JP2006117457A - 光学素子成形用型及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 離型性が良好で、熱的安定性の高いガラスモールド用炭素離型膜を提供する。
【解決手段】 離型性が良好で、熱的安定性の高いガラスモールド用炭素離型膜を提供する。少なくとも成形面に硬質炭素膜を形成する光学素子成形用型の製造方法において、炭素原子数が6以上の芳香族炭化水素及びメタン(炭素数:1)の混合ガスを原料ガスとし、前記原料ガスをプラズマ化して、更にプラズマ中の炭素含有イオンを電界により型母材に照射することで、型母材の少なくとも成形面に硬質炭素膜を形成する。これにより、従来成形が難しかった、高い温度で成形が必要だった高融点ガラスが離型性良く、更に耐久性良く成形することが可能になった。
【選択図】 図1

Description

本発明は、主として、ガラス素材のプレス成形により、レンズ、プリズムなどのガラスよりなる光学素子を製造する際に使用される光学素子成形用型の製造方法に関するものである。
研磨工程を必要としないで、ガラス素材のプレス成形によってレンズを製造する技術は、従来の製造において必要とされた複雑な工程をなくし、簡単かつ安価にレンズを製造することを可能とし、近年レンズのみならず、プリズム、その他のガラスよりなる光学素子の製造に使用されるようになった。
このような、ガラスの光学素子のプレス成形に使用される型材に要求される性質としては、硬度、耐熱性、離型性、鏡面加工性などに優れていることが挙げられる。従来、この種の型材として、金属、セラミックス、および、それらをコーティングした材料など、数多くの提案がなされている。
幾つかの例を挙げるならば、特開昭49−51112号公報には、13Crマルテンサイト鋼が、特開昭52−45613号公報には、SiC及びSi3 N4 が、特開昭60−246230号公報には、超硬合金に貴金属をコーティングした材料が、また、特開昭61−183134号公報、特開昭61−281030号公報、特開平1−301864号公報には、それぞれ、ダイヤモンド薄膜もしくはダイヤモンド状炭素膜が、特開昭64−83529号公報には、硬質炭素膜をコーティングした材料が提案されている。
また、特公平2−31012号公報には、レンズまたは型のどちらか一方に5〜500nmの炭素膜を形成することが提案されている。更に、本発明者らによる出願の、特開平6−72728号公報によれば、高イオンエネルギーの炭素イオンビームを用いて、炭素と型母材もしくは母材表面に形成した中間層を構成する、少なくとも一種類以上の元素よりなるミキシング層を形成することにより、膜の剥離およびクラックの発生を生じない型を製造する方法が記載されている。
また、特開2000-143221号公報に記載の、基体に直流のパルスバイアスを印加して硬質炭素膜を作製する方法は、他の製造方法に比べると、型材と密着性良く硬質炭素膜を形成することができるが、更なる離型性の向上及び耐久性の向上が望まれている。
また、炭素膜を形成する原料ガスとしては、特開平02-199036号公報によれば、炭素原子と水素原子数の比率(C/H)が1/3以上である炭化水素を原料としてi-カーボン膜(ダイヤモンド状炭素膜)を形成して光学素子成形用型を製造する方法が記載されている。上記従来例では、ベンゼン、アセチレン、トルエン、キシレン、ペンタン等の原料ガスを単独または2種以上混合している。
本発明者らの出願件である特開2002-114526号公報には、「炭素源として、種々の炭素含有ガスや液体有機化合物を気化して用いることができる。液体有機化合物としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、ギ酸、酢酸などの有機酸を用いることができる。炭素含有ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、アセチレンなどの炭化水素ガス、一酸化炭素、または、ハロゲン化炭素などを用いることができる。」との記載がある。
特開昭49−51112号公報 特開昭52−45613号公報 特開昭60−246230号公報 特開昭61−183134号公報 特開昭61−281030号公報 特開平1−301864号公報 特開昭64−83529号公報 特公平2−31012号公報 特開平6−72728号公報 特開2000-143221号公報 特開平02−199036号公報 特開2002-114526号公報
