JP2014168949A - 水分バリア性に優れたガスバリア性積層体 - Google Patents

水分バリア性に優れたガスバリア性積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】少ない層構造で水分に対する超バリア性を示すガスバリア性積層体を提供する。
【解決手段】プラスチック基材1上に、無機バリア層3及び水分トラップ層5が形成されているガスバリア性積層体10であって、水分トラップ層5は、カチオン性ポリマー(a)から形成されているマトリックスを含み、且つ該マトリックス中には、該マトリックスよりも到達湿度が低湿度である吸湿特性を有する吸湿剤(b)が分散されていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラスチック基材上に無機バリア層と水分トラップ層(吸湿層)が形成されているガスバリア性積層体に関するものであり、より詳細には、このようなガスバリア性積層体及び該積層体における水分トラップ層を形成するために使用するコーティング組成物に関する。
各種プラスチック基材の特性、特にガスバリア性を改善するための手段として、プラスチック基材の表面に、蒸着により、ケイ素酸化物などからなる無機バリア層を形成することが知られている(特許文献1)。
ところで、近年において開発され、実用されている各種の電子デバイス、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、太陽電池、タッチパネル、電子ペーパーなどでは、電荷のリークを嫌うため、その回路基板などを形成するプラスチック基材或いは回路基板を封止するフィルムなどのプラスチック基材に対して高い水分バリア性が要求されている。上記で述べた無機バリア層の形成では、このような水分バリア性に対する高い要求に応えることができないため、水分バリア性を向上させる種々の提案がなされている。
例えば、特許文献2では、プラスチック基材の表面に無機バリア層が形成され、この無機バリア層上に、金属酸化物などのナノ粒子やカーボンナノチューブが吸湿剤として分散された封止層が設けられたガスバリア性の積層体が提案されている。
また、特許文献3には、基材フィルム上に、無機バリア層、有機層及び捕水層が形成されたガスバリア性積層体(フィルム)が提案されており、捕水層は、吸湿性ポリマー(具体的にはポリアミド)から形成されること或いは電子線もしくは紫外線硬化樹脂などの高分子バインダーにシリカゲルや酸化アルミニウムなどの吸湿性材料を分散させることにより形成されることが開示されている。
さらに、特許文献4には、プラスチック基材の表面に、蒸着により形成されたガスバリア性フィルム層と吸湿層とを備えており、該吸湿層が、アルキレンオキサイド、アクリレートナノ粒子或いは有機金属錯体を含有しているガスバリア性積層体が提案されている。
しかしながら、これら特許文献2〜4で提案されているガスバリア性積層体においても高度の水分バリア性を得ることが困難であり、例えば、水分に対して、水蒸気透過度が10−6g/m/day以下となるような超バリア性を得るためには、吸湿のための層(吸湿層或いは封止層)が多数存在するような層構造とすることが必要となってしまい、この結果、多層構造形成のために労力を要し、生産性の低下を招くという問題があり、さらなる水分バリア性の向上が求められている。また、水分の吸湿により、吸湿のための層(吸湿層或いは封止層)が膨潤してしまい、寸法安定性を欠くという欠点もあった。
特開2000−255579号公報 特開2010−511267号公報 特開2009−90633号公報 特開2011−131395号公報
従って、本発明の目的は、少ない層構造で水分に対する超バリア性を示すガスバリア性積層体を提供することにある。
本発明の他の目的は、吸湿による膨潤が有効に抑制され、寸法安定性にも優れたガスバリア性積層体を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、上記ガスバリア性積層体における水分トラップ層を形成するために好適に使用されるコーティング組成物を提供することにある。
本発明によれば、プラスチック基材上に、無機バリア層及び水分トラップ層が形成されているガスバリア性積層体であって、該水分トラップ層は、カチオン性ポリマー(a)から形成されているマトリックスを含み、且つ該マトリックス中には、該マトリックスよりも到達湿度が低湿度である吸湿特性を有する吸湿剤(b)が分散されていることを特徴とするガスバリア性積層体が提供される。
本発明のガスバリア性積層体においては、次の態様を好適に採用することができる。
(1)前記マトリックスには、架橋構造が導入されていること。
(2)前記架橋構造がシロキサン構造または脂環構造を含むこと。
(3)前記架橋構造が、前記カチオン性ポリマーが有するカチオン性基とエポキシ基との反応を起点に形成され、該エポキシ基を有するシラン化合物の反応によりシロキサン構造が導入されている、または該エポキシ基を有する化合物由来の脂環構造が導入されていること。
(4)前記吸湿剤(b)が、ポリ(メタ)アクリル酸の1価金属塩の架橋物であること。
(5)前記無機バリア層がCVD法により形成された無機酸化物膜であること。
(6)水分トラップ層との無機バリア層とが隣接していること。
本発明によればまた、カチオン性ポリマー(a)、該カチオン性ポリマー(a)よりも到達湿度が低湿度である吸湿特性を有する吸湿剤(b)及び架橋剤が溶媒に溶解もしくは分散されているコーティング組成物が提供される。
本発明のコーティング組成物は、上記のガスバリア性積層体の水分トラップ層の形成に好適に使用され、例えば、
(1)前記吸湿剤(b)が、ポリ(メタ)アクリル酸の1価金属塩の架橋物であること、
(2)カチオン性ポリマー(a)100重量部当り50乃至1000重量部の量で、前記吸湿剤(b)が含まれていること、
(3)前記架橋剤が、下記式(1):
X−SiR (OR3−n (1)
式中、Xは、末端にエポキシ基を有する有機基であり、
及びRは、それぞれ、メチル基、エチル基、もしくはイソプロピ
ル基であり、
nは、0、1、もしくは2である、
で表される化合物であること、
(4)前記カチオン性ポリマー(a)100重量部当り5乃至60重量部の量で、前記架橋剤が含まれていること、
が好適である。
本発明において、水分トラップ層は、極低湿度の雰囲気下でも水分を捕捉することができると共に、水分が無機バリア層を透過する速度よりも十分速い速度で捕捉し、更に層全体で水分を捕捉するために外部へ漏らすことが無い。従って、本発明のガスバリア性積層体は、プラスチック基材と無機バリア層と水分トラップ層との僅か3層で著しく高度の水分バリア性、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)パネルに適用可能な10−6g/m/day以下の水分透過度も可能となる。また、マトリックスが補足した水分は吸湿剤(b)に取り込まれるため、吸湿による水分トラップ層の膨潤も有効に抑制されており、このため、寸法安定性にも優れている。
このように、本発明のガスバリア性積層体は、水分に対して著しく高いバリア性を示し、しかも寸法安定性にも優れているため、各種電子デバイスの基板や封止層として有用である。
また、本発明のコーティング組成物では、これを塗布し、加熱することにより、容易に上記ガスバリア性積層体の水分トラップ層を形成することができる。特に、架橋剤の配合のみで水分トラップ層を形成するマトリックス中に架橋構造を導入し且つ無機バリア層に対して優れた密着性を確保することができ、これは、本発明の大きな利点である。
