JP2004083380A - 光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型とその再生方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガラスに対する離型性に優れ、剥離、クラック等の膜に関する不具合がなく、また、型母材の劣化もなく耐久性、経済性に優れた光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型とその再生方法を提供する。
【解決手段】ガラスよりなる光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型の製造方法において、第1の工程で、金属よりなる型母材の少なくとも成形面にケイ素イオンおよび炭素イオンを注入し、炭化シリコン膜あるいは炭素とシリコンの混合膜を形成する。次に、前記膜の上に、第2の工程で炭素を主成分とする膜を形成する。
【選択図】 なし
【解決手段】ガラスよりなる光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型の製造方法において、第1の工程で、金属よりなる型母材の少なくとも成形面にケイ素イオンおよび炭素イオンを注入し、炭化シリコン膜あるいは炭素とシリコンの混合膜を形成する。次に、前記膜の上に、第2の工程で炭素を主成分とする膜を形成する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レンズ、プリズム等のガラスよりなる光学素子をガラス素材のプレス成形により製造するのに使用される光学素子成形用型とその製造方法および再生方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
研磨工程を必要としないガラス素材のプレス成形によってレンズを製造する技術は、従来の製造方法において必要とされた複雑な工程をなくし、簡単且つ安価にレンズを製造することを可能とし、近年、レンズのみならずプリズムその他のガラスよりなる光学素子の製造に使用されるようになってきた。
【0003】
このようなガラス光学素子のプレス成形に使用される型材に要求される性質としては、硬度、耐熱性、鏡面加工性等に優れていることが挙げられる。従来、この種の型材として金属、セラミックスおよび母材にそれらをコーティングした材料等、数多くの提案がなされている。
【0004】
特開昭52−45613号公報には、成形面に炭化ケイ素または窒化ケイ素を形成した型が、特開昭60−246230号公報には超硬合金に貴金属をコーティングした型が、また、特開昭61−183134号公報、特開昭61−281030号公報、特開平1−301864号公報にはダイヤモンド薄膜、水素化アモルファス硬質炭素膜、硬質炭素膜、ダイヤモンド状炭素膜等の炭素を主成分とする膜を形成した型が提案されている。炭素を主成分とする膜の密着性改善としては、例えば特公平6−60404号公報では、クロムまたはチタンを主体とする下層と、シリコンまたはゲルマニウムを主体とする上層とからなる中間層を金属基材に形成した後、この中間層上に炭素を主成分とする膜を形成し密着性の向上を提案している。また、金型は非常に高価であるため、炭素膜の特徴である酸化反応、エッチングにより容易に膜が除去できる特性を活かし、膜除去の後、再度炭素膜を形成し金型を再利用する提案が、例えば特許第2505893号に提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来技術には、それぞれ以下のような欠点がある。
特開昭52−45613号公報記載の方法では、炭化ケイ素および窒化ケイ素は一般に酸化されにくいとされているが、高温では酸化が起こり表面に酸化ケイ素の膜が形成されるためガラスの融着が生じる。また、高硬度であるため加工性に制限を受けるためタングステン合金等の金属型母材が多く用いられている。特開昭60−246230号公報の超硬合金として挙げられている炭化タングステン(WC)に貴金属をコーティングした材料は酸化物を作りにくいため、型加工性に優れ、ガラスの融着を起こしにくいが、型母材との密着において不十分となり、膜の剥離等が発生しやすく密着性において問題を持つ。また、極めて柔らかいため傷がつき易く変形し易いという欠点も持つ。
【0006】
また、特開昭61−183134号公報、特開昭61−281030号公報、特開平1−301864号公報にそれぞれ記載のダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド状炭素、水素化アモルファス硬質炭素膜、硬質炭素膜を用いた型は、型とガラスの離型性が良く、ガラスの融着は起こさないが、成形操作を繰り返して行うと、WC等の金属型母材を用いた場合、膜と型母材との密着性が悪く界面から剥離することにより、部分的な表面の荒れを生じ、成形品においては十分な性能が得られないことがある。
【0007】
また、特公平6−60404号公報に記載されている中間層による密着性改善はシリコンと炭素膜との親和性の高さを利用し効果をきたしているが、金属基材と中間層の間、上層と下層の間において明瞭な界面が存在するため繰り返しの成形によるヒートショックにより剥離をきたしてしまう。また、特許第2505893号公報に記載されている炭素膜を酸化反応、プラズマエッチングにより除去し、または光学素子成形後の金型の炭素膜を除去した後再度成膜して、金型の再利用を図る方法は、高価な金型コストの低減において有効であるが、型母材に炭化タングステン等の金属型母材を用いると酸化が進行しやすく、またプラズマに対する耐久性が低いため、アッシングにより粗さの劣化、形状の劣化をきたしてしまう。
【0008】