しかしながら、13マルテンサイト鋼は酸化し易く、更に、高温でFeがガラス中に拡散して、ガラスが着色する欠点を持つ。SiC及びSi3 N4 は、一般的に酸化されにくいとされているが、高温では酸化が起こり、表面にSiO2 が形成され、ガラスの融着を生じる。貴金属をコーティングした材料は、融着を起こしにくいが、極めて柔らかいために、傷がつき易く、変形し易いという欠点をもっている。
また、一般的にダイヤモンド状炭素膜、a−C:H膜、硬質炭素膜を用いた型は、型とガラスとの離型性が良く、ガラスとの融着を起こしにくいが、型と膜の密着性が一般に低く、成形操作を、数百回以上繰り返して行うと、前記膜が部分的に剥離し、成形品において、十分な成形性能が得られないことがあるなど、耐久性に問題があった。また、ダイヤモンド薄膜は、高硬度で、熱的安定性にも優れているが、前記ダイヤモンド状炭素膜、a−C:H膜、硬質炭素膜など、非晶質の炭素膜に比べると、型とガラスとの離型性が悪く、更なる離型性の向上が望まれていた。
また、特開平1−301864号公報において、炭素源ガス濃度を3%以上として、ダイヤモンド結晶、グラファイト結晶、アモルファス状カーボンよりなる膜を形成し、最大面粗さ20nm以下とすることが提案されているが、膜中のグラファイト結晶の存在は、硬度と耐酸化性の劣化を生じ、型の耐久性を劣化させる原因となる。
また、特公平2−31012号公報の実施例で用いられている形成方法(真空蒸着法)で得られる炭素膜は、一般的には、膜と基板との密着力が弱く、成形中に膜が剥離するなどの耐久性に問題がある場合がある。
また、特開平6−72728号公報に記載の、炭素イオンをイオン注入することにより光学素子成形用型材を形成する方法や、特開2000-143221号公報に記載の、基体に直流のパルスバイアスを印加して硬質炭素膜を作製する方法は、他の製造方法に比べると、型材と密着性良く硬質炭素膜を形成することができるが、更なる離型性の向上及び耐久性の向上が望まれている。
更に、特開平02-199036号公報および特開2002-114526号公報には、ダイヤモンド状炭素膜形成に用いることができる原料ガスに関する記載があるが、膜質と原料ガスの関係については不明な点が多かった。
本発明者は、ダイヤモンド状炭素膜形成における原料ガスの膜質に対する依存性について詳細に検討した結果、本発明に至ったものである。
具体的には、炭素原子数が6以上の芳香族炭化水素とメタン(CH4、炭素数=1)の混合ガスを原料ガスとし、前記原料ガスをプラズマ化して、更にプラズマ中の炭素含有イオンを電界により型母材に照射することによって、離型性が良好でかつ、熱的安定性の高い硬質炭素膜(ダイヤモンド状炭素膜)が製造することができる。
更に、原料ガスとして炭素原子数が6以上の芳香族炭化水素及びメタン(CH4、炭素数=1)と、窒素またはフッ素を含有するガスを用いることにより、更に離型性が良好でかつ、熱的安定性の高い硬質炭素膜(ダイヤモンド状炭素膜)が製造することができる。
この理由は、プラズマ化する時に発生するイオン種が関与するものと考えられる。炭素原子数が6以上の芳香族炭化水素をプラズマ化するとC6Hx+といった炭素原子の数の大きなイオンが形成される。これらのイオンで炭素膜が形成された場合、緻密な炭素膜が形成されるため、耐熱性が高く、耐久性の良い炭素膜が形成できる。これに対してメタンをイオン化した場合、CHx+イオンが形成される。これらのイオンで形成された膜は、比較的耐熱性に劣るものの、表面に適度の粗さを形成して型とガラスが強固に密着するのを防ぎ、離型性が高い膜となる。本発明で形成された硬質炭素膜はこれらの二つの特徴を併せ持った、耐久性と離型性に優れた離型膜となる。
従来例では、本アイデアのように、「炭素原子数が6以上の芳香族炭化水素とメタン(CH4、炭素数=1)の混合ガスを原料ガスとして炭素膜を形成する」と言う具体例は見当たらず、本発明の構成・効果は本発明によりはじめて明らかになったものである。
また、これらの原料ガスに、窒素またはふっ素を含む原料ガスを添加することで、耐熱性の向上、及び離型性の向上も図ることができる。具体的には窒素を含有することで耐熱性が更に向上し、またフッ素を含有させることにより離型性が更に向上する。
