JP5294938B2 - 膜厚測定方法およびガラス光学素子の製造方法 - Google Patents

膜厚測定方法およびガラス光学素子の製造方法 Download PDF

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本発明は、基材上に形成された被膜の膜厚測定方法に関する。
更に本発明は、前記膜厚測定方法を使用するガラス光学素子の製造方法に関する。
レンズ等のガラスよりなる光学素子を製造する方法として、プレス成形で直接に光学機能面を形成する精密プレス成形法が知られている。精密プレス成形法は、予備成形した成形用ガラス素材(以下、「ガラスプリフォーム」ともいう)を成形型内に投入し、加熱軟化した状態でプレス成形することによりガラス光学素子を得るものである。精密プレス成形法は、精密に加工された成形型を用いることでプレス成形後の研磨加工等の後加工を不要とすることができるため、安価に高性能のガラスレンズを得ることができる。
しかしながら、精密プレス成形法では、プレス成形時にガラスプリフォームと成形型の成形面とが高温状態下で密着するため、それらの界面で化学反応が生じることにより融着が発生するおそれがある。
そこで、ガラスプリオームと成形型との融着を防止するため、ガラスプリフォーム表面に炭素膜等の薄膜を設けることが提案されている(特許文献1〜3参照)。しかし、前記薄膜の厚さが所定の厚さに満たないと、ガラスプリフォームと成形型との融着を満足に防止できず、成形したガラスレンズにワレ(プレス成形時に生じる成形品の割れ)が発生するおそれがある。また、前記薄膜の厚さが過度に厚くなると、成形されたガラスレンズの成形型に対する収縮率、換言すれば、ガラスレンズの曲率に影響を及ぼしてしまい、プレス成形により得られた光学素子の形状が設計値から大きくずれる、薄膜とガラスプリフォームとの反応性が急激に高くなりクモリが発生し外観を著しく悪化させる等の問題がある。
以上のように、精密プレス成形法において、ガラスプリフォーム上に成膜された薄膜は、その膜厚により成形された光学素子の種々の特性に大きく影響すると言える。換言すれば、ガラスプリフォーム上に成膜された薄膜の膜厚を管理、評価することにより、精密プレス成形により製造される光学素子を高品質、低コストで得ることができる。また、上記分野に限らず、基材上に形成された被膜の膜厚を管理、評価することは、品質管理、工程管理等の観点から重要である。
一般に、薄膜の膜厚を評価(測定)する方法としては、AFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)による段差測定、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光)やTOF−SIMS(Time Of Flight-Secondary Ion Mass Spectrometry:飛行時間型二次イオン質量分析計)による深さ方向のスペクトル解析、エリプソメーターや光透過率による光学的手法が知られている。また、近年、可視光領域における反射率スペクトルから炭素系薄膜であるDLC(Diamond Like Carbon)膜の膜厚を計測すること(特許文献4参照)、赤外線吸収を利用して炭素膜の膜厚を評価すること(特許文献5参照)、反射率の実測値と予測される反射率とから薄膜の膜厚を決定すること(特許文献6参照)も提案されている。
特開平8−217468号公報 特開平8−259241号公報 特開平9−286625号公報 特開2000−251250号公報 特開2006−242721号公報 特開2000−46525号公報
しかし、AFMは、ガラスプリフォーム表面が曲面形状であることや帯電性の影響、さらには破壊検査であることからガラスプリフォーム表面に成膜された炭素薄膜の膜厚を評価・管理するには不適である。また、XPS、TOF−SIMSは、AFMと同様の課題がある上、測定に長時間を要するため簡易な手法でない。
エリプソメーターは、非破壊かつ短時間で計測することができるが、AFM、XPS、TOF−SIMSと同様に、測定面の形状に制限がある上、被成膜面がガラスプリフォームのように光を透過する場合は膜厚を測定することができない。また、光透過率法はガラスプリフォーム内部における光の吸収およびその表面が球面形状であることに起因するレンズ効果の影響によりガラスプリフォーム表面に成膜された炭素薄膜の膜厚を評価することが不可能である。
特許文献4に記載の方法は、得られた反射率スペクトルの波長300〜550nmにおける反射率が極小値となる波長と膜厚の関係からDLC膜の厚さを算出するものである。そのため、反射率の極性値が上記波長領域に存在しない場合、膜厚を測定することが不可能である。
特許文献5に記載の方法は、加熱機構による温度上昇手段が平坦面に対して均一な熱量を供給できる場合に限られている上に、その膜厚が数十μm以上必要であるため、ガラスプリフォーム表面に成膜されたサブナノメーターから数十ナノメーターオーダーの炭素薄膜の膜厚を評価(測定)することは不可能である。