本発明のガスバリア性積層体について、その原理を説明するための説明図。 本発明のガスバリア性積層体の層構造を示す概略断面図。 実施例1で作成したラミネート積層体の層構造を示す概略断面図。 実施例11で作成したラミネート積層体の層構造を示す概略断面図。 比較例4で作成したラミネート積層体の層構造を示す概略断面図。 応用実験例において、吸湿速度の求め方を説明するための図。 応用実験例において、温度と相対湿度(到達湿度)との関係を示す図。
発明が実施するための形態
<本発明の原理>
本発明のガスバリア性積層体における水分トラップ層での水分捕捉の原理を示す図1を参照して、水分トラップ層は、親水性であるカチオン性基(図1ではNH基)を多く有しているカチオン性ポリマー(a)によりマトリックスが形成されており、このマトリックス内に吸湿剤(b)が分散されている(図1(A)参照)。
このような積層体において、プラスチック基材(図1では省略)や無機バリア層を通過した微量の水分は、水分トラップ層で捕水され、マトリックスに吸収されることとなる(図1(B)参照)。マトリックス自体が高い吸湿性を示すため、水分を漏れなく捕水し、吸収するわけである。
ところで、単に水分がマトリックスに吸収されたに過ぎない場合には、温度上昇などの環境変化により、吸収された水分は容易に放出されてしまうこととなる。また、水分の侵入により、マトリックスを形成するポリマー分子の間隔を広げ、この結果、水分トラップ層は膨潤してしまうことにもなる。
しかるに、本発明では、マトリックス中に吸収された水分は、このマトリックスよりも吸湿性の大きい(即ち、到達湿度が低い)吸湿剤によってさらに捕捉されることとなる(図1(C)参照)。このため、吸収された水分子による膨潤が有効に抑制されるばかりか、この水分子は、水分トラップ層中に閉じ込められ、この結果、水分トラップ層からの水分の放出も有効に防止されることとなる。このように、この水分トラップ層は、高い吸湿能力と共に水分の捕捉と閉じ込めとの2重の機能を有しているため、後述するように、極低湿度の雰囲気下でも水分を捕捉することができ、水分が無機バリア層を透過する速度よりも十分速い速度で捕捉して更に層全体で水分を捕捉するために外部へ漏らすことも無い。この結果、プラスチック基材と無機バリア層と水分トラップ層との僅か3層で著しく高度の水分バリア性、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)パネルに適用可能な10−6g/m/day以下の水分透過度も可能となるのである。
また、図1からも理解されるように、上記マトリックスに架橋構造が導入されているときには、水分の侵入によるイオン性ポリマーの分子間の拡大が抑制されるため、水分の吸収による膨潤も一層有効に抑制することが可能となる。
本発明の水分トラップ層が、極低湿度の雰囲気下でも水分を捕捉することができ、水分が無機バリア層を透過する速度よりも十分速い速度で捕捉することが可能であることは、後述する応用実験により示されている。
<ガスバリア性積層体の層構造>
上述した水分トラップ層を備えた本発明のガスバリア性積層体の概略断面を示す図2を参照して、全体として10で示すこの積層体は、プラスチック基材1と、プラスチック基材1の表面に形成された無機バリア層3と、無機バリア層3上に形成された水分トラップ層5とからなっている。
<プラスチック基材1>
本発明において、プラスチック基材1のプラスチックは、それ自体公知の熱可塑性或いは熱硬化性の樹脂から形成されたものであってよい。
このような樹脂の例としては、これに限定されるものではないが、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等のポリオレフィン、環状オレフィン共重合体など、そしてエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフエニレンオキサイドや、その他、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂、アリル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ケトン樹脂、アミノ樹脂、或いはポリ乳酸などの生分解性樹脂等を例示することができ、さらに、これらのブレンド物や、これら樹脂が適宜共重合により変性されたものであってもよいし、多層構造を有していてもよい。
特に、透明性が要求される用途においては、上記の中でもPETやPENなどのポリエステル樹脂が好適であり、更に耐熱性も要求される用途においては、ポリカーボネートやポリイミド樹脂が好適である。
勿論、上述した各種の樹脂には、それ自体公知の樹脂配合剤、例えば酸化防止剤、滑剤等が配合されていてもよい。
また、プラスチック基材1の形態は、水分に対するバリア性が十分に発揮されるようなものであれば特に制限されず、用途に応じた適宜の形態を有していればよいが、板状或いはフィルム乃至シートの形態を有している場合が最も一般的である。
さらに、その厚み等は、用途に応じた特性(例えば可撓性、柔軟性、強度等)、適宜の範囲に設定される。
このようなプラスチック基材1は、その形態やプラスチックの種類に応じて、射出乃至共射出成形、押出乃至共押出成形、フィルム乃至シート成形、圧縮成形性、注型重合等の公知の成形手段により成形することができる。
<無機バリア層3>
プラスチック基材1上に形成される無機バリア層は、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどに代表される物理蒸着や、プラズマCVDに代表される化学蒸着などによって形成される無機質の蒸着膜、例えば各種金属乃至金属酸化物により形成される膜であるが、特に、凹凸を有する面にも均一に成膜され、緻密で且つプラスチック基材1との間に高い密着性を確保し、優れたバリア性を発揮させるという点で、プラズマCVDにより形成される蒸着膜であることが好ましい。
プラズマCVDによる蒸着膜は、所定の真空度に保持されたプラズマ処理室内に無機バリア層を形成すべきプラスチック基材1を配置し、膜形成する金属若しくは該金属を含む化合物のガス(反応ガス)及び酸化性ガス(通常酸素やNOxのガス)を、適宜、アルゴン、ヘリウム等のキャリアガスと共に、ガス供給管を用いて、金属壁でシールドされ且つ所定の真空度に減圧されているプラズマ処理室に供給し、この状態でマイクロ波電界や高周波電界などによってグロー放電を発生させ、その電気エネルギーによりプラズマを発生させ、上記化合物の分解反応物をプラスチック基材1の表面に堆積させて成膜することにより得られる。
尚、マイクロ波電界による場合は、導波管等を用いてマイクロ波をプラズマ処理室内に照射することにより成膜が行われ、高周波電界による場合は、プラズマ処理室内のプラスチック基材1を一対の電極の間に位置するように配置し、この電極に高周波電界を印加して成膜が行われる。
上記の反応ガスとしては、一般に、プラスチック基材表面に炭素成分を含む柔軟な領域を有し且つその上に酸化度の高いバリア性に優れた領域を有する膜を形成できるという観点から有機金属化合物、例えばトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物や、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ケイ素化合物等のガスを用いることが好ましく、特に、酸素に対するバリア性の高い無機バリア層3を比較的容易に効率良く形成できるという点で、有機ケイ素化合物が最も好ましい。
