JP2010202476A - プレス成形型の離型膜の良否判定方法および光学素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定方法。前記離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定子のいずれか一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること、ならびに、前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に前記離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に前記離型膜と前記被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度に基づき決定することを含む。
【選択図】図1
Description
更に本発明は、前記良否判定方法により離型膜の良否判定を行うことを含む光学素子の製造方法に関する。
プレス成形型と被成形素材(ガラス素材)との間に働く摩擦力が小さいほど、プレス成形時に型と成形素材との間にかかる変形応力が小さくなるため、プレス成形される光学素子のワレは抑制されると考えられる。そこで本発明者は、市販されている一般的な摩擦係数測定装置により摩擦係数を測定し、光学素子のワレの発生頻度との相関を取ろうとしたが、良好な相関関係を得ることはできなかった。この点について本発明者は、一般的な摩擦係数測定装置における測定条件が、プレス成形時に離型膜が置かれる条件と著しく異なることが、一般的な摩擦係数測定装置ではワレの発生頻度と摩擦係数との間に良好な相関関係が得られない理由であると推察した。
本発明者は、上記知見に基づき更に検討を重ねた結果、摩擦係数測定時、測定対象の膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ測定対象の膜と測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に離型膜と被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度に基づき決定することにより、測定される摩擦係数の値とワレの発生との間に良好な相関関係が成立することを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
[1]被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定方法であって、
前記離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定子のいずれか一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること、ならびに、
前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に前記離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に前記離型膜と前記被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度に基づき決定すること、
を特徴とする、プレス成形型の離型膜の良否判定方法。
[2]前記測定子は、前記押圧時に前記膜に当接する部分が前記被成形ガラス素材と同じ素材からなる[1]に記載の方法。
[3]前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を、5〜80MPaの範囲に設定する[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、0.2mm/sec以下に設定する[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定方法であって、
前記離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定子のいずれか一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること、ならびに、
前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を5〜80MPaの範囲に設定し、かつ前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を0.2mm/sec以下に設定すること、
を特徴とする、プレス成形型の離型膜の良否判定方法。
[6]前記良否判定を、繰り返し摺動後の摩擦係数の測定値、繰り返し摺動中の摩擦係数の最小値、繰り返し摺動中の摩擦係数の経時変化量が予め設定した基準値以下であるものを良品と判定し、該値を超えるものを不良品と判定することにより行う[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記繰り返し摺動の摺動回数を、前記プレス成形型の所望の使用回数に基づき決定する[6]に記載の方法。
[8]被成形ガラス素材を成形型に供給し、次いで供給された被成形ガラス素材を前記成形型によりプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法であって、
[1]〜[7]のいずれかに記載の方法により前記成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定を行うこと、
前記判定により離型膜が良品と判定された成形型を、前記プレス成形に使用すること、
を特徴とする、ガラス光学素子の製造方法。
本発明のガラス光学素子の製造方法によれば、良否判定の結果、良品と判定された良好な離型膜を有するプレス成形型を使用することにより、プレス成形による生産性向上および不良品率低減による生産コストの抑制を達成することができる。
本発明は、
被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定方法であって、
