JP2006256884A - ガラス光学素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ガラス素材と成形型の成形面の間の離型性を確実に確保することにより、カン・ワレを防止し、さらに素子表面にクモリが生じないガラス光学素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】 ガラス素材3の表面に所定の膜厚の炭素系膜5を形成する第1工程と、ガラス素材3を加熱軟化させた状態で成形型10によりプレス成形する第2工程とを含む、ガラス光学素子の製造方法において、第2工程でのガラス素材3の表面における各部位の伸び量の大小を予め把握しておき、凸メニスカス形状のガラス光学素子1を製造する際には、ガラス素材3の素材中央領域31の表面伸び率は少なく、素材周辺領域32の表面伸び率が大きいので、ガラス素材3に形成する炭素系膜5については、素材中央領域31で薄くし、素材周辺領域32で厚くする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、光学ガラスからなるガラス素材を加熱軟化させた状態でプレス成形してガラス光学素子を製造する方法に関するものである。
プリフォームなどのガラス素材を加熱軟化させた状態で成形型によってプレス成形してレンズなどの光学素子を得る際、成形型の成形面とガラス素材の融着を防止することを目的に、成形型の成形面に炭素系膜、貴金属系膜、窒化物系膜、硼化物系膜等の離型膜を設けることが知られている。
しかしながら、成形の際に損傷(いわゆるカン・ワレ)の生じやすいガラス素材、例えば、反応性の高いアルカリ金属元素(Li、Na、K)の酸化物や酸化還元作用の強い高原子価元素(Ti、Nb、W、Biなど)の酸化物を多量に含むホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ホウリン酸塩系ガラス、フツリン酸塩系ガラスなどからなるガラス素材を成形する場合には、成形型の成形面に形成した離型膜では充分な離型効果を得ることが困難である。
一方、ガラス素材の表面に炭素系膜を形成して融着を防止する技術が提案されている。例えば、ガラス素材と成形型の成形面のうち少なくとも一方に炭素膜を形成することにより、融着を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ガラス素材の表面に炭化水素膜を形成することにより、離型性を向上する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、アセチレンの熱分解により、比較的伸び易く薄い炭素膜をガラス素材の表面に形成する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
さらにまた、メタンプラズマ処理により、膜厚5nm未満、好ましくは1nm未満の炭素膜をガラス素材の表面に形成することにより、離型性を向上する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特公平2−31012号公報 特公平7−45329号公報 特開平8−217468号公報 特開平9−286625号公報
しかしながら、上記の特許文献に開示の技術によれば、一定の離型性向上の効果が得られるものの、微小融着(成形面に対するガラス素材の融着)についてはその発生を防止できないという問題点がある。例えば、両凸曲面形状や球面形状に予備成形されたガラスプリフォームを大きく変形させてプレス成形する際、変形量の大きな部位ではやはり微小融着が生じ、この微小融着が主原因となってカン・ワレがしばしば発生し、生産性(歩留まり)を悪化させている。特に、このようなカン・ワレは、反応性の高いアルカリ金属元素(Li、Na、K)の酸化物や酸化還元作用の強い高原子価元素(Ti、Nb、W、Biなど)の酸化物を多量に含むホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ホウリン酸塩系ガラス、フツリン酸塩系ガラスなどからなるガラス素材をプレス成形するときに多発するという問題点がある。
上記問題点に鑑みて、本発明の課題は、ガラス素材と成形型の成形面の間の離型性を確実に確保することにより、カン・ワレを防止し、さらに素子表面にクモリが生じないガラス光学素子の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明では、ガラス素材の表面に所定の膜厚の炭素系膜を形成する第1工程と、前記ガラス素材を加熱軟化させた状態で成形型によりプレス成形して前記成形型の成形面を前記ガラス素材に転写する第2工程とを含む、ガラス光学素子の製造方法において、前記第2工程での前記ガラス素材の表面における各部位の伸び量の大小を予め把握し、前記第1工程では、前記伸び量の把握結果に基づいて、前記炭素系膜の膜厚を前記伸び量の小さい部位より前記伸び量の大きい部位で厚くしておくことを特徴とする。
本発明では、ガラス素材を成形用型でプレス成形してガラス光学素子を製造するに際して、ガラス素材に形成する炭素系膜の膜厚を、プレス成形によって拡大される表面の比率を考慮して決定するため、融着やそれに起因するカン・ワレを防止することができる。
ここで、炭素系膜とは、炭素を主成分として含有する膜であって、好ましくは炭素を常温で50at%以上含む膜をいう。
