JP2007161497A - 光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型 - Google Patents

光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型 Download PDF

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Abstract

【課題】離型性が良好で、耐久性の高い光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型を提供する。
【解決手段】光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型11の成形面に、中間層14を形成した後、この中間層上にa−C:H膜を含む硬質炭素膜13を形成する。
その際、前記中間層が、炭素を30atom%以上、ケイ素を20atom%以上、酸素を5atom%以上で20atom%以下、水素を5atom%以上で15atom%以下とする元素組成を有する構成とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型に関する。
特に、主としてガラス素材のプレス成形により、レンズ、プリズムなどのガラスよりなる光学素子を製造する際に使用される光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型に関するものである。
近年において、研磨工程を必要としないで、ガラス素材を用いてプレス成形でレンズを製造する技術が開発され、従来の製造において必要とされた複雑な工程をなくし、簡単かつ安価にレンズを製造することが可能となった。
そのため、このプレス成形による製造技術は、プリズム、その他のガラスよりなる光学素子の製造に広く使用されている。
このような、ガラスの光学素子のプレス成形に使用される型材に対しては、硬度、耐熱性、離型性、鏡面加工性などに優れていることが要求される。
従来、この種の型材として、金属、セラミックス、および、それらをコーティングした材料などによる、数多くの提案がなされている。
これらの中で、離型性に優れた型材を得ることに関して、型材表面に炭素系の離型膜を形成するようにした提案がなされている。
例えば、特許文献1ではこのような炭素系の離型膜としてダイヤモンド薄膜もしくはダイヤモンド状炭素膜を形成するようにしたものが提案されている。
また、特許文献2には、レンズまたは型のどちらか一方に5〜500nmの炭素膜を形成することが提案されている。
さらに、本発明者らは特許文献3において、膜の剥離およびクラックの発生を生じない型を製造する方法を提案している。
この方法では、高イオンエネルギーの炭素イオンビームを用いて、炭素と型母材もしくは母材表面に形成した中間層を構成する、少なくとも一種類以上の元素よりなるミキシング層を形成する。これにより、膜の剥離およびクラックの発生を生じない型の製造を可能としたものである。
特開平1−301864号公報 特公平2−31012号公報 特開平6−72728号公報
一般的にダイヤモンド状炭素膜、a−C:H膜、硬質炭素膜を用いた型は、型とガラスとの離型性が良く、ガラスとの融着を起こしにくい。
しかしながら、型と膜の密着性が一般に低く、成形操作を、数百回以上繰り返して行うと、前記膜が部分的に剥離して十分な成形性能が得られないことがあるなど、耐久性に問題があった。
また、ダイヤモンド薄膜は、高硬度で、熱的安定性にも優れているが、前記ダイヤモンド状炭素膜、a−C:H膜、硬質炭素膜など、非晶質の炭素膜に比べると、型とガラスとの離型性が悪く、更なる離型性の向上が望まれていた。
特許文献1では、ダイヤモンド薄膜もしくはダイヤモンド状炭素膜を形成するに際し、炭素源ガス濃度を3%以上として、ダイヤモンド結晶、グラファイト結晶、アモルファス状カーボンよりなる膜を形成し、最大面粗さ20nm以下とすることが提案されている。
しかしながら、このような方法によっても、膜中のグラファイト結晶の存在は、硬度と耐酸化性の劣化を生じ、型の耐久性を劣化させる原因となる。