一方、特許文献6には、従来の技術として、成膜前後の反射率の違いから膜厚を算出する方法が開示されている。上記方法は、ハロゲンランプから照射された可視光領域の光に対する反射率を分光光度計により波長毎に検出してフィッティングを行うものである。しかしハロゲンランプおよび分光光度計は高価であるため、特許文献6では、安価な装置により膜厚を測定する方法として、複数の半導体発光素子で異なる波長の光を照射し、検出値をフィッティングする方法を提案している。しかしながら、この方法は、複数の反射率の実測値と予測値の間でフィッティングを行うものであり、理論反射率との比較であるために、その算出誤差により数nm程度の膜厚差異を議論することが困難となる。また、フィッティングを行う方法は、大凡の膜厚が分かっていない場合には膜厚算出に長時間を要するという課題もある。
上記の通り、従来の膜厚測定方法は、簡便な測定が困難である、適用可能な被膜に制限があり汎用性に乏しい等の課題があった。
かかる状況下、本発明は、基材上に形成された被膜の膜厚を簡便に測定することができる、汎用性に優れた膜厚測定方法を提供することを目的としてなされたものである。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ね、単一波長の光に対する反射率変化と基材上の被膜の膜厚との間に良好な相関関係が成り立つとの新たな知見を得、この知見に基づき更に検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]基材上に形成された被膜の膜厚測定方法であって、
波長λnmの光に対して表面反射率R0を有するテスト用基材上にテスト用被膜を形成し、該テスト用被膜の前記波長λnmの光に対する表面反射率R'を測定することを、前記テスト用被膜の膜厚を変化させて2回以上行うことにより、前記テスト用被膜の膜厚と表面反射率変化量(R'−R0)との関係式を導出すること、
膜厚測定対象の被膜の前記波長λnmの光に対する表面反射率Rを測定し、該表面反射率Rと前記テスト用基材の表面反射率R0との差分(R−R0)を前記表面反射率変化量として前記関係式に適用することにより、前記膜厚測定対象の被膜の膜厚を求めること、
含み、
前記膜厚測定対象の被膜が形成された基材は、ガラスからなり、
前記膜厚測定対象の被膜は、0.4〜6nmの範囲の膜厚を有する炭素含有膜であり、かつ、
前記関係式は、前記膜厚と前記表面反射率変化量(R'−R 0 )との間に相関係数の二乗R 2 が0.6以上の関係が成立する一次関数である、基材上に形成された被膜の膜厚測定方法。
[2]前記テスト用被膜の形成を、前記膜厚測定対象の被膜と同一材料を使用し、かつ同一成膜法を使用して行う[1]に記載の基材上に形成された被膜の膜厚測定方法。[3]前記膜厚測定対象の被膜が形成された基材は、前記テスト用基材と同一材料からなる[1]または[2]に記載の基材上に形成された被膜の膜厚測定方法。
]前記波長λnmは、400〜750nmの範囲である[1]〜[]のいずれかに記載の基材上に形成された被膜の膜厚測定方法。
]前記差分(R−R0)は、0.01以上である[1]〜[]のいずれかに記載の基材上に形成された被膜の膜厚測定方法
[6]前記炭素含有膜の炭素含有率は、65原子%以上である[1]〜[5]のいずれかに記載の基材上に形成された被膜の膜厚測定方法
]前記膜厚測定対象の被膜が形成された基材表面は、平面または曲面形状である[1]〜[]のいずれかに記載の基材上に形成された被膜の膜厚測定方法。
]予備成形され、かつ表面に被膜を有するガラス素材を加熱軟化した状態でプレス成形することにより、成形型の成形面を転写する工程を含むガラス光学素子の製造方法であって、
前記被膜の膜厚を[1]〜[]のいずれかに記載の方法によって測定し、測定された膜厚が予め設定した基準範囲内であったガラス素材を、前記プレス成形に付すことを特徴とするガラス光学素子の製造方法。
]予備成形され、かつ表面に被膜を有するガラス素材を複数含むガラス素材ロットを準備する工程と、
前記ロットから少なくとも1つのガラス素材を抽出する工程と、
前記抽出されたガラス素材表面の被膜の膜厚を[1]〜[]のいずれかに記載の方法によって測定する工程と、
前記測定された膜厚が予め設定した基準範囲内であったガラス素材と同一ロット内のガラス素材を加熱軟化した状態でプレス成形することにより、成形型の成形面を転写する工程と、
を含むガラス光学素子の製造方法。
本発明によれば、基板上に形成された被膜の膜厚を、非破壊で容易に測定することができる。
実施例1における反射率変化量と炭素薄膜の膜厚との関係を示す。 実施例1において算出された炭素薄膜の膜厚と成膜時間との関係を示す。 実施例2における反射率変化量と炭素薄膜の膜厚との関係を示す。 実施例2において算出された炭素薄膜の膜厚とAFMによる膜厚測定値との関係を示す。 参考例1で得られた反射率スペクトルである。 実施例3においてプリフォーム上に形成された炭素薄膜の膜厚分布を示す。 実施例4においてプリフォーム上に形成された炭素薄膜の膜厚分布を示す。
[膜厚測定方法]
本発明は、基材上に形成された被膜の膜厚測定方法(以下、「膜厚測定方法」または「測定方法」ともいう)に関する。
本発明の測定方法は、