このような有機ケイ素化合物の例としては、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の有機シラン化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等の有機シロキサン化合物等が使用される。また、これら以外にも、アミノシラン、シラザンなどを用いることもできる。
尚、上述した有機金属化合物は、単独でも或いは2種以上の組合せでも用いることができる。
本発明において、上記のような有機金属化合物の反応ガス及び酸化性ガスを用いてのプラズマCVDによる成膜に際しては、グロー放電出力(例えばマイクロ波或いは高周波出力)を低くし、低出力で成膜を開始した後、高出力でプラズマ反応による成膜を行うことが好適である。
即ち、有機金属化合物の分子中に含まれる有機基(CHやCHなど)は、通常、COとなって揮散するが、低出力では、その一部はCOまで分解せず、プラスチック基材1の表面に堆積して膜中に含まれることとなる。一方、出力が高められるほど、有機基はCOまで分解していくこととなる。従って、出力を高めることにより、膜中のC含量を少なくし、有機金属化合物中に含まれる金属の酸化度の高い膜を形成することが可能となる。しかるに、金属の酸化度の高い膜は、酸素等のガスに対するバリア性は極めて高いが、可撓性が乏しく、プラスチック基材1との密着性が十分でないのに対して、金属の酸化度が低く、有機成分含量の多い膜は、ガスに対するバリア性は十分ではないが、可撓性に富み、プラスチック基材1に対して高い密着性を示すこととなる。
上記の説明から理解されるように、本発明では、反応ガスとして有機金属化合物を使用し且つプラズマCVDによる成膜初期に低出力で成膜を行った後に出力を増大させて成膜を行うことにより、プラスチック基材1の表面に接する部分に有機成分(炭素)を多く含む密着性の高い領域が形成され、その上に、金属の酸化度が高く、ガスバリア性の高い領域が形成されることとなる。
従って、本発明のガスバリア性積層体10における無機バリア層3は、優れたガスバリア性を確保するために、金属(M)の酸化度をx(x=O/Mの原子比)としたとき、この酸化度xが1.5乃至2.0の高酸化度領域を含んでいることが好ましい。また、この高酸化度領域の下側(プラスチック基材1の表面と接する側)には、金属(M)、酸素(O)及び炭素(C)の3元素基準で、炭素(C)濃度が20元素%以上の有機領域が形成されていることが好ましい。さらに、この金属(M)としては、ケイ素(Si)が最も好ましい。
尚、無機バリア層3における上記高酸化度領域は、無機バリア層3の全体厚みの60%以上の割合で存在していることが好ましく、上記有機領域は、無機バリア層3の全体厚みの5乃至40%程度の厚みでプラスチック基材1の表面と接触側に形成されていることが好ましい。
また、無機バリア層3の全体厚みは、ガスバリア性積層体10の用途や要求されるガスバリア性のレベルによっても異なるが、一般的には、プラスチック基材1の特性が損なわれない程度の厚みとすべきであり、4乃至500nmの薄膜とすることが望ましい。
上述した有機領域や高酸化度領域を無機バリア層3をプラズマCVDにより成膜する際のグロー放電出力は、マイクロ波による場合と高周波による場合とで多少異なっている。例えばマイクロ波の場合は、30乃至100W程度の低出力で有機領域の形成が行われ、高酸化度領域では、90W以上の高出力で成膜が行われる。また、高周波の場合は、20乃至80W程度の低出力で有機領域の形成が行われ、高酸化度領域では、100W以上の高出力で成膜が行われる。
成膜時間は、各領域の厚みが、前述した範囲内となるように設定すればよい。
<水分トラップ層5>
本発明のガスバリア性積層体10は、上記の無機バリア層3上に水分トラップ層5を備えているが、この水分トラップ層5は、カチオン性ポリマー(a)から形成された吸湿性マトリックスを有しており、このマトリックス中に、該マトリックスよりも到達湿度の低い吸湿剤(b)が分散された構造を有する。
即ち、このような分散構造の水分トラップ層5を無機バリア層3上に形成することにより、先に述べたように、水分に対して著しく高い超バリア性を得ることができる。
吸湿性マトリックス(カチオン性ポリマー(a));
本発明において、吸湿性マトリックスの形成に使用するカチオン性ポリマー(a)は、水中で正の電荷となり得るカチオン性基、例えば、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基などを分子中に有しているポリマーである。このようなカチオン性ポリマーは、カチオン性基が、求核作用が強く、かつ水素結合により水を補足するため、吸湿性マトリックスを形成することができる。
カチオン性ポリマー(a)中のカチオン性基量は、一般に、形成される吸湿性マトリックスの吸水率(JIS K−7209−1984)が湿度80%RH及び30℃雰囲気下において20%以上、特に30%〜45%となるような量であればよい。
また、カチオン性ポリマー(a)としては、アリルアミン、エチレンイミン、ビニルベンジルトリメチルアミン、[4−(4−ビニルフェニル)−メチル]−トリメチルアミン、ビニルベンジルトリエチルアミン等のアミン系単量体;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の含窒素複素環系単量体;及び、それらの塩類;に代表されるカチオン性単量体の少なくとも1種を、適宜、共重合可能な他の単量体と共に、重合乃至共重合し、さらに必要により、酸処理により部分中和させて得られるものが使用される。
尚、共重合可能な他の単量体としては、これに限定されるものではないが、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン類、アクリロニトリル、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等を挙げることができる。
また、上記のカチオン性単量体を使用する代わりに、カチオン性官能基を導入し得る官能基を有する単量体、例えば、スチレン、ブロモブチルスチレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等を使用し、重合後に、アミノ化、アルキル化(第4級アンモニウム塩化)などの処理を行ってカチオン性ポリマー(a)を得ることもできる。
本発明においては、上記のカチオン性ポリマー(a)の中でも、特にアリルアミンが成膜性等の観点から好適である。
なお、本発明においては、上述したカチオン性ポリマー(a)を使用することにより、ある種の架橋剤の使用により、格別の密着剤を使用することなく、マトリックス中に架橋構造を導入し且つ無機バリア層3に対する水分トラップ層5の密着性を向上させることができるという利点がある。この点については、後述する。
上述したカチオン性ポリマー(a)を形成するための重合は、一般には、重合開始剤を用いての加熱によるラジカル重合により実施される。
重合開始剤としては、特に制限されず、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパ−オキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物が代表的であり、一般に、前述したアニオン性或いはカチオン性単量体(或いはアニオン性基もしくはカチオン性基を導入し得る単量体)100重量部に対して、0.1〜20重量部、特に0.5〜10重量部程度の量で使用される。