本発明において、前記第1工程では、例えば、前記ガラス光学素子の光軸を含む素子中央領域を形成すべき前記ガラス素材の素材中央領域と、前記ガラス光学素子の前記素子中央領域の周りを囲む素子周辺領域を形成すべき前記ガラス素材の素材周辺領域との間で前記炭素系膜の膜厚を相違させる。例えば、前記ガラス素材としての両凸曲面形状あるいは球形状のガラス素材を前記第2工程で成形して両凸形状あるいは凸メニスカス形状のガラス光学素子を製造するにあたっては、前記第1工程では、前記炭素系膜の膜厚を前記素材中央領域より前記素材周辺領域で厚くする。
本発明において、前記第1工程では、前記ガラス光学素子の第1面を形成すべき前記ガラス素材の第1素材面と前記ガラス光学素子の第2面を形成すべき前記ガラス素材の第2素材面との間で前記炭素系膜の膜厚を相違させることもある。例えば、前記ガラス素材としての両凸曲面形状あるいは球形状のガラス素材を前記第2工程で成形して、前記第1面が凸面で前記第2面が凹面の凹メニスカス形状のガラス光学素子、あるいは前記第1面が平面で前記第2面が凹面の平凹形状のガラス光学素子を製造するにあたっては、前記第1工程では、前記炭素系膜の膜厚を前記第1素材面より前記第2素材面で厚くする。
本発明において、前記炭素系膜の膜厚は、当該炭素系膜が薄い部位で0.5nmから5nmの範囲であり、当該炭素系膜が厚い部位で1nmから10nmであることが好ましい。
本発明において、前記成形型を構成する複数の型部材のうち、少なくとも一つの型部材の成形面には、炭素を含有する離型膜が形成されていることが好ましい。
本発明では、前記第1工程において、前記ガラス素材に前記炭素系膜を形成する際、前記炭素系膜の膜厚を部位によって相違させる方法、あるいは前記第1工程において、前記ガラス素材に前記炭素系膜を形成する成膜処理と、前記ガラス素材に形成した前記炭素系膜を部分的に除去して当該炭素系膜の膜厚を部位によって相違させる膜厚調整処理とを行う方法のいずれを採用してもよい。
本発明では、ガラス素材を成形用型でプレス成形してガラス光学素子を製造するに際して、ガラス素材に形成する炭素系膜の膜厚を、プレス成形によって拡大される表面積の比率を考慮して決定するため、融着やそれに起因するカン・ワレを防止することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るガラス光学素子の製造方法を示す説明図である。図2(a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係るガラス光学素子の製造方法において、第2工程でガラス素材の表面が各部位毎に伸び量が相違する様子を示す説明図、およびガラス素材の表面の伸び量に応じて炭素系膜の厚さを相違させた様子を示す説明図である。図3(a)〜(d)は、本発明の実施の形態1に係るガラス光学素子の製造方法において、ガラス素材に炭素系膜を形成する方法を示す工程断面図である。
図1に示すように、レンズなどのガラス光学素子1を製造する際には、まず、第1工程において、ガラスプリフォームと称せられる両凸曲面形状のガラス素材3(実線で示す)の表面に所定の膜厚の炭素膜や炭化水素膜などの炭素系膜5(一点鎖線で示す)を形成する。より具体的には、予備成形されたガラス素材3を洗浄した後、ガラス素材3の表面に蒸着法、炭化水素の熱分解CVD法、炭化水素のプラズマ分解CVD法、炭化水素の光分解CVD法、または自己組織化膜成膜法のいずれかの方法により、炭素系膜5を成膜する。
次に、第2工程において、ガラス素材3を加熱軟化させた状態で下型21および上型23からなる成形型20によりプレス成形して、下型21の成形面210および上型23の成形面230をガラス素材3に転写し、ガラス光学素子1(点線で示す)を得る。より具体的には、ガラス素材3を精密に形状加工した成形型20に導入し、ガラス素材3の粘度が106〜109dPa・s相当の粘度となる温度に加熱、軟化し、これを成形型20で押圧することによって、成形型20の成形面210、230の形状をガラス素材3に転写する。若しくは、予め、その粘度が106〜109dPa・s相当の温度に昇温したガラス素材3を、精密に形状加工した成形型20に導入し、これを押圧することによって、成形型20の成形面210、230の形状をガラス素材3に転写する。このような成形時の雰囲気は、成形面210、230の酸化を防ぐため、非酸化性とすることが好ましい。
この後、成形型20とガラス素材3を冷却し、好ましくはガラス素材3のTg以下の温度となったところで、離型し、成形されたガラス光学素子1を取り出す。なお、第1工程と第2工程を連続して行なっても良い。すなわち、ガラス素材3の表面に炭素系膜5を形成した後、ガラス素材3を加熱し、そのままプレス成形を行なっても良い。
成形型20を構成する型母材としては、SiC、WC、TiC、TaC、BN、TiN、AlN、Si34、SiO2、Al23、ZrO2、W、Ta、Mo、サーメット、サイアロン、ムライト、カーボン・コンポジット(C/C)、カーボンファイバー(CF)、WC−Co合金、結晶化ガラスを含むガラス素材3、ステンレス系高耐熱性金属等から選ばれる材料が有用に使用できる。