(1)波長λnmの光に対して表面反射率R0を有するテスト用基材上にテスト用被膜を形成し、該テスト用被膜の前記波長λnmの光に対する表面反射率R’を測定することを、前記テスト用被膜の膜厚を変化させて2回以上行うことにより、前記テスト用被膜の膜厚と表面反射率変化量(R’−R0)との関係式を導出すること(以下、「関係式導出工程」という)、
(2)膜厚測定対象の被膜(以下、「測定対象被膜」ともいう)の前記波長λnmの光に対する表面反射率Rを測定し、該表面反射率Rと前記テスト用基材の表面反射率R0との差分(R−R0)を前記表面反射率変化量として前記関係式に適用することにより、前記膜厚測定対象の被膜の膜厚を求めること(以下、「膜厚算出工程」という)、
を含むものである。
以下、各工程の詳細を順次説明する。
関係式導出工程
本工程では、波長λnmの光に対して表面反射率R0を有するテスト用基材上にテスト用被膜を形成し、該テスト用被膜の前記波長λnmの光に対する表面反射率R’を測定することを、前記テスト用被膜の膜厚を変化させて2回以上行う。これにより、膜厚既知のテスト被膜の厚さと表面反射率変化量(R’−R0)との関係をグラフ上で2点以上プロットすることができるため、このグラフを、例えば最小二乗法によってフィッティングすることにより、テスト用被膜の膜厚と表面反射率変化量(R’−R0)との関係式を一次関数として求めることができる。こうして求められた関係式は、後述する膜厚算出工程において、膜厚未知の被膜についての膜厚と反射率との検量線として用いることができる。前述の特許文献6記載の方法では、複数の波長毎に反射率を検出してフィッティングを行う必要があるのに対し、本発明では単一波長の光に対する反射率のみを使用するため簡便であり、しかもフィッティング誤差がきわめて少ないため信頼性の高い測定を行うことが可能である。
未成膜状態のテスト用基材および各テスト用被膜の表面反射率測定は、干渉光分光法によって反射率測定が可能である装置、具体的には、光投影手段と反射光受光手段とその解析手段とを有し、照射された光に対する被測定面の反射率特性を検出・解析可能な反射率測定装置によって行うことができる。反射率測定装置は、対物レンズで照射光を微小スポット(例えばφ60μm程度)にすることができるものが、被測定面が曲面であっても照射光を垂直に反射させることができるため、被測定面の形状を問わず反射率の測定が可能であり好ましい。また、被測定面以外からの光である反射光、例えば、裏面反射光をカットできる装置であれば、被測定面のみの反射率を正確に測定できるため好ましい。更に、フラットフィールドグレーディング(回折格子)およびラインセンサを備える装置であれば、高速測定が可能である。そのような装置としては、例えばオリンパス社製USPM−RU、渋谷光学社製SBFM−R等を挙げることができる。
未成膜状態のテスト用基材および各被膜の波長λnmの光に対する表面反射率は、反射率測定により得られた反射率スペクトルにおいて、波長λnmにおける反射率を読み取ることにより求めることができる。前記波長λnmは、特に限定されるものではないが、一般的な反射率測定装置で測定可能な可視光領域にあることが好ましく、具体的には400〜750nmの範囲にあることが好ましい。
本発明において信頼性の高い測定を行うためには、テスト用被膜の形成は、後述の膜厚算出工程で膜厚を求める測定対象被膜と同一材料を使用し、かつ同一成膜法を使用して行うことが好ましい。成膜材料、成膜方法の詳細は後述する。
テスト用被膜の膜厚と表面反射率変化量(R’−R0)との関係式を導出するためには、少なくとも2点のプロットを要する。したがって、本工程では、テスト用被膜の形成から表面反射率測定までの操作は、テスト用被膜の膜厚を変化させて2回以上行う。測定精度を高めるためには、上記操作を3〜4回、またはそれ以上行うことが好ましい。
テスト用基材上に形成されたテスト用被膜の膜厚と表面反射率変化量との関係式を導出するためには、テスト用被膜の膜厚の値が必要である。成膜時に設定した膜厚を、上記関係式導出のための膜厚として使用することも可能であるが、測定精度を高めるためには、テスト用被膜の膜厚を測定することが好ましい。テスト用被膜の膜厚測定は、AFM、XPS等の公知の膜厚測定手段によって行うことができる。前述のように、AFM、XPS等は曲面形状の表面上に形成された被膜の膜厚測定手段としては不適である。したがって、上記公知の膜厚測定手段によって膜厚測定を行うためには、テスト用基材は表面が平面であることが好ましい。
以上により、各テスト用被膜について、膜厚の値および表面反射率変化量(R’−R0)の値が求められる。次いで、例えば縦軸を膜厚、横軸を表面反射率変化量(R’−R0)とするグラフに各値をプロットしたうえで、最小二乗法等によりフィッティングを行うことによって、テスト用被膜の膜厚と表面反射率変化量(R’−R0)との関係式を一次関数、具体的には、下記式1として求めることができる。
式1 表面反射率変化量(R’−R0)=a×膜厚−b
[式1中、aおよびbは、それぞれフィッティングにより求められる定数である。]
統計学的には、一般に2つの変数の関連性の強さを示す指標として、相関係数が用いられ、相関係数の二乗R 2 の範囲に対する相関の強さは以下の様に示されている。