上記のようにして重合を行うことによりカチオン性ポリマー(a)が得られるが、カチオン性の官能基を導入可能な単量体が使用されている場合には、重合後に、アミノ化、アルキル化処理などのカチオン性基導入処理を行えばよい。
本発明においては、前述したカチオン性ポリマー(a)を用いて形成される吸湿性マトリックスに、架橋構造を導入しておくことが、吸湿能力を低下させることなく機械的強度を確保すると同時に、寸法安定性を向上させる上で好ましい。
即ち、吸湿性マトリックス中に架橋構造が導入されていると、該マトリックスが水を吸収したとき、カチオン性ポリマー(a)の分子が架橋によって互いに拘束されることとなり、膨潤(水分吸収)による体積変化を抑制する機能が高められることとなる。
上記の架橋構造は、水分トラップ層5を形成するためのコーティング組成物中に架橋剤を配合しておくことにより導入することができる。この架橋剤の種類により、架橋構造にシロキサン構造または多脂環構造が導入され、吸湿に適した空間の網目構造を形成する。特にシロキサン構造が導入される架橋剤では無機バリア層3との密着性を高めることができる。ここで使用する架橋剤については、後述する。
尚、前述したカチオン性ポリマー(a)を形成するための重合性単量体組成物中に、ジビニルベンゼンなどの多官能モノマーを配合して重合することにより、カチオン性ポリマー(a)により形成されるマトリックス中に架橋構造を導入することも可能ではあるが、この場合には、カチオン性ポリマー(a)を含むコーティング組成物を用いての水分トラップ層5の形成が困難となってしまうので(コーティング組成物の均一分散性や塗布性の低下など)、あまり望ましくない。
吸湿剤(b);
本発明において、上述したカチオン性ポリマー(a)をマトリックス(吸湿性マトリックス)とする水分トラップ層5には、吸湿剤(b)が分散されている。この吸湿剤は、上記の吸湿性マトリックスを形成するカチオン性ポリマー(a)よりも到達湿度が低く、極めて高い吸湿性能を有する。即ち、水分トラップ層5には、マトリックスよりも高い吸湿性を有する吸湿剤が分散されているため、かかる吸湿剤により、前述した吸湿性マトリックスに吸収された水分が直ちに吸湿剤に捕捉され、吸収された水分のマトリックス中への閉じ込めが効果的に行われることとなる。
この結果、本発明においては、水分トラップ層5に捕捉された水分の放出が有効に抑制され、しかも、極めて低湿度雰囲気でも水分の吸湿能力を有効に発揮することができるばかりか、水分の吸収による吸湿性マトリックスの膨潤も有効に抑制される。
上記のような高吸湿性の吸湿剤(b)としては、カチオン性ポリマー(a)よりも到達湿度が低いことを条件として、例えば後述する実施例で示されているように、湿度80%RH及び温度30℃の環境条件での到達湿度が6%以下のものが好適に使用される。即ち、この吸湿剤の到達湿度がカチオン性ポリマー(a)よりも高いと、吸湿性マトリックスに吸収された水分の閉じ込めが十分でなく、水分の放出等を生じ易くなるため、水分バリア性の著しい向上が望めなくなってしまう。また、到達湿度がイオン性ポリマー(a)よりも低い場合であっても、上記条件で測定される到達湿度が上記範囲よりも高いと、例えば低湿度雰囲気での水分のトラップが不十分となり、水分バリア性を十分に発揮できないおそれがある。
上記のような吸湿剤(b)は、一般に湿度80%RH及び温度30℃雰囲気下において50%以上の吸水率(JIS K−7209−1984)を有しており、無機系及び有機系のものがある。
無機系の吸湿剤としては、ゼオライト、アルミナ、活性炭、モンモリロナイト等の粘土鉱物、シリカゲル、酸化カルシウム、硫酸マグネシウムなどを挙げることができる。
有機系の吸湿剤としては、アニオン系ポリマー若しくはその部分中和物の架橋物を挙げることができる。このアニオン系ポリマーとしては、カルボン酸系単量体((メタ)アクリル酸や無水マレイン酸など)、スルホン酸系単量体(ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸など)、ホスホン酸系単量体(ビニルリン酸など)及びこれら単量体の塩類等に代表されるアニオン性単量体の少なくとも1種を、重合或いは他の単量体と共重合させて得られるものを挙げることができる。特に透明性が求められる用途においては、有機系の吸湿剤が有効である。例えば、架橋ポリ(メタ)アクリル酸Na、架橋ポリ(メタ)アクリル酸K等のポリ(メタ)アクリル酸の1価金属塩の架橋物の微細粒子などが代表的な有機系吸湿剤である。
本発明においては、比表面積が大となり、高い吸湿性を示すという観点から粒径が小さな吸湿剤が好ましく(例えば、レーザ回折散乱法で測定した体積換算での平均一次粒子径D50が100nm以下、特に80nm以下)、特に粒径の小さな有機系ポリマーの吸湿剤が最適である。
即ち、有機系ポリマーの吸湿剤は、カチオン系ポリマー(a)のマトリックスに対する分散性が極めて良好であり、均一に分散させることができるばかりか、これを製造するための重合法として乳化重合や懸濁重合などを採用することにより、その粒子形状を微細で且つ揃った球形状とすることができ、これをある程度以上配合することにより、極めて高い透明性を確保することが可能となるからである。このような透明性は、おそらく、水分トラップ層と隣接する層(例えば無機バリア層)との界面の近傍に微細で且つ球形状の吸湿剤粒子が層状に分布し、この界面での光の散乱などが抑制されるためと考えられる。特に透明性の確保は、このガスバリア性積層体10を有機ELパネルなどの基板や封止層の用途に使用するときは大きな利点となる。
また、有機系の微細な吸湿剤では、前述した到達湿度が著しく低く、高い吸湿性を示すばかりか、架橋によって膨潤による体積変化も極めて少なくすることができ、従って、体積変化を抑制しながら、環境雰囲気を絶乾状態もしくは絶乾状態に近いところまで湿度を低下させる上で最適である。
このような有機系の吸湿剤の微粒子としては、例えば架橋ポリアクリル酸Na微粒子(平均粒子径約70nm)がコロイド分散液(pH=10.4)の形で東洋紡株式会社よりタフチックHU−820Eの商品名で市販されている。
また他の好適な有機系吸湿剤としては、カルボキシル基の80%以上がカリウム塩で中和されているカリウム塩型カルボキシル基を有する架橋重合体から成る微粒子を挙げることができる。このカリウム塩型の吸湿剤は、高温時においても吸収した水分を放出しないことから、高温時における吸湿性に優れている。
このようなカリウム塩型カルボキシル基を有する架橋重合体は、(i)(メタ)アクリル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有ビニル系単量体のカリウム塩単量体の単独重合、或いはこれらの2種以上の共重合、或いはこれらの単量体と共重合可能な他の単量体の共重合、により重合する方法、(ii)カルボキシル基を有する重合体を得た後にカリウム塩型に変える方法、(iii)化学変性によりカルボキシル基を導入し、カリウム塩型に変える方法、或いは(iv)グラフト重合により上記(i)〜(iii)の方法を行う方法、により調製できるが、特に、上記(iii)の加水分解処理により重合体にカルボキシル基を導入した後、イオン交換してカリウム塩型に変える方法により調製することが好適である。
加水分解処理を用いた方法に使用できる加水分解によりカルボキシル基が得られる単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基を有する単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等の誘導体を挙げることができる。
また上記単量体と共重合可能な他の単量体としては特に限定はないが、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の架橋性ビニル化合物を挙げることができる。
またカリウム塩型カルボキシル基以外の極性基としてスルホン酸基及び/又は塩型スルホン酸基を含有することが好ましく、このようなスルホン酸(塩)基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸(塩)、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、スチレンスルホン酸(塩)、4−スルホブチル(メタ)アクリレートおよびその塩、メタリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、2−スルホエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。このスルホン酸(塩)基含有単量体を上記単量体と共重合する方法、開始剤或いは連鎖移動剤によりポリマー末端にスルホン酸(塩)基を導入する方法等によって導入することができる。
具体的には、加水分解によりカルボキシル基が得られる単量体とジビニルベンゼンを単量体組成として含む架橋共重合体を、水酸化カリウムを用いて加水分解する方法がある。または、カルボン酸基に変換した後、水酸化カリウム水溶液、塩化カリウム水溶液等のカリウムイオンを大量に含む溶液或いはイオン交換樹脂を作用させてイオン交換することにより調製されたカリウム塩型カルボキシル基を有する架橋重合体を吸湿剤として好適に用いることができる。
本発明において、上記のような吸湿剤(b)は、その特性を十分に発揮させ、水分バリア性の著しい向上及び膨潤による寸法変化を有効に抑制させると同時に、例えば無機バリア層3が示すバリア性よりも高い水分バリア性を長期間にわたって確保するという観点から、水分トラップ層5中のカチオン性ポリマー(a)100重量部当り、50重量部以上、特に100乃至900重量部の量で存在することが好ましく、更には200乃至600重量部の量であることがより好ましい。
<水分トラップ層5の形成(コーティング組成物)>
上述したカチオン性ポリマー(a)により形成されたマトリックス(吸湿性マトリックス)を有しており、且つ吸湿剤(b)が分散されている水分トラップ層5は、カチオン性ポリマー(a)及び吸湿剤(b)が溶媒に溶解もしくは分散されたコーティング組成物を使用し、該組成物を塗布し、乾燥して溶媒を除去することにより形成される。
かかるコーティング組成物において、カチオン性ポリマー(a)と吸湿剤(b)とは、前述した量比で使用される。即ち、100重量部のカチオン性ポリマー(a)に対して50重量部以上、特に100乃至900重量部の量で、更には200乃至600重量部の量で、吸湿剤(b)はカチオン性ポリマー(a)と共に、コーティング組成物中に配合される。
また、上記のコーティング組成物中には、前述したカチオン性ポリマー(a)の吸湿性マトリックスに架橋構造を導入するための架橋剤も配合される。即ち、架橋構造の導入により、先にも述べたように、吸湿能力を低下させることなく機械的強度を確保すると同時に、水分の吸収による膨潤(体積の増大)を抑制し、寸法安定性を向上させることが可能となる。
架橋剤としては、例えばカチオン性ポリマー(a)が有しているカチオン性基と反応し得る架橋性官能基(例えば、エポキシ基)と、加水分解と脱水縮合を経て架橋構造中にシロキサン構造を形成し得る官能基(例えば、アルコシシリル基)を有している化合物を使用することができ、特に、下記式(1):
X−SiR (OR3−n (1)
式中、Xは、末端にエポキシ基を有する有機基であり、
及びRは、それぞれ、メチル基、エチル基、もしくはイソプロピ
ル基であり、
nは、0、1、もしくは2である、
で表されるシラン化合物が好適に使用される。
式(1)のシラン化合物は、官能基としてエポキシ基とアルコキシシリル基とを有しており、エポキシ基がカチオン性ポリマー(a)の官能基(例えばNH)と付加反応する。一方アルコキシシリル基は、加水分解によりシラノール基(SiOH基)を生成し、縮合反応を経てシロキサン構造を形成して成長することにより、最終的にカチオン性ポリマー鎖間に架橋構造を形成する。これにより、カチオン性ポリマー(a)のマトリックスには、シロキサン構造を有する架橋構造が導入されることとなる。一方、アルコキシシリル基の加水分解により生成するシラノール基は、無機バリア層3の表面に存在するMOH基(M:金属元素)、例えばSiOH基(シラノール基)と脱水縮合して強固に結合する。
しかも、本発明においては、マトリックスを形成するポリマー(a)としてカチオン性ポリマーが使用されている。このため、コーティング液は、アルカリ性となり、この結果、カチオン性基とエポキシ基の付加反応やシラノール基間或いは無機バリア層3の表面のMOH基との脱水縮合も速やかに促進される。
従って、上記のような式(1)の化合物を架橋剤として使用することにより、マトリックス中に架橋構造を導入すると同時に、格別の密着剤を用いることなく、水分トラップ層5と無機バリア層3との密着性を高めることが可能となる。
上記の説明から理解されるように、上記の架橋構造にシロキサン構造が導入されるときには、同時に、無機バリア層3との密着性も高められる。
本発明においては、上記式(1)中のエポキシ基を有する有機基Xとしては、γ−グリシドキシアルキル基が代表的であり、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが架橋剤として好適に使用される。
また、上記式(1)中のエポキシ基が、エポキシシクロヘキシル基のような脂環式エポキシ基であるものも架橋剤として好適である。例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのような脂環式エポキシ基を有する化合物を架橋剤として使用した場合には、マトリックスの架橋構造中に、シロキサン構造と共に、脂環構造が導入される。このような脂環構造の導入は、吸湿に適した空間の網目構造を形成するというマトリックスの機能を更に効果的に発揮させることができる。
さらに、本発明においては、架橋構造中に脂環構造を導入するために、複数のエポキシ基と脂環基とを有している化合物、例えば、下記式(2):
G−O(C=O)−A−(C=O)O−G (2)
式中、Gは、グリシジル基であり、
Aは、脂肪族環を有する2価の炭化水素基、例えばシクロアルキレン基で
ある、
で表されるジグリシジルエステルを、架橋剤として使用することができる。このようなジグリシジルエステルの代表的なものは、下記の式(2−1)で表される。
Figure 2014168949
即ち、式(2)のジグリシジルエステルは、アルコキシシリル基を有していないため、無機バリア層3との密着性を高める機能は乏しいが、架橋構造中に脂環構造を導入するため、マトリックス中に吸湿に適した空間の網目構造を形成するという点では効果的である。
本発明において、上述した架橋剤は、カチオン性ポリマー(a)100重量部当り、5乃至60重量部、特に15乃至50重量部の量で使用することが望ましく、このような架橋剤の少なくとも70重量%以上、好ましくは80重量%以上が、前述した式(1)のシラン化合物であること望ましい。
架橋剤の使用量が多すぎると、機械強度的に脆くなりハンドリング性が損なわれたり、塗料にした際に増粘が速く有効なポットライフが確保できなくなるおそれがあり、また、少なすぎると、これに伴い、厳しい環境下(例えば高湿度下)に曝された場合の耐性(例えば機械的強度)が確保できなくなるおそれがある。さらに、前述した式(1)のシラン化合物の使用割合が少ないと、無機バリア層3との密着性が低下してしまう。
本発明において、上述した各種成分を含むコーティング組成物に使用される溶媒としては、比較的低温での加熱により揮散除去し得るものであれば特に制限されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、或いはこれら溶媒と水との混合溶媒、或いは水、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒などを使用することができるが、特にコーティング組成物中の架橋剤中のアルコキシシリル基を有するシラン化合物の加水分解を促進させるために、水或いは水を含む混合溶媒を使用することが望ましい。
尚、上述した溶媒は、コーティング組成物がコーティングに適した粘度となるような量で使用されるが、コーティング組成物の粘度調整のため、或いは形成される吸湿性マトリックスの吸水率を適宜の範囲に調整するため、非イオン性重合体を適宜の量で配合することもできる。
このような非イオン性重合体としては、ポリビニルアルコール、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブチレン等の飽和脂肪族炭化水素系ポリマー、スチレンーブタジエン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリ塩化ビニル、或いは、これらに、各種のコモノマー(例えばビニルトルエン、ビニルキシレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、α−ハロゲン化スチレン、α,β,β´−トリハロゲン化スチレン等のスチレン系モノマーや、エチレン、ブチレン等のモノオレフィンや、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィンなど)を、共重合させたものなどを挙げることができる。
本発明においては、上述したコーティング組成物を、例えば無機バリア層3の表面に塗布し、80〜160℃程度の温度でオーブンの能力にも依るが、数秒から数分間の加熱により、溶媒が除去され、さらに、架橋剤がカチオン性ポリマー(a)や無機バリア層3の表面のMOHと反応し、架橋構造がマトリックス中に導入され且つ無機バリア層3との密着性に優れた水分トラップ層5を形成することができる。
このような水分トラップ層5の厚みは特に制限されるものではなく、その用途や要求される水分バリアの程度に応じて適宜の厚みに設定することができるが、一般に、水蒸気透過度が10−6g/m/day以下となるような超バリア性を発揮させるには、少なくとも1μm以上、特に2乃至20μm程度の厚みを有していれば十分である。
即ち、本発明では、水分トラップ層5が、水分の吸収と閉じ込めとの2重の機能を有しているため、無機バリア層3上に、適度な厚みの水分トラップ層5を一層形成するのみで、水分に対して上記のような超バリア性を発揮することができる。従って、本発明では、層の数を少なくして高いバリア性を得ることができるのであり、生産性や生産コストなどの点で極めて有利である。
<その他の層>
本発明において、上述した水分トラップ層5の上には格別の層を設ける必要はないが、本発明の利点が損なわれない範囲で、この種のガスバリア性積層体に形成される得る公知の層を設けることも可能である。
例えば、水分トラップ層5からの水分の放出を確実に防止し、水分放出による電気絶縁性の低下などを回避するために、撥水性の層、例えばオレフィン系樹脂の層を設けることができる。
また、酸素に対するバリア性をさらに向上させるために、エチレンビニルアルコール共重合体や芳香族ポリアミドなどからなる酸素バリア層を設けることもできるし、鉄、コバルト等の遷移金属を含む酸素吸収性層を設けることも可能である。
さらに、上記のような各層と水分トラップ層5との接着性を確保するために、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物等によりグラフト変性されたオレフィン系樹脂などからなる接着樹脂層を設けることも可能である。
上述した各層は、公知の手段、例えば共押出、コーティング等により容易に形成することができる。
<用途>
本発明のガスバリア性積層体10は、水分バリア性に著しく優れており、各種の電子デバイス、例えば有機EL素子、太陽電池、電子ペーパーなどの電子回路を封止するためのフィルムとして好適に使用することができ、さらには、プラスチックフィルム基材1としてPET、PEN、ポリカーボネート、ポリイミド樹脂等の透明性に優れたものが使用されている場合には、この上に、透明電極を形成し、その上に発光層などを有する有機ELの発光素子や太陽電池の光発電素子を形成することもできる。
本発明のガスバリア性積層体の優れた性能を、以下の実験例により説明する。
<到達湿度の評価>
140℃で1時間乾燥させた後、30℃80%RH雰囲気下で、内容積85cmの水分不透過性のスチール箔積層カップに、測定物0.5gとワイヤレス式温湿度計(ハイグロクロン:KNラボラトリーズ製)を入れ、アルミ箔積層フィルム蓋で容器口部をヒートシールした。その後、30℃80%RHで経時し、1日後の容器内部の相対湿度を到達湿度とした。
<透湿度(g/m/day)の測定>
ASTM−F1249に準処し、透湿度測定装置(モダンコントロール社製「Permatran−W」)を使用し、温度40℃、相対湿度90%の条件下で測定し、測定限界を超えた0.01g/m/day未満のものを○、0.01以上のものを×とした。
<ヘーズ測定>
JIS K7361−1に準じて、SMカラーコンピューター(スガ試験機製、SM−4)を用いて、ヘーズを測定し、5%未満のものを○、5%以上のものを×とした。
<密着強度>
引っ張り試験に対するフィルムの強度を確保するために、試料のラミネート積層体の両面に、厚さ4μmのウレタン系接着剤を介して、厚さ7μmのアルミ箔をドライラミネートし、接着層の硬化のため、50℃×3日間エージングを行い、T型剥離試験用サンプルを作製した。
前記T型剥離試験用サンプルを100mm×15mmの短冊に裁断し、引っ張り試験機により引っ張り速度300mm/minにてT型剥離試験を行った(N=3)。このときの平均の強度を密着強度とし、2(N/15mm)以上のものを○、1(N/15mm)以上2(N/15mm)未満のものを△、1(N/15mm)未満のものを×とした。
<無機バリア層被覆ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの作製>
厚み12μmの2軸延伸PETフィルム1の片面に、プラズマCVD装置を用いて、酸化ケイ素の無機バリア層3を形成した。以下に、製膜条件を示す。