本発明により、従来成形性および成形耐久性に問題があった、高融点ガラスを離型性良く、更に耐久性良く成形することが可能になった。なお、ここで言う高融点ガラスとは成形温度が700℃以上、代表的には750℃以上といった高い成形温度が必要なガラスのことである。このようなガラスは従来の離型膜ではガラスと型の反応により成形性と耐久性に問題があり、量産性良く製造するのが困難であった。
(作用、効果)
本発明により、成形用ガラスと型の離型性が良好で、熱的安定性の高い光学素子成形用型を提供する。
これにより、従来例より成形サイクルの短縮及び成形耐久性の向上が図られ、更に従来成形が難しかった、高い温度で成形が必要だった高融点ガラスの成形が可能となる。
本発明により離型性が良好で、熱的安定性の高いガラスモールド用炭素離型膜を提供することができる。
これにより、従来成形が難しかった、高い温度で成形が必要だった高融点ガラスが離型性良く、更に耐久性良く成形することが可能になった。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら、具体的に説明する。ここで、本発明の光学素子成形用型の模式的断面を図1に示す。図において、11は成形面に硬質炭素膜13がある型母材である。なお、図1では、凸レンズ成形用型を示したが、本発明では、凸レンズ成形用型に限定されるものでなく、凹レンズ成形用型、非球面レンズ成形用型、シリンドリカルレンズ成形用型などにも使用可能である。また、図2はプレス中を模式的に示したもので、図中21は、成形されたガラスである。
本発明の硬質炭素膜とは、基本的には非晶質であり、硬度が高く、赤外領域で透明性が高いことから、ダイヤモンド状炭素膜(DLC膜)、i-C膜などとも呼ばれているものである。この硬質炭素膜は、非晶質であるため、非常に平滑な表面を有しており、型母材表面に形成することにより、型母材の表面の平滑性と同様、あるいは、それ以上の平滑性を得ることができる。
また、硬質炭素膜は、通常、いかなる結晶性も有していない非晶質の膜であるが、電子顕微鏡などで、微小領域(nmオーダー)を詳細に観察すると、数nm程度の大きさの、微結晶のダイヤモンドまたはグラファイトが観察されることがある。これらの微結晶の量を見積もるのは非常に困難であるが、全体積のせいぜい数%以下であろうと思われる。
この硬質炭素膜の形成には、イオンビーム蒸着法及びイオンプレーティング法などと呼ばれる方法を用いる。上記成膜方法は、炭素源ガス、および、水素、酸素、塩素、希ガスなどの希釈ガスを、熱フィラメントまたは高周波、更には、磁場などを印加することで、プラズマ化し、このプラズマから、電界を用いてイオンを加速して引出し、このイオンを型母材上に照射して、その成形面に硬質炭素膜を形成する方法である。
本発明の硬質炭素膜の形成方法では、炭素源の原料ガスとして炭素原子数が6以上の芳香族炭化水素及びメタン(CH4、炭素数=1)を用いるが、炭素原子数が6以上の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ナフタリンなどを用いることができる。また、酸素を含有するフェノール、ベンジルアルコール、クレゾール、ベンズアルデヒドなどを用いることも可能である。
また本発明では炭素源の原料ガスに、窒素またはフッ素を含有するガスを添加することにより更に好適な結果を得ることが可能である。窒素を含有するガスとしては、窒素ガス、アンモニアガス、などを用いることができる。フッ素含有ガスとしては、フッ素ガス、CF4、CHF3,CH2F2,CH3F、C2F6ガスなどを用いることができる。窒素及びフッ素を含有するガスの添加量は、成形するガラスや成形条件により種々変更が可能であるが、望ましい原料ガス中の(炭素原子/窒素原子)の値(圧力比)で、0.1<(炭素原子/窒素原子またはフッ素原子)<10程度である。0.1以下では硬質炭素膜の実用的な成膜速度が得られないことがあり、また10以上では窒素ガスまたはフッ素ガス添加の効果がほとんど見られなくなる。
本発明における炭素原子数が6以上の芳香族炭化水素とメタンの混合の割合は、成形ガラスの種類や成形プロセスにより適宜変更が可能であるが、成膜時の原料ガス圧力比(芳香族炭化水素/メタン)で、0.1<芳香族炭化水素/メタン<10程度であり、望ましくは0.2<芳香族炭化水素/メタン<5程度である。