ここで、成形型20の成形面210、230の表面には離型膜が設けられていることが好ましい。離型膜としては、ダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC)、水素化ダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC:H)、テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、ta−C)水素化テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、ta−C:H)、アモルファス炭素膜(以下、a−C)、水素化アモルファス炭素膜(以下、a−C:H)、窒素を含有するカーボン膜等の炭素系膜、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、タングステン(W)、及びタンタル(Ta)から選ばれる少なくとも一つの金属を含む合金膜が適用できる。このような離型膜の形成は、DC−プラズマCVD法、RF−プラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、ECR−プラズマCVD法、光CVD法、レーザーCVD法等のプラズマCVD法、イオンプレーティング法などのイオン化蒸着法、スパッター法、イオンプレーティング法、蒸着法やFCA(Filtered Cathodic Arc)法等の手法が用いることができる。
プレス成形後のガラス光学素子1は、必要に応じてアニール処理が施されるが、このアニール処理の際に、酸化雰囲気中での加熱を行うことにより、ガラス光学素子1の表面にある炭素系膜5を除去することができる。なお、ガラス光学素子1の表面に、反射防止膜などの機能性の膜を設ける場合には、その成膜に先だって、炭素系膜5およびその残査を除去しておく。
(炭素系膜5の厚さ分布)
このような製造方法においては、第2工程では、ガラス素材3のプレス変形によって炭素系膜5も伸ばされる。ここで、炭素系膜5の膜厚が薄すぎると、ガラス素材3のプレス変形により炭素系膜5が引きちぎられてガラス面が成形型20の成形面210、230に露出するため、成形面210、230にガラスが融着し、これが原因となってカン・ワレが発生する。これに対して、炭素系膜5が厚すぎる場合には、炭素系膜5の熱変成、すなわち、炭素−炭素同士の結合が発生することにより、膜構造がアモルファス状態から周期性を有する状態に変化することにより、炭素系膜5に亀裂(凹凸)が発生し、その凸凹がガラス素材3に転写される結果、ガラス光学素子1の表面が粗れてクモリによる外観不良が発生する。
従って、炭素系膜5は、プレス成形によって押し伸ばされる際、ガラス素材3の表面の変形に沿って伸びてガラス素材3と成形面210、230との接触を防止することが必要であり、かつ、伸びが少ない部位においては、亀裂による炭素系膜5の凸凹の発生を防止しなければならない。
ここに、本願発明者等は、ガラス素材3のプレス変形状況を鋭意観察した結果、ガラス素材3の表面における伸び量が部位によって相違するという知見を得たので、本発明では、第2工程でのガラス素材3の表面における各部位の伸び量の大小を予め把握し、第1工程では、伸び量の把握結果に基づいて、炭素系膜5の膜厚を、表面伸び量が小さい部位より表面伸び量が大きい部位で厚くしておく。
このような方法を採用するにあたって、本形態では、プレス成形時にガラス素材3の表面が伸びる量を「表面伸び量」と定義し、第2工程でのガラス素材3の表面における各部位の伸び量の大小を把握する。例えば、図2(a)には、両凸曲面形状のガラス素材3を第2工程で成形して、凸メニスカス形状のガラス光学素子1を製造する様子を示してあり、矢印の長さは、ガラス素材3の各部位における移動量を示しており、「表面伸び量」は、矢印の長さではなく、あくまで各表面領域の表層方向への伸び量をいう。なお、かかる表面伸び量に基づいて、プレス成形前のガラス素材3の表面に対する、プレス成形後におけるガラス素材3の表面の伸びた割合である表面伸び率を求め、「表面伸び量」をこの表面伸び率と置き換えてもよい。
図2(a)に模式的に示す結果に基づいて、ガラス素材3の素材中央領域31と素材周辺領域32において表面がプレス成形後にどの程度伸びたかを解析すると、
素材中央領域31の表面伸び量は(a2−a1)であるから、表面伸び率は(a2/a1)であり、
素材周辺領域32の表面伸び量は(b2−b1)であるから、表面伸び率は(b2/b1)となり、
素材中央領域31より素材周辺領域32で表面伸び量(表面伸び率)が大きいことが分かる。従って、模擬ガラス素材の表面に所定パターンのマークを付しておき、この模擬ガラス素材を成形型でプレス成形を行って模擬成形品を得た後、この模擬成形品の表面のマークの拡大率を分析すれば、部位毎の表面伸び率を求めることができる。
ここで、図2(a)に示す凸メニスカス形状のガラス光学素子1を製造する際、ガラス光学素子1の光軸を含む素子中央領域11を形成すべきガラス素材3の素材中央領域31と、ガラス光学素子1の素子中央領域11の周りを囲む素子周辺領域12を形成すべきガラス素材3の素材周辺領域32との間でガラス素材3の表面伸び率が相違するので、第1工程では、ガラス素材3の素材中央領域31と素材周辺領域32との間で炭素系膜5の膜厚を相違させる。より具体的には、凸メニスカス形状のガラス光学素子1を製造する場合には、図2(b)に示すように、ガラス素材3の素材中央領域31での表面伸び率が小さく、素材周辺領域の表面伸び率が大きいので、本発明では、第1工程において炭素系膜5の膜厚を素材中央領域31より素材周辺領域32で厚くしたガラス素材3を用いる。
このように本形態では、ガラス素材3において、プレス変形が大きい部位(表面伸び率が大きい部位)で炭素系膜5の膜厚を厚くしてあるので、ガラスと成形面210、230との接触を防止することできる。また、ガラス素材3において、プレス変形が小さい部位(表面伸び率が小さい部位)で炭素系膜5の膜厚を薄くしてあるので、亀裂による炭素系膜5の凸凹の発生を防止することができる。それ故、ガラス光学素子1を製造する際、カン・ワレを防止でき、さらに素子表面にクモリが発生することを防止することができ、ガラス光学素子1の歩留まりを向上することができる。