周波数27.12MHz、最大出力2kWの高周波出力電源、マッチングボックス、直径300mm、高さ450mmの金属型円筒形プラズマ処理室、処理室を真空にする油回転真空式ポンプを有するCVD装置を用いた。処理室内の並行平板にプラスチック基材を設置し、ヘキサメチルジシロキサンを3sccm、酸素を45sccm導入後、高周波発振器により50Wの出力で高周波を発振させ、2秒間の製膜を行い、密着層を形成した。次に、高周波発振器により300Wの出力で高周波を発振させ、15秒間の製膜を行い、バリア層を形成した。得られた無機バリア層被覆PETフィルムは、湿度90%RH及び温度40℃雰囲気下で測定した水蒸気透過率が、0.1g/m/dayである。
<実施例1>
カチオン性ポリマーとしてポリアリルアミン(ニットーボーメディカル製、PAA−15C、水溶液品、固形分15%)を、固形分5重量%になるように水で希釈し、ポリマー溶液を得た。一方、架橋剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用い、5重量%になるように水に溶かして架橋剤溶液を調製した。次いで、ポリアリルアミン100重量部に対してγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが20重量部になるように、ポリマー溶液と架橋剤溶液とを混合し、さらに、この混合溶液に、吸湿剤として、ポリアクリル酸Naの架橋物(東洋紡製、タフチックHU−820E、水分散品、固形分13%、平均粒径D50:70nm)を、ポリアリルアミンに対して420重量部になるように加え、更に固形分が5%になるよう水で調整した上で良く撹拌し、水分トラップ層用のコーティング液を調製した。
上記で得られたコーティング液をバーコーターにより、先に作成された無機バリア層被覆PETフィルムの蒸着面3上に塗布した。塗布後の上記フィルムをボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度120℃、ピーク温度保持時間10秒の条件で熱処理し、厚み4μmの水分トラップ層5を形成し、コーティングフィルム10を得た。
次いで、窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記コーティングフィルム10のコーティング層上に、厚さ4μmのウレタン系接着剤の層6を介して、上記無機バリア層被覆PETフィルムを蒸着面3が内側になるようにドライラミネートし、吸湿しないように接着樹脂層を硬化するため、50℃×3日間真空下にてエージングを行い、図3に示すような層構造のラミネート積層体11を得た。
<実施例2>
実施例1において、吸湿剤がポリアリルアミンに対して50重量部になるように配合する以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
<実施例3>
実施例1において、吸湿剤がポリアリルアミンに対して1000重量部になるように配合する以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
<実施例4>
実施例1において、架橋剤であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランがポリアリルアミンに対して7重量部になるようにポリマー溶液と架橋剤溶液とを混合し、さらに、吸湿剤がポリアリルアミンに対して375重量部になるように配合する以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
<実施例5>
実施例1において、架橋剤であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランがポリアリルアミンに対して50重量部になるようにポリマー溶液と架橋剤溶液とを混合し、さらに、吸湿剤がポリアリルアミンに対して525重量部になるように配合する以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
<実施例6>
実施例1において、架橋剤であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを配合せず、さらに、吸湿剤がポリアリルアミンに対して150重量部になるように混合する以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
<実施例7>
実施例1において、カチオン性ポリマーとして、ポリエチレンイミン(純正化学製、ポリエチレンイミン10000)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
<実施例8>
実施例1において、架橋剤として、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを用いた以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
<実施例9>
実施例1において、架橋剤であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランをポリアリルアミンに対して16重量部になるようにポリマー溶液と架橋剤溶液とを混合し、さらに架橋剤として、1,2―シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルをポリアリルアミンに対して4重量部になるように配合する以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
<実施例10>
実施例1において、コーティング液中の溶媒を、水の替わりに水/アセトン混合溶媒(重量比で80/20)を用い、架橋剤として、1,2―シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルをポリアリルアミン100重量部に対して20重量部になるように配合し、さらに、吸湿剤がポリアリルアミンに対して180重量部になるように配合する以外は、実施例1と同様の方法でラミネート積層体を得た。
<実施例11>
実施例1において、無機バリア層被覆PETフィルムの蒸着面3上に、厚さ4μmのウレタン系接着剤の層6を介して、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルム7をドライラミネートし、ナイロンフィルム7上に水分トラップ層5を形成する以外は実施例1と同様の方法で、図4に示すような層構造のラミネート積層体12を得た。
<実施例12>
実施例1において、無機バリア層被覆PETフィルムの替わりに、市販のPVD法により形成された蒸着PETフィルム(三菱樹脂製、テックバリアタイプT)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試料のラミネート積層体を得た。
<実施例13>
実施例1において、吸湿剤として、ゼオライト3A(水沢化学製、水分散品、固形分22%)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試料のラミネート積層体を得た。
<実施例14>
イオン交換樹脂(オルガノ製、アンバーライト200CT)を用いて、上記ポリアクリル酸Naの架橋物(HU−820E)のNa塩型カルボキシル基をH型カルボキシル基に変換した後、水酸化カリウムの1N水溶液を用いて、カリウム塩型カルボキシル基を有するポリアクリル酸Kの架橋物(水分散品、固形分10%、平均粒径D50:70nm、中和率80%)を得た。
吸湿剤として、上記のポリアクリル酸Kの架橋物を吸湿剤として用いた以外は、実施例1と同様の方法で試料のラミネート積層体を得た。
