光学素子の製造方法
JP5294938B2 (ja) 膜厚測定方法およびガラス光学素子の製造方法
EP0733598B1 (en) Method and apparatus for producing optical element
JP3206845B2 (ja) 光学ガラス素子の製造方法およびこれに用いる光学ガラス素子のプレス成形用型
JP4072496B2 (ja) ガラス光学素子の製造方法
JP2005213091A (ja) ガラス光学素子の製造方法
JP2001302273A (ja) 光学ガラス素子成形用型
JP4667930B2 (ja) 光学素子の製造方法
JP2009161402A (ja) 光学素子成形用金型および光学素子の製造方法
JP4056010B2 (ja) プレス成形用ガラスプリフォームの製造方法、およびガラス光学素子の製造方法
JP4347594B2 (ja) 光学素子成形方法
JP2003048723A (ja) プレス成形方法及びプレス成形装置
JPH08143320A (ja) ガラス成形体の成形型
JP2011201738A (ja) 光学素子成形用型、並びに光学素子、及び該光学素子の製造方法
JP4494913B2 (ja) 光学素子の製造方法
JP2009067607A (ja) ガラス光学素子成形用金型、ガラス光学素子及びガラス光学素子の製造方法
JP2003146669A (ja) 情報記録ディスク用ガラス成型用金型およびこれを用いた情報記録ディスク用ガラス基板の製造方法
JPS61242922A (ja) 光学ガラス素子のプレス成形用型
JP2006256884A (ja) ガラス光学素子の製造方法
JP2009292707A (ja) 光学素子成形用の金型の製造方法、光学素子成形用の金型および光学素子の製造方法
JP2007137724A (ja) ガラス製成形型
JP4256190B2 (ja) ガラス光学素子の製造方法
JP6406939B2 (ja) アモルファス合金、成形用型及び光学素子の製造方法
JP6406940B2 (ja) アモルファス合金、成形用型及び光学素子の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110511

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110517

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110719

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120424

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120508

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150518

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees