JP2010116435A - 水蒸気バリア性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】水蒸気の透過を有効に抑制することが可能な水蒸気バリア性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】40℃及び90%RHの条件下、厚さ25μmにおける水蒸気透過度が100g/m・day以下である熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とし、有機系吸水性材料を配合して成ることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、水蒸気バリア性樹脂組成物に関するものであり、より詳細には、吸湿性に優れ、水蒸気を遮断可能な水蒸気バリア性樹脂組成物に関する。
水分の影響を受けやすい、食品、医薬品、精密機器、電子部品等を包装する包装容器においては、包装容器内の湿度を低くすることが必要であり、このような内容品の保存には、容器内部の湿気を除去するために、シリカゲル、ゼオライト等の乾燥剤を充填した小袋を上記内容品と一緒に封入することが一般に行われている。
しかしながら、このような別体の乾燥剤を封入するのは、内容品によっては、封入操作が煩雑であると共に容器容積の減少により内容品の収納に支障があったり、或いは乾燥剤を充填した小袋の破損により、内容品に影響を与えるおそれがある。
このような問題を解決するものとして、容器を構成する熱可塑性樹脂中に吸湿機能を有する無機化合物を配合して成る吸湿性樹脂組成物から成る吸湿層を有する吸湿容器が提案されている(特許文献1)。
特開2004−210392号公報
しかしながら、吸湿材料として無機化合物を用いると、マトリックス樹脂と吸湿材料との間の剥離によりボイドが発生し、吸湿性能の低下や、透明性等の外観不良、或いは機械的物性の低下という問題を生じる場合がある。
また容器内部の吸湿を行っても、容器外部からの水蒸気の透過を防止しなければ容器内の湿度を低く保つことは困難である。
従って本発明の目的は、上述したような問題を生じることがなく、水蒸気の透過を有効に抑制することが可能な水蒸気バリア性樹脂組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、外部からの吸湿を有効に防止することができ、水分の影響を受けやすい食品、医薬品、精密機器、電子部品等の製品を保存性よく収納可能な多層構造体を提供することである。
本発明によれば、40℃及び90%RHの条件下、厚さ25μmにおける水蒸気透過度が100g/m・day以下である熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とし、有機系吸水性材料を配合して成ることを特徴とする水蒸気バリア性樹脂組成物が提供される。
本発明の水蒸気バリア性樹脂塑性物においては、
1.有機系吸水性材料が、前記熱可塑性樹脂に対し、1〜50wt%含有すること、
2.有機系吸水性材料が、カルボキシル基又は水酸基を有すること、
3.有機系吸水性材料が、架橋構造を有すること、
4.有機系吸水性材料の水膨潤度が10以下であること、
が好適である。
本発明によればまた、上記水蒸気バリア性樹脂組成物を少なくとも一層有することを特徴とする構造体が提供される。
尚、本発明において、「吸水性」は「吸湿性」を含み、「水分」は「水蒸気」を含むものとして使用する。
本発明の水蒸気バリア性樹脂組成物においては、水蒸気バリア性に優れた熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として、このマトリックス樹脂中に有機系吸水性材料を配合することにより、水蒸気バリア性に優れた熱可塑性樹脂単独で構成した場合よりも優れた水蒸気バリア性を発現することが可能になる。
しかも本発明の水蒸気バリア性樹脂組成物においては、吸水性材料として従来用いられていた無機系吸水材料を用いた場合のように、成形加工によりマトリックス樹脂と吸水性材料の剥離に起因するボイドの発生が防止され、水蒸気バリア性を成形体に有効に発現することができると共に、機械的強度及び外観特性にも優れている。
本発明の水蒸気バリア性樹脂組成物から成る層を有する多層構造体においては、構造体外部からの水蒸気の浸入が有効に防止されており、湿気により影響を受けやすい食品や医薬品等を収納する容器や包装として好適に使用することができる。