また、特許文献2では、真空蒸着法により炭素膜を形成する実施例が開示されているが、この方法により得られた炭素膜は、一般的には膜と基板との密着力が弱く、成形中に膜が剥離するなどの耐久性に問題が生じる場合がある。
また、特許文献3のように、基体に直流のパルスバイアスを印加して硬質炭素膜を作製する方法は、他の製造方法に比べると、型材と密着性良く硬質炭素膜を形成することができるが、更なる離型性の向上及び耐久性の向上が望まれている。
本発明は、上記課題に鑑み、離型性が良好で、耐久性の高い光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型を提供することを目的とするものである。
本発明は上記課題を解決するため、つぎように構成した光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型を提供するものである。
本発明は、光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型の製造方法として、つぎの(1)及び(2)の工程を少なくとも有することを特徴としている。
(1)前記光学素子成形用型の成形面に、炭素を30atom%以上、ケイ素を20atom%以上、酸素を5atom%以上で20atom%以下、水素を5atom%以上で15atom%以下とする元素組成を有する中間層を形成する工程。
(2)中間層上に、a−C:H膜を含む硬質炭素膜を形成する工程。
また、本発明は、前記中間層を形成する工程において、前記中間層の膜厚を0.01μm以上1μm以下に形成することを特徴としている。
また、本発明は、前記中間層を形成する工程において、スパッタ法またはイオンプレーティング法により前記中間層を形成することを特徴としている。
また、本発明は、光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型をつぎのように構成したことを特徴としている。
本発明の前記光学素子成形用型は、前記光学素子成形用型の成形面に、中間層を介してa−C:H膜を含む硬質炭素膜を備えた構成を有している。
そして、前記中間層が、炭素を30atom%以上、ケイ素を20atom%以上、酸素を5atom%以上で20atom%以下、水素を5atom%以上で15atom%以下とする元素組成を有することを特徴としている。
また、本発明の前記光学素子成形用型は、前記中間層の膜厚が、0.01μm以上1μm以下とされていることを特徴としている。
また、本発明の前記光学素子成形用型は、前記中間層が、スパッタ法またはイオンプレーティング法により形成されていることを特徴としている。
本発明によれば、上記課題に鑑み、離型性が良好で、耐久性の高い光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型を実現することができる。
上記構成によれば、離型性が良好で、耐久性の高い光学素子成形用型の製造方法および光学素子成形用型を提供することが可能となるが、それは本発明者が鋭意研究した結果によるつぎのような知見に基づくものである。
本発明者は、硬質炭素膜を形成するにあたり、中間層組成と密着性に対する依存性について詳細に検討した結果、つぎのような中間層を形成した後に、硬質炭素膜を形成することで、離型性が良好で、耐久性の高い構成を得ることができることを見出した。
成形面に硬質炭素膜を形成する光学素子成形用型の製造方法において、型母材の成形面に、元素組成を有する中間層を形成する。
すなわち、炭素:30atom%以上、ケイ素:20atom%以上、酸素:5atom%以上で20atom%以下、水素:5atom%以上で15atom%以下の元素組成を有する中間層を形成する。
そして、このような組成の膜(以下、SiCOH膜と略す)による中間層を形成した後に、その上に硬質炭素膜を形成する。
これにより、硬質炭素膜と型母材の密着力が向上する。特に、型母材として超硬合金(WC系合金)を用いる場合に、SiCOH膜を中間層として用いることにより密着性が大幅に向上する。
この理由としては、通常、硬質炭素膜は非常に大きな圧縮応力を有しているが、SiCOH膜が応力を緩和する働きをしていると考えられる。