前記離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定子のいずれか一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること、ならびに、
前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に前記離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に前記離型膜と前記被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度に基づき決定すること、
を特徴とする、プレス成形型の離型膜の良否判定方法(以下、「良否判定方法1」という)に関する。以下において、良否判定方法1と後述する良否判定方法2をまとめて、本発明の良否判定方法ということもある。
以下、前記工程の詳細を順次説明する。
本工程における摩擦係数測定対象は、良否判定対象となる離型膜そのものであってもよく、前記離型膜と同一条件で成膜された膜(以下、「サンプル膜」ともいう)であってもよい。前記離型膜としては特に制限はなく、プレス成形型の成形面上に離型性向上を目的として設けられる各種被膜を挙げることができる。そのような被膜としては、例えば、ダイヤモンド状炭素膜、水素化ダイヤモンド状炭素膜、テトラヘドラルアモルファス炭素膜、水素化テトラヘドラルアモルファス炭素膜、アモルファス炭素膜、水素化アモルファス炭素膜、窒素を含有するカーボン膜等の炭素系膜、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、タングステン(W)、およびタンタル(Ta)から選ばれる少なくとも一つの金属を含む合金膜等を挙げることができる。これら離型膜の膜厚は特に限定されるものではない。また、離型膜の成膜には、DC−プラズマCVD法、RF−プラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、ECR−プラズマCVD法、光CVD法、レーザーCVD法等のプラズマCVD法、イオンプレーティング法などのイオン化蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、蒸着法やFCA(Filtered Cathodic Arc)法等の手法を用いることができる。
例えばスパッタリング法による成膜では、図2に示すように、プレス成形型を、成膜材料(ターゲット)と対向するように成膜装置内に配置し、装置内を真空引きした後、アルゴン等のスパッタガスで装置内を所定の圧力に保持した状態で、直流または交流電場をスパッタガスに印加することでプレス成形型の成形面上に離型膜が成膜される。ここで図2に示すように、成膜装置内にプレス成形型とともにサンプル基材を配置しておくことにより、サンプル基材表面にサンプル膜を形成することができる。サンプル基材としては、プレス成形型と同一形状を有する基材であってもよく、平板等の任意形状の基材であってもよい。後述する摩擦係数測定の容易性の点からは、表面が平面であるサンプル基材を用いることが好ましい。サンプル基材表面上には、プレス成形型と被膜(離型膜)の品質、厚さ等が同等の被膜が成膜されることが、良否判定の信頼性の点から望ましい。この観点からは、実成膜に先立ち予備実験を行うことにより、図3に示すように、予めサンプル基材を配置する領域(規定成膜領域)を決定しておくことが好ましい。例えば、成膜される被膜の膜厚分布が10%以下になる領域を規定成膜領域と設定することができる。
摩擦係数=摩擦力/圧縮荷重
として測定される。良否判定方法1では、前記押圧時に測定対象膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ測定対象膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に離型膜と被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度に基づき決定する。以下、この点について更に詳細に説明する。
(1)一般的な摩擦係数測定装置において被測定対象物に印加される荷重によって生じる圧縮応力、即ち面圧が、プレス成形時に離型膜に生じる面圧と比べて著しく大きいこと、および、
(2)一般的な摩擦係数測定装置における被測定対象物と測定子との摺動時の相対移動速度が、プレス成形時に前記離型膜と前記被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度と比べて著しく大きいこと、
が、一般的な摩擦係数測定装置ではワレの発生頻度と摩擦係数との間に良好な相関関係が得られない理由であると推察した。本発明者の検討によれば、通常のプレス成形時に離型膜上に生じる面圧は5〜80MPa程度、せん断速度は0.2mm/sec以下程度であった。これに対し、一般的な摩擦係数測定装置において測定対象面に加わる垂直圧縮応力は、最小でも685MPa以上、測定対象面と測定子との摺動時の相対移動速度は最低でも10mm/sec以上であり、プレス成形時に離型膜が置かれる条件と著しく相違する。
そこで前述のように、本発明の良否判定方法では、前記押圧時に測定対象膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ測定対象膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に離型膜と被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度に基づき決定する。こうして測定される摩擦係数とワレの発生頻度との間には良好な相関関係が成立し得るため、摩擦係数の測定結果に基づき、離型膜の良否判定を行うことが可能となる。
摩擦力発生手段は、最表面に測定対象膜を有する試料を固定保持する試料保持台の役割と、試料を任意方向に移動させる移動台の役割を果たす。例えば、測定対象面に測定子が押圧された状態で、試料を測定対象面に対して水平方向(図5中のY方向)に移動させることにより、摩擦力を発生させることができる。摩擦力発生手段を、任意方向、例えば図5中のY方向に往復移動可能な構成とすることにより、測定対象面上で測定子を繰り返し摺動させることができる。図5に示す装置では、試料支持体4に固定保持された離型膜成膜済み被測定物1の測定対象面に測定子3が押圧された状態で、せん断動作用Yステージ2をY方向に往復移動する動作を繰り返すことにより、測定対象面上で測定子を繰り返し摺動させることができる。または、せん断動作用Yステージ2の往復移動によらず、測定子3を往復移動させることにより、測定対象面上で測定子を繰り返し摺動させることも可能である。