ここで、ガラス素材3に形成する炭素系膜5の膜厚には、以下に述べる制限がある。まず、膜厚が10nmを超えると、炭素系膜5材の熱変成(炭素−炭素同士の結合が発生することにより、膜構造がアモルファス状態から周期性を有する状態に変化する)の速度が急激に増大し、炭素原子相互の間に円滑なスベリ移動が起きず、炭素系膜5の伸びが阻害され、膜に亀裂が発生する。従って、必ずしも融着が防止できず、1000ショットを越える連続プレスにおいてカン・ワレが発生することが避けられない。ちなみに、膜の亀裂を確実に防止するためには、炭素系膜5の膜厚は5nm以下が好ましい。
これに対して、炭素系膜5の膜厚が薄すぎると、プレスによってガラス素材3の表面が伸ばされ、表面積が大きくなる結果として、炭素系膜5が欠落する部位が生じてしまう。炭素原子が滑り移動することによって炭素系膜5が伸びるためには、プレスによって伸ばされる最終段階まで、ガラス素材3の表面上に、最低限、炭素原子の2原子層が存在しなくてはならない。ガラス表面上の炭素原子第1層は、ガラス素材3との付着のために移動はせず、第2層以上の原子が滑り移動をするからである。従って、プレス成形の結果として変形したガラス光学素子1の表面に、炭素原子が存在し、かつその膜厚が2原子層以上であれば、プレス成形中に成形面210、230との融着が起きないということになる。この2原子層には、炭素原子が最密状態で配列している必要はなく、しかしガラス表面をすべて覆うに充分な状態で配列している必要がある。ちなみに、炭素原子の理論半径は0.17nm(ファンデルワールス半径)であるので、ガラス素材3に形成する炭素系膜5の膜厚は0.5nm以上であることが好ましい。厳密に言えば、プレス成形後のガラス光学素子1表面に、膜厚が0.5nmの炭素系膜が生じる状態となるように、予めプリフォームに、所定の膜厚の炭素系膜を成膜しておけばよい。
それ故、ガラス素材3において、表面伸び率(伸び変形)の小さい素材中央領域31の炭素系膜5の膜厚は0.5nm以上、かつ、5nm以下が好ましく、更には、0.5nm以上、かつ、4nm以下が好適である。一方、ガラス素材3において、伸び変形の大きい素材周辺領域32の炭素系膜5の膜厚は1nm以上、かつ、10nm以下が好ましく、更には、1nm以上、かつ、8nm以下が好適である。但し、炭素系膜5の厚い部分の膜厚は、薄い部分の膜厚よりも常に厚いことが前提である。なお、プリフォームに成膜した炭素系膜5の膜厚は、周知のESCA法によって求めることができる。
(第1工程の第1例)
第1工程によって、ガラス素材3の表面に部位により膜厚の異なる炭素系膜5を形成するには、ガラス素材3に炭素系膜5を形成する際、炭素系膜5の膜厚を部位によって相違させる方法と、成膜処理においてガラス素材3に炭素系膜5を形成した後、膜厚調整処理においてガラス素材3に形成した炭素系膜5を部分的にエッチングして膜厚を部位によって相違させる方法とがある。
前者および後者のいずれの場合にも、炭素系膜5をガラス素材3の表面に形成する方法としては、蒸着法、スパッター法、イオンプレーティング法、炭化水素の熱分解CVD法、炭化水素のプラズマ分解CVD法、炭化水素の光分解CVD法、または自己組織化膜成膜法などが挙げられる。
蒸着法による場合には、市販の蒸着装置を用いて、10-4Torr程度の真空雰囲気中で、炭素を主成分とする炭素系材料を電子ビーム、直接通電もしくはアークにより加熱し、材料から蒸発および昇華により発生する炭素蒸気を基材の上に輸送し凝縮・析出させることにより炭素系膜5を形成する。例えば、直接通電の場合、断面積0.1cm2程度の炭素系材料に100V−50A程度の電流を通電し、炭素系材料を通電加熱する。基材加熱温度は室温〜400℃程度とする。但し、基材のガラス転移温度(Tg)が450℃以下の場合、基材加熱の上限温度は(Tg−50)℃とする。ここで、炭素系膜5の膜厚は、通常の光学用薄膜と同様に、モニターガラス上の蒸着膜の反射率変化、透過率変化、若しくはQCM(Quarts Crystal Microbalance:水晶振動子を用いて周波数変化を測定するシステム)による実測から測定し、シャッターの開閉により制御する。
また、スパッター法による場合には、公知のスパッター装置を用いて、10-2〜10-3Torr程度のアルゴン雰囲気中で、炭素ターゲット材料をアルゴンイオンでスパッターリングし、スパッターされた炭素粒子を輸送し、基材表面上に炭素粒子を析出して炭素薄膜を形成することができる。基材加熱温度は室温〜400℃程度が好ましい。ただし、基材のガラス転移温度(Tg)が450℃以下の場合、基材加熱の上限温度はTg−50℃とすることが好適である。炭素膜の膜厚は、通常の光学薄膜と同様に、モニターガラス上のスパッター膜の反射率もしくは透過率の変化から測定し、シャッタの開閉により炭素膜厚を制御することができる。
また、イオンプレーティング法による場合には、例えば、公知のイオンプレーティング装置を用いて、10-2〜10-4Torr程度のアルゴン雰囲気中で、炭素系材料を電子ビームにより加熱し、材料から蒸発および昇華により発生する炭素蒸気を、負にバイアスされた基材上に蒸着させることにより炭素薄膜を形成することができる。フィラメントと基板電極との間のグロー放電により、蒸着の付着強度や均一性が向上する。基材加熱温度は室温〜400℃程度が好ましい。ただし、基材のガラス転移温度(Tg)が450℃以下の場合、基材加熱の上限温度はTg−50℃とすることが好適である。この場合、所定の膜厚の制御は、上記蒸着法と同様に行うことができる。