<比較例1>
実施例1において、吸湿剤と架橋剤を配合しない以外は、実施例1と同様の方法で試料のラミネート積層体を得た。
<比較例2>
実施例1において、カチオン性ポリマーとして、ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA103)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試料のラミネート積層体を得た。
<比較例3>
実施例1において、吸湿剤として、平均粒径900nmのポリアクリル酸Naの架橋物(東洋紡製、タフチックHU−700E、水分散品、固形分20%、平均粒径D50:900nm)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で試料のラミネート積層体を得た。
<比較例4>
吸湿剤として、平均粒径4μmポリアクリル酸Naの架橋物(東洋紡製、タフチックHU−720SF、粉体、平均粒径:4μm)をLDPE(東ソー製、LUMITAC08L55A)に対して43重量部となるようにドライブレンドし、2軸混練押出機により150℃で混練し、厚さ12μmのPETフィルム2枚とラミネーターを使用して、PETフィルム間に水分トラップ層5の厚みが20μmになるように巻き取り、水分トラップ層6の両面をPETフィルムで保護した。窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、PETフィルムを剥離して、試料の両面に、厚さ4μmのウレタン系接着剤の層6を介して、実施例1で用いた無機バリア層被覆PETフィルムを蒸着面3が内側になるようにドライラミネートし、吸湿しないように接着樹脂層を硬化するため、50℃×3日間エージングを行い、図5に示すような層構造のラミネート積層体13を得た。
<評価試験>
上記で作製された試料のラミネート積層体について、前述した方法で各種特性を測定し、その結果を、表1及び表2に示した。
尚、表2の密着性の項において、剥離界面が、水分トラップ層と無機バリア層被覆PETの蒸着面以外のものは、その値以上であるとする(注1)。
また、実施例13で用いた吸湿剤は無機系のものであり、透明性を求める用途は対象としない。従って、ヘーズは未評価とした(注2)。
Figure 2014168949
Figure 2014168949
<応用実験>
カチオン性ポリマー(ポリアリルアミン)100重量部に対して、吸湿剤(タフチックHU820E)を420重量部、架橋剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を20重量部配合した組成物0.5gを、140℃で1時間乾燥させた後、重量を測定し、温度30℃及び湿度20、30、40%RHの各雰囲気下で5分間放置し、再び重量を測定した。求めた重量増加分から、水分トラップ層の各湿度における吸湿速度を算出し、さらに極低湿度雰囲気下における吸湿速度を外挿によって求めた(図6参照)。
外挿から求めた、水分トラップ層の極低湿度雰囲気下での吸湿速度は10−4g/m/minであり、実施例1で用いた無機バリア層被覆PETフィルムの、湿度90%RH及び温度40℃雰囲気下における水蒸気透過率は、0.1g/m/day、つまり、10−5g/m/minであるので、本発明の水分トラップ層は極低湿度の雰囲気下でも水分を捕捉することができ、水分が無機バリア層を透過する速度よりも十分速い速度で捕捉することが可能となるのである。
また、捕捉した水分のマトリックスから吸湿剤への閉じ込めを証明するために、以下の実験を行った。測定物0.5gを、140℃で1時間乾燥させた後、30℃80%RH雰囲気下で、内容積85cm3の水分不透過性のスチール箔積層カップに、ワイヤレス式温湿度計(ハイグロクロン:KNラボラトリーズ製)と共に入れ、アルミ箔積層フィルム蓋で容器口部をヒートシールし、1日放置した。その後、−20、5、22、30、40℃の各温度で、3時間ずつ放置し、その際の容器内部の相対湿度を、各温度での到達湿度とした。
図7に、カチオン性ポリマー(ポリアリルアミン)、吸湿剤(タフチックHU820E)、カチオン性ポリマーと吸湿剤の1:1混合物の、各温度における到達湿度を示す。カチオン性ポリマーが、温度上昇に伴って容器内湿度が上昇するのに対して、吸湿剤、カチオン性ポリマーと吸湿剤の混合物は、容器内湿度を絶乾状態まで低下させることができた。混合物が、吸湿剤単体と同等の吸湿性能を示したことから、カチオン性ポリマーが吸湿した水分は、温度が上昇しても外気に放出されることはなく、より吸湿性の大きい(即ち、到達湿度が低い)吸湿剤によってさらに捕捉されていることを示している。
1:プラスチック基材
3:無機バリア層
5:水分トラップ層
6:ウレタン系接着剤の層
7:2軸延伸ナイロンフィルム
10、11、12、13:ガスバリア性積層体

Claims (12)

  1. プラスチック基材上に、無機バリア層及び水分トラップ層が形成されているガスバリア性積層体であって、該水分トラップ層は、カチオン性ポリマー(a)から形成されているマトリックスを含み、且つ該マトリックス中には、該マトリックスよりも到達湿度が低湿度である吸湿特性を有する吸湿剤(b)が分散されていることを特徴とするガスバリア性積層体。
  2. 前記マトリックスには、架橋構造が導入されている請求項1に記載のガスバリア性積層体。
  3. 前記架橋構造がシロキサン構造または脂環構造を含む請求項2に記載のガスバリア性積層体。
  4. 前記架橋構造が、前記カチオン性ポリマーが有するカチオン性基とエポキシ基との反応を起点に形成され、該エポキシ基を有するシラン化合物の反応によりシロキサン構造が導入されている、または該エポキシ基を有する化合物由来の脂環構造が導入されている請求項3に記載のガスバリア性積層体。
  5. 前記吸湿剤(b)が、ポリ(メタ)アクリル酸の1価金属塩の架橋物である請求項1〜4の何れかに記載のガスバリア性積層体。
  6. 前記無機バリア層がCVD法により形成された無機酸化物膜である請求項1〜5の何れかに記載のガスバリア性積層体。
  7. 水分トラップ層と無機バリア層とが隣接している請求項1〜6の何れかに記載のガスバリア性積層体。
  8. カチオン性ポリマー(a)、該カチオン性ポリマー(a)よりも到達湿度が低湿度である吸湿特性を有する吸湿剤(b)及び架橋剤が溶媒に溶解もしくは分散されているコーティング組成物。
  9. 前記吸湿剤(b)が、ポリ(メタ)アクリル酸の1価金属塩の架橋物である請求項8に記載のコーティング組成物。
  10. カチオン性ポリマー(a)100重量部当り50乃至1000重量部の量で、前記吸湿剤(b)が含まれている請求項8または9に記載のコーティング組成物。
  11. 前記架橋剤が、下記式(1):
    X−SiR (OR3−n (1)
    式中、Xは、末端にエポキシ基を有する有機基であり、
    及びRは、それぞれ、メチル基、エチル基、もしくはイソプロピ
    ル基であり、
    nは、0、1、もしくは2である、
    で表される化合物である請求項8〜10の何れかに記載のコーティング組成物。
  12. 前記カチオン性ポリマー(a)100重量部当り5乃至60重量部の量で、前記架橋剤が含まれている請求項8〜11の何れかに記載のコーティング組成物。
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