本発明の水蒸気バリア性樹脂組成物においては、有機系吸水性材料を配合するマトリックス樹脂として、40℃及び90%RHの条件下、厚さ25μmにおける水蒸気透過度が100g/m・day以下、特に80g/m・day以下である熱可塑性樹脂(以下、「水蒸気バリア性熱可塑性樹脂」ということがある)を用いることが重要な特徴である。
本発明においては、有機系吸水性材料を配合するマトリックス樹脂として水蒸気バリア性の高い熱可塑性樹脂を用いることにより、樹脂組成物から成る層への水蒸気の透過を防止すると共に、マトリックス樹脂に水蒸気が浸入した場合でも、有機系吸水性材料が水蒸気を吸収することができるため、樹脂組成物から成る層は水蒸気を有効に遮断することが可能となるのである。
また本発明に用いる有機系吸水性材料は、マトリックス樹脂との相溶性に優れているため、無機系吸収材料を用いた場合のように成形時にマトリックス樹脂と吸水材料との間に剥離を生じることが有効に防止されている。
本発明の水蒸気バリア性樹脂組成物において、40℃及び90%RHの条件下、厚さ25μmにおける水蒸気透過度が100g/m・day以下の熱可塑性樹脂を用いること、及び吸水性樹脂として有機系吸水性材料を用いることにより、上述した効果が奏されることは後述する実施例の結果から明らかである。
すなわち、熱可塑性樹脂中に有機系吸水性材料を配合している場合であっても、40℃及び90%RHの条件下、厚さ25μmにおけるマトリックス樹脂の水蒸気透過度が100g/m・dayよりも大きい熱可塑性樹脂を用いた樹脂組成物(比較例2)の場合には、水蒸気透過度が100g/m・day以下の水蒸気バリア性熱可塑性樹脂中に同一の吸水性材料を同量配合した樹脂組成物(実施例1)に比して水蒸気バリア性が劣っており、一方、水蒸気透過度が100g/m・day以下の水蒸気バリア性熱可塑性樹脂を用いた樹脂組成物であっても、無機系吸水性材料を用いた場合には(比較例3)、吸水性材料を配合していない同一の水蒸気バリア性熱可塑性樹脂(比較例1)の水蒸気バリア性よりも劣っている。これに対して、水蒸気透過度が100g/m・day以下の水蒸気バリア性熱可塑性樹脂に有機系吸水性材料を配合した樹脂組成物(実施例1〜9)では、同一の水蒸気バリア性熱可塑性樹脂単独から成るもの(比較例1)よりも優れた水蒸気バリア性が得られていることが明らかである。
(熱可塑性樹脂)
本発明の水蒸気バリア性樹脂組成物において、マトリックスとして使用し得る熱可塑性樹脂としては、上述したように、40℃及び90%RHの条件下、厚さ25μmにおける水蒸気透過度が100g/m・day以下、特に80g/m・day以下の熱可塑性樹脂である。
このような熱可塑性樹脂としては、これに限定されないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂(PAN)、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)等のフッ素樹脂、酢酸ビニル含有量が1〜15wt%の範囲にあるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレン−環状オレフィン共重合体(COC)等を挙げることができ、中でも成形性・衛生性・コスト等の観点より特にポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸ビニル含有量が1〜10wt%の範囲にあるエチレン−酢酸ビニル共重合体、環状オレフィン系共重合体、また相溶性・分散性等の観点より親水基を有するエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)を好適に使用することができる。また、上述した樹脂を2種類以上ブレンドし使用することができる。
(吸水性材料)
本発明の吸水性樹脂組成物に用いる吸水性材料としては、親水基を有する有機系化合物であることが重要であり、特にカルボキシル基又は水酸基を有する有機系化合物であることが好適である。
中でも有機系化合物が架橋構造を有することが好ましい。吸水による溶解が生じないため食品等に用いる場合、衛生的に安全である。