0〜0.2ほとんど相関なし
0.2〜0.4やや相関あり
0.4〜0.7かなりの相関あり
0.7〜1強い相関あり
相関係数の二乗R 2 0.4以上で、2つの変数に関連性があると言える。通常、0.6未満の相関係数の二乗R 2 であった場合には"実験手法に問題がある"と経験的に判定されることが多い。ただし、"相関係数の二乗R 2 0.6以上"とは経験的な値であり、統計学的視点からは0.4以上でも問題がないと言える。本発明では、上記一次関数において、膜厚と表面反射率変化量(R'−R0)との間に、相関係数の二乗R 2 0.6以上の関係が成立する
膜厚算出工程
本工程は、前述の関係式導出工程において得られた関係式を検量線として、反射率測定という簡便な手段によって膜厚未知の被膜の膜厚を求める工程である。測定対象被膜の波長λnmの光に対する表面反射率Rの測定は、前述と同様に行うことができる。そして、測定された表面反射率Rと前記テスト用基材の表面反射率R0との差分(R−R0)を、関係式導出工程において導出された関係式に前記表面反射率変化量、即ち(R’−R0)として適用することにより、測定対象被膜の膜厚を算出することができる。前記差分(R−R0)が大きいほど反射率測定の誤差が少なく高感度化が可能である。この観点から、前記差分(R−R0)は0.01以上であることが好ましく、0.1以上であることが更に好ましい。測定対象被膜および基材の材質にもよるが、通常の基材と被膜との組み合わせであれば、0.4nm以上の膜厚であれば前記好ましい差分となり得るため、本発明は膜厚0.4nm以上の被膜の膜厚測定方法として適用することが好ましい。また、測定精度の観点からは、膜厚40nm以下の被膜に対して本発明の測定方法を適用することが好ましい。高感度・高精度測定の観点からは、膜厚0.4〜20nmの被膜に対して、本発明の測定方法を適用することが好ましい。本発明の測定方法によれば、上記ナノメーターオーダーの膜厚測定が可能である。
なお、測定対象被膜が形成される基材は、波長λnmの光に対する表面反射率が、テスト用基材と同一であるものが好ましく、この点からテスト用基材と同一材料からなるものであることが好ましい。ただし、測定対象被膜が形成される基材が、テスト用基材とは波長λnmの光に対する表面反射率が異なる場合には、前記関係式に表面反射率の違いを補正する補正値を適用すれば、信頼性の高い測定を行うことが可能である。
本発明によれば、以上説明した関係式導出工程と膜厚算出工程を実施することにより、各種基材上に形成された膜厚未知の被膜の膜厚を測定することができる。
次に、本発明の測定方法の具体的態様および好ましい態様について説明する。
本発明の測定方法は、基材の材質および形状、被膜の材質および膜厚を問わず適用可能である。例えば基材としては、ガラス、金属、プラスチック等の各種材料からなる基材を挙げることができ、被膜としては、炭素系被膜、金属窒化物系被膜、金属炭化物系被膜等の各種被膜を挙げることができる。測定対象被膜は、蒸着法、スパッタ法、またはイオンプレーティング法等の成膜法により形成されたものであることができる。なお、前述のように、テスト用被膜は、測定対象被膜と同一材料および同一成膜法を使用して形成されたものであることが、測定精度の点から好ましい。ここで「同一材料」とは、例えば同一組成を有する成膜材料をいい、「同一成膜法」とは同種の成膜法であることをいい、同一成膜条件であることまでを求めるものではない。ただし、信頼性の高い測定を行うためには、テスト用被膜は、測定対象被膜と同一成膜条件で成膜されたものであることが好ましい。
反射率測定においては、前述のように微小スポットでの測定が可能である。したがって、反射率測定を利用する本発明の測定方法は、平面形状、曲面形状等の各種形状の基材上に形成された被膜の膜厚を測定することができる。したがって、本発明の測定方法によれば、AFM、XPS等では測定が困難であった、予備成形されたガラス素材(ガラスプリフォーム)上に成膜された炭素含有膜等の薄膜の膜厚を測定することが可能である。
以下に、本発明の測定方法が適用可能なガラスプリフォームおよび該プリフォーム上の薄膜について説明する。ただし本発明の測定方法は、以下に示す態様に限定されるものではない。
ガラスプリフォームの形状は、例えば、球面形状や扁平な球状等の曲面形状または平板状等であるが、上記の通りその形状は特に限定されるものではない。ガラスプリフォーム表面の薄膜は、蒸着法、スパッタ法、またはイオンプレーティング法等の成膜法により形成することができる。
ガラスプリフォーム上の薄膜としては、炭素含有膜、金属窒化物膜、金属炭化物膜等が知られている。本発明の測定方法は、上記いずれの膜に対しても適用可能であるが、ガラス表面との反射率の違いが大きく高精度の測定が可能であるため、炭素含有被膜が好適である。炭素含有膜は、炭素以外に水素等の他の物質が含まれていてもよいが、ガラス表面との反射率差の点からは、炭素含有率が65原子%以上であることが好ましく、80原子%以上であることがより好ましく、80〜100原子%であることが更に好ましい。なお、前記炭素含有膜中の炭素の存在状態は特に限定されるものではなく、グラファイトカーボンのみであってもアモルファスカーボンのみであっても両者を含むものであってもよい。上記炭素含有膜の膜厚は、前述のように、0.4nm以上、40nm以下であることが好ましく、0.4〜20nmの範囲であることがより好ましい。