以上のように、成形性、耐久性、経済性に優れた光学素子成形用型を実現するには至っていない。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、ガラスに対する離型性に優れ、剥離、クラック等の膜に関する不具合がなく、また、型母材の劣化もなく耐久性、経済性に優れた光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型とその再生方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る光学素子成形用型の製造方法は、ガラスよりなる光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型の製造方法において、金属よりなる型母材の少なくとも成形面に、ケイ素イオンおよび炭素イオンを注入する第1の工程と、炭素を主成分とする膜を形成する第2の工程と、からなることを特徴とする。
【0011】
第1の工程では、金属型母材の少なくとも成形面にケイ素イオン(Si+)と炭素イオン(C+)を注入し、炭化シリコンもしくは炭素とシリコンの混合膜をイオン注入のデポジットにより形成する。注入方法および注入条件については、特に限定されないが、金属型母材の密度を考慮すると、Si+イオン、C+イオンを用いた場合、加速電圧10〜100keV、電流密度5〜50mA/cm2が望ましく、注入量は特に制限は無いが、各イオンの量は同数注入する。
【0012】
第2の工程においては、炭素を主成分とする炭素膜を第1の工程で形成した膜上に形成する。炭素を主成分とする膜としては、例えばダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド状炭素膜、水素化アモルファス炭素膜(以下,DLC膜という)が挙げられ、形成方法として例えば、ダイヤモンド薄膜は、マイクロ波プラズマCVD法、熱フィラメントCVD法、プラズマジェット法、ECRプラズマCVD法等により、ダイヤモンド状炭素膜およびDLC膜はプラズマCVD法、イオンビーム・スパッタ法、イオンビーム蒸着法、プラズマ・スパッタ法等により形成される。また、前記形成方法に不活性ガス、窒素、炭素から選ばれる少なくとも一種のイオンを成膜と同時に注入するIBM(イオンビームミキシング)あるいは注入する金属型母材にパルスバイアスをかけて行うPBII(プラズマ・ベースド・イオン・インプランテーション)と成膜方法を組み合わせることにより、膜と金属型母材との間に明瞭な界面が無くなり密着性を向上することができ望ましい。
【0013】
本発明の請求項2に係る光学素子成形用型の製造方法は、請求項1における第1の工程において、ケイ素イオンおよび炭素イオンを同時にまたは交互に注入することを特徴としており、注入イオンによる反応あるいは混合性を考慮すると、Si+イオン、C+イオンを同時あるいは短時間サイクルでの交互の注入が望ましい。
【0014】
本発明の請求項3に係る光学素子成形用型は、請求項1または2記載の光学素子成形用型の製造方法より製造されることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4に係る光学素子成形用型は、請求項3の構成にあって、前記型母材が、炭化タングステン、タングステン合金、ステンレス鋼から選ばれる金属であることを特徴とする。
【0016】
金属型母材としては特に限定されないが、研削、研磨加工を考慮すると、炭化タングステン、タングステン合金が好ましく、成型時の温度によっては耐熱性の劣るステンレス鋼(SUS)を用いることもできる。
【0017】
本発明の請求項5に係る光学素子成形用型の再生方法は、請求項3または4記載の光学素子成形型の、少なくとも前記炭素を主成分とする膜を酸化反応にて除去した後、再度炭素を主成分とする膜を形成することを特徴としており、この光学素子成形用型を用いてガラスよりなる光学素子のプレス成形を行った後、型成形面に形成されている炭素膜を除去し、その後、再度成膜することにより再利用を行う。
【0018】
炭素を主成分とする膜を除去する方法としてはドライエッチングがあり、プラズマ・エッチング、スパッタ・エッチング、イオンビーム・エッチング、リアクティブイオン・エッチング等の方法が用いられる。エッチング量としては数Å、数10Å程度あればよい。エッチングガスとしてはO2、H2、N2、空気、Arに代表される不活性ガス、CF4等と、これらの混合ガスが用いられる。特に、炭素系の膜を酸素プラズマにより酸化する方法は、膜が化学反応によりガス化して除去できるため完全な除去が可能であり望ましい。
【0019】
以下に、本発明の作用を述べる。
本発明では型母材として金属型母材を用いる。SiC、SiN等のセラミック型母材に比べタングステン合金、炭化タングステン、ステンレス鋼(SUS)等の金属型母材は硬度が低く、研削、研磨等の型加工性が良好であるため、複雑な形状、高い鏡面性を低コストで確保でき経済性に優れる。これらの材質の金属型母材にて所望形状の成形面を形成する。そして、この成形面に第1の工程としてシリコンおよび炭素を注入する。注入されたシリコン、炭素は反応して、炭化シリコン膜を形成し、あるいは未反応の場合でもミクロレベルまで混合され炭化シリコンに近い特性を示す混合物をデポジット膜として形成する。この膜は、型母材との間に明瞭な界面が無いため高い密着性を示す。
【0020】
その後、第2の工程として、この膜上に炭素系膜を形成する。シリコン、炭素は同じ第IV族元素であり、特性も近いため、高い密着性を得ることができ、また不活性ガス、窒素、炭素から選ばれる少なくとも一種のイオンを成膜と同時に注入すると、膜と膜との間に明瞭な界面が無くなり、さらに密着性が高まる。
【0021】
完成した金型を用いて繰り返しガラス光学素子のプレス成形を行う。数多くの成形を行うと、金型表面にガラスの融着や鉛の析出、傷が付く等の問題が発生するので、これらの金型を継続的に使用するためには、適当な成形回数ごとに成形面をダイヤモンドパウダー等により機械的に研磨(クリーニング)する必要がある。