図3は、本発明で用いることができる硬質炭素膜を形成する成膜装置を示す模式図である。31は真空チャンバー、32はイオン源で、不図示のバルブ、ガス流量調整器、圧力調整器、ガスボンベが接続されており、加熱されたフィラメントと電場を用いて炭素含有ガスをイオン化することができる。33は基材ホルダーにバイアスを印加するための電源である。34はイオンビームを模式的に示したもの、更に、35は型材である。また、36はガス排気口で、バルブ、ターボ分子ポンプ、ロータリーポンプ(何れも図示せず)が接続されている。また37は基材ホルダーで型材を固定することができる。なお、本発明で用いられる成膜装置は、上記装置に何ら限定されるものではない。
例えば、本発明の硬質炭素膜の好適な成膜方法は、型材に負の直流パルスバイアスを印加することによって行われる。パルス的にバイアスを印加すると型材表面でのプラズマの密度が上昇し、硬質炭素膜とSiC層との界面でミキシング層が形成されて硬質炭素膜とSiC膜との密着力が大幅に向上する。負の直流パルスバイアスの電圧は、型材材料や形状により変化するが、0.5〜20kV程度印加する。印加する負の直流パルスバイアスは、成膜時に一定の値としても良いが、成膜開始直後に高く、成膜終了時に低くしても良い。これは、成膜開始直後に高い負の直流パルスバイアスを印加することで型母材と硬質炭素膜の密着力を高めるためで、例えば、8kV以上20kV以下の負のパルスバイアスを印加することにより炭素含有イオンが型母材に注入され硬質炭素膜と型母材の密着性が向上する。また、更に成膜終了時に低い負の直流パルスバイアスを印加するのは硬質炭素膜の平滑性を上げるためであり、例えば、1kV以上4kV以下の負のパルスバイアスを印加することにより平滑性の高い硬質炭素膜を得ることができる。具体的な例を示すと、成膜開始直後に、バイアス電圧を10kVとし、その後徐々に電圧を、7.5kV、5kV、2.5kVと下げていき、成膜を終了させる、と言うプロセスで成膜を行うことができる。
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
(実施例1)
図1および図2は、本発明に係る光学素子成形用型の一つの実施様態を示すものである。なお、図1は光学素子のプレス成形前の状態を示し、図2は光学素子成形後の状態を示す。ここで、符号11は型母材、12はガラス素材、13は本発明の硬質炭素膜よりなる離型膜であり、また、図2での、符号21は光学素子である。図1に示すように、型の間に置かれたガラス素材12をプレス成形することにより、レンズなどの光学素子21が形成される。
次に、本発明の光学素子成形用型の製造法について説明する。型母材として、バインダーレスWC系超硬合金焼結体(フジダイス製、商品名J−05)を所定の形状に加工した後、これをRa=1.8nmとなるように研磨した。
次に、この型母材を良く洗浄した後、図3に示す成膜装置に設置し、まず、型母材の成膜を行う表面をアルゴンイオンエッチングによりクリーニングを行った。アルゴンイオンエッチングは、Arガスを20ml/minの流量で導入し、圧力を1.5×10-1Paに調整し、イオン源で、アルゴンガスを分解イオン化し、型母材へ直流バイアス:−2kVを印加して行った。
次に、中間層として非晶質炭化けい素膜を形成する。基体ホルダーの基体加熱機構を用いて型材を300℃まで加熱し、原料ガスとしてテトラエトキシシラン:20ml/minの流量で導入し、圧力を2×10-1Paに調整した。イオン源で、加熱したフィラメントと電場及び磁場の印加により原料ガスを分解、イオン化し、また、型母材へ36の直流パルスバイアス電源を用いて基板バイアスを印加して、型材表面に非晶質炭化けい素膜を形成した。なお、直流パルスバイアスは、−2.5kVとして、繰り返し周波数:2kHz、デューティー比:10%とした。10分間の成膜で約100nmの非晶質炭化けい素膜が形成された。
続いて、硬質炭素膜を形成する。ガス流量はトルエン:20ml/min、メタン:10ml/minとし、型材の温度は300℃で、圧力:3×10-1Paとした。イオン源で原料ガスを分解、イオン化し、型母材へ直流パルスバイアスを印加して、硬質炭素膜を形成した。直流パルスバイアスは、−4kVとして、繰り返し周波数:2kHz、デューティー比:10%とした。30分間の成膜で約300nmの硬質炭素膜が形成された。
次に、この光学素子成形用型材を用いて光学レンズの成形を行った。