また、炭化水素の熱分解CVD法による場合には、市販の熱分解CVD装置を用いて、10-1Torr程度まで排気した反応容器内を500℃程度まで加熱し、この容器内にアセチレンガス等の炭化水素ガスを20分間〜2時間程度かけて数10Torr程度まで導入することにより、ガラス素材3の表面に炭素を凝縮・析出させることにより炭素系薄膜を形成する。炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロピレン、ベンゼン蒸気、ヘキサン蒸気などを用いることができる。
炭化水素のプラズマ分解CVD法による場合には、市販のプラズマ分解CVD装置を用いて、10-1Torr程度まで排気した反応容器に、Arガス等の不活性ガスで希釈したアセチレンガス等の炭化水素ガスを導入し、500W程度の高周波パワー(13.56MHz)を反応容器に印加することにより、炭化水素分子を炭素と水素のプラズマに分解し、ガラス素材3の表面に炭素を凝縮・析出させることにより炭素系膜5を形成する。炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロピレン、ベンゼン蒸気、ヘキサン蒸気などを用いることができる。
炭化水素の光分解CVD法による場合には、市販の光分解CVD装置を用いて、10-1Torr程度まで排気した反応容器に、Arガス等の不活性ガスで希釈したアセチレンガス等の炭化水素ガスを導入し、エキシマランプやエキシマレーザーなどの紫外線光源の光を反応容器内に照射することにより、炭化水素分子を炭素と水素とに分解し、ガラス素材3の表面に炭素を凝縮・析出させることにより炭素系膜5を形成する。前記炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロピレン、ベンゼン蒸気、ヘキサン蒸気などを用いることができる。
ここで、前者の方法で、素材中央領域31の膜厚を素材周辺領域32よりも薄くする場合には、蒸着やCVD法(炭化水素の熱分解CVD法、プラズマ分解CVD法、光分解CVD法など)で炭素系膜5を成膜する際、図3(a)に示すように、穴あき治具7の穴部にガラス素材3を設置して、ガラス素材3の上方から炭素系膜5を成膜する。その際、図3(b)に示すように、炭素系膜5のガラス素材3の下面側への回り込みによって、ガラス素材3の下面側の外周部分にも炭素系膜5が形成される。次に、図3(c)に示すように、ガラス素材3を上下反転した後、炭素系膜5を再び成膜すると、炭素系膜5のガラス素材3の下面側への回り込みによって、ガラス素材3の下面側の外周部分にも炭素系膜5が形成される。その結果、図2(b)および図3(d)に示すように、ガラス素材3に形成した炭素系膜5の膜厚を素材中央領域31で薄く、素材周辺領域32で厚くすることができる。なお、炭素系膜5の成膜中に成膜容器内にArガス等の不活性ガスを導入して真空度を低下させれば、上記の回り込みを増大させることができる。
(第1工程の第2例)
これに対して後者の方法では、蒸着法、スパッター法、炭化水素の熱分解CVD法、炭化水素のプラズマ分解CVD法、炭化水素の光分解CVD法、または自己組織化膜成膜法などにより、ガラス素材3の表面に炭素系膜5を成膜した後(成膜処理)、炭素系膜5を薄くすべき部位に酸素プラズマ処理、UVオゾン処理、酸化雰囲気中での熱処理により、炭素系膜5を部分的にエッチングし、炭素系膜5の膜厚を部位によって相違させる。
[実施の形態2]
図4は、本発明の実施の形態2に係るガラス光学素子1の製造方法を示す説明図である。なお、本形態は、基本的な構成が実施の形態1と同様であるため、対応する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。また、図4には、炭素系膜5の図示を省略してある。
図4に示すように、本形態のガラス光学素子1を製造する際にも、実施の形態1と同様、第1工程において、ガラスプリフォームと称せられる両凸曲面形状のガラス素材3の表面に所定の膜厚の炭素系膜5を形成した後、第2工程では、ガラス素材3を加熱軟化させた状態で下型21および上型23からなる成形型20によりプレス成形して、下型21の成形面210および上型23の成形面230をガラス素材3に転写する。
ここで、本形態のガラス光学素子1は、両凸レンズ形状を有しており、このような両凸レンズ形状のガラス光学素子1を製造する際も、実施の形態1と同様、ガラス光学素子1の光軸を含む素子中央領域11を形成すべきガラス素材3の素材中央領域31では表面伸び率が小さく、ガラス光学素子1の素子中央領域11の周りを囲む素子周辺領域12を形成すべきガラス素材3の素材周辺領域32では表面伸び率が大きいので、図2(b)を参照して説明したように、第1工程において炭素系膜5の膜厚を素材中央領域31より素材周辺領域32で厚くしたガラス素材3を用いる。
このように本形態では、プレス変形が大きい部位(表面伸び率が大きい部位)では、炭素系膜5の膜厚を厚くしてあるので、ガラスと成形面210、230との接触を防止することできる。また、ガラス素材3において、プレス変形が小さい部位(表面伸び率が小さい部位)では、炭素系膜5の膜厚を薄くしてあるので、亀裂による炭素系膜5の凸凹の発生を防止することができる。なお、表面伸び率の把握方法、炭素系膜5の厚さ、炭素系膜5の製造方法は、実施の形態1と同様であるため、それらの説明を省略する。
[実施の形態3]