【0022】
しかし、このクリーニング回数が多くなるに従い、型形状が変形、劣化する。そこで、適当なクリーニング回数ごとに金型成形面の傷んだ膜を除去する必要がある。炭素系膜の除去は酸素プラズマ等のエッチング、酸化反応を利用して行い酸素を用い炭素系の膜をエッチング(アッシング)すると炭素が酸化されて除去されるが、このとき炭素系の膜だけをエッチング(アッシング)することは難しく、通常、型母材表面もエッチング(アッシング)され、金型母材表面、特に成形面も酸化されてしまう。
【0023】
特に金属型母材は酸化が顕著であるが、本発明では金属型母材表面に耐熱酸化特性、耐アッシング特性に優れた炭化シリコンあるいは炭化シリコンに近い特性を示す炭素とシリコンの混合物を形成した後、その上に炭素系膜を形成しているため、この炭素系膜をエッチング(アッシング)しても金型成形面を変形、劣化させることがない。また、エッチングという方法を用いずに、酸素雰囲気下において金型母材を750℃以上にすることにより熱酸化し膜を除去することもできる。
【0024】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
ガラスレンズ(曲率半径R=150mm、表面粗さRmax=0.03μm、直径φ=5mm、肉厚=2mm)を得るため、本発明による成形型を作成した。型母材として超硬合金(炭化タングステン、商品名J05:富士ダイス(株)製)を所定の形状に加工した後、成形面を鏡面研磨したものを用いた。
【0025】
これらの型を洗浄した後、高エネルギーのイオン源を2つ持つ装置に設置した。一方の高エネルギーのイオン源を用いてシリコンを質量分離し、シリコンイオン(Si+)を成形面に注入量5×1017ionsをイオンエネルギー20keV、電流密度20μA/cm2で注入した。同時に、もう一方の高エネルギーのイオン源から炭素イオンを同様に5×1017ionsをイオンエネルギー20keV、電流密度20μA/cm2で成形面に注入した。そして、注入イオンの反応及び堆積により炭化シリコン膜あるいは炭化シリコンに近い特性を示す炭素とシリコンの混合膜を膜厚1000Å形成した。
【0026】
次に、イオンビーム蒸着法を用いて、前記膜上にダイヤモンド状炭素膜を形成する。図1に本実施の形態で用いる成膜装置を示す。
【0027】
図1において、1は真空容器、2はイオンビーム装置、3はイオン化室、4はガス導入口、5はイオンビーム引き出しグリッド、6はイオンビーム、7は前記膜を形成した型母材、8は基板ホルダーおよびヒーター、9は排気孔を示す。ダイヤモンド状炭素膜を形成する際には、有機溶剤により表面を清浄にした型母材7を基板ホルダー8上に設置し、排気孔9より排気して真空容器1の内部を1×10−6Torrとする。
【0028】
次に、ガス導入口4より原料ガスCH4+Ar混合ガスを混合比CH4/Ar=1/1で導入し、真空容器1の内部を1×10−4Torrとする。イオンビーム装置2のイオン化室3で前記原料ガスをイオン化し、イオンビーム引き出しグリッド5に−500Vを印加してイオンビームを引き出し、型母材7に照射して、1.5μmの厚さにダイヤモンド状炭素膜を成膜した。このときイオンビームの電流値は0.6mA/cm2で、基板加熱は特に行っていない。成膜時間は45分間である。こうして得られた膜の表面粗さはRmax0.02〜0.03μm、ビッカース硬度は1400〜1600kg/mm2である。
【0029】
その後、この型によりフリント系ガラスLaSF03(軟化点Sp=687℃、ガラス転移点Tg=610℃)を用いて成形機にてプレス成形を500ショットの成形を行ったところ、成形面にキズ等が発生したため、成形を中止した。
【0030】
この成形に用いた型を再生するために、図1に示したイオンビーム蒸着装置に設置しダイヤモンド状炭素膜をエッチングする。まず、排気孔9より排気して真空容器1の内部を1×10−6Torrとする。次に、ガス導入口4よりエッチングガスとしてO2+Ar混合ガスを混合比O2/Ar=1/1で導入し、真空容器1の内部を1×10−4Torrとする。イオンビーム装置2のイオン化室3で原料ガスをイオン化し、加速電圧200Vでイオンビームを引き出し、エッチングを行う。このとき、基板加熱は特に行わない。このとき、発光スペクトルモニター10により電子的に励起されたSiからの発光をモニターし、エッチングをコントロールする。一定時間後、O2ガスの供給を停止し、加速電圧を50Vに下げ、Arイオンビームに変え、表面をクリーニングする。
【0031】
エッチング終了後の金型を真空容器1より取り出し、その表面粗さを測定したところRmax0.02〜0.03μmで、エッチングによる劣化は見られなかった。また、表面の酸化層についてもESCAで分析したところ、エッチング終了後の取り出す際に生じたと思われる自然酸化層程度の酸化層しか認められなかった。通常は、エッチング終了後に連続して前記条件でダイヤモンド状炭素膜を形成するので、酸化の恐れはない。このようにして、再度ダイヤモンド状炭素膜を形成した型の表面粗さはRmax0.03μm、ビッカース硬度1400〜1600kg/mm2で、最初に形成した膜と同等の特性が得られた。
【0032】
(実施の形態2)
WC(90%)+Co(10%)からなる金型母材を実施の形態1と同形状の金型に加工し、その上に実施の形態1と同条件にて炭化シリコン膜あるいは炭化シリコンに近い特性を示す炭素とシリコンの混合膜を膜厚1000Å形成した。電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD法(ECR−PCVD法)を用いて、前記膜上にダイヤモンド状炭素膜を形成する。
【0033】