さらに、有機系化合物が架橋構造を有すると共に、水膨潤度が10以下、特に5以下であることが好ましい。水膨潤度が10より大きい吸水性材料では、樹脂に配合した際、吸水性材料の周りを取り囲むマトリックス樹脂種によっては、吸水に伴う膨潤が阻害され、性能を発現できないことがある。これに対して、水膨潤度が10以下の吸水性材料では、樹脂種に制限されることなく性能を発現することができる。これは、構造内の自由体積が水を取り込むサイトになるためと考えられ、架橋密度や架橋間距離、親水基数等により吸水量を制御できると推測される。吸水性材料としては、アクリル酸系膨潤性有機ゲルである高吸水性樹脂や非膨潤性架橋ゲルが挙げられ、具体的には、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物やアクリル系微粒子、アルギン酸カルシウム微粒子を挙げることができる。前記微粒子の平均粒径は、10μm以下、特に5μm以下であることが好ましい。
尚、水膨潤度は、後述する吸水性材料を室温(25℃)の条件下で24時間蒸留水に浸漬させた前後の体積比で測定される。
(水蒸気バリア性樹脂組成物)
本発明の水蒸気バリア性樹脂組成物においては、上記吸水性材料をマトリックスとなる水蒸気バリア性熱可塑性樹脂に対して1〜50wt%、特に1〜30wt%の量で配合することが好適である。上記範囲よりも少ないと、十分に水蒸気バリア性能を向上させることができず、一方上記範囲よりも吸水性材料の量が多いと、後述する実施例3の結果からも明らかなように、水蒸気バリア性能においては優れているとしても、ブツの発生等の外観特性や成形性の点で劣るようになる。
本発明の水蒸気バリア性樹脂組成物は、樹脂組成物の特性を損なわない限り、従来公知の樹脂用配合剤、例えば、充填剤、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、減粘剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を公知の処方に従って配合することができる。
また、酸素吸収剤或いは酸化性有機成分及び遷移金属触媒を含有する酸素吸収性樹脂組成物等を配合することにより、酸素バリア性を付与することができる。
(多層構造体)
本発明の水蒸気バリア性樹脂組成物は、それ単独でフィルム、シート等に成形し、水蒸気バリア性フィルム、シート等として使用することもできるが、特に他の熱可塑性樹脂から成る層との多層構造体として使用することが好ましい。
例えば、これに限定されないが、上記水蒸気バリア性樹脂組成物から成る層の両側に他の熱可塑性樹脂から成る層、例えば後述するように、環状オレフィン系共重合体から成る外層、ポリエチレンから成る内層が形成された2種3層のもの等を挙げることができる。このような層構成を採ることにより、外部からの水蒸気の浸入を確実に抑制すると共に、多層構造体の内部に存在する水蒸気を水蒸気バリア性樹脂組成物から成る層が効率的に吸収することが可能となる。さらに、エチレン−ビニルアルコール共重合体やポリアミド樹脂或いは酸素吸収性樹脂組成物等の酸素バリア材を有する層を中間層に設けることにより酸素バリア性を付与することができる。
また水蒸気バリア性樹脂組成物から成る層は、多層構造体の最内層とすることもできるが、内容物が食品や医薬品等の場合には、他の熱可塑性樹脂から成る最内層を設けることが衛生的観点から望ましい。本発明の水蒸気バリア性樹脂組成物から成る層の内面側に設ける層は、多層構造体内部に存在する水蒸気を吸水性材料に速やかに到達させるために、比較的水蒸気透過率が高いものであることが好ましく、好適には、酢酸ビニル含有量が20wt%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等を挙げることができる。
本発明の多層構造体において、各層の厚みは、用途や構造体の形態等によって異なり、特に制限はないが、カップ等の成形に用いられる多層シートの場合では、本発明の水蒸気バリア性樹脂組成物から成る層は、1〜1000μm、特に5〜500μmの範囲にあるのが好適である。また外層として水蒸気バリア性熱可塑性樹脂から成る外層を設ける場合には、1〜1000μm、特に5〜500μmの範囲にあるのが好ましく、水蒸気透過率の高い熱可塑性樹脂から成る内層を設ける場合には、1〜500μm、特に1〜100μmの範囲にあるのが好ましい。