成形ガラスは、高融点ランタン系光学ガラス(軟化点Sp=752℃、転移点Tg=985℃)で、直径半径:φ30mmの凸メニスレンズを成形する。成形条件は、窒素雰囲気下、プレス温度750℃で行った。成形中、型と成形された光学素子との離型性は良好であった。また、成形後の型表面を走査型電子顕微鏡で観察した所、膜剥離、クラックの発生、更には、ガラスの融着が認められず、良好な型表面性を有していた。また、成形ガラスレンズも、ガラスの割れが見られず、良好な表面粗さであった。
(実施例2)
型母材として、WC系超硬合金を所定の形状に加工した後、成形面をRmax=0.04μmに鏡面研磨し、この型母材を良く洗浄した後、公知のスパッタ法によって下地層として窒化チタン膜を膜厚1μm形成した。次に、図3に示す成膜装置に設置し、まず、型材の成膜を行う表面をアルゴンイオンエッチングによりクリーニングを行った。アルゴンイオンエッチングは、Arガスを30ml/minの流量で導入し、圧力を3×10-1Paに調整し、イオン源で、アルゴンガスを分解、イオン化し、型母材へ直流バイアス:−1.5kVを印加して行った。
次に、中間層として、非晶質炭化けい素膜を形成した。成膜条件は、型材温度:200℃、原料ガスはトリメチルシラン:25ml/min、圧力は3×10-1Paとした。イオン源で原料ガスを分解、イオン化し、型母材へ直流パルス電源を用いて基板バイアスを印加した。直流パルスバイアスは、電圧を成膜開始から10分ごとに−6kV、−3.5kV、−1kVと変化させた。また、繰り返し周波数:2kHz、デューティー比:10%とした。30分間の成膜で約200nmの非晶質炭化けい素膜が形成された。
次に、硬質炭素膜を形成する。ガス流量はトルエン:20ml/min、メタン:20ml/minとし、基板温度:200℃で、圧力:4×10-1Paとした。イオン源で原料ガスを分解、イオン化し、型母材へ直流パルス電源を用いて基板バイアスを印加した。直流パルスバイアスは、電圧を成膜開始から10分ごとに−10kV、−6kV、−2kVと変化させた。また、繰り返し周波数:2kHz、デューティー比:10%とした。30分間の成膜で約300nmの硬質炭素膜が形成された。
次に、この光学素子成形用型材を用いて光学レンズの成形を行った。
成形ガラスは、高融点ランタン系光学ガラス(軟化点Sp=803℃、転移点Tg=738℃)で、直径半径:φ15mmの、凹メニスレンズを成形する。成形条件は、窒素雰囲気下、プレス温度800℃で行った。成形中、型と成形された光学素子との離型性は良好であった。また、成形後の型表面を走査型電子顕微鏡で観察した所、膜剥離、クラックの発生、更には、ガラスの融着が認められず、良好な型表面性を有していた。また、成形ガラスレンズも、ガラスの割れが見られず、良好な表面粗さであり、透過率も高く、ハローの発生も認められなかった。
(比較例1及び2)
原料ガスとしてトルエンまたはメタンのみを用いる以外は実施例1と同様にして光学素子成形用型材を作成して光学ガラスを成形した所、原料ガスをトルエンのみの場合は、耐久性は良好であったが、離型性が実施例1の型より悪く、微小なガラス融着の発生、スジ状の傷の発生が成形を進めるにつれ見られるようになり、成形ガラスの表面性が悪化した。この状態で更に成形を進めるとガラスの割れも発生し良好な成形品を得られなくなった。
また、原料ガスをメタンのみとした場合は、成形初期は離型性は良好であったが、成形を進めるうちに膜の消耗が見られ、ガラスの型材への融着が発生し、成形耐久性の劣化が見られた。
(実施例3−6、比較例3−5)
原料ガスを種々変更する以外は、実施例2と同様にして、光学素子成形用型材を形成し、光学素子を成形した。(非晶質炭化けい素膜の膜厚は約200nm、硬質炭素膜の膜厚は、約300nmとなるように成膜時間についてはおのおの調整した)
その結果を表1に示す。
Figure 2006117457
なお本発明の実施例において、成形品表面性と成形耐久性に関する評価基準(◎、○、△、×)は、以下の基準により行った。まず、成形品表面性の評価は、成形レンズに集光灯の光を当ててその表面性(表面の曇り、キズ及び微小凹凸)を目視で検査することにより行った。評価基準としては、製品として使用可能かどうかを「限度見本」と呼ばれるサンプルと比較して決定した。この限度見本は、アス及びクセ(所望のレンズ形状からのずれ量)がニュートンリング約1本で、最大表面粗さ(P−V値)で約30nm、平均表面粗さ(RMS)で約5nmであり、集光灯の光を当てて確認できる、大きさ約10μmまでのキズがレンズ全体の中で2個でかつ、近接していない、という条件のもので、この「限度見本」より表面性の悪い成形品は製品として使用できない。