ECRプラズマ装置は、図2に示す空胴共振器タイプで空胴共振器21に電磁石22で磁場をかけ、マイクロ波導入窓23より導波管24を通してマイクロ波を導入し、ガス導入口25よりガスを空胴共振器21内に導入してガスを励起する。磁場の大きさはマイクロ波導入口で2000ガウス、型表面で500ガウスになるように設定した。型ホルダー26に支持した型27は、図2に示すように空胴共振器21の外に設置した。
【0034】
次に、排気孔28より所定の圧力に排気し、ガス導入口25より炭酸ガス(10SCCM)、水素ガス(20SCCM)を空胴共振器21内に導入し、圧力5×10−2Torrとし、マイクロ波電力600W、基板温度300℃でダイヤモンド状炭素膜を1μm成膜した。その後、この型を用いて実施の形態1と同様にしてガラス成形を行い、成形に用いた型を再び本装置内に設置してダイヤモンド状炭素膜のエッチングを行った。
【0035】
エッチングガスにO2を用い、これをガス導入口25より100SCCM導入し、空胴共振器21内でプラズマ化する。このとき、圧力は5×10−3Torrとし、基板の加熱は特に行わない。磁場の大きさはマイクロ波導入口で2500ガウス、空胴共振器出口で875ガウスのECR点とし、型をこの点に設置し、マイクロ波パワー900Wでエッチング(アッシング)した。実施の形態1と同様にプラズマ発光によりモニターし、発光強度がある一定値以下になった時点で、酸素からアルゴンに切り替え、残りの膜をエッチングした。このとき、圧力、マイクロ波パワー、磁場の条件は酸素ガスの場合と同様とした。ただし、基板の位置は空胴共振器出口より150mmとした。その後、前述の成膜条件に従いダイヤモンド状炭素膜を形成し、得られた型について表面粗さ、硬度について測定したところ、実施の形態1と同様に最初と変わらない性能を有する金型を再生することができた。
【0036】
なお、上記した具体的実施の形態から次のような構成の技術的思想が導き出される。
(付記)
(1)ガラスよりなる光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型の製造方法において、前記光学素子成形用型の母材に金属型母材を用い、少なくとも成形面にケイ素、炭素のイオンを注入する第1の工程と、炭素を主成分とする膜を形成する第2の工程と、からなることを特徴とする光学素子成形用型の製造方法。
【0037】
(2)前記光学素子成形用型の金属型母材が炭化タングステン、タングステン合金、SUSから選ばれる母材であることを特徴とする(1)に記載の光学素子成形用型の製造方法。
【0038】
(3)ガラスよりなる光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型の製造方法において、前記(1)、(2)にて作成した成形用型の少なくとも成形面の炭素を主成分とする膜を酸化反応にて除去した後、再度、炭素を主成分とする膜を形成し、再利用することを特徴とする光学素子成形用型の製造方法。
【0039】
(4)前記(1)、(2)、(3)のいずれかに記載の光学素子成形用型の製造方法により製造されることを特徴とする光学素子成形用型。
【0040】
(5)ガラスよりなる光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型の製造方法において、金属よりなる型母材の少なくとも成形面に、ケイ素イオンおよび炭素イオンを注入し炭化シリコン膜あるいは炭素とシリコンの混合膜を形成する第1の工程と、前記膜上に炭素を主成分とする膜を形成する第2の工程と、からなることを特徴とする光学素子成形用型の製造方法。
【0041】
(6)前記第1の工程において、ケイ素イオンおよび炭素イオンを同時にまたは交互に同数量注入することを特徴とする(5)記載の光学素子成形用型の製造方法。
【0042】
(7)前記(5)または(6)記載の光学素子成形用型の製造方法より製造されることを特徴とする光学素子成形用型。
【0043】
(8)前記(7)記載の光学素子成形型の、少なくとも前記炭素を主成分とする膜をエッチング、酸化反応にて除去した後、再度、炭素を主成分とする膜を形成することを特徴とする光学素子成形用型の再生方法。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1,2および請求項3に係る光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型によれば、型母材との高い密着性を有する膜を有するとともに、成形ガラスとの離型性が良好で容易な離型が安価に連続して可能であり、生産性を大幅に向上可能な光学素子成形用型を得ることができる。また、光学素子成形用型の使用により剥離、クラック等の膜に関する不具合が発生しても、この膜を型母材に対する劣化を生じさせることなく除去し、再度成膜して初期状態と同様に良好な光学素子成形用型を得ることができる。
【0045】
本発明の請求項4に係る光学素子成形用型によれば、型加工性が高く、複雑な形状や高い鏡面性を有する光学素子成形用型にあっても低コストで得て経済性を図ることができる。
【0046】
本発明の請求項5に係る光学素子成形用型の再生方法によれば、金属よりなる型母材であっても型母材を劣化させることなく不具合の生じた膜の除去を行い、再度、除去した同じ膜を初期状態と同様に形成し、安価に再利用が図れる光学素子成形用型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1で用いる成膜装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態2で用いる成膜装置を示す概略図である。
【符号の説明】
1 真空容器
2 イオンビーム装置
3 イオン化室
4,25 ガス導入口
5 イオンビーム引き出しグリッド
6 イオンビーム
7 型母材