本発明の多層構造体は、これに限定されるものではないが、従来公知の製法によって、フィルム 、シート、カップ、トレイ 、包装袋、容器蓋、ボトル等の成形体として成形され、水蒸気バリア性に優れた包装材として使用することができる。
本発明の多層構造体において、フィルム或いはシートは、予め各層を別途形成し、熱接着などの方法により積層することもできるし、従来公知の接着剤を用いて積層することも勿論できる。また共射出、共押出等の従来公知の積層体の方法により成形することもできる。カップ、トレイ等は、上記方法により得られたシートを真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形等に付することにより成形することができる。
またパウチ等の包装袋は、種々の形状に従来公知の製法により成形することができ、ボトルは、従来公知の押出機から押し出した中空パリソンをダイレクトブロー成形、或いは射出成形によって得たプリフォームを二軸延伸ブロー成形することにより成形することができる。
1.[熱可塑性樹脂(マトリックス樹脂)]
(水蒸気透過度の測定)
50tホットプレス(庄司鉄工製)により熱可塑性樹脂を200℃の温度で加熱溶融を繰り返し、厚み約150μmのシートを作製した。水蒸気透過測定装置(PERMATRAN−W 3/30:MOCON社製)により得られたシートの40℃、90%RHにおける水蒸気透過度を測定し、25μm厚に換算して、熱可塑性樹脂の水蒸気透過度とした。
2.[有機系吸水性材料]
(水膨潤度の測定)
メスシリンダーに有機系吸水性材料0.5gと蒸留水100mlを入れ、室温(25℃)で24時間静置した。その後、有機系吸水性材料の体積をメスシリンダーの目盛りから読み取り、これを吸水後の体積とした。また、吸水前の体積は嵩密度(JIS Z2504に準拠)より仕込み量0.5gを換算した値を用いた。吸水前後の体積比を水膨潤度とし、下記計算式より算出した。
Figure 2010116435
[吸水性樹脂組成物]
(作製方法)
出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(スクリュー径φ20 L/D=32.5ULTNano05−20AG:テクノベル社製)により、押出温度200℃ スクリュー回転数100rpmで真空ベントを引きながら熱可塑性樹脂を溶融混練した。同時に、粉体フィーダーを用いて押出機ホッパー下より有機系吸水性材料を配合した。このとき、熱可塑性樹脂に対し10wt%になるように有機系吸水性材料の配合量を調整した。
(混練時の目視評価)
吸水性樹脂組成物を作製する際の目視評価として、押出機より押し出されたストランドの外観やベントアップの有無を確認し、特に問題ないものを○、ストランド中にブツが発生し、分散が不十分なものを△、樹脂圧の増加等によるベントアップにより作製できなかったものを×とした。
(吸水性樹脂組成物の水蒸気バリア性評価)
50tホットプレス(庄司鉄工製)により得られた吸水性樹脂組成物を、200℃の温度で加熱溶融を繰り返し、厚み約150μmのシートを作製した。水蒸気透過測定装置(PERMATRAN−W 3/30:MOCON社製)により得られたシートの20℃、70%RHにおける水蒸気透過度を測定した。
尚、水蒸気バリア性の評価は、下記計算式より行ない、1.0未満のものを○、1.0以上のものを×とした。
Figure 2010116435
3.[多層構造体]
(多層ボトルの作製)
上記方法により作製した吸水性樹脂組成物、低密度ポリエチレン樹脂(スミカセンF108−2:住友化学(株))、接着性樹脂(モディックL522:三菱化学(株))を用いて、ダイレクトブロー成形機により多層構造体を作製した。成形温度は200℃、シェル径15mm、コア13mmを用い、広口ボトル(口径44mm、内容積125cc)を作製した。
層構成は、外層側より低密度ポリエチレン樹脂層(250μm)/吸水性樹脂組成物層(50μm)/低密度ポリエチレン樹脂層(50μm)の2種3層、または外層側より低密度ポリエチレン樹脂層(250μm)/接着層(5μm)/吸水性樹脂組成物層(50μm)/接着層(5μm)/低密度ポリエチレン樹脂層(50μm)の3種5層である。
(多層フィルムの作製)
上記方法により作製した吸水性樹脂組成物、低密度ポリエチレン樹脂(スミカセンF108−2:住友化学(株))を用いて、三層ラボプラストミル(東洋精機(株))により多層フィルムを作製した。成形温度は200℃とした。