圧縮荷重発生手段は、任意方向、例えば図5中のX方向に往復移動可能な構成を有することにより、測定子3を測定対象面に押圧させること、または押圧を解除することができる。測定子の位置調整のため、粗移動と微調整用の2段式の構成とすることも可能である。例えば図5に示す装置では、上方の面圧印加用Xステージ5が精動(微調整用)ステージであり、下方の面圧印加用Xステージ5が粗動(粗移動用)ステージである。
また、測定対象膜と測定子との摺動時の相対移動速度はサーボモーター等を用いることで、その値を制御することが出来る。
以上により、摩擦係数測定装置の動作状態と、測定対象面に加わる垂直圧縮応力および発生する摩擦力との相関データを得ることができる。
摩擦係数=算出された摩擦力/測定された垂直圧縮応力
良否判定方法1では、こうして得られた摩擦係数に基づき、プレス成形に使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定を行う。良否判定のために、摩擦係数の測定に先立ち、良否判定の基準値を予め設定しておく。基準値の設定のためには、例えば以下の予備実験を行うことができる。なお、摩擦係数測定時の温湿度条件が常温で相対湿度60%以下であれば、測定値に与える影響は極僅かである。したがって、本発明において、摩擦係数測定工程は、基準値設定のための予備実験と同じ温湿度環境で行うことは必須ではない。
(1)離型膜と測定子とを繰り返し摺動させた後の摩擦係数の測定値と光学素子のワレの発生頻度との相関関係を求める予備実験を行う。この予備実験の結果に基づき、繰り返し摺動後の摩擦係数の測定値について、良否判定の基準値を決定する。
(2)離型膜と測定子とを繰り返し摺動させた後に繰り返し摺動中の摩擦係数の最小値と光学素子のワレの発生頻度との相関関係を求める予備実験を行う。この予備実験の結果に基づき繰り返し摺動中の摩擦係数の最小値について、良否判定の基準値を決定する。
(3)離型膜と測定子とを繰り返し摺動させた後に繰り返し摺動中の摩擦係数の経時変化量と光学素子のワレの発生頻度との相関関係を求める予備実験を行う。この予備実験の結果に基づき繰り返し摺動後の摩擦係数の経時変化量について、良否判定の基準値を決定する。
被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定方法であって、
前記離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定子のいずれか一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること、ならびに、
前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を5〜80MPaの範囲に設定し、かつ前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を0.2mm/sec以下に設定すること、
を特徴とする、プレス成形型の離型膜の良否判定方法(以下、「良否判定方法2」という)
に関する。
これに対し、本発明の良否判定方法によれば、成形型の成形面上に形成された離型膜が、成形される光学素子のワレが発生しやすい離型膜であることを、実際にプレス成形を行うことなく判定することができるため、ワレの発生しやすい離型膜を有する成形型を不良品として実成形から排除することができる。これにより本発明によれば、成膜原料の有効活用、成膜ロット間の不具合を簡便かつ確実に解消することができる。
本発明のガラス光学素子の製造方法は、
被成形ガラス素材を成形型に供給し、次いで供給された被成形ガラス素材を前記成形型によりプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法であって、
本発明の良否判定方法により前記成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定を行うこと、
前記判定により離型膜が良品と判定された成形型を、前記プレス成形に使用すること、
を特徴とする。
(1)プレス成形時の面圧およびせん断速度の測定
凸メニスカス形状のガラスレンズを得るための成形面形状を有する成形型を使用し、予備実験として繰り返しプレス成形を行い、離型膜上で、成形された光学素子において最もワレが生じやすかった領域に対応する部分のプレス成形時の面圧を、プレス荷重をワレの発生した部位のレンズ中心からの距離から算出した面積で除することにより求め、せん断速度を、プレス軸の変位速度から算出した。その結果、面圧37MPa、せん断速度0.2mm/secであった。
前記予備実験に使用した成形型と同一の形状を有する成形型を10個準備し、同一条件でスパッタを行い各成形型の成形面上に離型膜として炭素膜を成膜した。ただし成膜時間を変えることにより成膜される炭素膜の膜厚を変化させた。
図5に示す摩擦係数測定装置に上記(2)で作製した試料を配置し、測定子として上記(1)でプレス成形を行った被成形ガラス素材と同一素材からなる同一形状のガラス素材を配置した。摩擦係数測定時の試料表面と測定子との相対移動速度を0.16mm/secとし、Y方向に50回繰り返し摺動した後の摩擦係数を測定することを、各試料について垂直圧縮応力を7MPa、25MPa、33MPa、50MPaまたは75MPaと変化させて行い、平均摩擦係数を算出した。各試料と同一条件で作製した成形型を使用し、測定子として使用したガラス素材と同一素材からなる同一形状のガラス素材をプレス成形する工程を100回行い凸メニスカスレンズを得た。得られたレンズにおけるワレ発生を目視で観察し、(ワレが確認されたレンズ/全レンズ)×100として、ワレ発生率を算出した。ワレの発生率と平均摩擦係数との関係を、図6に示す。