また、SiCOH膜は超硬合金母材との密着性も良好で、このため硬質炭素膜/中間層、中間層/母材の両方の界面での密着性が改善されるものと考えられる。
本発明の実施の形態において、SiCOH膜の組成は、炭素原子は30atom%以上とし、望ましくは40atom%以上とする。
また、ケイ素原子は20atom%以上とし、望ましくは25atom%以上とする。
また、酸素原子は5atom%以上で20atom%以下とし、望ましくは7atom%以上で15atom%以下とする。
また、水素原子は5atom%以上で15atom%以下、望ましくは7atom%以上で、12atom%以下とする。
炭素及びケイ素の組成比において、炭素が30atom%未満、ケイ素が20atom%未満の場合、硬質炭素膜の応力緩和効果が小さく、硬質炭素膜の密着力が低下することがある。
また、酸素及び水素原子の組成比において、酸素が5atom%未満、水素が5atom%未満の場合、硬質炭素膜の応力緩和効果が小さく、硬質炭素膜の密着力が低下することがある。
また、酸素と水素原子の組成比が、上記値より大きい場合は、酸素及び水素と硬質炭素膜の炭素との反応が生じ、硬質炭素膜の劣化のために硬質炭素膜の消耗、剥離が生じることがある。
また、本発明におけるSiCOH膜の膜厚は、0.01μm以上1μm以下、望ましくは0.02μm以上0.4μm以下である。
なお、SICOH膜は、この他にも不可避の不純物、例えば、成膜雰囲気中からのアルゴン、窒素などのガス不純物及び、成膜装置部材からのステンレス、モリブデン等の金属不純物、型母材から拡散してきた不純物を微量含有しても構わない。
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら、さらに具体的に説明する。
図1に、本実施の形態における光学素子成形用型の模式的断面を示す。
図1(a)は光学素子のプレス成形前の状態を示す図であり、図1(b)は光学素子成形後の状態を示す図である。
図1において、11は型母材、12はガラス素材、13は硬質炭素膜、14は上記したSiCOH膜による中間層、15は光学素子である。
このような光学素子成形用型により、ガラス素材による光学素子を成形するに際しては、図1(a)に示されるように上下の型母材の間に配されたガラス素材を、所定温度に加熱した後、図1(b)に示されるように上下の型母材により所定の圧力でプレスする。
その後、圧力を解除しガラス転移点以下まで冷却し、上下の型母材から離型してガラス素材による光学素子を得る。
なお、図1では、凸レンズ成形用型を示したが、本発明はこのような構成に限られるものではない。凹レンズ成形用型、非球面レンズ成形用型、シリンドリカルレンズ成形用型などにも使用可能である。
本実施の形態における硬質炭素膜とは、基本的には非晶質であり、硬度が高く、赤外領域で透明性が高いことから、ダイヤモンド状炭素膜(DLC膜)、i−C膜,ta−C膜(テトラヘドラルアモルファスカーボン膜)などとも呼ばれているものである。
硬質炭素膜は、炭素原子と不可避不純物よりのみ形成されるものと、原料由来の水素原子を含むものがある。
この水素原子を含む膜を、a−C:H膜と称することがあるが、本発明の硬質炭素膜は、このa−C:H膜も含むものとする。
この硬質炭素膜は、非晶質であるため、非常に平滑な表面を有しており、型母材表面に形成することにより、型母材の表面の平滑性と同様、あるいは、それ以上の平滑性を得ることができる。
また、硬質炭素膜は、通常、いかなる結晶性も有していない非晶質の膜であるが、電子顕微鏡などで、微小領域(nmオーダー)を詳細に観察すると、数nm程度の大きさの微結晶のダイヤモンドまたはグラファイトが観察されることがある。
これらの微結晶の量を見積もるのは非常に困難であるが、全体積のせいぜい数%以下であろうと思われる。
この硬質炭素膜の形成には、イオンビーム蒸着法及びイオンプレーティング法などと呼ばれる方法を用いることができる。
上記成膜方法は、炭素源ガス、および、水素、酸素、塩素、希ガスなどの希釈ガスを、熱フィラメントまたは高周波、更には、磁場などを印加することで、プラズマ化する。