層構成は、外層側より低密度ポリエチレン樹脂層(50μm)/吸水性樹脂組成物層(100μm)/低密度ポリエチレン樹脂層(20μm)の2種3層である。
(多層構造体の水蒸気バリア性評価)
ドライエアにより除湿した低湿度雰囲気(20%RH以下)のグローブボックス内で、前記作製した多層ボトルにワイヤレス式温湿度計(ハイグロクロン:KNラボラトリーズ製)を入れ、アルミ/ポリエチレンで積層した蓋材で容器口部をヒートシールした。多層フィルムでは、内容積が150mlになるように作製した包装袋をボトル同様にグローブボックス内でヒートシールした。その後、22℃60%RHで経時し、7日後の容器内部の相対湿度が20%RH以下であるものを○、20%RHより湿度が高いものを×とした。
(実施例1)
熱可塑性樹脂として水蒸気透過度80g/m・day、酢酸ビニル含有量が10wt%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA10%、ウルトラセンEVA541:東ソー(株))、吸水性材料として水膨潤度1.2(嵩密度0.28g/cm)のアクリル系微粒子である非膨潤性架橋有機ゲル(タフチックHU:東洋紡(株))を用い、上記作製方法により吸水性樹脂組成物を作製した。ベントアップやブツの発生はなく、ゲルが均一に分散しており、問題なく作製することができた。吸水性樹脂組成物の水蒸気バリア性評価では、熱可塑性樹脂のみの値よりも2割程度低い値を示し、吸水性材料の吸水により水蒸気バリア性が向上していた。また上記方法により作製した2種3層の多層構造体の水蒸気バリア性評価において、20%RH以下を保持していた。
(実施例2)
吸水性材料の配合量を50wt%にした以外は、実施例1と同様に吸水性樹脂組成物を作製した。配合量が実施例1の5倍増であるが、特に問題なく配合することができ、ゲルの分散状態も良好であった。水蒸気バリア性評価では、熱可塑性樹脂のみの値よりも7割程度低い値を示し、高い水蒸気バリア性であった。また上記方法により作製した2種3層の多層構造体の水蒸気バリア性評価において、20%RH以下を保持していた。
(実施例3)
吸水性材料の配合量を60wt%にした以外は、実施例1と同様に吸水性樹脂組成物を作製した。ストランド中にブツが発生し、ゲルの分散が不十分であったが、作製することができた。水蒸気バリア性評価では、熱可塑性樹脂のみの値よりも8割程度低い値を示し、高い水蒸気バリア性であった。また上記方法により作製した2種3層の多層構造体の水蒸気バリア性評価において、20%RH以下を保持していた。
(実施例4)
熱可塑性樹脂として水蒸気透過度22g/m・dayであるポリエチレンテレフタレート(PET、5015W:日本ユニペット(株))を用いた以外は実施例1と同様に樹脂組成物を作製した。特に問題なく作製することができた。水蒸気バリア性評価では、熱可塑性樹脂のみの値よりも4割程度低い値を示し、吸水性材料の吸水により水蒸気バリア性が向上していた。また上記方法により成形温度280℃で作製した3種5層の多層構造体の水蒸気バリア性評価において、20%RH以下を保持していた。
(実施例5)
熱可塑性樹脂として水蒸気透過度30g/m・day、エチレン含有量が32mol%であるエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH、F171B:クラレ(株))を用いた以外は実施例1と同様に樹脂組成物を作製した。特に問題なく作製することができた。水蒸気バリア性評価では、熱可塑性樹脂のみの値よりも4割程度低い値を示し、吸水性材料の吸水により水蒸気バリア性が向上していた。また上記方法により作製した3種5層の多層構造体の水蒸気バリア性評価において、20%RH以下を保持していた。
(実施例6)
熱可塑性樹脂として水蒸気透過度40g/m・dayであるポリメタキシリレンアジバミド(MXD6、T−620:東洋紡績(株))を用いた以外は実施例1と同様に樹脂組成物を作製した。特に問題なく作製することができた。水蒸気バリア性評価では、熱可塑性樹脂のみの値よりも2割程度低い値を示し、吸水性材料の吸水により水蒸気バリア性が向上していた。また上記方法により成形温度260℃で作製した3種5層の多層構造体の水蒸気バリア性評価において20%RH以下を保持していた。
(実施例7)