市販の摩擦係数測定装置を使用した点以外は実施例1と同様の方法で、ワレの発生率と平均摩擦係数との関係を求めた。結果を図7に示す。市販の摩擦係数測定装置における試料表面と測定子との相対移動速度は10mm/secであった。垂直圧縮応力は685MPa、720MPa、1000MPaの3段階に設定可能であったため、垂直圧縮応力を685MPa、720MPaまたは1000MPaに変化させ、各試料について3回測定し平均摩擦係数を算出した。
図6に示すように、プレス成形時の面圧およびせん断速度に基づき、面圧に近似した垂直応力およびせん断速度に近似した相対移動速度にて測定した摩擦係数は、ワレ発生率と良好な相関関係を示した。図6の結果から、例えばワレ発生率40%以下でガラスレンズを製造するために、摩擦係数0.2を基準値とし、摩擦係数0.2以下の離型膜を良品と判定することができる。
これに対し図7に示すように市販の摩擦係数測定装置では、摩擦係数の値とワレ発生率との間には相関関係が見られなかった。
以上の結果から、本発明によれば、プレス成形時の面圧およびせん断速度に基づき設定した条件により測定された摩擦係数の値を使用することにより離型膜の良否判定を行うことができることが示された。
実施例1と同一ロット内で成膜を行った離型膜を有する成形型を複数準備し、実施例1と同様の方法で離型膜の摩擦係数を測定した。その後、各成形型を使用し、実施例1と同一の成形条件でプレス成形を100回行った結果、各成形型について100個のガラスレンズが得られた。得られたガラスレンズを目視で観察し、ワレの有無を判定した。ワレの発生率と離型膜の摩擦係数の値との関係を図8に示す。図8の棒グラフは平均値を表すものであり、棒グラフ先端の幅を示す線はエラーバー(誤差範囲)を示す。図8の結果から、本発明において測定される摩擦係数の値は、ワレの発生率と良好な相関関係を示すこと、実施例1で設定した摩擦係数の基準値0.2を採用して良否判定を行えばワレ発生率の低い成形型を選別できることが確認できる。
繰り返し摺動による摩擦係数の経時変化
同一成膜装置を使用してスパッタ法により、SiC基板上に厚さ約40nmのアモルファス炭素膜を成膜したサンプルを3つ(サンプル1〜3)、作製した。
各サンプルについて、下記条件で測定子とアモルファス炭素膜を繰り返し摺動させ摩擦係数を測定した。測定結果を図9に示す。
測定条件
圧縮応力:30MPa、せん断速度:0.16mm/sec
測定子:光学レンズ材料(ホウ酸シリケート系ガラス(HOYA(株)製硝種BACD12)
測定環境:大気下(室温、湿度約50%RH)
2 せん断動作用Yステージ
3 測定子
4 試料支持体
5 面圧印加用Xステージ(2種/粗動、精動)
6 面圧変位板バネ
7 面圧検出用変位センサー
8 摩擦力変位板バネ
9 摩擦力検出用変位センサー
10 測定位置変更Zステージ
11 測定位置変更Yステージ
Claims (8)
- 被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定方法であって、
前記離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定子のいずれか一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること、ならびに、
前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を、プレス成形時に前記離型膜上に生じる面圧に基づき決定し、かつ前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、プレス成形時に前記離型膜と前記被成形ガラス素材との界面に生じるせん断速度に基づき決定すること、
を特徴とする、プレス成形型の離型膜の良否判定方法。 - 前記測定子は、前記押圧時に前記膜に当接する部分が前記被成形ガラス素材と同じ素材からなる請求項1に記載の方法。
- 前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を、5〜80MPaの範囲に設定する請求項1または2に記載の方法。
- 前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を、0.2mm/sec以下に設定する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 被成形ガラス素材をプレス成形するために使用されるプレス成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定方法であって、
前記離型膜または前記離型膜と同一条件で成膜された膜に測定子を押圧した状態で、該膜または該測定子のいずれか一方を他方に対して摺動させることにより摩擦係数を測定すること、および、測定された摩擦係数が予め設定した基準値以下であれば前記離型膜を良品と判定し、該基準値を超える値であれば前記離型膜を不良品と判定することにより、前記離型膜の良否を判定すること、ならびに、
前記押圧時に前記膜に加わる圧縮応力を5〜80MPaの範囲に設定し、かつ前記膜と前記測定子との摺動時の相対移動速度を0.2mm/sec以下に設定すること、
を特徴とする、プレス成形型の離型膜の良否判定方法。 - 前記良否判定を、繰り返し摺動後の摩擦係数の測定値、繰り返し摺動中の摩擦係数の最小値、繰り返し摺動中の摩擦係数の経時変化量が予め設定した基準値以下であるものを良品と判定し、該値を超えるものを不良品と判定することにより行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記繰り返し摺動の摺動回数を、前記プレス成形型の所望の使用回数に基づき決定する請求項6に記載の方法。
- 被成形ガラス素材を成形型に供給し、次いで供給された被成形ガラス素材を前記成形型によりプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法であって、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により前記成形型の成形面上に成膜された離型膜の良否判定を行うこと、
前記判定により離型膜が良品と判定された成形型を、前記プレス成形に使用すること、
を特徴とする、ガラス光学素子の製造方法。
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