8 基板ホルダーおよびヒーター
9,28 排気孔
21 空胴共振器
22 電磁石
23 マイクロ波導入窓
24 導波管
26 型ホルダー
27 型
【発明の属する技術分野】
本発明は、レンズ、プリズム等のガラスよりなる光学素子をガラス素材のプレス成形により製造するのに使用される光学素子成形用型とその製造方法および再生方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
研磨工程を必要としないガラス素材のプレス成形によってレンズを製造する技術は、従来の製造方法において必要とされた複雑な工程をなくし、簡単且つ安価にレンズを製造することを可能とし、近年、レンズのみならずプリズムその他のガラスよりなる光学素子の製造に使用されるようになってきた。
【0003】
このようなガラス光学素子のプレス成形に使用される型材に要求される性質としては、硬度、耐熱性、鏡面加工性等に優れていることが挙げられる。従来、この種の型材として金属、セラミックスおよび母材にそれらをコーティングした材料等、数多くの提案がなされている。
【0004】
特開昭52−45613号公報には、成形面に炭化ケイ素または窒化ケイ素を形成した型が、特開昭60−246230号公報には超硬合金に貴金属をコーティングした型が、また、特開昭61−183134号公報、特開昭61−281030号公報、特開平1−301864号公報にはダイヤモンド薄膜、水素化アモルファス硬質炭素膜、硬質炭素膜、ダイヤモンド状炭素膜等の炭素を主成分とする膜を形成した型が提案されている。炭素を主成分とする膜の密着性改善としては、例えば特公平6−60404号公報では、クロムまたはチタンを主体とする下層と、シリコンまたはゲルマニウムを主体とする上層とからなる中間層を金属基材に形成した後、この中間層上に炭素を主成分とする膜を形成し密着性の向上を提案している。また、金型は非常に高価であるため、炭素膜の特徴である酸化反応、エッチングにより容易に膜が除去できる特性を活かし、膜除去の後、再度炭素膜を形成し金型を再利用する提案が、例えば特許第2505893号に提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来技術には、それぞれ以下のような欠点がある。
特開昭52−45613号公報記載の方法では、炭化ケイ素および窒化ケイ素は一般に酸化されにくいとされているが、高温では酸化が起こり表面に酸化ケイ素の膜が形成されるためガラスの融着が生じる。また、高硬度であるため加工性に制限を受けるためタングステン合金等の金属型母材が多く用いられている。特開昭60−246230号公報の超硬合金として挙げられている炭化タングステン(WC)に貴金属をコーティングした材料は酸化物を作りにくいため、型加工性に優れ、ガラスの融着を起こしにくいが、型母材との密着において不十分となり、膜の剥離等が発生しやすく密着性において問題を持つ。また、極めて柔らかいため傷がつき易く変形し易いという欠点も持つ。
【0006】
また、特開昭61−183134号公報、特開昭61−281030号公報、特開平1−301864号公報にそれぞれ記載のダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド状炭素、水素化アモルファス硬質炭素膜、硬質炭素膜を用いた型は、型とガラスの離型性が良く、ガラスの融着は起こさないが、成形操作を繰り返して行うと、WC等の金属型母材を用いた場合、膜と型母材との密着性が悪く界面から剥離することにより、部分的な表面の荒れを生じ、成形品においては十分な性能が得られないことがある。
【0007】
また、特公平6−60404号公報に記載されている中間層による密着性改善はシリコンと炭素膜との親和性の高さを利用し効果をきたしているが、金属基材と中間層の間、上層と下層の間において明瞭な界面が存在するため繰り返しの成形によるヒートショックにより剥離をきたしてしまう。また、特許第2505893号公報に記載されている炭素膜を酸化反応、プラズマエッチングにより除去し、または光学素子成形後の金型の炭素膜を除去した後再度成膜して、金型の再利用を図る方法は、高価な金型コストの低減において有効であるが、型母材に炭化タングステン等の金属型母材を用いると酸化が進行しやすく、またプラズマに対する耐久性が低いため、アッシングにより粗さの劣化、形状の劣化をきたしてしまう。
【0008】
以上のように、成形性、耐久性、経済性に優れた光学素子成形用型を実現するには至っていない。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、ガラスに対する離型性に優れ、剥離、クラック等の膜に関する不具合がなく、また、型母材の劣化もなく耐久性、経済性に優れた光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型とその再生方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る光学素子成形用型の製造方法は、ガラスよりなる光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型の製造方法において、金属よりなる型母材の少なくとも成形面に、ケイ素イオンおよび炭素イオンを注入する第1の工程と、炭素を主成分とする膜を形成する第2の工程と、からなることを特徴とする。
【0011】
第1の工程では、金属型母材の少なくとも成形面にケイ素イオン(Si+)と炭素イオン(C+)を注入し、炭化シリコンもしくは炭素とシリコンの混合膜をイオン注入のデポジットにより形成する。注入方法および注入条件については、特に限定されないが、金属型母材の密度を考慮すると、Si+イオン、C+イオンを用いた場合、加速電圧10〜100keV、電流密度5〜50mA/cm2が望ましく、注入量は特に制限は無いが、各イオンの量は同数注入する。
