JP5495518B2 - ガラス光学素子の製造方法 - Google Patents
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非球面ガラスレンズの製造には、金型を用いたプレス成形が採用される。所望の精度に仕上げられた非球面成形面を有する金型の上で加熱され軟化されたガラスをプレスすることにより光学素子を得る。
かかる問題に対して、従来は、定期的かつ機械的に金型からガラス付着物を除去していた。ここで、機械的除去とは、アルミナ等の硬質材料の細粉を金型に吹き付けて削り落としたり、或いは、ダイヤモンドペースト等で金型の成形面を研磨して除去することを意味する。
本発明は、簡便かつ効率的で、金型に対するダメージが少ない、成形用金型の洗浄方法
等を提供することを目的とする。
また、所定のガスは、フッ化炭素(CF4)、4フッ化硫黄(SF4)、6フッ化硫黄(SF6)、及び6フッ化2炭素(C2F6)のうち少なくともいずれか1種類のガスを含むことを特徴とする。
更に、取り外された成形用金型を成形用金型を洗浄する洗浄装置に設置する工程は、成形用金型の成形面を露出させ、成形面以外の箇所を覆い隠すためのマスクを使用して設置することを特徴とする。
また、導入された所定のガスに高周波電圧を印加してプラズマ化し被洗浄部材の表面をプラズマ化されたガスに晒す工程は、炭素(C)、珪素(Si)、リン(P)、ホウ素(B)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)から選ばれる少なくとも1種類の単体、酸化物、窒化物またはフッ化物を除去するためのものであることを特徴とする。
更に、所定のガスは、ハロゲン元素を含むガス(但し、フッ化水素(HF)及び塩化水素(HCl)を除く)であることが好ましく、所定のガスは、CF4、C2F6、SF4、SF6のうち少なくともいずれか1種類のガスを含むことが好ましく、所定のガスは、酸素または水素を主成分とするガスであることが好ましい。
また、洗浄装置は、成形用金型が設置される金型設置台と、金型設置台に対向配置された対向電極とを含み、金型設置台と対向電極との間には高周波電圧が印加されることを特徴とすれば、成形用金型の成形面だけを露出した状態で洗浄したり、スペーサを使用して高さが異なる成形用金型の成形面をほぼ同じ高さにして洗浄することにより、成形用金型へのダメージの蓄積を回避し、処理の均一性と安定性を確保できて好ましい。
更に、洗浄装置は、洗浄装置の対向電極に高周波電圧が印加されることを特徴とする。
更にまた、洗浄装置は、洗浄装置の金型設置台に高周波電圧が印加されることを特徴とする。
図1は、本実施の形態にかかる成形用金型を使用したガラス光学素子製造装置の一例としてのレンズ成形装置10の構成図である。
図1(A)に示されているように、レンズ成形装置10は、ガラスをプレス成形して光学素子の一例としてのレンズを製作する下金型11及び上金型12と、下金型11及び上金型12の動作を規制する胴型13とを有して構成される。
胴型13は、例えば、タングステンカーバイトを主成分とする超硬合金を含んで構成され、図示しない駆動系を使って上下動する上金型12の動作を規制して、下金型11と上金型12との中心軸がずれないようにしている。
下金型11と上金型12との間にガラスプリフォーム14を設置する。
ここで、ガラスプリフォーム14は、シリカを主成分とし、例えば、アルミナ、ナトリウム、フッ化ランタン等が添加された低融点ガラスにより構成される。尚、ガラスプリフォーム14は、例えば、設置されたガラスプリフォーム14の伸びが停止し、収縮が始まる屈伏温度(屈伏点)が約600℃以下の低融点ガラスであっても、屈伏温度が約400℃以下の超低融点ガラスであってもよい。
下金型11及び上金型12が十分に冷却した後に、上金型12を胴型13から抜いてガラス成形体17を取り出す。
成形用金型21の洗浄装置20は、ガラスをプレス成形して光学素子の一例としてのレンズを製作する成形用金型21と、その成形用金型21が設置される金型設置台22と、金型設置台22に対向して配置される対向電極23とを有する。また、洗浄装置20は、成形用金型21の周囲環境に所定の処理ガスを導入する処理ガス導入バルブ24と、金型設置台22と対向電極23との間に高周波電圧を印加する高周波電源25と、周囲環境から空気又は処理ガスを排気する排気バルブ26及び排気ポンプ27とを有して構成される。