このプラズマから、電界を用いてイオンを加速して引出し、このイオンを型母材上に照射して、その成形面に硬質炭素膜を形成する方法である。
炭素源として、種々の炭素含有ガスや液体有機化合物を気化して用いることができる。
液体有機化合物としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、ギ酸、酢酸などの有機酸を用いることができる。
炭素含有ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、アセチレンなどの炭化水素ガス、一酸化炭素、または、ハロゲン化炭素などを用いることができる。
また本発明では炭素源の原料ガスに、窒素またはフッ素を含有するガスを添加することも可能である。窒素を含有するガスとしては、窒素ガス、アンモニアガス、などを用いることができる。フッ素含有ガスとしては、フッ素ガス、CF4、CHF3,CH22,CH3F、C26ガスなどを用いることができる。
また、別の硬質炭素膜の形成方法としては、固体炭素源を用いる方法で、スパッタ法、カソードアーク蒸着法などと呼ばれる方法を用いることができる。
上記成膜方法は、固体炭素源(グラファイトなど)をスパッタ、カソードアークなどを用いて気化させ、これを型母材上の成形面に硬質炭素膜を形成する方法である。
つぎに、本実施の形態におけるSiCOH膜による中間層の形成方法の一例について説明する。
図2に、SiOCH膜を形成するスパッタ成膜装置の模式的断面図を示す。
図2において、21は真空チャンバー、22は型母材、23は回転軸、24はターゲット、25は熱電対、26はヒーターである。
以上の構成のスパッタ成膜装置を用い、SiCOH膜をつぎのようにして形成する。
まず、真空チャンバー21に型母材22を設置し、型母材22は回転軸23でターゲット24上を回転する。
不図示の真空排気装置(ターボ分子ポンプ及びロータリーポンプ)を用いて、チャンバー内の到達真空度を1×10-3Pa以下まで排気する。
つぎに、熱電対25で温度検出を行い、ハロゲンランプ等のヒーター26で300℃まで加熱する。
つぎに、不図示のガスボンベ及びガス流量調整器、バルブを用いて、アルゴンガス及びメタンガスを真空チャンバーに導入して圧力を0.2Paに調整する。
型母材22を回転させ、SiCターゲット及びSiO2ターゲット24に不図示の高周波電源及び高周波整合器を用いて高周波を印加して、ターゲットをスパッタすることで、SiCOH膜を0.01〜1μm形成する。
このようにして得られた、SiCOH膜は型母材と良好な密着力を有する。
さらに、このようなSiCOH膜は、硬質炭素膜13と密着性が良好であるため、型と硬質炭素膜の密着性を向上させることが可能となる。
SiCOH膜は、通常、非晶質であるため平滑性に優れている。
膜の表面粗さの点からも非晶質であることが望ましいが、表面粗さが所望の範囲内であれば、SiC結晶やSiO2結晶成分を部分的に含んでいても構わない。
また、上記では成膜方法として、スパッタ法で説明したが、成膜装置はこのような成膜装置に限定されるものではない。
例えば、公知のCVD、イオンプレーティング法等の成膜手段を適用することもできる。
つぎに、中間層と硬質炭素膜を連続的に形成するようにした成膜装置の構成例について説明する。
図3に、型母材にSiCOH膜による中間層を形成し、その上に引き続き硬質炭素膜を形成する成膜装置の模式的断面図を示す。
図3において、31は真空チャンバー、32はイオン源で、不図示のバルブ、ガス流量調整器、圧力調整器、ガスボンベが接続されており、加熱されたフィラメントと電場を用いて炭素含有ガスをイオン化することができるように構成されている。
33はバイアス印加電源であり、基材ホルダーに負の直流又はパルスのバイアスを印加するための電源である。
34はイオンビームを模式的に示したもの、35は型母材である。
36はガス排気口で、バルブ、ターボ分子ポンプ、ロータリーポンプ(何れも図示せず)が接続されている。
37は基材ホルダーで、型母材を固定できるように構成されている。
上記成膜装置により成膜するに際しては、まず、型母材を図3に示す成膜装置に設置し、中間層としてSiCOH膜を、つぎのように形成する。