[ガラス光学素子の製造方法]
本発明の第一の態様のガラス光学素子の製造方法は、
予備成形され、かつ表面に被膜を有するガラス素材を加熱軟化した状態でプレス成形することにより、成形型の成形面を転写する工程を含むガラス光学素子の製造方法であって、
前記被膜の膜厚を本発明の測定方法によって測定し、測定された膜厚が予め設定した基準範囲内であったガラス素材を、前記プレス成形に付すことを特徴とするガラス光学素子の製造方法(以下、「製法1」という)
である。
本発明の第二の態様のガラス光学素子の製造方法は、
予備成形され、かつ表面に被膜を有するガラス素材を複数含むガラス素材ロットを準備する工程と、
前記ロットから少なくとも1つのガラス素材を抽出する工程と、
前記抽出されたガラス素材表面の被膜の膜厚を本発明の測定方法によって測定する工程と、
前記測定された膜厚が予め設定した基準範囲内であったガラス素材と同一ロット内のガラス素材を加熱軟化した状態でプレス成形することにより、成形型の成形面を転写する工程と、
を含むガラス光学素子の製造方法(以下、「製法2」という)
である。
以下において、製法1と製法2をあわせて、本発明の製造方法ということがある。
製法1は、本発明の測定方法によって、所望の膜厚の被膜が形成されていることが確認されたガラス素材をプレス成形に付すものである。一方、製法2は、同一ロット内からサンプリングされたガラス素材について、本発明の測定方法により膜厚測定を行い、所望の膜厚の被膜が形成されていることが確認されたガラス素材と同一ロット内のガラス素材をプレス成形に付すものである。製法1は、いわゆる全数検査を行う態様であり、製法2は、いわゆるサンプリング検査を行う態様である。
製法1、2のいずれにおいても、前記被膜は、離型性向上のために形成される薄膜であることができる。先に説明したように、ガラス素材上に離型性向上のために設けられる薄膜が所望の膜厚に形成されていない場合、成形されるガラス光学素子の種々の特性に悪影響を与えるおそれがある。これに対し、製法1、2のいずれにおいても、所望の膜厚の被膜が形成されていることを確認したうえでプレス成形を行うため、高品質のガラス光学素子を製造することができる。
以下、本発明の製造方法について、更に詳細に説明する。
前記ガラス素材は、球形状、扁平な球形状、平板状等の形状に予備成形されたものであることができる。但し、本発明の製造方法で用いるガラス素材はこれら形状に限定されることはない。また、熔融ガラスから所定重量を流出させて熱間成形された上記形状のガラス素材をそのままプレス成形に供することが、簡便であり経済的であるため好ましい。なお、本発明の製造方法は、成形されるガラス光学素子の形状に近似させる研磨工程などを設けることなくガラス光学素子を得る精密プレス成形法として好適であるが、プレス成形後に研削、研磨等の後工程を行いガラスガラス光学素子を得ることも可能である。
前記ガラス素材表面に形成される被膜としては、炭素含有膜が好適である。その詳細は前述の通りである。
本発明の製造方法では、本発明の測定方法により所望の膜厚の被膜が形成されていることが全数検査(製法1)またはサンプリング検査(製法2)によって確認されたガラス素材をプレス成形に付す。ここで、ガラス素材を選別するための膜厚の基準範囲は特に限定されるものではなく、成形されるガラス素材の材質、プレス成形条件、成形される光学素子の形状等に応じて設定すればよい。
プレス成形に使用する成形型としては、通常のガラス光学素子の成形に使用される成形型を、何ら制限なく使用することができるが、充分な耐熱性、剛性を有し、緻密な材料を精密加工したものを用いることが好ましい。例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化タングステン、酸化アルミニウムや炭化チタン、ステンレス等金属、またはこれらの表面に炭素、耐熱金属、貴金属合金、炭化物、窒化物、硼化物などの離型膜を被覆したものを挙げることができる。
成形型の成形面を被覆する離型膜としては、離型性の点から、炭素含有膜が好ましい。該炭素含有膜としては、非晶質および/または結晶質の、グラファイトおよび/またはダイヤモンドの、単一成分層または混合層から構成されているものを用いることが好ましい。この炭素膜は、スパッタリング法、プラズマCVD法、CVD法、イオンプレーティング法等の手段で成膜することができる。本発明の測定方法は、このような成形型成形面上の離型膜の膜厚測定方法としても好適である。