【0012】
第2の工程においては、炭素を主成分とする炭素膜を第1の工程で形成した膜上に形成する。炭素を主成分とする膜としては、例えばダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド状炭素膜、水素化アモルファス炭素膜(以下,DLC膜という)が挙げられ、形成方法として例えば、ダイヤモンド薄膜は、マイクロ波プラズマCVD法、熱フィラメントCVD法、プラズマジェット法、ECRプラズマCVD法等により、ダイヤモンド状炭素膜およびDLC膜はプラズマCVD法、イオンビーム・スパッタ法、イオンビーム蒸着法、プラズマ・スパッタ法等により形成される。また、前記形成方法に不活性ガス、窒素、炭素から選ばれる少なくとも一種のイオンを成膜と同時に注入するIBM(イオンビームミキシング)あるいは注入する金属型母材にパルスバイアスをかけて行うPBII(プラズマ・ベースド・イオン・インプランテーション)と成膜方法を組み合わせることにより、膜と金属型母材との間に明瞭な界面が無くなり密着性を向上することができ望ましい。
【0013】
本発明の請求項2に係る光学素子成形用型の製造方法は、請求項1における第1の工程において、ケイ素イオンおよび炭素イオンを同時にまたは交互に注入することを特徴としており、注入イオンによる反応あるいは混合性を考慮すると、Si+イオン、C+イオンを同時あるいは短時間サイクルでの交互の注入が望ましい。
【0014】
本発明の請求項3に係る光学素子成形用型は、請求項1または2記載の光学素子成形用型の製造方法より製造されることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4に係る光学素子成形用型は、請求項3の構成にあって、前記型母材が、炭化タングステン、タングステン合金、ステンレス鋼から選ばれる金属であることを特徴とする。
【0016】
金属型母材としては特に限定されないが、研削、研磨加工を考慮すると、炭化タングステン、タングステン合金が好ましく、成型時の温度によっては耐熱性の劣るステンレス鋼(SUS)を用いることもできる。
【0017】
本発明の請求項5に係る光学素子成形用型の再生方法は、請求項3または4記載の光学素子成形型の、少なくとも前記炭素を主成分とする膜を酸化反応にて除去した後、再度炭素を主成分とする膜を形成することを特徴としており、この光学素子成形用型を用いてガラスよりなる光学素子のプレス成形を行った後、型成形面に形成されている炭素膜を除去し、その後、再度成膜することにより再利用を行う。
【0018】
炭素を主成分とする膜を除去する方法としてはドライエッチングがあり、プラズマ・エッチング、スパッタ・エッチング、イオンビーム・エッチング、リアクティブイオン・エッチング等の方法が用いられる。エッチング量としては数Å、数10Å程度あればよい。エッチングガスとしてはO2、H2、N2、空気、Arに代表される不活性ガス、CF4等と、これらの混合ガスが用いられる。特に、炭素系の膜を酸素プラズマにより酸化する方法は、膜が化学反応によりガス化して除去できるため完全な除去が可能であり望ましい。
【0019】
以下に、本発明の作用を述べる。
本発明では型母材として金属型母材を用いる。SiC、SiN等のセラミック型母材に比べタングステン合金、炭化タングステン、ステンレス鋼(SUS)等の金属型母材は硬度が低く、研削、研磨等の型加工性が良好であるため、複雑な形状、高い鏡面性を低コストで確保でき経済性に優れる。これらの材質の金属型母材にて所望形状の成形面を形成する。そして、この成形面に第1の工程としてシリコンおよび炭素を注入する。注入されたシリコン、炭素は反応して、炭化シリコン膜を形成し、あるいは未反応の場合でもミクロレベルまで混合され炭化シリコンに近い特性を示す混合物をデポジット膜として形成する。この膜は、型母材との間に明瞭な界面が無いため高い密着性を示す。
【0020】
その後、第2の工程として、この膜上に炭素系膜を形成する。シリコン、炭素は同じ第IV族元素であり、特性も近いため、高い密着性を得ることができ、また不活性ガス、窒素、炭素から選ばれる少なくとも一種のイオンを成膜と同時に注入すると、膜と膜との間に明瞭な界面が無くなり、さらに密着性が高まる。
【0021】
完成した金型を用いて繰り返しガラス光学素子のプレス成形を行う。数多くの成形を行うと、金型表面にガラスの融着や鉛の析出、傷が付く等の問題が発生するので、これらの金型を継続的に使用するためには、適当な成形回数ごとに成形面をダイヤモンドパウダー等により機械的に研磨(クリーニング)する必要がある。
【0022】
しかし、このクリーニング回数が多くなるに従い、型形状が変形、劣化する。そこで、適当なクリーニング回数ごとに金型成形面の傷んだ膜を除去する必要がある。炭素系膜の除去は酸素プラズマ等のエッチング、酸化反応を利用して行い酸素を用い炭素系の膜をエッチング(アッシング)すると炭素が酸化されて除去されるが、このとき炭素系の膜だけをエッチング(アッシング)することは難しく、通常、型母材表面もエッチング(アッシング)され、金型母材表面、特に成形面も酸化されてしまう。
【0023】
特に金属型母材は酸化が顕著であるが、本発明では金属型母材表面に耐熱酸化特性、耐アッシング特性に優れた炭化シリコンあるいは炭化シリコンに近い特性を示す炭素とシリコンの混合物を形成した後、その上に炭素系膜を形成しているため、この炭素系膜をエッチング(アッシング)しても金型成形面を変形、劣化させることがない。また、エッチングという方法を用いずに、酸素雰囲気下において金型母材を750℃以上にすることにより熱酸化し膜を除去することもできる。
【0024】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