11又は上金型12(図1参照)が該当する。
金型設置台22は、成形用金型21を搭載できる強度を有した、例えば、ステンレス等の導電体で構成される。そして、金型設置台22は、対向電極23と共に、高周波電源25に接続される。
処理ガス導入バルブ24は、後述する排気バルブ26及び排気ポンプ27とが、金型設置台22と対向電極23との間に形成される成形用金型21の周囲環境から空気を排出して所定の真空度に達した後に、処理ガスを導入する。ここで、処理ガスは、常温において気体のガスが好ましく、例えば、フッ素或いは塩素等ハロゲン元素を含むガスが好適に使用される。フッ素或いは塩素等ハロゲン元素を含むガスとしては、CF4、C2F6、SF4、SF6等が挙げられる。また、プラズマの安定放電や、処理効果促進のために、アルゴン(Ar)、酸素、水素、炭酸ガスを添加することも有効であり、これらの副添加ガスを1種、もしくは複数種用いて使用することも好ましい。更に、酸素または水素を主成分とするガスでもよい。なおここで酸素または水素を主成分とするガスとは、酸素または水素が体積含有比率で50%以上含むガスであることを意味する。
ここで、高周波電圧の印加方法として、RFプラズマ、マイクロ波プラズマ、DCプラズマ等がいずれも使用可能である。多量のガラス付着物が堆積する金型等絶縁物質を含む金型の場合は、放電のし易さからRFプラズマ又はマイクロ波プラズマが好適である。更に、洗浄装置20の構成の簡便さから、RFプラズマが好適である。
排気バルブ26及び排気ポンプ27は、金型設置台22と対向電極23との間に形成される成形用金型21の周囲環境から、所定の真空度に達するまで空気を排出する。また、排気バルブ26及び排気ポンプ27は、処理が終了した後に、処理ガスを排気する際に使用される。
成形用金型21が金型設置台22上の所定位置に搭載された後、排気バルブ26及び排気ポンプ27が協働して、所定の真空度に達するまで成形用金型21の周囲環境から空気を排出する。所定の真空度に達した後、処理ガス導入バルブ24から、処理ガスが導入される。
そして、金型設置台22と対向電極23との間に、高周波電源25によって高周波電圧が印加される。印加された高周波電圧により処理用ガスが分解されて、ラジカルやイオンが生成される。生成されたラジカルやイオンは、金型に堆積したガラス付着物に衝突して化学反応し、気化により付着ガラスが除去される。
除去することが可能な成分としては、炭素(C)、珪素(Si)、リン(P)、ホウ素B)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)から選ばれる少なくとも1種の単体、酸化物、窒化物またはフッ化物等が挙げられる。
グラウンドモードの場合は、イオン入射が少なく成形用金型21へのダメージは少ないが、処理時間がやや長めになる。
従って、高周波電圧の印加方法は、付着ガラスのつき方、量、処理のタイミング等を考慮して使い分けることが望ましい。
タングステンカーバイトを主成分とする超硬合金にPt−Ir被膜層が形成された成形用金型21を用い、ホウケイ酸塩クラウンガラスの一種で、光学ガラスの中で最も一般的なガラスのBK7を窒素雰囲気下で500ショット成形した。その後、使用した成形用金型21を前述の洗浄装置20(図2参照)に設置し、次にSF6と酸素との混合比4:1の混合ガスを50SCCM(SCCMとは、当該ガスが25℃1気圧のときのcm3/min)導入し、続いて13.56MHzの高周波電圧を200W印加し、60分間処理を行った。ガラス付着物の除去状態は平均表面粗さRaで評価した。金型のダメージは光学顕微鏡により目視で行った。
(実施例2)
図3は、実施例2にかかる洗浄装置30の構成図である。
金型設置台22に高周波電圧を印加して対向電極23を接地し(RFモード)、処理時間を30分とした点が、実施例1と相違する。他は実施例1と同様に洗浄処理を行った。
図4は、実施例3にかかる洗浄装置40の構成図である。
金型設置台22にDC電源28を印加し金型設置台22と対向電極23に高周波電圧を印加し(DCバイアスモード)、処理時間を30分とした点が、実施例1と相違する。他は実施例1と同様に洗浄処理を行った。
上記実施例1と同じ成形用金型21を用い、BK7を窒素雰囲気下で200ショット成形した。その後、HF50%水溶液に2時間浸漬して洗浄処理を行った。