本発明の製造方法におけるプレス成形は、公知の手段で行うことができる。ガラス素材の粘度が105〜1010dPa・sになる温度域に加熱、軟化し、これを、上下型により押圧することによって、上下型の成形面をガラス素材に転写することが好ましい。ガラス素材を成形型に導入し、ガラス素材と成形型をともに上記温度範囲に昇温してもよく、または、ガラス素材と成形型をそれぞれ上記温度範囲に昇温してから、ガラス素材を成形型内に配置してもよい。更に、ガラス素材を105〜109dPa・s粘度相当、成形型をガラス粘度で109〜1012dPa・s相当の温度にそれぞれ予め加熱しておき、ガラス素材を成形型に供給して直ちにプレス成形する工程を採用してもよい。この場合、成形型の温度変化量を比較的少なくすることができるため、成形装置の昇温/降温サイクルタイムを短縮できるとともに、成形型の熱による劣化を抑制できる効果がある。いずれの場合も、好ましくは、プレス成形開始時、または、開始後に冷却を開始し、適切な荷重スケジュールを適用しつつ、成形面とガラス素材の密着を維持しながら、降温する。この後、離型して成形された光学素子を取り出すことができる。離型温度は、ガラスの粘度1012.5〜1013.5dPa・s相当の温度とすることが好ましい。
本発明の製造方法は、レンズ、ミラー、グレーティング、プリズム、マイクロレンズ、積層型回折光学素子等の光学素子の製造に有効に適用できる。また、本発明に適用できるガラスの硝種には特に制限はない。特に、割れやすい、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ホウリン酸塩系ガラス、フツリン酸塩系ガラスなどに本発明の適用が有効である。
以下、本発明を実施例により更に説明するが、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。以下に記載の反射率測定は、オリンパス社製USPM−RUを用いて行った。
1.膜厚測定の実施例
[実施例1]
(1)関係式導出工程
まず、研磨平面を有するガラス基板の該研磨平面において、可視光領域における反射率スペクトルを得た。
次いで、上記ガラス基板の研磨平面上に、アルゴンを用いたDCスパッタ法により炭素薄膜を成膜する操作を4回繰り返し、各成膜後に成膜された炭素薄膜表面の可視光領域における反射率スペクトルの測定およびXPSによる膜厚測定を行った。
得られた反射率スペクトルから、波長500nm、600nm、700nmにおける反射率を読み取り、各波長におけるガラス基板の研磨平面における反射率との差分を反射率変化量として算出した。
以上により得られた反射率変化量と炭素薄膜の膜厚との関係を、図1に示す。図1の結果から、測定波長にかかわらず、膜厚と反射率変化量には直線関係が成り立つことがわかる。
そこで、図1中の波長500nmのプロットを最小二乗法によってフィッティングしたところ、以下の関係式(式A')が得られた。同様に波長600nm、波長700nmのプロットを最小二乗法によってフィッティングした結果を図1中の右表に示す。
式A'反射率変化量=0.4651×膜厚−0.3583
図1中の右表に示すように、各測定波長における膜厚と反射率変化量と関係式は、良好な相関関係が成立すると判断できる相関係数の二乗R 2 0.6以上の一次関数となった。
次いで、上記式A'を変形し、以下の関係式(式A)を得た。
式A 膜厚[nm]=2.15×反射率変化量[point]+0.77
(2)膜厚算出工程
上記ガラス基板と同一材料からなり、同一の研磨処理を行ったガラス基板の研磨面上に、上記(1)と同一成膜材料を使用してDCスパッタ法によって、成膜時間を変えることにより異なる膜厚の炭素薄膜を形成した。各炭素薄膜について、反射率スペクトルを測定し、得られたスペクトル上で波長500nmでの反射率を読み取った。次いで、読み取った反射率から、上記(1)で測定したガラス基板の研磨平面上の波長500nmの光に対する反射率を差し引き差分を算出した。算出した差分を、式A中に「反射率変化量」として代入し、膜厚を算出した。算出された膜厚と成膜時間との関係を図2に示す。
一般に、スパッタ法において膜厚は成膜時間と直線関係を示すことが知られている。図2に示すように、式Aを用いて得られた膜厚は、成膜時間に対して正の相関を示し、その相関係数の二乗R 2 は0.995ときわめて良好な値を示した。この結果から、本発明の測定方法により、信頼性の高い膜厚測定が可能であることが確認できる。
また、ガラスプリフォーム表面を平面研磨した面について、上記と同様の反射率による膜厚測定とAFMによる膜厚測定を行ったところ、相関係数の二乗R 2 は良好な値を示した。
[実施例2]
(1)関係式導出工程
成膜法をスパッタ法から真空蒸着法に変えた点以外、実施例1と同様の操作を行い、波長500nmにおける炭素薄膜の反射率変化量と膜厚との関係を求めた。得られた結果を図3に示す。図3に示すように、スパッタ法を用いた実施例1と同様に、反射率変化量と膜厚には直線関係が成り立った。図3中のプロットを最小二乗法によってフィッティングしたところ、以下の関係式(式B')が得られた。
式B'反射率変化量=0.7194×膜厚−0.2374
図3に示すように、上記式B'の相関係数は0.6以上(相関係数:1)であるため、膜厚と反射率変化量との間に良好な相関係数の二乗R 2 が成立していると判断することができる。
次いで、上記式B'を変形し、以下の関係式(式B)を得た。
式B 膜厚[nm]=1.39×反射率変化量[point]+0.33
(2)膜厚算出工程