熱可塑性樹脂として水蒸気透過度18g/m・dayである低密度ポリエチレン(LDPE、F108−2:住友化学(株))を用いた以外は実施例1と同様に樹脂組成物を作製した。特に問題なく作製することができた。水蒸気バリア性評価では、熱可塑性樹脂のみの値よりも4割程度低い値を示し、吸水性材料の吸水により水蒸気バリア性が向上していた。また上記方法により作製した2種3層の多層構造体の水蒸気バリア性評価において、20%RH以下を保持していた。
(実施例8)
実施例7で作製した吸水性樹脂組成物を用いて、前記方法により多層フィルムを作製した。水蒸気バリア性評価では、低湿度を保持していた。
(実施例9)
吸水性材料として水膨潤度100.0(嵩密度0.65g/cm)のアクリル酸系膨潤性有機ゲル(サンフレッシュST−500MPS:三洋化成工業(株))を用いた以外は実施例7と同様に樹脂組成物を作製した。特に問題なく作製することができた。水蒸気バリア性評価では、熱可塑性樹脂のみの値よりも1割程度低い値を示し、吸水性材料の吸水により水蒸気バリア性が向上していた。また上記方法により作製した2種3層の多層構造体の水蒸気バリア性評価において、20%RH以下を保持していた。
(比較例1)
吸水性材料を配合しなかった以外は、実施例1と同様に水蒸気バリア性樹脂組成物を作製した。また上記方法により作製した2種3層の多層構造体の水蒸気バリア性評価において、容器内に水蒸気が透過し、湿度上昇が確認された。
(比較例2)
熱可塑性樹脂として水蒸気透過度520g/m・day、酢酸ビニル含有量が20wt%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA20%、ウルトラセンEVA638:東ソー(株))を用いた以外は実施例1と同様に樹脂組成物を作製した。特に問題なく作製することができたが、樹脂組成物の水蒸気バリア性評価では、熱可塑性樹脂と同程度の値を示し、水蒸気バリア性の向上が認められなかった。この原因としては、熱可塑性樹脂の水蒸気透過度が高く、吸水性材料の吸水量よりも透過する水蒸気量が多いためと考えられる。また上記方法により作製した2種3層の多層構造体の水蒸気バリア性評価において、容器内に水蒸気が透過し、湿度上昇が確認された。
(比較例3)
吸水性材料として水膨潤度1.0(嵩密度3.0g/cm)のゼオライト3A(純正化学(株))を用いた以外は実施例1と同様に樹脂組成物を作製した。特に問題なく作製することができたが、樹脂組成物の水蒸気バリア性評価では、熱可塑性樹脂のみの値よりも2割高い値を示し、水蒸気バリア性の向上が認められなかった。この原因としては、熱可塑性樹脂と吸水性材料の相溶性が悪く、界面でのボイド発生によるものと考えられる。また上記方法により作製した2種3層の多層構造体の水蒸気バリア性評価において、容器内に水蒸気が透過し、湿度上昇が確認された。
実施例1〜9、比較例1〜3の結果を表1にまとめた。表1の結果から明らかなように、熱可塑性樹脂の水蒸気透過度、吸水性材料の種類や水膨潤度、配合量の違いにより水蒸気バリア性評価で相違が見られた。
Figure 2010116435

Claims (6)

  1. 40℃及び90%RHの条件下、厚さ25μmにおける水蒸気透過度が100g/m・day以下である熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とし、有機系吸水性材料を配合して成ることを特徴とする水蒸気バリア性樹脂組成物。
  2. 前記有機系吸水性材料が、前記熱可塑性樹脂に対し、1〜50wt%含有することを特徴とする請求項1に記載の水蒸気バリア性樹脂組成物。
  3. 前記有機系吸水性材料が、カルボキシル基又は水酸基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の水蒸気バリア性樹脂組成物。
  4. 前記有機系吸水性材料が架橋構造を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の水蒸気バリア性樹脂組成物。
  5. 前記有機系吸水性材料の水膨潤度が10以下であることを特徴とする請求項4に記載の水蒸気バリア性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載の水蒸気バリア性樹脂組成物を少なくとも一層有することを特徴とする構造体。
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