型材を所定温度に加熱し、真空チャンバー31内にSiCOH膜形成用の原料ガスを導入して圧力を調整し、イオン源32で原料ガスを分解してイオン化する。また、バイアス印加電源33により基材ホルダー37にバイアスを印加して、型母材35の表面にSiCOH膜による中間層を形成する。
以上の中間層の形成に引き続き、この中間層上に硬質炭素膜をつぎのように形成する。
型材を所定温度に加熱し、真空チャンバー31内に硬質炭素膜形成用の原料ガスを導入して圧力を調整し、イオン源32で原料ガスを分解してイオン化する。
また、バイアス印加電源33により基材ホルダーにバイアスを印加して、SiCOH膜による中間層上に硬質炭素膜を形成する。
なお、本発明で用いられる成膜装置は、上記装置に限定されるものではない。
つぎに、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1においては、本発明を適用した光学素子成形用型の製造方法について説明する。
本実施例では、型母材として、バインダーレスWC系超硬合金焼結体(フジダイス製、商品名J−05)を所定の形状に加工した後、これをRa=1.8nmとなるように研磨した。
つぎに、この型母材を良く洗浄した後、図3に示す成膜装置に設置し、中間層としてSiCOH膜を、つぎのように形成する。
まず、基体ホルダーの基体加熱機構を用いて型材を300℃まで加熱し、原料ガスとしてテトラエトキシシラン:20ml/min、メタン:10ml/min、水素:10ml/minの流量で導入し、圧力を3×10-1Paに調整した。イオン源で、加熱したフィラメントと電場及び磁場の印加により原料ガスを分解してイオン化した。
そして、型母材へ36の直流パルスバイアス電源を用いて基板バイアスを印加して、型材表面にSiCOH膜を形成した。
なお、成膜条件として、直流パルスバイアスは、−2.5kVとして、繰り返し周波数:2kHz、デューティー比:10%とした。
12分間の成膜で約100nmのSiCOH膜による中間層が形成された。
なお、このSiCOH膜の組成を分析するため別途、同一成膜条件で作成したサンプルをXPS(X線光電子分光)法及びERDA(反跳粒子検出法)で測定した。
その結果、Si:C:O:H=0.48:0.30:0.12:0.10の組成であることが分かった。
続いて、SiCOH膜による中間層上に、硬質炭素膜をつぎのように形成した。
ガス流量はトルエン:20ml/min、メタン:10ml/minとし、型材の温度は300℃で、圧力:3×10-1Paとした。
イオン源で原料ガスを分解してイオン化し、型母材へ直流パルスバイアスを印加して、硬質炭素膜を形成した。
成膜条件として、直流パルスバイアスは、−3kVとして、繰り返し周波数:2kHz、デューティー比:15%とした。
30分間の成膜で約300nmの硬質炭素膜が形成された。
つぎに、この光学素子成形用型材を用いて光学レンズの成形を行った。
成形ガラスは、高屈折率SF03系光学ガラスで、直径半径:φ15mmの扁平凸メニスレンズを成形する。
成形条件は、窒素雰囲気下、プレス温度650℃で行った。成形中、型と成形された光学素子との離型性は良好であった。
また、成形後の型表面を走査型電子顕微鏡で観察した所、膜剥離、クラックの発生、更には、ガラスの融着が認められず、良好な型表面性を有していた。
また、成形ガラスレンズも、ガラスの割れが見られず、良好な表面粗さであった。
[実施例2]
実施例2においては、SiCOH膜による中間層にスパッタ法を用いた光学素子成形用型の製造方法について説明する。
型母材として、WC系超硬合金を所定の形状に加工した後、成形面をRmax=0.04μmに鏡面研磨し、この型母材を良く洗浄した後、公知のスパッタ法によって下地層として窒化チタン膜を膜厚1μm形成した。
次に、型母材を図2に示す成膜装置に設置し、中間層としてのSiCOH膜を、つぎのように形成した。
成膜条件は、スパッタターゲットとして、SiC及びSiO2の2つのターゲットを用い、型材温度:200℃、スパッタガスはアルゴン:25ml/min、メタン:25ml/min、圧力は2.5×10-1Paとした。SiCターゲットに、500W、SiO2ターゲットに250Wの高周波を印加して、ターゲットをスパッタして、40分間の成膜で約200nmの非晶質炭化けい素膜が形成された。