上記(1)で反射率測定を行ったガラス基板と同一材料からなり、同一の研磨処理を行ったガラス基板の研磨面上に、上記(1)と同一成膜材料を使用して真空蒸着法によって、成膜時間を変えることにより異なる膜厚の炭素薄膜を形成した。各炭素薄膜について、AFMによる膜厚測定を行った後、反射率スペクトルを測定し、得られたスペクトル上で波長500nmでの反射率を読み取った。次いで、読み取った反射率から、上記(1)で測定したガラス基板の研磨平面上の波長500nmの光に対する反射率を差し引き差分を算出した。算出した差分を、式B中に「反射率変化量」として代入し、膜厚を算出した。算出された膜厚とAFMによる膜厚測定値との関係を、図4に示す。図4中、横軸がAFMによる膜厚測定値、縦軸が式Bにより算出された膜厚である。図4から、両者の間に1:1の関係が成り立ち、その相関係数の二乗R 2 が0.975ときわめて良好な相関関係を示していることがわかる。この結果からも、本発明の測定方法により、信頼性の高い膜厚測定が可能であることが確認できる。
以上の結果から、予め膜厚と任意の波長における反射率変化量を求め、これを検量線とすることで、反射率測定という非破壊かつ非接触な方法により、各種被膜の膜厚を測定できることがわかる。また、反射率測定は、大気中常温で、しかも測定面が平面以外であっても行うことができるため、本発明の測定方法は、簡便な膜厚測定法としてきわめて有用である。
[参考例]
スパッタ法によって成膜した異なる膜厚を有する炭素薄膜の可視光領域における反射率スペクトルを、図5に示す。図5中、凡例はXPSにより測定した炭素薄膜の膜厚である。図5から、炭素薄膜の膜厚によって、各波長における反射率が異なることがわかる。また、図5に示すスペクトルには、測定領域において極小値が存在しないため、前述の特許文献4に記載された方法では膜厚測定は不可能である。
2.ガラス光学素子製造の実施例
[実施例3]
以下の方法により、コバ厚0.6mmの凸メニスカスレンズを製造した。
硝材としてホウ酸ランタン系ガラス(HOYA(株)製硝種M−LAC130)を使用し、熱間成形により曲面を有する所望の形状に成形したプリフォームを作製した。
プリフォームの作製とは別に、プリフォームと同じ硝材からなる平板(ガラス基板)をテスト用基材としてスパッタ法により異なる膜厚の炭素薄膜(テスト用被膜)を形成し、実施例1、2と同様の方法で膜厚と反射率変化量(波長500nmにおける表面反射率を評価した)との関係式を導出した。なおテスト用基材の波長500nmの光に対する表面反射率が、プリフォーム表面の波長500nmの光に対する表面反射率と同じ値を示すことを確認した。
次に、作製したプリフォーム表面に、テスト用被膜と同一成膜材料を使用してスパッタ法によって炭素薄膜を形成した。成膜時間を変えることにより膜厚を調整し、同一成膜時間あたり10個ずつプリフォームを作製した。各プリフォームについて、波長500nmにおける表面反射率を測定し、(測定された表面反射率−テスト用基材の表面反射率)の値を上記関係式に代入することにより、各プリフォーム上の炭素薄膜の膜厚を算出した。図6に、炭素薄膜の膜厚分布を示す。なお、得られた膜厚算出値および上記レンズにおける適切な被膜の膜厚範囲から算出した膜厚の工程能力指数は0.171であった。
その後、各プリフォームをプレスし、コバ厚0.6mmの凸メニスカスレンズを製造したところ、炭素薄膜の厚さが2nm未満ではレンズにワレが発生し、5nm超では得られたレンズにクモリが発生した。したがって、本態様ではプレス工程に付すに適した炭素薄膜の厚さは2〜5nmであると言える。一方、図6に示すように、炭素薄膜の膜厚範囲は1〜6nmであった。成膜時間毎に10個ずつプリフォームに成膜処理を施したにもかかわらず、図6に示すように膜厚3nmのものが最も多かったうえに、一部のプリフォームでは炭素薄膜の厚さがプレス工程に付すに適した範囲を超えていることから、本態様ではプレス工程に先立ち全数検査を行うことが好ましいことがわかる。
そこで、上記と同様の方法でプリフォームの作製、炭素薄膜の成膜および関係式を用いた膜厚の算出(全数検査)を行い、膜厚算出値が2〜5nmであったプリフォームのみを選別しプレス工程に付したところ、いずれも成形後のレンズにはワレもクモリも観察されなかった。参照のため、選別しなかったプリフォームをプレスしたところ、膜厚2nm未満ではレンズにワレが発生しプレスの継続が困難であり、膜厚5nm超ではレンズにクモリが発生し、製品として出荷するためにはクモリ落としの工程が必要となった。
[実施例4]
以下の方法により、中心肉厚2.6mmの両凸レンズを製造した。
硝材としてホウ酸シリケート系ガラス(HOYA(株)製硝種M−BACD12)を使用し、熱間成形により曲面を有する所望の形状に成形したプリフォームを作製した。
プリフォームの作製とは別に、プリフォームと同じ硝材からなる平板(ガラス基板)をテスト用基材としてスパッタ法により異なる膜厚の炭素薄膜(テスト用被膜)を形成し、実施例1、2と同様の方法で膜厚と反射率変化量(波長500nmにおける表面反射率を評価した)との関係式を導出した。なおテスト用基材の波長500nmの光に対する表面反射率が、プリフォーム表面の波長500nmの光に対する表面反射率と同じ値を示すことを確認した。