図5(a)、(b)は、本発明の実施の形態3に係るガラス光学素子1の製造方法を示す説明図、およびガラス素材3の表面の伸び量に応じて炭素系膜5の厚さを相違させた様子を示す説明図である。なお、本形態は、基本的な構成が実施の形態1と同様であるため、対応する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。また、図5(a)には、炭素系膜5の図示を省略してある。
図5(a)に示すように、本形態のガラス光学素子1を製造する際にも、実施の形態1と同様、第1工程において、ガラスプリフォームと称せられる両凸曲面形状のガラス素材3の表面に所定の膜厚の炭素系膜5を形成した後、第2工程では、ガラス素材3を加熱軟化させた状態で下型21および上型23からなる成形型20によりプレス成形して、下型21の成形面210および上型23の成形面230をガラス素材3に転写する。
ここで、本形態のガラス光学素子1は、凹メニスカス形状を有しており、このようなガラス光学素子1を製造する際、第2工程では、ガラス光学素子1の第1面16を形成すべきガラス素材3の第1素材面36とガラス光学素子1の第2面17を形成すべきガラス素材3の第2素材面37との間では表面伸び率が相違するので、第1素材面36と第2素材面37との間では炭素系膜5の膜厚を相違させる。すなわち、凹メニスカス形状のガラス光学素子1は、第1面16が凸面で第2面17が凹面であるため、ガラス光学素子1の第1面16を形成すべきガラス素材3の第1素材面36では表面の伸び率が小さく、ガラス光学素子1の第2面17を形成すべきガラス素材3の第2素材面37では表面伸び率が大きい。従って、図5(b)に示すように、第1工程において炭素系膜5の膜厚を第1素材面36より第2素材面37で厚くしたガラス素材3を用いる。
このように本形態では、プレス成形による変形が大きい部位(表面伸び率が大きい部位)では、炭素系膜5の膜厚を厚くしてあるので、ガラスと成形面との接触を防止することできる。また、ガラス素材3において、プレス変形が小さい部位(表面伸び率が小さい部位)では、炭素系膜5の膜厚を薄くしてあるので、亀裂による炭素系膜5の凸凹の発生を防止することができる。なお、表面伸び率の把握方法、炭素系膜5の厚さは、実施の形態1と基本的には同様であるため、それらの説明を省略する。なお、図5(b)に示すガラス素材3を製造するには、各素材面36、37に炭素系膜5を成膜する際、その膜厚を制御することにより、それぞれの面に適正な膜厚の炭素系膜5を成膜すればよい。
[実施の形態4]
図6は、本発明の実施の形態5に係るガラス光学素子1の製造方法を示す説明図である。なお、本形態は、基本的な構成が実施の形態1と同様であるため、対応する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。また、図6には、炭素系膜5の図示を省略してある。
図6に示すように、本形態のガラス光学素子1を製造する際にも、実施の形態1と同様、第1工程において、ガラスプリフォームと称せられる両凸曲面形状のガラス素材3の表面に炭素系膜5を形成した後、第2工程では、ガラス素材3を加熱軟化させた状態で下型21および上型23からなる成形型20によりプレス成形して、下型21の成形面210および上型23の成形面230をガラス素材3に転写する。
ここで、本形態のガラス光学素子1は、平凹形状を有しており、このような平凹形状のガラス光学素子1では、第1面16が平面で第2面17が凹面であるため、ガラス光学素子1の第1面16を形成すべきガラス素材3の第1素材面36では表面の伸び率が小さく、ガラス光学素子1の第2面17を形成すべきガラス素材3の第2素材面37では表面伸び率が大きい。従って、図5(b)を参照して説明したように、第1工程において炭素系膜5の膜厚を第1素材面36より第2素材面37で厚くしたガラス素材3を用いる。
このように本形態では、プレス変形が大きい部位(表面伸び率が大きい部位)では、炭素系膜5の膜厚を厚くしてあるので、ガラスと成形面との接触を防止することできる。また、ガラス素材3において、プレス変形が小さい部位(表面伸び率が小さい部位)では、炭素系膜5の膜厚を薄くしてあるので、亀裂による炭素系膜5の凸凹の発生を防止することができる。なお、表面伸び率の把握方法、炭素系膜5の厚さは、実施の形態1と基本的には同様であるため、それらの説明を省略する。
[その他の実施の形態]
上記形態1〜4のいずれにおいても、ガラス素材3として、両凸曲面形状のガラスプリフォームを用いたが、ガラス素材3として球形のガラスプリフォームを用いる場合に本発明を適用してもよい。ここで、ガラス素材3の部位によって炭素系膜5の膜厚分布を設けるにあたり、得ようとするレンズ形状によってガラス素材3の膜厚分布が一義的に決まるわけではなく、レンズ外径の大きさ肉厚、およびガラス素材3の形状(球形状、両凸曲面形状、平板形状)などに基づいて、膜厚分布が変わる。従って、図2(b)および図5(b)を参照して説明したガラス素材3の他、図7に示すように、第1工程において炭素系膜5の膜厚を素材周辺領域より素材中央領域で厚くしたガラス素材3を用いてもよい。なお、図7に示すようなガラス素材3を製造するには、蒸着法やCVD法において炭素系膜5を形成する際、開口を有するマスクを通して炭素系膜5を成膜することにより、プリフォームに成膜する炭素膜の膜厚を中央側では厚く、周辺側では薄くすることができる。