ガラスレンズ(曲率半径R=150mm、表面粗さRmax=0.03μm、直径φ=5mm、肉厚=2mm)を得るため、本発明による成形型を作成した。型母材として超硬合金(炭化タングステン、商品名J05:富士ダイス(株)製)を所定の形状に加工した後、成形面を鏡面研磨したものを用いた。
【0025】
これらの型を洗浄した後、高エネルギーのイオン源を2つ持つ装置に設置した。一方の高エネルギーのイオン源を用いてシリコンを質量分離し、シリコンイオン(Si+)を成形面に注入量5×1017ionsをイオンエネルギー20keV、電流密度20μA/cm2で注入した。同時に、もう一方の高エネルギーのイオン源から炭素イオンを同様に5×1017ionsをイオンエネルギー20keV、電流密度20μA/cm2で成形面に注入した。そして、注入イオンの反応及び堆積により炭化シリコン膜あるいは炭化シリコンに近い特性を示す炭素とシリコンの混合膜を膜厚1000Å形成した。
【0026】
次に、イオンビーム蒸着法を用いて、前記膜上にダイヤモンド状炭素膜を形成する。図1に本実施の形態で用いる成膜装置を示す。
【0027】
図1において、1は真空容器、2はイオンビーム装置、3はイオン化室、4はガス導入口、5はイオンビーム引き出しグリッド、6はイオンビーム、7は前記膜を形成した型母材、8は基板ホルダーおよびヒーター、9は排気孔を示す。ダイヤモンド状炭素膜を形成する際には、有機溶剤により表面を清浄にした型母材7を基板ホルダー8上に設置し、排気孔9より排気して真空容器1の内部を1×10−6Torrとする。
【0028】
次に、ガス導入口4より原料ガスCH4+Ar混合ガスを混合比CH4/Ar=1/1で導入し、真空容器1の内部を1×10−4Torrとする。イオンビーム装置2のイオン化室3で前記原料ガスをイオン化し、イオンビーム引き出しグリッド5に−500Vを印加してイオンビームを引き出し、型母材7に照射して、1.5μmの厚さにダイヤモンド状炭素膜を成膜した。このときイオンビームの電流値は0.6mA/cm2で、基板加熱は特に行っていない。成膜時間は45分間である。こうして得られた膜の表面粗さはRmax0.02〜0.03μm、ビッカース硬度は1400〜1600kg/mm2である。
【0029】
その後、この型によりフリント系ガラスLaSF03(軟化点Sp=687℃、ガラス転移点Tg=610℃)を用いて成形機にてプレス成形を500ショットの成形を行ったところ、成形面にキズ等が発生したため、成形を中止した。
【0030】
この成形に用いた型を再生するために、図1に示したイオンビーム蒸着装置に設置しダイヤモンド状炭素膜をエッチングする。まず、排気孔9より排気して真空容器1の内部を1×10−6Torrとする。次に、ガス導入口4よりエッチングガスとしてO2+Ar混合ガスを混合比O2/Ar=1/1で導入し、真空容器1の内部を1×10−4Torrとする。イオンビーム装置2のイオン化室3で原料ガスをイオン化し、加速電圧200Vでイオンビームを引き出し、エッチングを行う。このとき、基板加熱は特に行わない。このとき、発光スペクトルモニター10により電子的に励起されたSiからの発光をモニターし、エッチングをコントロールする。一定時間後、O2ガスの供給を停止し、加速電圧を50Vに下げ、Arイオンビームに変え、表面をクリーニングする。
【0031】
エッチング終了後の金型を真空容器1より取り出し、その表面粗さを測定したところRmax0.02〜0.03μmで、エッチングによる劣化は見られなかった。また、表面の酸化層についてもESCAで分析したところ、エッチング終了後の取り出す際に生じたと思われる自然酸化層程度の酸化層しか認められなかった。通常は、エッチング終了後に連続して前記条件でダイヤモンド状炭素膜を形成するので、酸化の恐れはない。このようにして、再度ダイヤモンド状炭素膜を形成した型の表面粗さはRmax0.03μm、ビッカース硬度1400〜1600kg/mm2で、最初に形成した膜と同等の特性が得られた。
【0032】
(実施の形態2)
WC(90%)+Co(10%)からなる金型母材を実施の形態1と同形状の金型に加工し、その上に実施の形態1と同条件にて炭化シリコン膜あるいは炭化シリコンに近い特性を示す炭素とシリコンの混合膜を膜厚1000Å形成した。電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD法(ECR−PCVD法)を用いて、前記膜上にダイヤモンド状炭素膜を形成する。
【0033】
ECRプラズマ装置は、図2に示す空胴共振器タイプで空胴共振器21に電磁石22で磁場をかけ、マイクロ波導入窓23より導波管24を通してマイクロ波を導入し、ガス導入口25よりガスを空胴共振器21内に導入してガスを励起する。磁場の大きさはマイクロ波導入口で2000ガウス、型表面で500ガウスになるように設定した。型ホルダー26に支持した型27は、図2に示すように空胴共振器21の外に設置した。
【0034】
次に、排気孔28より所定の圧力に排気し、ガス導入口25より炭酸ガス(10SCCM)、水素ガス(20SCCM)を空胴共振器21内に導入し、圧力5×10−2Torrとし、マイクロ波電力600W、基板温度300℃でダイヤモンド状炭素膜を1μm成膜した。その後、この型を用いて実施の形態1と同様にしてガラス成形を行い、成形に用いた型を再び本装置内に設置してダイヤモンド状炭素膜のエッチングを行った。
【0035】