(比較例2)
上記実施例1と同じ成形用金型21を用い、BK7を窒素雰囲気下で200ショット成形した。その後、フッ化アンモニウム30%水溶液に5時間浸漬して洗浄処理を行った。
処理前及び処理後の平均表面粗さRaと金型ダメージとを表1に示す。
本実施の形態によれば、溶解液に浸漬して成形用金型21に堆積したガラス付着物を化学的に除去する洗浄方法に比して、水及び溶剤の洗浄と金型乾燥等の工程が不要となる。よって、溶解液を取り扱わないので安全であり、熟練作業者を必要としない。
成形用金型21に材料として用いられる超硬合金、炭化珪素、グラッシーカーボン等は、フッ素系プラズマに対する耐久性が高いので、洗浄処理では金型設置台22上に成形用金型21を直接設置し、成形用金型21全体を洗浄処理しても大きな問題はないと考えられる。しかし、洗浄処理の繰り返しによるダメージの蓄積を抑制するためには、成形面15,16(図1参照)だけを露出し他の箇所を覆い隠して洗浄処理することが好適である。マスク50の一例を図5及び図6に示す。
マスク50は、耐フッ素性が高い材料が好適であるが、軽量でかつ加工性が高い点で、アルミニウム(Al)が特に好適である。
更に、成形面15,16をほぼ平面にすることによりプラズマ放電時の電場を安定させることができ、処理の均一性と安定性を確保することが可能となる。高さが異なる成形用金型21に対しては、例えば、成形用金型21と同じ材料で構成されたスペーサ51を使用することにより同時に洗浄処理することが可能である。
図7に示したマスク50は、成形用金型21が配される円形状の孔部52の周囲に金属膜53が円環形状に形成されている。この金属膜53は、導電性であって、上述した洗浄装置による洗浄処理により除去されにくいものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)により形成することができる。また、これらの金属から選ばれる少なくとも1種を含む合金等であってもよい。
なお、図7に示したマスク50に形成されている金属膜53は、円環形状としたが、これに限られるものではなく、他の形状でもよい。例えば、金属膜53をマスク50の上面全体に形成してもよい。
図9は、実施例5において洗浄を行う成形用金型21を説明した図である。
図9で示した成形用金型21は、タングステンカーバイトを主成分とする超硬合金からなる。そして、成形面15,16の直径Lが15mmであり、高さHが10mmである。また、成形面15,16にカーボンよりなる被膜層が形成されている。
このような成形用金型21を使用し、BK7を窒素雰囲気下で500ショット成形した。その後、使用した成形用金型21を前述のRFモードを採用した洗浄装置30(図3参照)に設置した。このとき、マスク50を使用し、成形用金型21の成形面15,16は露出させ、他の部分は覆い隠すようにした。なお、マスク50としては、図7で説明を行った金属膜53が形成されたものを使用した。次に酸素ガスを100SCCM導入し、続いて13.56MHzの高周波電圧を500W印加し、10分間処理を行った。
マスク50として図5で説明した金属膜53が形成されていないものを使用したこと以外は、実施例5と同様にして成形用金型21の洗浄を行った。
洗浄装置として図4で説明を行ったDCバイアスモードを採用した洗浄装置40を使用したこと以外は、実施例5と同様にして成形用金型21の洗浄を行った。
マスク50として図5で説明した金属膜53が形成されていないものを使用し、洗浄装置として図4で説明を行ったDCバイアスモードを採用した洗浄装置40を使用したこと以外は、実施例5と同様にして成形用金型21の洗浄を行った。
成形用金型21の成形面15,16に形成する被膜層をシリコンカーバイト(SiC)にしたこと以外は、実施例5と同様に成形用金型21の洗浄を行った。
成形用金型21の成形面15,16に形成する被膜層をシリコンカーバイト(SiC)にしたこと以外は、実施例6と同様に成形用金型21の洗浄を行った。
成形用金型21の成形面15,16に形成する被膜層をシリコンカーバイト(SiC)にしたこと以外は、実施例7と同様に成形用金型21の洗浄を行った。
成形用金型21の成形面15,16に形成する被膜層をシリコンカーバイト(SiC)にしたこと以外は、実施例8と同様に成形用金型21の洗浄を行った。