また、本発明に係るガラス光学素子1の製造方法は、各種形状のレンズを製造するのに適用することができ、そのレンズ形状は、両凸、凸メニスカスレンズ、両凹、凹メニスカスレンズなど制約は無い。但し、少なくともひとつの非球面を有する光学レンズの製造に好適である。また、本発明は、レンズの製造の他にも、プリズム、ミラー、グレーティング、マイクロレンズ、積層型回折格子などのガラス光学素子1の製造に有効に適用できるほか、光学素子以外のガラス成形品に対しても適用できることは言うまでもない。ガラス光学素子1の用途としては、特に制約は無いが、カメラ(ビデオカメラ、デジタルカメラ、モバイル端末内蔵カメラなどを含む)用撮像系レンズ、光ピックアップレンズなどに好適に用いられる。
以下に、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例1、比較例1、実施例2、実施例3の各条件、および評価結果を表1に示す。
Figure 2006256884
なお、表1中、カン・ワレ;同一型で5000回までの連続プレスして時のカン・ワレの発生数
○:5ケ未満
△:5ケ〜49ケ
×:50ケ以上
**外観不良;同一型で5000回までの連続プレスして時の外観不良の発生数
○:5ケ未満
△:5ケ〜49ケ
×:50ケ以上
を意味する。
[実施例1]
第1工程において、成形用のガラス素材3であって、形状が長径10mmφの楕円球状(両凸曲面形状)に予備成形したプリフォームを用意し、このプリフォームに、蒸着法を用いて、素材中央領域の膜厚が0.8nm、素材周辺領域の膜厚が1.6nmの炭素膜を成膜した。プリフォームのガラス種はホウ酸塩系ガラス(ガラス転移点:Tg=520℃/軟化点:Ts=560℃)である。より具体的には、プリフォームを穴あき治具の穴部に設置して、プリフォームの上方から炭素膜を蒸着成膜した。炭素蒸着は、10-4Torr程度の真空雰囲気中で、断面積0.2cm2程度の炭素材料に100V−50A程度の電気を通電し、炭素材料を通電加熱しておこなった。炭素膜厚は、シャッターの開閉により、QCMの表示で膜厚0.8nmに調整した。一回目の炭素成膜を終了後、プリフォームを反転した後、炭素を膜厚0.8nmまで再び蒸着した。ESCA法を用いてプリフォーム表面の炭素膜厚を評価したところ、素材中央領域では0.8nm、半径4mmの部位(周辺から1mmの部位)では1.6nmであった。
第2工程では、この炭素膜で被覆されたプリフォームを、直径14mmφ、コバ厚が0.5mmである両凸レンズの形状にプレス成形した。それには、まず、プリフォームを上記のレンズ形状を基に精密加工した成形面を有する成形装置内に設置した。成形型としては、CVD法により作製した多結晶SiCの成形面をRmax=18nmに鏡面研磨したものを用いた後、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、成形面にDLC:H膜を成膜したものを用いた。窒素ガス雰囲気中で、610℃まで加熱して150kg/cm2の圧力で1分間加圧する。圧力を解除した後、冷却速度を−5℃/minで480℃になるまで冷却し、その後は−200℃/min以上の速度で冷却を行い、プレス成形物の温度が200℃以下に降下した後、プレス成形物である、ガラス光学素子1を取り出した。
このガラス光学素子1の表面の炭素系膜5の膜厚をESCA法により測定したところ、素子中央領域では0.8nm、半径8mmの部位(周辺から1mmの部位)では0.7nmであった。
同一型にて5000ショットまで連続プレスしたが、表1に示すように、カン・ワレの発生はなかった。また、目視できるクモリの発生はみられず、光学素子の外観も、全数、良好であり、歩留は100%であった。
[比較例1]
実施例1と同様のプリフォームを用い、第1工程において、蒸着法にて膜厚0.8nmの炭素膜を成膜した。その際、プリフォームを治具にセットし、実施例1とは異なり、蒸着の回り込みがない状態で蒸着した。第1面に炭素系膜を成膜後、プリフォームをセットした治具を裏返して、裏面に炭素系膜を同様に成膜した。炭素膜厚は、シャッターの開閉により、QCMの表示で膜厚0.8nmに調整した。一面目の炭素成膜を終了後、プリフォームを反転した後、炭素を膜厚0.8nmまで再び蒸着した。ESCA法を用いてプリフォーム表面の炭素膜厚を評価したところ、上下面ともに、中央部では0.8nm、半径4mmの部位(周辺から1mmの部位)でも0.8nmであった。
次に、実施例1と同様に、同一型を用いて、直径14mmφ、コバ厚が0.5mmの凸レンズを連続プレスした。成形を続けたところ、表1に示すように、70ショットでガラス光学素子にカン・ワレが発生し始め、また、100ショット以降、カン・ワレが連続した。これら不良となったガラス光学素子(レンズ/成形品)は、いずれもその周辺部にカン・ワレが確認された。プレスを120ショットで終了し、金型の成形面を観察したところ、成形面にガラスと思われる融着物が認められた。
[実施例2]
実施例1と同様のプリフォームを用い、第1工程において、蒸着法にてプリフォームの両面に膜厚2.0nmの炭素系膜を成膜した。炭素系膜を成膜したプリフォームを、2枚のAl薄板の円形開口部(径:4mmφ)にてはさみ固定し、市販のUVオゾン処理装置(UVランプ出力:100W)にセットした。大気雰囲気にて、片面あたり10分のUVオゾン処理を行った後、このプリフォーム表面の炭素膜厚をESCA法により測定したところ、中央部では0.6〜0.9nm、半径6mmの部位(周辺から1mmの部位)では2.0nmであった。すなわち、素材周辺領域の炭素膜厚を素材中央領域のそれより厚くした。