次に、作製したプリフォーム表面に、テスト用被膜と同一成膜材料を使用してスパッタ法によって炭素薄膜を形成した。成膜時間を変えることにより膜厚を調整し、同一成膜時間あたり10個ずつプリフォームを作製した。各プリフォームについて、波長500nmにおける表面反射率を測定し、(測定された表面反射率−テスト用基材の表面反射率)の値を上記関係式に代入することにより、各プリフォーム上の炭素薄膜の膜厚を算出した。図7に、炭素薄膜の膜厚分布を示す。図7に示すように、炭素薄膜の膜厚範囲は2〜6nmであった。なお、得られた膜厚算出値および上記レンズにおける適切な被膜の膜厚範囲から算出した膜厚の工程能力指数は1.409であった。
その後、各プリフォームをプレスし、中心肉厚2.6mmの両凸レンズを製造したところ、いずれのレンズにおいてもワレやクモリは観察されなかった。このように上記成膜条件によれば、ワレやクモリが発生しない膜厚の炭素薄膜を成膜することができ、工程能力指数も良好と判断できる一般的な基準値である1.33を超えていることから、本態様では全数検査による膜厚測定を行わずサンプリング検査を行えばよいことがわかる。
そこで、上記と同様の方法でプリフォームの作製および炭素薄膜の成膜を行い、同一ロットから数個のプリフォームを抜き取り前記関係式を用いた膜厚算出を行い2〜5nmの膜厚の炭素被膜が形成されていることを確認したうえで、各プリフォームをプレス工程に付したところ、いずれも成形後のレンズにはワレもクモリも観察されなかった。
以上説明した実施例3および4の結果から、本発明により被膜の全数検査またはサンプリング検査を行ったうえで良品のみをプレス工程に付すことにより、クモリやワレのない高品質なガラス光学素子が得られることがわかる。
本発明は、薄膜形成における膜厚評価および膜厚管理に有用である。

Claims (9)

  1. 基材上に形成された被膜の膜厚測定方法であって、
    波長λnmの光に対して表面反射率R0を有するテスト用基材上にテスト用被膜を形成し、該テスト用被膜の前記波長λnmの光に対する表面反射率R'を測定することを、前記テスト用被膜の膜厚を変化させて2回以上行うことにより、前記テスト用被膜の膜厚と表面反射率変化量(R'−R0)との関係式を導出すること、
    膜厚測定対象の被膜の前記波長λnmの光に対する表面反射率Rを測定し、該表面反射率Rと前記テスト用基材の表面反射率R0との差分(R−R0)を前記表面反射率変化量として前記関係式に適用することにより、前記膜厚測定対象の被膜の膜厚を求めること、
    含み、
    前記膜厚測定対象の被膜が形成された基材は、ガラスからなり、
    前記膜厚測定対象の被膜は、0.4〜6nmの範囲の膜厚を有する炭素含有膜であり、かつ、
    前記関係式は、前記膜厚と前記表面反射率変化量(R'−R 0 )との間に相関係数の二乗R 2 が0.6以上の関係が成立する一次関数である、基材上に形成された被膜の膜厚測定方法。
  2. 前記テスト用被膜の形成を、前記膜厚測定対象の被膜と同一材料を使用し、かつ同一成膜法を使用して行う請求項1に記載の基材上に形成された被膜の膜厚測定方法。
  3. 前記膜厚測定対象の被膜が形成された基材は、前記テスト用基材と同一材料からなる請求項1または2に記載の基材上に形成された被膜の膜厚測定方法。
  4. 前記波長λnmは、400〜750nmの範囲である請求項1〜のいずれか1項に記載の基材上に形成された被膜の膜厚測定方法。
  5. 前記差分(R−R0)は、0.01以上である請求項1〜のいずれか1項に記載の基材上に形成された被膜の膜厚測定方法。
  6. 前記炭素含有膜の炭素含有率は、65原子%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の基材上に形成された被膜の膜厚測定方法。
  7. 前記膜厚測定対象の被膜が形成された基材表面は、平面または曲面形状である請求項1〜のいずれか1項に記載の基材上に形成された被膜の膜厚測定方法。
  8. 予備成形され、かつ表面に被膜を有するガラス素材を加熱軟化した状態でプレス成形することにより、成形型の成形面を転写する工程を含むガラス光学素子の製造方法であって、
    前記被膜の膜厚を請求項1〜のいずれか1項に記載の方法によって測定し、測定された膜厚が予め設定した基準範囲内であったガラス素材を、前記プレス成形に付すことを特徴とするガラス光学素子の製造方法。
  9. 予備成形され、かつ表面に被膜を有するガラス素材を複数含むガラス素材ロットを準備する工程と、
    前記ロットから少なくとも1つのガラス素材を抽出する工程と、
    前記抽出されたガラス素材表面の被膜の膜厚を請求項1〜のいずれか1項に記載の方法によって測定する工程と、
    前記測定された膜厚が予め設定した基準範囲内であったガラス素材と同一ロット内のガラス素材を加熱軟化した状態でプレス成形することにより、成形型の成形面を転写する工程と、
    を含むガラス光学素子の製造方法。
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