エッチングガスにO2を用い、これをガス導入口25より100SCCM導入し、空胴共振器21内でプラズマ化する。このとき、圧力は5×10−3Torrとし、基板の加熱は特に行わない。磁場の大きさはマイクロ波導入口で2500ガウス、空胴共振器出口で875ガウスのECR点とし、型をこの点に設置し、マイクロ波パワー900Wでエッチング(アッシング)した。実施の形態1と同様にプラズマ発光によりモニターし、発光強度がある一定値以下になった時点で、酸素からアルゴンに切り替え、残りの膜をエッチングした。このとき、圧力、マイクロ波パワー、磁場の条件は酸素ガスの場合と同様とした。ただし、基板の位置は空胴共振器出口より150mmとした。その後、前述の成膜条件に従いダイヤモンド状炭素膜を形成し、得られた型について表面粗さ、硬度について測定したところ、実施の形態1と同様に最初と変わらない性能を有する金型を再生することができた。
【0036】
なお、上記した具体的実施の形態から次のような構成の技術的思想が導き出される。
(付記)
(1)ガラスよりなる光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型の製造方法において、前記光学素子成形用型の母材に金属型母材を用い、少なくとも成形面にケイ素、炭素のイオンを注入する第1の工程と、炭素を主成分とする膜を形成する第2の工程と、からなることを特徴とする光学素子成形用型の製造方法。
【0037】
(2)前記光学素子成形用型の金属型母材が炭化タングステン、タングステン合金、SUSから選ばれる母材であることを特徴とする(1)に記載の光学素子成形用型の製造方法。
【0038】
(3)ガラスよりなる光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型の製造方法において、前記(1)、(2)にて作成した成形用型の少なくとも成形面の炭素を主成分とする膜を酸化反応にて除去した後、再度、炭素を主成分とする膜を形成し、再利用することを特徴とする光学素子成形用型の製造方法。
【0039】
(4)前記(1)、(2)、(3)のいずれかに記載の光学素子成形用型の製造方法により製造されることを特徴とする光学素子成形用型。
【0040】
(5)ガラスよりなる光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型の製造方法において、金属よりなる型母材の少なくとも成形面に、ケイ素イオンおよび炭素イオンを注入し炭化シリコン膜あるいは炭素とシリコンの混合膜を形成する第1の工程と、前記膜上に炭素を主成分とする膜を形成する第2の工程と、からなることを特徴とする光学素子成形用型の製造方法。
【0041】
(6)前記第1の工程において、ケイ素イオンおよび炭素イオンを同時にまたは交互に同数量注入することを特徴とする(5)記載の光学素子成形用型の製造方法。
【0042】
(7)前記(5)または(6)記載の光学素子成形用型の製造方法より製造されることを特徴とする光学素子成形用型。
【0043】
(8)前記(7)記載の光学素子成形型の、少なくとも前記炭素を主成分とする膜をエッチング、酸化反応にて除去した後、再度、炭素を主成分とする膜を形成することを特徴とする光学素子成形用型の再生方法。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1,2および請求項3に係る光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型によれば、型母材との高い密着性を有する膜を有するとともに、成形ガラスとの離型性が良好で容易な離型が安価に連続して可能であり、生産性を大幅に向上可能な光学素子成形用型を得ることができる。また、光学素子成形用型の使用により剥離、クラック等の膜に関する不具合が発生しても、この膜を型母材に対する劣化を生じさせることなく除去し、再度成膜して初期状態と同様に良好な光学素子成形用型を得ることができる。
【0045】
本発明の請求項4に係る光学素子成形用型によれば、型加工性が高く、複雑な形状や高い鏡面性を有する光学素子成形用型にあっても低コストで得て経済性を図ることができる。
【0046】
本発明の請求項5に係る光学素子成形用型の再生方法によれば、金属よりなる型母材であっても型母材を劣化させることなく不具合の生じた膜の除去を行い、再度、除去した同じ膜を初期状態と同様に形成し、安価に再利用が図れる光学素子成形用型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1で用いる成膜装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態2で用いる成膜装置を示す概略図である。
【符号の説明】
1 真空容器
2 イオンビーム装置
3 イオン化室
4,25 ガス導入口
5 イオンビーム引き出しグリッド
6 イオンビーム
7 型母材
8 基板ホルダーおよびヒーター
9,28 排気孔
21 空胴共振器
22 電磁石
23 マイクロ波導入窓
24 導波管
26 型ホルダー
27 型
Claims (5)
- ガラスよりなる光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型の製造方法において、金属よりなる型母材の少なくとも成形面に、ケイ素イオンおよび炭素イオンを注入する第1の工程と、炭素を主成分とする膜を形成する第2の工程と、からなることを特徴とする光学素子成形用型の製造方法。
- 前記第1の工程において、ケイ素イオンおよび炭素イオンを同時にまたは交互に注入することを特徴とする請求項1記載の光学素子成形用型の製造方法。
- 請求項1または2記載の光学素子成形用型の製造方法より製造されることを特徴とする光学素子成形用型。
- 前記型母材が、炭化タングステン、タングステン合金、ステンレス鋼から選ばれる金属であることを特徴とする請求項3記載の光学素子成形用型。
- 請求項3または4記載の光学素子成形型の、少なくとも前記炭素を主成分とする膜を酸化反応にて除去した後、再度、炭素を主成分とする膜を形成することを特徴とする光学素子成形用型の再生方法。
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