次に、実施例1と同様に、第2工程において、この炭素膜で被覆されたプリフォームを、直径14mmφ、コバ厚が0.5mmである両凸レンズの形状へプレス成形し、ガラス光学素子1を得た。このガラス光学素子1の表面の炭素系膜5の膜厚をESCAを用いて測定したところ、素子中央領域では0.5〜0.7nm、半径6mmの部位(周辺から1mmの部位)では0.9nmであった。
同一型にて5000ショットまで連続プレスしたが、表1に示すように、カン・ワレの発生はなかった。また、目視できるクモリの発生はみられず、光学素子の外観も、全数、良好であり、歩留は100%であった。
[実施例3]
成形用のガラス素材3、炭素成膜法、炭素系膜5の膜厚などを表1のとおり変更した以外は、実施例1と同様に炭素膜を成膜した成形用ガラス素材を同一型で500ショットまで連続プレスした。表1のとおり、カン・ワレおよび外観不良の発生はなく、歩留は極めて良好であった。
本発明の実施の形態1に係るガラス光学素子の製造方法を示す説明図である。 (a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係るガラス光学素子の製造方法において、第2工程でガラス素材の表面が各部位毎に伸び量が相違する様子を示す説明図、およびガラス素材の表面の伸び量に応じて炭素系膜の厚さを相違させた様子を示す説明図である。 (a)〜(d)は、本発明の実施の形態1に係るガラス光学素子の製造方法において、ガラス素材に炭素系膜を形成する方法を示す工程断面図である。 本発明の実施の形態2に係るガラス光学素子の製造方法を示す説明図である。 (a)、(b)は、本発明の実施の形態3に係るガラス光学素子の製造方法を示す説明図、およびガラス素材の表面の伸び量に応じて炭素系膜の厚さを相違させた様子を示す説明図である。 本発明の実施の形態4に係るガラス光学素子の製造方法を示す説明図である。 本発明のその他の実施の形態に係るガラス光学素子の製造方法に用いたガラス素材の説明図である。
符号の説明
1 ガラス光学素子
5 炭素系膜
3 ガラス素材
20 成形型
21 下型
23 上型
210、230 成形面
11 素子中央領域
12 素子周辺領域
16 第1面
17 第2面
31 素材中央領域
32 素材周辺領域
36 第1素材面
37 第2素材面

Claims (9)

  1. ガラス素材の表面に所定の膜厚の炭素系膜を形成する第1工程と、前記ガラス素材を加熱軟化させた状態で成形型によりプレス成形して前記成形型の成形面を前記ガラス素材に転写する第2工程とを含む、ガラス光学素子の製造方法において、
    前記第2工程での前記ガラス素材の表面における各部位の伸び量の大小を予め把握し、
    前記第1工程では、前記伸び量の把握結果に基づいて、前記炭素系膜の膜厚を前記伸び量が小さい部位より前記伸び量が大きい部位で厚くしておくことを特徴とするガラス光学素子の製造方法。
  2. 前記第1工程では、前記ガラス光学素子の光軸を含む素子中央領域を形成すべき前記ガラス素材の素材中央領域と、前記ガラス光学素子の前記素子中央領域の周りを囲む素子周辺領域を形成すべき前記ガラス素材の素材周辺領域との間で前記炭素系膜の膜厚を相違させることを特徴とする請求項1に記載のガラス光学素子の製造方法。
  3. 前記ガラス素材としての両凸曲面形状あるいは球形状のガラス素材を前記第2工程で成形して両凸形状あるいは凸メニスカス形状のガラス光学素子を製造するにあたって、
    前記第1工程では、前記炭素系膜の膜厚を前記素材中央領域より前記素材周辺領域で厚くすることを特徴とする請求項2に記載のガラス光学素子の製造方法。
  4. 前記第1工程では、前記ガラス光学素子の第1面を形成すべき前記ガラス素材の第1素材面と前記ガラス光学素子の第2面を形成すべき前記ガラス素材の第2素材面との間で前記炭素系膜の膜厚を相違させることを特徴とする請求項1に記載のガラス光学素子の製造方法。
  5. 前記ガラス素材としての両凸曲面形状あるいは球形状のガラス素材を前記第2工程で成形して、前記第1面が凸面で前記第2面が凹面の凹メニスカス形状のガラス光学素子、あるいは前記第1面が平面で前記第2面が凹面の平凹形状のガラス光学素子を製造するにあたって、
    前記第1工程では、前記炭素系膜の膜厚を前記第1素材面より前記第2素材面で厚くすることを特徴とする請求項4に記載のガラス光学素子の製造方法。
  6. 前記炭素系膜の膜厚は、当該炭素系膜が薄い部位で0.5nmから5nmの範囲であり、当該炭素系膜が厚い部位で1nmから10nmであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のガラス光学素子の製造方法。
  7. 前記成形型を構成する複数の型部材のうち、少なくとも一つの型部材の成形面には、離型膜が形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のガラス光学素子の製造方法。
  8. 前記第1工程では、前記ガラス素材に前記炭素系膜を形成する際、前記炭素系膜の膜厚を部位によって相違させることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のガラス光学素子の製造方法。
  9. 前記第1工程では、前記ガラス素材に前記炭素系膜を形成する成膜処理と、前記ガラス素材に形成した前記炭素系膜を部分的に除去して当該炭素系膜の膜厚を部位によって相違させる膜厚調整処理とを行うことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のガラス光学素子の製造方法。
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