つぎに、型母材を図3に示す成膜装置に設置して、硬質炭素膜を形成する。
成条件は、ガス流量はトルエン:20ml/min、メタン:20ml/minとし、基板温度:200℃で、圧力:4×10-1Paとした。
イオン源で原料ガスを分解してイオン化し、型母材へ直流パルス電源を用いて基板バイアスを印加した。直流パルスバイアスは、電圧を成膜開始から10分ごとに−10kV、−6kV、−2kVと変化させた。
また、繰り返し周波数:2kHz、デューティー比:10%とした。30分間の成膜で約300nmの硬質炭素膜が形成された。
なお、このSiCOH膜の組成を分析するため別途、同一成膜条件で作成したサンプルをXPS(X線光電子分光)法及びERDA(反跳粒子検出法)で測定した。
その結果、Si:C:O:H=0.48:0.35:0.10:0.07の組成であることが分かった。
つぎに、この光学素子成形用型材を用いて光学レンズの成形を行った。
成形ガラスは、高屈折率SF03系光学ガラスで、直径半径:φ15mmの扁平凸メニスレンズを成形する。成形条件は、窒素雰囲気下、プレス温度650℃で行った。
成形中、型と成形された光学素子との離型性は良好であった。成形中、型と成形された光学素子との離型性は良好であった。
また、成形後の型表面を走査型電子顕微鏡で観察した所、膜剥離、クラックの発生、更には、ガラスの融着が認められず、良好な型表面性を有していた。
また、成形ガラスレンズも、ガラスの割れが見られず、良好な表面粗さであり、透過率も高く、ハローの発生も認められなかった。
(比較例1)
比較例1として、中間層形成時のスパッタガスとしてアルゴンのみを用いてSi−C−O組成の膜を用いる以外は、実施例2と同様にして光学素子成形用型材を作成して光学ガラスを成形した。
比較例1では、成形初期は成形性は良好であったが、成形を進めるうちに硬質炭素膜の部分的な剥離(φ数百μmのポツ状の微小な剥離)が見られ、その部分からガラスの型材への融着が発生し、成形耐久性の劣化が見られた。
なお、剥離部分を走査型電子顕微鏡およびXMA(X線マイクロアナライザ)分析で測定したところ、剥離は硬質炭素膜/中間層界面で発生していることが分かった。
また、中間層のSi−C−O組成の膜の組成を分析するため別途、同一成膜条件で作成したサンプルをXPS(X線光電子分光)法及びERDA(反跳粒子検出法)で測定した。
その結果、Si:C:O:H=0.50:0.33:0.10:0.02の組成であることが分かった。
なお、Si−C−O組成の膜中に見られる水素は、成膜雰囲気中の残留水分からのものと考えられる。
[実施例3〜実施例8、比較例2〜比較例8]
中間層の成膜条件を(スパッタターゲットへの高周波印加出力、スパッタガスのアルゴン及びメタンガス流量等)を種々変更する以外は、実施例2と同様にして、光学素子成形用型材を形成し、光学素子を成形した。
なお、中間層の膜厚は約200nm、離型膜の膜厚は、約300nmとなるように成膜時間についてはおのおの調整した。
また、この中間層の組成を分析するため、別途、同一成膜条件で作成したサンプルをXPS(X線光電子分光)法及びERDA(反跳粒子検出法)で測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2007161497
上記表1において、◎:非常に良好、○:良好、△:実用上可、×:不可を示している。
なお、上記の各実施例において、成形耐久性に関する評価基準(◎、○、△、×)は、以下の基準により行った。
まず、評価は成形レンズに集光灯の光を当ててその表面性(表面の曇り、キズ及び微小凹凸)を目視で検査することにより行った。
評価基準としては、製品として使用可能かどうかを「限度見本」と呼ばれるサンプルと比較して決定した。
この限度見本は、つぎのような条件を満たすものである。
すなわち、アス及びクセ(所望のレンズ形状からのずれ量)がニュートンリング約1本で、最大表面粗さ(P−V値)で約30nm、平均表面粗さ(RMS)で約5nmであること。及び、集光灯の光を当てて確認できる大きさ約10μmまでのキズがレンズ全体の中で2個でかつ、近接していないものであること。