評価基準のうち、×は、この限度見本より表面性が劣り、製品として使用不可能なものである。△は、限度見本と同レベルの表面性または、簡単な拭き洗浄で、限度見本と同レベルの表面性が得られるものである。○は、限度見本以上の表面性が得られているものである。◎は、非常に良好な表面性で曇り等がほとんどないものである。また、成形耐久性は、限度見本と同レベルまたはそれ以上の製品を規定の数量成形することが可能かどうかで評価した。×は、ガラスの融着または割れ等のために、規定の数量を成形することができなかったものである。△は、ほぼ規定回数の成形が可能なもの、○は、規定回数の1.5倍以上の成形が可能なもの、更に◎は、規定回数の2倍以上の成形が可能なものである。
上記表からも分かるように、本発明の実施例の範囲内の原料ガスを用いることにより、成形品の表面性及び型の成形耐久性は良好となる。
これに対して、メタンガスを用いない比較例2においては、型とガラスの離型性が悪く、微小なガラス融着の発生、スジ状の傷の発生が成形を進めるにつれ見られるようになり、成形ガラスの表面性が悪化した。
更に、炭素原子数が6以上の芳香族炭化水素を用いない比較例4においては、成形を進めるにつれ硬質炭素膜の消耗が生じ、型の成形耐久性が悪化した。
また、原料ガスとしてアセチレンのみを用いた場合は、成形の初期から離型性が悪くガラスの割れが発生し、さらに膜の消耗も認められた。
(実施例7−8)
原料ガスを種々変更する以外は、実施例2と同様にして、光学素子成形用型材を形成し、光学素子を成形した。(非晶質炭化けい素膜の膜厚は約200nm、硬質炭素膜の膜厚は、約300nmとなるように成膜時間についてはおのおの調整した)
その結果を表2に示す。
Figure 2006117457
実施例7に示すように、原料ガスに窒素を添加すると、更に耐久性が向上する。これは、原料ガスに窒素を添加することにより、膜中に窒素が取り込まれ、これが硬質炭素膜の熱的安定性を向上させるためである。
また実施例8のように原料ガスにフッ素を添加すると離型性が向上するため、成形品の表面性が向上する。これは、原料ガスにフッ素系のガスを添加することにより、膜中にフッ素が取り込まれC-F結合が生じ、離型性を向上させるためである。
光学素子成形用型の模式的断面図 成形後の光学素子成形用型の模式的断面図 硬質炭素膜を形成する成膜装置の模式図
符号の説明
11 型母材
12 ガラス素材
13 硬質炭素膜
21 成形されたガラス光学素子
31 真空チャンバー
32 イオン源
33 バイアスを印加電源
34 イオンビームを模式的に示したもの
35 型材
36 ガス排気口
37 基材ホルダー

Claims (3)

  1. 少なくとも成形面に硬質炭素膜を形成する光学素子成形用型の製造方法において、炭素原子数が6以上の芳香族炭化水素及びメタン(CH4、炭素数=1)の混合ガスを原料ガスとし、前記原料ガスをプラズマ化して、更にプラズマ中の炭素含有イオンを電界により型母材に照射することで、型母材の少なくとも成形面に硬質炭素膜を形成する、ことを特徴とする光学素子成形用型の製造方法。
  2. 原料ガスとして炭素原子数が6以上の芳香族炭化水素及びメタン(CH4、炭素数=1)と、窒素またはフッ素を含有するガスを用いることを特徴とする請求項1記載の光学素子成形用型の製造方法。
  3. 請求項1及び2の光学素子成形用型の製造方法により製造された型。
JP2004305689A 2004-10-20 2004-10-20 光学素子成形用型及びその製造方法 Withdrawn JP2006117457A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009096191A (ja) * 2007-09-28 2009-05-07 Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute 微細成形型および微細成形型用基材並びに微細成形型の製造方法
JP2010265152A (ja) * 2009-05-18 2010-11-25 Olympus Corp 光学素子用成形型、光学素子用成形型の製造方法、並びに光学素子の製造方法

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