洗浄を行った成形用金型21の成形面15,16を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて観察を行い、その画像により洗浄状態を目視にて判定した。
なお、本実施の形態においては、ガラス付着物のみならず被膜層も除去される。そしてこのとき、ガラス付着物および被膜層が除去されており、成形面15,16に荒れがなければ「◎」とした。また、ガラス付着物および被膜層が除去されているが、成形面15,16に荒れが発生している場合で、その荒れの程度が軽微なときは、「○」とした。
図10は、成形面15,16において観察を行った箇所について説明を行った図であり、成形用金型21を成形面15,16の方向から見た図である。観察を行った箇所は、成形面15,16の中央部であるA点、成形面15,16の外周端の任意の1点であるB点、および成形面15,16の外周端の1点でありB点に対し時計回りに90度回転させた箇所に位置するC点とした。
また、この場合も前述のマスク50を用いて、被洗浄部材の所定部分を露出させ、所定部分以外の箇所を覆い隠すことができる。これにより被洗浄部材の洗浄すべき所定部分において洗浄分布の不均一が生じにくくなると共に、被洗浄部材の端部を荒れにくくすることができる。
Claims (7)
- 凸部を有し、当該凸部の端面が被膜層が形成された成形面である成形用金型を使用したガラス光学素子の製造方法であって、
ガラスを主成分とする素材をプレス成形してガラス光学素子を製造するガラス光学素子製造装置から、洗浄すべき成形用金型を取り外す工程と、
前記成形用金型の成形面がマスクの表面と平面となるようにすると共に、当該マスクにより成形面以外の箇所を覆い隠し成形面を露出した状態とする工程と、
前記マスクと共に前記成形用金型を洗浄する洗浄装置に設置する工程と、
前記洗浄装置にて、設置された前記成形用金型の周囲環境に所定のガスを導入する工程と、
導入された前記所定のガスに高周波電圧を印加してプラズマ化し、前記成形用金型の表面をプラズマ化されたガスに晒す工程と、
前記プラズマ化されたガスに晒された後に前記成形用金型を前記ガラス光学素子製造装置に再度取り付ける工程と、
前記成形用金型が取り付けられた前記ガラス光学素子製造装置を使ってガラス光学素子をプレス成形により製造する工程と
を含むことを特徴とするガラス光学素子の製造方法。 - 前記マスクは、前記成形用金型の成形面が配される部分と隣接する部分に金属膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス光学素子の製造方法。
- 前記金属膜は、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)から選ばれる少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項2に記載のガラス光学素子の製造方法。
- 前記成形用金型の成形面の被膜層は貴金属を含む合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス光学素子の製造方法。
- 前記所定のガスは、ハロゲン元素を含むガス(但し、フッ化水素(HF)及び塩化水素(HCl)を除く)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス光学素子の製造方法。
- 前記所定のガスは、酸素または水素を主成分とするガスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス光学素子の製造方法。
- 導入された前記所定のガスに高周波電圧を印加してプラズマ化し前記成形用金型の表面をプラズマ化されたガスに晒す前記工程は、炭素(C)、珪素(Si)、リン(P)、ホウ素(B)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)から選ばれる少なくとも1種類の単体、酸化物、窒化物またはフッ化物を除去するためのものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガラス光学素子の製造方法。
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