の条件を満たすものである。
この「限度見本」より表面性の悪い成形品は、製品としては使用できない。
成形耐久性は、限度見本と同レベルまたはそれ以上の製品を規定の数量成形することが可能かどうかで評価した。
×は、ガラスの融着または割れ等のために、規定の数量を成形することができなかったものである。
△は、ほぼ規定回数の成形が可能なもの、○は、規定回数の1.5倍以上の成形が可能なもの、更に◎は、規定回数の2倍以上の成形が可能なものである。
上記表からも分かるように、本発明の実施例の範囲内の中間層を用いることにより、成形品の表面性及び型の成形耐久性は良好となる。
これに対して、比較例2−6においては成形初期は成形性は良好であったが、成形を進めるうちに硬質炭素膜の部分的な剥離(φ数百μmのポツ状の微小な剥離)が見られ、その部分からガラスの型材への融着が発生し、成形耐久性の劣化が見られた。
なお、剥離部分を走査型電子顕微鏡およびXMA(X線マイクロアナライザ)分析で測定したところ、剥離は硬質炭素膜/中間層界面で発生していることが分かった。
また、比較例7−8においては、成形初期は成形性は良好であったが、成形を進めるうちに硬質炭素膜が全体的に消耗して薄くなり、その結果ガラスの離型性が悪くなり成形品のクラック、割れが発生した。
本発明の実施の形態における光学素子成形用型の模式的断面。(a)は光学素子のプレス成形前の状態を示す図。(b)は光学素子成形後の状態を示す図。 本発明の実施の形態におけるSiCOH膜による中間層を形成する一例であるスパッタ成膜装置の模式的断面図。 本発明の実施の形態および実施例1に用いられる型母材にSiCOH膜による中間層を形成し、その上に引き続き硬質炭素膜を形成する成膜装置の模式的断面図。
符号の説明
11:型母材
12:ガラス素材
13:硬質炭素膜よりなる離型膜
14:中間層
15:光学素子
21:真空チャンバー
22:型母材
23:回転軸
24:ターゲット
25:熱電対
26:ヒーター
31:真空チャンバー
32:イオン源
33:バイアス印加電源
34:イオンビームを模式的に示したもの
35:型母材
36:ガス排気口で
37:基材ホルダー

Claims (6)

  1. 光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型の製造方法において、
    前記光学素子成形用型の成形面に、炭素を30atom%以上、ケイ素を20atom%以上、酸素を5atom%以上で20atom%以下、水素を5atom%以上で15atom%以下とする元素組成を有する中間層を形成する工程と、
    中間層上に、a−C:H膜を含む硬質炭素膜を形成する工程と、
    を少なくとも有することを特徴とする光学素子成形用型の製造方法。
  2. 前記中間層を形成する工程において、前記中間層の膜厚を0.01μm以上1μm以下に形成することを特徴とする請求項1に記載の光学素子成形用型の製造方法。
  3. 前記中間層を形成する工程において、スパッタ法またはイオンプレーティング法により前記中間層を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学素子成形用型の製造方法。
  4. 光学素子のプレス成形に用いる光学素子成形用型において、
    前記光学素子成形用型の成形面に、中間層を介してa−C:H膜を含む硬質炭素膜を備え、
    前記中間層が、炭素を30atom%以上、ケイ素を20atom%以上、酸素を5atom%以上で20atom%以下、水素を5atom%以上で15atom%以下とする元素組成を有することを特徴とする光学素子成形用型。
  5. 前記中間層の膜厚が、0.01μm以上1μm以下とされていることを特徴とする請求項4に記載の光学素子成形用型。
  6. 前記中間層が、スパッタ法またはイオンプレーティング法により形成されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の光学素子成形用型。
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